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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071898
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ジャッキ付き支持装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/02 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
E04G5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181016
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】伴 和夫
(72)【発明者】
【氏名】板倉 涼
(57)【要約】
【課題】パイプ製支柱の下端部を支持するジャッキ付き支持装置であり、支持された支柱の軸方向アラインメントを保持させるように規制する支持具を設けた装置を提供する。
【解決手段】地面に接地する接地体(1)と、該接地体から立設され前記支柱の下端部に挿入されるネジ付きの縦軸部材(6)と、該縦軸部材に螺合された状態で前記支柱の下端面を支持する昇降ナット(7)とから構成され、前記縦軸部材(6)は、内径D1が小径とされた第1支柱(13A)と、内径D2が大径とされた第2支柱(13B)に対して、選択的に挿入されるものにおいて、縦軸部材に支持具(18)を着脱自在に設けており、支持具(18)は、縦軸部材(6)の少なくとも上端近傍部の外周面から前記第2支柱(13B)の内周面に向けて突出する規制手段(20)を備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築物を構築するパイプ製支柱の下端部を支持するジャッキ付き支持装置であり、地面に接地する接地体(1)と、該接地体から立設され前記支柱の下端部に挿入されるネジ付きの縦軸部材(6)と、該縦軸部材に螺合された状態で前記支柱の下端面を支持する昇降ナット(7)とから構成され、前記縦軸部材(6)は、内径D1が小径とされた第1支柱(13A)と、内径D2が大径とされた第2支柱(13B)に対して、選択的に挿入されるものにおいて、
前記縦軸部材(6)には、前記第2支柱(13B)の軸方向アライメントを保持するように規制する支持具(18)が着脱自在に設けられており、
前記支持具(18)は、縦軸部材(6)の少なくとも上端近傍部の外周面から前記第2支柱(13B)の内周面に向けて突出する規制手段(20)を備えて成ることを特徴とするジャッキ付き支持装置。
【請求項2】
前記支持具の規制手段(20)は、縦軸部材(6)の外周面の全周にわたり連続的又は断続的に形成されて成ることを特徴とする請求項1に記載のジャッキ付き支持装置。
【請求項3】
前記支持具(18)は、縦軸部材(6)の少なくとも上端近傍部に挿脱自在に外挿される筒部(21)と、縦軸部材(6)の上端に載置される係止部(22)を備えており、
前記筒部(21)により前記規制手段(20)を構成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のジャッキ付き支持装置。
【請求項4】
金属製の筒体(21a)により形成された筒部(21)により前記規制手段(20)を構成し、前記筒体(21a)の上端部の直径方向に架設して固定された架設片(22a)により前記係止部(22)を構成して成ることを特徴とする請求項3に記載のジャッキ付き支持装置。
【請求項5】
金属製の筒体(21b)により形成された筒部(21)により前記規制手段(20)を構成し、前記筒体(21b)の上端部を直径方向に貫通して固定されたピン(22b)により前記係止部(22)を構成して成ることを特徴とする請求項3に記載のジャッキ付き支持装置。
【請求項6】
前記支持具(18)は、前記筒部(21)を構成する筒壁(21c)と前記係止部(22)を構成する上底壁(22c)を一体に備えた倒立カップ体により形成され、前記筒部(21)により前記規制手段(20)を構成して成ることを特徴とする請求項3に記載のジャッキ付き支持装置。
【請求項7】
ネジロッド(6a)により縦軸部材(6)を形成して成る構成において、
前記支持具(18)は、縦軸部材(6)の上端面に載置される円板体(24)と、該円板体を貫通して縦軸部材の上端部に着脱自在に螺入されるボルト(25)を備えており、
