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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072037
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】主機制御システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 43/00 20060101AFI20220510BHJP
   B63B 79/20 20200101ALI20220510BHJP
   B63H 21/21 20060101ALI20220510BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
F02D43/00 310Z
B63B79/20
B63H21/21
F02D45/00 372
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181234
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】303047034
【氏名又は名称】株式会社ジャパンエンジンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳楠 力一
(72)【発明者】
【氏名】舟越 好太郎
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA26
3G384DA04
3G384EA26
(57)【要約】
【課題】船舶個別の海上運用に合った主機の最適な制御が可能な主機制御システムを提供すること。
【解決手段】主機制御システムは、船舶の主機を制御するための演算処理を行う演算ユニットと、前記主機の制御用データと前記主機の監視用データとの少なくとも一つのデータである分析用データをもとに前記主機の運転状態を分析して前記主機の制御を支援する分析ユニットとを備える。前記分析ユニットは、前記主機を模擬する第1数理モデルが設定され、前記分析用データを前記第1数理モデルで処理して、前記主機の制御を支援するための制御支援パラメータが導出される第1処理領域と、前記第1数理モデルとして適用される数理モデルの候補である第2数理モデルが設定され、時系列に沿って蓄積された前記分析用データをもとに、前記主機の制御とは独立して前記第2数理モデルのテスト処理が実行される第2処理領域とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の主機を制御するための演算処理を行う演算ユニットと、
前記主機の制御に関連する制御用データと前記主機の監視に必要な監視用データとの少なくとも一つをもとに、前記主機の運転状態を分析して前記主機の制御を支援する分析ユニットと、
を備え、
前記分析ユニットは、
前記主機を模擬する第1数理モデルが設定され、前記制御用データおよび前記監視用データの少なくとも一つを前記第1数理モデルで処理して、前記主機の制御を支援するための制御支援パラメータが導出される第1処理領域と、
前記第1数理モデルとして適用される数理モデルの候補である第2数理モデルが設定され、時系列に沿って蓄積された前記制御用データおよび前記監視用データの少なくとも一つをもとに、前記主機の制御とは独立して前記第2数理モデルのテスト処理が実行される第2処理領域と、
を有することを特徴とする主機制御システム。
【請求項2】
前記分析ユニットは、前記テスト処理の結果をもとに前記第2数理モデルの習熟度を算出するモデル処理部を更に備え、
算出された前記習熟度が基準習熟度以上である場合、前記第2数理モデルは前記第1数理モデルとして適用され、算出された前記習熟度が前記基準習熟度未満である場合、前記第2数理モデルに対して前記テスト処理が再度実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の主機制御システム。
【請求項3】
前記モデル処理部は、前記第2数理モデルの習熟度が前記基準習熟度以上であるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の主機制御システム。
【請求項4】
前記第2数理モデルを指定するモデル指定ユニットを備え、
前記モデル指定ユニットによって指定された前記第2数理モデルに対して、前記テスト処理が実行される、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の主機制御システム。
【請求項5】
前記主機に設けられている第1センサによって検出され、前記制御用データに含まれる第1検出データを、前記演算ユニットおよび前記分析ユニットに対して入出力する第1入出力ユニットと、
前記主機に設けられている第2センサによって検出され、前記監視用データに含まれる第2検出データを、前記演算ユニットおよび前記分析ユニットに対して入出力する第2入出力ユニットと、
を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の主機制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の主機制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の主機(内燃機関)の多くには主機制御システムが搭載され、この主機制御システムによって主機の制御が行われている。一般に、主機制御システムは、主機の回転数、燃料噴射ポンプや排気弁の作動量等、主機の制御に関連する制御用データを、主機に設けられた各種センサから取り込み、取り込んだ制御用データに対して1/1000秒単位でのリアルタイムな演算処理(以下、リアルタイム処理という)を実行する。これにより、主機制御システムは、主機を制御するための各種操作量を決定して、主機の回転数や各シリンダへの燃料噴射量等を制御する。
【0003】
このような主機制御システムに関する従来技術として、例えば、海上運航されている船舶の主機の燃焼プロセスを最適化するためのシステムが提案されている(特許文献1参照)。また、主機および船体を含む船舶を制御対象とし、主機の運転を制御する制御部からの操作量を入力とするオブザーバにおいて制御対象の経年変化の影響を受ける物理量を推定し、この物理量の経年変化前の値と経年変化後の値に基づいて主機の制御パラメータを変更する船舶のエンジン制御装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-7374号公報
【特許文献2】特開2011-214467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、船舶では、上述した主機制御システムによる主機の制御とは別に、船級等の規定や主機メーカの思想に基づいて主機の監視が行われる。一般に、主機の監視に必要な監視用データ(例えば主機のシリンダ出口における排ガスの温度や潤滑油(LO)の圧力等に代表されるデータ)は、主機に設けられた各センサによって検出される。検出された監視用データは、主機の各センサから中継箱等を介して、船舶の機関制御室内に設置されているエンジンモニタ(データロガー)に順次取り込まれる。主機の監視では、得られた監視用データが時系列に沿って一定期間または一定量のデータ群に纏められ、このデータ群が、エンジンモニタにより、テーブルまたはグラフ等、時系列に沿った形式でモニタリングされる。
【0006】
