(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072220
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/06 20060101AFI20220510BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B62D1/06
B32B27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181549
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】新免 俊一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 修
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 浩太
(72)【発明者】
【氏名】練生川 直哉
(72)【発明者】
【氏名】塚田 悟之
【テーマコード(参考)】
3D030
4F100
【Fターム(参考)】
3D030DA25
3D030DA26
3D030DA35
3D030DA45
3D030DA55
3D030DA69
3D030DB13
3D030DB83
4F100AB00C
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CA19B
4F100DD05E
4F100DG11D
4F100DG12C
4F100DG15B
4F100GB32
4F100JG01C
4F100JK16B
4F100JK16C
(57)【要約】
【課題】表皮層素材の継ぎ部を仕上げる作業の際に加わる外力により、表皮層に隣接する隣接層が損傷を受けることを未然に防止できるステアリングホイールを提供する。
【解決手段】芯金及び該芯金を被覆する被覆部5を有するリム部を備えるステアリングホイールにおいて、前記リム部の表皮材9と被覆部5との間に設けられ、表皮材9側に導電部7を有するマット材6を備え、表皮材9は前記リム部の周方向と交差する方向に形成された継ぎ部91を有し、被覆部5には、継ぎ部91と、マット材6の一部とを受容する溝51が形成されており、表皮材9と導電部7との間には、少なくとも継ぎ部91近傍に滑り材8が介在している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金(20)及び該芯金(20)を被覆する被覆部(5)を有するリム部(10)を備えるステアリングホイール(100)において、
前記リム部(10)の表皮材(9)と前記被覆部(5)との間に設けられ、前記表皮材(9)側に導電部(7)を有するマット材(6)を備え、
前記表皮材(9)は前記リム部(10)の周方向と交差する方向に形成された継ぎ部(91)を有し、
前記被覆部(5)には、前記継ぎ部(91)と、前記マット材(6)の一部とを受容する溝(51)が形成されており、
前記表皮材(9)と前記導電部(7)との間には、少なくとも前記継ぎ部(91)近傍に滑り材(8)が介在していることを特徴とするステアリングホイール(100)。
【請求項2】
前記滑り材(8)と前記表皮材(9)との間の静摩擦係数は、前記表皮材(9)と前記導電部(7)との間の静摩擦係数よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール(100)。
【請求項3】
前記導電部(7)は前記溝(51)の内側面全体に亘って設けていることを特徴とする請求項1又は2に記載のステアリングホイール(100)。
【請求項4】
前記導電部(7)は金属性表面を有する織物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のステアリングホイール(100)。
【請求項5】
前記リム部(10)は円形断面を有し、
前記溝(51)は、前記リム部(10)の径方向に対して斜めに形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のステアリングホイール(100)。
【請求項6】
前記滑り材(8)は不織布であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のステアリングホイール(100)。
【請求項7】
