(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071947
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ゲル状洗浄剤作製キット
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20220510BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220510BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220510BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220510BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20220510BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220510BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20220510BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20220510BHJP
C11D 3/22 20060101ALI20220510BHJP
C11D 1/02 20060101ALI20220510BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q19/10
A61Q5/02
A61K8/73
A61K8/60
A61K8/44
A61K8/36
C11D17/08
C11D3/22
C11D1/02
C11D3/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181092
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】河内 洋一
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC532
4C083AC712
4C083AC782
4C083AD042
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB05
4C083CC23
4C083CC38
4C083DD06
4C083DD22
4C083DD41
4C083DD42
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE10
4C083FF05
4H003AB03
4H003AB10
4H003AB31
4H003AC03
4H003AD04
4H003BA15
4H003DA02
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB09
4H003EB16
4H003EB41
4H003ED02
4H003FA07
4H003FA28
4H003FA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な成形性を実現するために、成形型への追随性が良好でエアがみの少ない、家庭でも簡単に製造できるゲル状洗浄剤作製キットを提供する。さらには、泡弾力や泡もちに優れ、安全性が高く、変色や離漿がなく経時安定性に優れ、使用性に優れる組成物を提供する。
【解決手段】ゲル状洗浄剤を得るためのキットであって、第一剤が、(A)洗浄剤及び(B)キシログルカン0.5質量%~3質量%及び(C)水を含有するゾル状組成物であり、第二剤が、(D)糖類を含有することを特徴とし、さらに重量比(D)/(B)が15~122であるゲル状洗浄剤作製キット。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル状洗浄剤を得るためのキットであって、
第一剤が、
成分(A):洗浄剤
成分(B):キシログルカンが、第一剤中に0.5質量%~3.0質量%
成分(C):水
を含有する、20℃での粘度が50~12000mPa・sのゾル状組成物であり、
第二剤が
成分(D):糖類
を含有することを特徴とし、
第一剤と第二剤を混合後のゲル状洗浄剤中における質量比(D)/(B)が15~122であるゲル状洗浄剤作製キット。
【請求項2】
皮膚及び/又は毛髪を洗浄するために使用される、請求項1に記載のゲル状洗浄剤作製キット。
【請求項3】
さらに第一剤のpHが8以上の場合、第二剤の成分(D)は非還元糖及び糖アルコールから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のゲル状洗浄剤作製キット。
【請求項4】
成分(A)がアニオン性界面活性剤であり、
成分(D)がショ糖、ソルビトール、マルチトールから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする
請求項1~請求項3いずれかに記載のゲル状洗浄剤作製キット。
【請求項5】
さらに第一剤に増粘剤及び/又は金属イオン封鎖剤
