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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071871
(43)【公開日】2022-05-16
(54)【発明の名称】包装食品、包装材、積層体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/50 20060101AFI20220509BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220509BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20220509BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220509BHJP
   A23L 3/00 20060101ALI20220509BHJP
   A23B 4/00 20060101ALI20220509BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20220509BHJP
【FI】
B65D85/50 110
B32B27/00 H
B32B27/28 102
B65D65/40 D
A23L3/00 101A
A23B4/00 A
A23B4/00 E
A23L13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176583
(22)【出願日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2020180974
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慶一
(72)【発明者】
【氏名】尾中 正崇
(72)【発明者】
【氏名】圷 高宏
【テーマコード(参考)】
3E035
3E086
4B021
4B042
4F100
【Fターム(参考)】
3E035AA07
3E035BA02
3E035BC02
3E035BD02
3E035BD03
3E035CA07
3E035DA01
3E086AB01
3E086AD18
3E086AD19
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA04
3E086CA22
3E086DA08
4B021LA15
4B021LA16
4B021LA17
4B021LA24
4B021LP07
4B021LW04
4B021MQ05
4B042AC06
4B042AD01
4B042AH01
4B042AP06
4B042AP30
4B042AW06
4F100AA17B
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK04C
4F100AK07A
4F100AK48B
4F100AK63
4F100AK69B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100GB23
4F100JD03B
4F100JD04B
4F100JL12C
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、高圧処理をした食品、特に肉製品の経時的な褪色を抑制し、外観(色合い)を維持する包装食品を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、被処理物と、前記被処理物を包装する包装材と、を備える包装食品であって、前記包装材は、酸素透過度が1.0mL/m・day・atm以下であり、前記被処理物は、前記包装材により密封した状態で加圧処理したことを特徴とする、包装食品を提供する。
【選択図】図3


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物と、前記被処理物を包装する包装材と、を備える包装食品であって、
前記包装材は、酸素透過度が1.0mL/m・day・atm以下であり、
前記被処理物は、前記包装材により密封した状態で加圧処理したことを特徴とする、包装食品。
【請求項2】
被処理物と、前記被処理物を包装する包装材と、を備える包装食品であって、
前記包装材は、酸素透過度(mL/m・day・atm)に対する透湿度(g/m・day)の比(透湿度/酸素透過度)が3.5以上であり、
前記被処理物は、前記包装材により密封した状態で加圧処理したことを特徴とする、包装食品。
【請求項3】
被処理物と、前記被処理物を包装する包装材と、を備える包装食品であって、
前記包装材は、酸素透過度(mL/m・day・atm)と透湿度(g/m・day)が以下の式(1)の条件を満たし、
前記被処理物は、前記包装材により密封した状態で加圧処理したことを特徴とする、包装食品。
Y>4.2X+z 式(1)
(但し、Xは、酸素透過度、Yは、透湿度を表し、zは-1.5である。)
【請求項4】
前記加圧処理の圧力は、50MPa以上1000MPa以下であり、前記加圧処理時の温度は、5℃以上60℃以下であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装食品。
【請求項5】
前記被処理物は、肉製品であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装食品。
【請求項6】
前記被処理物は、スライス加工食品であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装食品。
【請求項7】
前記包装材は、(a)最外層、(b)中間層及び(c)最内層を有する積層体を備え、
