(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071936
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】インターライン型CCDイメージセンサ及びこれを用いて移動体を撮像する方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/341 20110101AFI20220510BHJP
H04N 5/3728 20110101ALI20220510BHJP
H04N 5/347 20110101ALI20220510BHJP
【FI】
H04N5/341
H04N5/3728
H04N5/347
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181074
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】300071579
【氏名又は名称】学校法人立教学院
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】亀田 真吾
【テーマコード(参考)】
5C024
【Fターム(参考)】
5C024AX19
5C024CX51
5C024GX03
5C024GY04
5C024GZ24
(57)【要約】
【課題】画素数を減らすことなく高速移動体の撮像を可能にする。
【解決手段】インターライン型CCDイメージセンサ10は、行及び列を形成するように2次元状に配列された複数の露光部12と、露光部12の各列に並列して各々配置された複数の垂直転送路13と、複数の垂直転送路13の一端部に接続されて該垂直転送路から電荷が転送される水平転送路15と、動作プログラム17に従ってCCDイメージセンサを制御するCCDコントローラ11と、を備える。複数の露光部12で露光を行い、露光により露光部に各々蓄積された電荷を垂直転送路13へと転送する動作を、垂直転送路13から水平転送路15に電荷を転送することなく所定の時間間隔で複数回繰り返し実行し、垂直転送路13に繰り返し転送された電荷を所定のタイミングで水平転送路に15転送し、該水平転送路から外部へと出力するように、CCDコントローラ11が露光及び電荷の転送タイミングを制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターライン型CCDイメージセンサであって、
行及び列を形成するように2次元状に配列された複数の露光部と、
前記露光部の各列に並列して各々配置された複数の垂直転送路であって、該複数の垂直転送路には、各列の露光部に蓄積された電荷が各々転送される、前記複数の垂直転送路と、
前記複数の垂直転送路の一端部に接続されて該垂直転送路から電荷が転送される水平転送路であって、該水平転送路は、転送されてきた前記電荷を順次該水平転送路を介して外部へと出力する、前記水平転送路と、
前記複数の露光部、前記垂直転送路及び前記水平転送路を制御する制御部と、
を備え、
前記複数の露光部で露光を行い、露光により該複数の露光部に各々蓄積された電荷を前記垂直転送路へと転送する動作を、前記垂直転送路から前記水平転送路に電荷を転送することなく所定の時間間隔で複数回繰り返し実行し、前記垂直転送路に繰り返し転送された電荷を所定のタイミングで前記水平転送路に転送し、該水平転送路から外部へと出力するように、前記制御部が露光及び電荷の転送タイミングを制御する、インターライン型CCDイメージセンサ。
【請求項2】
前記インターライン型CCDイメージセンサの撮像対象は、移動体である、請求項1に記載のインターライン型CCDイメージセンサ。
【請求項3】
前記所定の時間間隔は、前記移動体の前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面上の各々の領域が重複しない時間間隔に設定される、請求項2に記載のインターライン型CCDイメージセンサ。
【請求項4】
前記所定の時間間隔は、前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面上で隣接して撮像される前記移動体の各々の領域が部分的に重複するように設定される、請求項2に記載のインターライン型CCDイメージセンサ。
【請求項5】
前記所定のタイミングは、前記移動体が前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面から出ていくタイミングに設定される、請求項2から4のいずれか1項に記載のインターライン型CCDイメージセンサ。
