(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072174
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】コンプレッサ、及び、コンプレッサ内のオイルの量を判別する方法
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20220510BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20220510BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20220510BHJP
F04B 39/02 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
F04C18/02 311Y
F04C29/02 B
F04C29/00 S
F04B39/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181481
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】川里 浩之
(72)【発明者】
【氏名】原之薗 一亨
【テーマコード(参考)】
3H003
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AB03
3H003AC03
3H003BD02
3H003CD01
3H003CE02
3H003CF01
3H039AA03
3H039AA06
3H039AA12
3H039BB11
3H039CC33
3H039CC34
3H039CC44
3H129AA02
3H129AA14
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB10
3H129CC09
3H129CC27
(57)【要約】
【課題】有意なコストアップをもたらすこと無く、軸受部の潤滑のためのオイルの量を判別できるコンプレッサを提供すること、及び、コンプレッサの軸受部の潤滑のためのオイルの量を判別する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、固定側要素と回転側要素とを有する冷媒ガス圧縮部と、前記冷媒ガス圧縮部の前記固定側要素に対して前記冷媒ガス圧縮部の前記回転側要素を回転可能に支持する軸受部と、前記軸受部の潤滑のためのオイルを貯留するタンクと、前記冷媒ガス圧縮部、前記軸受部及び前記タンクを包含するハウジングと、前記ハウジングの外面上であって、前記タンクを構成する側壁の一部と同じ高さ位置に配置された加速度センサと、前記加速度センサの出力値に基づいて、前記タンク内の前記オイルの量を判別する判別部と、を備えたことを特徴とするコンプレッサである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側要素と回転側要素とを有する冷媒ガス圧縮部と、
前記冷媒ガス圧縮部の前記固定側要素に対して前記冷媒ガス圧縮部の前記回転側要素を回転可能に支持する軸受部と、
前記軸受部の潤滑のためのオイルを貯留するタンクと、
前記冷媒ガス圧縮部、前記軸受部及び前記タンクを包含するハウジングと、
前記ハウジングの外面上であって、前記タンクを構成する側壁の一部と同じ高さ位置に配置された加速度センサと、
前記加速度センサの出力値に基づいて、前記タンク内の前記オイルの量を判別する判別部と、
を備えたことを特徴とするコンプレッサ。
【請求項2】
前記加速度センサは、前記ハウジングの外面上の前記高さ位置において周方向に離間した2以上の候補位置の内から、最も大きな出力変化が得られる位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のコンプレッサ。
【請求項3】
当該コンプレッサは、スクロールタイプのコンプレッサであり、
前記冷媒ガス圧縮部の前記固定側要素は、固定側スクロール圧縮部であり、
前記冷媒ガス圧縮部の前記回転側要素は、回転側スクロール圧縮部である
ことを特徴とする請求項1または2に記載のコンプレッサ。
【請求項4】
前記タンクは、前記ハウジング内の底部に配置されており、
前記加速度センサは、前記タンクの初期充填時における前記オイルの液面の高さの1/3~3/3の高さ位置に配置されている
ことを特徴とする請求項3に記載のコンプレッサ。
【請求項5】
前記判別部は、前記タンクの初期充填時における前記加速度センサの出力値を1として、前記加速度センサの出力値が1.1倍以上の第1出力閾値を超えた時に、前記オイル量が第1閾値未満になったと判別するようになっている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコンプレッサ。
【請求項6】
前記判別部は、前記タンクの初期充填時における前記加速度センサの出力値を1として、前記加速度センサの出力値が1.2倍以上の第2出力閾値を超えた時に、前記オイル量が第2閾値未満になったと判別するようになっている
ことを特徴とする請求項5に記載のコンプレッサ。
