(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072135
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】鉄道車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
B61F 5/24 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B61F5/24 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181425
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信之
(72)【発明者】
【氏名】谷川 安彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳平
(57)【要約】
【課題】体感上の乗り心地の向上を図ることができる鉄道車両用制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、鉄道車両1の制振装置8において、鉄道車両1に備わるモータ32の回転数xを複数設定し、設定した各々の回転数xについて当該回転数xによりモータ32を駆動させる頻度を示す回転頻度rf(x)を決定する制振コントローラ6を有し、制振コントローラ6は、設定した各々の回転数xの中から不規則に回転数xを選択して、かつ、各々の回転数xによりモータ32を駆動させる頻度が回転頻度rf(x)となるようにして、回転数xを変化させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に備わる走行用または制振用のモータの回転数を複数設定し、設定した各々の前記回転数について当該回転数により前記モータを駆動させる頻度を示す回転頻度を決定する制御部を有し、
前記制御部は、設定した各々の前記回転数の中から不規則に前記回転数を選択して、かつ、各々の前記回転数により前記モータを駆動させる頻度が前記回転頻度となるようにして、前記回転数を変化させること、
を特徴とする鉄道車両用制御装置。
【請求項2】
請求項1の鉄道車両用制御装置において、
前記制御部は、前記回転数が高いほど前記回転頻度を小さい値に決定すること、
を特徴とする鉄道車両用制御装置。
【請求項3】
請求項2の鉄道車両用制御装置において、
前記制御部は、前記回転数を1/fゆらぎで変化させること、
を特徴とする鉄道車両用制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つの鉄道車両用制御装置において、
前記鉄道車両用制御装置は、車体に生じる振動を抑えるために当該車体と台車との間に設けられた制振用ダンパを備える鉄道車両の制振装置であり、
前記制振用ダンパは、シリンダを備えるセミアクティブダンパと、前記シリンダへ流体を供給するポンプと、前記ポンプを駆動させるポンプ駆動用モータと、を備え、
前記モータは、前記ポンプ駆動用モータに該当するものであること、
を特徴とする鉄道車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の制御を行う鉄道車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用制御装置に関するものとして、特許文献1においては、セミアクティブダンパに油圧ポンプとモータを取り付けることによりフルアクティブアクチュエータとした制振用ダンパを有する鉄道車両の制振装置が開示されている。この鉄道車両の制振装置においては、モータにより油圧ポンプを駆動させることにより、セミアクティブダンパに備わるシリンダへ作動油を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるような鉄道車両の制振装置においては、従来より、セミアクティブダンパに備わるシリンダへ作動油を供給する油圧ポンプを駆動させるためのモータについて、一定の回転数で駆動させている。しかしながら、モータの回転数が高い場合に、モータの駆動に起因して発生する騒音や振動が問題となるおそれがある。