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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022071980
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】多極電磁石
(51)【国際特許分類】
   H01F 7/06 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
H01F7/06 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181143
(22)【出願日】2020-10-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】尾形 敢一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀人
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 洋二
(72)【発明者】
【氏名】横山 淳也
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048CA07
(57)【要約】
【課題】鉄心同士の合わせ面の組み合わせ精度をより向上させることが可能な多極電磁石を提供する。
【解決手段】多極電磁石は、所定数の鉄心200と、所定数と同数のコイルとを備えている。鉄心200の夫々は、継鉄部210と、磁極部270とを有している。継鉄部210は、支持部220と、2つの腕部240とを有している。腕部240の夫々は、当該腕部240の延びる方向と直交する端面248を有している。2つの腕部240の少なくとも一方は、当該腕部240の延びる方向と直交する方向であって多極電磁石の中心に向かって張り出した張り出し部250を有している。継鉄部210において、一方の腕部240の端面248は、当該腕部240と支持部220との境界230における当該腕部240の延びる方向と直交する断面よりも大きな面積を有している。磁極部270には、コイルが取り付けられている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定数の鉄心と、前記所定数と同数のコイルとを備える多極電磁石であって、
前記鉄心の夫々は、継鉄部と、磁極部とを有しており、
前記継鉄部は、支持部と、2つの腕部とを有しており、
前記腕部の夫々は、当該腕部の延びる方向と直交する端面を有しており、
前記2つの腕部の少なくとも一方は、当該腕部の延びる方向と直交する方向であって前記多極電磁石の中心に向かって張り出した張り出し部を有しており、
前記一方の腕部において、前記張り出し部の端面であって当該腕部の延びる方向と直交する端面は、当該腕部の前記端面を構成しており、
前記継鉄部において、前記一方の腕部の前記端面は、当該腕部と前記支持部との境界における当該腕部の延びる方向と直交する断面よりも大きな面積を有しており、
前記鉄心同士は、前記一方の腕部の前記端面同士を直接接触させた状態で互いに連結されており、
前記鉄心同士は、他方の前記腕部の前記端面同士を直接接触させた状態で互いに連結されており、
前記鉄心の夫々において、前記磁極部は、前記支持部から前記多極電磁石の前記中心に向かって延びており、
前記磁極部には、前記コイルが取り付けられている
多極電磁石。
【請求項2】
請求項1記載の多極電磁石であって、
前記所定数は、4,6,8のいずれかである
多極電磁石。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の多極電磁石であって、
前記一方の腕部は、第1部位と、第2部位と、第3部位とを有しており、
前記第1部位は、前記一方の腕部の根元から前記一方の腕部の前記端面に向かって一定の断面積で延びており、
前記第2部位は、前記第1部位から前記一方の腕部の前記端面に向かって断面積が増加しながら延びており、
前記第3部位は、前記第2部位から前記一方の腕部の前記端面まで延びている
多極電磁石。
【請求項4】
請求項3記載の多極電磁石であって、
前記第3部位は、一定の断面積を有している
多極電磁石。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の多極電磁石であって、
前記張り出し部は、隣接する前記コイル同士の最も近接した部分よりも前記多極電磁石の前記中心から離れている
多極電磁石。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の多極電磁石であって、
前記多極電磁石は、ボルトを更に有しており、
前記ボルトは、前記腕部の前記端面を貫通しており、
