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特開2022-72175コンクリート製造用水、コンクリート製造用水の製造方法、及び生コンクリート
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  • 特開-コンクリート製造用水、コンクリート製造用水の製造方法、及び生コンクリート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072175
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】コンクリート製造用水、コンクリート製造用水の製造方法、及び生コンクリート
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/16 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B28C7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181482
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】516317300
【氏名又は名称】和泉生コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100174827
【弁理士】
【氏名又は名称】治下 正志
(72)【発明者】
【氏名】雪本 清人
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056CD48
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水、前記コンクリート製造用水の製造方法、及び前記コンクリート製造用水を用いて得られる生コンクリートを提供する。
【解決手段】マイクロバブル水を用いた、鉄とカルシウムとを含む回収水を含み、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率が4~20であるコンクリート製造用水である。コンクリート製造用水の製造方法は、マイクロバブル水を用いて調製された回収水から得たスラッジ水12と上澄み水16とを混合させて、カルシウムの質量に対する鉄の質量の比率を4~20に調整する工程を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロバブル水を用いた、鉄とカルシウムとを含む回収水を含み、
前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率が4~20であることを特徴とするコンクリート製造用水。
【請求項2】
前記コンクリート製造用水の固形分量が0.5~10質量%である請求項1に記載のコンクリート製造用水。
【請求項3】
前記コンクリート製造用水のpHが10~14である請求項1又は請求項2に記載のコンクリート製造用水。
【請求項4】
マイクロバブル水を用いて調製された回収水から得たスラッジ水と上澄み水とを混合させて、カルシウムの質量に対する鉄の質量の比率を4~20に調整する工程を備えることを特徴とするコンクリート製造用水の製造方法。
【請求項5】
前記回収水を前記上澄み水と前記スラッジ水とに分離する工程と、
前記コンクリート製造用水の固形分量が0.5~10質量%となるように、前記スラッジ水の固形分量を調整して、前記上澄み水と前記スラッジ水とを混合する混合工程とをさらに備える請求項4に記載のコンクリート製造用水の製造方法。
【請求項6】
前記混合工程は、前記コンクリート製造用水のpHを10~14に調整する請求項5に記載のコンクリート製造用水の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のコンクリート製造用水と、セメントと、骨材とを含むことを特徴とする生コンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製造用水、コンクリート製造用水の製造方法、及び生コンクリートに関する。
【背景技術】
【0002】
生コンクリート工場やコンクリート製品工場等では、ミキサ車の洗浄等により、セメント及び骨材を含んだ多量の洗浄水が発生する。
【0003】
このような洗浄水(以下、回収水とも称する)の処理としては、例えば、前記回収水から骨材を分離回収し、骨材を分離回収した後でも残存する細骨材等のスラッジ固形分を含むスラッジ水と、スラッジ固形分のほとんど含まない上澄み水とに分けられる。そして、この上澄み水を、生コンクリートを製造する際のコンクリート製造用水に用いることがある。また、前記スラッジ水も、JIS A 5308:2019(レディーミクストコンクリート)によれば、スラッジ固形分率が3%以下であれば、コンクリート製造用水に用いることできるとされている。このため、スラッジ水からスラッジ固形分を分離回収することがあるが、回収されたスラッジ固形分が細骨材等の骨材であれば、再利用できるが、スラッジ微粉末は乾燥して廃棄されている。
【0004】
しかしながら、骨材部分を分離回収し、セメント分を含んだコンクリート回収水をそのまま練り水として再使用すると、得られた生コンクリートの作業性等が低下したり、その生コンクリートを凝固して得られた硬化コンクリートの強度低下を招く等の欠点がある。また、前記スラッジ水をコンクリート製造用水に用いることも、スラッジ水の安定供給を維持することや配合調整等の必要があること等の問題が発生しやすく、スラッジ水の多くは、脱水ケーキ化されて、廃棄されている。また、スラッジ水からスラッジ固形分を分離する方式は、設備や工程等が複雑になる上、かかるコストが高くなるという欠点がある。
【0005】
生コンクリート工場等で発生した回収水の処理としては、例えば、特許文献1~4に記載の技術が挙げられる。
【0006】
特許文献1には、ボイラー排ガスを、コンクリート製造にかかる廃水の溜槽にブロワーで導き、強制的に散気させて、廃水の処理を行うシステムが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、窯業系製品の製造過程で発生する排水の貯留槽に、同じく窯業系製品の製造工程で発生する、COガス成分を含有する排気ガスを導き、前記排水内に噴出させる窯業系排水の排水処理システムが記載されている。