【請求項6】
前記所定のタイミングは、前記動作の繰り返し回数が所定値に達したときである、請求項2から4のいずれか1項に記載のインターライン型CCDイメージセンサ。
【請求項7】
前記移動体は、フライバイ時の太陽系天体である、請求項2から6のいずれか1項に記載のインターライン型CCDイメージセンサ。
【請求項8】
前記制御部は、前記所定の時間間隔及び前記所定のタイミングの少なくともいずれかを調整可能に構成されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のインターライン型CCDイメージセンサ。
【請求項9】
インターライン型CCDイメージセンサを用いて移動体を撮像する方法であって、
前記インターライン型CCDイメージセンサは、
行及び列を形成するように2次元状に配列された複数の露光部と、
前記露光部の各列に並列して各々配置された複数の垂直転送路と、
前記複数の垂直転送路の一端部に接続された水平転送路と、
を備え、
前記方法は、
前記複数の露光部で露光を行い、露光により該複数の露光部に各々蓄積された電荷を前記垂直転送路へと転送する動作を、前記垂直転送路から前記水平転送路に電荷を転送することなく複数回繰り返し実行する、多重露光工程と、
前記垂直転送路に繰り返し転送された電荷を所定のタイミングで前記水平転送路に転送する転送工程と、
前記水平転送路に転送されてきた前記電荷を順次該水平転送路を介して外部へと出力する、出力工程と、
を備える、方法。
【請求項10】
前記多重露光工程において、
前記所定の時間間隔が、前記移動体の前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面上の各々の領域が重複しない時間間隔に設定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記多重露光工程において、
前記所定の時間間隔は、前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面上で隣接して撮像される前記移動体の各々の領域が部分的に重複するように設定される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記転送工程において、
前記所定のタイミングは、前記移動体が前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面から出ていくタイミングに設定される、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記転送工程において、
前記所定のタイミングは、前記動作の繰り返し回数が所定値に達したときである、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記移動体は、フライバイ時の太陽系天体である、請求項9から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記所定の時間間隔及び前記所定のタイミングの少なくともいずれかは、前記移動体の想定される速度及び軌道と、前記インターライン型CCDイメージセンサに装着された光学系の焦点距離とに基づいて、予め設定される、請求項9から14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターライン型CCDイメージセンサ及びこれを用いて移動体を撮像する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像素子の技術開発が飛躍的に進み、多画素かつ高速の読み出しが可能なイメージセンサが開発され、CMOSイメージセンサによって数百万画素で毎秒数百枚の撮像が可能となっている。これにより、比較的高速で移動する物体についてもブレのない像を得ることができるようになってきた。
【0003】
しかし、非常に高速で移動する小天体のフライバイ時の撮像などでは、毎秒数百枚よりさらに多い毎秒数千枚の画像を、数百万画素の検出面全体に渡って取得することが必要となるが、現時点では数百万画素で毎秒1000枚程度の撮像は困難である。このため、CMOSイメージセンサによる高速撮像のためには画素数を減らす必要がある。また、高速撮像では消費電力が増大するため、例えば宇宙探査機からの撮像等、電力が限られる状況には不向きである。
【0004】
