IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社インフォマティクスの特許一覧

特開2022-71956地理情報取込システム、地理情報取込方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071956
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】地理情報取込システム、地理情報取込方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20220510BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220510BHJP
   G06T 11/60 20060101ALI20220510BHJP
   G06T 11/80 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G09B29/10 Z
G06T11/60 300
G06T11/80 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181106
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】399105715
【氏名又は名称】株式会社インフォマティクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆史
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 淳徳
(72)【発明者】
【氏名】金子 力也
【テーマコード(参考)】
2C032
5B050
【Fターム(参考)】
2C032HA01
2C032HB11
5B050AA07
5B050BA06
5B050BA17
5B050BA18
5B050BA20
5B050CA01
5B050DA04
5B050DA06
5B050EA06
5B050EA09
5B050FA02
5B050FA05
5B050FA12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】帳票に記入された情報に任意の意味づけを行なった上で、デジタル地図に関連づけることが可能な地理情報として取り込む地理情報取込システム、地理情報取込方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】地理情報取込システム1において、印刷装置10は、地図データを読み込んで印刷領域を設定する地図領域設定部、帳票への記入情報と記入情報に関連して実施すべき処理とを対応づけた調査項目定義情報を設定する調査項目定義情報設定部、地図と調査項目定義情報を含むコードと記入情報の形式を示すための凡例欄とを印刷した帳票を出力する帳票印刷部を有する。取込処理装置30は、帳票をスキャンして得られた画像データから凡例欄に従って記入情報を認識する記入情報認識部、認識された記入情報をベクタデータに変換する前処理部、調査項目定義情報に従ってベクタデータを編集する地理情報生成部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図を含む帳票を印刷する印刷装置と、
地図上に情報が記入された前記帳票を読み取って画像データを生成するスキャナと、
前記画像データに基づいて地理情報を生成及び編集する取込処理装置と、を含む地理情報取込システムであって、
前記印刷装置は、
地図データを読み込んで印刷領域を設定する地図領域設定部と、
前記帳票への記入情報と、前記記入情報に関連して実施すべき処理と、を対応づけた調査項目定義情報を設定する調査項目定義情報設定部と、
前記地図と、前記調査項目定義情報を含むコードと、前記記入情報の形式を示すための凡例欄と、を印刷した帳票を出力する帳票印刷部と、を有し、
前記取込処理装置は、
前記凡例欄に従って、前記画像データから前記記入情報を認識する記入情報認識部と、
前記認識された前記記入情報をベクタデータに変換する前処理部と、
前記調査項目定義情報に従って、前記ベクタデータを編集する地理情報生成部と、を有する
地理情報取込システム。
【請求項2】
前記取込処理装置は、前記調査項目定義情報に従って、前記地図データを編集する後処理部をさらに有する
請求項1記載の地理情報取込システム。
【請求項3】
前記記入情報は、所定の色による地図上におけるマーキングである
請求項1記載の地理情報取込システム。
【請求項4】
地図を含む帳票を印刷する印刷装置であって、
地図データを読み込んで印刷領域を設定する地図領域設定部と、
前記帳票への記入情報と、前記記入情報に関連して実施すべき処理と、を対応づけた調査項目定義情報を設定する調査項目定義情報設定部と、
前記地図と、前記調査項目定義情報を含むコードと、前記記入情報の形式を示すための凡例欄と、を印刷した帳票を出力する帳票印刷部と、を有する