【0008】
また、特許文献3には、コンクリート回収水を、攪拌しながら、二酸化炭素を含む気体を注入することによって得られた、溶解するカルシウムイオンの濃度が700~1000ppmであるコンクリート製造用水が記載されている。
【0009】
また、特許文献4には、上水道水、工業用水、井戸水、河川水、地下水、涌水及び生コンクリートを洗浄により発生するスラッジ水、スラッジ水を澄ました上澄み水を貯留供給する水源部を有し、該水源部よりの流水管の途中にエアーを注入し、その後、ポンプ部内で水を加圧した後、ミキサー部によって50ミクロン以下の気泡を発生させて微細泡水を製造する水硬性セメント用の混練水の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平7-21194号公報
【特許文献2】特開平10-314758号公報
【特許文献3】特開2014-213479号公報
【特許文献4】特開2007-261242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1によれば、排水中の水酸化カルシウムは、ボイラー排ガスに含まれる炭酸ガスと反応して、炭酸カルシウムとなり沈殿することによって、強アルカリ性を示した排水も中和され、pH6~7の範囲におさまる旨が開示されている。
【0012】
また、特許文献2によれば、窯業系排水に含まれるアルカリ性原因物質であるカルシウム成分は、排気ガス中の、COガス及びNOxガス等により中和し、炭酸カルシウムや硝酸カルシウムとして沈降固定できる旨が開示されている。
【0013】
また、特許文献1及び特許文献2には、中和処理された水を再利用する旨も開示されている。
【0014】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された処理が施された水を、生コンクリートを製造するために用いると、前記コンクリート回収水をそのまま練り水として再使用した場合と同様、得られた生コンクリートの作業性等が低下したり、その生コンクリートを凝固して得られた硬化コンクリートの強度低下を招く等の不具合が発生する場合があった。
【0015】
また、特許文献3には、回収水中の上澄み水を再利用する方法が開示されている。
【0016】
特許文献3によれば、コンクリート回収水を原料としたコンクリート製造用水であっても、このコンクリート製造用水を用いて、生コンクリートを製造すると、作業性等に優れた生コンクリートを得ることができる旨が開示されている。
【0017】
しかしながら、特許文献3に記載のコンクリート製造用水を用いても、上澄み水で固形分が少ないため、充分に優れた生コンクリートを得ることができない場合があった。例えば、コンクリート回収水に浮遊する固形物を除去しない場合等は、得られたコンクリート製造用水を用いて生コンクリートを製造しても、生コンクリートの作業性等が充分に優れていない場合があった。
【0018】
また、特許文献4によれば、混練材料が使用目的に応じて適用するか、用法、用量が適当かどうかの検討を必要とする事なく、或いは使用する事なく、水である水源部より流水の通過によって機能混練水を容易に製造でき、この混練水によってセメントが硬化促進され、セメントの節約、流動性の向上、耐久性の向上及び作業性を充分に達成できる旨が開示されている。
【0019】
しかしながら、特許文献4に記載のコンクリート製造用水では、各種の水源のマイクロバブル水を用いるため、全てで、充分に優れた生コンクリートを得ることができない場合があった。
【0020】
これらのことから、生コンクリート工場等で発生した回収水から得られたコンクリート製造用水であっても、より優れた生コンクリートが得られることが求められる。
【0021】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであって、優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水、及び前記コンクリート製造用水の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、前記コンクリート製造用水を用いて得られる生コンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0023】
本発明の一態様に係るコンクリート製造用水は、マイクロバブル水を用いた、鉄とカルシウムとを含む回収水を含み、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率が4~20であることを特徴とする。
【0024】
このような構成によれば、回収水(コンクリート回収水)を原料としたコンクリート製造用水であっても、このコンクリート製造用水を用いて、生コンクリートを製造すると、作業性等に優れた生コンクリートを得ることができる。すなわち、優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水を提供することができる。また、このコンクリート製造用水を用いて得られた生コンクリートを用いることによって、優れた硬化コンクリート(コンクリート構造体)が得られる。
【0025】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0026】