前記円板体(24)の外周部により前記規制手段(20)を構成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のジャッキ付き支持装置。
【請求項8】
ネジパイプ(6b)により縦軸部材(6)を形成して成る構成において、
前記支持具(18)は、縦軸部材の上端開口部(12b)から内部に挿入される脚部(26)と、縦軸部材の上端に載置される頭部(27)を備えており、
前記頭部(27)により前記規制手段(20)を構成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のジャッキ付き支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構築物を構築するパイプ製支柱の下端部を支持するジャッキ付き支持装置に関して、支持された支柱の軸方向アラインメントを保持させるように規制する支持具を設けたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、仮設足場において、パイプ製とされた支柱の下端部に挿入される縦軸部材を構成するネジロッドと、該ネジロッドに螺合された状態で前記支柱の下端面を支持する昇降ナットにより構成されたジャッキ付き支持装置が使用されている。前記ナットは、径方向に突設されたハンドルを操作することにより回転させられ、ネジロッドに沿って上下に移動し、支持する支柱の下端面の位置を上下方向に調節可能とする。
【0003】
このようなジャッキ付き支持装置は、地面に接地される接地体を座板により構成し、該座板の上にネジロッドを立設した「ジャッキベース」(例えば特許文献1)として提供されるものや、接地体をキャスタにより構成し、該キャスタの上にネジロッドを立設した「ジャッキ付きキャスタ」(例えば特許文献2)として提供されるものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-95974号公報
【特許文献2】実用新案登録第3096459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
仮設足場等は、間隔をあけて複数本のパイプ製の支柱を立設し、支柱を相互に連結材により連結することにより構築体を構築している。この際、地面には不陸があるので、各支柱の下端面をジャッキ付き支持装置により支持し、上下方向に調節することにより、支柱を相互に同一高さとなるように整合される。
【0006】
一般的に、構築体の移動が不要な場合は、前述のジャッキベースが使用され、構築体の移動が必要な場合は、前述のジャッキ付きキャスタが使用される。
【0007】
ところで、構築体を構築する支柱は、相対的に直径を大小相違する2種類の支柱が存在しているのに対して、ジャッキ付き支持装置は同一構成のものが兼用されている。
【0008】
例えば、本出願人の場合、小径の第1支柱(外径42.7mm、内径37.9mm)と大径の第2支柱(外径48.6mm、内径43.8mm)を保有しているところ、ジャッキ付き支持装置のネジロッドの外径(ネジ山径)は、35.0mmに形成されている。
【0009】
このため、ジャッキ付き支持装置は、第1支柱を支持したときは、支柱の内周面とネジロッドの外周面の間に適切なクリアランス(37.9/2-35.0/2=1.45mm)が形成されるが、第2支柱を支持したときは、支柱の内周面とネジロッドの外周面の間にクリアランスを超える好ましくない隙間(43.8/2-35.0/2=4.4mm)が形成されることになる。
【0010】
このように隙間が生じている場合でも、ジャッキ付き支持装置は、第2支柱の下端をナットにより支持しているので、第2支柱の軸方向アラインメントが鉛直方向に沿って適切に保持され、構築体の全体の垂直荷重を支持することについて、特に問題を生じることはない。
【0011】
しかしながら、前述のような隙間は、ジャッキ付き支持装置と第2支柱の間に横向きの外力が作用したとき、第2支柱の軸方向アラインメントを崩す原因を生成する。例えば、地面の振動を受けることにより、第2支柱が偏位する可能性があるが、特に、ジャッキ付きキャスタの場合、構築体は、キャスタを走行させることにより所望の作業位置に移動させられるので、移動中に第2支柱が偏位する可能性が高くなる。
【0012】
