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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071944
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】振動制御装置及び振動制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20220510BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/00 310F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181087
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【弁理士】
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】河野 賢司
(72)【発明者】
【氏名】中島 文彬
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AA24
(57)【要約】
【課題】振動振幅量が過大になることによる不具合の発生を防ぐ。
【解決手段】アンプより入力されるオーディオ信号に応じて振動体を振動させる音響発生装置の振動を制御する振動制御装置を、オーディオ信号に応じた音響発生装置の振動に対して制動力を作用させる第一の制動信号及び第二の制動信号を生成する生成部と、生成された第一の制動信号及び第二の制動信号をアンプに出力する出力部と、を備える構成とする。この構成において、第一の制動信号と第二の制動信号は、互いに逆極性の信号である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンプより入力されるオーディオ信号に応じて振動体を振動させる音響発生装置の振動を制御する振動制御装置であって、
前記オーディオ信号に応じた前記音響発生装置の振動に対して制動力を作用させる第一の制動信号及び第二の制動信号を生成する生成部と、
生成された第一の制動信号及び第二の制動信号を前記アンプに出力する出力部と、
を備え、
前記第一の制動信号と前記第二の制動信号は、互いに逆極性の信号である、
振動制御装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記オーディオ信号を逆相に変換する変換部を含み、
前記第一の制動信号は、前記オーディオ信号の同相信号であり、
前記第二の制動信号は、前記変換部により変換された前記オーディオ信号の逆相信号である、
請求項1に記載の振動制御装置。
【請求項3】
前記生成部は、前記第一の制動信号及び前記第二の制動信号のもととなる前記オーディオ信号を所定の低周波数帯域にフィルタリングするローパスフィルタを含み、
前記第一の制動信号は、前記フィルタリング後のオーディオ信号の同相信号であり、
前記第二の制動信号は、前記フィルタリング後のオーディオ信号の逆相信号である、
請求項2に記載の振動制御装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記第一の制動信号及び前記第二の制動信号のもととなる前記オーディオ信号を所定の比率で減衰させる減衰部を含み、
前記第一の制動信号は、前記減衰後のオーディオ信号の同相信号であり、
前記第二の制動信号は、前記減衰後のオーディオ信号の逆相信号である、
請求項2又は請求項3に記載の振動制御装置。
【請求項5】
前記音響発生装置は、入力信号に応じて相対的に振動するボイスコイルと磁石とを有し、
前記音響発生装置に対して入力信号がないときの、前記ボイスコイルに対する磁石の位置を基準位置とし、
前記磁石は、前記オーディオ信号が前記ボイスコイルに流れると、前記基準位置に対して、第一方向と、前記第一方向とは反対の第二方向と、に交互に振動し、
前記減衰部は、前記第一方向への振動振幅と前記第二方向への振動振幅が同じになるように、前記第一の制動信号のもととなる前記オーディオ信号を第一の比率で減衰させ、前記第二の制動信号のもととなる前記オーディオ信号を第二の比率で減衰させる、
