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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072052
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】スラストワッシャ
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/04 20060101AFI20220510BHJP
   F16C 33/20 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
F16C17/04 Z
F16C33/20 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181259
(22)【出願日】2020-10-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野口 英芳
(72)【発明者】
【氏名】横山 泰幸
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011BA09
3J011CA01
3J011DA01
3J011JA02
3J011KA03
3J011MA07
3J011PA02
3J011RA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】トルク、摩耗を低減すると共にトルク振幅幅を小さくして油焼けも抑制できるスラストワッシャを提供する。
【解決手段】リング状部材30の少なくとも片面に設けた油溝40は、その長手方向がリング状部材の径方向に対して40度~75度の角度を成し、リング状部材30の周方向に対して等間隔に配置され、連通油溝40Aと外周端34の際まで伸びるように設けられた非連通油溝40Bとを含み、リング状部材30の周方向に対して周期的規則性を有するように配列されており、かつ、下式(1)に示す連通油溝面積率が0.15~0.85であるスラストワッシャ。式(1)連通油溝面積率=S1/(S1+S2)〔式(1)中、S1は各々の連通油溝40Aの平面積の総和、S2は非連通油溝40Bの平面積の総和をである。〕
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む材料から構成されるリング状部材を有し、
前記リング状部材の表面および裏面の少なくとも一方の面は、他の部材と摺動する面であり、
前記表面および前記裏面の少なくとも一方の面には、潤滑油の流路である油溝が4本以上設けられており、
前記油溝は、その長手方向が前記リング状部材の径方向に対して40度~75度の角度を成すと共に、前記リング状部材の周方向に対して等間隔に配置されており、
前記油溝は、(i)前記リング状部材の内周端側および外周端側に各々開口部が設けられ、前記内周端側の開口部と前記外周端側の開口部とを接続するように連続的に設けられた凹部からなる連通油溝と、(ii)前記リング状部材の内周端側および外周端側のうち前記内周端側のみに開口部が設けられ、前記内周端側の開口部から前記外周端の際まで伸びるように連続的に設けられた凹部からなる非連通油溝とを含み、
前記連通油溝の合計本数は2本以上であり、
前記リング状部材の周方向に対して、前記連通油溝および前記非連通油溝は周期的規則性を有するように配列されており、かつ、
下式(1)で示される連通油溝面積率が、0.15~0.85であることを特徴とするスラストワッシャ。
・式(1) 連通油溝面積率=S1/(S1+S2)
〔前記式(1)中、S1は、1本目~n本目までの各々の前記連通油溝の平面積(mm)の総和を意味し、S2は、1本目~m本目までの前記非連通油溝の平面積(mm)の総和を意味する。ここで、nは前記連通油溝の合計本数を意味し、mは前記非連通油溝の合計本数を意味する。〕
【請求項2】
前記油溝の合計本数が6本~18本であることを特徴とする請求項1に記載のスラストワッシャ。
【請求項3】
前記連通油溝面積率が、0.230~0.680であることを特徴とする請求項1または2に記載のスラストワッシャ。
【請求項4】
前記連通油溝面積率が、0.310~0.520であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1つに記載のスラストワッシャ。
【請求項5】
前記油溝の長手方向と前記リング状部材の径方向とが成す角度が40度~65度であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載のスラストワッシャ。
【請求項6】
下式(2)に示す油溝長さ率が、0.90~0.99であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載のスラストワッシャ。
・式(2) 油溝長さ率=L1/(L1+L2)
〔前記式(2)中、L1は、前記非連通油溝の長手方向における長さ(mm)を意味し、L2は、前記非連通油溝の長手方向と平行な方向における前記非連通油溝の外周側最先端部から前記リング状部材の外周端までの長さ(mm)を意味する。〕
【請求項7】
前記油溝長さ率が、0.95~0.99であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1つに記載のスラストワッシャ。
【請求項8】
前記樹脂が、ポリフェニレンサルファイド樹脂であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1つに記載のスラストワッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラストワッシャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
クラッチ装置、トランスミッション、歯車機構やコンプレッサ等のような機械装置においては、たとえば、特許文献1、2に示すようなスラストワッシャが取り付けられる場合がある。
【0003】
特許文献1には、スラストワッシャの内周面と外周面とを連通する第1油路と、スラストワッシャの内周面に開口するものの外周面に開口しない行き止まり油路である第2油路とが設けられたスラストワッシャが開示されている。このスラストワッシャでは、摩耗、焼き付き、摩擦大(損失トルク大)の防止効果を大きくすることができる。
【0004】
また、特許文献2には、スラストワッシャの表面および裏面の少なくとも一方の面に油溝が設けられ、少なくとも1つの油溝の外周端部には、潤滑油が外周側に流出するのを防止する油止壁が設けられると共に、摺動面積率が60~85%の範囲内である、樹脂を含む材料からなるスラストワッシャが開示されている。このスラストワッシャでは、摺動負荷(トルク)の低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-16931号公報