前記ボルトは、隣接する前記鉄心同士を固定している
多極電磁石。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の多極電磁石であって、
前記多極電磁石は、キーと、棒状ピンとを更に有しており、
前記腕部の前記端面には、キー溝と、ピン孔とが形成されており、
前記キーは、前記キー溝に挿入されており、
前記棒状ピンは、前記ピン孔に挿入されている
多極電磁石。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の多極電磁石であって、
前記鉄心同士が連結された状態において、前記腕部は、前記所定数をnとしたとき、2n個の辺を有する多角形のいずれかの辺上に位置している
多極電磁石。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定数の鉄心と、所定数と同数のコイルとを備える多極電磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、この種の多極電磁石900を開示している。図9及び図10に示されるように、特許文献1の多極電磁石900は、4つの鉄心910と、4つのコイル950とを備えている。鉄心910の夫々は、継鉄部920と、磁極部930とを有している。継鉄部920は、支持部922と、2つの腕部924とを有している。腕部924の夫々は、当該腕部924の延びる方向と直交する端面9242を有している。鉄心910同士は、腕部924の端面9242同士を直接接触させた状態で互いに連結されている。鉄心910の夫々において、磁極部930は、支持部922から多極電磁石900の中心に向かって延びている。磁極部930には、コイル950が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08-316026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の多極電磁石900のような多極電磁石において、磁極口径や磁極間隙の寸法精度の向上が求められている。このような多極電磁石は、製造の際にコイルを鉄心の磁極部に取り付ける必要があるが、コイルの磁極部への取り付けやすさの観点から、鉄心を分割可能に構成する必要がある。ここで、このような多極電磁石の磁極口径や磁極間隙の寸法精度は、コイルを取り付けた鉄心同士を連結する際の合わせ面の組み合わせ精度に左右される。従って、このような多極電磁石の磁極口径や磁極間隙の寸法精度を向上させるためには、鉄心同士の合わせ面の組み合わせ精度を向上させる必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、鉄心同士の合わせ面の組み合わせ精度をより向上させることが可能な多極電磁石を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の多極電磁石として、
所定数の鉄心と、前記所定数と同数のコイルとを備える多極電磁石であって、
前記鉄心の夫々は、継鉄部と、磁極部とを有しており、
前記継鉄部は、支持部と、2つの腕部とを有しており、
前記腕部の夫々は、当該腕部の延びる方向と直交する端面を有しており、
前記2つの腕部の少なくとも一方は、当該腕部の延びる方向と直交する方向であって前記多極電磁石の中心に向かって張り出した張り出し部を有しており、
前記一方の腕部において、前記張り出し部の端面であって当該腕部の延びる方向と直交する端面は、当該腕部の前記端面を構成しており、
前記継鉄部において、前記一方の腕部の前記端面は、当該腕部と前記支持部との境界における当該腕部の延びる方向と直交する断面よりも大きな面積を有しており、
前記鉄心同士は、前記一方の腕部の前記端面同士を直接接触させた状態で互いに連結されており、
前記鉄心同士は、他方の前記腕部の前記端面同士を直接接触させた状態で互いに連結されており、
前記鉄心の夫々において、前記磁極部は、前記支持部から前記多極電磁石の前記中心に向かって延びており、
前記磁極部には、前記コイルが取り付けられている
多極電磁石を提供する。
【0007】
また、本発明は、第2の多極電磁石として、第1の多極電磁石であって、
前記所定数は、4,6,8のいずれかである
多極電磁石を提供する。
【0008】
また、本発明は、第3の多極電磁石として、第1又は第2の多極電磁石であって、
前記一方の腕部は、第1部位と、第2部位と、第3部位とを有しており、
前記第1部位は、前記一方の腕部の根元から前記一方の腕部の前記端面に向かって一定の断面積で延びており、
前記第2部位は、前記第1部位から前記一方の腕部の前記端面に向かって断面積が増加しながら延びており、
前記第3部位は、前記第2部位から前記一方の腕部の前記端面まで延びている
多極電磁石を提供する。
【0009】