例えば、制振用ダンパが設けられた台車の上の座席に座っている人にとっては、モータの駆動に起因して発生する騒音や振動が気になってしまい、体感上の乗り心地が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、体感上の乗り心地の向上を図ることができる鉄道車両用制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の一形態は、鉄道車両用制御装置において、鉄道車両に備わる走行用または制振用のモータの回転数を複数設定し、設定した各々の前記回転数について当該回転数により前記モータを駆動させる頻度を示す回転頻度を決定する制御部を有し、前記制御部は、設定した各々の前記回転数の中から不規則に前記回転数を選択して、かつ、各々の前記回転数により前記モータを駆動させる頻度が前記回転頻度となるようにして、前記回転数を変化させること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、モータの回転数を不規則に変化させながらモータを駆動させるので、モータの駆動にゆらぎを持たせることができる。また、決定する回転頻度を調整することによって、各々の回転数によりモータを駆動させる時間を回転数に応じて変えることができる。そのため、例えば、モータの駆動に起因して発生する騒音や振動が問題となるおそれがある回転数について、その回転数によりモータを駆動させる時間を少なくすることができる。したがって、モータの駆動にゆらぎを持たせながら、鉄道車両に乗車する人に対してモータの駆動に起因して発生する騒音や振動による影響を与え難くすることができる。ゆえに、鉄道車両に乗車する人にとって、体感上の乗り心地の向上を図ることができる。
【0008】
上記の態様においては、前記制御部は、前記回転数が高いほど前記回転頻度を小さい値に決定すること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、モータの駆動に起因して発生する騒音や振動が問題となるおそれがある高い回転数によりモータを駆動させる時間を、少なくすることができる。そのため、鉄道車両に乗車する人にとって、体感上の乗り心地の向上を図ることができる。
【0010】
上記の態様においては、前記回転数を1/fゆらぎで変化させること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、鉄道車両に乗車する人は、1/fゆらぎに相当するモータの駆動音や振動を体感することによって、乗り心地の良さを感じることができる。そのため、鉄道車両に乗車する人にとって、より効果的に、体感上の乗り心地の向上を図ることができる。
【0012】
上記の態様においては、前記鉄道車両用制御装置は、車体に生じる振動を抑えるために当該車体と台車との間に設けられた制振用ダンパを備える鉄道車両の制振装置であり、前記制振用ダンパは、シリンダを備えるセミアクティブダンパと、前記シリンダへ流体を供給するポンプと、前記ポンプを駆動させるポンプ駆動用モータと、を備え、前記モータは、前記ポンプ駆動用モータに該当するものであること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、鉄道車両に乗車する人にとって、体感上の乗り心地の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る鉄道車両用制御装置によれば、体感上の乗り心地の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】鉄道車両の制振装置を概念的に示した図であり、車体長手方向に見た図である。
【
図2】本実施形態の制振用ダンパを示した回路図である。
【
図3】本実施形態において定義される各項目の数値例を示す図である。
【
図4】回転周波数と回転頻度の計算例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。本実施形態において、
図1に示すように、鉄道車両1は、前後2台の台車3に空気バネ4を介して車体2が載せられ、車体2に生じる横揺れ(振動)を抑えるための制振装置8が設けられている。制振装置8には、車体2と台車3との間に制振用ダンパ5が設けられ、車体2の横揺れに応じて制振用ダンパ5の制振荷重を変化させ、制振度合いの調節を可能にしている。
【0017】
制振用ダンパ5は、シリンダ10の作動油を制御する比例リリーフ弁等を備えた油圧回路によって構成され(
図2参照)、制振装置8には、その比例リリーフ弁等の作動を制御する制振コントローラ6(本発明の「制御部」の一例)が設けられている。また、鉄道車両1には、車体2の左右方向の振動を検出する加速度センサ7が設けられ、それに制振コントローラ6が接続されている。
【0018】
図2に示すように、シリンダ10は、ピストン15がヘッド側室13とロッド側室14とにシリンダチューブ11内を仕切り、そのピストン15には、ヘッド側室13からロッド側室14の方向にのみ作動油が流れるようにチェック弁16を備えた連通路が形成されている。ヘッド側室13の断面積はピストンロッド12の断面積の2倍に設定され、伸縮のいずれの場合においても、シリンダチューブ11から吐出される作動油の量が同じになるように構成されている。