請求項4に記載の振動制御装置。
【請求項6】
前記第一の制動信号を前記アンプへ伝送する第一の信号線と、前記第二の制動信号を前記アンプへ伝送する第二の信号線と、を備え
前記変換部は、前記第一の信号線と前記第二の信号線の一方を正相接続し、前記第一の信号線と前記第二の信号線の他方を逆相接続したものである、
請求項2から請求項5の何れか一項に記載の振動制御装置。
【請求項7】
アンプより入力されるオーディオ信号に応じて振動体を振動させる音響発生装置の振動を制御する振動制御プログラムであって、
前記オーディオ信号に応じた前記音響発生装置の振動に対して制動力を作用させる第一の制動信号及び第二の制動信号を生成するステップと、
生成された第一の制動信号及び第二の制動信号を前記アンプに出力するステップと、
を含み、
前記第一の制動信号と前記第二の制動信号は、互いに逆極性の信号である、
コンピュータに実行させる振動制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動制御装置及び振動制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカやエキサイタ等の音響発生装置において、ダンパ等のサスペンションパーツのスティフネスが大きい場合、ボイスコイルに対する磁石の振動量(別の観点では、磁石に対するボイスコイルの振動量)が抑制されるため、低域の再生限界周波数(すなわち最低共振周波数f0)を低くすることが難しい。そこで、サスペンションパーツの薄型化やサスペンションパーツを低弾性率材で形成してサスペンションパーツのスティフネスを小さくすることによって、ボイスコイルと磁石とを大きく振動させられるように構成することが知られている(例えば特許文献1参照)。このように構成することで、低域の再生限界周波数を低くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-229173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サスペンションパーツのスティフネスを小さくした構成において、例えば低域を大音量で再生すると、ボイスコイルと磁石とが過大な振幅で振動する。これにより、例えば、ボイスコイルが巻き付けられたボビンとヨーク等の磁気回路とが接触して損傷するといった不具合が発生する虞がある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑み、振動振幅量が過大になることによる不具合の発生を防ぐことができる、音響発生装置の振動を制御する振動制御装置及び振動制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る振動制御装置は、アンプより入力されるオーディオ信号に応じて振動体を振動させる音響発生装置の振動を制御する装置であり、オーディオ信号に応じた音響発生装置の振動に対して制動力を作用させる第一の制動信号及び第二の制動信号を生成する生成部と、生成された第一の制動信号及び第二の制動信号をアンプに出力する出力部とを備える。第一の制動信号と第二の制動信号は、互いに逆極性の信号である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態に係る振動制御装置及び振動制御プログラムによれば、振動振幅量が過大になることによる不具合の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るオーディオシステムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るエキサイタの概略構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る音響処理装置に備えられるMPU(Micro Processing Unit)の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る音響処理装置に備えられるMPUが実行する振動制御プログラムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用可能な振動制御装置を備えるオーディオシステムについて説明する。なお、以下の説明において、共通の又は対応する要素については、同一又は類似の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るオーディオシステム1の構成を示すブロック図である。本実施形態において、オーディオシステム1は、例えば車両に設置される。なお、オーディオシステム1は、車両に限らず、住宅等の建物に設置されたものとしてもよい。