前記(b)中間層は、酸素ガスバリア性を有する樹脂を含む層、酸素ガスバリア性を有する金属酸化物又は金属からなる層及び脱酸素剤を含む層から選択される層の少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の包装食品。
【請求項8】
前記(c)最内層は、ヒートシール性を有する樹脂又は樹脂組成物からなる層であることを特徴とする、請求項7に記載の包装食品。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の包装食品に使用することを特徴とする、包装材。
【請求項10】
請求項9に記載の包装材に使用することを特徴とする、積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物を包装材により密封した状態で加圧処理した包装食品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、包装した食品等に熱、圧力または電子線を加え、滅菌・殺菌を行うと、長期間の保存が可能となることが知られている。特に、近年では、包装した食品等に極めて高い圧力をかけることによって、微生物を不活性化する高圧処理方法(High Pressure Processing)が行われるようになった。この方法では、常温またはその付近の温度で行っても微生物等の不活性化処理をすることができる。このため、被処理物(タンパク質およびでんぷん等)の熱変性を防止し、風味、栄養素および色等を保持でき、均一に斑なく処理できるという利点がある。
他方、極めて高い圧力が包装材にもかかることから、種々の包装材が提案されている。
【0003】
特許文献1には、PETフィルム等の基材と、アルミニウム箔等のガスバリア層および環状ポリオレフィンまたは非晶性ポリエステル等の最内層を有する高圧処理用包装材が記載されている。
特許文献2には、ポリプロピレン等の疎水性層と、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物層とを有する高圧殺菌方法に用いる包装材が記載されている。
特許文献3には、PET等の基材フィルムとヒートシール層との間に、エチレン-ビニルエステル系共重合体ケン化物層を有する超高圧処理用多層構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-11098号公報
【特許文献2】特開平3-290175号公報
【特許文献3】特開2018-58298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食品、特にハム等のスライス加工された肉製品に、高圧処理方法を適用すると、微生物制御ができる。ところが、高圧処理方法を行っていない肉製品に比較し、経時的に褪色が進みやすく、保管中に外観(色合い)が悪化するという問題がある。
【0006】
本発明の課題は、高圧処理をした食品、特に肉製品の経時的な褪色を抑制し、外観(色合い)を維持する包装食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、被処理物を、特定の酸素透過度の包装材を用いることにより、高圧処理による被処理物の経時的な褪色を抑制し、保管時の安定性に優れた包装食品が得られることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の包装食品、包装材及び積層体である。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の包装食品は、被処理物と、前記被処理物を包装する包装材と、を備える包装食品であって、前記包装材は、酸素透過度が1.0mL/m・day・atm以下であり、前記被処理物は、前記包装材により密封した状態で加圧処理したことを特徴とする。
本発明の包装食品によれば、加圧処理による被処理物の経時的な褪色を抑制し、保管時の安定性に優れた包装食品を提供することができる。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の包装食品は、被処理物と、前記被処理物を包装する包装材と、を備える包装食品であって、前記包装材は、酸素透過度(mL/m・day・atm)に対する透湿度(g/m・day)の比(透湿度/酸素透過度)が3.5以上であり、前記被処理物は、前記包装材により密封した状態で加圧処理したことを特徴とする。
本発明の包装食品によれば、加圧処理による被処理物の経時的な褪色を抑制し、保管時の安定性に優れた包装食品を提供することができる。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の包装食品は、被処理物と、前記被処理物を包装する包装材と、を備える包装食品であって、前記包装材は、酸素透過度(mL/m・day・atm)と透湿度(g/m・day)が以下の式(1)の条件を満たし、前記被処理物は、前記包装材により密封した状態で加圧処理したことを特徴とする。
Y>4.2X+z 式(1)
(但し、Xは、酸素透過度、Yは、透湿度を表し、zは-1.5である。)
本発明の包装食品によれば、加圧処理による被処理物の経時的な褪色を抑制し、保管時の安定性に優れた包装食品を提供することができる。
【0011】
また、本発明の包装食品の一実施態様としては、加圧処理の圧力は、50MPa以上1000MPa以下であり、加圧処理時の温度は、5℃以上60℃以下であることを特徴とする。
この特徴によれば、被処理物に対して加熱処理をすることなく、滅菌処理を行うことができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明の包装食品の一実施態様としては、被処理物は、肉製品であることを特徴とする。
この特徴によれば、経時的な褪色を抑制する効果が一層発揮される。
【0013】
また、本発明の包装食品の一実施態様としては、被処理物は、スライス加工食品であることを特徴とする。
被処理物をスライスすると表面積が大きくなるため、経時的な褪色が一層生じやすい。よって、被処理物がスライス加工食品である場合には、本発明の効果がより一層発揮される。