一方、イメージセンサとしてCMOS以外にもインターライン型CCDが知られている。インターライン型CCDでは、露光を行った際に露光部に蓄積した電荷を垂直転送路に転送し、さらに水平転送路に転送し、各画素の電荷数を順番に読み出し、それが完了してから次の露光を開始することで画像データを順次得ることができる。このようにインターライン型CCDでは全画素の露光を行った後、垂直転送路及び水平転送路に順次転送して全画素の電荷の読み出しを行うため、1度の露光に、一定の時間がかかることになる。
【0005】
このインターライン型CCDイメージセンサを用いて高速移動体を撮像する技術が提案されている(以下、特許文献1参照)。特許文献1に記載の技術は、インターライン型CCDにおいて、受光部の撮像間隔時間Δtを、移動体の移動速度で水平方向1行分の行撮像領域が垂直方向一行分だけ移動する移動時間に合わせ、各撮像タイミングで取得した受光部の信号電荷を、垂直方向に1行づつずらしながら加算することによって、同一の領域に対する信号電荷が増幅された重複撮像画像を取得し、所定の重複撮像回数の撮像の後、重複撮像画像を読み出す、というものである。
【0006】
特許文献1に記載の技術によれば、連続する行撮像領域で重複撮像した画像を取得することができ、これによって、S/N比が高い画像を得にくい高速移動体の画像のS/N比を向上させることが可能となる。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術においてインターライン型CCDイメージセンサの撮像間隔時間Δtを最小時間間隔にしたときでさえも、移動体が1行分を超えて移動するほど高速で移動している場合には、当該技術を適用することができなくなる。また、移動体像が検出面上にある状況から撮像を開始する必要があり、高速移動体の正確な位置が不明な場合には、当該技術を適用することが困難となる。このような高速移動の状況及び正確な位置が不明な状況は、例えば小天体の高速フライバイ観測では、容易に起こり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事実に鑑みなされたもので、画素数を減らすことなく高速移動体の容易な撮像を可能にしたインターライン型CCD、並びに、該インターライン型CCDを用いて移動体を撮像する方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のインターライン型CCDイメージセンサは、行及び列を形成するように2次元状に配列された複数の露光部と、前記露光部の各列に並列して各々配置された複数の垂直転送路であって、該複数の垂直転送路には、各列の露光部に蓄積された電荷が各々転送される、前記複数の垂直転送路と、前記複数の垂直転送路の一端部に接続されて該垂直転送路から電荷が転送される水平転送路であって、該水平転送路は、転送されてきた前記電荷を順次該水平転送路を介して外部へと出力する、前記水平転送路と、前記複数の露光部、前記垂直転送路及び前記水平転送路を制御する制御部と、を備え、前記複数の露光部で露光を行い、露光により該複数の露光部に各々蓄積された電荷を前記垂直転送路へと転送する動作を、前記垂直転送路から前記水平転送路に電荷を転送することなく所定の時間間隔で複数回繰り返し実行し、前記垂直転送路に繰り返し転送された電荷を所定のタイミングで前記水平転送路に転送し、該水平転送路から外部へと出力するように、前記制御部が露光及び電荷の転送タイミングを制御する。
【0011】
前記インターライン型CCDイメージセンサの撮像対象は、移動体であってもよい。この場合、前記所定の時間間隔は、好ましくは、前記移動体の前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面上の各々の領域が重複しない時間間隔に設定される。或いは、前記所定の時間間隔は、前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面上で隣接して撮像される前記移動体の各々の領域が部分的に重複するように設定されていてもよい。
【0012】
好ましくは、前記所定のタイミングは、前記移動体が前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面から出ていくタイミングに設定される。また、前記所定のタイミングは、前記動作の繰り返し回数が所定値に達したときであってもよい。
【0013】
例えば、前記移動体は、フライバイ時の太陽系天体である。
好ましくは、前記制御部は、前記所定の時間間隔及び前記所定のタイミングの少なくともいずれかを調整可能に構成されている。