【特許文献2】国際公開第2020/129846号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2記載のスラストワッシャでは、上述したような各種の摺動特性を改善することができる。しかしながら、本発明者らが検討したところ、樹脂を主成分として含む材料からなるスラストワッシャにおいては、これらの特性を改善するだけでは不十分な場合があることが判明した。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、トルク、摩耗を低減すると共に、トルク振幅幅を小さくして油焼けも抑制できるスラストワッシャを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
本発明のスラストワッシャは、樹脂を含む材料から構成されるリング状部材を有し、リング状部材の表面および裏面の少なくとも一方の面は、他の部材と摺動する面であり、表面および裏面の少なくとも一方の面には、潤滑油の流路である油溝が4本以上設けられており、油溝は、その長手方向がリング状部材の径方向に対して40度~75度の角度を成すと共に、リング状部材の周方向に対して等間隔に配置されており、油溝は、(i)リング状部材の内周端側および外周端側に各々開口部が設けられ、内周端側の開口部と外周端側の開口部とを接続するように連続的に設けられた凹部からなる連通油溝と、(ii)リング状部材の内周端側および外周端側のうち内周端側のみに開口部が設けられ、内周端側の開口部から外周端の際まで伸びるように連続的に設けられた凹部からなる非連通油溝とを含み、連通油溝の合計本数は2本以上であり、リング状部材の周方向に対して、連通油溝および非連通油溝は周期的規則性を有するように配列されており、かつ、下式(1)で示される連通油溝面積率が、0.15~0.85であることを特徴とする。
・式(1) 連通油溝面積率=S1/(S1+S2)
〔式(1)中、S1は、1本目~n本目までの各々の連通油溝の平面積(mm)の総和を意味し、S2は、1本目~m本目までの非連通油溝の平面積(mm)の総和を意味する。ここで、nは連通油溝の合計本数を意味し、mは非連通油溝の合計本数を意味する。〕
【0009】
本発明のスラストワッシャの一実施形態は、油溝の合計本数が6本~18本であることが好ましい。
【0010】
本発明のスラストワッシャの他の実施形態は、連通油溝面積率が、0.230~0.680であることが好ましい。
【0011】
本発明のスラストワッシャの他の実施形態は、連通油溝面積率が、0.310~0.520であることが好ましい。
【0012】
本発明のスラストワッシャの他の実施形態は、連通油溝面積率が、0.310~0.350であることが好ましい。
【0013】
本発明のスラストワッシャの他の実施形態は、油溝の長手方向とリング状部材の径方向とが成す角度が40度~65度であることが好ましい。
【0014】
本発明のスラストワッシャの他の実施形態は、下式(2)に示す油溝長さ率が、0.90~0.99であることが好ましい。
・式(2) 油溝長さ率=L1/(L1+L2)
〔式(2)中、L1は、非連通油溝の長手方向における長さ(mm)を意味し、L2は、非連通油溝の長手方向と平行な方向における非連通油溝の外周側最先端部からリング状部材の外周端までの長さ(mm)を意味する。〕
【0015】
本発明のスラストワッシャの他の実施形態は、油溝長さ率が、0.95~0.99であることが好ましい。
【0016】
本発明のスラストワッシャの他の実施形態は、樹脂が、ポリフェニレンサルファイド樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トルク、摩耗を低減すると共に、トルク振幅幅を小さくして油焼けも抑制できるスラストワッシャを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施の形態に係るスラストワッシャを示す平面図である。
図2】油溝の断面形状の例を示す模式断面図である。ここで、図2(A)は、逆台形状の断面形状を有する油溝の一例を示す模式断面図であり、図2(B)は、円弧状の断面形状を有する油溝の一例を示す模式断面図であり、図2(C)は、V字状の断面形状を有する油溝の一例を示す模式断面図である。
図3】油溝の平面形状の一例を示す模式断面図である。
図4】評価用スラストワッシャの評価に用いた摺動試験機の構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施形態のスラストワッシャの一例を示す平面図である。図1に例示する本実施形態のスラストワッシャ(樹脂製スラストワッシャ20)は、樹脂を含む材料から構成されるリング状部材30を有している。このリング状部材30の表面および裏面の少なくとも一方の面は、他の部材と摺動する面であり、表面および裏面の少なくとも一方の面には、リング状部材30の内周側から供給される潤滑油の流路である油溝40が4本以上設けられている。なお、図1では、12本の油溝40が設けられた面(油溝形成面60)について示している。この油溝形成面60は、他の部材と摺動する面である。ここで、図1に示す例では油溝形成面60は、全面が面一な平坦面からなる摺動面50と、摺動面50に対して凹むように設けられた油溝40とのみから構成されている。また、説明の都合上、図1に示す12本の各油溝40に対しては、周方向に沿って順に1~12の番号(斜体表記で示す番号)を割り当てることで、これらの番号により各々の油溝40を識別できるようにしてある。
【0020】
油溝40は、その長手方向がリング状部材30の径方向に対して40度~75度の角度を成すと共に、リング状部材30の周方向に対して等間隔に配置されている。なお、図1に示す例では、油溝40の長手方向とリング状部材30の径方向とが成す角度(油溝角度)は、61度に設定されており、隣り合う2つの油溝40の周方向における間隔は、リング状部材30の中心軸Cを頂点とした場合の角度換算で30度となるように設定されている。
【0021】
さらに、油溝40は、(i)連通油溝40Aと、(ii)非連通油溝40Bとを含む。ここで、(i)連通油溝40Aは、リング状部材30の内周端32側および外周端34側に各々開口部42、44が設けられ、内周端32側の開口部42と外周端34側の開口部44とを接続するように連続的に設けられた凹部から構成される。また、(ii)非連通油溝40Bは、リング状部材30の内周端32側および外周端34側のうち内周端32側のみに開口部42が設けられ、内周端32側の開口部42から外周端34の際まで伸びるように連続的に設けられた凹部から構成される。また、連通油溝40Aの合計本数は2本以上とされる。なお、図1に示す例では、連通油溝40Aの合計本数は4本に設定されている。
【0022】
また、連通油溝40Aおよび非連通油溝40Bは、リング状部材30の周方向に対して周期的規則性を有するように配列される。ここで、図1に示す樹脂製スラストワッシャ20では、下記表1に示すように、リング状部材30の周方向に対して2本の非連通油溝40Bが順次配置された後に、1本の連通油溝40Aが配置されることを1つの配列単位として、この配列単位を周方向の全周(0~360度)において4回繰り返している。すなわち、図1に示す例では、周方向に対して2本の非連通油溝40Bと1本の連通油溝40Aとがこの順に配列されるという規則性を持った配列単位が、周方向に対して4回も周期的に繰り返されている。よって、図1に示す例では、2種類の油溝40の配列には周期的規則性がある。
【0023】
【表1】
【0024】
また、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20では、下式(1)で示される連通油溝面積率が、0.15~0.85である。