印刷装置。
【請求項5】
地図上に情報が記入された帳票を読み取って得られた画像データに基づいて地理情報を生成及び編集する取込処理装置であって、
前記帳票に設けられた凡例欄に従って、前記画像データから前記帳票への記入情報を認識する記入情報認識部と、
前記認識された前記記入情報をベクタデータに変換する前処理部と、
前記帳票に設けられたコードに含まれる調査項目定義情報に従って、前記ベクタデータを編集する地理情報生成部と、を有する
取込処理装置。
【請求項6】
地図を含む帳票を印刷する印刷ステップと、
地図上に情報が記入された前記帳票を読み取って画像データを生成する画像化ステップと、
前記画像データに基づいて地理情報を生成及び編集する取込処理ステップと、を含む地理情報取込方法であって、
前記印刷ステップは、
地図データを読み込んで印刷領域を設定する地図領域設定ステップと、
前記帳票への記入情報と、前記記入情報に関連して実施すべき処理と、を対応づけた調査項目定義情報を設定する調査項目定義情報設定ステップと、
前記地図と、前記調査項目定義情報を含むコードと、前記記入情報の形式を示すための凡例欄と、を印刷した帳票を出力する帳票印刷ステップと、を含み、
前記取込処理ステップは、
前記凡例欄に従って、前記画像データから前記記入情報を認識する記入情報認識ステップと、
前記認識された前記記入情報をベクタデータに変換する前処理ステップと、
前記調査項目定義情報に従って、前記ベクタデータを編集する地理情報生成ステップと、を有する
地理情報取込方法。
【請求項7】
地図を含む帳票を印刷する方法であって、
地図データを読み込んで印刷領域を設定する地図領域設定ステップと、
前記帳票への記入情報と、前記記入情報に関連して実施すべき処理と、を対応づけた調査項目定義情報を設定する調査項目定義情報設定ステップと、
前記地図と、前記調査項目定義情報を含むコードと、前記記入情報の形式を示すための凡例欄と、を印刷した帳票を出力する帳票印刷ステップと、を有する
印刷方法。
【請求項8】
地図上に情報が記入された帳票を読み取って得られた画像データに基づいて地理情報を生成及び編集する取込処理方法であって、
前記帳票に設けられた凡例欄に従って、前記画像データから前記帳票への記入情報を認識する記入情報認識ステップと、
前記認識された前記記入情報をベクタデータに変換する前処理ステップと、
前記帳票に設けられたコードに含まれる調査項目定義情報に従って、前記ベクタデータを編集する地理情報生成ステップと、を有する
取込処理方法。
【請求項9】
コンピュータに請求項7又は8記載の方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地理情報取込システム、地理情報取込方法及びプログラムに関し、特に帳票に記入された情報を、デジタル地図に関連づけることが可能な地理情報として取り込む技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィールドにおいて各種調査等を行う場合、調査員は地図が印刷された帳票を持参し、ペンやシール等を使用して地図上に調査結果を記入していた。そして、帳票をスキャンして適宜画像処理等を行うことにより、帳票に記入された情報を電子化していた。
【0003】
特許文献1には、ユーザが、印刷された地図原稿に赤色のペンで危険領域を書き込むこと、多機能機が、地図原稿を読み込み、赤色の強度が閾値を超える領域を抽出し、その領域の頂点の経度緯度を特定することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、ユーザが、紙の図面に電子ペンを使用して情報を手書きすること、システムが、手書きされた情報を図形データや文字データに変換し、図面データとともに保存することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、ユーザが、デジタル地図の所望領域と、印刷領域の四隅の経度緯度情報を示すIDと、を印刷した帳票にデジタルペンを使用して書き込みを行うこと、システムが、その筆跡を図形データ又はテキストデータとして保存することが記載されている。
【0006】
特許文献4には、ユーザが、地図画像の所望領域と、印刷領域の二隅の経度緯度を示すQRコード(登録商標)と、を印刷した帳票に赤色ペンでマークを記入すること、イメージリーダが、帳票を読み込み、マーキングされた位置の点座標(経度緯度)又はマーキングされた領域のポリゴン図形を出力することが記載されている。
【0007】
特許文献5には、ユーザが、地図の所望領域と、地図の中心座標を示すQRコード(登録商標)と、を印刷した帳票に印や文字情報を記入すること、抽出手段が、地図に記入された印や文字情報を判別してデジタルデータに変換し、座標を特定することが記載されている。
【0008】
