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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072336
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】医療用測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/1455 20060101AFI20220510BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61B5/1455
A61B5/01 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181704
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】505000480
【氏名又は名称】フィンガルリンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】名郷根 正昭
(72)【発明者】
【氏名】宇野 誠
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KM01
4C038KX04
4C038KY01
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC11
4C117XD09
4C117XE23
4C117XE37
(57)【要約】
【課題】外耳道内の動脈血酸素飽和度を的確に精度よく測定できる医療用測定装置を提供する。
【解決手段】本発明の医療用測定装置1は、外耳道内の動脈血酸素飽和度を反射光方式で測定するための医療用測定装置であって、発光ダイオード32,33と、発光ダイオード32,33から出射され前記動脈において反射された反射光を受光する受光フォトダイオード31と、受光フォトダイオード31を覆う遮蔽箱13と、を備える。遮蔽箱13には、前記反射光を通過させる開口部が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳道内の動脈血酸素飽和度を反射光方式で測定するための医療用測定装置であって、
発光素子と、
前記発光素子から出射され前記動脈において反射された反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子を覆う光遮蔽部材と、
を備え、
前記光遮蔽部材には、前記反射光を通過させる開口部が設けられていることを特徴とする医療用測定装置。
【請求項2】
前記発光素子は、赤色発光ダイオードおよび赤外発光ダイオードを備えることを特徴とする請求項1に記載の医療用測定装置。
【請求項3】
鼓膜温度を測定するためのサーモパイルをさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動脈血酸素飽和度測定技術及び鼓膜温度測定技術を利用し、外耳道内で測定する新技術になり、一般的な動脈血酸素飽和度測定技術では指先などを透過光方式で測定する技術で、反射光方式で測定する技術は確立されていない状況で、外耳道内では部位構造上、反射光で測定する医療用測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には透過光方式では、指先など透過光による測定が可能な部位を選んで動脈血酸素濃度を測定実行し、動脈血酸素飽和度を得ている。測定用の光源は赤外光と赤色光を利用して動脈に内在するヘモグロビンが酸素と結びつく事で赤色になる現象を利用して、動脈内を透過する赤色光がヘモグロビンに結合した酸素量により吸光度が非線形比例する事を基本原理とし、赤外光は赤色光と違い吸収される事が無い事から投光量に対する吸光度の補正をし、動脈血酸素飽和度を計算式により算出している。しかし、透過光により動脈血酸素飽和度を指先で測定する機器は、長時間測定には無理があり、指を動かす事もできない状況が続くという問題がある。
【0003】
その点、外耳道内測定機器の場合は、普通の生活をしながらでも測定が可能となり、被測定者の負担が大分緩和される事になる。外耳道又は鼓膜温の測定に関しては、基本技術は確立しており、温度センサとして使用されているサーモパイルの基準接点温度補償を如何に正確にできるかに掛かっており、一般的にはサーモパイルの横に環境温度測定素子であるサーミスタを配置し、測定時の環境温度をサーミスタにより読取りサーモパイルの基準接点温度として補正しているが、±0.1℃精度を出すためにはサーモパイルの基準接点温度とサーミスタの環境温度が相対精度±0.1℃内で一致している事が必要でそのように作りこむ技術が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-17404
【特許文献2】特開2002-54996
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外耳道内の動脈血酸素飽和度を測定しようとした場合、外耳道内の組織上透過光方式では測定不可能で、反射光方式で確実に動脈血酸素飽和度の測定ができる事が必須である。しかし、反射光方式では、外耳道表面と測定センサとの間の距離が1mm~5mm程度隙間が生じる事で外耳道内部にて乱反射を起こす可能性が高くなるという欠点があり、動脈血酸素飽和度測定の精度が非常に悪くなる現象を克服する必要がある。
【0006】
本発明は、段落0005の外耳道内で起きる乱反射現象及び直接光による影響に対して的確に精度よく動脈血酸素飽和度測定ができる医療用測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、外耳道内で反射光を利用し精度よく動脈血酸素飽和度を測定するには、外耳道内部で起きる直接光及び乱反射光に対し、動脈血管内で反射して受光フォトダイオードに流入する有効反射光の方向が特定できる事に気付き、主に、特定された方向からの有効反射光が受光フォトダイオードに入る様な遮蔽箱を設ける事で余分な直接光及び反射光を遮る事で精度を上げる有効的手段である事を見出した。
【0008】
本発明は、下記の態様を包含する。
項1.
