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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007239
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】水産物流通管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20120101AFI20220105BHJP
   G16Y 10/15 20200101ALI20220105BHJP
【FI】
G06Q50/02
G16Y10/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110075
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】501335841
【氏名又は名称】株式会社エム・ソフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】特許業務法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田窪 三紀夫
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水産物に関わる取引の内容、特に、産地、流通、及び加工の履歴をトレース可能とするシステムを提供する。
【解決手段】共通基盤を経由して、トレース対象の水産物に関係する取引の内容のトレースを行うシステムであって、データベース部を備える。データベース部は、トレース対象の水産物に関係する取引の内容であってトレースされる情報であるトレースデータを生成及び保持するトレースデータ管理部を有している。トレースデータは、トレース対象の水産物に関係する取引が行われた際に都度その情報が生成されるものであり、トレース対象の水産物に帯同する記憶媒体に保持されている媒体データと、トレース対象の水産物ごとに紐づけられていて、媒体データに基づき、媒体データと紐づいているトレースデータが参照可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通基盤を経由して、トレース対象の水産物に関係する取引の内容のトレースを行うシステムであり、前記システムはデータベース部を備え、前記データベース部は、トレース対象の水産物に関係する取引の内容であってトレースされる情報であるトレースデータを生成及び保持するトレースデータ管理部を有しており、前記トレースデータは、トレース対象の水産物に関係する取引の都度生成されるものであり、トレース対象の水産物に帯同する記憶媒体に保持されている、媒体データと、トレース対象の水産物ごとに紐づけられていて、前記媒体データに基づき、前記媒体データと紐づいている前記トレースデータが参照可能であることを特徴とする水産物流通管理システム。
【請求項2】
請求項1のシステムであって、前記データベース部は、ブロックチェーンが施されるデータベースであることを特徴とする水産物流通管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水産物に関係する取引の内容、特に、産地、流通、及び加工の履歴をトレースするためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水産業は、漁獲高減少や漁業者の高齢化、魚価の低迷といった問題を抱えており、水産庁では水産政策改革のため、2017年4月に「水産基本計画」において、流通コストの削減等を課題として挙げている。また、水産物の輸出においては、産地証明や衛生証明書等の公的書類の発行が義務付けられているが、その業務は保健所や商工会議所に委ねられており、迅速な対応が難しい。加えて、証明書が紙媒体の場合、偽造される恐れがある。よって、生産地や流通、加工に関する情報の証明が必要な際に、その情報の容易な閲覧を可能としつつ、情報保護が強固であるような、水産物の流通コストの低減や、情報の改ざん防止等を実現するシステムが求められていた。
【0003】
特許文献1では、人工知能を活用し、漁獲物を識別してその履歴を追跡可能とする漁獲物識別システム、漁獲物の品質管理等をシステム化する漁獲物管理システム、及び漁獲物の物流等をシステム化する漁獲物物流システムが開示されている。また、特許文献2では、食品に取り付けられた無線タグに生産地情報等を書き込み、食品の生産及び管理に用いる食品管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6401411号公報
【特許文献2】特許第4698149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係るシステムは、漁獲物の個別認識によるブランド化、鮮度低下の抑制、漁港間の情報共有(ただし統計的な漁獲物の品質予測を意図した情報共有)、及び、食の安全のための漁獲物の流通のトレース実現を目的としているため、当該システムでは、前述した、流通コストの削減や情報の改ざん防止の効果は奏しない。また、特許文献2に係るシステムは国外への輸出を想定しておらず、産地等の情報を公的な証明に利用することは考えられていないため、単に当該システムを用いるのみでは、前述した、流通コストの削減や、情報の改ざん防止の効果は期待できない。加えて、水産業における競りや仲卸といった、水産物の流通経路における人的作業の発生箇所は、各々の歴史や文化があり、IT化が受け入れ難い状況にある。
【0006】