また、本発明は、第4の多極電磁石として、第3の多極電磁石であって、
前記第3部位は、一定の断面積を有している
多極電磁石を提供する。
【0010】
また、本発明は、第5の多極電磁石として、第1から第4までのいずれかの多極電磁石であって、
前記張り出し部は、隣接する前記コイル同士の最も近接した部分よりも前記多極電磁石の前記中心から離れている
多極電磁石を提供する。
【0011】
また、本発明は、第6の多極電磁石として、第1から第5までのいずれかの多極電磁石であって、
前記多極電磁石は、ボルトを更に有しており、
前記ボルトは、前記腕部の前記端面を貫通しており、
前記ボルトは、隣接する前記鉄心同士を固定している
多極電磁石を提供する。
【0012】
また、本発明は、第7の多極電磁石として、第1から第6までのいずれかの多極電磁石であって、
前記多極電磁石は、キーと、棒状ピンとを更に有しており、
前記腕部の前記端面には、キー溝と、ピン孔とが形成されており、
前記キーは、前記キー溝に挿入されており、
前記棒状ピンは、前記ピン孔に挿入されている
多極電磁石を提供する。
【0013】
また、本発明は、第8の多極電磁石として、第1から第7までのいずれかの多極電磁石であって、
前記鉄心同士が連結された状態において、前記腕部は、前記所定数をnとしたとき、2n個の辺を有する多角形のいずれかの辺上に位置している
多極電磁石を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の多極電磁石は、以下のように構成されている:2つの腕部の少なくとも一方は、当該腕部の延びる方向と直交する方向であって多極電磁石の中心に向かって張り出した張り出し部を有している;一方の腕部において、張り出し部の端面であって当該腕部の延びる方向と直交する端面は、当該腕部の端面を構成している;継鉄部において、一方の腕部の端面は、当該腕部と支持部との境界における当該腕部の延びる方向と直交する断面よりも大きな面積を有している;鉄心同士は、一方の腕部の端面同士を直接接触させた状態で互いに連結されている。これにより、本発明の多極電磁石においては、鉄心同士を連結する際の合わせ面である腕部の端面の少なくとも一方の面積が大きく確保されており、この一方の腕部の端面の内側部分が多極電磁石のより中心側に位置するように構成されていることから、鉄心同士を連結した際の位置ずれが生じにくくなっている。即ち、本発明の多極電磁石においては、鉄心同士の合わせ面の組み合わせ精度をより向上させることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態による多極電磁石を示す正面図である。
図2図1の多極電磁石を示す背面図である。
図3図1の多極電磁石に含まれる構造体を示す正面図である。
図4図3の構造体を示す上面図である。
図5図3の構造体を示す右側面図である。
図6図3の構造体を示す左側面図である。
図7図3の構造体に含まれる鉄心を示す正面図である。
図8図7の鉄心の連結前の状態を示す正面図である。
図9】特許文献1の多極電磁石を示す正面図である。
図10図9の多極電磁石を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示されるように、本発明の実施の形態による多極電磁石100は、所定数nの鉄心200と、所定数nと同数のコイル400と、台座300とを備えている。より詳しくは、本実施の形態において、所定数nは4である。即ち、本実施の形態の多極電磁石100は、四極電磁石である。なお、本発明はこれに限定されず、所定数nは、4,6,8のいずれかであればよい。即ち、本発明の多極電磁石100は、四極電磁石、六極電磁石、八極電磁石のいずれかであればよい。
【0017】
図1を参照して、本実施の形態の鉄心200は、互いに組み合わせられて構造体150を構成している。構造体150は、台座300上に設置されている。本実施の形態において、上下方向はZ方向である。ここで、上方は+Z方向であり、下方は-Z方向である。鉄心200の夫々は、後述するように、積層方向に積層された多数の接着鋼板からなるものである。本実施の形態において、積層方向はX方向である。ここで、積層方向は、前後方向でもある。また、前方を+X方向とし、後方を-X方向とする。なお、鉄心200の構成としては上述の接着鋼板に限定されず、鉄のブロックから削り出されたものであってもよく、また、接着層を有さない鋼板を溶接により互いに固定されたものであってもよい。鉄心200は、コイル400と夫々対応している。
【0018】
図3に示されるように、鉄心200の夫々は、継鉄部210と、磁極部270とを有している。
【0019】
図3を参照して、本実施の形態の継鉄部210は、鉄心200の積層方向と直交する方向における外端を規定している。継鉄部210は、支持部220と、2つの腕部240とを有している。