・式(1) 連通油溝面積率=S1/(S1+S2)
式(1)中、S1は、1本目~n本目までの各々の連通油溝40Aの平面積(mm)の総和を意味し、S2は、1本目~m本目までの非連通油溝40Bの平面積(mm)の総和を意味する。ここで、nは連通油溝40Aの合計本数を意味し、mは非連通油溝40Bの合計本数を意味する。
【0025】
なお、図1に示す例では、n=4、m=8、連通油溝面積率=0.333に設定されている。
【0026】
本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20では、上述した各種の条件(要約した内容を下記に条件(a)~(g)として示す)を満たすように油溝形成面60に連通油溝40Aと非連通油溝40Bとを組み合わせて配置することで、トルク、摩耗を低減すると共に、トルク振幅幅を小さくして油焼けも抑制できる。なお、「油焼け」とは、潤滑油の温度が高温となることにより、樹脂製スラストワッシャを構成するリング状部材の表面に焼けた痕が付く現象である。この焼けた痕(変色)は、リング状部材に含まれる樹脂の熱変性に起因する現象と推定される。また、参考までに述べれば、「焼き付き」は、相手材とスラストワッシャを構成するリング状部材との接触によりリング状部材を構成する材料自体が部分的に高温になり溶融する現象である。したがって、樹脂製スラストワッシャにおいて焼き付きが生じた場合は、リング状部材を構成する樹脂が溶融することで溶融痕が形成されることになる。なお、油焼けでは、上述したように焼けた跡(変色)が生じるものの、焼き付きのように樹脂の溶融に起因する溶融痕は生じない。
(a)油溝40の合計本数が4本以上である。
(b)油溝角度が40度~75度である。
(c)油溝40が、リング状部材30の周方向に対して等間隔に配置されている。
(d)油溝40は、(i)連通油溝40Aと、(ii)非連通油溝40Bとを含む。
(e)連通油溝40Aの合計本数が2本以上である。
(f)連通油溝40Aおよび非連通油溝40Bは、リング状部材30の周方向に対して周期的規則性を有するように配列される。
(g)連通油溝面積率が0.15~0.85である。
【0027】
このような効果が得られる理由の詳細は不明であるが、本発明者らは以下のように推定している。まず、連通油溝40Aの開口部42から潤滑油を供給した場合、供給された潤滑油の多くは、開口部44から排出される傾向にある。一方、非連通油溝40Bの開口部42から潤滑油を供給した場合、開口部44を有さない非連通油溝40Bの外周側先端部で潤滑油の流れが堰き止められてしまうため、供給された潤滑油は摺動面50上へと流出して油膜を形成し易い傾向にある。しかしながら、非連通油溝40Bの外周側先端部とリング状部材30の外周端34とは非常に接近した位置にあるため、より正確に言えば、供給された潤滑油の一部が摺動面50上へと流出すると同時に、残部が非連通油溝40Bの外周側先端部およびリング状部材30の外周端34を容易に乗り越えてリング状部材30の外周側へと排出される。すなわち、連通油溝40Aは潤滑油の滞留抑制機能に特化したものであるが、非連通油溝40Bは油膜確保機能(油膜形成機能)および潤滑油の滞留抑制機能の双方の機能を有している。
【0028】
それゆえ、油溝40として連通油溝40Aのみを油溝形成面60に設けた場合(連通油溝面積率=1.00)では、各々の連通油溝40Aに供給された潤滑油の多くが開口部44を経由してリング状部材30の外周側へとスムーズに排出されてしまうため摺動面50上への潤滑油の供給量が不足気味となると考えられる。この場合、摺動面50の一部で油膜切れ(摺動面50が油膜で覆われない現象)が発生し易くなる。これに対して、油溝40として非連通油溝40Bのみを油溝形成面60に設けた場合(連通油溝面積率=0.00)では、個々の非連通油溝40Bに供給された潤滑油の一部が摺動面50上に流れ出し、このような現象が全ての非連通油溝40Bについて同時に生じることになる。それゆえ、外周端34側へと排出されずに外周端34近傍で溢れた潤滑油が非連通油溝40Bの内周側へ向かって逆流し、摺動面50の一部で油膜ムラ(摺動面50を覆う油膜の厚みがばらつく現象)が発生してしまうと考えられる。
【0029】
しかしながら、条件(d)および(g)を満たすように、油溝形成面60に連通油溝40Aと非連通油溝40Bとを組み合わせて配置した場合、油溝40として連通油溝40Aのみを油溝形成面60に設けたとき(連通油溝面積率=1.00)、および、油溝として非連通油溝40Bのみを油溝形成面60に設けたとき(連通油溝面積率=0.00)、と比べて摺動面50全体に均等かつ過不足の無い量で潤滑油を供給できるため、焼き付き等の発生原因となる油膜切れの発生を抑制できるのみならず、油膜ムラの抑制も極めて容易である。その結果、トルク、摩耗を低減すると共に、トルク振幅幅を小さくして油焼けも抑制することができる。
【0030】
なお、条件(d)に関しては、非連通油溝40Bが、内周端32側の開口部42から外周端34の際まで伸びるように設けられた油溝であることが極めて重要である。以下にその理由を説明する。まず、樹脂製スラストワッシャ20の回転(図1中の矢印R方向への回転)状態において、非連通油溝40B内に供給された潤滑油に対しては、内周側から外周側へと向かう径方向に作用する遠心力と、樹脂製スラストワッシャ20の回転方向Rと逆向きの周方向に作用する力とが常に加わる。したがって、油膜確保機能(油膜形成機能)の発揮のみを考慮した場合、非連通油溝は、(i)図1に例示したような内周端32側の開口部42から外周端34の際まで伸びるように設けられた非連通油溝40Bでは無く、(ii)特許文献1の図2、7、9に例示される第2油路のように、内周端32側の開口部42から径方向の途中まで伸びる(油溝の外周側先端部とリング状部材30の外周端34との間には、ある程度の距離が設けられる)ように設けられた非連通油溝であることが極めて好適である(以下、当該非連通油溝を「油膜確保機能特化型非連通油溝」と称す)。
【0031】
これは、(i)非連通油溝40Bでは、<a>非連通油溝40Bの外周側先端部近傍以外の部分に存在する潤滑油は周方向に作用する力により摺動面50上へと供給されて油膜の形成に寄与するが、<b>非連通油溝40Bの外周側先端部近傍に存在する潤滑油は、遠心力によりリング状部材30の外周端34に直ぐに到達してしまうため、当該潤滑油は油膜形成には実質的に殆ど寄与しないためである。これに対して、(ii)油膜確保機能特化型非連通油溝では、<a>油膜確保機能特化型非連通油溝の外周側先端部近傍以外の部分に存在する潤滑油は周方向に作用する力により摺動面50上へと供給されて油膜の形成に寄与すると共に、<b>遠心力によって油膜確保機能特化型非連通油溝の外周側先端部近傍の潤滑油が(油膜確保機能特化型非連通油溝の外周側先端よりも外周側に広がる)摺動面50へと移動することで油膜の形成に寄与できる。すなわち、(i)非連通油溝40Bは開口部42から供給された潤滑油の全量を油膜形成のために効率的に利用できないため、油膜確保機能という点では、(ii)油膜確保機能特化型非連通油溝よりも大幅に劣る。
【0032】