【請求項7】
固定側要素と回転側要素とを有する冷媒ガス圧縮部と、
前記冷媒ガス圧縮部の前記固定側要素に対して前記冷媒ガス圧縮部の前記回転側要素を回転可能に支持する軸受部と、
前記軸受部の潤滑のためのオイルを貯留するタンクと、
前記冷媒ガス圧縮部、前記軸受部及び前記タンクを包含するハウジングと、
前記ハウジングの外面上であって、前記タンクを構成する側壁の一部と同じ高さ位置に配置された加速度センサと、
を備えたコンプレッサにおいて前記オイルの量を判別する方法であって、
前記加速度センサの出力値を取得する工程と、
前記加速度センサの出力値に基づいて前記オイルの量を判別する工程と、
を備えたことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受部の潤滑のためのオイルの量を判別できるコンプレッサ、及び、コンプレッサの軸受部の潤滑のためのオイルの量を判別する方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンプレッサは、広範な技術分野において利用されている。
【0003】
コンプレッサが故障すると、当該コンプレッサを含んだ一連のシステムの稼働を停止する必要がある。このため、システム(例えば各種工場)の運営管理上、そのような事態はできる限り回避したい。
【0004】
特許文献1は、コンプレッサのハウジング(密閉容器)に加速度検出手段を設けて、検出された加速度に基づいて異常の有無を判定する発明を開示している。しかしながら、故障が発生してから当該故障を判定するのではなく、故障が発生する前に、当該故障が生じる可能性が高まっていることを判定できれば、より一層有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本件発明者は、コンプレッサについて様々な検討を行う中で、コンプレッサ内部の軸受部の潤滑のためのオイルの量の低減が、コンプレッサの故障の原因の1つであることを知見した。すなわち、コンプレッサ内部の軸受部の潤滑のためのオイルの量が閾値未満になったことを判定できれば、その後に生じ得るコンプレッサの故障を予見でき、有益であることを知見した。(例えば、そのような判定の後、当該コンプレッサの停止サイクル中にオイルを補充することで、故障発生の可能性を低減することができる。)
【0007】
本件発明者は、当初、コンプレッサの軸受部の潤滑のためのオイルを貯留するタンクから、コンプレッサのハウジングの外部へと、透明なサイドチューブを延出させ、オイルの量を視覚的にモニタリングする態様を考えた。
【0008】
しかしながら、そのような態様は、シール機能を伴った構成要素を複雑に付加するものであるため、有意なコストアップをもたらしてしまうことが確認された。
【0009】
本件発明者は、鋭意の検討の結果、ハウジングの外面上であってタンクを構成する側壁の一部と同じ高さ位置に加速度センサを配置することで、当該加速度センサの出力値に基づいてタンク内のオイルの量を判別できることを見出した。
【0010】
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、有意なコストアップをもたらすこと無く、軸受部の潤滑のためのオイルの量を判別できるコンプレッサを提供すること、及び、コンプレッサの軸受部の潤滑のためのオイルの量を判別する方法を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、固定側要素と回転側要素とを有する冷媒ガス圧縮部と、前記冷媒ガス圧縮部の前記固定側要素に対して前記冷媒ガス圧縮部の前記回転側要素を回転可能に支持する軸受部と、前記軸受部の潤滑のためのオイルを貯留するタンクと、前記冷媒ガス圧縮部、前記軸受部及び前記タンクを包含するハウジングと、前記ハウジングの外面上であって、前記タンクを構成する側壁の一部と同じ高さ位置に配置された加速度センサと、前記加速度センサの出力値に基づいて、前記タンク内の前記オイルの量を判別する判別部と、を備えたことを特徴とするコンプレッサである。
【0012】
本発明によれば、タンクを構成する側壁の一部と同じ高さ位置に加速度センサを配置したことによって、タンク内のオイルの量の多少を加速度センサの出力の大小に反映させることができ、それによってタンク内のオイルの量の多少を判別することが可能である。また、加速度センサは、ハウジングの外面上に設置すれば良いため、有意なコストアップをもたらすということもない。
【0013】
前記加速度センサは、前記ハウジングの外面上の前記高さ位置において周方向に離間した2以上の候補位置の内から、最も大きな出力変化が得られる位置に配置されることが好ましい。
【0014】
これによれば、タンク内のオイルの量の多少を、加速度センサの出力の大小に、より一層高感度に反映させることができる。
【0015】
タンクを構成する側壁の一部と同じ高さ位置におけるハウジングの振動は、タンク内のオイルの量の多少によって変化するが、当該変化の量は、ハウジング内の各種の構成要素の配置態様によっても影響される。例えば、何らかの配管が「つっかえ棒」のように配置されている場合には、当該配管によって振動が抑制されるため、当該配管の接続部位近傍のハウジングの振動(及び当該振動の変化の量)は、比較的小さくなると考えられる。