を含む請求項1~請求項4いずれかに記載のゲル状洗浄剤作製キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡単にゲル状洗浄剤を作製するためのキットであり、第一剤が洗浄剤およびキシログルカンを含有する常温でゾル状の組成物であり、第二剤が糖類を含有する組成物であり、少なくとも該2剤を加熱混合することで均一にゲル化することを特徴とするキットに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、家庭内で過ごす時間が増えた人が多くなり、簡易的に作製できるグッズ、製品のニーズが高まっている。一方、ゲル状洗浄剤は独特の高級感があり、中でも透明性の高いものは、共に配合するパール剤の輝きが映えるなど市場で高く評価されている。そのような背景の中、家庭でもゲル状洗浄剤を手軽に製作したいという要望がある。しかしながら、ゲル状洗浄剤を、一般家庭などで簡単な操作で原料を計量し加熱溶解して型に流し込んで製作するということは実現困難であった。
【0003】
ゲル状洗浄剤は、皮膚や毛髪の汚れを除去し健やかに保つ目的で使用される。洗浄成分としては、アニオン性、両性又は非イオン性界面活性剤が用いられる。
【0004】
従来ゲル状の洗浄剤が公知であり(特許文献1、特許文献2)、いずれも洗浄剤とキシログルカン(タマリンドガム)と多価アルコールを配合することでゲル状洗浄剤としたものである。キシログルカンの形成するゲルは、独特の弾性を有し、使用時に柔らかい感触で肌に優しい。ところが開示された組成物は経時により離漿を生じやすい。さらに高温でもゲルが形成されているため充填時に気泡を含み(エアがみ)やすく、成形時に脱泡が難しく不透明になりやすい。
さらにキシログルカンを用いたゲル状洗浄剤として、特許文献3の実験例38~43に、キシログルカン、糖類を含有する洗浄剤ゲルで、水溶性高分子を配合することで離漿を低減できるという技術がしめされている。しかし実施例の組成物では、離漿を完全に防げる量の水溶性高分子を配合したため、高温でも強くゲル化しているため、非常に脱泡がしにくい組成物であり高粘度で充填が難しい。また、糖類を用いたゲルは高温条件下でカラメル化やメイラード反応等による着色の懸念があった。
【0005】
以上の技術については当然、工場生産として製造設備を駆使して、生産条件を管理することで初めて製造可能となるが、一般家庭などで簡単な操作で原料を計量し加熱溶解して型に流し込んで製作することは従来の技術では実現困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-147455号公報
【特許文献2】特開2016-190874号公報
【特許文献3】特開2014-47179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、工場のように特段の設備や生産条件を厳密に管理しなくても家庭でも簡単に製造できるゲル状洗浄剤作製キットを実現することを課題とした。特に、簡単な成形性を実現するために、成形型への追随性が良好でエアがみの少ない点を課題とした。さらには、泡弾力や泡もちに優れ、安全性が高く、変色や離漿がなく経時安定性に優れ、使用性に優れる組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者が、鋭意研究した結果、ゲル状洗浄剤を得るためのキットであって、第一剤が、(A)洗浄剤及び(B)0.5質量%~3.0質量%のキシログルカン及び(C)水を含有するゾル状組成物であり、20℃での粘度が50~12000mPa・sであり、第二剤が、(D)糖類を含有することを特徴とし、さらに第一剤と第二剤を混合後のゲル状洗浄剤中における質量比(D)/(B)が15~122であるゲル状洗浄剤作製キットとすることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゲル状洗浄剤キットは家庭内でも簡便に使用することができ、ゾル状で脱泡性の良い第一剤と、ゲル化剤である第二剤を混合し加熱溶解することで、脱泡機などの特殊な設備を使用しなくても、成形型への追随性が良好で、エアがみの少ないゲル状の洗浄剤を作製することができる。さらに泡弾力や泡もちに優れ、安全性が高く、変色や離漿がなく経時安定性に優れ、使用性に優れる組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳しく説明する。なお、特段注釈のない限り、以下で成分の配合量は、すべて質量%である。
【0011】
本発明において「ゾル状」とは、洗浄剤溶液が流動性を有する状態であることを指し、「ゲル状」とは、洗浄剤溶液が流動性を有さない状態であることを指す。
【0012】
本発明において「流動性がある」とは、液状であることと同義とする。具体的には液体/固体判別試験規格「ASTM D 4359-90:Standard Test Method for Determining Whether a Material is a Liquid or Solid」により液状と判別されるものを「流動性がある」とする。
【0013】
本発明において、洗浄剤がゲル化したかどうかは以下の方法で確認する。
<サンプル作製方法>
第一剤と第二剤を加熱溶解したのち、流動性がある状態で、直径30mmφのAS製円筒状ジャー容器に、20mmの厚さになるように流し込み放冷した後、20度のインキュベーターで6時間以上保管する。