しかしながら、周方向に作用する力により摺動面50上へ流出する潤滑油の流出量および流出方向・領域と、遠心力により摺動面50上へ流出する潤滑油の流出量および流出方向・領域とは全く異なる。このため、実質的に周方向に作用する力のみによって、摺動面50上へと潤滑油を供給する(i)非連通油溝40Bと比べて、周方向に作用する力と遠心力との双方により摺動面50上へと潤滑油を供給する(ii)油膜確保機能特化型非連通油溝の方が、油膜分布にムラが生じやすい。それゆえ、(ii)油膜確保機能特化型非連通油溝を用いる場合、十分な油膜確保機能を得ることができるものの、油膜分布にムラが生じやすく、また、十分な油膜確保機能に起因して高温の潤滑油が油膜として摺動面50上に滞留し易くなるため、却ってトルクや摩耗の増大、また油焼けの悪化などを招きやすくなると考えられる。
【0033】
これらの事情を勘案して、本発明者らは、(ii)油膜確保機能特化型非連通油溝と比べて、油膜確保機能の点では大幅に劣るものの油膜分布にムラが生じ難く、かつ、高温の潤滑油からなる油膜が摺動面50上に滞留し難い(i)非連通油溝40Bを敢えて採用することが重要であると考えた。
【0034】
一方、樹脂製スラストワッシャ20と相手材とが摺動した場合は摩擦熱が発生するため、摩擦熱による樹脂製スラストワッシャ20の加熱を抑制すること、すなわち冷却も重要である。ここで、樹脂製スラストワッシャ20の加熱/冷却という点で、摩擦熱により油温が上昇した潤滑油の滞留抑制機能を有する連通油溝40Aは冷却効果を有し、摩擦熱により油温が上昇した潤滑油を摺動面50に滞留させて油膜形成を促進する油膜確保機能を有する油膜確保機能特化型非連通油溝は加熱効果を有する。したがって、連通油溝40Aと油膜確保機能特化型非連通油溝とを組み合わせて油溝形成面60に配置する場合、両者の配置バランス次第では連通油溝40Aによる冷却効果よりも油膜確保機能特化型非連通油溝による加熱効果が上回ってしまい、油焼けが発生するおそれがある。一方、非連通油溝40Bでは、外周側先端部近傍に存在する潤滑油はリング状部材30の外周側へとスムーズに排出されるため、当該潤滑油については加熱効果では無く冷却効果を発揮に寄与すると考えられる。すなわち、非連通油溝40Bは、油膜確保機能特化型非連通油溝と比べて、加熱効果がより低いかあるいは微弱ながらも冷却効果を有すると推定される。それゆえ、連通油溝40Aと非連通油溝40Bとを組み合わせて油溝形成面60に配置する場合、連通油溝40Aと油膜確保機能特化型非連通油溝とを組み合わせて油溝形成面60に配置する場合と比べて、油焼けが極めて発生し難いと考えられる。
【0035】
以上に説明したように、条件(d)および(g)を満たすことは極めて重要である。しかしながら、本発明者らが検討したところ、条件(d)および(g)を満たすだけでは、トルク、摩耗を低減すると共に、トルク振幅幅を小さくして油焼けも抑制するという効果は必ずしも安定的に得ることはできなかった。そこで、本発明者らがさらに検討したところ、条件(d)および(g)に対して、さらに条件(a)~(c)、(e)~(f)を組み合わせることで、上述した効果が極めて安定的に得られることが判った。これは、条件(a)~(c)、(e)~(f)をさらに満たすことにより、油溝40内の潤滑油を、摺動面50全面により均等に供給して、より一層均等な油膜分布を実現できるためであると推定される。
【0036】
以上に説明したように条件(a)~(g)を満たす場合、摺動面50全体に均等かつ過不足の無い量で潤滑油を供給することが極めて容易になり、結果的に上述した効果も安定的に得ることができる。
【0037】
また、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20では、摺動面50内での油膜切れの発生を大幅に抑制できるため、相手材とリング状部材30とが油膜を介さずに直接接触して摺動する状態も大幅に抑制できると考えられる。このことから、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20では、リング状部材30を構成する樹脂材料自体に起因する各種の摺動特性が本来的には劣る場合であっても、優れた摺動特性を確保することが容易である。それゆえ、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20では、材料自体に起因する各種の摺動特性が本来的に優れる樹脂(たとえば、ポリイミド樹脂など)の代わりに、材料自体に起因する各種の摺動特性が本来的に劣る樹脂(たとえば、ポリフェニレンサルファイド樹脂など)を用いることも極めて容易である。このため、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20は、従来と比べてより多種多様な樹脂材料を選択することができ、低コストな樹脂材料の採用により製造コストの低減を図ることも容易である。なお、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20では、勿論、材料自体に起因する各種の摺動特性が本来的に優れる樹脂を用いてもよい。この場合、より優れた摺動特性を確保することができる。
【0038】
次に、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20の詳細について順次説明する。
【0039】
本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20を構成するリング状部材30には、表面および裏面の少なくとも一方の面に油溝40が4本以上設けられる。油溝40の本数が4本未満では、周方向に対して油溝を等間隔に配置したとしても、周方向において隣り合う2本の油溝40の間隔が大きくなり過ぎる。このため、油膜切れが生じやすく、油膜切れが生じた部分での摩擦力の局所的な増大によりトルク振幅幅が大きくなる。その結果、トルクや、摩耗の増大等も招きやすくなる。また、連通油溝40Aおよび非連通油溝40Bを、リング状部材30の周方向に対して周期的規則性を有するように配列することもできない(条件(f)を満たせない)。一方、油溝40の本数の上限値は特に限定されるものではないが、実用上は20本以下が好ましい。なお、油溝40の合計本数は、6本~18本が好ましく、6本~15本がより好ましい。
【0040】
また、油溝40は、その長手方向がリング状部材30の径方向に対して40度~75度の角度(油溝角度)を成すと共に、リング状部材30の周方向に対して等間隔に配置される。油溝角度が40度未満では、トルクや、トルク振幅幅、摩耗が著しく増大すると共に、油焼けも悪化する。一方、油溝角度の上限値は、実用上75度である。これは、75度以上の油溝角度を持つ油溝40をリング状部材30に形成することが困難なためである。なお、トルク、摩耗および油焼けも抑制しつつトルク振幅も小さくすることがより容易であることからは油溝角度は、40度~65度が好ましく、45度~63度がより好ましい。なお、油溝角度の具体的な定義については後述する。
【0041】
