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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072074
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】油中水型乳化日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20220510BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220510BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 8/29 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/39
A61K8/37
A61Q17/04
A61K8/36
A61K8/365
A61K8/25
A61K8/27
A61K8/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181305
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】氏本 慧
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB172
4C083AB212
4C083AB222
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC262
4C083AC301
4C083AC352
4C083AC401
4C083AC402
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC532
4C083AD162
4C083AD242
4C083BB01
4C083BB04
4C083BB11
4C083CC19
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】シリコーン化合物及び紫外線吸収剤を含まないシリコーンフリーかつノンケミカルの油中水型乳化日焼け止め化粧料であって、紫外線散乱剤等の粉末の分散性に優れ、安定でクリアな外観を持ち、なおかつ、十分に高くて耐水性にも優れた紫外線防御効果を備える油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供する。
【解決手段】
本発明に係る油中水型乳化日焼け止め化粧料は、
(A)界面活性剤、
(B)分散剤、
(C)油分、
(D)有機変性粘土鉱物、及び
(E)紫外線散乱剤
を含有し、
前記(E)紫外線散乱剤の配合量が10質量%以上であり、
シリコーン化合物及び紫外線吸収剤を含まないことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)界面活性剤、
(B)分散剤、
(C)油分、
(D)有機変性粘土鉱物、及び
(E)紫外線散乱剤
を含有し、
前記(E)紫外線散乱剤の配合量が10質量%以上であり、
シリコーン化合物及び紫外線吸収剤を含まない、油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項2】
(A)界面活性剤が、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される親油性非イオン界面活性剤である、請求項1に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項3】
(A)界面活性剤が、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選択される1種以上である、請求項2に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項4】
(A)界面活性剤のHLBが5以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項5】
(B)分散剤が、液状高級脂肪酸、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリヒドロキシステアリン酸から選択される1種以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項6】
(B)分散剤がポリヒドロキシステアリン酸である、請求項5に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項7】
(D)有機変性粘土鉱物がジステアルジモニウムヘクトライトである、請求項1~6のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項8】
(E)紫外線散乱剤が、シリカ処理、アルキルデキストリン処理、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理、フッ素処理、アミノ酸処理、レシチン処理、金属石鹸処理、脂肪酸処理、無機化合物処理、アルキルリン酸エステル処理のいずれかで疎水化処理されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項9】
(E)紫外線散乱剤の配合量が20質量%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【請求項10】