【0011】
図1に示されるように、オーディオシステム1は、プレーヤ10、音響処理装置20及びエキサイタ30を備える。なお、図1では、本実施形態の説明に必要な主たる構成要素を図示しており、例えば音響処理装置20として必須な構成要素である筐体など、一部の構成要素については、その図示を適宜省略する。
【0012】
プレーヤ10は、音源より取得したオーディオ信号Sを再生する。音源は、例えば、CD(Compact Disc)、SACD(Super Audio CD)等のディスクメディアや、HDD(Hard Disk Drive)、USB(Universal Serial Bus)等のストレージメディアである。
【0013】
音響処理装置20は、MPU21(コンピュータ)、パワーアンプ22及びHMI(Human Machine Interface)23を備える。
【0014】
図1に示されるように、プレーヤ10により再生されたオーディオ信号Sは、MPU21に入力される。詳しくは後述するが、MPU21は、パワーアンプ22より入力されるオーディオ信号に応じて振動体40を振動させるエキサイタ30の振動を制御する振動制御装置として動作するものであり、入力されたオーディオ信号Sをパワーアンプ22に出力するとともに、オーディオ信号Sをもとに制動信号S1(第一の制動信号)及び制動信号S2(第二の制動信号)を生成してパワーアンプ22に出力する。
【0015】
なお、パワーアンプ22は、3チャンネルのアンプであり、3本の信号線SL0~SL2でMPU21と接続されている。信号線SL0は、オーディオ信号SをMPU21からパワーアンプ22へ伝送する。信号線SL1(第一の信号線)は、制動信号S1をMPU21からパワーアンプ22へ伝送する。信号線SL2(第二の信号線)は、制動信号S2をMPU21からパワーアンプ22へ伝送する。
【0016】
本実施形態では、振動制御装置として動作するMPU21は、車両に設置された音響処理装置20の一部であるが、本発明の構成はこれに限らない。MPU21は、持ち運び可能な装置に内蔵されたものであってもよい。例示として、MPU21は、スマートフォン、フィーチャフォン、PHS(Personal Handy phone System)、タブレット端末、ノートPC、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機等の携帯型端末に内蔵された装置であってもよい。この場合、MPU21とプレーヤ10は、例えば有線ケーブルや無線で接続される。MPU21とパワーアンプ22も同様に、有線ケーブルや無線で接続される。
【0017】
HMI23は、車両に搭乗するオペレータと音響処理装置20とが情報をやり取りするためのインタフェースであり、具体的には、タッチパネルディスプレイ及びその周りに配置されたメカニカルキー、リモートコントローラ等である。HMI23は、オペレータがボリューム調整(音量調整)を行うための操作手段を含む。例えば、オペレータは、タッチパネルディスプレイに表示されたボリューム調整用アイコンやリモートコントローラに設けられたボリューム調整用ボタンを操作することによってボリューム設定値を変更することができる。
【0018】
パワーアンプ22は、例えば増幅率が可変な可変ゲインアンプである。パワーアンプ22は、HMI23に対する操作によって設定されたボリューム設定値に応じた増幅率でオーディオ信号S、制動信号S1及びS2を増幅して、エキサイタ30に出力する。なお、音響処理装置20の電源オン時には、ボリューム設定値として、音響処理装置20の前回の電源オフ直前に設定されていた値が設定される。以下、便宜上、パワーアンプ22にて増幅されたオーディオ信号S、制動信号S1、S2を、それぞれ、オーディオ信号S’、制動信号S1’、S2’と記す。
【0019】