また、油溝40は、リング状部材30の周方向に対して「等間隔」に配置される。これにより、リング状部材30の周方向に対する油膜分布をより均等にすることが容易になる。ここで、「等間隔」とは、完全に等間隔である場合のみならず、実質的に等間隔である場合も含む。油溝40の合計本数をp本(pは4以上の整数)とした場合、完全に等間隔であるときは、隣り合う2つの油溝40の周方向における間隔は、リング状部材30の中心軸Cを頂点とした場合の角度換算で、360/p度に設定される。一方、実質的に等間隔であるときは、角度換算で、360/p度を基準値(100%)として±10%以内の範囲で角度が選択され、±5%以内の範囲で角度が選択されることが好ましい。したがって、図1に例示したように油溝40の合計本数が12本である場合、完全に等間隔であるときは、隣り合う2つの油溝40の周方向における間隔は角度換算で全て30度(=360度/12本)である。一方、実質的に等間隔であるときは、隣り合う2つの油溝40の周方向における間隔は角度換算で、27度~33度(但し、30度丁度を除く)の範囲内から選択される。
【0042】
また、油溝40は、摺動面50に対して凹むように設けられた凹部であり、連通油溝40Aと非連通油溝40Bとを含む。連通油溝40Aの平面形状および断面形状は、凹部が内周端32の開口部42から外周端34の開口部44まで連続的に設けられている限り特に限定されず、また、非連通油溝40Bの平面形状および断面形状も、凹部が内周端32の開口部42から外周端34の際まで伸びるように連続的に設けられている限り特に限定されない。図2は、油溝40の断面形状の一例を示す模式断面図であり、具体的には図1中の符号A-Aに示す非連通油溝40Bの長手方向と直交する平面における断面形状について示したものである。なお、図2は、非連通油溝40Bの断面形状について示したものであるが、勿論、連通油溝40Aの断面形状についても同様の形状とすることができる。
【0043】
図2に例示したように、油溝40の断面形状としては、逆台形状(図2(A))、円弧状(図2(B))、V字状(図2(C))などが例示でき、これら以外の断面形状(たとえばU字状など)も採用できる。また、油溝40の断面形状は、油溝40の幅方向に対して油溝40を2分する直線に対して図2(A)に示すように非対称な形状であってもよく、図2(B)および図2(C)に示すように対称な形状であってもよい。なお、図2中の符号Bで示される位置は、油溝40の平面形状における長手方向中心線に対応する位置である。油溝40の長手方向中心線Bは、図2に示すように油溝40の最も深い位置を通る直線であり、油溝40の長手方向中央部近傍の溝深さが最大となる位置に基づいて決定される。但し、図2(A)に示すように油溝40が平坦かつ溝深さが一定である底面を有する場合は、底面の幅方向の中央部が長手方向中心線Bに対応する位置とされる。
【0044】
図3は、油溝40の平面形状の一例を示す拡大平面図であり、具体的には、図1に示す非連通油溝40Bを拡大して示す図である。図3に示すように、油溝角度θは、リング状部材30の内周端32上において、油溝40の長手方向中心線Bと、リング状部材30の径方向D(図1中の中心軸Cを通る直線)とが交差する交点Eを頂点として、長手方向中心線Bと径方向Dとが成す角度として定義される。また、リング状部材30の周方向において隣り合う2つの油溝40の間隔を、リング状部材30の中心軸Cを頂点とした場合の角度換算で表記する場合は、一方の油溝40における交点Eと中心軸Cとを結ぶ直線と、他方の油溝40における交点Eと中心軸Cとを結ぶ直線とが成す角度として定義される。
【0045】
なお、非連通油溝40Bでは、溝を形成する凹部が内周端32の開口部42から外周端34の際まで伸びるように連続的に設けられる。ここで、「外周端34の際まで伸びる」とは、下式(2)に示す油溝長さ率が0.90以上であることを意味する。
・式(2) 油溝長さ率=L1/(L1+L2)
【0046】
ここで、式(2)中、L1は、非連通油溝40Bの長手方向における長さ(mm)を意味し、L2は、非連通油溝40Bの長手方向と平行な方向における非連通油溝40Bの外周側最先端部46からリング状部材30の外周端34までの長さ(mm)を意味する。なお、非連通油溝40Bの外周側最先端部46と、リング状部材30の外周端34とで囲まれた部分は、非連通油溝40B内の潤滑油が、リング状部材30の外周側へと流出するのを阻害する壁(油止壁48)として機能する。非連通油溝40Bの長さL1および油止壁48の厚み(長さL2)は、図3に示す長手方向中心線Bと平行な直線上における長さであり、油止壁48の厚みが極小値を示す位置において、長さL1,L2を決定する。それゆえ、長手方向中心線B上において油止壁48の厚みが極小値を示す場合は、長手方向中心線B上において長さL1、L2を決定すればよく、長手方向中心線Bからずれた位置で油止壁48の長さが極小値を示す場合、この位置において長さL1、L2を決定すればよい。
【0047】
油溝長さ率の上限は1.00未満であればよいが、油止壁48の強度を確保して破損を抑制する観点からは、0.995以下が好ましい。また、トルク、摩耗の低減と共に、トルク振幅幅を小さくして油焼けも抑制するという効果と、油止壁48の破損抑制とをよりバランスよく両立させる観点からは、油溝長さ率は、0.90~0.99が好ましく、0.91~0.99がより好ましく、0.95~0.99がさらに好ましい。
【0048】
また、連通油溝40Aおよび非連通油溝40Bは、リング状部材30の周方向に対して周期的規則性を有するように配列される。この条件を満たす場合、周方向における2種類の油溝40の配列の対称性が最も高くなるため、周方向における油膜分布をより均等化し易くなる。なお、この条件を満たすためには、油溝40の合計本数が4本以上であり、かつ、連通油溝40Aの合計本数が2本以上であることが必要である。
【0049】
ここで、「連通油溝40Aおよび非連通油溝40Bは、リング状部材30の周方向に対して周期的規則性を有するように配列される」とは、周方向に沿って順次配置された1本以上の非連通油溝40Bと、1本以上の連通油溝40Aとから構成される配列単位が、周方向の全周(0~360度)においてX回(但し、Xは2以上の整数)以上繰り返されることを言う。2種類の油溝40の配列状態は、下式(3)あるいは下式(3)に示す“(A、B)”を用いて表現できる。
・式(3) (A、B)×X
【0050】
式(3)中、(A、B)は配列単位を意味し、Xは、周方向の全周(0~360度)における配列単位の繰り返し回数(1以上の整数値)を意味し、Aは、配列単位に含まれる連通油溝40Aの合計本数(1以上の整数値)を意味し、Bは、配列単位に含まれる非連通油溝40Bの合計本数(1以上の整数値)を意味する。また、配列単位(A、B)は、周方向の任意の位置を0度とした場合において、0度の位置を起点として、周方向に沿ってA本の連通油溝40Aが順次配置され、次に、B本の非連通油溝40Bが順次配置されることを意味する。
【0051】
ここで、周期的規則性を有する配列は、式(3)において、AおよびBが1以上であり、Xが2以上である場合を言う。たとえば、図1に示す周期的規則性を有する配列は(1、2)×4と表記される。この場合、図1および表1中の3番~5番に含まれる2種類の油溝40、6番~8番に含まれる2種類の油溝40、9~11番に含まれる2種類の油溝40、ならびに、12番、1番および2番に含まれる2種類の油溝40が、各々、1つの配列単位(1、2)を構成する。その他の周期的規則性を有する配列の例としては、たとえば、(1、2)×3、(1、1)×6、(1、3)×3、(2、1)×4、などを挙げることができる。
【0052】
なお、好適な配列単位(A、B)としては、(1、2)、(1、1)、(2、1)が挙げられ、特に、(1、2)が好ましい。また、配列単位(A、B)の繰り返し数Xとしては2以上であれば特に限定されないが、2~8が好ましく、3~6がより好ましい。