【0019】
シリンダ10には、ヘッド側室13にチェック弁25を介してオイルタンク18が接続されている。一方、ロッド側室14には流路41が接続され、その流路41から流路42が分岐し、そこに第1比例リリーフ弁21が設けられている。第1比例リリーフ弁21の二次側には、流路42から分岐した流路43がオイルタンク18へ接続されている。流路43には、パッシブ用の低圧リリーフ弁22と第2比例リリーフ弁23が直列に設けられている。
【0020】
第1比例リリーフ弁21及び第2比例リリーフ弁23は、ノーマルオープンタイプの電磁比例リリーフ弁であり、
図1に示す制振コントローラ6からの荷重制御信号に従い、リリーフ圧を調整したオンロード制御が行われ、通常の全開状態でアンロード制御を可能にしたものである。制振用ダンパ5には更に、各弁による作動油の流れが遮断したフェイル時においてもオイルを還流させることができるようにするため、ロッド側室14とオイルタンク18との間に、オリフィス26とリリーフ弁27とが設けられている。
【0021】
シリンダ10のヘッド側室13に接続された流路44は、低圧リリーフ弁22と第2比例リリーフ弁23との間で流路43に接続され、その流路44には第1比例リリーフ弁21を設けた流路42が接続され、ロッド側室14側に連通している。流路42,44には、それぞれ開閉弁28,29が設けられている。開閉弁28,29は、両方向への作動油の流れを可能とする開弁状態と、一方向の流れのみを遮断する閉弁状態とが切り替えられるものである。ただし、閉弁状態での作動油の遮断方向について、開閉弁28はロッド側室14からヘッド側室13の流れを遮断する方向、開閉弁29はヘッド側室13からロッド側室14の流れを遮断する方向になるように構成されている。
【0022】
制振用ダンパ5は、このように第1比例リリーフ弁21や第2比例リリーフ弁23などを備えた流路41,42,43,44によってセミアクティブ回路部が構成されている。そして、更に制振用ダンパ5には、モータ32(制振用のモータ、ポンプ駆動用モータ)によって駆動するポンプ31が設けられ、シリンダ10へ積極的に作動油を供給するフルアクティブ回路部が構成されている。フルアクティブ回路部は、ポンプ31が接続された流路45と、第3比例リリーフ弁33が接続された戻り流路46によって構成されている。すなわち、制振用ダンパ5は、フルアクティブアクチュエータであり、シリンダ10とセミアクティブ回路部などを備えるセミアクティブダンパと、ポンプ31と、モータ32などを備える。
【0023】
ポンプ31は、流路45によってオイルタンク18に接続され、そのオイルタンク18の作動油(流体の一例)をシリンダ10側へ供給するようにしたものであり、チェック弁34を介して流路41,42に接続されている。ポンプ31の二次側では戻り流路46が分岐し、オイルタンク18に接続されている。第3比例リリーフ弁33は、ノーマルオープンタイプの電磁比例リリーフ弁であり、フルアクティブ作動時の制振荷重を調整するためのものである。そして、制振コントローラ6からの荷重制御信号に従い、第3比例リリーフ弁33のリリーフ圧が調整される。
【0024】
本実施形態では、制振用ダンパ5におけるモータ32の回転数xを1/fゆらぎで変化させて、モータ32の回転数xを不規則に変化させることにより、鉄道車両1に乗車している人の体感上の乗り心地の向上を図っている。そこで、このような本実施形態において、制振コントローラ6にて行われる制御方法について以下に説明する。
【0025】
まず、モータ32の回転数xを複数設定する。ここでは、例えば、以下の数式のように設定する。
【数1】
【0026】
なお、nは、2以上の整数である。また、x0を、複数設定された回転数xのうちの基準の回転数(以下、「基準回転数x0」という。)とする。また、各回転数xの回転周波数をf(x)(=1/x)とする。
【0027】
次に、基準回転数x0の振動パワーP(x0)に対する各回転数xの振動パワーP(x)の比率である比率G(x)(以下、単に「振動パワーの比率G(x)」という。)を算出する。
【0028】
そこで、振動パワーの比率G(x)の算出方法について説明する。まず、モータ32を各回転数xにより駆動させたときの単位時間あたりの振動パワーをP
0(x)とし、各回転数xによりモータ32を駆動させる指令時間をt(x)とする。すると、各回転数xによりモータ32を駆動させたときの累積パワーはP
0(x)×t(x)(P
0(x)とt(x)の乗算値)となる。また、複数設定された全ての回転数xについてモータ32を駆動させた合計時間を示す総回転時間を、Σt(x)とする。そうすると、総回転時間Σt(x)での各回転数xの振動パワーP(x)は、以下の数式で示される。
【数2】
【0029】
ここで、基準回転数x
0の振動パワーP(x