【0014】
また、本発明の包装食品の一実施態様としては、包装材は、(a)最外層、(b)中間層及び(c)最内層を有する積層体を備え、前記(b)中間層は、酸素ガスバリア性を有する樹脂を含む層、酸素ガスバリア性を有する金属酸化物又は金属からなる層及び脱酸素剤を含む層から選択される層の少なくとも一種を含むことを特徴とする。
この特徴によれば、最外層と最内層により、ガスバリア性を有する中間層を保護することができるため、経時的な褪色を抑制する効果が一層発揮される。
【0015】
また、本発明の包装食品の一実施態様としては、(c)最内層は、ヒートシール性を有する樹脂又は樹脂組成物からなる層であることを特徴とする。
この特徴によれば、ヒートシーラーにより簡単に包装することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高圧処理をした食品、特に肉製品の経時的な褪色を抑制し、外観(色合い)を維持する包装食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の積層体の構造を示す概略説明図である。
図2】本発明の包装食品の構造を示す概略説明図である。
図3】本発明の包装材を使用した高圧処理後包装食品のおよび従来の包装体を使用した高圧処理後包装食品並びに従来の積層体を使用した高圧未処理包装食品の色合いの変化を示したグラフである。
図4】包装材の酸素透過度と透湿度の関係、および高圧処理後包装食品の色合いの変化の有無を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[積層体]
本発明の積層体は、酸素透過度が1.0mL/m・day・atm以下であることを特徴とする。酸素透過度は、内容物の充填前の積層体を、日本工業規格(JIS)K 7216-2「クーロメトリック法(MOCON法)」(等圧法)に基づき測定した値である。なお、測定条件は、23℃および湿度0%RHである。
積層体の酸素透過度は、0.7mL/m・day・atm以下が好ましく、0.5mL/m・day・atm以下がより好ましい。
酸素透過度が、1.0mL/m・day・atm以下であると、本発明の積層体からなる包装材を用いた包装食品、特に食肉加工製品(ハム等)の包装食品は、高圧処理直後の外観(色合い)を維持できる。
【0019】
本発明の積層体の透湿度(g/m・day)は、特に制限されないが、例えば、0.1~10g/m・dayである。透湿度の下限値は、好ましくは1.0g/m・day以上であり、より好ましくは1.5g/m・day以上であり、さらに好ましくは2.0g/m・day以上であり、特に好ましくは2.5g/m・day以上である。透湿度の上限値は、好ましくは8.0g/m・day以下であり、より好ましくは6.0g/m・day以下であり、さらに好ましくは5.5g/m・day以下である。
なお、透湿度は、内容物の充填前の積層体を、日本工業規格(JIS)Z 0208-1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に基づき測定した値である。なお、測定条件は、25℃である。
【0020】
本発明の積層体は、酸素透過度(mL/m・day・atm)に対する透湿度(g/m・day)の比(透湿度/酸素透過度)が3.5以上であることを特徴とする。
酸素透過度に対する透湿度の比(透湿度/酸素透過度)は、4.0以上が好ましく、4.5以上がより好ましい。また、酸素透過度に対する透湿度の比(透湿度/酸素透過度)の上限は特に制限されないが、例えば、10.0以下である。
酸素透過度に対する透湿度の比(透湿度/酸素透過度)が、3.5以上であると、本発明の積層体からなる包装材を用いた包装食品、特に食肉加工製品(ハム等)の包装食品は、高圧処理直後の外観(色合い)を維持できる。
【0021】
また、本発明の積層体は、酸素透過度(mL/m・day・atm)と透湿度(g/m・day)が以下の式(1)の条件を満たすことを特徴とする。
Y>4.2X+z 式(1)
(但し、Xは、酸素透過度、Yは、透湿度を表し、zは-1.5である。)
酸素透過度と透湿度が上記の式(1)の条件を満たすと、本発明の積層体からなる包装材を用いた包装食品、特に食肉加工製品(ハム等)の包装食品は、高圧処理直後の外観(色合い)を維持できる。
【0022】
式(1)中のzは、-0.52が好ましく、±0.00がより好ましく、+0.50が特に好ましい。
【0023】
図1に示すように、本発明の積層体1は、最外層2と、内容物に接する最内層4との間にある中間層3に酸素バリア層を有する積層構造を含む。目的に応じて、中間層として、他の層を任意に設けることができる。
【0024】
(最外層)
最外層は、機械的な作用を受けやすい。このため、靭性、耐ピンホール性および耐突き刺し性等を有するとともに、水および酸素等から内層を保護する作用を有する樹脂を含むことが好ましい。
このため、最外層として使用される樹脂は、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン系樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、アイオノマー樹脂、スチレン系重合体、ポリ塩化ビニリデン系重合体、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリイミドアミド、シリコーン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリウレタン、アセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリーレンエーテル系樹脂およびセルロール系樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよく、2種以上が混合されて組成物として使用されてもよい。