【0014】
本発明の別の態様に係るインターライン型CCDイメージセンサを用いて移動体を撮像する方法は、前記インターライン型CCDイメージセンサが、行及び列を形成するように2次元状に配列された複数の露光部と、前記露光部の各列に並列して各々配置された複数の垂直転送路と、前記複数の垂直転送路の一端部に接続された水平転送路と、を備えるものであり、前記方法は、前記複数の露光部で露光を行い、露光により該複数の露光部に各々蓄積された電荷を前記垂直転送路へと転送する動作を、前記垂直転送路から前記水平転送路に電荷を転送することなく複数回繰り返し実行する、多重露光工程と、前記垂直転送路に繰り返し転送された電荷を所定のタイミングで前記水平転送路に転送する転送工程と、前記水平転送路に転送されてきた前記電荷を順次該水平転送路を介して外部へと出力する、出力工程と、を備える。
【0015】
好ましくは、前記多重露光工程において、前記所定の時間間隔が、前記移動体の前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面上の各々の領域が重複しない時間間隔に設定される。或いは、前記多重露光工程において、前記所定の時間間隔は、前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面上で隣接して撮像される前記移動体の各々の領域が部分的に重複するように設定されていてもよい。
【0016】
好ましくは、前記転送工程において、前記所定のタイミングは、前記移動体が前記インターライン型CCDイメージセンサの検出面から出ていくタイミングに設定される。或いは、前記転送工程において、前記所定のタイミングは、前記動作の繰り返し回数が所定値に達したときであってもよい。
【0017】
例えば、前記移動体は、フライバイ時の太陽系天体である。
好ましくは、前記所定の時間間隔及び前記所定のタイミングの少なくともいずれかは、前記移動体の想定される速度及び軌道と、前記インターライン型CCDイメージセンサに装着された光学系の焦点距離とに基づいて、予め設定される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るインターライン型CCDイメージセンサの概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係インターライン型CCDイメージセンサを、一例として太陽系小天体のフライバイ観測に適用した際の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るインターライン型CCDイメージセンサの動作の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、従来のインターライン型CCDイメージセンサを用いて高速移動体を撮像したときの画像と、本発明の一実施形態に係るインターライン型CCDイメージセンサを用いて高速移動体を撮像したときの画像との比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1には、本発明の本発明の一実施形態に係る、インターライン型CCDイメージセンサ10の概略構成図が示されている。インターライン型CCDイメージセンサ10は、複数の露光部12を備えている。各々の露光部12は、フォトダイオード若しくはMOS構造のダイオード等から構成され、制御された露光時間の間に光が各々の露光部12に照射されると光電変換により電荷が発生し、該電荷は露光部2自身の接合容量等に蓄積される。複数の露光部12は、水平方向に並んで1~m行を各々形成すると共に、垂直方向に並んで1~n列を各々形成しており、m×n個の露光部12が全画素として2次元状に配列されている。m×n個の露光部12によりカバーされる範囲がインターライン型CCDイメージセンサ10の検出面を画定する。
【0020】
また、インターライン型CCDイメージセンサ10は、露光部12の第1~n列の各々に並列に各々配置された複数の垂直転送路13と、露光部12の列と当該列に対応する垂直転送路13との間に各々配置されたトランスファゲート14とを備えている。トランスファゲート14は読み出しパルスを受け取ると、ゲートを開放し、これによって露光部12に蓄積された電荷はトランスファゲート14を通って垂直転送路13に転送される。垂直転送路13は、垂直シフトレジスタであり、各列の露光部12から転送されてきた電荷を保持すると共に、垂直転送パルスを受け取ると垂直方向に順次、電荷を転送する。