すなわち、水産物の産地、流通、及び加工の履歴といった、水産物に関係する取引の内容をトレースするという観点において、水産業では次の(1)、(2)、(3)の課題が解決されていない。(1)流通コストの削減、(2)生産地や流通、加工等に関する情報の改ざん防止、(3)競りや仲卸といった流通経路における各箇所が有する歴史や文化に迎合したIT化。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、水産業に携わる漁師や仲卸といった、水産物に関わる作業者に受け入れられやすく、かつ、当該各作業の利便化及び円滑化をすることで、水産業における流通コストを削減し、そして、生産地や流通、加工等の履歴といった取引の内容の情報の改ざんを確実に防止するシステムの提供を目的とする。特に、従来手作業や紙媒体で行われている、各種証明書に要する情報を電子データ化し、さらに、当該情報は共通基盤を経由して閲覧可能として、紙面の証明書が必要な場合は紙面に出力可能としたり、ペーパーレスの場合は電子データのまま証明書の役割を担ったりし、物理的な移動や情報共有の作業等を不要にし、水産業における流通コストを削減させる。また、大規模なシステム導入を必要とせずに前記共通基盤を利用可能とし、末端消費者における本発明のシステムの利用も容易化することで、国内のみならず、国内外における販路や販売機会拡大等の、水産業に関わるビジネスの活性化へも寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る水産物トレースシステムは、共通基盤を経由して、トレース対象の水産物に関係する取引の内容のトレースを行うシステムであり、前記システムはデータベース部を備え、前記データベース部は、トレース対象の水産物に関係する取引の内容であってトレースされる情報であるトレースデータを生成及び保持するトレースデータ管理部を有しており、前記トレースデータは、トレース対象の水産物に関係する取引の都度生成されるものであり、トレース対象の水産物に帯同する記憶媒体に保持されている、媒体データと紐づけられていて、前記媒体データに基づき、前記媒体データと紐づいている前記トレースデータが参照可能であることを特徴とするシステムである。
【0009】
本発明の請求項2に係るシステムは、請求項1のデータベース部に対し、ブロックチェーンが施されるシステムである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、トレース対象の水産物の生産、流通、及び加工等における取引の履歴のような、トレース対象の水産物に関係する取引の内容であってトレースされる情報であるトレースデータの生成は、共通基盤である本発明のシステムのデータベース部を用いて実行されるので、水産物の取引の内容のトレースが利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。特に、従来手作業や紙媒体で示されている、産地等の情報を電子データ化でき、さらに、それらの情報は当該データベース部経由でやりとりが可能で、紙面の証明書が必要な場合は紙面に出力可能としたり、ペーパーレスの場合は電子データのまま証明書の役割を担ったりし、物理的な情報共有の作業を不要とするので、水産業全体における流通コストを削減できる。また、データベース部に接続できさえすれば、利用者に特別なスキルは必要なく、大規模なシステム導入を必要としないので、末端消費者や、国内のみならず、国外においても本発明のシステムを容易に利用できるため、国内外における販路及び販売機会拡大等の、水産業に関わるビジネスの活性化にも寄与できる。
【0011】
請求項2の発明によれば、請求項1のデータベース部に対し、ブロックチェーンが施されるので、トレース対象の水産物に関係する取引の履歴は強固に保護され、情報の改ざんを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一実施例における水産物トレースシステムの概要図である。
図2】本発明のトレースデータの一例を示す図である。
図3】第一実施例における水産物トレースシステムにおけるフローの図である。
図4】第二実施例における水産物トレースシステムの概要図である。
図5】第二実施例におけるブロックチェーンの説明図である。
図6】第二実施例における水産物トレースシステムにおけるフローの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の水産物トレースシステムの第一実施形態の概要図を示す。
【0014】
本発明の第一実施形態のシステムTS1は、図1に示される通り、データベース部DB10と、本システムTS1内における情報の入出力を管理するプログラムを含む、本システムTS1を機能させるためのプログラムを有するプログラム部PRGと、1つ以上の情報端末TMNと、トレース対象の水産物に帯同する記憶媒体T20とを備え、データベース部DB10は、トレースデータ管理部100を有し、データベース部DB10と、プログラム部PRGと、情報端末TMNは、それぞれ、物理的に同じ場所に存在するときは、同一の計算機内に設けられていてもよい。または、データベース部DB10と、プログラム部PRGと、情報端末TMNは、異なる計算機内に設けられていてもよく、異なる計算機内に設けられている場合は、例えばローカルネットワーク又はインターネット網に接続可能なネットワーク等の、双方向通信ネットワークを経由して接続される。また、データベース部DB10と、プログラム部PRGと、情報端末TMNは、物理的に異なる場所に存在するときは、例えばインターネット網に接続可能なネットワーク等の、双方向通信ネットワークを経由して接続される。
【0015】
プログラム部PRGは、本発明のシステムTS1を機能させるためのプログラムに基づいて動作するものであり、情報端末TMN毎のID管理等を常に実施し、例えば、情報端末TMNに対して本発明のシステムTS1のためのクラウドネットワークを常に提供する。プログラム部PRGによる、本発明のシステムTS1における情報の入出力の管理とは、本システムTS1内のトレースデータ管理部100に対する情報の入力と、トレースデータ管理部100からの情報の出力とを管理することを含む。
【0016】