<ゲル化の有無の判定方法>
ジャー容器からプラスチック製シャーレの上に出して、1分間置いたときに、洗浄剤組成物が流動していないものを「ゲル化している」と判定する。
【0014】
本発明で言う「離漿」とは、液状成分がゲルの外部に滲出する現象であり、具体的には、ゲル状洗浄剤の上部や成形型との間に液状の洗浄剤成分が分離する現象である。離漿が生じることで容器から取り出したときに、液状成分がこぼれたりするので使用性に問題が出たり、保管中にゲルの固さが大きく変化したり、組成中が不均一になるため離漿の発生は望ましくない。
【0015】
本発明で見出された特徴として、第二剤中に成分(D)を含むことによる離漿の改善効果、脱泡の容易化効果、及び均一なゲル化が挙げられる。第二剤で成分(D)の代わりにグリセリンなどの液状多価アルコールを配合した場合、第一剤と第二剤を混合しゲル化させた場合には保管時に離漿が観察されるのに対し、成分(D)を用いた場合には、離漿しないという効果が見出された。そのことにより、通常離漿を防止するために配合される増粘剤等の安定化剤を極力減らすことができる。したがって第一剤の粘度を低くすることができるため第一剤と第二剤を混合するときのエアがみを少なくすることが可能となり、脱泡装置を使用しなくてもエアが抜けやすくなる。さらに、仮に第二剤で成分(D)の代わりに液状多価アルコール類を配合した場合、第一剤と混合した直後から固いゲルができるため均一なゲルができにくいのに対し、成分(D)を配合した場合ゲル化の初期段階での強度を弱くすることができる。そのため第一剤と第二剤の混合時に均一なゲルになりやすい。
【0016】
本発明に用いる(A)洗浄剤は、洗浄料に洗浄効果を付与するために用いられる成分であり、例えば、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。特にアニオン性界面活性剤が好適に使用される。本発明では、下記に列挙される洗浄成分のうち、少なくとも1種が配合される。
【0017】
アニオン性界面活性剤としては、通常、皮膚や頭髪の洗浄料に配合され得るものであれば特に限定されず、脂肪酸塩、高級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N-アシルアミノ酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、リン酸エステル塩、高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩、高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0018】
脂肪酸塩に用いられる脂肪酸としては、通常、皮膚洗浄料に配合され得るものであれば特に限定されず、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の炭素数12~22の脂肪酸等を例示することができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。炭素数12~22の脂肪酸のうち、好ましくは炭素数12~18の脂肪酸が挙げられ、更に好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられ、更により好ましくは、ラウリン酸、ミリスチン酸が挙げられる。天然油脂のうち、好ましくは植物性油脂が挙げられ、特に、ヤシ油が好ましく、かかる油脂由来の脂肪酸として、特に、ヤシ油脂肪酸が挙げられる。
【0019】
脂肪酸塩の塩としては、油脂や脂肪酸をアルカリ剤でケン化又は中和した、アルカリ金属塩や有機アミン塩等を例示することができる。用いられるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリが挙げられる。
【0020】
これらの脂肪酸塩は、必ずしも最初から塩の形のものを配合する必要はなく、脂肪酸と塩基を独立に配合し、処方系の中で、脂肪酸塩を形成させてもよい。
【0021】
高級アルキル硫酸エステル塩としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等が挙げられる。アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えば、POEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。N-アシルアミノ酸塩としては、例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイル-β-アラニンナトリウム、ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム等が挙げられる。高級脂肪酸アミドスルホン酸塩としては、例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。リン酸エステル塩としては、例えばPOEステアリルエーテルリン酸、POEラウリルアミドエーテルリン酸ナトリウム等が挙げられる。高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩としては、例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩等が挙げられる。高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩としては、例えば、ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、カゼインナトリウム等が挙げられる。中和剤ととして用いられるアルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリやモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリが挙げられる。