また、上記時系列のデータ群は、主機の監視のみならず、主機の制御の最適化を支援することを目的として、一括してデータ処理され得る。しかしながら、従来の主機制御システムでは、上述したように制御用データのリアルタイム処理が実行されるため、上記時系列のデータ群の一括処理に対応することは困難である。近年、船舶の分野においては、船舶個別の主機に対し、海上での実運用(以下、海上運用と略記する)に合った最適な制御を行えることが要望されている。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、船舶個別の海上運用に合った主機の最適な制御を行うことができる主機制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る主機制御システムは、船舶の主機を制御するための演算処理を行う演算ユニットと、前記主機の制御に関連する制御用データと前記主機の監視に必要な監視用データとの少なくとも一つをもとに、前記主機の運転状態を分析して前記主機の制御を支援する分析ユニットと、を備え、前記分析ユニットは、前記主機を模擬する第1数理モデルが設定され、前記制御用データおよび前記監視用データの少なくとも一つを前記第1数理モデルで処理して、前記主機の制御を支援するための制御支援パラメータが導出される第1処理領域と、前記第1数理モデルとして適用される数理モデルの候補である第2数理モデルが設定され、時系列に沿って蓄積された前記制御用データおよび前記監視用データの少なくとも一つをもとに、前記主機の制御とは独立して前記第2数理モデルのテスト処理が実行される第2処理領域と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る主機制御システムは、上記の発明において、前記分析ユニットは、前記テスト処理の結果をもとに前記第2数理モデルの習熟度を算出するモデル処理部を更に備え、算出された前記習熟度が基準習熟度以上である場合、前記第2数理モデルは前記第1数理モデルとして適用され、算出された前記習熟度が前記基準習熟度未満である場合、前記第2数理モデルに対して前記テスト処理が再度実行される、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る主機制御システムは、上記の発明において、前記モデル処理部は、前記第2数理モデルの習熟度が前記基準習熟度以上であるか否かを判定する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る主機制御システムは、上記の発明において、前記第2数理モデルを指定するモデル指定ユニットを備え、前記モデル指定ユニットによって指定された前記第2数理モデルに対して、前記テスト処理が実行される、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る主機制御システムは、上記の発明において、前記主機に設けられている第1センサによって検出され、前記制御用データに含まれる第1検出データを、前記演算ユニットおよび前記分析ユニットに対して入出力する第1入出力ユニットと、前記主機に設けられている第2センサによって検出され、前記監視用データに含まれる第2検出データを、前記演算ユニットおよび前記分析ユニットに対して入出力する第2入出力ユニットと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、船舶個別の海上運用に合った主機の最適な制御を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る主機制御システムの一構成例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態1における数理モデルの実用化方法の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施形態2に係る主機制御システムの一構成例を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施形態2における数理モデルの実用化方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る主機制御システムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0016】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る主機制御システムについて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る主機制御システムの一構成例を示すブロック図である。本実施形態1に係る主機制御システム1は、対象とする船舶の主機を制御するものであり、図1に示すように、第1入出力ユニット2と、第2入出力ユニット3と、駆動ユニット4と、ディスプレイユニット6と、演算ユニット8と、分析ユニット10とを備える。また、この船舶内には、図1に示す操縦装置5とエンジンモニタ7とが、主機制御システム1とは別に設けられている。
【0017】
特に図示しないが、「対象とする船舶」は、制御対象となる主機と、当該主機を制御する主機制御システム1とが搭載されている船舶である。「制御対象となる主機」は、クランクシャフト等の出力軸を介して船舶の推進用プロペラを回転運動させる推進用の内燃機関(主機関)である。このような主機として、例えば、ユニフロー掃排気式のクロスヘッド型ディーゼルエンジン等の2ストロークディーゼルエンジンが挙げられる。以下、特に説明がない限り、船舶といえば、「制御対象となる主機を搭載している船舶」を意味し、主機といえば、本発明に係る主機制御システム(本実施形態1では図1に例示する主機制御システム1)の制御対象となる主機を意味する。
【0018】
第1入出力ユニット2は、主機に設けられている第1センサ101(図1参照)による第1検出データを演算ユニット8および分析ユニット10に対して入出力する。例えば、第1センサ101は、主機に複数設けられている。これら複数の第1センサ101は、それぞれ、後述の第1検出データを検出する。第1入出力ユニット2は、主機に設けられており、これら複数の第1センサ101の各々から第1検出データを入力する。第1入出力ユニット2は、このように入力した各第1検出データを、演算ユニット8および分析ユニット10へ順次出力する。
【0019】
第1センサ101による第1検出データは、主機の制御に関連する制御用データに含まれる検出データ(センサ信号)である。このような第1検出データとして、例えば、主機の回転数、クランク角度、筒内圧力、作動油圧力、掃気圧力、主機の過給機が吸い込む燃焼用気体の温度(過給機吸込み温度)、シリンダ油の温度および圧力等、主機の制御周期毎に制御対象の事象の変化が現れるデータが挙げられる。なお、主機の制御周期は、主機を制御するための演算ユニット8による演算処理(リアルタイム処理)の実行周期に相当し、例えば1/1000秒単位の周期である。
【0020】
第2入出力ユニット3は、主機に設けられている第2センサ102(図1参照)による第2検出データを分析ユニット10に対して入出力する。例えば、第2センサ102は、主機に複数設けられている。これら複数の第2センサ102は、それぞれ、後述の第2検出データを検出する。第2入出力ユニット3は主機に設けられており、これら複数の第2センサ102の各々から第2検出データを入力する。第2入出力ユニット3は、このように入力した各第2検出データを、演算ユニット8および分析ユニット10へ順次出力する。
【0021】
第2センサ102による第2検出データは、主機の監視に必要な監視用データに含まれる検出データ(センサ信号)である。このような第2検出データとして、例えば、主機のシリンダから排出される排ガスの温度および圧力、主機に用いられる冷却水やシステム油の温度および圧力等、主機の制御周期よりも長い周期(以下、長周期という)毎に監視対象の事象の変化が現れるデータが挙げられる。
【0022】
駆動ユニット4は、主機を駆動させるためのユニットである。詳細には、駆動ユニット4は、主機のシリンダに対応して、必要数(本実施形態1では複数)主機に設けられる。これら複数の駆動ユニット4は、それぞれ、演算ユニット8によって出力された制御信号に基づいて、主機の駆動系統の電磁弁を動作させる。駆動ユニット4が動作させる電磁弁として、例えば、燃料噴射系統の電磁弁、排気動弁系統の電磁弁、シリンダ注油系統の電磁弁等が挙げられる。
【0023】
操縦装置5は、船舶を操縦するための装置である。詳細には、操縦装置5は、船舶の機関制御室(機関室)に設けられる。操縦装置5は、ユーザによるレバー操作等に応じて、主機の目標(指令)回転数、主機の始動や停止を指示する指示データを演算ユニット8および分析ユニット10へ出力する。
【0024】
ディスプレイユニット6は、主機の運転状態等、船舶に関する各種情報を表示する。詳細には、ディスプレイユニット6は、液晶ディスプレイ等の表示デバイスによって構成され、船舶の機関制御室に設けられる。例えば、ディスプレイユニット6は、演算ユニット8によって物理量変換等の処理が施された第1検出データを演算ユニット8から受信する。また、ディスプレイユニット6は、演算ユニット8によって物理量変換等の処理が施された第2検出データを演算ユニット8から受信する。ディスプレイユニット6は、主機の運転状態を示すデータとして、演算ユニット8による処理後の第1検出データおよび第2検出データを表示する。