図2は、エキサイタ30の概略構成を示す図である。エキサイタ30は、振動体40にネジ止め等で固定されている。振動体40は、例えば鉄系材料やアルミニウム系材料で形成された金属製の板であり、車両の構造物にネジ止め等で固定されている。なお、振動体40の主な役割は、エキサイタ30の振動を車両の構造物に伝達することである。振動体40の材料は、エキサイタ30の振動を車両の構造物に効率よく伝達させられるものであればよく、金属に限定されるものではない。
【0020】
オーディオ信号S’に応じたエキサイタ30の振動は、振動体40及び車両の構造物に伝達されて、振動体40及び車両の構造物を振動させる。これにより、車両の搭乗者は、音源の楽曲等を聴くことができる。振動体40が固定される車両の構造物は、例えば、座席の座面やヘッドレスト、ドア、天井、インストルメントパネル、ヘッダパネルである。なお、図2の説明では、便宜上、振動体40側を上側とし、エキサイタ30側を下側とする。
【0021】
図2に示されるように、エキサイタ30は、フレーム31、ダンパ32、外側ヨーク33、永久磁石34、内側ヨーク35、ボビン36、ボイスコイル37、37S1及び37S2を備える。
【0022】
外側ヨーク33及び内側ヨーク35は、磁性材料を用いて形成されており、エキサイタ30の駆動時に発生する磁束の通り道である磁気回路を構成する。具体的には、外側ヨーク33は、円筒状の側壁部33aと、側壁部33aの下端側の円形開口を塞ぐ底部33bとが一体に形成されたものである。底部33bの上面には、円盤状に形成された永久磁石34が接着等により固定されている。内側ヨーク35は、永久磁石34と同じく円盤状に形成されており、永久磁石34の上面に接着等により固定されている。永久磁石34及び内側ヨーク35は、底部33b上に配置されることにより、全周に亘り側壁部33aの内周面に囲われている。
【0023】
内側ヨーク35の外径は、側壁部33aの内径よりも小さい。そのため、内側ヨーク35の外周面と側壁部33aの内周面との間には、内側ヨーク35の全周に亘りクリアランスdがある。クリアランスdには、円筒状のボビン36の一部分(ボビン36の下半部程度)が配置されている。クリアランスdに位置するボビン36の一部分には、ボイスコイル37、37S1及び37S2が巻き付けられている。
【0024】
各ボイスコイル37、37S1及び37S2は、ニクロム線やエナメル線等の導線をボビン36の外周に螺旋状に巻き付けたものである。本実施形態では、各ボイスコイル37、37S1及び37S2は、ボビン36に2層巻きで巻き付けられている。より詳細には、ボイスコイル37がボビン36の外周に直に巻き付けられ、ボイスコイル37S1がボイスコイル37の外周に巻き付けられ、ボイスコイル37S2がボイスコイル37S1の外周に巻き付けられている。
【0025】
本実施形態では、3つのボイスコイル37、37S1及び37S2をボビン36の径方向に重ねて配置しているが、本発明の構成はこれに限らない。3つのボイスコイル37、37S1及び37S2は、それぞれがボビン36の軸方向にずれた位置でボビン36の外周に直に巻き付けられてもよい。すなわち、3つのボイスコイル37、37S1及び37S2は、ボビン36の軸方向に並べて配置されてもよい。本実施形態のように、3つのボイスコイル37、37S1及び37S2をボビン36の径方向に重ねて配置した構成では、側壁部33aの高さ寸法やボビン36の軸方向の長さ寸法を抑えることができる。これに対し、3つのボイスコイル37、37S1及び37S2をボビン36の軸方向に並べて配置した構成では、側壁部33aの径方向の寸法を抑えることができる。
【0026】
本実施形態では、各ボイスコイル37、37S1及び37S2がボビン36に2層巻きで巻き付けられているが、本発明の構成はこれに限らない。各ボイスコイル37、37S1及び37S2は、1層巻き又は3層巻き以上の構成としてもよい。
【0027】
フレーム31は、外側ヨーク33の上方で各部(具体的には、外側ヨーク33、永久磁石34、内側ヨーク35、ボビン36及びボイスコイル37、37S1及び37S2)を覆うように、外側ヨーク33よりも外径の大きい円形の皿状に形成されている。フレーム31は、振動体40にネジ止め等で固定されており、その上面が振動体40と面接触している。すなわち、エキサイタ30は、フレーム31が振動体40に固定されている。