【0053】
一方、周期的規則性を有さない配列としては、油溝形成面60に配置された油溝40の配列が、1個の配列単位のみを含むため周期性(配列単位の繰り返し性)が無い場合(たとえば、(1、9)×1で表記される配列など)や、2種類以上の異なる配列単位(A、B)を含む場合(たとえば、0度側から360度側へと配列単位(A、B)が、(1、1)、(2、1)、(1、1)、(2、1)の順で配置されている場合など)、AまたはBのいずれかが0の場合などが挙げられる。
【0054】
また、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20においては、連通油溝面積率が0.15~0.85である。これにより、摺動面50全体に均等かつ過不足の無い量で潤滑油を供給することが容易となるため、均一な油膜の形成が容易となり、その結果、トルク、摩耗を低減すると共に、トルク振幅幅を小さくして油焼けも抑制することができる。なお、連通油溝面積率は、0.230~0.680であることが好ましく、0.310~0.520であることがより好ましく、0.310~0.350であることがさらに好ましい。
【0055】
油溝40の平面形状は特に限定されるものではないが、通常は図1に例示したように基本的に長手方向に対して溝幅が一定(略一定あるいは完全に一定)を成す帯状であることが特に好ましい。但し、連通油溝40Aにおいては内周端32近傍および外周端34近傍の溝幅は、長手方向の中央部近傍と比べて異なる溝幅であってもよく、非連通油溝40Bにおいては内周端32近傍および外周側先端部近傍の溝幅は、長手方向の中央部近傍と比べて異なる溝幅であってもよい。また、外周端34近傍における連通油溝40Aの平面形状と非連通油溝40Bの平面形状とが異なる点を除けば、各油溝40の平面形状は同一(略同一あるいは完全に同一)であることが好ましい。但し、一部の油溝40については、必要に応じて、開口部42近傍の溝幅を部分的に広げたものとしてもよい。
【0056】
また、各油溝40の平面積は、互いに異なっていてもよいが、油膜分布の均一性の確保をより容易とする観点からは、同一(略同一または完全に同一)であることが好ましい。ここで「各油溝40の平面積が同一である」とは、各油溝40の平面積の平均値に対して、各々の油溝40の平面積が平均値±15%以内の範囲内にあることを意味し、±10%以内であることが好ましい。
【0057】
また、各油溝40の長手方向の中央部近傍における断面形状および断面積は、互いに異なっていてもよいが、樹脂製スラストワッシャ20の製造性の観点からは、同一(略同一または完全に同一)であることが好ましい。
【0058】
また、油溝形成面60は、摺動面50と、2種類の油溝40(連通油溝40Aおよび非連通油溝40B)とを含むものであれば特に限定されず、たとえば、摺動面50に対して凹むように設けられ、かつ、内周端32側および外周端34側のいずれとも連通していない油溜部などをさらに設けてもよい。しかしながら、摺動面50に形成される油膜の油膜分布均一性を確保する観点から、油溝形成面60は、摺動面50と、2種類の油溝40(連通油溝40Aおよび非連通油溝40B)のみから構成されることが好適である。
【0059】
なお、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20では、リング状部材30の表面および裏面の一方の面のみが他の部材と摺動する面でもよく、両面が他の部材と摺動する面でもよい。ここで、リング状部材30の表面および裏面の一方の面のみが、他の部材と摺動する面である場合、この面が、上述した条件(a)~(g)を満たす油溝形成面60である。この場合、他の部材と摺動しない面(非摺動面(油溝形成面60と反対側の面))の表面形状は特に限定されないが、必要に応じて、非摺動面内に凸部および/または凹部を設けることができる。たとえば、非摺動面側に配置された相手材に対して、樹脂製スラストワッシャ20を固定するために、相手材に嵌合する凸部(および/または凹部)を設けてもよい。一方、リング状部材30の表面および裏面の両面が他の部材と摺動する面である場合、少なくとも一方の面が上述した条件(a)~(g)を満たす油溝形成面60であればよい。
【0060】
本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20を構成するリング状部材30は、樹脂を含む材料(基材)から構成される。ここで、樹脂を含む材料(基材)としては、(1)樹脂のみからなる材料、あるいは、(2)樹脂と、充填剤およびエラストマーからなる群より選択される少なくとも1種の添加材とを混合した材料、が挙げられる。なお、後者(2)の場合、樹脂を含む材料中に占める樹脂の割合は、特に限定されるものではないが、一般的に30質量%以上であればよく、40質量%以上が好ましい。
【0061】
樹脂としては、公知の樹脂が利用でき、たとえば、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリベンゾイミダゾール樹脂(PBI)、芳香族ポリエーテルケトン類(PAEK)、変性ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、液晶ポリマー、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリルブタジエン・スチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂(PES)、ポリエーテルイミド樹脂(PEI)、これら樹脂の混合物、あるいは、これら樹脂の重合に用いる重合性単量体同士を共重合させた共重合体などが挙げられる。
【0062】
充填材としては、公知の充填剤が利用でき、たとえば、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、硫化マンガン(MnS)、二硫化モリブデン(MoS)、グラファイト、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化チタン、メラミンシアヌレート(MCA)などを挙げることができ、これらを2種類以上組み合わせて用いることもできる。また、充填剤の形状は特に限定されず、たとえば粒子状でもよく、繊維状でもよい。
【0063】
また、繊維状の充填剤(繊維材)としては、平均繊維長がたとえば0.0001mm~5mm程度の長さの補強繊維を用いることが好適であり、たとえば、炭素繊維、ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維等のような無機繊維材や、アラミド繊維、フッ素繊維等のような有機繊維材を例示することができるが、勿論、これら以外の繊維材も利用できる。また、繊維材は2種類以上を組み合わせて利用してもよい。
【0064】
なお、繊維材がガラス繊維の場合には、基材中の含有量は1質量%~40質量%が好適である。また、繊維材が炭素繊維またはアラミド繊維の場合には、基材中の含有量は1質量%~45質量%が好適である。また、繊維材がフッ素繊維の場合には、基材中の含有量は5質量%~55質量%が好適である。また、繊維材がチタン酸カリウムの場合には、その製品当たりの混合率の重量割合は0.1質量%~5質量%が好適である。
【0065】