上記樹脂の中でも、入手の容易性、フィルムまたはシートへの加工性、フィルムまたはシートとしたときの機械的強度および内部視認性に優れることから、ポリエステル、ポリオレフィンおよびポリアミドが好ましい。
【0025】
具体的には、ポリオレフィンとして、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体およびエチレン・オクテン共重合体等)、エチレン・プロピレン共重合体およびポリプロピレン等が挙げられる。
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、開環メタセシス重合体(ノルボルネン開環重合体等)および環状オレフィンとオレフィン(エチレン等)との付加共重合体等が挙げられる。
スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体およびアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体が挙げられる。
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンナフタレートおよびポリテトラメチレンナフタレート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、例えば、ナイロン-6およびナイロン-6,6等が挙げられる。
【0026】
(中間層)
中間層に、酸素ガスバリア性を有する樹脂を含む層、酸素ガスバリア性を有する金属もしくは金属酸化物からなる層または脱酸素剤を含む層(以下、総称して「酸素バリア層」ともいう。)を含む。
<酸素バリア層>
酸素バリア層は、パッケージ内部への酸素の侵入を防止する作用を有する。
酸素バリア層は、1層のみを設けてもよく、2層以上を設けてもよい。酸素バリア層を2層以上設ける場合には、同種または異種の酸素バリア層を設けてもよく、層厚も同一または異なってもよい。
【0027】
本明細書では、酸素ガスバリア性を有する樹脂とは、膜厚20μmの無延伸の試料を、23℃および湿度0%RHで測定したときの酸素透過率が5.0mL/m・day・atm以下のものをいう。
酸素ガスバリア性を有する樹脂は、例えば、酢酸ビニル重合体ケン化物、トリフルオロ酢酸ビニル重合体ケン化物、ギ酸ビニル重合体ケン化物、ピバリン酸ビニル重合体ケン化物、ブチルビニルエーテル重合体ケン化物およびトリメチルシリルビニルエーテル重合体ケン化物等のポリビニルアルコール(EVA)構造を有する樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン・トリフルオロ酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン・ギ酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン・ピバリン酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン・ブチルビニルエーテル共重合体ケン化物およびエチレン・トリメチルシリルビニルエーテル共重合体ケン化物等のエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)構造を有する樹脂、構成モノマーとして塩化ビニルを含むポリ塩化ビニリデン系重合体、並びにポリアミドMDX6(m-キシレンジアミンとアジピン酸との縮重合体)等が挙げられる。
【0028】
酸素ガスバリア性を有する金属または金属酸化物からなる層としては、金属または金属酸化物を蒸着させて製造した層が挙げられる。金属または金属酸化物としては、例えば、アルミニウム、ケイ素、マグネシウムおよびすず並びにそれらの酸化物等を挙げることができる。
脱酸素剤を含む層としては、例えば、エージレス(登録商標、三菱ガス化学(株))を最外層の欄で挙げた樹脂または酸素ガスバリア性を有する樹脂に分散させた層を挙げることができる。
酸素バリア層は、入手および加工のしやすさ、内容物の視認性に優れることから、酸素ガスバリア性を有する樹脂が好ましく、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)構造を有する樹脂およびポリ塩化ビニリデン系重合体がより好ましい。
【0029】
金属または金属酸化物の蒸着膜は、最内層もしくは最外層となる基材または中間層となる基材に、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ化学気相成長法または熱化学気相成長法により形成することができる。
(その他の中間層)
中間層には、酸素バリア層の以外にも、他の目的(例えば、靭性、耐ピンホール性、耐突き刺し性、透湿バリア性または剛性の付与等)に応じ、任意の層を設けることができる。
例えば、最外層の欄で挙げた樹脂またはそれらの樹脂組成物を挙げることができる。
また、一般に、酸素バリア性を有するビニルアルコール重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体およびポリアミドMDX6等は、吸湿により、酸素バリア性が低下する。このため、酸素バリア層の両側または片側に、疎水性の樹脂を含む層を設けてもよい。
【0030】
(最内層)
最内層は、被包装物に接するとともに、シールにより被包装物を密封するものであることから、ヒートシール性と化学的に安定性に優れた樹脂または樹脂組成物であることが好ましい。
最内層としては、例えば、ポリオレフィン、環状オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂、エチレン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル・不飽和カルボン酸共重合体、および非晶性ポリエステルを挙げることができる。