自動運転機能を有する車両に用いられる請求項1から6のいずれか一項に記載のステアリングホイール(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表皮層と芯金との間に導電層を設け、運転者がリム部を把持しているか放しているかを検知できるようにしたステアリングホイールが広く普及している。
【0003】
例えば、特許文献1には、リム部の表皮層と芯金との間に弾性体製の導電層を設け、柔軟性を確保しつつ、運転者の手と前記弾性体層との間の静電容量の変化に基づいて、運転者がリム部を把持しているか放しているかを検知するステアリングホイールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両に自動運転機能が組み込まれるようになるにつれて、ステアリングホイールに対する概念が、運転者が常に操作するものから必要に応じて操作するものに変わりつつある。それに合わせるように、ステアリングホイール自体の形状も従来の略円形のものから非円形の形状を有するものなどに変化している。また、これに伴い、色々な形状のステアリングホイールの意匠性を向上させるために用いられる表皮層においても、色々な形状のパーツを合わせる必要が生じている。
【0006】
また、リム部の表皮層として天然皮革、人工皮革等のシート状の素材(以下、表皮層素材と称する。)が用いられる場合がある。このような場合は、複数パーツの表皮層素材を縫い合わせることによって表皮層が形成される。表皮層素材パーツ間の継ぎ部はリム部の色々な場所に配置される。また、見栄えを良くするために、芯金を覆う被覆材に凹部を形成し、該凹部内に、パーツ間の継ぎ部を押し込む仕上げが行われている。
【0007】
一方、作業者が継ぎ部を前記凹部に押し込む際、作業者から継ぎ部に与えられる力は該継ぎ部を介して表皮層に隣接する隣接層にも伝わる。このように、継ぎ部を介して隣接層に加わった力は、隣接層に歪みを生じさせる等隣接層を損傷させるおそれがある。
しかし、特許文献1では、リム部の表皮層としてコーティング層を用いる場合のみを考慮しており、上述の表皮層素材を用いる場合については考慮しておらず、斯かる問題を解決できない。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、様々な形状のステアリングホイールの意匠性を向上させるために設けられる表皮層を形成するために、様々な場所に形成される表皮層素材の継ぎ部(継ぎ目部分)において、当該継ぎ部を仕上げる作業の際に加わる外力により、表皮層に隣接する隣接層が損傷を受けることを未然に防止できるステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るステアリングホイールは、芯金及び該芯金を被覆する被覆部を有するリム部を備えるステアリングホイールにおいて、前記リム部の表皮材と前記被覆部との間に設けられ、前記表皮材側に導電部を有するマット材を備え、前記表皮材は前記リム部の周方向と交差する方向に形成された継ぎ部を有し、前記被覆部には、前記継ぎ部と、前記マット材の一部とを受容する溝が形成されており、前記表皮材と前記導電部との間には、少なくとも前記継ぎ部近傍に滑り材が介在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表皮層素材の継ぎ部を仕上げる作業の際に加わる外力により、表皮層に隣接する隣接層が損傷を受けることを未然に防止できる。また、自動運転車の普及が進み、様々なハンズオン/ハンズオフ(保舵/非保舵)シーンを想定したステアリングホイール形状が登場し、隣接層にとってより不利な構造環境が創出されるようになっても耐性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係るステアリングホイールの正面図である。
【
図3】
図1のIII-III線による断面図である。
【
図5】ステアリングホイールの製造過程の説明図である。
【
図6】継ぎ部を溝内に押し込む作業によって導電布が受けるダメージを説明する断面図である。
【
図7】本発明の他の実施例を例示する模式図である。
【
図8】本発明の他の実施例を例示する模式図である。
【
図9】本発明の他の実施例を例示する模式図である。
【
図10】本発明の他の実施例を例示する模式図である。
【
図11】本発明の他の実施例を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態に係るステアリングホイールについて、図面に基づいて詳述する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係るステアリングホイール100の正面図である。