【0020】
図3を参照して、本実施の形態の支持部220は、磁極部270と接続されている。即ち、支持部220は、磁極部270と直接接続されている。支持部220は、2つの外縁部222,224と、肩部226とを有している。
【0021】
図3に示されるように、本実施の形態の外縁部222は、上下方向と直交する平面である。また、外縁部224は、左右方向と直交する平面である。本実施の形態において、左右方向は、Y方向である。ここで、右方を+Y方向とし、左方を-Y方向とする。
【0022】
図3に示されるように、本実施の肩部226は、2つの外縁部222,224を連結している。
【0023】
上述のように、本実施の形態の支持部220は、上下方向と直交する外縁部222を有している。これにより、構造体150を台座300上に設置する際の設置面積が大きくなっている。
【0024】
図7に示されるように、本実施の形態の腕部240は、支持部220の両外端から夫々延びている。より詳しくは、継鉄部210において、2つの腕部240の一方は、支持部220から上下方向における内側に延びており、2つの腕部240の残りの一方は、支持部220から左右方向における内側に延びている。腕部240は、支持部220を介して磁極部270と接続されている。即ち、腕部240は、磁極部270と直接接続されていない。鉄心200同士は、腕部240同士を直接接触させた状態で互いに連結されている。本実施の形態の腕部240は、8個の辺を有する多角形のいずれかの辺上に位置している。なお、本発明はこれに限定されず、多極電磁石100が所定数nの鉄心200を備えている場合、鉄心200同士が連結された状態において、腕部240は、2n個の辺を有する多角形のいずれかの辺上に位置していればよい。
【0025】
図7に示されるように、腕部240の夫々は、当該腕部240の延びる方向と直交する端面248を有している。より具体的には、上下方向に延びる腕部240の端面248は、上下方向と直交しており、左右方向に延びる腕部240の端面248は、左右方向と直交している。
【0026】
図7を参照して、本実施の形態の端面248は、腕部240の終端である。また、端面248は、鉄心200を構成する接着鋼板の切断面の一部である。継鉄部210において、腕部240の夫々の端面248は、当該腕部240と支持部220との境界230における当該腕部240の延びる方向と直交する断面よりも大きな面積を有している。鉄心200同士は、腕部240の端面248同士を直接接触させた状態で互いに連結されている。なお、本発明はこれに限定されず、継鉄部210において、一方の腕部240の端面248が、当該腕部240と支持部220との境界230における当該腕部240の延びる方向と直交する断面よりも大きな面積を有していればよい。この場合、鉄心200同士は、上記一方の腕部240の端面248同士を直接接触させた状態で互いに連結されており、且つ、鉄心200同士は、他方の腕部240の端面248同士を直接接触させた状態で互いに連結されていればよい。
【0027】
上述のように、腕部240の夫々の端面248は、当該腕部240と支持部220との境界230における当該腕部240の延びる方向と直交する断面よりも大きな面積を有している。これにより、構造体150を構成する際、鉄心200同士の合わせ面の組み合わせ精度が容易に得られ、磁極口径や磁極間隙の寸法精度がより向上されている。
【0028】
図7に示されるように、腕部240の夫々は、当該腕部240の延びる方向と直交する方向であって多極電磁石100の中心Cに向かって張り出した張り出し部250を有している。より具体的には、上下方向に延びる腕部240の張り出し部250は、左右方向における内側に張り出しており、左右方向に延びる腕部240の張り出し部250は、上下方向における内側に張り出している。なお、本発明はこれに限定されず、2つの腕部240の少なくとも一方が、当該腕部240の延びる方向と直交する方向であって多極電磁石100の中心Cに向かって張り出した張り出し部250を有していればよい。
【0029】
図7に示されるように、本実施の形態の張り出し部250は、端面252と、内端面256とを有している。
【0030】
図7に示されるように、本実施の形態の端面252は、張り出し部250の終端である。また、端面252は、鉄心200を構成する接着鋼板の切断面の一部である。腕部240の夫々において、張り出し部250の端面252であって当該腕部240の延びる方向と直交する端面252は、当該腕部240の端面248を構成している。なお、本発明はこれに限定されず、2つの腕部240の少なくとも一方が張り出した張り出し部250を有している場合、上記一方の腕部240において、張り出し部250の端面252であって当該腕部240の延びる方向と直交する端面252が、当該腕部240の端面248を構成していればよい。