この際、構築体は、多数の支柱のうち、仮に1本の支柱が偏位させられていても、その他の支柱が正常にアラインメントを保持することにより、見かけ上は、構築体の全体に異常はないが、実際は構築体の荷重が全ての支柱により均等に支持されていないので、構築体に歪変形を生じるおそれがある。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑み、支持された支柱の軸方向アラインメントを保持させるように規制する支持具を設けたジャッキ付き支持装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明が手段として構成したところは、構築物を構築するパイプ製支柱の下端部を支持するジャッキ付き支持装置であり、地面に接地する接地体と、該接地体から立設され前記支柱の下端部に挿入されるネジ付きの縦軸部材と、該縦軸部材に螺合された状態で前記支柱の下端面を支持する昇降ナットとから構成され、前記縦軸部材は、内径D1が小径とされた第1支柱と、内径D2が大径とされた第2支柱に対して、選択的に挿入されるものにおいて、前記縦軸部材には、前記第2支柱の軸方向アライメントを保持するように規制する支持具が着脱自在に設けられており、前記支持具は、縦軸部材の少なくとも上端近傍部の外周面から前記第2支柱の内周面に向けて突出する規制手段を備えて成る点にある。
【0015】
この際、前記支持具の規制手段は、縦軸部材の外周面の全周にわたり連続的又は断続的に形成することが好ましい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、前記支持具は、縦軸部材の少なくとも上端近傍部に挿脱自在に外挿される筒部と、縦軸部材の上端に載置される係止部を備えており、前記筒部により前記規制手段を構成している。
【0017】
この際、金属製の筒体により形成された筒部により前記規制手段を構成することができ、前記筒体の上端部の直径方向に架設して固定された架設片により前記係止手段を構成することができる。
【0018】
また、金属製の筒体により形成された筒部により前記規制手段を構成することができ、前記筒体の上端部を直径方向に貫通して固定されたピンにより前記係止手段を構成することができる。
【0019】
更に、前記支持具は、前記筒部を構成する筒壁と前記係止手段を構成する上底壁を一体に備えた倒立カップ体により形成することができ、前記筒部により前記規制手段を構成することができる。
【0020】
本発明の好ましい別の実施形態は、ネジロッドにより縦軸部材を形成して成る構成において、前記支持具は、縦軸部材の上端面に載置される円板体と、該円板体を貫通して縦軸部材の上端部に着脱自在に螺入されるボルトを備えており、前記円板体の外周部により前記規制手段を構成している。
【0021】
本発明の更に好ましい別の実施形態は、ネジパイプにより縦軸部材を形成して成る構成において、前記支持具は、縦軸部材の上端開口から内部に挿入される脚部と、縦軸部材の上端に載置される頭部を備えており、前記頭部により前記規制手段を構成している。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、小径の第1支柱13Aと大径の第2支柱13Bの両方を選択的に支持するために使用されるジャッキ付き支持装置において、第2支柱13Bを支持する際、縦軸部材6に支持具18を設けることにより、縦軸部材6の少なくとも上端近傍部の外周面から第2支柱13Bの内周面に向けて突出する規制手段20を形成し、これにより第2支柱13Bの軸方向アライメントが保持されるように規制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る支持具を備えていない従来のジャッキ付きキャスタに係るジャッキ付き支持装置の1例を示しており、(A)はジャッキ付き支持装置と支柱を分離状態で示す斜視図、(B)はジャッキ付き支持装置により支柱を支持した状態を示す斜視図である。
図2】ジャッキ付き支持装置の縦軸部材と第1支柱及び第2支柱の関係を示す正面図である。
図3】ジャッキ付き支持装置の縦軸部材及び昇降ナットと第1支柱及び第2支柱の関係に関し、(A)は第1支柱を支持した状態を示す断面図、(B)は第2支柱を支持した状態を示す断面図である。