特許文献6には、ユーザが、地図の所望領域と、地図の中心位置を示すQRコード(登録商標)と、を印刷した帳票に筆記具でガス漏洩箇所を記入すること、読取装置が、帳票を読み取って得た画像を地図データに貼り付けることが記載されている。
【0009】
特許文献7には、ユーザが、地図の所望領域と、経度緯度を表す情報と、を印刷した帳票に属性マークを記入すること、地図読み取り装置が、地図を読み取って属性マークの属性や経度緯度を認識することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008-158199号公報
【特許文献2】特開2005-165798号公報
【特許文献3】特開2017-032834号公報
【特許文献4】特許第5580104号
【特許文献5】特許第5301221号
【特許文献6】特許第6416584号
【特許文献7】特許第5496768号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献7記載の手法では、紙の帳票上の地図に記入された情報にどのような意味づけを行い、デジタル地図上で扱える情報に加工するかは、システム側で予め定義されていた。例えば、帳票からどんな色やマークを認識するか、認識された色やマークが何を示すか、といった事柄を業務の内容等に応じて任意に定義することは困難であった。
【0012】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、帳票に記入された情報に任意の意味づけを行なった上で、デジタル地図に関連づけることが可能な地理情報として取り込む地理情報取込システム、地理情報取込方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一形態である地理情報取込システムは、地図を含む帳票を印刷する印刷装置と、地図上に情報が記入された前記帳票を読み取って画像データを生成するスキャナと、前記画像データに基づいて地理情報を生成及び編集する取込処理装置と、を含む地理情報取込システムであって、前記印刷装置は、地図データを読み込んで印刷領域を設定する地図領域設定部と、前記帳票への記入情報と、前記記入情報に関連して実施すべき処理と、を対応づけた調査項目定義情報を設定する調査項目定義情報設定部と、前記地図と、前記調査項目定義情報を含むコードと、前記記入情報の形式を示すための凡例欄と、を印刷した帳票を出力する帳票印刷部と、を有し、前記取込処理装置は、前記凡例欄に従って、前記画像データから前記記入情報を認識する記入情報認識部と、前記認識された前記記入情報をベクタデータに変換する前処理部と、前記調査項目定義情報に従って、前記ベクタデータを編集する地理情報生成部と、を有する。
本発明の一形態である地理情報取込システムにおいて、前記取込処理装置は、前記調査項目定義情報に従って、前記地図データを編集する後処理部をさらに有する。
本発明の一形態である地理情報取込システムにおいて、前記記入情報は、所定の色による地図上におけるマーキングである。
本発明の一形態である印刷装置は、地図を含む帳票を印刷する印刷装置であって、地図データを読み込んで印刷領域を設定する地図領域設定部と、前記帳票への記入情報と、前記記入情報に関連して実施すべき処理と、を対応づけた調査項目定義情報を設定する調査項目定義情報設定部と、前記地図と、前記調査項目定義情報を含むコードと、前記記入情報の形式を示すための凡例欄と、を印刷した帳票を出力する帳票印刷部と、を有する。
本発明の一形態である取込処理装置は、地図上に情報が記入された帳票を読み取って得られた画像データに基づいて地理情報を生成及び編集する取込処理装置であって、前記帳票に設けられた凡例欄に従って、前記画像データから前記帳票への記入情報を認識する記入情報認識部と、前記認識された前記記入情報をベクタデータに変換する前処理部と、前記帳票に設けられたコードに含まれる調査項目定義情報に従って、前記ベクタデータを編集する地理情報生成部と、を有する。
本発明の一形態である地理情報取込方法は、地図を含む帳票を印刷する印刷ステップと、地図上に情報が記入された前記帳票を読み取って画像データを生成する画像化ステップと、前記画像データに基づいて地理情報を生成及び編集する取込処理ステップと、を含む地理情報取込方法であって、前記印刷ステップは、地図データを読み込んで印刷領域を設定する地図領域設定ステップと、前記帳票への記入情報と、前記記入情報に関連して実施すべき処理と、を対応づけた調査項目定義情報を設定する調査項目定義情報設定ステップと、前記地図と、前記調査項目定義情報を含むコードと、前記記入情報の形式を示すための凡例欄と、を印刷した帳票を出力する帳票印刷ステップと、を含み、前記取込処理ステップは、前記凡例欄に従って、前記画像データから前記記入情報を認識する記入情報認識ステップと、前記認識された前記記入情報をベクタデータに変換する前処理ステップと、前記調査項目定義情報に従って、前記ベクタデータを編集する地理情報生成ステップと、を有する。