【0031】
図1及び図7を参照して、本実施の形態の内端面256は、多極電磁石100の内側を向いている。より詳しくは、内端面256は、多極電磁石100の中心Cを向いている。内端面256は、張り出し部250の前後方向と直交する方向における内端を規定している。
【0032】
上述のように、本実施の形態の鉄心200は、多極電磁石100の中心Cに向かって張り出した張り出し部250を有している。これにより、磁極部270と張り出し部250の内端面256との距離が短縮されている。一方、張り出し部250を鉄心200の外側に張り出させた場合には、磁極部270と張り出し部250の内端面256との距離は短縮されない。これにより、本実施の形態の鉄心200は、張り出し部250を鉄心200の外側に張り出させた場合と比較して、鉄心200同士の合わせ面の組み合わせ精度が容易に得られ、磁極口径や磁極間隙の寸法精度がより向上されている。
【0033】
図7に示されるように、腕部240の夫々は、第1部位242と、第2部位244と、第3部位246とを有している。なお、本発明はこれに限定されず、鉄心200において、2つの腕部240の一方の腕部240が、第1部位242と、第2部位244と、第3部位246とを有していればよい。
【0034】
図7に示されるように、本実施の形態の第1部位242は、腕部240の根元241から腕部240の端面248に向かって一定の断面積で延びている。ここで、根元241は、上述の腕部240と支持部220との境界230である。即ち、第1部位242は、腕部240と支持部220との境界230から腕部240の端面248に向かって一定の断面積で延びている。第1部位242は、支持部220の外端から第2部位244まで一定の断面積で延びている。具体的には、第1部位242は、腕部240の根元241から腕部240の端面248に向かって一定の断面積で直線的に延びている。第1部位242は、支持部220の外端から第2部位244まで一定の断面積で直線的に延びている。なお、本発明はこれに限定されず、鉄心200において、2つの腕部240の一方の腕部240が、第1部位242と、第2部位244と、第3部位246とを有している場合、第1部位242は、上記一方の腕部240の根元241から上記一方の腕部240の端面248に向かって一定の断面積で延びていればよい。図1及び図7を参照して、第1部位242は、多極電磁石100の内側を向いた内端面2422を有している。
【0035】
図7に示されるように、本実施の形態の第2部位244は、第1部位242から腕部240の端面248に向かって断面積が増加しながら延びている。即ち、第2部位244は、第1部位242から第3部位246まで断面積が増加しながら延びている。なお、本発明はこれに限定されず、鉄心200において、2つの腕部240の一方の腕部240が、第1部位242と、第2部位244と、第3部位246とを有している場合、第2部位244は、第1部位242から上記一方の腕部240の端面248に向かって断面積が増加しながら延びていればよい。第2部位244は、斜面2442を有している。
【0036】
図7に示されるように、本実施の形態の第3部位246は、第2部位244から腕部240の端面248まで延びている。即ち、第3部位246は、第2部位244から腕部240の終端まで一定の断面積で延びている。第3部位246は、一定の断面積を有している。なお、本発明はこれに限定されず、鉄心200において、2つの腕部240の一方の腕部240が、第1部位242と、第2部位244と、第3部位246とを有している場合、第3部位246は、第2部位244から上記一方の腕部240の端面248まで延びていればよい。図1及び図7を参照して、第3部位246は、多極電磁石100の内側を向いた内端面2462を有している。内端面2462は、多極電磁石100の中心Cを向いている。第2部位244の斜面2442は、第1部位242の内端面2422と第3部位246の内端面2462とを連結している。第3部位246の内端面2462は、張り出し部250の内端面256である。
【0037】
図7を参照して、上述の張り出し部250は、第2部位244と第3部位246とで構成されている。
【0038】
図5図6及び図7に示されるように、腕部240の端面248には、キー溝2522と、ピン孔2524と、追加的ピン孔2546とが形成されている。即ち、張り出し部250の端面252には、キー溝2522と、ピン孔2524と、追加的ピン孔2546とが形成されている。
【0039】
図7を参照して、本実施の形態のキー溝2522は、鉄心200の夫々において、積層方向、即ち前後方向に延びる角ばった窪みである。鉄心200同士が連結された状態において、隣接する鉄心200の一方のキー溝2522は、隣接する鉄心200の他方のキー溝2522と共に、積層方向、即ち前後方向に延びる角柱状の孔を構成している。