【0016】
そのような傾向を踏まえて、最も大きな出力(出力変化)が得られるであろう周方向の位置を解析的に求めて、当該位置に加速度センサを配置することが好ましい。あるいは、解析的に位置を特定する代わりに、実際に複数の候補位置の各々に加速度センサを試験的に配置し、それらの出力(出力変化)を比較して、最終的に加速度センサを配置すべき位置を特定してもよい。
【0017】
例えば、当該コンプレッサは、スクロールタイプのコンプレッサである。この場合、前記冷媒ガス圧縮部の前記固定側要素は、固定側スクロール圧縮部であり、前記冷媒ガス圧縮部の前記回転側要素は、固定側スクロール圧縮部である。
【0018】
この場合、一般的には、前記タンクは、前記ハウジング内の底部に配置されている。そして、前記加速度センサは、前記タンクの初期充填時における前記オイルの液面の高さの1/3~3/3の高さ位置に配置されることが好ましい。このような範囲に加速度センサを設置することによって、タンク内のオイルの量の多少を、加速度センサの出力の大小に、比較的高感度に反映させることができる。
【0019】
また、例えば、前記判別部は、前記タンクの初期充填時における前記加速度センサの出力値を1として、前記加速度センサの出力値が1.1倍以上の第1出力閾値を超えた時に、前記オイル量が第1閾値未満になったと判別するようになっていることが好ましい。
【0020】
0.1倍(10%)以上離れた値を第1出力閾値とすることで、加速度センサの出力に多少の誤差が含まれる場合であっても、信頼性のある判別を実現することができる。
【0021】
更に、前記判別部は、前記タンクの初期充填時における前記加速度センサの出力値を1として、前記加速度センサの出力値が1.2倍以上の第2出力閾値を超えた時に、前記オイル量が第2閾値未満になったと判別するようになっていることが好ましい。
【0022】
0.2倍(20%)以上離れた値を第2出力閾値とすることで、加速度センサの出力に多少の誤差が含まれる場合であっても、より一層信頼性のある2段階の判別を実現することができる。
【0023】
また、本発明は、方法のカテゴリーの発明としても把握することができる。すなわち、本発明は、固定側要素と回転側要素とを有する冷媒ガス圧縮部と、前記冷媒ガス圧縮部の前記固定側要素に対して前記冷媒ガス圧縮部の前記回転側要素を回転可能に支持する軸受部と、前記軸受部の潤滑のためのオイルを貯留するタンクと、前記冷媒ガス圧縮部、前記軸受部及び前記タンクを包含するハウジングと、前記ハウジングの外面上であって、前記タンクを構成する側壁の一部と同じ高さ位置に配置された加速度センサと、を備えたコンプレッサにおいて前記オイルの量を判別する方法であって、前記加速度センサの出力値を取得する工程と、前記加速度センサの出力値に基づいて前記オイルの量を判別する工程と、を備えたことを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、タンクを構成する側壁の一部と同じ高さ位置に加速度センサを配置したことによって、タンク内のオイルの量の多少を加速度センサの出力の大小に反映させることができ、それによってタンク内のオイルの量の多少を判別することが可能である。また、加速度センサは、ハウジングの外面上に設置すれば良いため、有意なコストアップをもたらすということもない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンプレッサの概略図である。
【
図2】
図1のコンプレッサの内部構造を示す概略縦断面図である。
【
図3】
図1のコンプレッサの主要な構成要素を示す概略分解斜視図である。
【
図4】
図1のコンプレッサにおいてオイルの量と加速度センサの出力結果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
(コンプレッサ:構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るコンプレッサの概略図であり、
図2は、
図1のコンプレッサの内部構造を示す概略縦断面図であり、
図3は、
図1のコンプレッサの主要な構成要素を示す概略分解斜視図である。
【0028】
図1乃至
図3に示すように、本実施形態のコンプレッサ10は、スクロールタイプのコンプレッサである。当該コンプレッサ10は、冷媒ガス圧縮部の固定側要素として、固定側スクロール圧縮部11を備えており、また、冷媒ガス圧縮部の回転側要素として、回転側スクロール圧縮部12を備えている。
【0029】
回転側スクロール圧縮部12は、商用交流電源またはインバータによって回転駆動されるローター13に接続されており、当該ローター13と一体的に回転するようになっている。また、回転側スクロール圧縮部12及びローター13は、ハウジング18に対して、上部軸受14と下部軸受15とを介して回転可能に支持されている。一方、固定側スクロール圧縮部11は、ハウジング18に対して固定されている。これにより、回転側スクロール圧縮部12は、固定側スクロール圧縮部11に対して、回転可能となっている。