【0025】
エンジンモニタ7は、船舶の機関室全体を監視するための装置である。詳細には、エンジンモニタ7は、データロガー等によって構成され、船舶の機関制御室に設けられる。エンジンモニタ7は、船舶の補機系統に設けられたセンサ(図示せず)等から、当該補機系統の状態を示す補機状態データを受信する。エンジンモニタ7は、受信した補機状態データを、時系列に沿って蓄積するとともに分析ユニット10へ出力する。なお、船舶の補機系統としては、例えば、油(潤滑油や燃料油等)または水等を主機へ供給するためのポンプやフィルタ、発電機、補助ボイラ、造水器等、主機以外の装置が挙げられる。
【0026】
演算ユニット8は、船舶の主機を制御するための演算処理を行う。詳細には、演算ユニット8は、演算パラメータ等を格納するメモリおよびプログラムを実行するCPU等によって構成され、主機に設けられる。演算ユニット8は、第1入出力ユニット2、各駆動ユニット4、操縦装置5および分析ユニット10とデータの送受信可能に接続されている。演算ユニット8は、これらの装置およびユニットから制御用データを受信し、その都度、リアルタイムに制御用データを演算処理(リアルタイム処理)する。これにより、演算ユニット8は、各駆動ユニット4の制御値を導出し、導出した制御値に対応する制御信号を各駆動ユニット4に出力して、各駆動ユニット4を制御する。また、演算ユニット8は、分析ユニット10から制御支援パラメータを受信した場合、その都度、この制御支援パラメータを加味して上述の制御値を導出し、導出した制御値に対応する制御信号の出力により、各駆動ユニット4の制御を補正または制限する。このような駆動ユニット4の制御による主機の制御に並行して、演算ユニット8は、上記導出した制御値を示すデータである演算データを、分析ユニット10へ出力する。
【0027】
なお、演算ユニット8によってリアルタイム処理される制御用データとしては、例えば、主機の第1センサ101によって検出された第1検出データ、操縦装置5からの指示データ等が挙げられる。
【0028】
また、演算ユニット8は、第1入出力ユニット2を介して各第1センサ101から受信した第1検出データを演算処理することにより、主機に発生した異常を検知することができる。演算ユニット8は、主機の異常を検知する都度、検知した主機の異常を示す異常検知データをディスプレイユニット6および分析ユニット10へ出力する。ディスプレイユニット6は、この異常検知データをもとに、主機の異常を示す情報を表示することができる。
【0029】
分析ユニット10は、主機の制御に関連する制御用データと主機の監視に必要な監視用データとをもとに、主機の運転状態を分析して主機の制御を支援する。詳細には、図1に示すように、分析ユニット10は、インタフェース11と、データ処理部12と、モデル処理部15と、メモリ16と、制御部18とを備え、主機に設けられる。
【0030】
インタフェース11は、分析ユニット10が主機の制御用データおよび監視用データの少なくとも一つのデータ(以下、分析用データという)を取り込むためのデータ入出力インタフェースである。詳細には、インタフェース11は、第1入出力ユニット2、操縦装置5および演算ユニット8から主機の制御用データを受け入れ、第2入出力ユニット3およびエンジンモニタ7から主機の監視用データを受け入れる。例えば、インタフェース11は、主機の制御用データとして、主機の各第1センサ101による第1検出データを第1入出力ユニット2から受け入れ、船舶を操縦するための指示データを操縦装置5から受け入れ、主機制御時の演算データおよび主機の異常検知データ等を演算ユニット8から受け入れる。また、インタフェース11は、主機の監視用データとして、主機の各第2センサ102による第2検出データを第2入出力ユニット3から受け入れ、補機系統の状態を示す補機状態データをエンジンモニタ7から受け入れる。
【0031】
インタフェース11を介して分析ユニット10に取り込まれる主機の制御用データとして、例えば、主機の制御状態を示すデータ、主機の制御イベントを示すデータ、主機制御時の演算処理に関するデータ等が挙げられる。
【0032】
具体的には、主機の制御状態を示すデータとして、例えば、回転数(出力軸の回転数)、負荷(エンジン負荷)、燃料投入量、掃気圧力、過給機吸込み温度、燃料噴射角度、燃料噴射期間、燃料噴射ポンプの動作量、排気弁の開閉角度、排気弁の動作量、シリンダ油の温度と圧力、シリンダ注油量、シリンダ注油角度、注油器の動作量、筒内圧力、作動油圧力、作動油ポンプの動作量、注水率、注水量、EGR率等のパラメータが挙げられる。また、主機の制御状態を示すデータとしては、例えば、主機の排気系統のバルブ開閉状態を示すパラメータ、主機の掃気系統のバルブ開閉状態を示すパラメータ等も挙げられる。
【0033】
主機の制御イベントを示すデータとして、例えば、主機の始動または停止を示すパラメータ、主機の運転モードを示すパラメータ、主機の異常検知データ等が挙げられる。また、主機制御時の演算処理に関するデータとして、例えば、演算ユニット8が実行する演算処理の重み付け係数等の設定値、演算結果(演算データ)等が挙げられる。
【0034】
また、インタフェース11を介して分析ユニット10に取り込まれる主機の監視用データとして、例えば、主機の性能を示すデータ、主機の構成部品の状態を示すデータ、補機系統に関するデータ等が挙げられる。
【0035】
具体的には、主機の性能を示すデータとして、例えば、排ガスの温度や圧力、システム油の温度や圧力、冷却水の温度や圧力、吸込み空気の温度や圧力、掃気空気の温度や圧力等が挙げられる。また、主機の構成部品の状態を示すデータとして、例えば、主機の軸受温度や摩耗量、シリンダライナの温度や摩耗量、システム油の水分濃度、シリンダドレンの鉄分濃度、主機に搭載されている各種装置の振動と音響から算出される数値、点検画像等が挙げられる。また、補機系統に関するデータとして、例えば、補機系統から主機へ供給されている油類や水類の性状を示すパラメータ、補機系統の状態を示すパラメータ等が挙げられる。
【0036】
データ処理部12は、主機の運転状態を分析して主機の制御を支援するためのデータ処理等を実行する。詳細には、データ処理部12は、演算パラメータを記憶するメモリおよびプログラムを実行するCPU等によって構成され、図1に示すように、主機の制御に関与するデータ処理が実行される第1処理領域13と、主機の制御とは独立したデータ処理が実行される第2処理領域14とを有する。
【0037】
第1処理領域13には、図1に示すように第1数理モデル13bが設定される。第1数理モデル13bは、主機を模擬する数理モデルである。例えば、主機を模擬する数理モデルとして、主機の動作を模擬(再現)する数理モデル、主機の状態を示す数理モデル、主機の状態を予測する数理モデル等が挙げられる。また、データ処理部12は、第1処理領域13に第1前処理部13aと第1後処理部13cとを有する。第1前処理部13aは、分析ユニット10に取り込まれた分析用データを、第1数理モデル13bによって処理可能な形式のデータに変換する。第1後処理部13cは、第1数理モデル13bによって導出されたデータを、演算ユニット8によって処理可能な形式のデータ(パラメータ)に変換する。このような第1処理領域13において、データ処理部12は、上述の分析用データを第1数理モデル13bで処理する。これにより、第1処理領域13では、主機の制御を支援するための制御支援パラメータが導出される。
【0038】
第2処理領域14には、図1に示すように第2数理モデル14bが設定される。第2数理モデル14bは、主機を模擬する数理モデルであると同時に、上述の第1数理モデル13bとして適用される数理モデルの候補である。また、データ処理部12は、第2処理領域14に第2前処理部14aと第2後処理部14cとを有する。第2前処理部14aは、分析ユニット10に取り込まれ、時系列に沿って蓄積された分析用データを、第2数理モデル14bによって処理可能な形式のデータに変換する。第2後処理部14cは、第2数理モデル14bによって導出されたデータを、モデル処理部15によって処理可能な形式のデータに変換する。このような第2処理領域14では、上述の時系列に沿って蓄積された分析用データをもとに、主機の制御とは独立して第2数理モデル14bのテスト処理が実行される。
【0039】