外耳道内の動脈血酸素飽和度を反射光方式で測定するための医療用測定装置であって、
発光素子と、
前記発光素子から出射され前記動脈において反射された反射光を受光する受光素子と、
前記受光素子を覆う光遮蔽部材と、
を備え、
前記光遮蔽部材には、前記反射光を通過させる開口部が設けられていることを特徴とする医療用測定装置。
項2.
前記発光素子は、赤色発光ダイオードおよび赤外発光ダイオードを備えることを特徴とする項1に記載の医療用測定装置。
項3.
鼓膜温度を測定するためのサーモパイルをさらに備えることを特徴とする項1または2に記載の医療用測定装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外耳道内の動脈血酸素飽和度を的確に精度よく測定できる医療用測定装置を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】医療用測定装置を無線機本体部縦側より透視した図。
図2】医療用測定装置を右側より透視した図。
図3】医療用測定装置を無線機本体部横側より透視した図。
図4】医療用測定装置を下側より透視した図。
図5】遮蔽箱がない場合の外耳道内で受光フォトダイオードに入光する反射光の輪切りルート図。
図6】遮蔽箱がある場合の外耳道内で受光フォトダイオードに入光する反射光の輪切りルート図。
図7】遮蔽箱がない場合の外耳道内で受光フォトダイオードに入光する反射光の縦切りルート図。
図8】遮蔽箱がない場合の外耳道内で受光フォトダイオードに入光する反射光の縦切りルート図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態について、図1~8を参照して説明する。
【0012】
(装置の概要)
図1は、本実施形態に係る医療用測定装置1を無線機本体部縦側より透視した図で、図2は、本実施形態に係る医療用測定装置1を右側より透視した図である。図3は、本実施形態に係る医療用測定装置1を無線機本体部横側より透視した図で、図4は、本実施形態に係る医療用測定装置1を下側より透視した図である。医療用測定装置1は、サーモパイルIC30と発光ダイオード31、32と受光フォトダイオード31と遮蔽箱13を搭載したフレキブル基板10を収納した外耳道挿入部20及び、パターンアンテナ12と無線通信用MPU35とUSBマイクロコネクタ34とリチウムポリマー2次電池36を搭載したメイン基板11を収納した無線機本体部22及び耳掛けフック21を備えている。遮蔽箱13は、受光フォトダイオード31を覆う光遮蔽部材である。遮蔽箱13には、発光ダイオード31、32から出射され動脈において反射された反射光を通過させる開口部が設けられている。これにより遮蔽箱13は、特定方向から来る反射光を開口部を介して通過させ、外耳道内壁60等からの不必要な方向から来る反射光及び発光ダイオード31、32からの直接光を遮る。
【0013】
図5は、遮蔽箱13がない場合の外耳道内で受光フォトダイオード31に入光する反射光51の外耳道内、輪切りルートを示した図である。図6は、遮蔽箱13がある場合の外耳道内で受光フォトダイオード31に入光する反射光の外耳道内、輪切りルートを示した図である。図5でもわかる様に遮蔽箱13が無い場合は、あらゆる方向からの反射光51及び直接光52等全て光が受光フォトダイオード31に入光するため有効反射光50の相対的割合が極端に低くなり動脈血酸素飽和度の算出結果を見ると非常に精度が悪い事が分かる。それに比べ図6の遮蔽箱13がある場合は、動脈内で反射した特定方向から有効反射光50が入り易い開口部を設けてあり、全入光量に対して有効反射光50の割合が非常に高くなる。このように、遮蔽箱13が直接入射する直接光の遮蔽となり、直接光と有効的な反射光の相対的光量比率が向上するため、赤色光の吸光度がヘモグロビンの酸素含有量にリニアに比例する。よって、動脈血酸素飽和度の算出結果を見ると精度が高くなる事が判明した。
【0014】