【0030】
また、本実施形態のコンプレッサ10は、上部軸受14と下部軸受15とを潤滑するためのオイルを備えており、当該オイルは、ハウジング18の下方部18tに貯留されている。すなわち、ハウジング18の下方部18tが、上部軸受14と下部軸受15(軸受部)の潤滑のためのオイルを貯留するタンクを構成している。
【0031】
そして、ローター13の内部に、オイル用の連通孔13hが設けられており、オイルポンプ16によって当該連通孔13hを通ってタンク(ハウジング18の下方部18t)内のオイルが上部軸受14に供給されるようになっている。
図2及び
図3において、オイルの大まかな移動(流れ)の様子が、矢印によって示されている。
【0032】
一方、下部軸受15は、タンク(ハウジング18の下方部18t)内に埋没しているため、オイル供給のための特段の構成は不要となっている。
【0033】
また、本実施形態のコンプレッサ10は、ハウジング18の外面上に、圧縮冷媒ガスポート21と、加速度センサ23と、を備えている。圧縮冷媒ガスポート21は、ハウジング18の上方部に配置され、配管22に接続されている。加速度センサ23は、タンクを構成する側壁(ハウジング18の下方部18t)の一部と同じ高さ位置に配置されている。
【0034】
具体的には、本実施形態では、加速度センサ23は、タンクの初期充填時におけるオイルの液面の高さ(77mm:オイル量1770ccに相当)の約1/2の高さ位置(39mm:オイル量975ccに相当)に配置されている。
【0035】
そして、加速度センサ23は、当該加速度センサ23の出力値に基づいてタンク内のオイルの量を判別する判別部25が接続されている。判別部25は、専用の信号処理回路やコンピュータシステム等によって構成されている。
【0036】
本実施形態の判別部25は、タンクの初期充填時における加速度センサ23の出力値を1として、加速度センサの出力値が1.1倍以上の第1出力閾値(例えば1.1倍に相当する値)を超えた時に、オイル量が第1閾値未満になったと判別するようになっている。
【0037】
具体的には、例えば50Hzの商用交流電源使用時において、タンクの初期充填時における加速度センサ23の出力値が4.0m/s
2 であった場合(
図4参照)、第1出力閾値として4.4m/s
2 が設定される。そして、加速度センサの出力値が当該第1出力閾値を超えた時に、オイル量が第1閾値未満になったと判別して、例えば「オイル量が少なくなっております」という警告メッセージを発信するようになっている。
【0038】
あるいは、例えば60Hzの商用交流電源使用時において、タンクの初期充填時における加速度センサ23の出力値が5.1m/s
2 であった場合(
図4参照)、第1出力閾値として5.6m/s
2 が設定される。そして、加速度センサの出力値が当該第1出力閾値を超えた時に、オイル量が第1閾値未満になったと判別して、例えば「オイル量が少なくなっております」という警告メッセージを発信するようになっている。
【0039】
更に、本実施形態の判別部25は、タンクの初期充填時における加速度センサ23の出力値を1として、加速度センサの出力値が1.2倍以上の第2出力閾値(例えば1.2倍に相当する値)を超えた時に、オイル量が第2閾値未満になったと判別するようになっている。
【0040】
具体的には、例えば50Hzの商用交流電源使用時において、タンクの初期充填時における加速度センサ23の出力値が4.0m/s
2 であった場合(
図4参照)、第2出力閾値として4.8m/s
2 が設定される。そして、加速度センサの出力値が当該第2出力閾値を超えた時に、オイル量が第2閾値未満になったと判別して、例えば「オイル量が非常に少なくなっております」という警告メッセージを発信するようになっている。
【0041】
あるいは、例えば60Hzの商用交流電源使用時において、タンクの初期充填時における加速度センサ23の出力値が5.1m/s
2 であった場合(
図4参照)、第2出力閾値として6.1m/s
2 が設定される。そして、加速度センサの出力値が当該第2出力閾値を超えた時に、オイル量が第2閾値未満になったと判別して、例えば「オイル量が非常に少なくなっております」という警告メッセージを発信するようになっている。
【0042】
図4は、本実施形態のコンプレッサ10において、タンク内のオイルの量(装置を分解して調整した)と加速度センサ23の出力結果との関係を示すグラフである。
図4から分かるように、本実施形態では、タンク内のオイルの量が初期充填時(77mm:オイル量1770ccに相当)の約1/2(39mm:オイル量975ccに相当)となった時に、加速度センサ23の出力値が第1出力閾値を超えるような設定となっており、タンク内のオイルの量が初期充填時(77mm:オイル量1770ccに相当)の約1/4(20mm:オイル量450ccに相当)となった時に、加速度センサ23の出力値が第2出力閾値を超えるような設定となっている。
【0043】
(作用)
以上のような本実施形態のコンプレッサ10は、タンク内のオイルの量が初期充填された状態(77mm:オイル量1770ccに相当)で、使用が開始される。
【0044】