具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン・ヘキセン共重合体およびエチレン・オクテン共重合体等)、超低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、ポリプロピレン、環状オレフィン開環重合体、エチレン・環状オレフィン付加共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体を挙げることができる。これらは、1種単独で使用されてもよく、2種以上が混合されて樹脂組成物として使用されてもよい。
入手の容易性、疎水性による酸素バリア層の保護およびシール性から、ポリオレフィンおよび環状オレフィン系樹脂並びにそれらの樹脂組成物が好ましく、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体およびエチレン・ブテン共重合体並びにそれらの樹脂組成物がより好ましい。
【0031】
また、被処理物を取り出しやすくするために、最内層は、最内層のみまたはその他の層とともにイージーピール性を有することが好ましい。イージーピール性は、凝集剥離タイプ、層間剥離タイプまたは界面剥離タイプのいずれであってもよい。
イージーピール性を有する樹脂または樹脂組成物は、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよびポリプロピレンを含む樹脂組成物、4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体およびプロピレン・エチレン・ブテン共重合体を含む樹脂組成物、4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体および直鎖状低密度ポリエチレン(エチレン・1-ヘキセン共重合体)を含む樹脂組成物等が挙げられる。
【0032】
本発明の積層体には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、充填剤、補強材、可塑剤、架橋剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、界面活性剤、抗菌・抗カビ剤、難燃化剤、乾燥剤、結晶核剤、カップリング剤、防曇剤および着色剤を含有してもよい。
【0033】
本発明の積層体をフィルムまたはシートとした場合におけるフィルムまたはシートの厚さは、特に制限されない。フィルムの厚さは、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、70μm以上がさらに好ましい。フィルムの厚さを20μm以上とすることによって、予期しない破損を防止し、フィルムの強度を向上することができる。また、フィルムの厚さは、300μm以下が好ましく、250μm以下がより好ましく、200μm以下がさらに好ましく、150μm以下が最も好ましい。300μm以下であれば、包装のときにフィルムの加工性が向上するとともに、被処理物を取り出しやすい。
また、食品用途のパッケージは、外部から被処理物を視認できることが好まれる。このため、本発明の積層体を用いたフィルムまたはシートは、透明であることが好ましい。
【0034】
[積層体の製造方法]
積層体のフィルムまたはシートを製造する方法としては、特に制限はない。例えば、各層を製造した後、積層し、各層を、接着樹脂層を介して、接着剤、熱または圧力を用いることによって接着して製造してもよい。また、単層のフィルムまたはシートを製造した後、例えば、ドライラミネート、押出コーティング、共押出コーティングまたはサンドララミネート等によって、積層させることもできる。さらに、積層フィルムまたはシートの全部または一部を、共押し出しにより積層することもできる。
各層となるフィルムまたはシートを製造する方法としては、例えば、キャスト法、Tダイ法、切削法またはインフレーション法等の成膜法を挙げることができる。
また、各層は、それぞれ独立して、無延伸または延伸してあってもよい。延伸は、一軸延伸、二軸延伸またはインフレーション法による延伸のいずれであってもよい。二軸延伸は、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法のいずれであってもよい。逐次二軸延伸法はチューブラー法またはテンター(Tダイ)法のいずれであってもよい。
さらに、各層が無延伸の積層体を製造した後、積層体全体を、一軸延伸、二軸延伸またはインフレーション法によって、延伸させてもよい。
【0035】
各層間の接着性を高めるために、各層に、コロナ放電処理、オゾン処理、電子線処理、低温プラズマ処理およびグロー放電処理を行ってもよい。また、各層の表面にプライマーコート剤層、アンダーコート剤層および接着剤層を形成してもよい。
【0036】
[包装材]
包装の態様は、被処理物を密閉できるのであれば、特に限定されない。ガスパック包装や真空包装などがあるが、真空包装が好ましい。また、包装形態としては、例えば、深絞り包装、スキンパック、四方シール包装、三方シール包装、スティック包装、ピロー包装、ガゼット袋包装およびスタンディングパウチ等を挙げることができる。包装の種類は、内容物と包装材とが密封密着し、密閉できるため、深絞り包装およびスキンパックが好ましく、深絞り包装がより好ましい。
【0037】
包装に用いる包装材の形状は、特に限定されない。例えば、フィルムもしくはシート状またはチューブ状等を挙げることができる。
また、被処理物の取り出しを容易にするために、引き裂き性を向上させた表面加工を行ってもよい。
【0038】
包装に用いる包装材は、1種単独の積層体を用いてもよく、2種以上の積層体を組み合わせてもよい。
例えば、三方シール包装では、フィルムまたはシートに被処理物を置き、シーラント層が内側となるように折り返してシールすることによって、密閉することができる。
また、例えば、スキンパックでは、蓋材と底材とをシールすることによって、被処理物を密閉する。この場合に、蓋材と底材とは、異なる包装材を使用してもよい。
【0039】