【0028】
フレーム31の下面には、下方に突出する円環状の凸部31aが形成されている。凸部31aの外径は、ボビン36の内径と略同径となっている。凸部31aの外周面にボビン36の上端部36aの内周面が嵌められている。ボビン36の上端部36aは、ボビン36の内周面又は凸部31aの外周面に塗布された接着剤により凸部31aに接着されている。
【0029】
フレーム31の外縁部には、下方に突出する脚部31bが形成されている。脚部31bの先端部には、ダンパ32が接着等により固定されている。ダンパ32は、外側ヨーク33の外周で略渦巻き状に延設されており、全体として外側ヨーク33の外周を取り巻く円環状となっている。ダンパ32は、最も内側の渦巻き部分が外側ヨーク33の外周面に設けられた段部33cに接着等により固定されている。すなわち、ダンパ32を介して、フレーム31と外側ヨーク33とが連結されている。
【0030】
エキサイタ30の第一部分(外側ヨーク33、永久磁石34及び内側ヨーク35)と第二部分(フレーム31、ボビン36、ボイスコイル37、37S1及び37S2)とが柔らかいダンパ32を介して連結されることにより、第一部分と第二部分とが相対的に振動できるようになっている。なお、ダンパ32の表面は、平坦な面に形成されてもよく、また、波状に形成されてもよい。この表面形状に応じてダンパ32のスティフネスが変わる。例えば平坦な面よりも波状の面である方がダンパ32のスティフネスは小さくなる。
【0031】
サスペンションパーツであるダンパ32は、スティフネスが小さくなるように、上記の如く渦巻き状に延設された形状となっており、また、表面が波状に形成されたり薄型に形成されたりしている。また、ダンパ32は、スティフネスが小さくなるように、例えば、混紡糸で織った布をフェノール樹脂等の熱硬化性種子を含侵して形成されたものとなっている。ダンパ32は、混紡糸に代えて、メタ系アラミド繊維のCONEX(登録商標:帝人株式会社)を用いて形成されてもよい。CONEXを用いた場合も混紡糸を用いた場合と同様に、ダンパ32のスティフネスを小さくすることができる。
【0032】
ボイスコイル37にオーディオ信号S’が流れると、ボイスコイル37と永久磁石34との相互作用により、オーディオ信号S’の周波数に応じた振動が生じ、この振動がボビン36を介してフレーム31に伝達され、更に、フレーム31の上面に面接触した振動体40及び振動体40が固定された車両の構造物に伝達される。振動体40及び車両の構造物が振動することにより、音源の楽曲等が車室内に流れる。
【0033】
本実施形態では、MPU21により振動が制御される音響発生装置としてエキサイタ30を例示するが、本発明の構成はこれに限らない。音響発生装置は、入力信号に応じて相対的に振動するコイルと磁石とを有し、この振動でコーン紙等の振動体を振動させるスピーカであってもよい。すなわち、音響発生装置は、エキサイタ30の如く自身が振動体を備えないものであってもよく、また、コーン紙等の振動体を自身が備えるものであってもよい。
【0034】
本実施形態では、ダンパ32のスティフネスを小さくしたことにより、例えば低域を大音量で再生すると、ボイスコイル37と永久磁石34とが過大な振幅で振動する。これにより、例えば、ボイスコイル37が巻き付けられたボビン36と磁気回路をなす外側ヨーク33とが接触して損傷するといった不具合が発生する虞がある。また、ボイスコイル37と永久磁石34との振幅量が過大になると、ダンパ32にかかる負荷が増大するため、ダンパ32の耐久性が低下するといった不具合も懸念される。
【0035】
そこで、本実施形態では、次に説明する振動制御プログラムを実行することにより、ボイスコイル37と永久磁石34との振動に対して制動信号S1’及びS2’を用いた電気的な制動をかけて、ボイスコイル37と永久磁石34との過大な振動を抑制する。過大な振動を抑制することにより、上記の不具合の発生を防ぐことができる。
【0036】
図3は、MPU21の構成を示すブロック図である。図3に示されるように、MPU21は、LPF(Low Pass Filter:ローパスフィルタ)部211、逆相変換部212及び減衰部213を備える。
【0037】