モデル処理部15は、主機の制御に関与する第1数理モデル13bの処理と、主機の制御とは独立してテスト処理される第2数理モデル14bの処理とを実行する。詳細には、モデル処理部15は、演算パラメータを記憶するメモリおよびプログラムを実行するCPU等によって構成される。モデル処理部15は、第2処理領域14における第2数理モデル14bのテスト処理の結果をもとに、この第2数理モデル14bの習熟度を算出する。また、分析ユニット10のメモリ16には、第2数理モデル14bの習熟度の判定基準となる基準習熟度が予め格納されている。この基準習熟度は、モデル処理部15によってメモリ16から適宜読み込まれる。モデル処理部15は、算出した第2数理モデル14bの習熟度が基準習熟度以上であるか否かを判定する。モデル処理部15によって算出された第2数理モデル14bの習熟度が基準習熟度以上である場合、この第2数理モデル14bは、モデル処理部15により、第1処理領域13の第1数理モデル13bとして適用される。上記算出された第2数理モデル14bの習熟度が基準習熟度未満である場合、第2処理領域14では、モデル処理部15により、この第2数理モデル14bに対してテスト処理が再度実行される。
【0040】
メモリ16は、分析ユニット10が取り込んだ分析用データ等の各種データを格納して蓄積する。詳細には、メモリ16は、ハードディスクデバイスに例示される不揮発性の記憶デバイス等によって構成される。メモリ16は、上述した主機の制御用データおよび監視用データの少なくとも一つである分析用データを、インタフェース11を介して順次受け入れ、受け入れた分析用データに対し、データを分類するためのインデックスと時系列順を示すタイムスタンプとを付与する。そして、メモリ16は、これらの分析用データを、インデックス別に格納するとともに、時系列データとして時系列に沿って蓄積する。
【0041】
また、メモリ16は、数理モデルを生成するための数式等のモデルデータ群を格納する。本実施形態1において、上記モデルデータ群には、第1数理モデル13bに用いられるモデルデータと第2数理モデル14bに用いられるモデルデータとが含まれる。これらのモデルデータは、例えば、インデックスを付与することによって数理モデル別に分類される。特に、メモリ16は、第2数理モデル14bのモデルデータに対し、テスト処理による第2数理モデル14bの習熟度を示すインデックスを付与し、当該モデルデータを、第2数理モデル14bの習熟度と対応付けて格納する。また、メモリ16は、第2数理モデル14bのテスト処理結果を示すデータ(以下、テスト結果データという)を格納する。
【0042】
制御部18は、分析ユニット10を構成する各構成部を制御する。詳細には、制御部18は、プログラムを実行するCPU等によって構成され、インタフェース11とデータ処理部12とモデル処理部15とメモリ16との各間におけるデータの入出力を制御する。また、制御部18は、上述したデータ処理部12、モデル処理部15およびメモリ16の各動作を制御する。なお、データ処理部12およびモデル処理部15は、ハードウェア構成としているが、これに限定されず、制御部18のプログラム実行に基づくソフトウェア構成によって実現されてもよい。データ処理部12およびモデル処理部15をソフトウェア構成によって実現する場合、これらデータ処理部12およびモデル処理部15は、制御部18の一機能部として当該制御部18に含まれていてもよい。
【0043】
上述した構成を有する主機制御システム1は、主機に設けられている複数の駆動ユニット4の各々を、演算ユニット8による演算処理の結果に基づいて制御する。これにより、主機制御システム1は、主機の回転数制御と、これに伴う燃料噴射制御、排気弁作動制御、作動油圧力制御およびシリンダ注油制御等の主機の各種制御とを行う。
【0044】
詳細には、図1に示す主機制御システム1において、演算ユニット8は、主機の目標回転数、始動または停止等を指示する指示データを操縦装置5から取得する。また、演算ユニット8は、複数の第1センサ101の各々によって検出された第1検出データを、第1入出力ユニット2を介して取得する。演算ユニット8は、例えば1/1000秒単位の周期で第1検出データを取得する都度、当該第1検出データと操縦装置5からの指示データとをもとにリアルタイム処理を実行する。これにより、演算ユニット8は、制御対象とする駆動ユニット4の動作量(操作量)を決定する制御値をリアルタイムに導出し、導出した制御値に対応する制御信号を当該駆動ユニット4に出力する。このようにして、演算ユニット8は、複数の駆動ユニット4の各々を制御する。
【0045】
また、演算ユニット8は、上述した駆動ユニット4の制御を行うとともに、主機の運転状態を監視する。例えば、演算ユニット8は、第1入出力ユニット2を介して取得した第1検出データが主機の異常を示すデータである場合、この第1検出データをもとに、主機の異常発生を検知する。または、演算ユニット8は、第2入出力ユニット3を介して取得した第2検出データが主機の異常を示すデータである場合、この第2検出データをもとに、主機の異常発生を検知する。その後、演算ユニット8は、上述したリアルタイム処理による演算データおよび異常検知データを、主機の制御用データおよび監視用データの一部として分析ユニット10に出力する。
【0046】
上述した主機の制御に並行して、分析ユニット10は、上記演算ユニット8等から時系列に沿って順次取り込んだ主機の制御用データおよび監視用データの少なくとも一つをもとに、主機の運転状態を分析して主機の制御を支援する。
【0047】
詳細には、分析ユニット10の第1処理領域13において、第1前処理部13aは、メモリ16に蓄積された時系列データの中から、主機の制御の支援に必要なデータを読み込む。当該データとして、例えば、時系列データのうち最新の制御用データおよび監視用データを含むデータ群等が挙げられる。より具体的には、第1前処理部13aは、上記時系列データの中から、最新の制御用データを含む複数の制御用データを、各データの時間間隔が主機の制御周期と同じになるように抽出して読み込む。また、第1前処理部13aは、上記時系列データの中から、最新の監視用データを含む複数の監視用データを、各データの時間間隔が主機の制御周期よりも長くなる(長周期となる)ように間引く等して読み込む。第1前処理部13aは、読み込んだデータを、第1数理モデル13bによって処理可能な形式のデータに変換し、変換処理後のデータを第1数理モデル13bへ出力する。
【0048】
第1数理モデル13bは、第1前処理部13aから受け入れたデータ群を一括して処理し、これにより、現時点までの船舶の海上運用を加味した主機の運転状態を示すデータを導出する。以下、このように時系列に沿ったデータ群に対する一括したデータ処理は、バッチ処理と称される。第1後処理部13cは、第1数理モデル13bによって導出された上記データを受け入れて処理し、これにより、主機の運転状態の最適化や予防保全に寄与するための制御支援パラメータを導出する。上記制御支援パラメータとしては、例えば、主機の燃料消費を低減するための駆動ユニット4の操作量、主機の運転状態の異常を示す指数、主機の構成部品の故障確率等が挙げられる。第1後処理部13cは、導出した制御支援パラメータを演算ユニット8へ出力する。
【0049】
上述した制御支援パラメータが分析ユニット10から演算ユニット8へ出力された場合、演算ユニット8は、この制御支援パラメータをもとに上述の制御値を補正し、補正後の制御値に対応する制御信号を各駆動ユニット4へ出力する。これにより、演算ユニット8は、現時点までの船舶の海上運用を加味して各駆動ユニット4を制御する。或いは、演算ユニット8は、上記制御支援パラメータによって示される主機の運転状態や構成部品の故障確率を加味して、上述の制御値を導出し、この導出した制御値に対応する制御信号によって各駆動ユニット4を制御する。これにより、演算ユニット8は、主機の制御の最適化や制限をして当該主機の運転状態の最適化や予防保全に寄与する。以上のようにして、演算ユニット8は、船舶個別の海上運用に合った最適な主機の制御を行う。
【0050】
一方、上述した主機制御システム1において、分析ユニット10は、主機の制御とは独立して、第2数理モデル14bを実用化するためのデータ処理(バッチ処理)を実行する。図2は、本発明の実施形態1における数理モデルの実用化方法の一例を示すフローチャートである。
【0051】
