(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072002
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】金属ストリップの蛇行量検出方法及び蛇行制御方法
(51)【国際特許分類】
B21B 37/68 20060101AFI20220510BHJP
B21C 49/00 20060101ALI20220510BHJP
B21B 39/14 20060101ALI20220510BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20220510BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B21B37/68
B21C49/00 C
B21B39/14 J
B21C51/00 R
B21B38/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181179
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星野 正法
【テーマコード(参考)】
4E026
4E124
【Fターム(参考)】
4E026AA04
4E026BA04
4E026BA16
4E026CB03
4E026HA02
4E124BB05
4E124BB18
4E124EE17
(57)【要約】
【課題】ルーパー内の金属ストリップの蛇行量をいずれの段においても省スペース及び省コストで検出することが可能な金属ストリップの蛇行量検出方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る金属ストリップの蛇行量検出方法は、間隔を空けて複数段重なって走行している金属ストリップの蛇行量を検出する金属ストリップの蛇行量検出方法であって、複数段重なった金属ストリップの幅方向の少なくとも一方側に金属ストリップの幅方向に並べて設けられた複数の距離計を用い、距離計の取付位置から金属ストリップの幅方向に交差する方向に対し距離を測定し、距離計の取付位置及び測定値を用いて蛇行が発生している金属ストリップの段と蛇行量を検出するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて複数段重なって走行している金属ストリップの蛇行量を検出する金属ストリップの蛇行量検出方法であって、
前記複数段重なった金属ストリップの幅方向の少なくとも一方側に前記金属ストリップの幅方向に並べて設けられた複数の距離計を用い、距離計の取付位置から前記金属ストリップの幅方向に交差する方向に対し距離を測定し、距離計の取付位置及び測定値を用いて蛇行が発生している金属ストリップの段と蛇行量を検出するステップを含むことを特徴とする金属ストリップの蛇行量検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属ストリップの蛇行量検出方法を用いて検出された金属ストリップの蛇行量に基づいて金属ストリップの蛇行を制御するステップを含むことを特徴とする金属ストリップの蛇行制御方法。
【請求項3】
蛇行を検出した段の金属ストリップの蛇行を修正した後に他の段の金属ストリップの蛇行を検出した場合、他の段の金属ストリップの蛇行を修正するステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の金属ストリップの蛇行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ストリップの蛇行量検出方法及び蛇行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋼板等の金属ストリップの処理ラインは、金属ストリップの払出しや溶接等を行う入側セクション、金属ストリップに対して焼鈍や圧延、酸洗等を行う中央セクション、及び金属ストリップの巻取りや切断を行う出側セクションによって構成されている。また、各セクションには、通板のサポートや張力制御等を行うための複数のロールが備えられ、金属ストリップはそれらのロール上を通過して入側から出側までの一連の工程を経ることになる。この一連の工程を通板と呼ぶ。
【0003】
中央セクションにおける通板速度を一定とすることによって金属ストリップの品質を一定に保つために、入側セクション、中央セクション、及び出側セクションそれぞれの間にはルーパーと呼ばれる金属ストリップの貯蓄・払出装置が設けられている。ルーパーは固定ロールとルーパーカーを備え、ルーパーカーが固定ロールから遠ざかるほど金属ストリップが貯蓄される。通常、ルーパーは、金属ストリップの貯蓄量を多くするために、金属ストリップが縦方向又は横方向に間隔を空けて複数段重なっている状態となる。
【0004】
ところで、金属ストリップは、ロールのすり減りや金属ストリップの形状等の要因によって、通板中にロールの幅方向中心位置から幅方向端部方向にずれることがある。この現象は蛇行と呼ばれている。金属ストリップの蛇行量が大きくなると、周辺設備と金属ストリップとの接触による設備の破損や急激な張力の変動による板破断を引き起こす可能性があり、大幅な生産ロスが懸念される。このような背景から、金属ストリップの蛇行量を制御する技術が提案されている。
【0005】
具体的には、一般的な蛇行制御装置としてCPC(Center Position Control)装置が知られており、CPC装置は蛇行検出器及び蛇行修正用動作機構(以下、ステアリングロール)を備えている。ここで、蛇行検出器としては、投受光器の対やAWC(Automatic Width Control)等を例示でき、蛇行修正用動作機構としては、ロール傾動機構等を例示できる。蛇行検出器は、金属ストリップの幅方向位置を検出する。そして、CPC装置は、蛇行検出器の検出値と目標位置との偏差を計算し、蛇行修正用動作機構を制御することによって偏差を小さくするように動作する。