【0021】
さらに、インターライン型CCDイメージセンサ10は、複数の垂直転送路13の一端部に接続された水平転送路15と、画像データ出力部16とを備えている。水平転送路15は、水平シフトレジスタであり、水平転送パルスを受け取ると、各列の垂直転送路13から順次転送されてきた各行分の電荷を水平転送路15を通して画像データ出力部16へと転送出力する。
【0022】
またさらに、インターライン型CCDイメージセンサ10はCCDコントローラ11を備えている。CCDコントローラ11は、上述した露光部12の露光制御を行うと共に、メモリに格納された動作プログラム17に従って、読み出しパルス、垂直転送パルス及び水平転送パルスを送信することによりトランスファゲート14、垂直転送路13及び水平転送路15の電荷転送タイミングを制御する。
【0023】
図2には、本実施形態に係るインターライン型CCDイメージセンサ10を、一例として太陽系小天体のフライバイ観測に適用した際の概略図が示されている。
図2に示されるように、本実施形態に係るインターライン型CCDイメージセンサ10は、探査機30の内部に配置された撮像装置20内に設けられている。撮像装置20は、光学レンズ21を備えており、探査機30は、撮像装置20を含む探査機全体を制御する探査機コントローラ31を備えている。
【0024】
光学レンズ21の焦点距離等の情報は、探査機コントローラ31に伝達されており、探査機コントローラ31は、光学レンズ21の焦点距離と、インターライン型CCDイメージセンサ10の検出面のサイズとに基づいて、撮像装置20の画角を計算し、撮像装置20の視野範囲22を決定することができる。光学レンズ21の焦点距離が一定の場合には、探査機コントローラ31のメモリに、事前に視野範囲22の情報が記憶されていてもよい。
【0025】
探査機コントローラ31は、探査機30と相対速度Vで移動する小天体40(例えば、小惑星等)が撮像装置20の視野範囲22に入ってくるタイミングで、CCDコントローラ11(
図1)に撮影開始の指示を送信することができる。このとき、インターライン型CCDイメージセンサ10の感度、フルウェルキャパシティ等の情報も、探査機コントローラ31に伝達され、探査機コントローラ31は、小天体40の輝度情報から、インターライン型CCDイメージセンサ10の露光時間を決定しておくことができる。CCDコントローラ11は、撮影開始の指示を受信すると、動作プログラム17に従って撮像を開始するようにCCDイメージセンサ10を制御する。
【0026】
探査機コントローラ31は、小天体40が撮像装置20の視野範囲22から出ていくタイミングで、CCDコントローラ11(
図1)に撮影終了の指示を送信する。CCDコントローラ11は、撮影終了の指示を受信すると、動作プログラム17に従って撮像を終了するようにCCDイメージセンサ10を制御する。
【0027】
小天体40までの距離が非常に遠い場合は、光学レンズ21の焦点位置は、無限遠相当に固定されていてもよい。或いは、小天体40が光学レンズ21の焦点深度内に収まるように光学レンズ21が調整される。
【0028】
次に、
図3のフローチャートを用いて本実施形態に係るインターライン型CCDイメージセンサ10の動作プログラム17に従った動作の流れを説明する。
図3に示されるように、先ず撮影回数を示すパラメータSを1に初期化し(ステップ100)、S回目の露光制御(ステップ102)を開始する。露光制御は、探査機コントローラ31から送られてきた露光時間又はCCDコントローラ11に予め記憶された露光時間だけ、全画素の露光部12を露光するように行われる。これによって、露光部12に電荷が蓄積される。
【0029】
露光が完了すると、CCDコントローラ11からトランスファゲート14へ読み出しパルスを出力することにより、第1~n列の露光部12に蓄積されていた電荷を、対応する垂直転送路13に転送する(ステップ104)。
【0030】
次に、撮像を完了するべき所定のタイミングであるかが判定される(ステップ106)。所定のタイミングの詳細については後述する。通常、s=1の第1回目の撮像の場合には、まだ撮像を完了するタイミングではないので、ステップ106で否定判定され、次のステップ108に移行する。
【0031】
次のステップ108では、s回目の露光開始から所定の時間間隔Δtが経過したかが判定され、Δtが経過するまで待機する(ステップ108否定判定)。所定の時間間隔Δtが経過したと判定されると(ステップ108肯定判定)、撮影回数sを1インクリメントし(ステップ110)、ステップ102に戻り、s=2の2回目の露光制御を開始する。