0)に対する各回転数xの振動パワーP(x)の比率
は、以下の数式で示される。
【数3】
【0030】
そして、この数式から各回転数xの指令時間t(x)は、以下の数式で示される。
【数4】
【0031】
この式において、
となり、本実施形態では、この振動パワーの比率G(x)について、所望の比率となるように、予め規定しておく。
【0032】
例えば、モータ32の回転数xを1/fゆらぎで変化させる場合、基準回転数x
0の振動パワーP(x
0)と各回転数xの振動パワーP(x)の比は、以下の数式で示される。
【数5】
【0033】
このように、振動パワーP(x)は、回転周波数f(x)に反比例する。また、(数5)式においては、各回転数xの単位をrpmとし、回転周波数f(x)の単位をHzとしており、回転周波数f(x)をx/60としている。
【0034】
すると、振動パワーの比率G(x)は、以下に示す数式で示される。
【数6】
【0035】
なお、(数4)式において、単位時間あたりの基準回転数x
0の振動パワーP
0(x
0)に対する単位時間あたりの各回転数xの振動パワーP
0(x)の比率
は、予め測定された既知の値である。
【0036】
以上が、振動パワーの比率G(x)の算出方法についての説明である。このように、本実施形態では、振動パワーP(x)をもとに、振動パワーの比率G(x)を算出している。
【0037】
次に、設定した各回転数xについて、回転頻度rf(x)を決定する。そこで、各回転数xの回転頻度rf(x)を、以下の数式にて算出する。
【数7】
【0038】
ここで、回転頻度rf(x)とは、各回転数xによりモータ32を駆動させる頻度を示すものである。すなわち、回転頻度rf(x)とは、各回転数xにより所定時間内にモータ32を駆動させる時間(合計時間)の割合を示すものである。さらに言い換えると、回転頻度rf(x)とは、総回転時間Σt(x)に対して各回転数xによりモータ32を駆動させる時間(合計時間)が占める割合である。なお、ΣG(x)は、全ての回転数xについての振動パワーの比率G(x)の合計である。
【0039】
次に、設定した各回転数xについて、累積回転頻度rcf(x)を決定する。そこで、各回転数xの累積回転頻度rcf(x)を、以下の数式にて算出する。
【数8】
【0040】
なお、(数8)式から分かるように、隣り合う回転数x間の累積回転頻度rcf(x)の差は、回転頻度rf(x)となる。
【0041】
なお、以上のように定義される各項目(回転数x、回転周波数f(x)、振動パワーの比率G(x)、回転頻度rf(t)、累積回転頻度rcf(x))の数値例を、
図3に示す。なお、
図3に示す数値例では、各回転数xの単位時間あたりの振動パワーは同じであると仮定して、
としている。
【0042】
図3に示すように、本実施形態では、振動パワーの比率G(x)の値は、回転周波数f(x)(回転数x)が高いほど小さく、回転周波数f(x)(回転数x)が低いほど大きく規定されている。詳しくは、
図3に示す例においては、振動パワーの比率G(x)は、回転周波数f(x)(回転数x)に反比例するように規定されている。
【0043】
そして、本実施形態では、このように規定された振動パワーの比率G(x)をもとに、前記の(数7)式により、各回転数xの回転頻度rf(x)を算出している。これにより、回転頻度rf(x)の値は、回転周波数f(x)(回転数x)が高いほど小さく、回転周波数f(x)(回転数x)が低いほど大きく規定されている。
図3に示す例においては、回転頻度rf(x)は、回転周波数f(x)(回転数x)に反比例するように規定されている。このようにして、本実施形態では、振動パワーの比率G(x)をもとに、回転頻度rf(x)を決定している。
【0044】
また、
図3に示すように、累積回転頻度rcf(x)の値は、後述する乱数rの値に対応できるように、0から1までの間の数値となっている。
【0045】
そして、本実施形態では、設定した各々の回転数xの中から不規則に回転数xを選択して、回転数xを変化させる。なお、「不規則に回転数xを選択して」とは、例えば1000rpm→1100rpm→1200rpm・・・のように回転数xの大きさについて規則性を持たせながら回転数xを選択するのではなく、回転数xの大きさについて規則性を持たせないでランダム(無作為)に回転数xを選択するということである。
【0046】
そして、さらに、本実施形態では、設定した各々の回転数xの中から不規則に回転数xを選択して回転数xを変化させるに際して、各々の回転数xによりモータ32を駆動させる頻度が、決定した回転頻度rf(x)となるように制御する。
【0047】
