(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007226
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】工具用ホルダー構造
(51)【国際特許分類】
B25H 3/00 20060101AFI20220105BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B25H3/00 Z
B25F5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110048
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】520232596
【氏名又は名称】世川有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【弁理士】
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】郭 景隆
【テーマコード(参考)】
3C012
3C064
【Fターム(参考)】
3C012BG01
3C064BA13
3C064BA18
3C064BA19
3C064BA33
3C064BB78
3C064BB86
3C064CB86
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で、ベルトに取りつける事により、作業の邪魔にならず、片手で操作可能で、汎冊陛があり安全性の高い工具ホルダーを提供する。
【解決手段】このホルダー構造1は、作業者のベルトに固定するホルダー本体10と、工具等に取りつけた掛止具11からなる。ホルダー本体10には、工具脱落を防止する板スプリング3を有する。また、装着時に、板スプリング3に掛金具11が、装着を容易にする為の、第1から第3のガイド5a.5b並びに6を有する。掛金具11の、ホルダー側には、中心位置に楕円もしくは長方形の穴を有し、この穴が、ホルダー10装着の、板スプリング3に装着される事により、工具の脱落を防ぐ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を取り付ける工具取り付け用の掛止具と、作業者のベルトに固定するホルダー本体を有する工具用ホルダー構造において、
掛金具のホルダー側に、縦長の開口部を囲む枠体を設け、
ホルダー本体には、前記掛金具が着脱可能なように、掛金具の開口部より、横幅が狭く、先端がホルダー本体に固定されたケース部の表面部に向かって付勢された板状スプリングが設けられていると共に、該ケース部は少なくとも上面および一方の側面が開放されており、
掛金具の前記枠体が、板スプリングの先端が挿入されるように、ケース部の上部にガイドが形成されていることを特徴とする工具用ホルダー構造。
【請求項2】
ケース部に装着された掛金具が、ケース部から安易に脱落せず、また、掛金具の開口部に板スプリングの先端が挿入されて掛金具が収納位置に誘導されるように、ケース部の口縁部には、ケース部の下方に向かって、巾狭になるテーパー状のガイド部を有してなることを特徴とする請求項1に記載の工具用ホルダー構造。
【請求項3】
ホルダー本体が、上面、下面を開放し、左右どちらか片側を中空部に連なるケース部を有してなり、該ケースの左右両側に使用者のベルトに着脱可能に連結する連結部を備えてなることを特徴とする請求項1または2に記載の工具用ホルダー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設現場等において使用される携帯用の各種工具を掛止具を用いて、作業員のベルト等に装着したホルダーに片手で着脱自在に、また、工具の落下を、防いで保持するための工具用ホルダー構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
工具用ホルダーとして、従来、例えば特開2003-311659号の携帯式電動工具ホルダーや、実用新案登録第3189172号の携帯工具用ホルダーなどが提案されている。