図4は、MPU21が実行する振動制御プログラムを示すフローチャートである。図4に示されるように、LPF部211は、プレーヤ10より入力されるオーディオ信号Sを所定の低周波数帯域にフィルタリングする(ステップS101)。逆相変換部212は、LPF部211にてフィルタリングされたオーディオ信号Sを逆相に変換する(ステップS102)。減衰部213は、LPF部211にてフィルタリングされたオーディオ信号Sを第一の比率で減衰することによって制動信号S1を生成するとともに、逆相変換部212にて変換された逆相信号を第二の比率で減衰することによって制動信号S2を生成する(ステップS103)。すなわち、MPU21は、オーディオ信号Sの同相信号である制動信号S1を生成するとともに、オーディオ信号Sの逆相信号である制動信号S2を生成する。
【0038】
MPU21は、プレーヤ10より入力されるオーディオ信号S並びにステップS103にて生成された制動信号S1及びS2をパワーアンプ22に出力する(ステップS104)。なお、各信号S、S1、S2を同期したタイミングで出力するため、MPU21に遅延回路が備えられていてもよい。
【0039】
エキサイタ30に対して入力信号がないときの、ボイスコイル37に対する永久磁石34の位置(図2に示される永久磁石34の位置)を、永久磁石34の基準位置とする。オーディオ信号S’がボイスコイル37に流れると、永久磁石34は、基準位置に対して第一方向(図2の矢印A1方向)と、矢印A1方向とは反対の第二方向(図2の矢印A2方向)とに交互に振動する。
【0040】
なお、別の観点では、上記の振動動作は、オーディオ信号S’がボイスコイル37に流れると、ボイスコイル37がその基準位置(すなわち、エキサイタ30に対して入力信号がないときの、ボイスコイル37の位置)に対して矢印A1方向と矢印A2方向とに交互に振動する、と表現してもよい。
【0041】
また、制動信号S1’、S2’がそれぞれボイスコイル37S1、37S2に流れる(言い換えると、互いに逆極性の信号が流れる)ことにより、互いに逆向きのローレンツ力が発生して、ボイスコイル37と永久磁石34との相対的な振動を抑制する作用が働く。すなわち、相反する一対の極性の信号を一対のボイスコイルに供給することにより、オーディオ信号S’に応じたボイスコイル37と永久磁石34との振動に対して制動力が作用する。そのため、ボイスコイル37と永久磁石34との過大な振動を抑制されて、上記の不具合の発生が防がれる。
【0042】
このように、MPU21は、ステップS102において、オーディオ信号Sを逆相に変換する変換部として動作し、ステップS103において、オーディオ信号S’に応じたボイスコイル37と永久磁石34との振動に対して制動力を作用させる制動信号S1’及びS2’を生成する生成部として動作し、ステップS104において、制動信号S1及びS2をパワーアンプ22に出力する出力部として動作する。
【0043】
本実施形態において、オーディオ信号Sはモノラル信号である。これに対し、オーディオ信号SがLとRの2チャンネルのステレオ信号である場合、制動信号S1’と制動信号S2’が異なるチャンネルのオーディオ信号Sをもとに生成されると、制動信号S1’と制動信号S2’とが逆相にはならない。そのため、この場合は、Lチャンネルのオーディオ信号SとRチャンネルのオーディオ信号Sとをミックスしたモノラル信号を生成し、このモノラル信号をもとに制動信号S1’と制動信号S2’が生成される。同じ信号をもとに制動信号S1’と制動信号S2’が生成されるため、制動信号S1’と制動信号S2’とが逆相になる。
【0044】
エキサイタ30は、ある周波数帯域(例えば800Hz)までピストンモードで振動し、この周波数帯域を超えると分割振動モードで振動する。ピストンモードでは、ボイスコイル37と永久磁石34との振動の振幅量が大きくなるので、大音量時に上記の不具合が発生しやすい。これに対し、分割振動モードでは、ボイスコイル37と永久磁石34との振動の振幅量が大きくなりにくいので、大音量時であっても上記の不具合が発生しにくい。そのため、振動モードが分割振動モードとなる周波数帯域の振動に対しては、制動信号S1’及びS2’による制動力を作用させる必要性が低い。
【0045】