不使用時には静置により紫外線散乱剤等の粉末が沈降し、使用時に振盪することにより粉体を均一に再分散させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の油中水型乳化日焼け止め化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。より詳しくは、シリコーン化合物及び紫外線吸収剤を含まず、紫外線散乱剤等の粉末の分散性に優れ、安定でクリアな外観を持ち、なおかつ、十分に高くて耐水性にも優れた紫外線防御効果を備える油中水型乳化日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンオイル等のシリコーン化合物は、シャンプー等の毛髪化粧料のみならず、ファンデーション等の肌に適用する化粧料にも汎用されている。シリコーン化合物は、撥水性が高い、べたつきがなく軽い使用感触がある、毛髪や皮膚上へののび広がりが良好であるという特徴を有し、それを配合した化粧料の耐水性、使用感、また他の配合成分の分散性を向上させる効果がある。さらに、シリコーン化合物は粉末成分の表面処理剤としても広く用いられている。
【0003】
シリコーン化合物は上記のような利点を有するが、その高い撥水性に起因して化粧を水で落としにくく、洗浄するためのクレンジングが肌に負担をかけるといった問題も有している。さらに、シリコーン化合物は通常生分解性ではないため、環境中に長期間蓄積され、環境を汚染し生態系を乱すリスクがあることが懸念されている。そこで近年、シリコーン化合物を配合しない「シリコーンフリー」あるいは「ノンシリコーン」と呼ばれる化粧料が注目されている。
【0004】
また、特に日焼け止め効果を有する化粧料には、紫外線から肌を防御する手段として紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が配合されているが、近年、使用感の改善や肌への負担を軽くする観点から、物理的に紫外線を反射、散乱する紫外線散乱剤のみを含有し、化学的な作用によって紫外線を吸収する紫外線吸収剤を含有しない「ノンケミカル」タイプの日焼け止め化粧料が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、疎水化処理微粒子酸化亜鉛及び疎水化処理微粒子酸化チタン、水溶性高分子化合物、体積平均粒子径が1μm以上の球状粉体を含有し、有機紫外線吸収剤を含まないノンケミカルな日焼け止め化粧料が開示されている。しかしながら、ここに開示されている化粧料は、紫外線散乱剤の表面をシリコーン化合物で処理したり、シリコーン系界面活性剤やシリコーン油分を配合したりするなど、シリコーン化合物が配合されている。こうした化粧料において粉末等の他の配合成分の分散性向上に寄与していたシリコーン化合物を除くと、優れた粉末の分散性、安定かつクリアな外観、良好な使用感触を得ることができないという問題を生じる。
【0006】
また、特許文献2には、常温で液状の非イオン性界面活性剤を1~6重量%、常温で液体の油を15~70重量%、紫外線散乱剤を1~25重量%、水を10~60重量%を含有し、ノンケミカルかつシリコーンフリーの皮膚外用剤が開示されている。しかしながら、もともとの紫外線防御力が低いことに加え、耐水性に乏しく水分との接触により簡単に紫外線防御力が低下してしまうという問題がある。
【0007】
かくして、高い粉末分散性を実現することが難しいシリコーンフリーの化粧料において、紫外線吸収剤を配合せずに、紫外線散乱剤を安定に分散させることで十分な紫外線防御力を達成することは技術的に非常に困難とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-156800号公報
【特許文献2】特開2009-234933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、シリコーン化合物及び紫外線吸収剤を含まないシリコーンフリーかつノンケミカルの油中水型乳化日焼け止め化粧料であって、紫外線散乱剤等の粉末の分散性に優れ、安定でクリアな外観を持ち、なおかつ、十分に高くて耐水性にも優れた紫外線防御効果を備える油中水型乳化日焼け止め化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、界面活性剤、分散剤及び有機変性粘土鉱物を配合することにより、シリコーン化合物を配合しなくても紫外線散乱剤を良好に分散でき、その結果、紫外線吸収剤を配合しなくても十分に高くて耐水性に優れた紫外線防御効果を達成でき、しかも、安定でクリアな外観を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、
(A)界面活性剤、
(B)分散剤、
(C)油分、
(D)有機変性粘土鉱物、及び
(E)紫外線散乱剤
を含有し、
前記(E)紫外線散乱剤の配合量が10質量%以上であり、
シリコーン化合物及び紫外線吸収剤を含まない、油中水型乳化日焼け止め化粧料を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、シリコーン化合物を含有しなくても、紫外線散乱剤等の粉末の分散性が良好で安定である。このため、紫外線吸収剤を配合しなくても高い紫外線防御効果を達成でき、しかも、安定でクリアな外観を実現することができる。また、水分と接触しても紫外線防御効果が低下しにくいという効果も併せて有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、(A)界面活性剤、(B)分散剤、(C)油分、(D)有機変性粘土鉱物、及び、(E)紫外線散乱剤を必須に含む。以下、詳しく説明する。
【0014】
<(A)界面活性剤>
(A)界面活性剤は、通常の化粧料に用いられる界面活性剤であって、シリコーン系以外のものであれば特に制限されないが、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルから選択される親油性非イオン界面活性剤であることが好ましい。なかでも、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選択される1種以上を好適に使用することができる。また、これらの界面活性剤のうち、HLBが5以下のものが特に好ましい。