図7は、遮蔽箱13がない場合の外耳道内で受光フォトダイオード31に入光する反射光51及び直接光52の外耳道内、縦切りルートを示した図である。図8は、遮蔽箱13がある場合の外耳道内で受光フォトダイオード31に入光する反射光51及び直接光52の外耳道内、縦切りルートを示した図である。図7図8を対比して見てわかる様に遮蔽箱13がある事で、無効な反射光51、発光ダイオード31、32からの直接光52は80%程度遮られ、主に、発光ダイオード31、32から出射され動脈において反射された有効反射光50を受光フォトダイオード31に入光させる事が可能となり、結果、動脈血酸素飽和度の算出結果の精度が高くなる。また、受光フォトダイオード31上に遮蔽箱13を設けた事で、流入する光量も一定になるため、測定精度が向上する。遮蔽箱13が無い状態では外耳道内で深度方向及び右回り、左回りに少しでも動揺すると光量が変化し、測定精度が安定しなかった。
【0015】
外耳道挿入部20は、外耳道に挿入可能な機械的寸法を有している。外耳道挿入部20に収納されているフレキブル基板10には、鼓膜温度を測定するサーモパイルIC30が搭載されている。サーモパイルIC30には熱電対の集合素子で熱電対の基準冷接点補償のための測定環境温度を測定できる半導体温度感知素子(ダイ温度センサ)が搭載されており、常に測定環境温度を測定し、サーモパイルの基準冷接点補償を実行する機能が備わっている。サーモパイルIC30はフレキブル基板10の尖塔に搭載されている事で、外耳道に挿入された定位の状態で、鼓膜温度が測れる最適位置に固定化できる。このように、医療用測定装置1は、外耳道に挿入して鼓膜温度および動脈血酸素飽和度を同時に測定することができる。
【0016】
フレキブル基板10には、赤色発光ダイオード32と赤外発光ダイオード33と受光フォトダイオード31と遮蔽箱13が搭載され、動脈血酸素飽和度を測定する事ができる。赤色光は動脈内にある酸素含有量によってヘモグロビン赤色発光量が変わる事で、赤色光がヘモグロビン赤色発光量に応じて吸光率が比例する事を利用している。同期してヘモグロビン赤色発光量に吸光率が変化しない赤外発光量を測定する事で、赤色の発光量に対する吸光割合が分かり、動脈血酸素飽和度を計算できる。吸光割合が正確に測れるかどうかは、遮蔽箱13の存在如何で有効反射光の相対量に変化がでる事で分かる。所謂、動脈内で反射した有効反射光を受光フォトダイオード31に入光させる遮蔽箱13の存在が測定精度を上げる唯一の適正方法である事が分かる。また、発光ダイオード32,33及び受光フォトダイオード31をフレキシブル基板10に搭載する事で、外耳道挿入部の外装内側面に密着させる事ができ、外装内部反射を極力抑える事ができる。
【0017】
フレキシブル基板10の一方にはメイン基板11が接続されている。メイン基板11には、パターンアンテナ12と無線通信用MPU35とUSBマイクロコネクタ34とリチウムポリマー2次電池36が搭載されており、測定結果を上位コンピュータへデータを送信するための無線機能が備わっている。上位コンピュータにより術中生体の温度管理等が可能となる。リチウムポリマー2次電池は、医療用測定装置1の電源としての役割を担っている。リチウムポリマー2次電池36の充電用コネクタとしてUSBマイクロコネクタ34が取付けられており、外部USB電源より充電が可能となっている。無線機能はBluetooth(登録商標)プロトコルを搭載し、ノートPC、タブレット、スマホ等と通信する事ができる。メイン基板11を収めている無線機本体部の外装ケースからは耳掛けフック21が出ており、医療用測定装置1を外耳道に挿入後、耳掛けフック21を利用して固定化できる。
【0018】
(付記事項)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0019】
1 医療用測定装置
10 フレキシブル基板
11 メイン基板
12 パターンアンテナ
13 遮蔽箱
20 外耳道挿入部
21 耳掛けフック
22 無線機本体部
30 サーモパイルIC
31 受光フォトダイオード
32 赤色発光ダイオード
33 赤外発光ダイオード
34 USBマイクロコネクタ
35 無線通信用MPU
36 リチウムポリマー2次電池
50 有効反射光
51 反射光
52 直接光
60 外耳道内壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8