本発明の一形態である印刷方法は、地図を含む帳票を印刷する方法であって、地図データを読み込んで印刷領域を設定する地図領域設定ステップと、前記帳票への記入情報と、前記記入情報に関連して実施すべき処理と、を対応づけた調査項目定義情報を設定する調査項目定義情報設定ステップと、前記地図と、前記調査項目定義情報を含むコードと、前記記入情報の形式を示すための凡例欄と、を印刷した帳票を出力する帳票印刷ステップと、を有する。
本発明の一形態である取込処理方法は、地図上に情報が記入された帳票を読み取って得られた画像データに基づいて地理情報を生成及び編集する取込処理方法であって、前記帳票に設けられた凡例欄に従って、前記画像データから前記帳票への記入情報を認識する記入情報認識ステップと、前記認識された前記記入情報をベクタデータに変換する前処理ステップと、前記帳票に設けられたコードに含まれる調査項目定義情報に従って、前記ベクタデータを編集する地理情報生成ステップと、を有する。
本発明の一形態であるプログラムは、コンピュータに上記方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、帳票に記入された情報に任意の意味づけを行なった上で、デジタル地図に関連づけることが可能な地理情報として取り込む地理情報取込システム、地理情報取込方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】地理情報取込システム1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図2】印刷装置10の機能構成例を示すブロック図である。
図3A】調査項目定義情報設定部15の動作の一例を示す図である。
図3B】調査項目定義情報設定部15の動作の一例を示す図である。
図3C】調査項目定義情報設定部15の動作の一例を示す図である。
図3D】調査項目定義情報設定部15の動作の一例を示す図である。
図3E】調査項目定義情報設定部15の動作の一例を示す図である。
図3F】調査項目定義情報設定部15の動作の一例を示す図である。
図3G】調査項目定義情報設定部15の動作の一例を示す図である。
図4A】帳票70の一例を示す図である。
図4B】帳票70の一例を示す図である。
図4C】帳票70の一例を示す図である。
図5】取込処理装置30の機能構成を示すブロック図である。
図6】地理情報取込システム1を用いた業務フローの一例を示す図である。
図7】地理情報取込システム1を用いた一ユースケースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施の形態にかかる地理情報取込システム1のハードウェア構成を示すブロック図である。地理情報取込システム1は、印刷装置10、スキャニング装置20、取込処理装置30を含む。
【0017】
印刷装置10は、地図が印刷された帳票70を出力する装置であり、典型的にはパーソナルコンピュータ(PC)、タブレット、スマートフォン等の情報処理装置とプリンタとによって構成される。図2に示すように、印刷装置10は、地図データ記憶部11、地図領域設定部13、調査項目定義情報設定部15、帳票印刷部17を有する。
【0018】
地図データ記憶部11は、地図データを格納する記憶領域である。
【0019】
地図領域設定部13は、指定された領域の地図データを地図データ記憶部11から読み出して画面に表示する。地図領域設定部13は、ユーザによる住所、緯度経度又はマップコード等の入力、あるいはポインティングデバイスを用いた地図上の座標指定等を受け付け、対応する地点を含む領域の地図データを表示する。地図の縮尺、領域の形状等の指定を受け付けても良い。地図領域設定部13は、指定された領域の外縁を一意に定義するための、領域定義情報(矩形領域であれば4隅の座標、対向する2隅の座標、対向する2辺の長さ及び始点座標、領域中心の座標ならびに長辺及び短辺の長さ等。円形領域であれば領域中心の座標及び半径等)を保持する。領域定義情報における座標値は、緯度経度のような普遍的なものであっても良く、他の任意の座標系における座標値であっても良い。
【0020】
調査項目定義情報設定部15は、帳票70に記入される種々の情報(例えばペンやシール等を用いて行われるマーキングの色、形状等)について、それぞれ名称、属性、取込後の表示形態、レイヤ、取込後に実行する処理等を設定する。換言すると、帳票70に記入される情報の種類と、当該情報の名称、属性、取込後の表示形態、レイヤ、取込後に実行する処理等とを対応づける。この情報の対を調査項目定義情報と称する。すなわち、調査項目定義情報設定部15は、調査員が帳票70に記入する情報が、コンピュータシステムに取り込まれたときにどのような意味を有する情報として取り扱われるべきかを定義する。図3を用いて、調査項目定義情報の設定処理について説明する。
【0021】