【0015】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルは、ポリエチレングリコールモノ脂肪酸エステル及びポリエチレングリコールジ脂肪酸エステルのいずれも含む。なかでも、4~12のオキシエチレン基を有するものが好ましく、例えば、ジイソステアリン酸PEG-4、ジイソステアリン酸PEG-8、モノイソステアリン酸PEG-10等を好適に使用することができる。市販品としては、EMALEX DEG-di-IS(日本エマルジョン株式会社)、EMALEX 400di-ISEX(日本エマルジョン株式会社)、EMALEXPIE-10ES(日本エマルジョン株式会社)等を挙げることができる。
【0016】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-2、ジオレイン酸ポリグリセリル-2、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ステアリン酸ポリグリセリル-4、オレイン酸ポリグリセリル-4、トリステアリン酸ポリグリセリル-4、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-4、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-6、ステアリン酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-6、トリステアリン酸ポリグリセリル-6、テトラベヘン酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-6、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-6、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、リノール酸ポリグリセリル-10、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、トリステアリン酸ポリグリセリル-10、トリオレイン酸ポリグリセリル-10、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10、ヘプタステアリン酸ポリグリセリル-10、ヘプタオレイン酸ポリグリセリル-10、デカステアリン酸ポリグリセリル-10、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10、デカオレイン酸ポリグリセリル-10、デカマデミアナッツ脂肪酸ポリグリセリル-10、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-10等が挙げられる。市販品としては、WOGEL-18DV(マツモトファインケミカル社)、サンソフトA-193E-C(太陽化学社)、コスモール42SV(日清オイリオグループ社)等を挙げることができる。
【0017】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、例えば、PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油、PEG-25水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-50水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0018】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料における(A)界面活性剤の配合量の下限としては、1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、特に好ましくは4質量%以上である。また、(A)界面活性剤の配合量の上限としては、10質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以下であり、特に好ましくは5質量%以下である。(A)界面活性剤の配合量が1質量%未満では乳化不良となる傾向があり、10質量%を超えるとべたつきを生じて使用感を損ねたり、耐水性が低下したりする傾向がある。
【0019】
<(B)分散剤>
(B)分散剤は、(E)紫外線散乱剤等の粉末を本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料の油相に分散させるものであり、通常の化粧料に用いられる分散剤であって、シリコーン系以外のものであれば特に制限されない。
(B)分散剤の好適な例としては、液状高級脂肪酸、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリヒドロキシステアリン酸から選択される1種以上を用いることができる。なかでも、ポリヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。
【0020】
液状高級脂肪酸は、例えば、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。特に好ましくはイソステアリン酸である。市販品としては、イソステアリン酸SX(高級アルコール工業株式会社)等を使用することができる。
【0021】
ソルビタン脂肪酸エステルは、例えば、セスキイソステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。特に、常温で液体であるセスキイソステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタンを用いることが好ましい。市販品としては、セスキイソステアリン酸ソルビタンであるエステモール182V(日清オイリオグループ株式会社)、EMALEX SPIS-150(日本エマルジョン株式会社)、ニッコール SI-15RV(日光ケミカルズ株式会社)等、セスキオレイン酸ソルビタンであるEMALEX SPO-150(日本エマルジョン株式会社)、ニッコール SO-15V(日光ケミカルズ株式会社)、NOFABLE SO-852S(日油株式会社)、コスモール82(日清オイリオグループ株式会社)等を使用することができる。