マイクロバブル水を用いた回収水を含み、カルシウムの質量に対する鉄の質量の比率が4~20であるコンクリート製造用水では、緑黄色や深緑色の化合物の生成が確認される。これは、コンクリート製造用水に含まれる鉄が、2価の鉄と3価の鉄との混合物となることにより生成される、酸化還元電位の低い、緑黄色や深緑色のグリーンラスト(Green Rust)と呼ばれる化合物であると考えられる。ここでいう、グリーンラストとは、第一鉄(Fe2+、二価鉄化合物)と第二鉄(Fe3+、三価鉄化合物)とを含む層状混合水酸化物であり、SO 2-、CO 2-、及びCl等の陰イオンを層間に取り込んだ構造を有している。グリーンラストは、第一鉄を含むことによって還元性を有する。なお、ここでの酸化還元電位は、水中の酸化還元状態を示す数値であり、酸化状態ではプラスの値となり、還元状態ではマイナスの値となる。自然水に存在する酸化性物質としては、例えば、溶存酸素、及び三価の鉄等が挙げられ、還元性物質としては、例えば、2価の鉄等が挙げられる。これらの量のバランスによって、酸化還元電位が調整される。このようなグリーンラストが生成されたコンクリート製造用水に分散される細骨材等は、その表面電位が高くなると考えられる。表面電位の高い細骨材等は、生コンクリート中での分散性が高まり、また、セメントとの水和状態を良好にすることによって、生コンクリートの流動性等を向上させることができると考えられる。さらに、コンクリート製造用水には、マイクロバブル水を含むことから、得られた生コンクリートを凝固して得られた硬化コンクリートの表面に水が押し出される現象であるブリージングを抑制することもできると考えられる。これらのことから、コンクリート製造用水を用いて生コンクリートを製造すると、優れた生コンクリートを得ることができると考えられる。よって、前記コンクリート製造用水は、回収水(コンクリート回収水)を原料としたコンクリート製造用水であっても、このコンクリート製造用水を用いて、生コンクリートを製造すると、作業性等に優れた生コンクリートを得ることができる。
【0027】
また、前記コンクリート製造用水において、前記コンクリート製造用水の固形分量が0.5~10質量%であることが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、より優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水を提供することができる。
【0029】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0030】
コンクリート製造用水の固形分量が0.5~10質量%であると、グリーンラストと呼ばれる化合物等の、酸化還元電位の低い化合物を好適に生成させることができると考えられる。そうすると、コンクリート製造用水に分散される細骨材等は、その表面電位がより高くなり、生コンクリート中での分散性がより高まり、また、セメントとの水和状態がより良好になると考えられる。このため、コンクリート製造用水を用いて製造された生コンクリートの流動性等をより向上させることができると考えられる。すなわち、前記コンクリート製造用水を用いて生コンクリートを製造すると、より優れた生コンクリートを得ることができると考えられる。
【0031】
また、前記コンクリート製造用水において、前記コンクリート製造用水のpHが10~14であることが好ましい。
【0032】
このような構成によれば、より優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水を提供することができる。
【0033】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0034】
コンクリート製造用水のpHが10~14であると、コンクリート製造用水の酸化還元電位がより低くなり、還元能力を高くすることができると考えられる。そうすると、コンクリート製造用水に分散される細骨材等は、その表面電位がより高くなり、生コンクリート中での分散性がより高まり、また、セメントとの水和状態がより良好になると考えられる。このため、コンクリート製造用水を用いて製造された生コンクリートの流動性等をより向上させることができると考えられる。すなわち、前記コンクリート製造用水を用いて生コンクリートを製造すると、より優れた生コンクリートを得ることができると考えられる。
【0035】
また、本発明の他の一態様に係るコンクリート製造用水の製造方法は、マイクロバブル水を用いて調製された回収水から得たスラッジ水と上澄み水とを混合させることによって、カルシウムの質量に対する鉄の質量の比率を4~20に調整する工程を備えることを特徴とする。
【0036】
このような構成によれば、前記コンクリート製造用水、すなわち、優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水を製造することができるコンクリート製造用水の製造方法を提供することができる。
【0037】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0038】
マイクロバブル水を、例えば、生コンクリート製造設備(レディーミクストコンクリート工場)、ミキサ車、及びアジテータ車等の中に残っている細骨材や残コンクリート等に接触させることによって、鉄イオン等の溶出を促進させることができると考えられる。このことから、前記製造方法によれば、優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水を得ることができると考えられる。
【0039】
また、前記コンクリート製造用水の製造方法において、前記回収水を前記上澄み水と前記スラッジ水とに分離する工程と、前記コンクリート製造用水の固形分量が0.5~10質量%となるように、前記スラッジ水の固形分量を調整して、前記上澄み水と前記スラッジ水とを混合する混合工程とをさらに備えることが好ましい。
【0040】
このような構成によれば、上記のように混合することで、固形分量が0.5~10質量%であるコンクリート製造用水が得られる。この固形分量が0.5~10質量%であるコンクリート製造用水は、上述したように、より優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水である。よって、前記製造方法によれば、より優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水を容易に製造することができる。
【0041】
また、前記コンクリート製造用水の製造方法において、前記混合工程は、前記コンクリート製造用水のpHを10~14に調整することが好ましい。
【0042】