エラストマーとしては、公知のエラストマーが適宜利用でき、たとえば、合成ゴムあるは天然ゴムといった加硫ゴムや、シリコーンゴム、ウレタンゴムあるいはフッ素ゴムといった樹脂系エラストマーが挙げられる。これらエラストマーは、2種類以上を組みあわせて利用してもよい。
【0066】
また、リング状部材30の表面に対しては、必要に応じて表面処理(ここでの表面処理は、表面改質処理も含む)が施されていてもよい。このような表面処理としては、たとえば、エポキシシラン(信越シリコーン社製)を用いた表面改質処理、チタネート系・アルミネート系カップリング剤(具体的には、ビスー(ジオクチルパイロホスフェート)イソプロポキシチタネート;味の素ファインテクノ社製:商品名38S)を用いた表面改質処理、ビスー(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート;商品名138S;味の素ファインテクノ社製)を用いた表面改質処理、商品名55(味の素ファインテクノ社製)、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート商品名AL-M;味の素ファインテクノ社製)を用いた表面改質処理が挙げられ、これらのうちのいずれか、またはこれらの中から複数を選択して表面処理(表面改質処理)を行っても良い。また、上記の表面処理(表面改質処理)に代えて、コロナ放電またはイオンプラズマ放電を用いたカップリング処理を行うようにしても良く、上記の表面改質処理に代えてDLC処理またはMoコーティングを行うようにしても良い。特に、DLC処理は、摺動部位において、低摩擦化および耐摩耗性の向上を図ることが可能であり、好ましい。
【0067】
本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20の用途は特に限定されず、各種の機械装置、特に回転体を用いた動力伝達機構を備えた機械装置であれば制限なく利用でき、このような機械装置としては、たとえば、車両等に利用される無段変速機(CVT)などの各種の変速機や、エアーコンプレッサ等に利用されるコンプレッサなどを挙げることができる。また、本実施形態の樹脂製スラストワッシャ20を用いた機械装置において、樹脂製スラストワッシャ20は、一対の相手材の間に配置され、潤滑油が供給される環境下において使用される。なお、樹脂製スラストワッシャ20は、2枚以上のスラストワッシャを重ねて組み合わせた組合せスラストワッシャを構成するスラストワッシャとして用いてもよく、また、組合せスラストワッシャを構成するものでなくてもよい。
【実施例0068】
以下に本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものでは無い。
【0069】
1.評価用スラストワッシャの準備
各実施例の樹脂製スラストワッシャ20および各比較例の樹脂製スラストワッシャ(以下、両者を「評価用スラストワッシャ」と称す)としては、射出成型により表2および表3に示すように油溝40を形成したリング状部材30を用いた。なお、作製したリング状部材30の主な仕様は以下の通りである。
(1)リング状部材30の材質:無機充填剤を分散含有させたポリフェニレンサルファイド樹脂
(2)リング状部材30の表面処理:無し
(3)油溝40の形成面:リング状部材30の片面のみに形成
(4)油溝40の配置形態:
(i)油溝40の合計本数、連通油溝40Aの合計本数、油溝40の周方向に対する配
列、油溝角度および油溝長さ率:表2および表3参照
(ii)油溝40の周方向に対する配置間隔:等間隔
【0070】
なお、表2および表3中の「油溝の配列パターン」は、式(3)に倣い表記したものである。但し、油溝40の配列パターンに2種類の配列単位(A、B)を含む比較例4については、式(3)に示す配列単位(A、B)を、周方向の全周(0~360度)に沿って順次記載した。
【0071】
また、各実施例および各比較例において、リング状部材30に形成した各々の油溝40の平面形状は図1に例示したような帯状であり、各々の油溝40の平面積は、油溝40の種類を問わず同一とし、各々の油溝40の断面積・断面形状は略同一とした。また。各実施例および各比較例において、油溝形成面60の面積に対する摺動面50の面積の割合も略同一とした。なお、実施例3は、図1に対応した例である。
【0072】
2.試験
評価用スラストワッシャの各種評価を行うために、図4に示す摺動試験機300を用いた。この摺動試験機300は、円筒状のオイルパン301を備え、そのオイルパン301の内筒部301aには図示を省略するオイルタンクから潤滑油が供給されている。また、オイルパン301には、油排出口301bも設けられている。油排出口301bは、内筒部301aに存在する潤滑油を外部に排出するための開口部分であり、ポンプによる強制排出をする機構を有している。
【0073】
また、摺動試験機300は、固定軸302と、回転軸303とを備えている。固定軸302は、オイルパン301に対して相対的に回転しない軸である。ただし、固定軸302には、図示を省略する負荷供給手段から、押圧方向の負荷が与えられる。また、固定軸302には、高張力鋼製の相手材C2が固定軸302に対して非回転の状態で取り付けられている。
【0074】
また、回転軸303は、オイルパン301に対して回転する軸である。したがって、回転軸303には、図示を省略する回転力供給手段から回転する駆動力が与えられる。また、回転軸303には、高張力鋼製の相手材C1が回転軸303に対して非回転の状態で取り付けられている。なお、一方の相手材C1には、評価用スラストワッシャ100を取り付けるための軸状部C1aが設けられている。一方、他方の相手材C2は、円盤状に設けられている。そのため、軸状部C1aが存在する分だけ、一方の相手材C1の軸方向の寸法は、他方の相手材C2よりも大きく設けられている。
【0075】
なお、図4に示すように、固定軸302、相手材C1および他方の相手材C2のそれぞれを貫くように中心孔が設けられている(符号は省略)。そして、これらの中心孔が軸方向において連続することで、潤滑油を流通させる油供給路304が形成される。なお、固定軸302には、油供給路304に潤滑油を供給するための開口部位である油供給口302aが形成されている。また、相手材C2には、熱電対305が取り付けられている。熱電対305は、相手材C2の摺動面温度を測定する部分である。なお、オイルパン301において固定軸302を内筒部301aに挿通させるための開口部位(符号省略)にはオイルシール306が設けられている。また、オイルパン301において回転軸303を内筒部301aに挿通させるための開口部位にもオイルシール307が設けられている。
【0076】
また、摺動試験に際しては、評価用スラストワッシャ100は、相手材C1に固定され、かつ、油溝40が形成された面が相手材C2と対向するように摺動試験機300内にセットされる。そして、この状態で、潤滑油(油種:ATF)を供給しながら負荷供給手段により一定の負荷をかけた状態で摺動試験機300を駆動させて摺動試験を実施した。なお、各実施例および各比較例の試験条件は、使用した評価用スラストワッシャ100を除いて同一とした。
【0077】
3.評価
摺動試験を行うことで、摺動試験中のトルクおよびトルク振幅量を測定すると共に、摺動試験後のリング状部材30の摩耗量および油焼けについて評価した。結果を表2および表3に示す。トルクおよびトルク振幅量の測定条件、摩耗量の評価方法、ならびに、油焼けの評価方法および評価基準の詳細は以下のとうりである。