本実施の形態に係る車両用のステアリングホイール100は、円環形状のリム部10と、リム部10の中央側に配置されたハブ部11とを備えている。ハブ部11は、3つのスポーク部3によって、リム部10と連結されている。また、ハブ部11にはエアバッグ(図示せず)が内装されている。
【0014】
リム部10は、表面が表皮材9によって被覆されており、表皮材9は、例えば、天然皮革、人工皮革等からなる。表皮材9は、表皮材9a及び表皮材9bの2つの部分を含む。
図1に示すように、表皮材9a及び表皮材9bは縫い合わされ、継ぎ部91が形成されている。継ぎ部91は、リム部10の周方向と交差する方向に形成されており、リム部10の周方向に隔てて2箇所に形成されている。
【0015】
図2は、
図1のII-II線による断面図であり、
図3は、
図1のIII-III線による断面図である。
図3は表皮材9の継ぎ部91の付近でのリム部10の断面を示しており、
図2は継ぎ部91以外の部分でのリム部10の断面を示している。
図2及び
図3には、リム部10の軸心と直交する方向に沿う断面が示されている。
【0016】
本実施の形態のステアリングホイール100は、
図2~
図3に示すように、リム部10の周方向の位置によってリム部10の内部構成が相違する。先ずは、
図2に基づいて、継ぎ部91以外の部分でのリム部10の内部構成を説明する。
【0017】
リム部10は断面視円形であり、リム部10の中心部にはリム芯金20が内在している。リム芯金20は、断面視U字形状であり、例えば、マグネシウム、アルミニウム等の金属又は合金からなる。リム芯金20は被覆部5によって被覆されている。
【0018】
被覆部5は、絶縁性を有しており、例えば、ウレタン、エラストマー等からなる。被覆部5は、リム芯金20を覆い、断面視略円形状をなす。
【0019】
被覆部5の外側は、マット材6によって被覆されている。即ち、マット材6は一主面が被覆部5と接している。マット材6は柔軟性のある弾性材料製である。マット材6は、例えば、ポリウレタン、エラストマー等からなる。図示しないが、マット材6には、GND線が内設されている。
【0020】
また、マット材6の他主面側には、導電布7が布設されている。導電布7は、繊維を縦横に織って製造された織物であり、例えば、PET(ポリエチレンテレフタラート)繊維が用いられる。導電布7の表面には、銀、銅、ニッケル等の導電性材料を用いたメッキ処理が施されており、これによって、導電布7は導電性を有している。
【0021】
更に、マット材6及び導電布7は、上述の如く、表皮材9によって被覆されている。即ち、表皮材9は、導電布7と隣接しており、断面視でリム部10の最外層である。表皮材9は、運転者によって把持され、運転者の手が直接触れる部分である。
【0022】
このように、リム部10は、継ぎ部91以外の部分にて、導電布7と表皮材9との間に介在するものがなく、接し合っている。しかし、継ぎ部91の付近においては相違する。以下、
図3及び
図4を用いて詳しく説明する。
【0023】
図4は、
図1のIV-IV線による断面図である。
図4には、継ぎ部91の付近での断面が示されている。
継ぎ部91の付近においても、継ぎ部91以外の部分と同様、リム部10の中心側にはリム芯金20が内在しており、リム芯金20は絶縁性の被覆部5によって被覆されている。一方、継ぎ部91の付近においては、被覆部5の外側面に、リム部10の周方向に、溝51が周設されている。溝51は、断面視で略U字形状をなしており、リム部10の径方向に対して斜めに形成されている。
【0024】
また、被覆部5の外側面がマット材6によって被覆されており、継ぎ部91以外の部分と同様、マット材6の他主面側に導電布7が敷設され、導電布7は表皮材9によって被覆されている。
【0025】
更に、継ぎ部91の付近においては、導電布7と表皮材9との間に滑り材8が介在している。滑り材8は、リム部10の周方向において、被覆部5の溝51を含む、溝51の近傍に亘って配置されている。また、滑り材8は、断面視でリム部10の周方向に周設されている。滑り材8は、表皮材9との間の静摩擦係数が、表皮材9と導電布7との間の静摩擦係数よりも小さい素材からなる。例えば、滑り材8は、不織布等からなる。
【0026】
なお、継ぎ部91の付近においては、表皮材9a及び表皮材9bの継ぎ部91が、マット材6、導電布7及び滑り材8の一部と共に、溝51内に受容されている。この際、マット材6及び導電布7は溝51の内側面全体に亘って延在している。
図4において、符号「30」は、表皮材9a及び表皮材9bの縫い目である。
【0027】