【0022】
ポリヒドロキシステアリン酸は1つの水酸基を有するヒドロキシステアリン酸の重合物である。ヒドロキシステアリン酸の重合度は3~12が好ましく、重合度4~8がさらに好ましい。市販品としては、例えば、サラコスHS-6C(日清オイリオグループ株式会社)等を使用することができる。
【0023】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料における(B)分散剤の配合量の下限としては、 0.5質量%以上であり、さらに好ましくは1質量%以上であり、特に好ましくは2.5質量%以上である。また、(B)分散剤の配合量の上限としては、10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは4質量%以下である。(B)分散剤の配合量が0.5質量%未満では粉末の分散不良を生じる傾向があり、10質量%を超えるとべたつきを生じて使用感を損ねたり、乳化不良となる傾向がある。
【0024】
<(C)油分>
油相を構成する(C)油分は、シリコーンオイル以外の油分、例えば、炭化水素油、エステル油、炭素数12~22の高級アルコール、炭素数12~22の脂肪酸などが挙げられる。
【0025】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、水添ポリイソブテン等の流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、流動オゾケライト、スクワラン、プリスタン、スクワレン、揮発性炭化水素油(例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン等)などが挙げられる。
エステル油としては、例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、安息香酸アルキル(C12~C15)等の安息香酸アルキル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル等のモノエステル油、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、ジカプリン酸ジエチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル等のジエステル油、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル等のトリエステル油等が挙げられる。
【0026】
炭素数12~22の高級アルコールとしては、例えば、オレイルアルコール、2-デシルテトラデシノール、ドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等が挙げられる。
炭素数12~22の脂肪酸としては、例えば、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0027】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料における(C)油分の配合量の下限としては、 10質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上である。また、(C)油分の配合量の上限としては、90質量%以下であり、さらに好ましくは70質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以下である。(C)油分の配合量が10質量%未満では粉末の分散不良を生じる傾向があり、90質量%を超えると使用感が油っぽくなる傾向がある。
【0028】
<(D)有機変性粘土鉱物>
(D)有機変性粘土鉱物は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、下記一般式(1)で表される粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で変性したものが代表的である。
(X,Y)2―3(Si,Al)10(OH)1/3・nHO (1)
(但し、X=Al、Fe(III)、Mn(III)、Cr(III)、Y=Mg、Fe(II)、Ni、Zn、Li、Z=K、Na、Ca)
【0029】
具体例として、ジメチルジステアルアンモニウムヘクトライト(ジステアルジモニウムヘクトライト)、ジメチルアルキルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理ケイ酸アルミニウムマグネシウム等が挙げられる。なかでも、ジステアルジモニウムヘクトライトが特に好ましい。市販品としては、ベントン27(ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン株式会社)およびベントン38(ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド処理ヘクトライト:エレメンティスジャパン株式会社)を使用することができる。
【0030】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料における(D)有機変性粘土鉱物の配合量の下限としては、0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、特に好ましくは0.3質量%以上である。また、(D)有機変性粘土鉱物の配合量の上限としては、1質量%以下であり、さらに好ましくは0.85質量%以下であり、特に好ましくは0.7質量%以下である。(D)有機変性粘土鉱物の配合量が0.1質量%未満では十分な耐水性が得られない傾向があり、1質量%を超えると使用感が重くなる傾向がある。