本実施形態1における第2数理モデル14bの実用化方法において、分析ユニット10(図1参照)は、図2に示すように、主機の制御用データおよび監視用データを時系列に沿って蓄積する(ステップS101)。ステップS101において、メモリ16は、インタフェース11を介して主機の制御用データおよび監視用データを順次受け入れる。メモリ16は、受け入れた制御用データおよび監視用データを、インデックスおよびタイムスタンプの付与等により、データの種類別に分類するとともに時系列データとして時系列に沿って蓄積する。
【0052】
つぎに、分析ユニット10は、テスト対象である第2数理モデル14bのテスト処理を実行する(ステップS102)。ステップS102において、モデル処理部15は、まず、機械学習等の手法により、船舶個別の海上運用を加味した主機の動作を第2数理モデル14bに学習させる。この際、データ処理部12の第2処理領域14において、第2前処理部14aは、メモリ16に蓄積されている時系列データの中から、第2数理モデル14bの学習に必要な教師データを読み込む。この教師データとしては、例えば、上記時系列データのうち最新の制御用データおよび監視用データを含む所定期間分のデータ群等が挙げられる。第2前処理部14aは、上記時系列データの中から、最新の制御用データを含む所定期間分の制御用データ群を、各データの時間間隔が主機の制御周期と同じになるように抽出して読み込む。また、第2前処理部14aは、上記時系列データの中から、最新の監視用データを含む所定期間分の監視用データ群を、各データの時間間隔が主機の制御周期よりも長くなるように間引く等して読み込む。第2前処理部14aは、読み込んだ教師データを、第2数理モデル14bによって処理可能な形式のデータに変換し、変換処理後の教師データを第2数理モデル14bへ出力する。第2数理モデル14bは、第2前処理部14aから受け入れた教師データを時系列に沿って順次処理し、これにより、船舶の海上運用を加味した主機の動作を学習する。
【0053】
また、ステップS102において、モデル処理部15は、学習処理後の第2数理モデル14bに対してテスト処理を実行する。この際、第2前処理部14aは、メモリ16に蓄積されている時系列データの中から、第2数理モデル14bの動作テストに必要なテストデータを読み込む。このテストデータとしては、例えば、上記時系列データのうち主機の制御支援パラメータの導出に用いられる制御用データおよび監視用データを含む所定期間分のデータ群等が挙げられる。第2前処理部14aは、上記時系列データの中から、主機の制御支援パラメータの導出に用いられる制御用データを含む所定期間分の制御用データ群を、各データの時間間隔が主機の制御周期と同じになるように抽出して読み込む。また、第2前処理部14aは、上記時系列データの中から、主機の制御支援パラメータの導出に用いられる監視用データを含む所定期間分の監視用データ群を、各データの時間間隔が主機の制御周期よりも長くなるように間引く等して読み込む。第2前処理部14aは、読み込んだテストデータを、第2数理モデル14bによって処理可能な形式のデータに変換し、変換処理後のテストデータを第2数理モデル14bへ出力する。第2数理モデル14bは、第2前処理部14aから受け入れたテストデータを一括して処理し、これにより、船舶の海上運用を加味した主機の運転状態のシミュレーション結果を示す模擬データを導出する。第2後処理部14cは、第2数理モデル14bによって導出された上記模擬データを受け入れて処理し、これにより、上述した制御支援パラメータの導出のシミュレーション結果を示す模擬パラメータを導出する。
【0054】
上記テスト処理の結果を示すテスト結果データは、第2前処理部14a、第2数理モデル14bおよび第2後処理部14cの各々から、モデル処理部15およびメモリ16へ出力される。このテスト結果データには、第2前処理部14aによる変換処理後のテストデータと、第2数理モデル14bによる模擬データと、第2後処理部14cによる模擬パラメータとが含まれる。
【0055】
ステップS102の実行後、分析ユニット10は、第2数理モデル14bの習熟度算出処理を実行する(ステップS103)。ステップS103において、モデル処理部15は、第2数理モデル14bに対するテスト処理の結果をもとに、第2数理モデル14bの習熟度を算出する。
【0056】
詳細には、モデル処理部15は、第2数理モデル14bに対するテスト処理の結果を示すテスト結果データとして、第2前処理部14aから出力されたテストデータと、第2数理モデル14bから出力された模擬データと、第2後処理部14cから出力された模擬パラメータとを取得する。モデル処理部15は、これら取得したデータをもとに、テスト処理後の第2数理モデル14bの習熟度を算出する。当該習熟度は、例えば、船舶の海上運用を加味した主機の動作についての第2数理モデル14bの学習レベルを示す指数であり、第2数理モデル14bに対するテスト処理の正解率等に応じて増減変化する。モデル処理部15は、算出した習熟度を示す習熟度データをメモリ16へ出力する。
【0057】
ステップS103の実行後、分析ユニット10は、第2数理モデル14bのテスト処理に関するデータを収集する(ステップS104)。ステップS104において、メモリ16は、第2前処理部14aからのテストデータと、第2数理モデル14bからの模擬データと、第2後処理部14cからの模擬パラメータとを受け入れ、これらのデータを、第2数理モデル14bのテスト結果データとして格納する。また、メモリ16は、第2数理モデル14bの習熟度データと、習熟度が算出された第2数理モデル14bを構成している数式等のモデルデータとをモデル処理部15から受け入れる。メモリ16は、上述したテスト結果データと習熟度データとを対応付けて格納するとともに、第2数理モデル14bの現時点の習熟度を示すインデックスを当該モデルデータに付与して、当該モデルデータを第2数理モデル14bのモデルデータとして格納する。
【0058】
ステップS104の実行後、分析ユニット10は、第2数理モデル14bの習熟度の判定処理を実行する(ステップS105)。ステップS105において、モデル処理部15は、上述したステップS103で算出した第2数理モデル14bの習熟度Rと予め設定された基準習熟度Raとを比較し、この習熟度Rが基準習熟度Ra以上であるか否かを判定する。この習熟度Rが基準習熟度Ra以上である場合(ステップS105,Yes)、モデル処理部15は、この習熟度Rをもつ第2数理モデル14bを、主機の制御に関与する第1処理領域13の第1数理モデル13bとして適用する(ステップS106)。
【0059】
ステップS106において、モデル処理部15は、基準習熟度Ra以上の習熟度Rをもつ第2数理モデル14bを構成するモデルデータをメモリ16から読み込み、読み込んだモデルデータによって第1数理モデル13bを生成する。また、メモリ16は、習熟度Rをもつ第2数理モデル14bのモデルデータを、上記生成された第1数理モデル13bのモデルデータとして格納(更新)する。
【0060】
例えば、主機の制御に関与する第1処理領域13には、主機の動作シミュレーションの結果等をもとに生成された第1数理モデル13bが予め初期設定されている。この初期設定の第1数理モデル13bのモデルデータが、基準習熟度Ra以上の習熟度Rをもつ第2数理モデル14bのモデルデータに更新される。或いは、主機制御システム1の初期段階では第1処理領域13に第1数理モデル13bが設定されておらず、基準習熟度Ra以上の習熟度Rをもつ第2数理モデル14bのモデルデータをもとに、第1数理モデル13bが、第1処理領域13に生成されてもよい。
【0061】
また、本実施形態1における第2数理モデル14bは、主機制御システム1の製造時等において、分析ユニット10の第2処理領域14に予め設定されたものである。このような第2数理モデル14bは、第1数理モデル13bと同じ種類の数理モデルであってもよいし、第1数理モデル13bの機能を拡張した数理モデルであってもよい。
【0062】
ステップS106の実行後、分析ユニット10は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理を繰り返す。また、上述したステップS105において、第2数理モデル14bの習熟度Rが基準習熟度Ra未満である場合(ステップS105,No)、分析ユニット10は、上述したステップS101に戻り、このステップS101以降の処理を繰り返す。
【0063】