【0032】
従って、所定のタイミングとなるまで(ステップ106肯定判定)、所定の時間間隔Δtで複数回に亘り、露光部12の露光並びに露光部12から垂直転送路13への電荷の転送(ステップ102~ステップ110)とが繰り返し実行される。従来のインターライン型CCDイメージセンサと大きく異なる点は、垂直転送路13から水平転送路15への電荷の転送が行われることなく、露光部12の露光並びに露光部12から垂直転送路13への電荷の転送とが複数回実行される点である。これによって、本実施形態に係るCCDイメージセンサ10では、垂直転送路13に、撮像対象(例えば小天体40)の画像を表す信号電荷が多重に蓄積されていくことになる。撮像対象が小天体40であれば、高速で移動しているため、時間間隔Δtを適宜選択することによって、小天体40の画像同士が重なり合うことなく、また背景も暗い宇宙空間であるため、複数の明瞭な小天体の画像を取得することができる。この点に関し、本発明は、1回の露光の間に、小天体が検出面上で1行移動する時間間隔で露光部から垂直転送路へと電荷を転送しつつ加算処理する特許文献1の技術とは、本来の目的が本質的に異なり、構成及び効果も異なっていることが理解できる。
【0033】
所定のタイミングと判定された場合(ステップ106肯定判定)、第1~n列の垂直転送路13に蓄積されていた多重露光の撮像対象の電荷を出力する処理に移行する。すなわち、撮影画像の行番号であるkを最後の行番号であるmに設定し(ステップ112)、第1~n列の垂直転送路13の各行の電荷を1行分垂直方向にシフトすると共に(ステップ114)、撮影画像のk行目の電荷、すなわち最初の時点では垂直転送路13の最後のm行目の電荷を水平転送路15へと転送する(ステップ118)。これらの転送動作が行われると、撮影画像のm行目の電荷が水平転送路15に蓄積され、撮影画像のr行目の電荷(r=1、2、…m-1)が第1~n列の垂直転送路13のr+1行目に蓄積された状態となる。
【0034】
そこで、水平転送路15に蓄積されている撮影画像のk=m行目の全電荷を出力部16へと転送して出力する(ステップ118)。この転送出力動作が完了すると、撮影画像の行番号kが1であるか判定する(ステップ120)。現時点ではk=mであるため(ステップ120否定判定)、kを1だけデクリメントしてk=m-1とし(ステップ122)、ステップ114~118を再度実行することにより、撮影画像のm-1行目の電荷を垂直転送路13から水平転送路15へと、水平転送路15から出力部16へと転送する。
【0035】
ステップ114~122の転送動作をk=1となるまで(ステップ120肯定判定)、繰り返し実行して撮像が完了する。これによって、m×n個の全画素を出力部16から出力することができる。
図2のシステムの場合、出力部16から出力された画像信号は、探査機コントローラ31へと送られる。
【0036】
以上が、本実施形態に係るインターライン型CCDイメージセンサ10の動作の流れであるが、
図3のステップ106の所定のタイミングとして、撮像する移動体がインターライン型CCDイメージセンサ10の検出面から出ていくタイミングに設定されていてもよい。例えば、
図2の撮像装置20が小天体40を撮像する場合、探査機コントローラ31が事前に小天体40の軌道を予測し、光学レンズ21の視線方向及び焦点距離情報から小天体40が視野範囲22を外れる時間を計算し、当該時間となったらCCDコントローラ11に所定のタイミングに達したことを通知するようにしてもよい。また、探査機コントローラ31が、小天体40の予測された速度Vと所定の時間間隔Δtとに基づいて、移動体の画像を所定回数F撮像できることを事前に計算しておき、ステップ106で、撮像回数sが所定回数Fに達したときに、ステップ102~110の多重露光処理から出るようにしてもよい。
【0037】
或いは、小天体40の正確な位置が不明であり、撮像装置20の視野を横切るタイミングの事前決定が困難な場合、早いタイミングで撮像開始し、所定回数Fを速度Vと時間間隔Δtとから決まる回数よりも多く設定することで長時間にわたり撮像を繰り返すようにしてもよい。これによって、その長い撮像時間の間に小天体が視野を横切れば、小天体の複数画像の撮像が可能となる。
【0038】
次に本発明の実施形態の作用効果を説明する。
図4には、高速移動体(小天体40)の像が検出面上を非常に短い時間t(例えば1m秒)で通過する状況(
図4の左図参照)が示されている。この短時間tの間にインターライン型CCDを用いて撮像する状況を考える。