このような構成によれば、上記のように混合することで、pHが10~14であるコンクリート製造用水が得られる。このpHが10~14であるコンクリート製造用水は、上述したように、より優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水である。よって、前記製造方法によれば、より優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水を容易に製造することができる。
【0043】
また、本発明の他の一態様に係る生コンクリートは、前記コンクリート製造用水と、セメントと、骨材とを含むことを特徴とする。
【0044】
このような構成によれば、前記コンクリート製造用水を用いていることから、優れた生コンクリートが得られる。
【0045】
前記コンクリート製造用水において、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率(鉄/カルシウム)は、4~20であり、4~15であることが好ましく、6~13であることがより好ましい。
【0046】
前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率(鉄/カルシウム)が小さすぎると、緑黄色や深緑色のグリーンラストの生成が少なく、作業性等に優れた生コンクリートを得られにくい傾向がある。また、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率(鉄/カルシウム)が大きすぎても、緑黄色や深緑色の化合物の生成が少なく、作業性等に優れた生コンクリートを得られにくい傾向がある。なお、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率(鉄/カルシウム)の測定方法は、例えば、蛍光X線分析法等で測定することができる。
【0047】
前記コンクリート製造用水は、固形分量が0.5~10質量%であることが好ましく、0.5~8質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることがさらに好ましい。固形分量が少なすぎると、グリーンラストと呼ばれる化合物等の、酸化還元電位の低い化合物の生成が少なく、作業性等に優れた生コンクリートを得られにくい傾向がある。また、固形分量が多すぎると、固形分が多いことにより発生する不具合を生じやすくなる傾向がある。なお、前記コンクリート製造用水の固形分量は、コンクリート製造用水から水を留去させ、得られた固体を乾燥させた後の質量を測定し、この測定された質量と、水を留去させる前のコンクリート製造用水の質量とから、算出することができる。前記質量の測定は、特に限定されないが、例えば、電子天秤等で測定できる。また、前記乾燥は、水を除去することができればよく、例えば、110℃での乾燥等が挙げられる。
【0048】
前記コンクリート製造用水は、pHが10~14であることが好ましく、11~14であることがより好ましく、12~14であることがさらに好ましい。pHが上記範囲内であると、鉄のプールベ図(電位-pH図)からわかるように、鉄の還元能力の指標となるコンクリート製造用水の酸化還元電位がより低くなる(よりマイナスになる)。このように、鉄の還元能力を高くすることができることから、コンクリート製造用水に分散される細骨材等は、その表面電位がより高くなり、生コンクリート中での分散性がより高まり、また、セメントとの水和状態がより良好になると考えられる。このため、コンクリート製造用水を用いて製造された生コンクリートの流動性等をより向上させることができると考えられる。なお、前記コンクリート製造用水のpHは、例えば、公知の水質測定器等を用いて測定することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水、及び前記コンクリート製造用水の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記コンクリート製造用水を用いて得られる生コンクリートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート製造用水を製造する方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0052】
本実施形態に係るマイクロバブル水は、例えば、ISO 20480-1:2017に規定のマイクロバブルを含む水等挙げられる。前記マイクロバブルの平均粒径は、0.1~100μmであることが好ましく、0.1~50μmであることがより好ましい。なお、平均粒径としては、例えば、球形を前提としたバブルの体積に基づいて導き出される直径等の体積球相当径等が挙げられる。
【0053】
前記マイクロバブル水の製造方法は、特に限定されない。前記マイクロバブル水を製造する方法としては、例えば、エジェクタ方式、キャビテーション方式、旋回流方式、及び加圧溶解法等が挙げられる。エジェクタ方式とは、例えば、エジェクタに加圧された液体を送り、エジェクタ内部に発生する無数の剥離流により自吸されるガスを微粒化して気泡を生成する手法等が挙げられる。キャビテーション方式とは、例えば、キャビテーション構造を有する発生器に加圧された液体を送り、構造部で発生するキャビテーション現象(空洞現象)を利用し液体に含まれる溶存ガスを析出させて気泡を生成する手法等が挙げられる。旋回流方式とは、例えば、筒状の構造を有する発生器に偏心方向から加圧された液体を送り、円筒中心部に形成される気柱により空気を自吸させ、吐出する際の速度差で生じるせん断力により気泡を生成する手法等が挙げられる。加圧溶解法とは、例えば、圧力下で気体を強制的に溶解させ、減圧(大気開放)により気泡を析出させる手法等が挙げられる。マイクロバブルの発生装置としては、水質の影響を受けにくい旋回型マイクロバブル発生装置が望ましい。具体的には、有限会社バイ・クリーン製のYJノズルを用いたマイクロバブル発生装置が好ましい。
【0054】
マイクロバブル水を用いた回収水とは、生コンクリート工場やコンクリート製品工場等で、マイクロバブル水を用いて、残コンクリートから発生する水やミキサ車の洗浄等により発生する水であって、セメント及び細骨材等を含む水を言う。より具体的には、生コンクリート製造設備(レディーミクストコンクリート工場)を洗浄する際にマイクロバブル水を用いて得られた洗浄水、残コンクリートや生コンクリートを輸送するためのミキサ車やアジテータ車を洗浄する際にマイクロバブル水を用いて得られた洗浄水、及びマイクロバブル水を用いて得られた生コンクリートの、使用しなかったコンクリート(残コン)の分離回収水等も含まれる。