そこで、具体的には、まず、乱数rを生成する。ここで、乱数rは、0以上1以下の数であり、0から1までの間において所定間隔(例えば、1/10000よりもさらに小さい間隔)毎に刻まれる数である。そして、全ての乱数rは、所定時間内に不規則な順番で生成される。そして、各々の乱数rが生成する割合は等しい。
【0048】
次に、生成した乱数rと各回転数xの累積回転頻度rcf(x)を比較し、モータ指令回転数Rを決定する。具体的には、表1に示すように、乱数rと累積回転頻度rcf(x)の関係から、モータ指令回転数Rを決定する。
【表1】
【0049】
すなわち、表1に示すように、乱数rが累積回転頻度rcf(xn-1)よりも大きく、かつ、累積回転頻度rcf(xn)以下であるときは、モータ指令回転数Rをxnと決定する。そして、このように決定されたモータ指令回転数R=xnによりモータ32を駆動させる。
【0050】
本実施形態では、
図3に示すように、回転頻度rf(x)の値は、回転数xが高いほど小さく、回転数xが低いほど大きく規定されている。そのため、発生する割合の等しい各乱数rを生成することにより、高い回転数xほど、モータ指令回転数Rとして決定される確率が低くなる。
【0051】
このように、本実施形態では、設定した各々の回転数xの中から不規則に回転数xを選択して、かつ、各々の回転数xによりモータ32を駆動させる頻度が、前記のように決定した回転頻度rf(x)となるようにして、回転数xを変化させる。そして、振動パワーの比率G(x)をもとに算出した回転頻度rf(x)は、回転周波数f(x)に反比例している。このようにして、モータ32の回転数xを1/fゆらぎで変化させることができるので、モータ32の回転に起因して発生する振動を利用して、体感上の乗り心地向上を図ることができる。なお、回転周波数f(x)と回転頻度rf(x)の計算例を、
図4に示す。
【0052】
なお、変形例として、各回転数xの回転頻度rf(x)を一定値としてもよい。すなわち、例えば、
図3に示すように回転数xを1000rpm~3000rpmまでの間で100rpm毎に合計21個設定した場合において、設定した全ての回転数xについて、その回転頻度rf(x)を一定値にしておいて、回転数xを1000rpm~3000rpmまでの間で不規則に選択して回転数xを変化させてもよい。
【0053】
以上のように本実施形態によれば、制振コントローラ6は、制振用ダンパ5に備わるモータ32の回転数xを複数設定し、設定した各々の回転数xについて回転頻度rf(x)を決定する。そして、制振コントローラ6は、設定した各々の回転数xの中から不規則に回転数xを選択して、かつ、各々の回転数xによりモータ32を駆動させる頻度が、決定した回転頻度rf(x)となるようにして、回転数xを変化させる。
【0054】
これにより、モータ32の回転数を不規則に変化させながらモータ32を駆動させるので、モータ32の駆動にゆらぎを持たせることができる。また、決定する回転頻度rf(x)を調整することによって、各々の回転数xによりモータ32を駆動させる時間を回転数xに応じて変えることがきる。そのため、例えば、モータ32の駆動に起因して発生する騒音や振動が問題となるおそれがある回転数について、その回転数によりモータ32を駆動させる時間を少なくすることができる。したがって、モータ32の駆動にゆらぎを持たせながら、鉄道車両1に乗車する人に対してモータ32の駆動に起因して発生する騒音や振動による影響を与え難くすることができる。ゆえに、鉄道車両1に乗車する人にとって、体感上の乗り心地の向上を図ることができる。
【0055】
また、本実施形態では、制振コントローラ6は、モータ32の回転数xが高いほど回転頻度rf(x)を小さい値に決定する。これにより、モータ32の駆動に起因して発生する騒音や振動が問題となるおそれがある高い回転数xによりモータ32を駆動させる時間を、少なくすることができる。そのため、鉄道車両1に乗車する人にとって、体感上の乗り心地の向上を図ることができる。
【0056】
また、本実施形態では、制振コントローラ6は、モータ32の回転数xを1/fゆらぎで変化させる。ここで、1/fゆらぎは、人に快適感やヒーリング効果を与えるといわれている。そのため、鉄道車両1に乗車する人は、1/fゆらぎに相当するモータ32の駆動音や振動を体感することによって、乗り心地の良さを感じることができる。したがって、鉄道車両1に乗車する人にとって、より効果的に、体感上の乗り心地の向上を図ることができる。
【0057】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0058】
1 鉄道車両
2 車体
3 台車
5 制振用ダンパ
6 制振コントローラ
8 制振装置
10 シリンダ
31 ポンプ
32 モータ
x 回転数
x0 基準回転数
P(x) 振動パワー
G(x) 振動パワーの比率
rf(x) 回転頻度
rcf(x) 累積回転頻度
r 乱数
R モータ指令回転数