コンプレッサ10の使用が継続されていくと、僅かずつではあるが、オイルが本来の通過領域から不所望の箇所へと漏洩していき、タンク内のオイルの量が減っていく。
【0045】
本実施形態のコンプレッサ10は、所定のサンプリング時間毎(例えば1時間毎)に加速度センサ23によって出力値が取得され、当該加速度センサ23の出力値に基づいて判別部25がオイルの量を判別する。
【0046】
本実施形態では、
図4から分かるように、タンク内のオイルの量が初期充填時(77mm:オイル量1770ccに相当)の約1/2(39mm:オイル量975ccに相当)となった時に、加速度センサ23の出力値が第1出力閾値を超える。これに応じて、判別部25は、「オイル量が少なくなっております」という警告メッセージを発信する。
【0047】
更に、本実施形態では、
図4から分かるように、タンク内のオイルの量が初期充填時(77mm:オイル量1770ccに相当)の約1/4(20mm:オイル量450ccに相当)となった時に、加速度センサ23の出力値が第2出力閾値を超える。これに応じて、判別部25は、「オイル量が非常に少なくなっております」という警告メッセージを発信する。
【0048】
(効果)
以上の通り、本実施形態のコンプレッサ10によれば、タンクを構成する側壁の一部(ハウジング18の下方部18t)と同じ高さ位置に加速度センサ23を配置したことによって、タンク内のオイルの量の多少を加速度センサ23の出力の大小に反映させることができ、それによってタンク内のオイルの量の多少を判別することができる。一方、加速度センサ23は、ハウジング18の外面上に設置すれば良いため、有意なコストアップをもたらすということもない。
【0049】
また、本実施形態のコンプレッサ10では、加速度センサ23は、タンクの初期充填時におけるオイルの液面の高さ(77mm:オイル量1770ccに相当)の約1/2の高さ位置(39mm:オイル量975ccに相当)に配置されているため、タンク内のオイルの量の多少を、加速度センサの出力の大小に、比較的高感度に反映させることができる。
【0050】
本件発明者による検証によれば、実質的に当該効果を得るためには、加速度センサ23は、タンクの初期充填時におけるオイルの液面の高さ(77mm:オイル量1770ccに相当)の1/3~3/3、特には1/3~2/3(1/2の近傍)の高さ位置に配置されることが有効である。
【0051】
また、本実施形態のコンプレッサ10では、判別部25は、タンクの初期充填時における加速度センサ23の出力値を1として、加速度センサ23の出力値が1.1倍以上の第1出力閾値を超えた時に、オイル量が第1閾値未満になったと判別するようになっている。このように、0.1倍(10%)以上離れた値を第1出力閾値とすることで、加速度センサ23の出力に多少の誤差が含まれる場合であっても、信頼性のある判別を実現することができる。
【0052】
更に、本実施形態のコンプレッサ10では、判別部25は、タンクの初期充填時における前記加速度センサ23の出力値を1として、加速度センサ23の出力値が1.2倍以上の第2出力閾値を超えた時に、オイル量が第2閾値未満になったと判別するようになっている。このように、0.2倍(20%)以上離れた値を第2出力閾値とすることで、加速度センサ23の出力に多少の誤差が含まれる場合であっても、より一層信頼性のある2段階の判別を実現することができる。
【0053】
(周方向についての加速度センサ23の設置位置の特定)
なお、本実施形態のコンプレッサ10において、加速度センサ23は、ハウジング18の外面上の前記高さ位置において、周方向に離間した2以上の候補位置の内から、最も大きな出力変化が得られる位置に配置されていることが好ましい。
【0054】
これによれば、タンク内のオイルの量の多少を、加速度センサ23の出力の大小に、より一層高感度に反映させることができる。
【0055】
タンクを構成する側壁の一部(ハウジング18の下方部18t)と同じ高さ位置におけるハウジング18の振動は、タンク内のオイルの量の多少によって変化するが、当該変化の量は、ハウジング18内の各種の構成要素の配置態様によっても影響される。例えば、何らかの配管が「つっかえ棒」のように配置されている場合には、当該配管によって振動が抑制されるため、当該配管の接続部位近傍のハウジング18の振動(及び当該振動の変化の量)は、比較的小さくなると考えられる。
【0056】
そのような傾向を踏まえて、最も大きな出力(出力変化)が得られるであろう周方向の位置を解析的に求めて、当該位置に加速度センサ23を配置することが好ましい。あるいは、解析的に位置を特定する代わりに、実際に複数の候補位置の各々に加速度センサ23を試験的に配置し、それらの出力(出力変化)を比較して、最終的に加速度センサ23を配置すべき位置を特定してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 コンプレッサ
11 固定側スクロール圧縮部
12 回転側スクロール圧縮部
13 ローター
13h 連通孔
14 上部軸受
15 下部軸受
16 オイルポンプ
18 ハウジング
18t ハウジング下方部(タンク)
21 圧縮冷媒ガスポート
22 圧縮冷媒ガス配管
23 加速度センサ
25 判別部