【0055】
前記コンクリート製造用水の酸化還元電位は、-30mV以下であることが好ましく、-40mV以下であることがより好ましく、-60mV以下であることがさらに好ましい。前記コンクリート製造用水の酸化還元電位が大きすぎると、作業性等に優れた生コンクリートを得られにくい傾向がある。このことは、コンクリート製造用水に分散される細骨材等の表面電位の高まりが不充分であることから、生コンクリート中での分散性も充分に高いものとはならず、セメントとの水和状態も充分に向上しないことによると考えられる。なお、前記コンクリート製造用水の酸化還元電位は、例えば、公知の水質測定器等を用いて測定することができる。
【0056】
前記コンクリート製造用水の製造方法としては、前記コンクリート製造用水を製造することができれば、特に限定されない。前記コンクリート製造用水の製造方法としては、例えば、マイクロバブル水を用いて調製された回収水から得たスラッジ水と上澄み水とを混合させることによって、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率を4~20に調整する工程(調整工程)を備える方法等が挙げられる。
【0057】
前記調整工程は、前記回収水を上澄み水とスラッジ水とに分離する工程(分離工程)と、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率を4~20となるように、前記上澄み水と前記スラッジ水とを混合する混合工程とを備える工程等が挙げられる。前記スラッジ水は、上述したように、前記回収水を分離した成分であって、例えば、前記回収水から沈降等により沈殿物を取り除き、さらに、前記上澄み水を取り除いた残余の水等が挙げられる。前記上澄み水は、上述したように、前記回収水を分離した成分であって、例えば、前記回収水を貯留することによって、前記回収水から沈降等により発生した上澄み水、すなわち、前記スラッジ水から、スラッジ固形分を沈降その他の方法で取り除いた水等が挙げられる。
【0058】
前記分離工程は、前記回収水を上澄み水とスラッジ水とに分離することができれば、特に限定されず、例えば、前記回収水から沈降等により沈殿物を取り除き、骨材を分離回収した後でも残存する細骨材等のスラッジ固形分を含むスラッジ水と、スラッジ固形分のほとんど含まない上澄み水とに分離する工程等が挙げられる。前記分離工程としては、例えば、以下のような工程等が挙げられる。まず、前記回収水を貯留する槽(回収水貯留槽)に、前記回収水を流入させた後、静置して、前記回収水から固形分(沈殿物)が沈降され、前記回収水貯留槽の比較的上方に位置する水を上澄み水として回収する。その後、前記回収水貯留槽に貯留されている水を、前記攪拌装置での攪拌した後、静置して、沈殿物以外の水を、スラッジ水として回収する。その際、前記分離工程において、前記回収水貯留槽に貯留されている水を、攪拌及び静置を、所定時間毎に断続的に行うことが好ましい。このことにより、静置後に得られる沈殿物の層において、粒径の比較的小さなスラッジ固形分が、比較的上層に、また、細骨材や粒径の比較的大きなスラッジ固形分が、比較的下層に配置され、これらを分別できる。そして、比較的下層に位置する、細骨材や粒径の比較的大きなスラッジ固形分を、前記回収水貯留槽の外に排出した後に、攪拌し、静置することによって、好適なスラッジ水が得られる。その後、得られたスラッジ水を、前記回収水貯留槽からスラッジ固形分調整槽に供給させ、同様に、攪拌装置での攪拌及び静置を、所定時間毎に断続的に行うことが好ましい。そうすることによって、固形分量が調整されたスラッジ水が得られる。前記分離工程は、このように、前記回収水を上澄み水とスラッジ水とに分離する工程であってもよい。
【0059】
前記混合工程は、前記上澄み水と前記スラッジ水とを混合する工程であり、上述したように、前記コンクリート製造用水の固形分量が0.5~10質量%となるように混合することが好ましい。また、前記混合工程は、前記コンクリート製造用水のpHを10~14に調整することが好ましい。すなわち、前記コンクリート製造用水のpHを10~14となるように、前記上澄み水と前記スラッジ水とを混合する工程であることが好ましい。前記混合工程としては、例えば、前記分離工程で得られた、上澄み水と、前記固形分量が調整されたスラッジ水とを混合する工程等が挙げられる。
【0060】
また、前記調整工程後に得られたコンクリート製造用水は、マイクロバブルが、その径の均一性が高い状態で安定に維持される。このことは、このことは、コンクリート回収水に元々含まれていた空気連行剤(AE剤:Air Entraining Agent)等の界面活性剤の存在によると考えられる。そして、このマイクロバブルの表面(マイクロバブルと液体との界面)には、AE剤だけではなく、鉄やカルシウムが存在し、比較的安定な状態を維持することができると考えられる。
【0061】
前記コンクリート製造用水の製造方法の具体例としては、例えば、図1に示すような方法等が挙げられる。図1は、本実施形態に係るコンクリート製造用水を製造する方法を説明するための図である。コンクリート製造用水は、図1に示すように、5つの槽11、21、31、41、及び51を用いて製造する。
【0062】