図3Aの左図は、帳票70に情報を記入する際に使うペンやシール等の色の情報に対応づけて、当該情報の名称を定義するための入力画面例である。この例では、黄色に対しては「AAA」、赤色に対しては「BBB」、青色に対しては「CCC」という名称を与えている。調査項目定義情報設定部15は、この画面で設定された調査項目定義情報(色情報と名称との対応関係を定義した情報)をQRコード(登録商標)にエンコードする。ここで調査項目定義情報は、例えば図3Aの右図のような文字列により表現されうる。調査項目定義情報設定部15は、このような文字列をバイナリデータやテキストデータ(文字列を文字コードで表現したデータ)とし、当該データをQRコード(登録商標)にエンコードする。
【0022】
図3Bの左図は、帳票70に情報を記入する際に使うペンやシール等の色の情報に対応づけて、当該情報の属性を定義するための入力画面例である。この例では、黄色に対しては「空家」、赤色に対しては「建替」、青色に対しては「除却」という属性を与えている。調査項目定義情報設定部15は、この画面で設定された調査項目定義情報(色情報と属性との対応関係を定義した情報)をQRコード(登録商標)にエンコードする。ここで調査項目定義情報は、例えば図3Bの右図のような文字列により表現されうる。調査項目定義情報設定部15は、このような文字列をバイナリデータやテキストデータとし、当該データをQRコード(登録商標)にエンコードする。
【0023】
図3Cの左図は、帳票70に情報を記入する際に使うペンやシール等の色の情報に対応づけて、当該情報の取込後の表示形態を定義するための入力画面例である。この画面では、帳票70から取り込んだ情報をデジタル地図上ではどのような形態で表示するかを定義する。この例では、黄色に対しては「★」(星型)、赤色に対しては「○」(丸型)、青色に対しては「←」(矢印型)というシンボルマークを対応づけている。これにより、例えば帳票70に貼られた赤色のシールは、デジタル地図上では「○」(丸型)に置き換えて表示するよう設定できる。調査項目定義情報設定部15は、この画面で設定された調査項目定義情報(色情報とシンボルマークとの対応関係を定義した情報)をQRコード(登録商標)にエンコードする。ここで調査項目定義情報は、例えば図3Cの右図のような文字列により表現されうる。調査項目定義情報設定部15は、このような文字列をバイナリデータやテキストデータとし、当該データをQRコード(登録商標)にエンコードする。
【0024】
図3Dの左図は、帳票70に情報を記入する際に使うペンやシール等の色の情報に対応づけて、当該情報の取込後の表示レイヤを定義するための入力画面例である。この例では、黄色に対しては「背景地図レイヤ」、赤色に対しては「住宅地図レイヤ」を対応づけている。なお青色については対応レイヤがない。調査項目定義情報設定部15は、この画面で設定された調査項目定義情報(色情報とレイヤ分けとの対応関係を定義した情報)をQRコード(登録商標)にエンコードする。ここで調査項目定義情報は、例えば図3Dの右図のような文字列により表現されうる。調査項目定義情報設定部15は、このような文字列をバイナリデータやテキストデータとし、当該データをQRコード(登録商標)にエンコードする。
【0025】
図3Eの左図は、帳票70にペンで記入された図形の色及び形状の情報に対応づけて、当該情報の取込後に実行する処理を定義するための入力画面例である。この例では、黄色の矩形に対しては「建物を削除」、赤色の二重線に対しては「道路を作成」といった処理を対応づけている。これにより、例えば帳票70において黄色の矩形で囲まれた領域に含まれる建物オブジェクトをデジタル地図上から削除する処理を行い、赤色の二重線に対応する道路オブジェクトをデジタル地図に追加するよう設定できる。調査項目定義情報設定部15は、この画面で設定された調査項目定義情報(色情報及び形状情報と、取込後の処理と、の対応関係を定義した情報)QRコード(登録商標)にエンコードする。ここで調査項目定義情報は、例えば図3Eの右図のような文字列により表現されうる。調査項目定義情報設定部15は、このような文字列をバイナリデータやテキストデータとし、当該データをQRコード(登録商標)にエンコードする。
【0026】
なお、調査項目定義情報設定部15は、調査項目定義情報を設定する際、帳票70に記入される情報の種類(ペンやシール等の色や形状等)を必ずしも定義しなくても良い。つまり図3Fに示すように、ペンやシール等の色や形状等の情報は空欄としておき、当該情報に対応する名称、属性、取込後の表示形態、レイヤ、取込後に実行する処理等のみを設定しておいても良い。
【0027】
なお、調査項目定義情報設定部15は、複数の調査項目定義情報を含むQRコード(登録商標)を1つだけ生成することとしても良い。例えば上述の例では、名称に関する調査項目定義情報と、属性に関する調査項目定義情報の設定とを行った場合は、それぞれに対応するQRコード(登録商標)が1つずつ、計2つ生成される(図3A,3B)。これに代えて、名称及び属性に関する調査項目定義情報を両方含んだQRコード(登録商標)を1つ生成しても良い。例えば、図3Gのように名称と属性双方の調査項目定義情報を文字列により表現し、この文字列をバイナリデータやテキストデータとし、当該データをQRコード(登録商標)にエンコードする。