図4】ジャッキ付き支持装置により第2支柱を支持したときの問題を説明しており、(A)は第2支柱のアライメントが保持されている状態を示す断面図、(B)は第2支柱のアライメントが偏位させられた状態を示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る支持具を示し、(A)は斜視図、(B)は断面図、(C)は支持具を装備したジャッキ付き支持装置の断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る支持具を示し、(A)は斜視図、(B)は断面図、(C)は支持具を装備したジャッキ付き支持装置の断面図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る支持具を示し、(A)は中実ロッドにより縦軸部材を形成したジャッキ付き支持装置の斜視図、(B)は支持具の斜視図、(C)は支持具を装備したジャッキ付き支持装置の断面図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る支持具を示し、(A)は中空パイプにより縦軸部材を形成したジャッキ付き支持装置の斜視図、(B)は支持具の斜視図、(C)は支持具を装備したジャッキ付き支持装置の断面図である。
図9】本発明の第5実施形態に係る支持具を示し、(A)は斜視図、(B)は中実ロッドにより縦軸部材を形成したジャッキ付き支持装置に支持具を装備した状態を示す断面図、(C)は中空パイプにより縦軸部材を形成したジャッキ付き支持装置に支持具を装備した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0025】
(ジャッキ付き支持装置の基本的構成)
図1ないし図4は、本発明を実施する前のジャッキ付き支持装置の1例を示しており、地面に接地される接地体1の上に支持ジャッキ装置2が設けられている。
【0026】
図例の場合、ジャッキ付き支持装置は、キャスタ1aにより接地体1を構成した上述のジャッキ付きキャスタを示しており、キャスタ1aは、車輪3を軸支するフォーク4を縦軸廻りに首振り回動自在とするベアリングを内装した上部の固定盤5に支持しており、該固定盤5の上に支持ジャッキ装置2が設けられている。
【0027】
しかしながら、図示省略しているが、ジャッキ付き支持装置は、矩形金属板等から成る座板により接地体1を構成する上述のジャッキベースを採用しても良く、その場合、座板の上に支持ジャッキ装置2が設けられる。
【0028】
支持ジャッキ装置2は、図1(A)に示すように、前記固定盤5から立設されたネジロッド6aから成る縦軸部材6と、該縦軸部材6に螺合された昇降ナット7(以下、単にナットという。)により構成され、ナット7の上面に支持面8を形成している。ナット7は、直径方向に延設されたロッド状のハンドル9を操作することにより回転され、縦軸部材6に沿って昇降される。
【0029】
この際、縦軸部材6は、軸方向の中途部のネジ部を圧潰する等の方法によりストッパ10を形成しており、縦軸部材6の全長のうち、ストッパ10から下側の部位により昇降軸部11を構成してナット7を螺合し、上側の部位により延長軸部12を構成している。従って、ナット7は、昇降軸部11の軸長の範囲で昇降可能であり、延長軸部12に向けて移動不能となるように構成されている。
【0030】
図示のように、仮設足場等の構築体における支柱13は、金属パイプ製とされており、長手方向に間隔をあけてフランジ部材等の緊結部材14を固設している。そこで、前記縦軸部材6は、パイプ製の支柱13の下端部に挿入される外径を備えており、前記ナット7の支持面8は、縦軸部材6に外挿された支柱13の下端面を受止め接支し、これにより支柱13を支持するように形成されている。従って、支柱13の下端面がナット7の支持面8により支持された状態で、少なくとも縦軸部材6の延長軸部12の全長が支柱13の内部に挿入され、支柱13の軸方向アライメントを鉛直方向に保持する。
【0031】
図1(B)に示すように、仮設足場等を構築するとき、所定間隔をあけて列設される支柱13の下端部に支持ジャッキ装置2が装着される。支柱13の下端部に縦軸部材6を挿入した状態で、ハンドル9を操作してナット7を回転させ、縦軸部材6に沿って上下移動させることにより支持面8の高さが調節され、これにより、隣り合う支柱13の高さ位置が整合される。そこで、隣り合う支柱13は、相互に連結材15により連結され、所定の構築体を構築する。連結材15は、端部に設けた連結金具16を支柱13の緊結部材14に対して楔その他の緊結手段17により緊結することにより連結される。
【0032】
キャスタ1aを備えたジャッキ付きキャスタは、構築体を構成する支柱13をそれぞれ支持した状態で、地面を走行することにより、所望の作業位置に移動することができる。