前者では、工具軸部から交差方向に延出する把持部の延出端部に電池室部が設けられた電動工具を携帯するための工具ホルダーであって、携帯者のベルトに装着可能なベルト装着部材と、このベルト装着部材に固定されて側方に張出す張出し部材と、この張出し部材に固定される平面視略U字型の保持部材を備え、この保持部材は、U字の直線部分の中間部より先端側か、折曲げ部を介して上方に折り曲げられることにより、折曲げ部までのU字型部分が水平部に、折曲げ部から先端の両脚部分が立上り部にされ、前記水平部の前後方向の長さは、前記工具の把持部の前後幅と同一か、またはやや長めにされるとともに、U字の間隔は、工具の把持部の横幅より広く且つ電池室部の横幅より狭くする構成となっているが、保持する工具が特定形状の電動工具に限られるために汎用性に欠け、電動工具の外形寸法が異なると使用できなくなるという問題点がある。
後者においては、ホルダー本体が、抜止め部を収納し上下左右に移動可能な中空部を有し上部が開口したケース部と、ケース部の表面で前記抜止め部より小さく軸部を突出可能な幅で開口するガイド溝からなっており、ガイド溝が、上方に形成されてケース本体の上部開口から挿入された抜止め部の軸部を溝本体に導く溝開口部と、ケース部の表面上を下向きに斜めに延びる溝本体部と、溝本体部の先端の掛止位置から上向きに中途位置まで延びる上向き溝部とを有していることを特徴とするが、抜止め部が、上方に移動した際に、抜け止防止が無く、抜け落ちる事が想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-311659
【特許文献2】実用新案登録第3189172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、工具に固定される掛止具と、該掛止具を挿入するガイド溝と、脱落防止の板スプリングを備えたホルダー本体とからなって、ガイド溝と板スプリングと掛止具の楕円穴との係合により掛止具に固定された工具を保持することができる簡単な構成で且つ安全性の高い工具用ホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
工具を取り付ける工具取り付け用の掛止具と、作業者のベルトに固定するホルダー本体を有する工具用ホルダー構造において、
掛金具のホルダー側に、縦長の開口部を囲む枠体を設け、
ホルダー本体には、前記掛金具が着脱可能なように、掛金具の開口部より、横幅が狭く、先端がホルダー本体に固定されたケース部の表面部に向かって付勢された板状スプリングが設けられていると共に、
該ケース部は少なくとも上面および一方の側面が開放されており、
掛金具の前記枠体が、板スプリングの先端に挿入されるように、ケース部の上部にガイドが形成されていることを特徴とする。
請求項2の発明では、
ケース部に装着された掛金具が、ケース部から安易に脱落せず、また、掛金具の開口部に板スプリングの先端が挿入されて掛金具が収納位置に誘導されるように、ケース部の口縁部には、ケース部の下方に向かって、巾狭になるテーパー状のガイド部を有してなることを特徴とする。
請求項3の発明では、
ホルダー本体が、上面、下面を開放し、左右どちらか片側を中空部に連なるケース部を有してなり、該ケースの左右両側に使用者のベルトに着脱可能に連結する連結部を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
工具に固定される掛止具と、該掛止具を挿入するガイド溝を備え、掛金具が固定される板スプリングを備えたホルダー本体とからなって、ガイド溝が、上方に形成されてケース本体の上部開口から挿入された掛金具を導く溝開口部により、ケース部に装着された板スプリングの先端に、掛金具の中心にある楕円形の穴に装着しやすく、また、この楕円形の形状により、工具が、縦方向に移動しても、楕円縦方向の距離の遊びを有し、一旦縦方向に移動しても自重によりガイド溝の中心下端部へ戻すことができる。
また、保持された工具が、縦方向に揺動する場合も、掛金具の中心楕円穴から、ホルダーに装着された板スプリングが、抜け落ちる事は無く、更に、これを装着した使用者への衝撃も解消する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1の工具用ホルダーのホルダー本体を示す斜視図である。
【