【0028】
帳票印刷部17は、地図領域設定部13が画面表示している領域の地図データと、調査項目定義情報設定部15が生成したQRコード(登録商標)と、を紙に印刷し帳票70を出力する。この際、帳票印刷部17は、調査項目定義情報設定部15により定義された調査項目定義情報(帳票70に記入される情報の種類(ペンやシール等の色や形状等)と、名称、属性、取込後の表示形態、レイヤ又は取込後に実行する処理等との対応関係)を凡例として帳票70に記載する。
【0029】
また、帳票印刷部17は、地図領域設定部13が保持している地図の領域定義情報(例えば4隅の座標値等)に基づいて、印刷された地図領域の隅部の座標を特定し、当該座標をエンコードしたQRコード(登録商標)を当該隅部に配置する。この座標値を含むQRコード(登録商標)を座標コードと称する。好ましくは、2箇所以上の隅部に座標コードを配置する。
【0030】
図4Aに、帳票70の一例を示す。この例では、指定領域の地図画像、座標コード、シールの色と各色に対応する名称との対応表(凡例)、及びQRコード(登録商標)が印刷されている。凡例は、ヘッダ行(「シール」「名前」)を除いて、1行目から順に項目1、項目2、・・・の順番に整序されている。QRコード(登録商標)には、調査項目定義情報設定部15において設定された調査項目定義情報がエンコードされている。調査員は、この帳票70をフィールドに持参して各種調査を行い、凡例に示される形式で調査結果を記録していく。この例では、各色のシールを地図上に貼付することで調査結果を記録していく。
【0031】
図4Bに、帳票70の他の例を示す。この例では、QRコード(登録商標)が複数印刷されている。調査項目定義情報設定部15において調査項目定義情報を複数定義した場合、例えばシールの色に対応する名称及び属性を設定した場合には、この例のように名称に関する調査項目定義情報をエンコードしたQRコード(登録商標)(図3A)、属性に関する調査項目定義情報をエンコードしたQRコード(登録商標)(図3B)をそれぞれ印刷することができる。なお、複数のQRコードを印刷する代わりに、複数の調査項目定義情報を含んだQRコード(登録商標)(図3G)を印刷することもできる。
【0032】
図4Cに、帳票70の他の例を示す。調査項目定義情報設定部15において、帳票70に記入される情報の種類(ペンやシール等の色や形状等)が設定されなかった場合、凡例では当該項目は空欄のまま印刷される。この場合、調査員がペンやシール等を使用して任意の色等を設定できる。この例では、名称「AAA」に対応させたい色のペン又はシールを使用して、隣接する欄(図中Xで示す)をマーキングする。
【0033】
スキャニング装置20は、帳票70を読み込んで画像データを生成する装置である。典型的には、ドキュメントスキャナ、カメラ等をスキャニング装置20として利用できる。
【0034】
取込処理装置30は、スキャニング装置20が生成した画像データから、調査員が書き込んだ情報を認識し、デジタル地図上で取り扱うことができる地理情報に変換する。図5に示すように、取込処理装置30は、記入情報認識部31、前処理部33、地理情報生成部35、後処理部37、取込結果出力部39を含む。
【0035】
記入情報認識部31は、スキャニング装置20が生成した画像データから、調査員が書き込んだ情報を認識及び抽出する。記入情報認識部31は、凡例に印刷又はマーキングされている色と同一の(又は類似範囲内にある)色のピクセルを画像データから抽出する。
【0036】
前処理部33は、記入情報認識部31が抽出したピクセル(ラスタデータ)をデジタル地図上で取り扱いやすい形式(ベクタデータ)に変換する。例えば、抽出したピクセル(ラスタデータ)の形状を直線、円、楕円、矩形等で近似し、当該形状のベクタデータを生成する。ベクタデータには、地図データと同じ座標系の座標値が付与される。ベクタデータの座標値は、地図の隅部に設けられた2以上の座標コードからの画像データ上の距離及び縮尺に基づいて計算する。縮尺は、画像データ上における2つの座標コードの距離と、座標コードにエンコードされた座標間の距離との比から計算する。
【0037】
地理情報生成部35は、前処理部33が生成したベクタデータに、調査項目定義情報設定部15において定義された各種設定を反映させる。例えば、調査項目定義情報設定部15において各色に対して設定された名称又は属性をベクタデータに付加する。また、取込後の表示形態を反映させる。例えば、黄色の色情報に対応づけられた表示形態が「★」(星型)であれば、黄色のマーキングに基づいて生成されたベクタデータを星型で置き換える。また、レイヤを設定する。例えば、黄色の色情報に対して「背景地図レイヤ」が設定されていれば、黄色のマーキングに基づいて生成されたベクタデータを「背景地図レイヤ」に所属させる。
【0038】