以上、説明したように、本発明の実施形態1に係る主機制御システム1では、船舶の主機を制御するための演算処理を行う演算ユニット8と、主機の制御用データおよび監視用データの少なくとも一つである分析用データをもとに主機の運転状態を分析して主機の制御を支援する分析ユニット10とが設けられ、分析ユニット10は、主機の制御に関与するデータ処理が可能な第1処理領域13と、主機の制御とは独立してデータ処理が可能な第2処理領域14とを有するように構成されている。また、第1処理領域13では、主機を模擬する第1数理モデル13bが設定され、上記分析用データを第1数理モデル13bで処理して、主機の制御支援パラメータが導出されるようにしている。第2処理領域14では、第1数理モデル13bとして適用される数理モデルの候補である第2数理モデル14bが設定され、時系列に沿って蓄積された分析用データ(時系列データ)をもとに、主機の制御とは独立して第2数理モデル14bのテスト処理が実行されるようにしている。
【0064】
上記の構成により、主機の制御に必要とされる例えば1/1000秒単位の短周期の演算処理(リアルタイム処理)を演算ユニット8で実行しながら、演算ユニット8のリアルタイム処理によって制限されることなく、主機の制御周期よりも長周期の上記時系列データを用いた一括処理(バッチ処理)により、第2処理領域14の第2数理モデル14bに対してテスト処理を実行することができる。このため、主機の制御を実行しながら、当該主機の制御を阻害することなく、船舶個別の海上運用を加味した主機の制御に対する第2数理モデル14bの実用性を高めることができる。これにより、上記実用性を高めた第2数理モデル14bを、主機の制御支援に寄与し得る第1数理モデル13bとして簡易に適用することができる。この結果、船舶個別の海上運用に合った主機の最適な制御を行うことができる。
【0065】
特に、第2数理モデル14bを第1数理モデル13bと同じ種類の数理モデルとした場合、実用性を高めた第2数理モデル14bを第1数理モデル13bとして適用することにより、主機の運用方針や目的に応じて第1数理モデル13bを最適化することができる。また、第2数理モデル14bを、第1数理モデル13bの機能を拡張した数理モデルとした場合、実用性を高めた第2数理モデル14bを第1数理モデル13bとして適用することにより、主機の制御支援に関する第1数理モデル13bの機能を拡張した上で、主機の運用方針や目的に応じて第1数理モデル13bを最適化することができる。上記いずれの場合であっても、船舶個別の海上運用を加味した主機の制御支援に最適な第1数理モデル13bを実現することができる。
【0066】
また、本発明の実施形態1に係る主機制御システム1では、モデル処理部15により、上記テスト処理による第2数理モデル14bの習熟度Rを算出し、算出した習熟度Rが基準習熟度Ra以上であるか否かを判定している。このため、第2数理モデル14bの習熟度Rが基準習熟度Ra以上である場合、第2数理モデル14bを第1数理モデル13bとして手間なく迅速に適用することができる。また、第2数理モデル14bの習熟度Rが基準習熟度Ra未満である場合、この第2数理モデル14bに対し、上記テスト処理を手間なく迅速に繰り返すことができる。
【0067】
(実施形態2)
つぎに、本発明の実施形態2に係る主機制御システムについて説明する。図3は、本発明の実施形態2に係る主機制御システムの一構成例を示すブロック図である。図3に示すように、本実施形態2に係る主機制御システム1Aは、上述した実施形態1に係る主機制御システム1の分析ユニット10に代えて分析ユニット20を備え、モデル指定ユニット21を更に備える。分析ユニット20は、上述した実施形態1における分析ユニット10のデータ処理部12に代えてデータ処理部22を備え、モデル処理部15に代えてモデル処理部25を備え、メモリ16に代えてメモリ26を備え、制御部18に代えて制御部28を備える。また、このデータ処理部22において、第1処理領域13には、実施形態1における第1数理モデル13bに代えて第1数理モデル23bが設定され、第2処理領域14には、実施形態1における第2数理モデル14bに代えて第2数理モデル24bが設定される。その他の構成は実施形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
【0068】
モデル指定ユニット21は、テスト対象となる第2数理モデル24bを指定するためのユニットである。詳細には、モデル指定ユニット21は、例えば、入力デバイスおよび表示デバイスの組み合わせ(ワークステーション等)、或いはタッチパネル装置等によって構成される可搬型のユニットである。モデル指定ユニット21は、任意のタイミングで分析ユニット20に対してデータの入出力可能に接続される。モデル指定ユニット21は、複数の数理モデルの候補を選択可能に表示し、ユーザの操作に応じて、これら複数の数理モデルの候補の中から選択された数理モデルの指定データを分析ユニット20に出力する。これにより、モデル指定ユニット21は、テスト対象となる第2数理モデル24bを分析ユニット20に対して指定する。本実施形態2の分析ユニット20では、モデル指定ユニット21によって指定された第2数理モデル24bに対して、実施形態1と同様のテスト処理が実行される。なお、上記第2数理モデル24bの候補となる複数の数理モデルのモデルデータは、分析ユニット20のメモリ26に格納されていてもよいし、モデル指定ユニット21が有する内部メモリに格納されていてもよい。
【0069】
本実施形態2の分析ユニット20においては、主機の制御に関与してデータ処理が可能な第1処理領域13の第1数理モデル23bの設定機能と、主機の制御とは独立してデータ処理が可能な第2処理領域14の第2数理モデル24bの設定機能とが実施形態1と異なる。分析ユニット20の機能は、第1数理モデル23bおよび第2数理モデル24bの設定機能以外、実施形態1と同じである。
【0070】
詳細には、図3に示すように、データ処理部22は、主機の制御に関与する第1処理領域13に、第1数理モデル23bと、実施形態1と同様の第1前処理部13aおよび第1後処理部13cとを有する。第1数理モデル23bは、主機を模擬する数理モデルであって、テスト処理によって習熟度Rを基準習熟度Ra以上に高めた第2数理モデル24bと同じモデルデータによって生成されている。すなわち、第1数理モデル23bは、本来モデル指定ユニット21によって指定された数理モデルであり、船舶の海上運用を加味した主機の動作についての習熟度を主機制御に対する実用可能レベルに高めた数理モデルである。
【0071】
また、図3に示すように、データ処理部22は、主機の制御とは独立したデータ処理が可能な第2処理領域14に、第2数理モデル24bと、実施形態1と同様の第2前処理部14aおよび第2後処理部14cとを有する。第2数理モデル24bは、主機を模擬する数理モデルであると同時に、上述の第1数理モデル23bとして適用される数理モデルの候補である。本実施形態2において、第2数理モデル24bは、メモリ26等に格納されている複数の数理モデルの中から、モデル指定ユニット21によって選択可能に指定された数理モデルである。
【0072】
モデル処理部25は、主機の制御に関与する第1数理モデル23bの処理と、主機の制御とは独立してテスト処理される第2数理モデル24bの処理とを実行する。詳細には、モデル処理部25は、モデル指定ユニット21によって指定された数理モデルを、テスト対象となる第2数理モデル24bとしてデータ処理部22の第2処理領域14に設定する。モデル処理部25は、この第2数理モデル24bに対して、実施形態1と同様にテスト処理、習熟度算出処理および習熟度判定処理を実行する。また、モデル処理部25は、習熟度Rが基準習熟度Ra以上に高まった第2数理モデル24bを、第1処理領域13の第1数理モデル23bとして適用する。
【0073】
メモリ26は、数理モデルを生成するための数式等のモデルデータ群を格納する。本実施形態2において、メモリ26は、第1処理領域13および第2処理領域14の何れにも数理モデルが設定されていない初期の段階において、第1数理モデル23bおよび第2数理モデル24bの何れにも用いられていない数式等のモデルデータ(以下、無属性のモデルデータという)を、モデルデータ群として複数格納している。メモリ26は、モデル指定ユニット21によって数理モデルが指定された場合、この指定された数理モデルの生成に用いられるモデルデータを、実施形態1と同様にインデックスの付与等によって第2数理モデル24bのモデルデータとして分類するとともに格納する。この場合、モデルデータ群には、第2数理モデル24bに用いられるモデルデータと、無属性のモデルデータとが含まれる。
【0074】