【0006】
また、特許文献1には、投光器を用いて鋼板の蛇行を検出し、ステアリングロールの傾動によって鋼板の蛇行を修正する機能に対して、ルーパー内における鋼板の張力を低減させて蛇行修正能力を上げる方法が記載されている。また、特許文献2には、鋼板の幅方向に分割ロールを設け、分割ロールの両端部に作用する鋼板からの反力を検出して鋼板の蛇行量を演算する装置及び方法が記載されている。また、特許文献3には、複数の投受光器を用いてシート端部の位置を検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014-231432号公報
【特許文献2】特開2006-346715号公報
【特許文献3】特開2013-40038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ルーパー内は、ルーパーカーが走行し、ルーパーカーの走行通路に投受光器やAWC等の機器を設置することができない。このため、ルーパー内ではCPC装置を用いて金属ストリップの蛇行制御を行うことは困難である。一方、特許文献1に記載の方法には、投光器を用いるために固定ロール側の金属ストリップの蛇行しか検出できないという制約がある。また、特許文献2に記載の方法では、分割ロールや支持シャフト、圧力検出器等の多数の機器が必要となり、設置スペース及びコストが多くかかる。また、特許文献3に記載の方法では、ルーパー内等の金属ストリップが複数段存在する場所では、どの金属ストリップが蛇行しているかを検出できず、どのステアリングロールを傾動させるか判断できない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ルーパー内の金属ストリップの蛇行量をいずれの段においても省スペース及び省コストで検出することが可能な金属ストリップの蛇行量検出方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ルーパー内の金属ストリップの蛇行量をいずれの段においても省スペース及び省コストで検出して金属ストリップの蛇行を修正することが可能な金属ストリップの蛇行制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る金属ストリップの蛇行量検出方法は、間隔を空けて複数段重なって走行している金属ストリップの蛇行量を検出する金属ストリップの蛇行量検出方法であって、前記複数段重なった金属ストリップの幅方向の少なくとも一方側に前記金属ストリップの幅方向に並べて設けられた複数の距離計を用い、距離計の取付位置から前記金属ストリップの幅方向に交差する方向に対し距離を測定し、距離計の取付位置及び測定値を用いて蛇行が発生している金属ストリップの段と蛇行量を検出するステップを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る金属ストリップの蛇行制御方法は、本発明に係る金属ストリップの蛇行量検出方法を用いて検出された金属ストリップの蛇行量に基づいて金属ストリップの蛇行を制御するステップを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る金属ストリップの蛇行制御方法は、上記発明において、蛇行を検出した段の金属ストリップの蛇行を修正した後に他の段の金属ストリップの蛇行を検出した場合、他の段の金属ストリップの蛇行を修正するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る金属ストリップの蛇行量検出方法は、ルーパー内の金属ストリップの蛇行量をいずれの段においても省スペース及び省コストで検出できる。また、本発明に係る金属ストリップの蛇行制御方法によれば、ルーパー内の金属ストリップの蛇行量をいずれの段においても省スペース及び省コストで検出して金属ストリップの蛇行を修正できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御装置が適用されるルーパーの構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す距離計によって検出されるパラメータを説明するための図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御方法を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御方法を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御方法を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御装置の構成について説明する。
【0016】
〔ルーパーの構成〕
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御装置が適用されるルーパーの構成について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御装置が適用されるルーパーの構成を示す側面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御装置が適用されるルーパー1内では、金属ストリップ2が、ステアリングロール3とルーパーカー4との間を往復するように通板される。このため、ルーパー1内には間隔を空けて複数段の金属ストリップ2(2a,2b,2c,2d)が存在する。本実施形態では、金属ストリップの蛇行制御装置は、このルーパー1内の金属ストリップ2の蛇行量をいずれの段においても省スペース及び省コストで検出して金属ストリップ2の蛇行を修正する。
【0018】
〔金属ストリップの蛇行制御装置の構成〕
次に、
図2及び