調査項目定義情報設定部15において定義された調査項目定義情報は、地図とともに印刷されたQRコード(登録商標)から読み取ることができる。地理情報生成部35は、QRコード(登録商標)をデコードして調査項目定義情報を含むバイナリデータ又はテキストデータを得る。調査項目定義情報には、例えば図3A右図のように、項目番号と名称とが記述されている。これにより各項目(項目1、項目2、・・・)に対応する名称が判明する。また地理情報生成部35は、画像データの凡例欄を読み取る。凡例は、ヘッダ行(「シール」「名前」)を除いて、1行目から順に項目1、項目2、・・・の順番に整序されており、「シール」列には色が印刷又はマーキングされている。これにより各項目(項目1、項目2、・・・)に対応する色が判明する。したがって、地理情報生成部35は、項目番号をキーとして色と名称とを対応づけることができる。属性、取込後の表示形態、レイヤについても同様に処理する。
【0039】
後処理部37は、調査項目定義情報設定部15において取込後に実行する処理が定義されているベクタデータがある場合、その処理を実行する。例えば後処理部37は、QRコード(登録商標)をデコードしてテキストデータを得る。テキストデータには、例えば図3E右図のように、項目番号ごとに取込後に実行する処理が記述されている。また、凡例欄より項目番号に対応する色及び形状が判明する。これにより色及び形状に対応する、取込後に実行する処理が判明する。後処理部37は、これまでに生成されたベクタデータの中から、QRコード(登録商標)で定義された条件に合致する色及び形状を有するものを抽出し、対応する処理を実行する。黄色の矩形で囲まれた領域に含まれる建物オブジェクトをデジタル地図上から削除する処理や、赤色の二重線に対応する道路オブジェクトをデジタル地図に追加する処理を行う。
【0040】
取込結果出力部39は、これまでの処理により生成されたベクタデータ、及び後処理部37により編集された地図データを地図データ記憶部11又は他の記憶領域に保存する。取込結果出力部39は、例えば保存されたベクタデータと地図データとを重畳して画面表示することにより、調査結果をデジタル地図上で閲覧させることができる。また、保存されたベクタデータと地図データを公知の地理情報システムを用いて分析したり、可視化したりすることも可能である。例えば、名称、属性、レイヤ等によりベクタデータをフィルタリングしたり、集計したりすることで、調査結果を統計的に処理することができる。
【0041】
図6は、地理情報取込システム1を用いた業務フローを示すチャートである。
S101:地図データの表示
オペレータは、印刷装置10の地図領域設定部13を用いて、地図データ記憶部11から地図データを読み出して画面に表示させる。
【0042】
S102:調査項目定義
オペレータは、調査項目定義情報設定部15を用いて、調査項目定義情報(調査員によって記入される情報に対応する名称、属性、取込後の表示形態、レイヤ、取込後に実行する処理等)を設定する。
【0043】
S103:帳票の印刷
オペレータは、帳票印刷部17を用いて、地図、座標コード、凡例、及びS102で設定された調査項目定義情報をエンコードしたQRコード(登録商標)を紙に印刷し、帳票70を作成する。
【0044】
S104:調査結果の記入
調査員は、S103で作成された帳票70を持参してフィールド調査を行い、色付ペンやシール等を用いて調査結果を帳票70に記入する。
【0045】
S105:帳票のスキャン
調査員は、スキャニング装置20を用いて帳票70の画像データを生成し、オペレータに転送する。
【0046】
S106:記入情報のデジタルデータ化、意味付け及び後処理
オペレータは、取込処理装置30を用いて、調査員の記入した情報を画像データから抽出し、調査項目定義情報設定部15で設定されたルールに従ってベクタデータに変換する。また、調査項目定義情報設定部15で設定されたルールに従って地図データを編集する。
【0047】
S107:ベクタデータ及び地図データの利用
オペレータは、ベクタデータと地図データとを重畳して画面表示することにより、調査結果をデジタル地図上で確認する。また、公知の地理情報システムを用いて分析等を行う。
【0048】
<ユースケース1>
図7は、地理情報取込システム1の一利用例を示す図である。この例では、印刷装置10は、既存の家屋図形データを含む地図データを印刷した帳票70を作成する。
【0049】
調査員は現地調査を行い、家屋が(1)空家、(2)建替、又は(3)除却(存在しない)に該当する場合には、(1)乃至(3)に一意に対応するシールを帳票70の該当家屋の上に貼付する。
【0050】
この例では当初、凡例欄の「シール」列は空欄である。したがって、調査員が(1)空家、(2)建替、又は(3)除却に対応するシールの色を定義することができる。定義の方法は、凡例欄の「シール」列に任意の色のシールを貼ることである。この例では、調査員は(1)に黄色のシール、(2)に赤色のシール、(3)に青色のシールを対応づけた。