【0031】
<(E)紫外線散乱剤>
(E)紫外線散乱剤は、表面をシリコーン系以外の処理剤で疎水化処理した微粒子粉体を用いることができる。
微粒子粉体としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化鉄、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、シリカ、酸化セリウム等から選択される1種または2種以上が挙げられる。特に、1.5以上の屈折率を有する粉体、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムを用いるのが光学的特性から好ましい。
【0032】
微粒子粉体の表面の疎水化処理の方法としては、シリカ、含水シリカ等によるシリカ処理;パルミチン酸デキストリン等によるアルキルデキストリン処理;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理;レシチン処理;ステアリン酸アルミニウム処理、イソステアリン酸マグネシウム処理等の金属石鹸処理;脂肪酸処理;無機化合物処理;アルキルリン酸エステル処理等が挙げられる。
【0033】
(E)紫外線散乱剤の平均一次粒子径は、特に限定されないが、通常は100nm以下のものが好ましく、より好ましくは80nm以下である。平均一次粒子径が100nmを大きく超える場合は白浮きや白残りの原因となる傾向がみられる。平均一次粒子径は、例えば電子顕微鏡写真の画像解析による個数平均径などの常法によって測定される。
(E)紫外線散乱剤は市販品を使用することもでき、好ましい市販品としては、例えば、ステアリン酸で表面処理された超微粒子酸化チタンであるST-485SA(チタン工業株式会社)、酸化チタンMT-100TV(テイカ株式会社)などが挙げられる。
【0034】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料における(E)紫外線散乱剤の配合量の下限としては、10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。また、(E)紫外線散乱剤の配合量の上限としては、40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。(E)紫外線散乱剤の配合量が10質量%未満では十分な紫外線防御効果を得ることができない。特に、(E)紫外線散乱剤の配合量を20質量%以上配合すると、高い防御効果を有することができ好ましい。一方、40質量%を超えると粉末の分散不良により乳化安定性が悪くなる傾向がある。
【0035】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、シリコーン化合物を含まない「シリコーンフリー」な化粧料であって、なおかつ、紫外線吸収剤を含まない「ノンケミカル」な化粧料である。
しかし、本発明の効果を損なわない範囲であって、シリコーン化合物や紫外線吸収剤による弊害(洗浄性の悪さ、環境や皮膚への悪影響等)が無視できる範囲であれば、微量のシリコーン化合物及び紫外線吸収剤を含んでも構わない。例えば、シリコーン油分であれば、多くても油分全体の10質量%未満、好ましくは5質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満の配合量にとどめるべきである。
【0036】
本明細書における「シリコーン化合物」とは、分子内にシロキサン(-Si-O-Si-)構造を持つ化合物(例えば、シリコーン類及びシロキサン類)及びシラン類(モノシラン、オリゴシラン、ポリシラン、及びシラン誘導体、例えば、アルキルシラン、アルコキシシラン等)を意味し、シリコーンオイル、シリコーンエラストマー、シリコーン系界面活性剤、さらにはシリコーン化合物で表面処理された粉体を包含する。なお、二酸化ケイ素(シリカ)は、本発明における「シリコーン化合物」には含まれない。
【0037】
また、本明細書における「紫外線吸収剤」とは、日焼け止め化粧料に通常配合される水溶性紫外線吸収剤及び油溶性紫外線吸収剤である。例えば、安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体、ケイヒ酸誘導体、ジベンゾイルメタン誘導体、β,β-ジフェニルアクリレート誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンジリデンショウノウ誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルベンゾトリアゾール誘導体、アントラニル誘導体、イミダゾリン誘導体、ベンザルマロナート誘導体、4,4-ジアリールブタジエン誘導体等を包含する。
【0038】
<任意配合成分>
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料には、上記(A)~(E)成分以外に、本発明の効果を妨げない範囲で、化粧料に通常用いられる成分を配合することができる。例えば、水性成分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、粉体成分、安定化剤、キレート剤、防腐剤、香料等を必要に応じて適宜配合してよい。
【0039】
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、不使用時には静置により紫外線散乱剤等の粉末が沈降し、使用時に振盪することにより粉体を均一に再分散させるタイプの化粧料とすることができる。
本発明の油中水型乳化日焼け止め化粧料は、例えば日焼け止めクリーム、日焼け止め乳液、日焼け止めローションとして提供できるのみならず、日焼け止め効果を付与したファンデーション、化粧下地、メーキャップ化粧料、毛髪化粧料等としても使用できる。