まず、図1に示すように、回収水貯留槽11に、回収水供給装置15から、マイクロバブル水を用いて得られた回収水を供給する。回収水貯留槽11内に供給された回収水を静置し、比較的大きな固形分を、沈殿物13として沈降させて、スラッジ水と上澄み水とを得た。そして、回収水のうちの比較的上部から、回収液(例えば、比較的上部に位置する、外観上透明な回収液等)を上澄み水16として上澄み水貯留槽41に供給する。その後、回収水貯留槽11内に供給された回収水を攪拌装置14で充分に攪拌する。そして、静置した後のスラッジ水12として、スラッジ固形分調整槽21に供給し、沈殿物13を、沈殿物貯留槽51に供給する。ここで、回収水貯留槽11に貯留されている回収水に対して、マイクロバブル発生装置17で、さらにマイクロバブルを発生させてもよい。すなわち、前記回収水貯留槽11には、前記マイクロバブル発生装置17を備えていてもよいし、前記マイクロバブル発生装置17を備えていなくてもよい。また、前記回収水貯留槽11に前記マイクロバブル発生装置17を備えていても、前記マイクロバブル発生装置17を作動させていてもよいし、前記マイクロバブル発生装置17を作動させていていなくてもよい。前記回収水貯留槽11に備えた前記マイクロバブル発生装置17を作動させることで、回収水に含まれるカルシウムと鉄との質量を調整し、最終的に得られたコンクリート製造用水における、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率が4~20となることに寄与する。
【0063】
前記回収水貯留槽11は、回収水を貯留することができる水槽であれば、特に限定されず、槽に貯留した回収水中の固形分を沈殿させるための機能を有する。また、前記回収水供給装置15は、回収水を前記回収水貯留槽11に供給することができれば、特に限定されない。また、前記攪拌装置14は、前記回収水貯留槽11に貯留された回収水を攪拌することができるものであれば、特に限定されない。前記マイクロバブル発生装置17は、前記回収水貯留槽11に貯留した回収水に発生させることができる装置であれば、特に限定されない。前記マイクロバブル発生装置17としては、例えば、エジェクタ方式、キャビテーション方式、旋回流方式、及び加圧溶解法等の発生装置等が挙げられ、旋回型マイクロバブル発生装置が望ましい。具体的には、有限会社バイ・クリーン製のYJノズルを用いたマイクロバブル発生装置が好ましい。
【0064】
また、前記上澄み水貯留槽41では、マイクロバブル発生装置42で、さらにマイクロバブルを発生させてもよい。すなわち、前記上澄み水貯留槽41には、前記マイクロバブル発生装置42を備えていてもよいし、前記マイクロバブル発生装置42を備えていなくてもよい。また、前記上澄み水貯留槽41に前記マイクロバブル発生装置42を備えていても、前記マイクロバブル発生装置42を作動させていてもよいし、前記マイクロバブル発生装置42を作動させていていなくてもよい。このマイクロバブル発生装置42は、特に限定されず、例えば、前記マイクロバブル発生装置17と同様のものが挙げられる。
【0065】
次に、図1に示すように、前記スラッジ固形分調整槽21に供給されたスラッジ水22を、攪拌装置24で攪拌し、静置するといった、攪拌と静置とを、所定時間毎に断続的に行う。そうすることで、スラッジ水22に含まれる固形分量を調整することができ、最終的に得られたコンクリート製造用水における、固形分量が0.5~10質量%となることに寄与する。また、この攪拌及び静置は、最終的に得られたコンクリート製造用水における、固形分量が0.5~10質量%となるように行うことが好ましい。また、この攪拌及び静置は、最終的に得られたコンクリート製造用水のpHが10~14となるように調整しやすいpHになるように行うことが好ましい。この調整は、例えば、前記攪拌及び前記静置のそれぞれの時間を調整することや、前記攪拌における攪拌速度等によって調整できる。そして、固形分量が調整されたスラッジ水22をpH調整槽31に供給し、沈殿物23を、沈殿物貯留槽51に供給する。
【0066】
前記攪拌装置24は、前記スラッジ固形分調整槽21に貯留されたスラッジ水(固形分量が調整されたスラッジ水)22を攪拌することができるものであれば、特に限定されない。
【0067】
前記スラッジ固形分調整槽21で固形分量が調整され、前記pH調整槽31に供給されたスラッジ水22に、上澄み水供給装置35で、前記上澄み水貯留槽41から上澄み水16を供給する。前記上澄み水供給装置35で、前記上澄み水16の供給量を調整することによって、最終的に得られたコンクリート製造用水における、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率が4~20となるように調整する。そうすることによって、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率が4~20であるコンクリート製造用水32が得られる。また、この前記上澄み水16の供給量の調整は、最終的に得られたコンクリート製造用水における、固形分量が0.5~10質量%となるように行うことが好ましく、最終的に得られたコンクリート製造用水のpHが10~14となるように行うことが好ましい。前記pH調整槽31に貯留されたコンクリート製造用水を使用する際には、製造用水吸引装置36を用いて、前記pH調整槽31から前記コンクリート製造用水32を取り出す。
【0068】
前記pH調整槽31は、前記コンクリート製造用水を貯留できれば、特に限定されない。また、前記pH調整槽31では、貯留された前記コンクリート製造用水を攪拌装置34で攪拌してもよい。また、前記攪拌装置34は、前記pH調整槽31に貯留されたコンクリート製造用水を攪拌することができるものであれば、特に限定されない。
【0069】
前記コンクリート製造用水は、前記pH調整槽31に貯留して保管してもよいが、前記コンクリート製造用水を収容した容器を密閉することによって保管することもできる。このように、密閉容器で保管することにより、マイクロバブルを追加的に発生させなくても、前記コンクリート製造用水の性能を好適に維持することができる。すなわち、前記コンクリート製造法水の製造方法において、前記混合工程後に、得られた液体を静置する静置工程をさらに備え、静置工程が、前記得られた液体を収容する容器を密閉して静置する工程であることが好ましい。そうすることによって、優れた生コンクリートを得ることができるコンクリート製造用水の性能を好適に維持することができる。
【0070】
最後に、図1に示すように、沈殿物貯留槽51に供給された沈殿物52を、攪拌装置54で攪拌しながら保管する。この沈殿物は、公知の方法で処分してもよいし、再利用してもよい。
【0071】
本実施形態に係るコンクリート製造水は、上記の構成にすることによって、優れた生コンクリートを製造することができるコンクリート製造水である。また、その製造方法も、上記の構成にすることによって、前記コンクリート製造水を製造することができる。