【0022】
両性界面活性剤としては、通常、皮膚洗浄料に配合され得るものであれば特に限定されず、例えば、スルホベタイン型両性界面活性剤、アルキルベタイン型両性界面活性剤、アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリニウムベタイン型両性界面活性剤、アミンオキシド型両性界面活性剤等種々のものを用いることができる。
【0023】
スルホベタイン型としては、例えば、N-アルキル-N,Nジメチルアンモニウム-N-プロピルスルホン酸、N-脂肪酸アミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニウム-N-(2-ヒドロキシプロピル)スルホン酸塩等が挙げられる。アルキルベタイン型としては、例えば、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルベタイン等が挙げられる。アミドプロピルベタイン型としては、例えば、コカミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。イミダゾリニウムベタイン型としては、例えば、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N-ラウロイル-N’-カルボキシメチル-N’-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、等が挙げられる。アミンオキシド型両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルアミンオキシド、ラウラミドプロピルアミンオキシド等が挙げられる。
【0024】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい。)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸-N-メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、N-長鎖アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。これらの中でも洗浄力を向上させる効果が良好なことから、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物等のポリアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0025】
洗浄成分の含有量は、本発明の最終製品である成形後のゲル状洗浄料全量に対して、1~30質量%が好ましく、5~20質量%が更に好ましい。
【0026】
本発明に用いる成分(B)キシログルカンは、グルコース及びキシロースを構成糖とする非イオン系の多糖類であり、グルコースがβ-1,4結合した主鎖に、側鎖としてキシロースが結合した基本構成を有している。
【0027】
キシログルカンは、天然物由来のキシログルカンであり、その分子量が、5万~100万程度である。かかる高分子キシログルカンは、例えば、エンドウ、ダイズ、ポプラ、イネ、タケノコといった高等植物の細胞壁や、タマリンド種子等から抽出することによって得ることができる。また、キシログルカンは、植物組織から水を用いて抽出したり、水で抽出困難な場合にはアルカリ水溶液を用いて抽出することができるが、より容易に抽出することができるという観点から、水で抽出可能か否かによらず、アルカリ水溶液を用いて抽出することが好ましい。
【0028】
かかる抽出によって得られたキシログルカンは、必要に応じて、アルコール沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性の差やアフィニテイーの差等を利用した各種のクロマトグラフィー等により、さらに精製してもよい。
【0029】
タマリンド種子由来のキシログルカン(タマリンド種子キシログルカン)は、市販品(例えば、DSP五協フード&ケミカル社製:グリロイド、グリエイト)として入手したものを用いることができる。具体的には、市販で入手容易な〔商品名「グリロイド6C」、「グリロイド2A」、「グリロイド3S」大日本住友製薬社製(表示名:タマリンドガム)があげられる。
【0030】
また、前記キシログルカンは、複数種類の植物に由来するキシログルカンの、混合物であってもよい。
【0031】