【実施例0040】
以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例等における配合量は特に断らない限り質量%を示す。各実施例について具体的に説明する前に、採用した評価方法について説明する。
【0041】
<透明性>
光路長10mm×光路幅10mmのプラスティックセルに各試料を充填し、分光光度計(U-4100 HITACHI社製)を用いて500nmの光の波長領域における透過率を測定した。表1の実施例1の透過率と比較し、以下の基準に従って評価した。
(評価基準)
A:透過率が実施例1よりも高い
B:透過率が実施例1と同等
C:透過率が実施例1より低い
【0042】
<乳化安定性>
各試料の調製を試み、目視で観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
A:析出や分離がみられず、極めて安定であった
B:乳化は可能だが、経時的に析出や分離がみられた
C:乳化できなかった
【0043】
<紫外線防御効果(SPF)>
国際規格であるISO 24444(2019)に則って、各試料のSPF値を測定した。表1の実施例1の透過率と比較し、以下の基準に従って評価した。
(評価基準)
A:SPF値が実施例1よりも高い
B:SPF値が実施例1と同等
C:SPF値が実施例1より低い
【0044】
<耐水性>
各試料を2mg/cmの量でSプレート(5×5cmのV溝PMMA板、SPFMASTER-PA01)に滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥させて塗膜を形成した。未塗布のプレートを対照として、形成した塗膜の吸光度(400~280nm)を株式会社日立製作所製U-3500型自記録分光光度計にて測定し、得られた測定データから水浴前の吸光度積算値を求めた。
次いで、測定したプレートを水に浸漬し、30分間そのまま水中で攪拌した(3-1モーターで300rpm)。その後、表面の水滴がなくなるまで15~30分間程度乾燥させた後、再び吸光度を測定し、得られた測定データから水浴後の吸光度積算値を求めた。
以下の式から、耐水性、すなわち水浴後の吸光度積算値の変化率(%)を算出した。
水浴後の吸光度積算値の変化率(%)=
(水浴後の吸光度積算値)/(水浴前の吸光度積算値)×100
【0045】
<実施例1~8及び比較例1~3>
下記の表1及び表2に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を、油性成分を加温して溶解し粉末を分散させたものに、別途溶かした水相を添加し、攪拌処理にて乳化することにより調製した。上記評価方法に従って、透明性、乳化安定性、紫外線防御効果(SPF)、耐水性を評価した。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
上記の表1及び表2に示されるように、実施例1~8は、界面活性剤、分散剤及び有機変性粘土鉱物を配合することにより、シリコーン化合物を配合しなくても、安定に乳化でき、なおかつ、紫外線散乱剤を良好に分散できた。また、十分な量の紫外線散乱剤を安定に分散させることができるため、紫外線吸収剤を含有しなくても優れた紫外線防御効果が得られ、濁りを生じることもなかった。そのうえ、水分と接触しても紫外線防御効果が低下しにくかった。
一方、シリコーン系の界面活性剤を配合すると、シリコーンフリーな化粧料を実現できないほか、却って乳化安定性や紫外線防御効果が不十分な結果となった(比較例1~3)。
なお、個々にデータを示さないが、いずれの実施例及び比較例ともに実施例1と同程度の耐水性を示した。
【0049】
<実施例9及び比較例4~9>
下記の表3に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を、上記と同様に調製し、上記の評価方法に従って、透明性、乳化安定性、紫外線防御効果(SPF)、耐水性を評価した。
【0050】
【表3】
【0051】
上記の表3に示されるように、シリコーン化合物に該当しない分散剤を用いた場合には全ての評価項目において優れた結果が得られたが(実施例9)、シリコーン系の分散剤を配合すると、シリコーンフリーな化粧料を実現できないほか、却って透明性が損なわれる結果となった(比較例4~6)。
また、シリコーン系の油分を配合すると、シリコーンフリーな化粧料を実現できないほか、十分な紫外線防御効果が得られなかった(比較例7~9)。
なお、個々にデータを示さないが、いずれの実施例及び比較例ともに実施例1と同程度の耐水性を示した。
【0052】
<実施例10及び比較例10~13>
下記の表4に掲げた組成を有する油中水型乳化日焼け止め化粧料を、上記と同様に調製し、上記の評価方法に従って、透明性、乳化安定性、紫外線防御効果(SPF)、耐水性を評価した。
【0053】
【表4】
【0054】
上記の表4に示されるように、シリコーン化合物に該当しない疎水化処理剤で表面処理された紫外線散乱剤を用いた場合には全ての評価項目において優れた結果が得られたが(実施例10)、シリコーン系の疎水化処理剤で表面処理された紫外線散乱剤を配合すると、シリコーンフリーな化粧料を実現できないほか、却って分散性が悪くなり、透明性が損なわれる結果となった(比較例10~13)。
なお、個々にデータを示さないが、いずれの実施例及び比較例ともに実施例1と同程度の耐水性を示した。
【0055】
<比較例14>
有機変性粘土鉱物を含まない点でのみ実施例1と相違する油中水型乳化日焼け止め化粧料(比較例14)を上記と同様に調製し、上記の評価方法に従って、透明性、乳化安定性、紫外線防御効果(SPF)、耐水性を評価した。下記の表5に、組成及び評価結果を実施例1と並べて示す。
【0056】
【表5】
【0057】
上記の表5に示されるように、有機変性粘土鉱物を配合しないと、十分な紫外線防御効果が得られないことに加えて、耐水性が大幅に劣る結果となった(比較例14)。