【0039】
従来の読み出し方式では、短時間の露光を行い、露光完了後に垂直転送路に電荷を転送した後、垂直転送路から水平転送路に電荷を転送し、電荷を順番に読み出し、それが完了してから次の露光を開始していた。しかし、全画素分の電荷の読み出しには長い時間がかかるため、従来の読み出し方式のCCDイメージセンサの場合、
図4の中央図に示されるように、たとえ毎秒1000枚の撮像能力があり、1秒間に合計1000枚を連続撮影したとしても、そのうちの高々1枚しか移動体の像を取得することができなかった。
【0040】
これに対して、本発明の実施形態では、露光完了後に垂直転送路13に電荷を転送した後、水平転送路15には電荷転送を行わずに、再度露光を行い、垂直転送路13に電荷を転送する。この2回の露光の間に、撮像対象である高速移動体が検出器上でのその大きさ以上に移動していれば、2つの像は重ならず、高速で2枚の撮像を行うことができる。必要に応じて、この動作を複数回行い、撮像対象が視野外に外れてから、水平転送路15に電荷を転送し、全画素の電荷を読み出すようにすればよい。
【0041】
本発明の実施形態によれば、全画素を読み出す時間よりはるかに短い時間で、さらに全画素に渡って画像を取得することが可能となり、短時間で高速移動体の像を複数捉えることが可能となる。よって、
図4の右図に示されるように、本実施形態では、より短時間の間に撮像を繰り返す(例えば毎秒10000回)ことができるために、ごく短時間での移動体の像の変化を捉えることが可能となる。これによって、移動体の軌道のみならず回転等の挙動も容易に把握することが可能となる。
【0042】
また、CMOSイメージセンサを使用した場合、高速撮像時には低速時より大きな電力が必要になるが、本実施形態では消費電力はほとんど増加しないという顕著な効果を奏する。
【0043】
本発明の実施形態は高速移動体の撮像に特に有効であり、例えば太陽系天体の高速フライバイ観測時に用いられる。フライバイ観測時には、非常に高速で天体が視野内を横切るため、高速撮像機能が必要となるが、従来技術では充分広い視野・画素数では充分な速度で撮像を行うことができず、また、高速撮像を続けることが電力的にも困難である。本発明では、消費電力を抑え、非常に短い時間間隔で、高速移動体の撮像を行うことが可能となる。その他にも、地上でも高速移動体の検出、形状取得に重要な技術となる。
【0044】
以上が、本発明の一実施形態であるが、本発明は上記例にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で任意好適に変更可能である。
例えば、撮像対象として、小天体40等の移動体を例に挙げたが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述のように地上を移動する物体にも適用可能である。さらには、本発明は、サイズや形状等が高速で変動する物体の多重露光画像の取得にも適用可能である。すなわち、重心が動かない状態で高速で変形する物体に本発明を適用することによって、その変化を捉えることが可能となる。このため、本発明における「移動体」には、重心が移動するものだけではなく、その一部が位置を移動させるという広義の意味で、形状を変化させるものも含まれている。
【0045】
また、
図3の処理の流れは、任意好適に変更可能である。例えば
図3のステップ108の所定の時間間隔Δtとして、移動体のインターライン型CCDイメージセンサの検出面上の各々の領域が重複しない時間間隔に設定されていた。しかし、本発明は、この例に限定されるものではなく、各々の領域が部分的に重複されていてもよい。さらに、所定の時間間隔Δtは、移動体の検出面上のサイズに応じて、重複の有無に関わらず、一定の画素数だけ離れるように、例えばインターライン型CCDイメージセンサ10の検出面上で隣接して撮像される移動体の各々の領域が露光部12の2行分以上又は2列分以上離れるように設定されていてもよい。さらには、撮像の間に、所定の時間間隔Δtを一定値ではなく変化させることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 インターライン型CCDイメージセンサ
11 CCDコントローラ
12 露光部
13 複数(第1~n列)の垂直転送路
14 トランスファゲート
15 水平転送路
16 画像データの出力部
17 動作プログラム
20 撮像装置
21 光学レンズ
22 視野範囲
30 探査機
31 探査機コントローラ
40 太陽系内の小天体(高速移動体)