図2】(a)は実施例1のホルダー本体の正面図、(b)は側面図である。
【
図4】工具の一例であるインパクトに掛止具を取り付けた状態の背面図である。
【
図5】工具を保持した状態の使用状態を説明する参考図である。
【
図6】(a)は実施例1の工具用ホルダーの着脱状態を示す斜面図であって、ホルダー本体に掛金具を挿入する状態の説明図、(b)は掛金具の工具用ホルダーへの収納状態を示す説明図、(c)は掛金具を上方へ抜き取る状態を示す説明図、(d)は掛金具を斜めに動かし板スプリングの拘束を解除する状態を示す説明図、(e)はホルダー本体から掛金具を切り離した状態を示す説明図である。
【0008】
以下に、この発明の工具用ホルダーの好適実施例について図面を参照しながら説明する。
【発明を実施するための形態】
【実施例0009】
実施例1の工具用ホルダー構造1は、工具に連結する掛止具11(
図3参照)と、該掛止具11を着脱自在に差し込むガイド溝5.6を有し使用者側に連結されるホルダー本体10(
図1参照)との組み合わせからなっている(
図5参照)。
ここで工具は、例えば、巻き尺などの計測具や電動工具その他の各種の道具で携帯可能な物を言うものとする。
本実施例では、工具20の一例としてインパクトドライバーを例に説明する。
【0010】
[掛止具]
掛止具11は、
図3及び
図4に示すように、工具20に着脱可能に固定されるベース面13と、中心に縦型の楕円穴14aを有したプレートに、12の平面部分より、バネ性を有するように湾曲状に折り曲げられてベース面13に連設された掛金具である。尚、この形状は、中心に楕円形穴を有するプレート側を除き、工具側13に関しては、工具形状により適宜変更される。
【0011】
掛金具11は、固定される工具20の形状に対応して適宜形状に形成されている。
図示例で掛金具11は、両側方及び下方が開放されたクリップ状で、ホルダー固定水平面12の頂部から工具固定面側13とホルダー側固定面14に折れ曲がり、ホルダー側固定面14は、センター部分に、縦型楕円形もしくは長方形などの縦長の開口部14aを設け、工具側には、工具を固定するネジ等を挿通するための長穴15が穿設されている(
図3参照)。
【0012】
本実施例では、工具20とホルダー本体10とが掛止時に揺動しないように、折れ曲がり部分となるホルダー固定水平面12を、R形状に曲げてあるが、装着する工具及び工具差し、腰袋など装着の場合は、ホルダー固定水平面12を、R形状でなく、直角などの角度をつけた形状に曲げる場合もある。
また、本実施例では、掛止具11は楕円穴15を介して工具20に取り付ける場合を例示したが、この発明では、ベース部13を省略して、他の工具、工具差しなどに直接に、上端の折り返し曲りを有する楕円形の穴14aを備えた金具を固定する構造であっても良い。
【0013】
[ホルダー本体]
ホルダー本体10は、使用者側に装着させる連結片部としての長孔7を有する本体基板部2と、本体基板部2の中央上部に基端が固定されて掛金具11を脱落防止する板スプリング3と、前記本体基板部2の前方に平行して離間する表面部9aと、該表面部9aと本体基板部2を連結すると共に一方の側面を塞ぐ側壁面部9bとからなって、後述のホルダー側固定面14を収納するケース部9と、該ケース部9の表面部9aに穿設されて前記板スプリング3の先端を前記掛金具11の楕円穴に確実に装着可能にさせる穴4と、前記表面部9aの上端縁部に切り欠かれて掛金具11のホルダー側固定面14をホルダー装着に誘導する第1ガイド部5aと.第2ガイド部5bおよび第3ガイド部6とを有しており、前記本体基板部2には、ホルダー本体10を使用者側に装着させる連結片部(図示例では左右一対の長孔)7とを有している。
【0014】
ケース部9は、掛金具11を挿入の際、掛金具のホルダ側固定面14にある略楕円形の開口部14aの枠体14bが、スプリング吐出穴4に掛け止められた板スプリング3の先端を弾性力に抗して押し下げながら通過し、枠体14bの通過後に板スプリング3の先端は弾性復帰力で開口部14a内を通過し、スプリング吐出穴4に復帰する。
これにより、前記掛け金具はその単純なる上方向の動作では、ホルダー本体2から脱落しない構造となり、ケース部9の掛金具固定水平面8と板スプリング先端穴4との距離により、掛金具11が、移動しうる空間を有している。