【0072】
本発明の他の実施形態に係る生コンクリートは、前記コンクリート製造用水を用いて得られる生コンクリートである。具体的には、前記生コンクリートは、前記コンクリート製造用水と、セメントと、骨材とを含む。このように、前記コンクリート製造用水を用いて生コンクリートを製造することによって、優れた生コンクリートが得られる。
【0073】
前記セメントは、生コンクリートを製造する際に用いられるセメントであれば、特に限定されない。具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、及び白色ポルトランドセメント等の、ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメント、シリカセメント、及びシリカヒュームセメント等が挙げられる。前記セメントとしては、これらの中でも、ポルトランドセメントが好ましく、普通ポルトランドセメントがより好ましい。また、普通ポルトランドセメントとしては、JIS R 5210に記載のもの等が挙げられる。このようなセメントを用いれば、セメントの水和反応やポラゾン反応をより好適に進行させることができると考えられる。よって、このようなセメントを用いることで、強度がより高く、かつ安定性のより高いコンクリート構造体を得ることができる生コンクリートが得られる。
【0074】
前記骨材は、生コンクリートを製造する際に、一般的に用いられる骨材であれば、特に限定されない。また、前記骨材としては、細骨材及び粗骨材等が挙げられる。また、細骨材としては、生コンクリートに含有させる細骨材であれば、特に限定されない。この細骨材としては、例えば、珪砂等の天然の砂、及び砕石粉等が挙げられる。前記細骨材としては、JIS A5005に規定の砂等が挙げられる。また、粗骨材としては、生コンクリートに含有させる細骨材であれば、特に限定されない。粗骨材としては、例えば、砕石等が挙げられる。前記粗骨材としては、JIS A5005に規定の、粗骨材1505や粗骨材2010等が挙げられ、これらの混合物等が挙げられる。また、前記洗浄に供される骨材としては、例えば、山地、丘陵,台地等の陸地部の洪積堆積土で,建設用材料として採取される砂質に富んだ土である山砂等であってもよい。
【0075】
前記生コンクリートには、前記コンクリート製造用水、前記セメント、及び前記骨材以外にも、生コンクリートに一般的に添加されるもの等を含んでいてもよい。
【0076】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0077】
(実施例1:コンクリート製造用水1の製造)
まず、前記回収水として、生コンクリート製造設備(レディーミクストコンクリート工場)を洗浄する際に、旋回型マイクロバブル発生装置(有限会社バイ・クリーン製のYJノズルを用いたマイクロバブル発生装置)を用いて発生させたマイクロバブル水を用いて得られた洗浄水を用意した。この洗浄水を、図1に示すコンクリート製造用水を製造する方法で、コンクリート製造用水を製造した。具体的には、前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率が4~20であり、固形分量が0.5~10質量%であり、pHが10~14であるコンクリート製造用水が得られるように、前記マイクロバブル発生装置によるマイクロバブルの発生量、前記上澄み水の供給量、及び前記攪拌条件等を調整した。その際、前記攪拌を2時間行い、その後、30分間静置するという動作を、所定時間毎に断続的に行った。より具体的には、得られたコンクリート製造用水の鉄/カルシウム比率が、4~20となるまでの時間、すなわち、前記攪拌の時間、前記静置の時間、及び前記スラッジ水と前記上澄み水との混合時間を合わせて、24時間程度だった。
【0078】
そして、得られたコンクリート製造用水の前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率(鉄/カルシウム比率)は、12.4であり、固形分量は、3.0質量%であり、pHは、12.3であった。また、酸化還元電位(OPR値)は、-64mVであった。
【0079】
なお、鉄/カルシウム比率は、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製のZSX PrimusIV)を用いて測定した。
【0080】
また、固形分量は、以下の方法により測定した。まず、コンクリート製造用水の質量を、電子天秤で測定した。次に、この質量を測定したコンクリート製造用水から水を留去させ、得られた固体を110℃で乾燥させた後の質量を電子天秤で測定した。このコンクリート製造用水の質量に対する、得られた固体の乾燥後の質量の比を、固形分量(質量%)として算出した。
【0081】
また、pHは、pHメータ(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。また、OPR値は、水質測定器(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0082】
(実施例2:コンクリート製造用水2の製造)
前記攪拌を連続的に行うこと以外、コンクリート製造用水1の製造方法と同様である。
【0083】
得られたコンクリート製造用水の鉄/カルシウム比率が、4~20となるまでの時間、すなわち、前記攪拌の時間、及び前記上澄み水と前記スラッジ水との混合時間を合わせて、72時間程度だった。
【0084】
そして、得られたコンクリート製造用水2の前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率(鉄/カルシウム比率)は、5.0であり、固形分量は、7.0質量%であり、pHは、11.5であった。また、酸化還元電位(OPR値)は、-50mVであった。
【0085】
(比較例1:コンクリート製造用水3の製造)
生コンクリート製造設備(レディーミクストコンクリート工場)を洗浄する際にマイクロバブル水を用いず、通常の水を用いて得られた洗浄水を用いた。この洗浄水から得たスラッジ水をマイクロバブル処理することによって、コンクリート製造用水3を得た。
【0086】