シールの方法としては、公知のいずれの方法によっても行うことができる。例えば、熱圧着、高周波シールおよび超音波シール等を挙げることができる。
【0040】
ここで、2種以上の包装材を使用する包装の場合には、包装材と被処理物が接触する面積(以下、「接触面積」という。)に対して、本発明の積層体を用いた包装材の面積の割合が、50%以上を占めることが好ましい。ここで、本発明の積層体を用いた包装材とは、酸素透過度が1.0mL/m・day・atm以下である包装材、酸素透過度に対する透湿度の比(透湿度/酸素透過度)が、3.5以上である包装材、又は、酸素透過度と透湿度が上記の式(1)の条件を満たす包装材である。
また、他の包装材として、酸素透過度が15mL/m・day・atm以下の包装材を使用することもできる。
2種以上の包装材を使用する包装とは、例えば、本発明の積層体を用いた包装材からなる底材と、他の包装材からなる底材を使用する包装などが挙げられる。
【0041】
[包装食品]
以下、図2に示すように、包装材11として底材11Aと蓋材11Bを用いて被処理物12を深絞り包装した包装食品10を例に説明する。底材11Aは、酸素透過度が1.0mL/m・day・atm以下である包装材を使用し、蓋材11Bは、酸素透過度が15mL/m・day・atm以下の包装材を使用した。
【0042】
(底材)
底材は、本発明の積層体から製造されたものであり、包装材の接触面積の50%以上を占め、パッケージ内部に酸素の侵入を防止するものである。底材は、被処理物の形状に合わせてシュリンクする包装材であり、被処理物を立体的に展示することが可能となる。
【0043】
深絞り包装において、底材は、被処理物の形状に合わせて変形することから、フィルムの厚さが薄くなり、かつムラが生じやすい。そのため、深絞り包装の底材には、本発明の包装材(酸素透過度が1.0mL/m・day・atm以下である包装材、酸素透過度に対する透湿度の比(透湿度/酸素透過度)が、3.5以上である包装材、又は、酸素透過度と透湿度が上記の式(1)の条件を満たす包装材)を適用することが好ましい。これにより、被処理物の褪色を抑制するという本発明の効果を一層発揮することができる。
【0044】
(蓋材)
蓋材は、底材の蓋として機能する包装材であり、形状は特に制限されないが、平面形状を維持する包装材であることが好ましい。蓋材の形状を平面形状とすることにより、消費期限や原材料表示等の表示が見やすい包装食品を得ることができる。蓋材の最外層は、印刷性を有する樹脂を含む層が好ましい。印刷性を有する樹脂は、極性を有する樹脂であり、例えば、ナイロンまたはポリエステルを挙げることができる。
また、蓋材は、中間層に印刷した層を設けることもできる。
【0045】
蓋材は、深絞り包装における形状の変形が小さいことから、高圧処理時における影響を受けにくい。そのため、深絞り包装の蓋材には、酸素透過度が1.0mL/m・day・atmを超える包装材を適用するもできる。深絞り包装の蓋材の酸素透過度の上限は、特に制限されないが、例えば、15mL/m・day・atm以下であり、好ましくは10mL/m・day・atm以下であり、より好ましくは8mL/m・day・atm以下である。
【0046】
(被処理物)
被処理物には、特に制限はない。例えば、肉製品、魚介製品、野菜製品等が挙げられる。好ましくは肉製品である。肉製品としては、具体的には、ハム、ベーコン、生ハム、焼き豚、ウィンナー・フランク、ドライ、ソーセージ、ハンバーグ、ミートボール・肉団子、豚角煮、サラダチキン、スモークチキンおよび焼き鳥等を挙げることができる。ソース、スープまたは煮こごり等の液体またはゼラチン状物質等を含んでいてもよい。また、魚介製品としては、具体的には、刺身、煮つけ、焼き魚、魚肉ソーセージ、乾物等を挙げることができる。また、野菜製品としては、具体的には、カット生野菜、煮野菜、炒め野菜、漬物等を挙げることができる。肉製品、魚介製品は、赤身の色の褪色が特に目立ちやすいことから、本発明の褪色を抑制する効果がより一層発揮される。
【0047】
被処理物の形状は、特に制限されないが、例えば、ブロック加工食品、スライス加工食品、ミンチ加工食品などが挙げられる。被処理物をスライス状やミンチ状に加工すると、表面積が大きくなるため、経時的な褪色が一層生じやすい。また、スライス加工食品は、切り口を展示して陳列するため、褪色が特に目立ちやすい。よって、被処理物がスライス加工食品である場合には、本発明の褪色を抑制する効果がより一層発揮される。
【0048】
[包装方法]
高圧処理に用いられる包装は、空隙があると包装材の白化の原因となる場合があることから、真空包装方法によるものが好ましい。脱気方法としては、例えば、チャンバー式脱気方法、機械式脱気方法およびノズル式脱気方法が挙げられる。
【0049】
[高圧処理方法]
高圧処理方法は、常温またはその付近の温度で、極めて高い圧力をかけることによって、滅菌・殺菌を行う方法である。このため、熱による変性が生じ難くなることから、風味および栄養素を保持することができ、被処理物全体を均一に処理することができる。
<圧力>
高圧処理の圧力は、例えば、50MPa以上1000MPa以下である。高圧処理の圧力の下限値は、好ましくは100MPa以上、より好ましくは200MPa以上、更に好ましくは300MPa以上、特に好ましくは450MPa以上である。高圧処理の圧力の上限値は、好ましくは800MPa以下、より好ましくは700MPa以下である。100MPa以上であれば、滅菌・殺菌をすることができ、食品を長期にわたり保存できる。また、1000MPa以下であれば、パッケージ内部への酸素および水分の侵入を抑制することができる。
加圧は、連続的にまたは断続的に行ってもよい。圧力は、同一または異なっていてもよい。
【0050】
<温度>
高圧処理の温度は、0℃以上60℃以下、3℃以上50℃以下が好ましく、5℃以上40℃以下がより好ましい。0℃以上であれば、被処理物が凍ることなく、加圧時にパッケージの破損を防止することができる。また、60℃以下であれば、被処理物の熱変性を抑制することができる。温度は、加圧処理の間、均一または変化させてもよい。