図3を参照して、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御装置の構成について説明する。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御装置の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本発明の一実施形態である金属ストリップの蛇行制御装置10は、n台(n≧2)の距離計11、蛇行検出器12、及び制御装置13を備えている。
【0020】
図3に示すように、距離計11は、複数段重なった金属ストリップ2の幅方向の少なくとも一方側に金属ストリップ2の幅方向に並べて設けられた1次元距離計により構成されている。距離計11は、パラメータh,lの値を検出し、検出値を示す電気信号を蛇行検出器12に出力する。ここで、パラメータhは距離計11(11_j(j=1~n))の地面Fからの高さ、パラメータlは距離計11(11_j(j=1~n))の測定値を示す。なお、図中、C
j(j=1~n)は距離計11の幅方向取付位置を示す。距離計11の取付位置は使用者が許容できる金属ストリップ2の蛇行量に応じて変化し、また距離計11の台数によって制御量の細かさを決定することができる。また、金属ストリップ2の幅方向の負荷側及び反負荷側の両方に距離計11を設定することにより、どちらの方向への金属ストリップ2の蛇行も検出することができる。
【0021】
蛇行検出器12は、距離計11から出力された電気信号に基づいてi段目(本例ではIi=1~4)の金属ストリップ2の蛇行量siを検出し、検出された蛇行量siを示す電気信号を制御装置13に出力する。
【0022】
制御装置13は、蛇行検出器12によって検出されたi段目の金属ストリップ2の蛇行量siが所定範囲内になるように制御する。具体的には、制御装置13は、i段目の金属ストリップ2に直接繋がっているステアリングロールを傾動させることによりi段目の金属ストリップ2の蛇行を修正する。
【0023】
以下、
図4~
図10を参照して、蛇行検出器12及び制御装置13による金属ストリップ2の蛇行量検出方法及び蛇行制御方法について詳しく説明する。
【0024】
まず、
図4に示すように、金属ストリップ2cのみが蛇行した場合を想定する。この場合、距離計11_1と距離計11_2の測定値lはh
3、距離計11_3の測定値lはhである。これにより、蛇行検出器12は、金属ストリップ2dには蛇行が発生しておらず、金属ストリップ2cには距離計11_2の幅方向取付位置に相当する蛇行量c
2が発生していると判定する。このため、制御装置13は、金属ストリップ2cの蛇行量c
2が修正されるように、金属ストリップ2cと直接繋がっているステアリングロールを傾動させることにより金属ストリップ2cの蛇行を修正する。この結果、
図5に示すように、全ての距離計11の測定値lがhとなり、金属ストリップ2a~2dのいずれも蛇行が発生していないことが検知される。
【0025】
次に、
図6に示すように、複数の金属ストリップ(例えば金属ストリップ2c及び金属ストリップ2d)が蛇行し、そのそれぞれの蛇行を検出できる場合を想定する。この場合、距離計11_1の測定値lはh
4、距離計11_2の測定値lはh
3、距離計11_3の測定値lはhである。これにより、蛇行検出器12は、金属ストリップ2dには距離計11_1の幅方向取付位置に相当する蛇行量c
1が発生し、金属ストリップ2cには距離計11_2の幅方向取付位置に相当する蛇行量c
2が発生していると判定する。このため、制御装置13は、金属ストリップ2d及び金属ストリップ2cのそれぞれの蛇行量が修正されるように、金属ストリップ2dと直接繋がっているステアリングロールを傾動させて金属ストリップ2dの蛇行を修正しつつ、金属ストリップ2cと直接繋がっているステアリングロールを傾動させて金属ストリップ2cの蛇行を修正する。この結果、
図7に示すように、全ての距離計の測定値lがhとなり、金属ストリップ2a~2dのいずれも蛇行が発生していないことが検知される。
【0026】
最後に、
図8に示すように、複数の金属ストリップ(例えば金属ストリップ2b及び金属ストリップ2d)が蛇行しているものの、その一部の蛇行のみ検出している場合を想定する。この場合、距離計11_1,11_2の測定値lはh
4、距離計11_3の測定値lはhである。これにより、蛇行検出器12は、金属ストリップ2dには距離計11_2の幅方向取付位置に相当する蛇行量c
2が発生していると判定する。このため、制御装置13は、金属ストリップ2dの蛇行量が修正されるように、金属ストリップ2dと直接繋がっているステアリングロールを傾動させて金属ストリップ2dの蛇行を修正する。この結果、
図9に示すように、距離計11_1の測定値lがh
2、距離計11_2,11_3の測定値lがhとなる。これにより、蛇行検出器12は、金属ストリップ2c,2dには蛇行が発生しておらず、金属ストリップ2bには距離計11_1の取付位置に相当する蛇行量c
1が発生していると判定する。このため、制御装置13は、金属ストリップ2bの蛇行量が修正されるように金属ストリップ2bに直接繋がっているステアリングロールを傾動させて金属ストリップ2dの蛇行を修正する。この結果、
図10に示すように、全ての距離計の測定値lがhとなり、金属ストリップ2a~2dのいずれも蛇行が発生していないことが検知される。
【0027】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本発明は、金属ストリップが複数段重なっている場所での使用を特徴とするため、ルーパー以外の場所(例えば、金属ストリップの払い出し装置が複数備わっている場合の金属ストリップの合流部付近等)にも適用可能である。このように、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1 ルーパー
2、2a、2b、2c、2d 金属ストリップ
3 ステアリングロール
4 ルーパーカー
10 金属ストリップの蛇行制御装置
11、11_1、11_2、11_3、11_n 距離計
12 蛇行検出器
13 制御装置