以上のような構成を有するステアリングホイール100は、運転者がステアリングホイール100を把持しているか、ステアリングホイール100から手を放しているかを検知できる。
【0028】
詳しくは、リム部10を握る運転者の把持力によって、リム部10の径方向における、導電布7とマット材6の前記GND線と間隔が変化するので、これに応じて静電容量が変化する。斯かる静電容量の変化を検出することによって、運転者がステアリングホイール100を把持しているか否かの検知を行う。
【0029】
図5は、ステアリングホイール100の製造過程の説明図である。
図5では、表皮材9に係るシート(以下、表皮材シートと称する。)を縫製して仕上げする過程を示している。
【0030】
表皮材シートの縫製の際、見栄えを良くするために、リム部10の内周側に縫い目が配置するように縫製が行われる。斯かるリム部10の縫製作業は、専用のツール50を用い、つきあわせた表皮材シートの両縁を通した糸40をリム部10の内周側(
図5の矢印参照)に引っ張りながら、縫製が行われる。即ち、前記縫製作業の間、表皮材シートの両縁には、リム部10の中央側に引っ張られる力(以下、縫製力と称する。)が加わる。
【0031】
よって、表皮材シートにおいて断面視でリム部10の内周側の部分では、前記縫製力が張力として作用し、表皮材シートが延びる。
図5では、張力を黒塗り矢印にて示しており、矢印の長さは張力の大きさを示している。また、表皮材シートにおいて断面視でリム部10の外周側の部分では、前記縫製力が導電布7に対する押圧力として作用する。
図5では、導電布7に加わる押圧力を白抜き矢印にて示しており、矢印の長さは押圧力の大きさを示している。
【0032】
更に、縫製作業の完了後においては、縫製作業中に伸びた表皮材シートにて復元力が働くので、表皮材シートが縮む。よって、表皮材シートの伸び縮みによって隣接する導電布7内に応力が発生するおそれがある。即ち、導電布7と表皮材9との間の摩擦により、表皮材9の伸び縮みに応じて、導電布7でも伸び縮みが生じ得る。
【0033】
一方、上述の如く、導電布7は織物であり、メッキ処理によって導電性がもたらされている。しかし、表皮材9の伸び縮みに伴って導電布7が伸びたり縮んだりする場合、導電布7を構成する縦糸又は横糸が、縦糸及び横糸が交わる正規の交点位置からずれる交点ズレが発生し得る。交点ズレは縫製力が大きくなるにつれて大きくなり、交点ズレが発生した場合、斯かる交点では導電できなくなる。
【0034】
表皮材9の押圧力を受けた導電布7では、上述した交点ズレに加え、縦糸又は横糸が損傷するおそれもある。
更に、表皮材9の押圧力は導電布7を介してマット材6にも伝わる。表皮材9の押圧力を受けたマット材6では、前記GND線が相対的に導電布7側に突出する結果となり、縦糸又は横糸の損傷を大きくするおそれもある。
【0035】
一方、リム部10の仕上げの際、見栄えを良くするために、表皮材9の継ぎ部91を溝51内に押し込む作業が行われる。斯かる作業により、上述の如く、継ぎ部91が、マット材6、導電布7及び滑り材8の一部と共に、溝51内に受容される。
【0036】
しかし、斯かる作業の際、継ぎ部91を溝51内に押し込む力が表皮材9を介して導電布7にも伝わるので、導電布7に歪みが生じ、かつ押圧力受ける。
図6は、継ぎ部91を溝51内に押し込む作業によって導電布7が受けるダメージを説明する断面図である。
【0037】
継ぎ部91を溝51内に押し込む作業(以下、押し込み作業と称する。)の際、表皮材9の外側から溝51内に向けて大きな力が加わる(
図6の黒塗り矢印参照)。これによって、継ぎ部91が溝51に押し込まれつつ、縫い目30の付近にて表皮材9が伸びる。また、斯かる押し込み作業後は、伸びた表皮材9に復元力が働き、表皮材9は縮む。よって、縫い目30の付近にて、表皮材9の伸び縮みが生じる(
図6の実線の矢印参照)。
【0038】
従って、表皮材9の伸び縮みの際、縫い目30の付近に対応する導電布7の領域R1では、導電布7と表皮材9との間の摩擦により、導電布7にも伸び縮みが生じ得る。また、これに起因して、導電布7では、上述した交点ズレが発生するおそれがある。更に、導電布7は、領域R1にて、溝51内に向けて湾曲しているので、導電布7の損傷が生じるおそれもある。
【0039】
一方で、継ぎ部91の押し込み作業の際、外部からの押圧力が、継ぎ部91を介して、溝51底の導電布7にも伝わる。即ち、導電布7において、外部からの押圧力の方向と対向する領域R2では、外部からの押圧力を受け(
図6の領域R2の矢印参照)、縦糸又は横糸が損傷するおそれもある。
【0040】