そこで、LPF部211は、オーディオ信号Sを、振動モードがピストンモードとなる上記の周波数帯域にフィルタリングする。これにより、オーディオ信号S’により、振動モードがピストンモードとなる周波数に応じた振動が生じたときだけ、制動信号S1’及びS2’による制動力がボイスコイル37と永久磁石34との振動に対して作用する。このように、制動信号S1’及びS2’を全周波数帯域でなく低周波数帯域に制限した信号とすることにより、ボイスコイル37S1及び37S2へ流れる電流が減り、ボイスコイル37S1及び37S2の発熱量が減る。
【0046】
本実施形態において、オーディオ信号Sを逆相に変換する逆相変換部212は、例えば、PK分割型位相反転回路であり、また、ムラード型位相反転回路であってもよい。
【0047】
なお、逆相変換部212は、上記の如くオーディオ信号Sを電気的に逆相に変換するものに限らない。別の実施形態では、電気的な手段である逆相変換部212に代えて、信号線SL1と信号線SL2の一方を正相接続し、信号線SL1と信号線SL2の他方を逆相接続した構成を採用してもよい。
【0048】
この構成によれば、LPF部211でのフィルタリング処理と減衰部213での減衰処理が施された信号が信号線SL1及びSL2に入力される。逆相変換処理が施されていない信号が信号線SL2に入力されるため、この時点では、両信号線に入力される信号は同相である。正相接続された一方の信号線を伝送された信号は、オーディオ信号Sと同相の制動信号としてパワーアンプ22に入力される。逆相接続された他方の信号線を伝送された信号は、オーディオ信号Sと逆相の制動信号としてパワーアンプ22に入力される。すなわち、機械的な手段により、オーディオ信号Sを逆相に変換する変換部が実現されてもよい。
【0049】
減衰部213は、LPF部211にてフィルタリングされたオーディオ信号Sを第一の比率で減衰するアッテネータ213Aと、逆相変換部212にて変換された逆相信号を第二の比率で減衰するアッテネータ213Bを有する。
【0050】
ここで、磁気回路は、例えば外側ヨーク33と内側ヨーク35とが異なる形状であるため、磁気回路の上部と下部で磁束の流れ方が異なる。また、磁場は自然対流に影響を及ぼす。各ボイスコイル37、37S1及び37S2に電流が流れると、発生した磁場によって磁気回路の周囲で空気の流れ(言い換えると大気圧)が変わり、例えば磁気回路の上方と下方とで大気圧が異なったものとなる。これらの理由から、基準位置に対する永久磁石34の、矢印A1方向への振幅量と矢印A2方向への振幅量が同じにはならない。すなわち、振動振幅の対称性がない。振動振幅の対称性がないほど歪を含むような音が再生されてしまう。
【0051】
そこで、アッテネータ213Aとアッテネータ213Bは異なる比率で信号を減衰する。一例として、基準位置に対する永久磁石34の、矢印A2方向への振幅量が矢印A1方向への振幅量よりも大きく、制動信号S1’がボイスコイル37S1に流れたときに矢印A1方向のローレンツ力が発生し、制動信号S2’がボイスコイル37S2に流れたときに矢印A2方向のローレンツ力が発生するものとする。この場合、アッテネータ213Aの第一の比率がアッテネータ213Bの第二の比率よりも大きい値に設定される(例えば第一の比率、第二の比率がそれぞれ80%、60%)。これにより、制動信号S1’は、制動信号S2’よりもレベルが高い信号となり、強い制動力を作用させるものとなる。この結果、基準位置に対する永久磁石34の、矢印A1方向への振幅量と矢印A2方向への振幅量とを同じにすることができる。
【0052】
なお、上記の第一及び第二の比率は、固定値でなくフィードバック制御で可変してもよい。例えば、通電時におけるボイスコイル37や37S1、37S2の発熱の影響で外側ヨーク33や内側ヨーク35の透磁率が変化することがある。この透磁率の変化の影響を受けて磁気回路内の磁束の流れ方が変わると、振動振幅の対称性も変化する。そこで、例えば、温度センサによって外側ヨーク33や内側ヨーク35の温度を検出し、検出された温度に基づいて第一の比率と第二の比率の少なくとも一方の値を変更してもよい。
【0053】