【0033】
(支柱の種類)
ところで、上述のように、構築体を構築する支柱13は、小径とされた第1支柱13Aと、大径とされた第2支柱13Bの2種類が存在しており、これに対して、同一構成のジャッキ付き支持装置が使用される。即ち、第1支柱13A及び第2支柱13Bは、何れも、下端部に前記支持ジャッキ装置2の縦軸部材6が挿入されると共に、ナット7により支持され、構築体を構築する。
【0034】
図2に示すように、縦軸部材6の外径(d)に対して、第1支柱13Aの内径(D1)は、d<D1とされ、第2支柱13Bの内径(D2)は、d<D1<D2とされている。図示実施形態の場合、外径(d)は35.0mm、内径(D1)は37.9mm、内径(D2)は43.8mmとされている。
【0035】
このため、図3(A)に示すように、支持ジャッキ装置2により第1支柱13Aを支持した場合は、第1支柱13Aの内周面と縦軸部材6の外周面の間に適切なクリアランス(t)が形成される。図示実施形態の場合、1.45mm(37.9mm/2-35.0mm/2)のクリアランス(t)が形成され、これにより、第1支柱13Aの軸方向アライメントを鉛直方向に保持することができる。
【0036】
これに対して、図3(B)に示すように、支持ジャッキ装置2により第2支柱13Bを支持した場合は、第2支柱13Bの内周面と縦軸部材6の外周面の間にクリアランスを超える好ましくない隙間(T)が形成される。図示実施形態の場合、4.4mm(43.8mm/2-35.0mm/2)の隙間が形成されることになる。
【0037】
このような隙間(T)が生じている場合でも、図4(A)に示すように、第2支柱13Bの荷重はナット7により支持されているので、第2支柱13Bの軸方向アラインメントを鉛直方向に保持することが可能である。しかしながら、支持ジャッキ装置2と第2支柱13Bの間に横向きの外力が作用したとき、例えば、図4(B)に示すように、キャスタ1aを介して横向きに移動したとき、第2支柱13Bが偏位することにより軸方向アラインメントが崩される。
【0038】
そこで、本発明は、以下のような知見に基づいて、縦軸部材6に支持具18を設けることにより、第2支柱13Bの軸方向アライメントの保持を可能とするものである。
【0039】
即ち、支持ジャッキ装置2の横向き移動に対して、第2支柱13Bは、隙間(T)により単純に横向きに位置ずれを生じるのではなく、図4(B)に示すように、傾斜方向に偏位させられることに注目する必要がある。
【0040】
第2支柱13Bは、鉛直方向に関して、構築体の荷重を受けた状態で下端をナット7に接支しているので、図示のように、下側領域(L)では、第2支柱13Bとナット7の相互間に位置ずれを生じることはほとんどない。ところが、隙間(T)があるため、下側領域(L)よりも上方の領域において、第2支柱13Bを容易に傾動可能とする。
【0041】
この点に関して、第2支柱13Bの傾動は、前記隙間(T)を埋めることにより阻止することが可能であるから、縦軸部材6の延長軸部12の全長にわたりスリーブないしカラーを外挿する構成を考慮することができる。
【0042】
しかしながら、図4(B)に示されるように、第2支柱13Bの傾動を許す隙間(T)は、下側領域(L)に位置している隙間ではなく、縦軸部材6の上端を含む上側領域(H)に位置する隙間であるから、この上側領域(H)において第2支柱13Bの傾動を阻止するように構成することが好ましい。
【0043】
(支持具)
本発明は、上側領域(H)における隙間(T)を処理することにより、第2支柱13Bの軸方向アライメントを保持させるための支持具18を縦軸部材6に設けたものであり、支持具18は、縦軸部材6に簡単に着脱自在ないし係脱自在とされている。従って、支持具18は、支持ジャッキ装置2により第1支柱13Aを支持する際には、不要なものとして縦軸部材6から分離されており、第2支柱13Bを支持するときに縦軸部材6に装備させられる。
【0044】
支持具18は、縦軸部材6の延長軸部12に係脱自在に係止される係止手段19と、延長軸部12の少なくとも上端近傍部の外周面から第2支柱13Bの内周面に向けて突出する規制手段20を備えている。この際、規制手段20は、延長軸部12の外周面の周方向に形成され、全周にわたり連続的又は断続的に形成することが好ましい。
【0045】
(第1実施形態)