また、メモリ26は、習熟度Rが基準習熟度Ra以上に高まった第2数理モデル24bが第1数理モデル23bとして適用された場合、この第1数理モデル23bに適用されるモデルデータを、インデックスの付与または更新等によって第1数理モデル23bのモデルデータとして分類するとともに格納する。この場合、モデルデータ群には、第1数理モデル23bに用いられるモデルデータと、無属性のモデルデータとが含まれる。また、メモリ26は、第1処理領域13に第1数理モデル23bが設定され且つ第2処理領域14に第2数理モデル24bが設定されている場合、これら第1数理モデル23bおよび第2数理モデル24bの各モデルデータを、インデックスの付与または更新等によって第1数理モデル23bのモデルデータと第2数理モデル24bのモデルデータとに分類して格納する。この場合、モデルデータ群には、第1数理モデル23bに用いられるモデルデータと、第2数理モデル24bに用いられるモデルデータと、無属性のモデルデータとが含まれる。なお、メモリ26は、ハードディスクデバイスに例示される不揮発性の記憶デバイス等によって構成され、上述したモデルデータ群以外のデータを、実施形態1と同様に格納して蓄積する。
【0075】
制御部28は、分析ユニット20を構成する各構成部を制御する。詳細には、制御部28は、モデル指定ユニット21によって出力された指定データを、インタフェース11を介して取得し、この指定データに基づいて、モデル指定ユニット21によって指定された第2数理モデル24bを第2処理領域14に設定(生成)するようにモデル処理部25を制御する。なお、制御部28は、この第2数理モデル24bの設定を制御する機能以外、上述した実施形態1と同様の機能を有する。また、上述したデータ処理部22およびモデル処理部25は、制御部28のプログラム実行に基づくソフトウェア構成によって実現されてもよいし、ハードウェア構成によって実現されてもよい。データ処理部22およびモデル処理部25をソフトウェア構成によって実現する場合、これらデータ処理部22およびモデル処理部25は、制御部28の一機能部として当該制御部28に含まれていてもよい。
【0076】
なお、主機制御システム1Aによる主機の制御では、上述した実施形態1における第1数理モデル13bを本実施形態2における第1数理モデル23bに置き換えて制御支援パラメータが導出される。主機制御システム1Aによる主機の制御は、第1数理モデル23b用いること以外、上述した実施形態1と同様に行われる。
【0077】
一方、主機制御システム1Aにおいて、分析ユニット20は、モデル指定ユニット21によって指定された第2数理モデル24bを実用化するためのデータ処理(バッチ処理)を、主機の制御とは独立して実行する。図4は、本発明の実施形態2における数理モデルの実用化方法の一例を示すフローチャートである。
【0078】
本実施形態2における第2数理モデル24bの実用化方法において、分析ユニット20(図3参照)は、図4に示すように、数理モデルの指定の有無を判断する(ステップS201)。ステップS201において、制御部28は、モデル指定ユニット21によって数理モデルが指定されたか否かを判断する。詳細には、制御部28は、モデル指定ユニット21からインタフェース11を介して数理モデルの指定データを取得した場合、この取得した指定データによって数理モデルが指定された(数理モデルの指定あり)と判断する。一方、制御部28は、このモデル指定ユニット21からの指定データを取得していない場合、数理モデルの指定なしと判断する。
【0079】
モデル指定ユニット21からの指定データによって数理モデルが指定された場合(ステップS201,Yes)、分析ユニット20は、指定された数理モデルの生成処理を実行する(ステップS202)。
【0080】
ステップS202において、制御部28は、モデル指定ユニット21からの指定データに基づいて、この指定データに示される数理モデルを、テスト対象となる第2数理モデル24bとして第2処理領域14に生成するよう、モデル処理部25およびメモリ26を制御する。メモリ26は、制御部28の制御に基づいて、モデルデータ群に含まれる無属性のモデルデータのうち、上記指定データによって示される数理モデルの生成に必要なモデルデータに、第2数理モデル24bのモデルデータであることを示すインデックスを付与して格納する。当該数理モデルの生成に必要なモデルデータは、1つであってもよいし、複数であってもよい。モデル処理部25は、モデルデータ群の各モデルデータに付されているインデックスを参照し、指定された第2数理モデル24bを示すインデックスが付されたモデルデータをメモリ26から読み込む。モデル処理部25は、読み込んだモデルデータをもとに、この第2数理モデル24bを第2処理領域14に生成する。
【0081】
ステップS202の実行後、分析ユニット20は、主機の制御用データおよび監視用データの少なくとも一つである分析用データを時系列に沿って蓄積する(ステップS203)。ステップS203において、メモリ26は、上述した実施形態1におけるステップS101(図2参照)と同様に、インタフェース11を介して受け入れた分析用データを、データの種類別に分類するとともに時系列データとして時系列に沿って蓄積する。
【0082】
ステップS203の実行後、分析ユニット20は、テスト対象である第2数理モデル24bのテスト処理を実行する(ステップS204)。ステップS204において、モデル処理部25は、上述した実施形態1におけるステップS102(図2参照)と同様に、船舶個別の海上運用を加味した主機の動作を第2数理モデル24bに学習させ、この学習処理後の第2数理モデル24bに対してテスト処理を実行する。このテスト処理の結果を示すテスト結果データは、第2前処理部14a、第2数理モデル24bおよび第2後処理部14cの各々から、モデル処理部25およびメモリ26へ出力される。
【0083】
ステップS204の実行後、分析ユニット20は、第2数理モデル24bの習熟度算出処理を実行する(ステップS205)。ステップS205において、モデル処理部25は、上述した実施形態1におけるステップS103(図2参照)と同様に、第2数理モデル24bの習熟度を算出する。モデル処理部25は、算出した習熟度を示す習熟度データをメモリ26へ出力する。
【0084】
ステップS205の実行後、分析ユニット20は、第2数理モデル24bのテスト処理に関するデータを収集する(ステップS206)。ステップS206において、メモリ26は、上述した実施形態1におけるステップS104(図2参照)と同様に、第2数理モデル24bのテスト結果データと習熟度データとを対応付けて格納するとともに、この第2数理モデル24bのモデルデータを格納する。
【0085】
ステップS206の実行後、分析ユニット20は、第2数理モデル24bの習熟度の判定処理を実行する(ステップS207)。ステップS207において、モデル処理部25は、上述した実施形態1におけるステップS105(図2参照)と同様に、ステップS205で算出した第2数理モデル24bの習熟度Rが基準習熟度Ra以上であるか否かを判定する。この習熟度Rが基準習熟度Ra以上である場合(ステップS207,Yes)、モデル処理部25は、この習熟度Rをもつ第2数理モデル24bを、主機の制御に関与する第1処理領域13の第1数理モデル23bとして適用する(ステップS208)。
【0086】
ステップS208において、モデル処理部25は、上述した実施形態1におけるステップS106(図2参照)と同様に、基準習熟度Ra以上の習熟度Rをもつ第2数理モデル24bのモデルデータによって第1数理モデル23bを生成する。また、メモリ26は、習熟度Rをもつ第2数理モデル24bのモデルデータを、上記生成された第1数理モデル23bのモデルデータとして格納(更新)する。
【0087】
例えば、主機の制御に関与する第1処理領域13には、初期段階において第1数理モデル23bが設定されておらず、基準習熟度Ra以上の習熟度Rをもつ第2数理モデル24bのモデルデータをもとに、第1数理モデル23bが、第1処理領域13に生成される。
【0088】
また、本実施形態2において、第2数理モデル24bは、モデル指定ユニット21によって指定された数理モデルであり、指定された際に第2処理領域14に設定される。このような第2数理モデル24bは、第1数理モデル23bと同じ種類の数理モデルであってもよいし、第1数理モデル23bの機能を拡張した数理モデルであってもよい。
【0089】