オーディオ信号S’のボリューム(言い換えると、パワーアンプ22の増幅率)を上げると、ボイスコイル37と永久磁石34との振動の振幅量も大きくなり、ボビン36と外側ヨーク33との接触による損傷やダンパ32にかかる負荷の増大によるダンパ32の耐久性の低下等の不具合の発生が懸念される。そこで、本実施形態では、オーディオ信号S’のボリュームを上げると、制動信号S1’及びS2’もパワーアンプ22にて増幅されるようになっている。すなわち、オーディオ信号S’のボリュームを上げると、制動信号S1’及びS2’による制動力も強くなるため、ボイスコイル37と永久磁石34との振動が過大になることが防がれる。
【0054】
また、オーディオ信号S’のボリュームを下げると、制動信号S1’及びS2’に対するパワーアンプ22の増幅率も下がる。すなわち、オーディオ信号S’のボリュームが小さい(言い換えると、ボイスコイル37と永久磁石34との振動の振幅量が小さい)場合には、制動信号S1’及びS2’による制動力も弱くなる。そのため、制動力が強すぎることによってボイスコイル37と永久磁石34とが振動しないといった不都合の発生が避けられる。
【0055】
制動信号S1’がオーディオ信号S’の同相信号で制動信号S2’がオーディオ信号S’の逆相信号であるため、音が急激に変わる場合(例えば瞬間的な音を出す場合)にも、制動信号S1’及びS2’がこれに追従して瞬間的に変わるため、オーディオ信号S’に応じた振動に対して適正な制動力が作用する。
【0056】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0057】
上記の実施形態では、オーディオ信号S’の同相信号と逆相信号(すなわち制動信号S1’と制動信号S2’)を用いてボイスコイル37と永久磁石34との振動に対して電気的な制動をかけているが、本発明の構成はこれに限らない。別の実施形態では、互いに逆相となる一対の正弦波信号を用いてボイスコイル37と永久磁石34との振動に対して電気的な制動をかけてもよい。また、これら制動信号は振幅が変化する信号に限らない。更に別の実施形態では、極性が互いに逆の0Hzの信号(例えば定電圧+3Vの信号と定電圧-3Vの信号)を用いてボイスコイル37と永久磁石34との振動に対して電気的な制動をかけてもよい。
【0058】
減衰部213による減衰率(上記の第一及び第二の比率)を変えることによって制動信号S1’及びS2’による制動力を変えると、この制動力が電磁的なダンパのように作用することから、振動系の支持部分のスティフネスが変わることとなり、結果、低域の再生限界周波数(すなわち最低共振周波数f0)が変わる。すなわち、この減衰率を調整することにより、最低共振周波数f0を任意の値に調整することができる。なお、最低共振周波数f0と振動系の支持部分のスティフネスとの関係は次式により示される。
【0059】
s: 振動系の支持部分のスティフネス
M: 振動系の等価質量
【0060】
ここで、例えば共振周波数が40Hzのヘッダパネルにエキサイタ30及び振動体40を固定する場合を考える。この場合、最低共振周波数f0が30Hzや50Hzでは、エキサイタ30がヘッダパネルを効率的に振動させることが難しい。そこで、最低共振周波数f0が40Hzとなるように、減衰部213による減衰率を変える。このように減衰率を変えて最低共振周波数f0を40Hzに調整することにより、エキサイタ30の振動によってヘッダパネルに共振を発生させることができる。これにより、ヘッダパネルが効率的に振動して高い音圧を確保することができる。
【0061】
エキサイタ30が固定される構造物の共振周波数は、構造物の種類や車種によって変わる。エキサイタ30が固定される構造物の共振周波数に合わせて例えばエキサイタ30のメーカが減衰部213による減衰率を変えることにより、一製品のエキサイタ30を何れの車種の何れの構造物に固定した場合にも、構造物を効率的に振動させることができ、高い音圧を確保することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 :オーディオシステム
10 :プレーヤ
20 :音響処理装置
21 :MPU
22 :パワーアンプ
23 :HMI
30 :エキサイタ
31 :フレーム
32 :ダンパ
33 :外側ヨーク
34 :永久磁石
35 :内側ヨーク
36 :ボビン
37S1S2 :ボイスコイル
40 :振動体
211 :LPF部
212 :逆相変換部
213 :減衰部
213A :アッテネータ
213B :アッテネータ
図1
図2
図3
図4