また、ケース部9にある穴4は、スプリングの弾性力の劣化寿命を目視確認する為にも、必要である。
尚、本実施例では、ケース部9の上面、片側面及び下面も開放している。
【0015】
{板スプリング}
図2に示したように、本体基板部2に取り付けられた板スプリング3は、ケース部9の表面部9aの下方に開けられた穴4に、そのスプリング先端一部が、外側から目視できる位置に固定する事により、掛金具11の中央の開口部14aが、板スプリング3から安易に外れない構造となる。
スプリングの材質は、ステンレス、鉄など剛性を有していればよく素材は特に問わない。
【0016】
{ガイド部}
前記ケース部9の上部には、掛金具11の上部の固定水平面12が、
図1の水平面8に、容易に密着し安定して静止・保持されるべく、また、掛金具11の先端が、ケース下部の吐出穴4に誘導され、掛金具の開口部14aが、板スプリング3の先端部に挿入されるべく、誘導する傾斜面からなるガイド形状を設けてある。
【0017】
図1で第1ガイド部5aは、掛金具11を、無造作にケース部9に差し込んだ際、側壁面部9bの上端に下向きの傾斜面に形成されて、掛金具11をケース部9の開口側、図示例では後述の第2ガイド部5bに導くようにガイドする。
また、
図1に示すようにケース部9の開口上部に形成された第2ガイド部5b及び第3ガイド部6は、ケース部9の開口上部を徐々に下方に向かって幅狭となるテーパ面に形成されており、掛金具を無造作に、ケース部に差し込んだ場合、
図3のホルダー固定水平面12が、
図1の掛金具固定水平面8に、工具本体の自重により密着すると同時に、板スプリング3の先端部分が、掛金具11の開口部14aに挿入されるように、誘導する。
【0018】
第1から第3ガイド部5a.5b.6は、所定方向に向かって傾斜してガイドする形状に形成され、これにより、掛金具及び掛金具に装着された、工具20の自重により、掛金具は、ケース内板スプリング先端部を通過し、
図5のように、作業者ベルトに安定固定される。
【0019】
ケース部9内の板スプリング3の先端部が、掛金具11の開口部14a内に留まっていると、横方向の外力に対しては、掛金具に楕円形もしくは、長方形の開口部14aは、上下に隙間があり、また、巾に多少の遊びがある事により、工具の若干の傾斜が可能ではあるが、板スプリング3が、掛金具11の両側方の枠体14bと緩衝して工具の脱落は、起きない。
また、真上向き方向や斜め上向き方向の外力に対しても同様に、掛金具に楕円形もしくは、長方形の開口部14aの長さ分同等の遊びが有り、
図3の枠体14bが、板スプリング部分上端手前に衝合すると、工具の自重により、
図5の保持位置まで戻る。
【0020】
ホルダー本体10の本体基板部2は、本実施例の場合、ケース部9の箱体の左右両側に延びて、使用者に装着するための連結部として、ケース部9の裏面と同一面上に延びる片部を一体に有している。
この片部には、使用者のベルトに通すための長孔7がそれぞれ穿設されており、ホルダー本体10を使用者側に装着することができる。
【0021】
掛金具11のホルダーへの着脱について説明する。
図6(a)に示すように、ホルダー本体10のケース部9の上部開口に掛金具11を矢印方向に挿入する。掛金具11が、ケース部9の中心位置からずれて挿入された際でも、ケース部9の周壁にあるテーパー形状5a,5b,6により掛金具11は、ケース部9の中心位置に誘導され、
図6(b)のように、掛金具11の枠体14b先端が、板スプリング3の先端を通過し、板スプリングは、この掛金具の楕円形もしくは、長方形の開口部14aで囲まれるように入る。工具の重量は、ホルダー側の掛金具固定水平面8に掛金具11のホルダー固定水平面12の平面が整合し密着する事により、装着した工具を安定させる事ができる。
ホルダーのケース部9から、掛金具11を介して工具20を外す際は、まず
図6(c)のように、工具20を第3ガイド部6のガイド上方より上にもち上げ、
図6(d)のように、ケース側面の開放側に矢印のように、倒す。
掛金具11の枠体14bが板スプリング3から外れ、
図6(e)のように、掛金具11は、ホルダーから、外す事が出来る。
【0022】
この一連の動作は、作業者が工具を使用する場合、片手で全ての着脱動作を終了できる。