前記キシログルカンの配合量は、第一剤であるゾル状組成物中の0.5質量%~3.0質量%の範囲であり、好ましくは1.0質量%~2.0質量%である。この配合量が、前記第一剤のゾル状組成物中に0.5質量%未満であると、出来上がりのゲル状洗浄剤組成物のゲル強度が低く、保型性を有することが困難となる傾向にあり、一方、3.0質量%を超えると、第一剤の粘度が高くなり過ぎて、エアがみが多くなり成形時に泡がなくならなかったり、所望の形状に成形することが困難となる傾向にある。第一剤中のキシログルカンの配合量が、0.5質量%以上であることによって、出来上がりのゲル状洗浄剤組成物のゲル強度が充分に高くなる。第一剤中のキシログルカンの配合量を3.0質量%以下することによって、第一剤と第二剤を混合した時の粘度が高くなり過ぎることを抑制して、成形時のエアがみを少なくすることができ、所望の形状に成形し易くすることができる。本発明のキットを用いて作製したゲル状洗浄剤組成物では、たとえば第一剤と第二剤を混合した最終のゲル状組成物中の濃度として0.3質量%~2.0質量%に調整することが好ましく所望の効果を得ることができる。
【0032】
さらに第一剤である洗浄剤ゾル組成物の20℃での粘度を50~12000mPa・sにすることでエアがみを少なくすることができ成形性が向上する。
【0033】
本発明の(C)水は、水溶性成分の溶媒である。第一剤のゾル状態を保ち、第二剤との混合を容易にする目的で用いられる。
【0034】
(C)水の配合量は成分(A)、成分(B)を均一に分散又は溶解することができれば特に制限されない。
【0035】
(D)糖類としては、例えば、ペントース(例えば、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アビオース、リブロース、キシルロース等の五炭糖)、ヘキソース(例えば、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、ガラクトース、イドース、フルクトース(果糖)、ソブボース等の六炭糖)、ヘプトース(セドヘプツロース、コリオース等の七炭糖)等のアルドース型、ケトース型の単糖類、ショ糖、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、マルトトリオース等の三糖類、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖類、デキストリン等の水溶性高分子の分解物、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール等の糖アルコール類が挙げられる。また、前記糖は、これらから選択された1種類でも、2種類以上の混合物でもよい。これらのうち、前記糖類は、上記の群から選択される少なくとも1種または2種を含有することが好ましい。
【0036】
前記糖類の配合量については、ゲル状洗浄剤組成物のキシログルカンの含有量により、ゲル化するための配合量が異なる。つまりキシログルカンとの配合比が重要になる。例えば第一剤と第二剤を1:1で混合した場合、及び第一剤と第二剤を異なる比率で混合した場合のいずれにしても、第一剤と第二剤を混合後のゲル状洗浄剤中における質量比で(D)糖類/(B)キシログルカンが15~122になるように調整することで成形しやすさとゲル状洗浄剤の固さや弾力を好適なものとすることができる。さらに、第一剤のpHが8以上である場合は、ショ糖やトレハロースのような非還元糖や、ソルビトールやマルチトールのような糖アルコールを用いることで、「カラメル化やメイラード反応のような糖類の着色反応」を抑制することができる。
【0037】
本発明の洗浄用組成物には、上記の必須成分のほかに、必要に応じ一般的に組成物などに用いられる成分を配合することも可能である。例えば、粉体、パール化剤、保湿剤、成分(B)以外の水溶性高分子、香料、殺菌剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、抗炎症剤、抗酸化剤、清涼剤、生薬抽出物やビタミン類等の添加物を適時配合することができる。これら成分を含有させる場合の配合割合は、その種類や目的に応じて適宜選択することができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0038】
本発明において粘度の測定方法は、測定機器としてB型粘度計(VISCOTESTER TVB-10:東機産業社製)を用い、温度20℃条件下で測定した。測定条件は表1に記載の通り、M2またはM3のアダプター、及び6rpm~60rpmの範囲で回転速度を適宜選択し、測定開始60秒後の値を測定値とした。
【0039】
第一剤のpHの測定方法は、測定機器としてpHメーター(pH METER F-51:HORIBA社製)を用い、室温(25℃程度)下で測定した。試料は希釈せず測定した。
【実施例0040】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。なお、これら実施例は本発明を何ら限定するものではない。
【0041】
<第一剤(ゾル状組成物)の製造方法>
下記表1に示す処方に従い、原料を水に分散させた後加熱し、均一な溶液を調製後、冷却を行い、第一剤を得た。
【0042】
<第二剤(ゲル化剤)の製造方法>
表2の第二剤は、原料そのものまたは、水などと混合することで第二剤を得た。
【0043】
<第一剤と第二剤のキットで作製する洗浄剤組成物の製造方法>