【0051】
シールを貼付した帳票70は、スキャニング装置20により画像データ化される。取込処理装置30は、まず画像データから凡例欄、調査項目定義情報を格納したQRコード(登録商標)、座標コードを読み取る。次に、凡例欄で定義された色を画像データから抽出してベクタデータ化し、調査項目定義情報で定義されたところにしたがってベクタデータ及び地図データを処理する。この例では、(1)空き家を示す黄色のシールの取込み後に実行する処理として「家屋図形を青色に更新」が設定されている。後処理部37は、空き家を示す黄色のシールを変換して得られたベクタデータと重なっている家屋図形を選択し、その家屋図形を青色に着色する。同様に、(2)建て替えを示す赤色のシールの取込み後に実行する処理として「家屋図形を黄色に更新」が設定されている。後処理部37は、建て替えを示す赤色のシールを変換して得られたベクタデータと重なっている家屋図形を選択し、その家屋図形を黄色に着色する。(3)除却を示す青色のシールの取込み後に実行する処理としては「家屋図形を削除」が設定されている。後処理部37は、除却を示す青色のシールを変換して得られたベクタデータと重なっている家屋図形を選択し、その家屋図形を削除する。
【0052】
<その他のユースケース>
地理情報取込システム1は、上述の例に限定されず、帳票70を用いて行うことのできるあらゆる調査に利用可能である。
【0053】
例えば、ブロック塀の危険度調査において、調査員はブロック塀の危険箇所を、危険度に応じ色分けしてマーキングする。これを取り込んで色別に属性を付与し、地図データ上に展開することで、ブロック塀の危険箇所を危険度に応じ絞り込むなどの分析をすることができる。
【0054】
また、選挙調査において、調査員は支持政党や有権者数等に応じ各戸を色分けしてマーキングする。これを取り込んで色別に属性を付与し、地図データ上に展開することで、政党支持率や有権者数の推計を行うことができる。
【0055】
また、被災地の家屋損壊状況調査において、調査員は家屋の損壊状況(全壊、半壊等)に応じて各戸を色分けしてマーキングする。これを取り込んで色別に属性を付与し、地図データ上に展開することで、被災状況の分析を行うことができる。
【0056】
また、交通規制台帳と現地規制標識・標示との整合確認調査において、調査員は現存する標識・標示の位置をその種類ごとに色分けしてマーキングする。これを取り込んで色別に属性を付与し、地図データ上に展開することで、現況を台帳に反映させることができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態において示した各種処理手段のソフトウェア又はハードウェアによる実装方法はあくまで一例であり、他の手法で代替されても良い。例えば、実施の形態では同一の筐体内に実装することとした複数の処理手段を、複数の異なるハードウェアとして提供することができる。又は、実施の形態では異なるハードウェアに実装することとした複数の処理手段を、1つのハードウェアに実装することができる。また、任意の処理手段又は処理手段のうち一部の機能をクラウドコンピューティング、エッジコンピューティング、フォグコンピューティング等の技術により実現することとしても良い。
【0058】
また、上述の実施の形態においては、調査項目定義情報として名称、属性、取込後の表示形態、レイヤ、取込後に実行する処理を例示したが、これに限定されるものではなく、地理情報として活用可能な任意の項目を調査項目定義情報に含めることができる。また、調査員が帳票70に記入する情報としてペンやシール等による着色を例示したが、これに限定されるものでなく、帳票70から画像処理等により自動的に認識できる任意の情報を使用することができる。また、座標コードや、調査項目定義情報をエンコードしたQRコード(登録商標)は、バーコードなど他の任意の形式のコードで代替されても良い。
【0059】
また本発明を構成する各処理手段は、ハードウェアにより構成されるものであってもよく、任意の処理をCPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現するものであってもよい。また、コンピュータプログラムは、様々なタイプの一時的又は非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。一時的なコンピュータ可読媒体は、例えば有線又は無線によりコンピュータに供給される電磁的な信号を含む。
【符号の説明】
【0060】
1 地理情報取込システム
10 印刷装置
11 地図データ記憶部
13 地図領域設定部
15 調査項目定義情報設定部
17 帳票印刷部
20 スキャニング装置
30 取込処理装置
31 記入情報認識部
33 前処理部
35 地理情報生成部
37 後処理部
39 取込結果出力部
70 帳票
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7