【0078】
(1)トルクの測定条件
トルクは、摺動試験を開始してから1時間後~20時間後の区間において、約30分毎にトルクを測定し、当該区間におけるトルクの平均値を表2および表3に示した。なお、評価用スラストワッシャ100と相手材C1(または相手材C2)との間に異物が混入するなどにより、トルクが一時的に異常値を示している場合は、トルクの平均値を計算する際の測定値からは除外した。また、表2および表3に示すトルクは小さい方がより良いが、一応の最低限の目安としては1.02N・m以下であることが良い。
【0079】
(2)トルク振幅量の測定条件
トルク振幅量は、摺動試験を開始してから1時間後~20時間後の区間において、約0.2秒毎トルク振幅量を細かく測定し、当該区間におけるトルク振幅量の平均値を表2および表3に示した。なお、評価用スラストワッシャ100と相手材C1(または相手材C2)との間に異物が混入するなどにより、トルク振幅量が一時的に異常値を示している場合は、トルク振幅量の平均値を計算する際の測定値からは除外した。また、表2および表3に示すトルク振幅量は小さい方がより良いが、一応の最低限の目安としては0.17N・m以下であることが良い。
【0080】
(3)摩耗量の評価方法
摩耗量は、摺動試験開始前の油溝40の溝深さ(油溝40の底部から当該底部近傍に位置する摩耗前の摺動面50までの高さ)と、摺動試験終了後(摺動試験開始から20時間後)における油溝40の溝深さ(油溝40の底部から当該底部近傍に位置する摩耗後の摺動面50までの高さ)との差から求めた。溝深さの測定は、油溝形成面60に設けられた全ての油溝40について実施し、1本の油溝40につき5カ所測定した。測定位置としては、油溝40を径方向に対して6等分できるように分割する際の5カ所の分割点を選択した。表2および表3には、各測定点で測定された摩耗量の平均値を示した。表2および表3に示す摩耗量は小さい方がより良いが、一応の最低限の目安としては25μm以下であることが良い。
【0081】
(4)油焼けの評価方法および評価基準
油焼けは、摺動試験終了後(摺動試験開始から20時間後)における評価用スラストワッシャ100を洗浄して潤滑油を除去した後に、油溝形成面60に設けられた各々の油溝40の輪郭線に沿って変色(油焼け)の有無を光学顕微鏡で観察することにより評価した。なお、油焼けは、主に油溝40の輪郭線に沿った位置にのみ観察されるため、油溝40の輪郭線に沿った位置を観察し評価した。表2および表3に示す油焼けの評価基準は以下のとおりである。
〇:油溝形成面60に設けられた全ての油溝40の輪郭線の総長さに対して、油焼けが発生している部分の割合が30%以下である。
△:油溝形成面60に設けられた全ての油溝40の輪郭線の総長さに対して、油焼けが発生している部分の割合が30%を超え40%以下である。
×:油溝形成面60に設けられた全ての油溝40の輪郭線の総長さに対して、油焼けが発生している部分の割合が40%を超える。
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【符号の説明】
【0084】
20 :樹脂製スラストワッシャ
30 :リング状部材
32 :内周端
34 :外周端
40 :油溝
40A :連通油溝
40B :非連通油溝
42、44 :開口部
46 :外周側最先端部
48 :油止壁
50 :摺動面
60 :油溝形成面
100 :評価用スラストワッシャ
300 :摺動試験機
301 :オイルパン
301a :内筒部
301b :油排出口
302 :固定軸
302a :油供給口
303 :回転軸
304 :油供給路
305 :熱電対
306、307 :オイルシール
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
樹脂を含む材料から構成されるリング状部材を有するスラストワッシャであって、
前記リング状部材の表面および裏面の少なくとも一方の面は、他の部材と摺動する面であり、
前記表面および前記裏面の少なくとも一方の面には、潤滑油の流路である油溝が4本以上設けられており、油溝形成面は他の部材と摺動する面であって、
前記油溝は、その長手方向が前記リング状部材の径方向に対して40度~75度の角度を成すと共に、前記リング状部材の周方向に対して等間隔に配置されており、
前記油溝は、(i)前記リング状部材の内周端側および外周端側に各々開口部が設けられ、前記内周端側の開口部と前記外周端側の開口部とを接続するように連続的に設けられた凹部からなる連通油溝と、(ii)前記リング状部材の内周端側および外周端側のうち前記内周端側のみに開口部が設けられ、前記内周端側の開口部から前記外周端の際まで伸びるように連続的に設けられた凹部からなる非連通油溝とからなり、
前記連通油溝の合計本数は2本以上であり、
前記リング状部材の周方向に対して、前記連通油溝および前記非連通油溝は周期的規則性を有するように配列されており、かつ、
下式(1)で示される連通油溝面積率が、0.15~0.85であることを特徴とするスラストワッシャ。
・式(1) 連通油溝面積率=S1/(S1+S2)
〔前記式(1)中、S1は、1本目~n本目までの各々の前記連通油溝の平面積(mm)の総和を意味し、S2は、1本目~m本目までの前記非連通油溝の平面積(mm)の総和を意味する。ここで、nは前記連通油溝の合計本数を意味し、mは前記非連通油溝の合計本数を意味する。〕
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
前記油溝長さ率が、0.95~0.99であることを特徴とする請求項6に記載のスラストワッシャ。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。すなわち、
本発明のスラストワッシャは、樹脂を含む材料から構成されるリング状部材を有するスラストワッシャであって、リング状部材の表面および裏面の少なくとも一方の面は、他の部材と摺動する面であり、表面および裏面の少なくとも一方の面には、潤滑油の流路である油溝が4本以上設けられており、油溝形成面は他の部材と摺動する面であって、油溝は、その長手方向が前記リング状部材の径方向に対して40度~75度の角度を成すと共に、リング状部材の周方向に対して等間隔に配置されており、油溝は、(i)リング状部材の内周端側および外周端側に各々開口部が設けられ、内周端側の開口部と外周端側の開口部とを接続するように連続的に設けられた凹部からなる連通油溝と、(ii)リング状部材の内周端側および外周端側のうち内周端側のみに開口部が設けられ、内周端側の開口部から外周端の際まで伸びるように連続的に設けられた凹部からなる非連通油溝とからなり、連通油溝の合計本数は2本以上であり、リング状部材の周方向に対して、連通油溝および非連通油溝は周期的規則性を有するように配列されており、かつ、下式(1)で示される連通油溝面積率が、0.15~0.85であることを特徴とする。
・式(1) 連通油溝面積率=S1/(S1+S2)
〔式(1)中、S1は、1本目~n本目までの各々の連通油溝の平面積(mm)の総和を意味し、S2は、1本目~m本目までの非連通油溝の平面積(mm)の総和を意味する。ここで、nは連通油溝の合計本数を意味し、mは非連通油溝の合計本数を意味する。〕