得られたコンクリート製造用水3の前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率(鉄/カルシウム比率)は、3.5であり、固形分量は、15.0質量%であり、pHは、10.5であった。また、酸化還元電位(OPR値)は、-10mVであった。
【0087】
(比較例2:水道水)
水道水を用いた。
【0088】
水道水の前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率(鉄/カルシウム比率)は、0.003であり、固形分量は、0.29質量%であり、pHは、7.5であった。また、酸化還元電位(OPR値)は、300mVであった。
【0089】
(比較例3:コンクリート製造用水4の製造)
マイクロバブル水を用いずに得られた前記洗浄水として、マイクロバブル水を用いずに得られた回収水である生コンクリート製造設備の一般的な洗浄水を用意した。この洗浄水から上澄み水を得た。この上澄み水を攪拌しながら、空気でバブリング処理を行った。その際、前記攪拌及び気体の注入を2時間行い、その後、30分間静置するという動作を、所定時間毎に断続的に行った。このようにして得られたコンクリート製造用水4の前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率(鉄/カルシウム比率)は、1.0であり、固形分量は、0.5質量%であり、pHは、10.0であった。また、酸化還元電位(OPR値)は、150mVであった。
【0090】
次に、上記のコンクリート製造用水や水道水を用いて、コンクリートを製造した。
【0091】
まず、以下のような配合組成(質量%)となるように配合して、生コンクリートを製造した。
【0092】
セメントが12.91質量%、粗骨材(砕石)が42.97質量%、細骨材(砕石粉や水砕スラグ)が35.86質量%、コンクリート製造用水が8.13質量%、混和剤(株式会社フローリック製のAE減水剤 フローリック SV-10)が0.13質量%となるように、混合した。そうすることによって、生コンクリートが得られた。
【0093】
次に、生コンクリートを用いて、公知の方法で、呼び強度21N、目標スランプ15cmとなるように試験した。なお、上記の配合の生コンクリートは、上記試験における標準的な配合である。具体的には、以下のような評価を行った。その評価結果を、下記表1に示す。
【0094】
(流動性)
得られた生コンクリートの流動性を目視で確認した。生コンクリートの流動性は、現場での作業性を示す指標の1つであり、現場の作業員10人中9~10人が良好な流動性であると判断すれば、「◎」と評価した。また、現場の作業員10人中6~8人が良好な流動性であると判断すれば、「○」と評価した。また、現場の作業員10人中3~5人が良好な流動性であると判断すれば、「△」と評価した。また、現場の作業員10人中0~2人が良好な流動性であると判断すれば、「×」と評価した。
【0095】
(スランプ)
生コンクリートのスランプ評価は、JIS A 1101に準じて行った。具体的には、上記のように、スランプを形成した直後の、スランプの高さを測定した。また、目標スランプの高さである15cmに対する、測定した高さの差(スランプ差)を評価した。
【0096】
このスランプの高さの評価は、製造直後の生コンクリートと、製造後30分経過後の生コンクリートを用いて行った。
【0097】
(フロー)
生コンクリートのフロー評価は、JIS A 1101に準じて行った。具体的には、上記のように、スランプを形成した直後からの、スランプの広がりを、JIS A 1101における基準に従って、「標準」「大きい」「小さい」と評価した。
【0098】
(空気量)
生コンクリートの空気量は、JIS A 1101に準じた方法で測定した。そして、その空気量を、JIS A 1101における基準に従って、「標準」「多い」「少ない」と評価した。具体的には、生コンクリートの体積に対する、生コンクリートの混入される空気の体積の比率が、4~5体積%であると、「標準」と評価し、5体積%を超えると、「多い」と評価され、4体積%未満であると、「少ない」と評価する。
【0099】
(混合状態)
得られた生コンクリートの混合状態は、生コンクリートの粘り等で評価した。例えば、柔らかいが粘る生コンクリートが良好な生コンクリートである。生コンクリートの混合状態は、現場の作業員10人中9~10人が良好な混合状態であると判断すれば、「◎」と評価した。また、現場の作業員10人中6~8人が良好な混合状態であると判断すれば、「○」と評価した。また、現場の作業員10人中3~5人が良好な混合状態であると判断すれば、「△」と評価した。また、現場の作業員10人中0~2人が良好な混合状態であると判断すれば、「×」と評価した。
【0100】
なお、上述したように、柔らかいが粘る生コンクリートが良好な生コンクリートである。このため、上記流動性よりも、この混合状態が、生コンクリートの評価としては、重要である。
【0101】
(強度)
得られた生コンクリートを凝固させて得られたコンクリートの強度は、JIS A 1108に準じた方法で測定した。そして、その空気量を、JIS A 1108における基準に従って、「標準」「不良」と評価した。
【0102】
(総合評価)
上記各評価から、生コンクリートの評価として、非常に良好であると判断できるものを、「○」と評価し、それよりも劣るが、使用可能と判断できるものを、「△」と評価し、生コンクリートとして、使用が困難と判断されるものを、「×」と評価した。
【0103】
【表1】
【0104】
前記カルシウムの質量に対する前記鉄の質量の比率が4~20であるコンクリート製造用水(実施例1,2)を用いると、前記比率が4未満である場合(比較例1~3)より、優れた生コンクリートが得られることがわかった。
【符号の説明】
【0105】
11 回収水貯留槽
12、22 スラッジ水
13、23、52 沈殿物
14、24、34、54 攪拌装置
15 回収水供給装置
16 上澄み水
17、42 マイクロバブル発生装置
21 スラッジ固形分調整槽
31 pH調整槽
32 コンクリート製造用水
35 上澄み水供給装置
36 製造用水吸引装置
41 上澄み水貯留槽
51 沈殿物貯留槽
図1