【0051】
<時間>
高圧処理の時間は、特に制限されない。30秒以上1800秒以下が好ましく、60秒以上900秒以下がより好ましく、150秒以上250秒以下がさらに好ましい。30秒以上であれば、滅菌・殺菌の効果を有するので、被処理物を長期にわたり保存することができる。1800秒以下であれば、被処理物が圧縮され、硬くなることもない。時間は、断続的に加圧する場合には、加圧した時間の合計である。
【0052】
<加圧媒体>
高圧の加圧媒体には、一般に水が使用される。しかし、加圧媒体には水以外にも化学的に安定な他の液体を使用することもできる。パッケージ内部への水に含まれる酸素ガスの侵入を予防するため、脱気した水または不活性ガス(窒素またはアルゴン等)を用いて酸素ガスをパージした水を使用することが好ましい。
【実施例0053】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。
【0054】
本発明で用いた測定方法および評価方法は以下のとおりである。
[1]酸素透過度
日本工業規格(JIS)K 7216-2:2006「クーロメトリック法(MOCON法)」(等圧法)に基づき、23℃および湿度0%RHで測定した値である。
[2]透湿度
日本工業規格(JIS)Z 0208-1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に基づき、25℃で測定した値である。
[3]褪色の評価
高圧処理後、被処理物の色を、目視で評価した。
(評価基準)
〇:色合いの変化は認められなかった。
△:やや色合いが褪色した。
×:色合いが褪色した。
【0055】
<試験1:被処理物の色合いの目視評価(1)>
[実施例1]
被処理物としてスライスロースハム、底材として酸素透過度0.5mL/m・day・atm、透湿度3.3g/m・dayのフィルム(PP/EVOH/NY/PE系EP、厚さ160μm)および蓋材として酸素透過度1.0mL/m・day・atm、透湿度5.1g/m・dayのフィルム(PP/バリアNY/LLDPE、厚さ95μm)を用いた。底材はPE系EPを最内層とし、蓋材はLLDPEを最内層とした。蓋材にスライスロースハムを置き、底材となるフィルムを加熱し、絞り成型した後、スライスロースハムを覆い、底材と蓋材との間を真空(1kPa)にし、シールして、深絞り包装を行った。なお、接触面積における底材の占める割合は、50%以上である。
製造した深絞り包装食品を、加圧媒体として水を用い、静水圧600MPaで210秒間加圧し、高圧処理を行った。
10℃で各評価日まで放置した後、被処理物の色合いを目視で確認した。
【0056】
[実施例2]
実施例1における底材および蓋材の代わりに、底材として酸素透過度0.5mL/m・day・atm、透湿度2.7g/m・dayのフィルム(NY/EVOH/NY/PE系EP、厚さ250μm)および蓋材として酸素透過度4.5mL/m・day・atm、透湿度3.4g/m・dayのフィルム(PP/KNY/LLDPE、厚さ95μm)を用いた以外、実施例1と同様に行った。
【0057】
[実施例3]
被処理物としてスライスロースハム、底材として酸素透過度0.5mL/m・day・atm、透湿度2.7g/m・dayのフィルム(NY/EVOH/NY/PE系EP、厚さ250μm)および蓋材として酸素透過度6.5mL/m・day・atm、透湿度3.6g/m・dayのフィルム(PP/KNY/LLDPE、厚さ95μm)を用いた。底材のPE系EPおよび蓋材のLLDPEを最内層とした。蓋材にスライスロースハムを置き、底材となるフィルムを加熱し、絞り成型した後、スライスロースハムを覆い、底材と蓋材との間を真空(1kPa)にし、シールして、深絞り包装を行った。
製造した深絞り包装食品を、加圧媒体として水を用い、静水圧600MPaで180秒間加圧し、高圧処理を行った。
10℃で各評価日まで放置した後、被処理物の色合いを目視で確認した。
【0058】
[実施例4]
実施例3における底材の代わりに、底材として酸素透過度0.6mL/m・day・atm、透湿度3.2g/m・dayのフィルム(NY/EVOH/NY/PE系EP、厚さ220μm)を用いた以外、実施例3と同様に行った。
【0059】
[実施例5]
実施例3における底材の代わりに、底材として酸素透過度0.0mL/m・day・atm、透湿度3.6g/m・dayの酸素吸収層を中間層に有するフィルム(NY/酸素吸収層/PE、厚さ200μm)を用い、底材のPEを最内層とした以外、実施例3と同様に行った。
【0060】
[比較例1]
実施例1における底材および蓋材の代わりに、底材として酸素透過度2.0mL/m・day・atm、透湿度6.2g/m・dayのフィルム(NY/EVOH/NY/PE系EP、厚さ150μm)および蓋材として酸素透過度2.5mL/m・day・atm、透湿度8.0g/m・dayのフィルム(NY/EVOH/NY/PE、厚さ80μm)を用い、底材のPE系EPおよび蓋材のPEを最内層とした以外、実施例1と同様に行った。
【0061】
[比較例2]
実施例3における底材および蓋材の代わりに、底材として酸素透過度1.5mL/m・day・atm、透湿度4.3g/m・dayのフィルム(PP/EVOH/NY/PE系EP、厚さ150μm)および蓋材として酸素透過度3.7mL/m・day・atm、透湿度4.7g/m・dayのフィルム(PP//NY/EVOH/NY/PE、厚さ80μm)を用い、蓋材のPEを最内層とした以外、実施例3と同様に行った。なお、「PP//NY/EVOH/NY/PE」は、PPフィルムとNY/EVOH/NY/PEフィルムをラミネート加工したものである。
【0062】
[比較例3]