【0040】
図7を参照して、本実施の形態のピン孔2524は、鉄心200の夫々において、積層方向、即ち前後方向に延びる半円筒状の窪みである。図1及び図7を参照して、ピン孔2524は、キー溝2522よりも多極電磁石100の中心Cから離れている。即ち、ピン孔2524と多極電磁石100の中心Cとの距離は、キー溝2522と多極電磁石100の中心Cとの距離より大きい。鉄心200同士が連結された状態において、隣接する鉄心200の一方のピン孔2524は、隣接する鉄心200の他方のピン孔2524と共に、積層方向、即ち前後方向に延びる円柱状の孔を構成している。
【0041】
図5及び図6を参照して、本実施の形態の追加的ピン孔2546は、鉄心200の夫々において、左右方向に延びるに延びる半円筒状の窪みである。鉄心200同士が連結された状態において、隣接する鉄心200の一方の追加的ピン孔2546は、隣接する鉄心200の他方の追加的ピン孔2546と共に、左右方向に延びる円柱状の孔を構成している。
【0042】
図1及び図7を参照して、鉄心200の夫々において、磁極部270は、支持部220から多極電磁石100の中心Cに向かって延びている。磁極部270には、コイル400が取り付けられている。磁極部270の根元272は、第3部位246の内端面2462よりも多極電磁石100の中心Cから離れている。磁極部270の根元272と多極電磁石100の中心Cとの距離は、第3部位246の内端面2462と多極電磁石100の中心Cとの距離より大きい。磁極部270の根元272は、張り出し部250の内端面256よりも多極電磁石100の中心Cから離れている。磁極部270の根元272と多極電磁石100の中心Cとの距離は、張り出し部250の内端面256と多極電磁石100の中心Cとの距離より大きい。
【0043】
図1に示されるように、本実施の形態のコイル400は、銅製であり、対応する鉄心200の磁極部270に巻き付けられている。図1及び図7を参照して、張り出し部250は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410よりも多極電磁石100の中心Cから離れている。内端面256は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410よりも多極電磁石100の中心Cから離れている。即ち、内端面256と多極電磁石100の中心Cとの距離は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410と多極電磁石100の中心Cとの距離より大きい。内端面2422は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410よりも多極電磁石100の中心Cから離れている。即ち、内端面2422と多極電磁石100の中心Cとの距離は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410と多極電磁石100の中心Cとの距離より大きい。斜面2442は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410よりも多極電磁石100の中心Cから離れている。即ち、斜面2442と多極電磁石100の中心Cとの距離は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410と多極電磁石100の中心Cとの距離より大きい。内端面2462は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410よりも多極電磁石100の中心Cから離れている。即ち、内端面2462と多極電磁石100の中心Cとの距離は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410と多極電磁石100の中心Cとの距離より大きい。
【0044】
上述のように、本実施の形態の張り出し部250は、隣接するコイル400同士の最も近接した部分410よりも多極電磁石100の中心Cから離れている。仮に、張り出し部250が隣接するコイル400同士の最も近接した部分410よりも多極電磁石100の中心C側に位置している場合、当該コイル400が巻回されている鉄心200の磁極部270と張り出し部250との間で磁束の短絡が起こり、多極電磁石100のボア内の磁場強度が低下するため好ましくないが、本実施の形態においてはこのような磁束の短絡が避けられている。
【0045】
図3に示されるように、多極電磁石100は、ボルト500を更に有している。
【0046】
図4に示されるように、ボルト500は、腕部240の端面248を貫通している。ボルト500は、隣接する鉄心200同士を固定している。