更に、外部からの押圧力は導電布7を介してマット材6にも伝わる。前記押圧力を受けたマット材6では、前記GND線が相対的に導電布7側に突出する結果となり、導電布7の縦糸又は横糸の損傷を更に大きくするおそれもある。
【0041】
即ち、表皮材9の継ぎ部91の付近では、表皮材シートの縫製作業時に生じ得る交点ズレに加え、継ぎ部91の押し込み作業時に生じ得る交点ズレ、歪み及び損傷の蓋然性が高い。
【0042】
これに対して、本実施の形態のステアリングホイール100は、上述の如く、継ぎ部91の付近においては、導電布7と表皮材9との間に滑り材8が介在しており、滑り材8と表皮材9との間の静摩擦係数が、表皮材9と導電布7との間の静摩擦係数よりも小さくなるように構成されている。
【0043】
従って、継ぎ部91の付近においては、導電布7が滑り材8を介して表皮材9と接し、表皮材9と滑り材8との間の摩擦が低減されることから、表皮材9で発生する伸び縮み(応力)が導電布7に伝わり難くなる。よって、交点ズレの発生を未然に防止することができる。
【0044】
また、継ぎ部91の付近においては、表皮材9と導電布7との間に滑り材8が介在するので、継ぎ部91の押し込み作業時に外部から加わる押圧力が滑り材8によって一部吸収され、緩和される。よって、斯かる押圧力による導電布7の損傷を極力抑えることができる。
【0045】
かつ、上述の如く、本実施の形態のステアリングホイール100においては、表皮材9の継ぎ部91が、マット材6、導電布7及び滑り材8の一部と共に、溝51内に受容されている。よって、表皮材9の継ぎ部91が外側から視認できず、見栄えが良くなる。
【0046】
更に、本実施の形態のステアリングホイール100においては、溝51がリム部10の径方向に対して斜めに形成されている。これによって、溝51がリム部10の径方向に沿って形成されている場合に比べ、溝51内に受容されている継ぎ部91の抜けを抑制できる。
【0047】
そして、以上においては、リム部10のうち、継ぎ部91の付近にのみ、滑り材8が設けられた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。リム部10の全範囲に亘って滑り材8が設けられた構成であっても良い。
【0048】
また、本発明は、表皮材9の分割方向(継ぎ部91や溝51の方向)によることなく、いずれの方向に表皮材9が分割されていてもよい。表皮材9の縫製時に分割方向に対して斜めに引っ張る事になる場合、局所的な引っ張りが発生する。滑り材8は、その引っ張りによる伸びを発生させたくない部位に加わる引っ張り力が導電布7に影響することを防止できる。
【0049】
なお、以上においては、滑り材8と表皮材9との間の静摩擦係数が、表皮材9と導電布7との間の静摩擦係数よりも小さい場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。
滑り材8と表皮材9との間の静摩擦係数が表皮材9と導電布7との間の静摩擦係数よりも小さく、且つ、滑り材8と導電布7との間の静摩擦係数が表皮材9と導電布7との間の静摩擦係数よりも小さくなるようにしても良い。この場合は、表皮材9と滑り材8との間の摩擦が低減されることに加え、滑り材8と導電布7との間の摩擦も低減されるので、一層、導電布7が、表皮材9で発生する伸び縮みの影響を受け難くなる。
【0050】
また、ステアリングホイール100は、車種を問わず、適用可能であり、例えば、自動運転機能を有する車両にも適用可能である。
【0051】
そして、以上においては、リム部10が円環形状であるステアリングホイール100を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、リム部10が非円形である非円形ステアリングホイールにも適用可能であることは言うまでもない。
【0052】
図7~
図11は本発明の他の実施例を例示する模式図である。
図7~
図11に係るステアリングホイール100は何れも非円形のリム部10を備えている。便宜上、
図7~
図11においては、継ぎ部91を実線にて示している。
【0053】
これらの図が示すように、自動運転機能の普及が進み、ステアリングホイールの形状が複雑になり、継ぎ部の位置が多岐にわたる中で、表皮層の隣接層が損傷を受け易い構造への途を辿っているのは事実であり、本発明がこの点を防止できることを示唆している。
【符号の説明】
【0054】
5 被覆部
6 マット材
8 滑り材
7 導電布(導電部)
9 表皮材
10 リム部
20 リム芯金
30 縫い目
51 溝
91 継ぎ部
100 ステアリングホイール