図5は、本発明の第1実施形態を示している。支持具18は、延長軸部12の少なくとも上端近傍部に挿脱自在に外挿される筒部21と、延長軸部12の上端に載置される係止部22を備えており、前記筒部21の外周面の全周面にわたり前記規制手段20を構成し、前記係止部22により前記係止手段19を構成している。尚、規制手段20は、筒部21の外周面に溝等を形成することにより、全周面の周方向に断続的に形成しても良い。
【0046】
前記規制手段20を構成する筒部21は、金属製の筒体21aにより形成され、前記係止手段19を構成する係止部22は、前記筒体21aの上端部の直径方向に架設して固定された架設片22aにより形成されている。
【0047】
従って、筒部21を延長軸部12の上端近傍部に外挿させた状態で、係止部22が延長軸部12の上端に載置されることにより、支持具18を脱落しないように係止する。
【0048】
好ましくは、前記筒体21aの内周部に雌ネジ23aを形成することにより、延長軸部12のネジ部(雄ネジ)に螺合させられる固着手段23が設けられている。
【0049】
前記筒部21の外径(d1)は、該筒部21に第2支柱13Bを外挿したとき、適切なクリアランスを生じるように形成されている。クリアランスは、支柱を外挿するときの作業が容易である点と、支柱の軸方向アライメントを保持する点の両方を満足させるためには、1.0mm~2.0mmとすることが好ましく、1.45mmが最も好ましい。
【0050】
従って、例えば、第2支柱13Bの内径(D2)が43.8mmとされているとき、前記外径(d1)は40.9mmとされることが最も好ましく、これにより、1.45mm(43.8mm/2-40.9mm/2)のクリアランスが形成される。
【0051】
そこで、延長軸部12の上端近傍部に支持具18を設けることにより、該延長軸部12に外挿され、ナット7に支持された第2支柱13Bは、筒部21の外周面で形成された規制手段20により軸方向アライメントが鉛直方向に保持され、横向きの外力が作用したときでも、傾動させられることはなく、アライメントを崩すことはない。
【0052】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態を示している。支持具18は、延長軸部12の少なくとも上端近傍部に挿脱自在に外挿される筒部21と、延長軸部12の上端に載置される係止部22を備えており、前記筒部21により前記規制手段20を構成し、前記係止部22により前記係止手段19を構成している。この点は、上述した第1実施形態の場合と同様である。
【0053】
前記規制手段20を構成する筒部21は、金属製の筒体21bにより形成され、前記係止手段19を構成する係止部22は、前記筒体21bの上端部を直径方向に貫通して固定されたピン22bにより形成されている。尚、図例の場合、ピン22bは、スプリングピンを使用することにより、貫通孔に固定されている。
【0054】
従って、筒部21を延長軸部12の上端近傍部に外挿させた状態で、係止部22が延長軸部12の上端に載置されることにより、支持具18を脱落しないように係止する。
【0055】
好ましくは、前記筒体21bの内周部に雌ネジ23bを形成することにより、延長軸部12のネジ部(雄ネジ)に螺合させられる固着手段23が設けられている。
【0056】
前記筒部21の外径(d2)は、該筒部21に第2支柱13Bを外挿したとき、適切なクリアランスを生じるように形成されており、この点は、上記第1実施形態における筒部の外径(d1)について説明したところと同様であるから、上述の説明を援用することにより重複説明を省略する。
【0057】
そこで、延長軸部12の上端近傍部に支持具18を設けることにより、該延長軸部12に外挿され、ナット7に支持された第2支柱13Bは、筒部21の外周面で形成された規制手段20により軸方向アライメントが鉛直方向に保持され、横向きの外力が作用したときでも、傾動させられることはなく、アライメントを崩すことはない。
【0058】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態を示しており、支持ジャッキ装置2を構成する縦軸部材6は、図1ないし図6に示した中実ロッドに雄ネジを設けたネジロッド6aにより形成され、昇降軸部11と延長軸部12を構成し、延長軸部12の上端面にネジ穴12aを形成している。
【0059】