【0047】
図6及び図7に示されるように、多極電磁石100は、キー600と、棒状ピン700と、追加的棒状ピン800とを更に有している。
【0048】
図7を参照して、本実施の形態のキー600は、積層方向、即ち前後方向に延びる角柱形状を有している。キー600は、キー溝2522に挿入されている。
【0049】
図7を参照して、本実施の形態の棒状ピン700は、積層方向、即ち前後方向に延びる円柱形状を有している。棒状ピン700は、ピン孔2524に挿入されている。
【0050】
図6を参照して、本実施の形態の追加的棒状ピン800は、左右方向に延びる円柱形状を有している。追加的棒状ピン800は、追加的ピン孔2546に挿入されている。
【0051】
(構造体の製造方法)
図3及び図5から図8までを参照して、本実施の形態の構造体150の製造方法の一例について以下に詳述する。
【0052】
まず初めに、熱可塑性接着剤層が両面に被覆されたケイ素鋼板(図示せず)を所定形状に打ち抜いて接着鋼板(図示せず)を複数枚準備する。この打ち抜きの際に、キー溝要素(図示せず)が形成される。
【0053】
次に、複数枚の接着鋼板を熱可塑性接着剤層を介して積層した後、接着鋼板のキー溝要素にキー(図示せず)を挿入して接着鋼板同士の位置決めを行う。
【0054】
その後、接着鋼板に対して積層方向に圧力を加えつつ加熱処理を行い、接着鋼板同士を圧着する。これにより、所定数nの鉄心200A(図8参照)が製造される。ここで、製造された鉄心200Aは、継鉄部210Aと、磁極部270とを有している。継鉄部210Aは、支持部220Aと、2つの腕部240Aとを有している。腕部240Aの夫々は、当該腕部240Aの延びる方向と直交する端面248Aを有している。腕部240Aの端面248Aには、キー溝2522が形成されている。腕部240Aの夫々は、張り出し部250Aを有している。張り出し部250Aは、端面252Aを有している。腕部240Aの夫々は、第1部位242と、第2部位244と、第3部位246Aとを有している。なお、端面248Aのキー溝2522は、上述のキー溝要素により構成されたものである。
【0055】
その後、作製された鉄心200Aの腕部240Aの端面248A同士を直接接触させてから、キー溝2522にキー600を挿入して鉄心200A同士を荒く位置決めする。なお、この荒い位置決めの際に用いるキー600のキー溝2522に対するクリアランスは、接着鋼板同士の位置決めに用いた上述のキーのキー溝要素に対するクリアランスと比較して、大きくなっている。
【0056】
荒く位置決めされた所定数nの鉄心200Aは、ボルト500により固定されて予備的構造体(図示せず)を構成する。この状態において、予備的構造体は、最終的に組み上げられる多極電磁石100の磁極口径や磁極間隔の寸法精度が出るように鉄心200Aの相対位置が微調整される。
【0057】
上記微調整の後、予備的構造体の端面252Aの箇所にピン孔2524及び追加的ピン孔2546を形成したうえで、予備的構造体を鉄心200Aの夫々に再度分解する。
【0058】
この状態で、分解された鉄心200Aの磁極部270にコイル400を取り付ける。その後、コイル400が取り付けられた鉄心200A同士を再度連結したうえで、キー溝2522、ピン孔2524及び追加的ピン孔2546に、キー600、棒状ピン700及び追加的棒状ピン800を夫々挿入し、鉄心200A同士の精密な位置決めを行う。この際、棒状ピン700のピン孔2524に対するクリアランスは、キー600のキー溝2522に対するクリアランスよりも小さくなっている。同様に、追加的棒状ピン800の追加的ピン孔2546に対するクリアランスは、キー600のキー溝2522に対するクリアランスよりも小さくなっている。
【0059】
上述のように、棒状ピン700のピン孔2524に対するクリアランスは、キー600のキー溝2522に対するクリアランスよりも小さくなっていることから、棒状ピン700をピン孔2524に挿入することにより隣接する鉄心200A同士の前後方向と直交する平面内における位置合わせが精密に行われる。また、上述のように、追加的棒状ピン800の追加的ピン孔2546に対するクリアランスは、キー600のキー溝2522に対するクリアランスよりも小さくなっていることから、追加的棒状ピン800を追加的ピン孔2546に挿入することにより隣接する鉄心200A同士の前後方向における位置合わせが精密に行われる。即ち、本実施の形態の多極電磁石100は、ピン孔2524に挿入される棒状ピン700と追加的ピン孔2546に挿入される追加的棒状ピン800とを有することにより、多極電磁石100における磁極口径や磁極間隔の寸法精度の向上が容易となっている。
【0060】