実施例3における底材および蓋材の代わりに、底材として酸素透過度1.1mL/m・day・atm、透湿度2.9g/m・dayのフィルム(NY/EVOH/NY/PE系EP、厚さ250μm)および蓋材として酸素透過度2.2mL/m・day・atm、透湿度7.4g/m・dayのフィルム(NY/EVOH/NY/PE、厚さ100μm)を用い、蓋材のPEを最内層とした以外、実施例3と同様に行った。
【0063】
[参考例1]
比較例2において、高圧処理を行わなかった以外、同様に行った。
【0064】
実施例、比較例および参考例1で使用した積層体構造、フィルム厚、酸素透過度および透湿度を表1に示し、高圧処理の結果を表2に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1における略称の意味は次のとおりである。
PP :ポリプロピレン
EVOH :エチレン・ビニルアルコール共重合体(エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン物)
NY :ナイロン
バリアNY:有機酸コート系バリアナイロン
KNY :ポリ塩化ビニリデン系コートナイロン
PE :ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
PE系EP:ポリエチレン系イージーピールフィルム
【0067】
【表2】
【0068】
参考例1と比較例2との比較から、高圧処理を行わずに、深絞り包装した参考例の被処理物は、褪色が生じなかったのに対し、高圧処理を行った被処理物には褪色が生じることが判明した。
【0069】
中間層に酸素吸収層を設けた実施例5では、高圧処理を行った後でも、被処理物の褪色が生じなかったことから、酸素が被処理物の褪色に影響していると考えられる。
【0070】
酸素透過度が、1.0mL/m・day・atm以下の積層体を底材に使用した被処理物は、処理時間にかかわらず、75日以上の間、褪色が生じなかった(実施例1~5)。これに対し、酸素透過度が、1.0mL/m・day・atmを超える積層体を底材に使用した被処理物は、褪色が生じた(比較例1~3)。
【0071】
<試験2:色彩色差系による色合いの変化の評価>
次に、実施例5、比較例2、参考例1の深絞り包装食品について、色彩色差計により経時的な色合いの変化を評価した。測定は、深絞り包装食品をそのままの状態で外側から測定した。色彩色差計は、「CR-400」(コニカミノルタジャパン(株)製)を用いた。高圧処理直後又は包装食後の深絞り包装食品のL*a*b*の値を基準として、所定の保管日数が経過した包装食品のL*a*b*との色差ΔE*を算出した。ΔE*の変化を深絞り包装食品の色合いの変化として評価した。結果を図3に示す。
【0072】
図3を参照すると、従来の積層体を使用した包装食品では、高圧未処理のもの(参考例1)では、色合いの変化がなかったのに対し、高圧処理をしたもの(比較例2)では、被処理物であるハムの色合いが大きく変化することが示されている。
そして、本発明の積層体を使用した包装食品(実施例5)は、高圧処理をしても、従来の積層体を使用した包装食品の高圧未処理と同様に、被処理物であるハムの色合いに変化がないことが分かる。
【0073】
<試験3:被処理物の色合いの目視評価(2)>
実施例1~5、比較例1~3の他、表3に示す実施例6~10、比較例4、5について、試験1の実施例1と同様にして包装食品を製造した。なお、実施例6~10、比較例4、5では、底材として、表3に示す酸素透過度と透湿度である積層体を使用し、蓋材として、表1に示す実施例3と同じ積層体を使用した。次に、得られた包装食品について色合いの変化を目視により評価した。評価結果は、表3に示した。
表3に示す実施例1~5、比較例1~3は、試験1の結果である。
【0074】
【表3】
【0075】
表3を参照すると、酸素透過度に対する透湿度の比(透湿度/酸素透過度)が3.5以上の場合に、75日以上の間、褪色が生じなかった(実施例1~10)。これに対し、酸素透過度に対する透湿度の比(透湿度/酸素透過度)が3.5未満の積層体を底材に使用した被処理物は、褪色が生じた(比較例1~5)。
【0076】
次に、実施例1~10、比較例1~5の積層体について、酸素透過度をX軸、透湿度をY軸として、酸素透過と透湿度の関係を図4にプロットした。また、プロットのマークは、褪色の評価の記号で示した。
【0077】
図4を参照すると、実施例1~10と比較例1~5が異なる分布であることが分かった。この分布を解析して、三本の直線(A)~(C)を引いた。
(A)実施例1~10の中から、酸素透過度に対する透湿度の比(透湿度/酸素透過度)の小さい実施例4と実施例9(灰色の丸印)を通過する直線を引いた。この直線は、以下の式(A)であった。
式(A):Y=4.2X+0.68
(B)次に、式(A)をY軸に沿ってスライドし、比較例3を通過する直線を引いた。この直線は、以下の式(B)であった。
式(B):Y=4.2X-1.72
(C)また、式(A)と式(B)の中間となる直線を引いた。この直線は、以下の式(C)であった。
式(C):Y=4.2X-0.52
【0078】
この結果から、酸素透過度(mL/m・day・atm)と透湿度(g/m・day)が以下の式(1)の条件を満たすことにより、褪色が生じなかったと認められる。
Y>4.2X+z 式(1)
(但し、Xは、酸素透過度、Yは、透湿度を表し、zは-1.5である。)
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の包装食品は、高圧処理方法によって滅菌・殺菌処理する被処理物に利用されるものである。特に、被処理物として、肉製品、魚介製品において好適に利用される。
本発明の包装材は、高圧処理方法に使用される被処理物の密封包装に利用されるものである。
本発明の積層体は、高圧処理方法に使用される被処理物の包装材に利用されるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 積層体、2 最外層、3 中間層、4 最内層、10 包装食品、11 包装材、11A 底材、11B 蓋材、12 被包装物

図1
図2
図3
図4