そこで、支持具18は、延長軸部12の上端面に載置される円板体24と、該円板体24を貫通して延長軸部12のネジ穴12aに着脱自在に螺入される頭付きボルト25を備えており、前記円板体24の外周部により前記規制手段20を構成し、前記ボルト25により前記係止手段19と固着手段23を構成している。
【0060】
前記円板体24の外径(d3)は、該円板体24に第2支柱13Bを外挿したとき、適切なクリアランスを生じるように形成されており、この点は、上記第1実施形態における筒部の外径(d1)について説明したところと同様であるから、上述の説明を援用することにより重複説明を省略する。
【0061】
そこで、延長軸部12の上端近傍部に支持具18を設けることにより、該延長軸部12に外挿され、ナット7に支持された第2支柱13Bは、円板体24の外周面で形成された規制手段20により軸方向アライメントが鉛直方向に保持され、横向きの外力が作用したときでも、傾動させられることはなく、アライメントを崩すことはない。
【0062】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態を示しており、支持ジャッキ装置2を構成する縦軸部材6は、上述のネジロッド6aではなく、中空パイプ材に雄ネジを設けたネジパイプ6bにより形成され、昇降軸部11と延長軸部12を構成し、延長軸部12の上端面にパイプの開口部12bを備えている。
【0063】
そこで、支持具18は、延長軸部12の上端の開口部12bから内部に挿入される脚部26と、延長軸部12の上端に載置される頭部27を備えており、前記頭部27により前記規制手段20を構成し、前記脚部26により前記係止手段19を構成している。
【0064】
前記頭部27の外径(d4)は、該頭部27に第2支柱13Bを外挿したとき、適切なクリアランスを生じるように形成されており、この点は、上記第1実施形態における筒部の外径(d1)について説明したところと同様であるから、上述の説明を援用することにより重複説明を省略する。
【0065】
そこで、延長軸部12の上端近傍部に支持具18を設けることにより、該延長軸部12に外挿され、ナット7に支持された第2支柱13Bは、頭部27の外周面で形成された規制手段20により軸方向アライメントが鉛直方向に保持され、横向きの外力が作用したときでも、傾動させられることはなく、アライメントを崩すことはない。
【0066】
(第5実施形態)
図9は、本発明の第5実施形態を示しており、支持具18は、前記筒部21を構成する筒壁21cと前記係止手段19を構成する上底壁22cを一体に備えた倒立カップ体により形成され、前記筒部21により前記規制手段20を構成しており、延長軸部12の上端部に被冠させることにより使用される。
【0067】
従って、支持ジャッキ装置2を構成する縦軸部材6に関して、図9(B)に示すようにネジロッド6aにより形成されている場合と、図9(C)に示すようにネジパイプ6bにより形成されている場合の何れにおいても、支持具18は、該縦軸部材6の延長軸部12の上端部に被冠させることができる。
【0068】
筒部21を構成する筒壁21cの外径(d5)は、筒部21に第2支柱13Bを外挿したとき、適切なクリアランスを生じるように形成されており、この点は、上記第1実施形態における筒部の外径(d1)について説明したところと同様であるから、上述の説明を援用することにより重複説明を省略する。
【0069】
そこで、延長軸部12の上端近傍部に支持具18を設けることにより、該延長軸部12に外挿され、ナット7に支持された第2支柱13Bは、筒部21の外周面で形成された規制手段20により軸方向アライメントが鉛直方向に保持され、横向きの外力が作用したときでも、傾動させられることはなく、アライメントを崩すことはない。
【符号の説明】
【0070】
1 接地体
1a キャスタ
2 支持ジャッキ装置
3 車輪
4 フォーク
5 固定盤
6 縦軸部材
6a ネジロッド
6b ネジパイプ
7 昇降ナット
8 支持面
9 ハンドル
10 ストッパ
11 昇降軸部
12 延長軸部
12a ネジ穴
12b 開口部
13 支柱
13A 第1支柱
13B 第2支柱
14 緊結部材
15 連結材
16 連結金具
17 緊結手段
18 支持具
19 係止手段
20 規制手段
21 筒部
21a 筒体
21b 筒体
21c 筒壁
22 係止部
22a 架設片
22b ピン
22c 上底壁
23 固着手段
23a 雌ネジ
23b 雌ネジ
24 円板体
25 ボルト
26 脚部
27 頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9