上述のように、本実施の形態の鉄心200の腕部240の端面248は、当該腕部240と支持部220との境界230における当該腕部240の延びる方向と直交する断面よりも大きな面積を有している。これにより、腕部240の端面248に、キー溝2522に加えて、上述のピン孔2524の形成が可能となっており、上述のように分解された鉄心200Aを再度組み合わせる際の磁極口径や磁極間隙の寸法精度の向上が容易となっている。
【0061】
以上、本発明について実施の形態を掲げて具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形、変更が可能である。
【0062】
本実施の形態の多極電磁石100の支持部220は肩部226を有していたが、本発明はこれに限定されず、支持部220は、肩部226を有さなくてもよく、外縁部222,224が上下方向及び左右方向の双方向と斜交する斜面で連結されていてもよい。具体的には、構造体150の継鉄部210が略多角形状の閉じた枠体を構成していてもよい。
【符号の説明】
【0063】
100 多極電磁石
150 構造体
200,200A 鉄心
210,210A 継鉄部
220,220A 支持部
222 外縁部
224 外縁部
226 肩部
230 境界
240,240A 腕部
241 根元
242 第1部位
2422 内端面
244 第2部位
2442 斜面
246,246A 第3部位
2462 内端面
248,248A 端面
250,250A 張り出し部
252,252A 端面
2522 キー溝
2524 ピン孔
2546 追加的ピン孔
256 内端面
270 磁極部
272 根元
300 台座
400 コイル
410 部分
500 ボルト
600 キー
700 棒状ピン
800 追加的棒状ピン
C 中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定数の鉄心と、前記所定数と同数のコイルとを備える多極電磁石であって、
前記鉄心の夫々は、継鉄部と、磁極部とを有しており、
前記継鉄部は、支持部と、2つの腕部とを有しており、
前記腕部の夫々は、当該腕部の延びる方向と直交する端面を有しており、
前記2つの腕部の少なくとも一方は、当該腕部の延びる方向と直交する方向であって前記多極電磁石の中心に向かって張り出した張り出し部を有しており、
前記一方の腕部において、前記張り出し部の端面であって当該腕部の延びる方向と直交する端面は、当該腕部の前記端面を構成しており、
前記継鉄部において、前記一方の腕部の前記端面は、当該腕部と前記支持部との境界における当該腕部の延びる方向と直交する断面よりも大きな面積を有しており、
前記鉄心同士は、前記一方の腕部の前記端面同士を直接接触させた状態で互いに連結されており、
前記鉄心同士は、他方の前記腕部の前記端面同士を直接接触させた状態で互いに連結されており、
前記鉄心の夫々において、前記磁極部は、前記支持部から前記多極電磁石の前記中心に向かって延びており、
前記磁極部には、前記コイルが取り付けられており、
前記張り出し部は、隣接する前記コイル同士の最も近接した部分よりも前記多極電磁石の前記中心から離れている
多極電磁石。
【請求項2】
請求項1記載の多極電磁石であって、
前記所定数は、4,6,8のいずれかである
多極電磁石。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の多極電磁石であって、
前記一方の腕部は、第1部位と、第2部位と、第3部位とを有しており、
前記第1部位は、前記一方の腕部の根元から前記一方の腕部の前記端面に向かって一定の断面積で延びており、
前記第2部位は、前記第1部位から前記一方の腕部の前記端面に向かって断面積が増加しながら延びており、
前記第3部位は、前記第2部位から前記一方の腕部の前記端面まで延びている
多極電磁石。
【請求項4】
請求項3記載の多極電磁石であって、
前記第3部位は、一定の断面積を有している
多極電磁石。
【請求項5】
請求項1から請求項までのいずれかに記載の多極電磁石であって、
前記多極電磁石は、ボルトを更に有しており、
前記ボルトは、前記腕部の前記端面を貫通しており、
前記ボルトは、隣接する前記鉄心同士を固定している
多極電磁石。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれかに記載の多極電磁石であって、
前記多極電磁石は、キーと、棒状ピンとを更に有しており、
前記腕部の前記端面には、キー溝と、ピン孔とが形成されており、
前記キーは、前記キー溝に挿入されており、
前記棒状ピンは、前記ピン孔に挿入されている
多極電磁石。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれかに記載の多極電磁石であって、
前記鉄心同士が連結された状態において、前記腕部は、前記所定数をnとしたとき、2n個の辺を有する多角形のいずれかの辺上に位置している
多極電磁石。