第一剤と第二剤を混合し加熱溶解したのち、流動性がある状態で、直径30mmφのAS製円筒状ジャー容器に、2cmの厚さになるように流し込み放冷した後、20℃のインキュベーターで6時間以上保管する
【0044】
(第一剤と第二剤のキットで作製した洗浄剤組成物の評価基準)
<ゲル化の有無>
上記方法で得られた組成物をジャー容器からプラスチック製シャーレの上に出して、1分間置いたときに、組成物が流動をしない場合ゲル化したと判定する。
〇:流動しない
×:流動する(液状でシャーレ内に広がる)
【0045】
<ゲル化の均一性>
上記の洗浄剤組成物を目視した時、均一に透明であるかを確認した。
〇:完全に均一に透明である。
×:不均一にゲル化している。(一部または、全体的にエアがみ以外の不透明部分がある。)
-:ゲル化しておらず、均一性の評価対象外。
【0046】
<離漿>
上記洗浄剤組成物をジャー容器に成形した後、そのままジャー容器に入れて密閉し、40℃で一週間保管する
〇:ゲルの上部に液状の分離が見られない。
×:ゲルの上部に液状の分離が見られる。
-:ゲル化しておらず、離漿の評価対象外。
【0047】
<エアがみ>
上記組成物をジャー容器に成形した時に、表層以外でエアがみが見られるか。
〇:ゲル中にエアがみが見られない、またはゲルの表層にのみ少量の泡が見られる。
×:ゲル中にエアがみが見られる。
【0048】
【表1】
*1アラノンALE 川研ファインケミカル社製
*2ニッコールMNK-40 日光ケミカルズ社製
*3エマールE-27C 花王社製
*4TEGO BETAIN L7 OK EVONIK社製
*5グリロイド6C 大日本住友製薬社製
【0049】
【0050】
実施例1~6については、高い透明度でエアがみのない弾力性のある均一なゲルを形成した。さらに成形した組成物を40℃で一週間保管しても離漿は見られなかった。組成物に水をつけ掌で泡立てると良好な泡立ちが得られた。加えてに水でのすすぎも簡単で良好な洗浄剤組成物であった。
実施例1~5についてはアルカリ性であるため非還元糖である高純度のショ糖(グラニュー糖)または、糖アルコールであるソルビトールを用いてゲル化したものである。実施例6については、酸性領域の洗浄剤であり還元糖であるマルトースを用いてゲル化を行った。比較例1~3については、ゲル化剤として多価アルコールを用いたものであるが、すべて離漿が発生し充分な安定性が得られなかった。さらに比較例1,2のジプロピレングリコールをゲル化剤に用いた場合は、均一なゲルが得られず、不均一に固まったり透明度が低下する現象がみられた。比較例3のグリセリンについては、混合当初は不均一にゲル化したが加温することで透明で均一なゲル化が得られた。比較例4については、多価アルコールを用いた場合に離漿するのを、粘性の高い水溶性高分子であるキサンタンガムを配合して防いだものであるが、粘度が高くなりすぎてエアが多量にかんで透明にならなかった。さらに高温でも高粘性であるため適量流し込むのが難しく充填性が不良だった。
【0051】
【0052】
キシログルカンとグラニュー糖の混合比を調整して各種評価項目を確認したものである。ゲル化剤として用いたグラニュー糖がキシログルカンの17倍ではゲル化しなかった。125倍では非常に固いいゲル化になってしまい高温でも高粘度で充填性が悪く、エアがみが多い。キシログルカンとグラニュー糖の本試験の場合は、30~70倍で良好な組成物が得られる結果だった。実施例7~9のいずれの処方においても本発明の効果を奏することが確認された。
【0053】
(実施例10)パールタイプ洗顔ゲルキット
製造方法
第一剤:原料を水に分散させた後加熱し、均一な溶液を調製後、冷却を行い第一剤を得た。
第二剤:常温で水にトレハロースと1.3ブチレングリコールを入れ溶解した。
第一剤
(1) 水 適量
(2) EDTA-2Na 0.1
(3)ラウロイルメチルーβーアラニンナトリウム30%水溶液*1 30.0
(4)ヤシ油脂肪酸カリウム・ミリスチンサンカリウム40%水溶液*2 10.0
(5)植物混合エキス 0.1
(6)フェノキシエタノール 0.2
(7)ジプロピレングリコール 5.0
(8)グリロイド6C 2.0
(9)キサンタンガム 0.05
(10)ポリソルベート 20 3.0
(11)パール剤(ジステアリン酸グリコール20%含有)*5 3.0
合計 100
第二剤
白ザラ糖(高純度ショ糖) 30.0
グリセリン 40.0
水 適量
合計 100.0
*5 ソフトパール P-018 泰光油脂社製
【0054】
キットとしての作製方法
1:第一剤60gと第二剤40gを常温でガラス容器中にて混合した後、電子レンジを用いて加温(500W、60sec)し、均一になるまで混合した。(60℃程度)
2:さらに電子レンジを用いて加温(500W、60sec)し、さらに攪拌した。(75℃程度)
3:型に流しこみ成形物を得た。
【0055】
第一剤と第二剤を加熱混合することで均一にゲル化することを特徴とするゲル状洗浄剤を家庭でも簡単に製造できた。更に、第一剤と第二剤を混合し加熱溶解することで、脱泡機などの特殊な設備を使用しなくても、成形型への追随性が良好でエアがみの少ない外観にパール感があるゲル状洗浄剤を作製することができた。
【0056】
本発明のキットで得られたゲル状洗浄剤により、泡弾力や泡もちに優れ、安全性が高く、変色や離漿がなく経時安定性に優れ、使用性に優れる組成物を提供することができた。