ステップS208の実行後、分析ユニット20は、上述したステップS201に戻り、このステップS201以降の処理を繰り返す。また、上述したステップS207において、第2数理モデル24bの習熟度Rが基準習熟度Ra未満である場合(ステップS207,No)、分析ユニット20は、上述したステップS203に戻り、このステップS203以降の処理を繰り返す。
【0090】
一方、上述したステップS201において、モデル指定ユニット21による数理モデルの指定が行われていない場合(ステップS201,No)、分析ユニット20は、テスト対象となる第2数理モデル24bの有無を判断する(ステップS209)。
【0091】
ステップS209において、モデル処理部25は、メモリ26に格納されているモデルデータ群を参照し、このモデルデータ群の中に第2数理モデル24bのモデルデータが含まれているか否かを判断する。この第2数理モデル24bの有無は、例えば、モデルデータに付されたインデックスをもとに判断することが可能である。モデル処理部25は、このモデルデータ群の中に第2数理モデル24bのモデルデータが含まれていない場合、第2処理領域14に第2数理モデル24bが無いと判断する。この場合(ステップS209,No)、分析ユニット20は、上述したステップS201に戻り、このステップS201以降の処理を繰り返す。一方、ステップS209において、モデル処理部25は、上記モデルデータ群の中に第2数理モデル24bのモデルデータが含まれている場合、第2処理領域14に第2数理モデル24bが有ると判断する。この場合(ステップS209,Yes)、分析ユニット20は、上述したステップS203に進み、このステップS203以降の処理を繰り返す。
【0092】
以上、説明したように、本発明の実施形態2に係る主機制御システム1Aでは、テスト対象となる第2数理モデル24bをモデル指定ユニット21によって指定し、指定された第2数理モデル24bをデータ処理部22の第2処理領域14に生成するようにし、その他を実施形態1と同様に構成している。このため、上述した実施形態1と同様の作用効果を享受するとともに、テスト対象となる第2数理モデル24bを、船舶個別の海上運用に合わせて自由に指定することができ、この指定された第2数理モデル24bの実用性(習熟度R)を高めて、主機の制御支援に寄与し得る第1数理モデル23bとして適用することができる。この結果、船舶個別の海上運用に合った主機の最適な制御を行うことが可能な主機制御システムのユーザフレキシビリティの範囲が広がり、船舶のユーザや造船側のパートナ等との新たな価値創出の機会を増大させることができる。
【0093】
なお、上述した実施形態1、2では、主機の制御に関与する第1処理領域に、主機の制御支援に寄与し得る第1数理モデルを1つ設定していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、複数の第1数理モデルを上記第1処理領域に生成し、これら複数の第1数理モデルを用いて主機の制御を支援してもよい。
【0094】
また、上述した実施形態1、2では、主機の制御とは独立してデータ処理が可能な第2処理領域に、テスト対象となる第2数理モデルを1つ設定していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、複数の第2数理モデルを上記第2処理領域に生成し、これら複数の第2数理モデルの各々に対し、上記第1数理モデルへの実用性のテスト処理を実行してもよい。
【0095】
また、上述した実施形態1、2では、第2数理モデルの習熟度Rが基準習熟度Ra以上である場合、この第2数理モデルをモデル処理部によって自動的に第1処理領域の第1数理モデルとして適用していたが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、第2数理モデルの習熟度Rを、ユーザが視認できるようにディスプレイユニット6等の表示装置に表示し、表示された習熟度Rに応じてユーザが入力部(図示せず)を操作し、この入力部の操作により、上記第2数理モデルを第1処理領域の第1数理モデルとして手動で適用してもよい。
【0096】
また、上述した実施形態1、2では、分析ユニットに取り込まれた分析用データや、分析ユニットによって導出された処理結果のデータ等、分析ユニット内の各種データを当該分析ユニットのメモリに格納しているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、分析ユニットにワークステーション等の装置を接続して、当該分析ユニットのメモリに格納されているデータのコピーを当該装置に格納し、得られたデータのコピーを外部のデータ収集装置に蓄積してもよい。
【0097】
また、上述した実施形態1、2により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態1、2に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1、1A 主機制御システム
2 第1入出力ユニット
3 第2入出力ユニット
4 駆動ユニット
5 操縦装置
6 ディスプレイユニット
7 エンジンモニタ
8 演算ユニット
10、20 分析ユニット
11 インタフェース
12、22 データ処理部
13 第1処理領域
13a 第1前処理部
13b、23b 第1数理モデル
13c 第1後処理部
14 第2処理領域
14a 第2前処理部
14b、24b 第2数理モデル
14c 第2後処理部
15、25 モデル処理部
16、26 メモリ
18、28 制御部
21 モデル指定ユニット
101 第1センサ
102 第2センサ
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の主機を制御するための演算処理を行う演算ユニットと、
前記主機の制御に関連する制御用データと前記主機の監視に必要な監視用データとの少なくとも一つをもとに、前記主機の運転状態を分析して前記主機の制御を補正または制限するための制御支援パラメータを前記演算ユニットへ出力することにより、前記演算ユニットによる前記主機の制御を支援する分析ユニットと、
を備え、
前記分析ユニットは、
前記主機を模擬する第1数理モデルが設定され、前記制御用データおよび前記監視用データの少なくとも一つを前記第1数理モデルで処理して、前記制御支援パラメータが導出される第1処理領域と、
前記第1数理モデルとして適用される数理モデルの候補である第2数理モデルが設定され、時系列に沿って蓄積された前記制御用データおよび前記監視用データの少なくとも一つをもとに、前記主機の制御とは独立して、前記主機の動作を学習した前記第2数理モデルの動作をテストするテスト処理が実行される第2処理領域と、
を有し、
前記第1数理モデルのモデルデータは、前記テスト処理後の前記第2数理モデルのモデルデータに更新される、
ことを特徴とする主機制御システム。
【請求項2】
前記分析ユニットは、
前記主機の動作を学習した前記第2数理モデルを前記第2処理領域に生成するデータ処理部と、
前記テスト処理の結果をもとに、学習後の前記第2数理モデルの習熟度を算出するモデル処理部と、
を備え
算出された前記習熟度が基準習熟度以上である場合、前記第1数理モデルのモデルデータは、前記習熟度をもつ前記第2数理モデルのモデルデータに更新され、算出された前記習熟度が前記基準習熟度未満である場合、前記第2数理モデルに対して前記テスト処理が再度実行される、
ことを特徴とする請求項1に記載の主機制御システム。
【請求項3】
前記モデル処理部は、前記第2数理モデルの習熟度が前記基準習熟度以上であるか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の主機制御システム。
【請求項4】
前記第2数理モデルを指定するモデル指定ユニットを備え、
前記モデル指定ユニットによって指定された前記第2数理モデルに対して、前記テスト処理が実行される、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の主機制御システム。
【請求項5】
前記主機に設けられている第1センサによって検出され、前記制御用データに含まれる第1検出データを、前記演算ユニットおよび前記分析ユニットに対して入出力する第1入出力ユニットと、
前記主機に設けられている第2センサによって検出され、前記監視用データに含まれる第2検出データを、前記演算ユニットおよび前記分析ユニットに対して入出力する第2入出力ユニットと、
を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の主機制御システム。