データベース部DB10は、例えばクラウドネットワークにおけるデータベースであり、少なくとも、トレースデータ管理部100に対する情報の入力と、トレースデータ管理部100からの情報の出力とを実施するものである。本実施例において、トレースデータ管理部100における情報とは、トレース対象の水産物の生産、流通、加工等の履歴といった、トレース対象の水産物に関係する取引の内容であり、トレースされる情報で、本実施例ではトレースデータD100と呼ぶ。具体的には、トレースデータD100とは、トレース対象の水産物の生産者が、その水産物を競りにかける際の取引や、トレース対象の水産物が競られた結果、競り落とした業者に所有権が移った際の取引、トレース対象が生産場所又は競り場から配送時の、配送業者への引き渡しでの取引、トレース対象が加工される際の、加工業者への引き渡しでの取引の内容の情報で、それら取引が行われた際に生成更新される。トレースデータD100の生成は、本実施例では、トレースデータ管理部100に、取引の内容の情報が入力されると、トレースデータ管理部100がトレースデータD100として生成する。この入力される取引の内容の情報は、本実施例では、生産情報D110、流通情報D120、及び加工情報D130として構成されている。
【0017】
生産情報D110とは、トレース対象の水産物種、産地、水揚げ日時、状態、量、買受業者等を示す情報である。生産情報D110の生成は、生産情報収集機能部110で行われ、生産情報収集機能部110によって、生産情報D110がトレースデータ管理部100に入力される。また、生産情報収集機能部110は、例えば、トレース対象の水産物が競りにかけられているときに、競りの音声を収集し音声内容を自動認識する機能を有していて、この機能で生産情報D110が生成されてもよい。この方法に限らず、生産情報D110は、トレース対象の水産物の生産者、又は/及び、漁協関係者により生産情報D110が手入力により生成され、トレースデータ管理部100に入力されるものであってもよい。
【0018】
流通情報D120とは、トレース対象の水産物の所有権、及び/又は、所在の場所、その場所に存在した日時等を示す情報である。流通情報D120の生成は、流通情報収集機能部120で行われ、流通情報収集機能部120によって、流通情報D120がトレースデータ管理部100に入力される。また、流通情報収集機能部120は、例えば、トレース対象の水産物が、競り場から加工場や小売店等に配送された際、自身でGPS情報を収集し、そのGPS情報に基づき、配送経路や配送業者の履歴を自動認識する機能を有していて、この機能で流通情報D120が生成されてもよい。この方法に限らず、流通情報D120は、トレース対象の買付けが行われた際、買付け関係者の手入力により生成されて、トレースデータ管理部100に入力されるものであってもよい。
【0019】
加工情報D130とは、トレース対象の水産物が加工された場所、加工内容、加工日時等を示す情報である。加工情報D130の生成は、加工情報収集機能部130で行われ、加工情報収集機能部130によって、加工情報D130がトレースデータ管理部100に入力される。また、加工情報収集機能部130は、例えば、トレース対象の水産物に対して凍結等の加工がされた際、加工の映像を収集し映像内容を自動認識する機能を有していて、この機能で加工情報D130が生成又は更新されてもよい。この方法に限らず、加工情報D130は、トレース対象の水産物が加工された際、加工関係者の手入力により生成され、トレースデータ管理部100に入力されるものであってもよい。
【0020】
生産情報収集機能部110と、流通情報収集機能部120と、加工情報収集機能部130は、それぞれ、データベース部DB10内の機能として存在してもよいし、データベース部DB10外の、例えば、プログラム部PRG等の、データベース部DB10外の機能部からの入力によるものでもよいし、予め設定されたプログラム実行による自動入力によるものでもよい。言い換えると、トレースデータ管理部100への生産情報D110、流通情報D120、及び加工情報D130の入力方法は、情報端末TMNを用いた手入力によるものでもよいし、データベース部DB10内の機能部、又は、例えば、プログラム部PRG等の、データベース部DB10外の機能部からの入力によるものでもよいし、予め設定されたプログラム実行による自動入力によるものでもよい。予め設定されたプログラム実行による自動入力とは、例えば、スケジューリング機能や、人工知能機能等を活用して、季節や天候に合った、水産物種や産地等の情報を、予め記憶や、予測させる等して、季節や天候に合わせた、水産物種や産地等の情報が、各機能部に自動入力されることを意味する。これらのうちふたつ以上の入力方法を併用してもよい。
【0021】
図2はトレースデータD100の一例であり、例えば、トレース対象がサバのとき、トレースデータD100として、トレース対象のサバに関する情報が図2のように生成される。また、トレースデータD100には、トレース対象毎に固有のID番号の情報が図2のように生成される。図2に示されるもののほか、トレースデータD100として、次に記す情報が生成されてもよい:水産物の基礎データ(学名等)、経路情報(経路、積載量、運送業者等)、取扱者情報(生産、加工、流通、販売、輸出、輸入取り扱い業者、公的機関等の各業者・団体名、連絡先等)、輸出入情報(国名、経路、輸送機関、輸送情報等)、証明書情報(各種証明書の登録データ等で、発行機関、申請者、登録番号、許可番号等)。
【0022】
一方、トレース対象の水産物には、図1に示される通り、記憶媒体T20が帯同される。記憶媒体T20は、例えば、RFIDタグで実現され、トレース対象の水産物が保管されたボックスに貼付される等で、トレース対象の水産物に帯同するものであり、記憶媒体T20を機能させるためのプログラムを有する動作部200を備える。記憶媒体T20と、その記憶媒体T20が帯同するトレース対象の水産物のトレースデータD100とが紐づいていて、記憶媒体T20が保持する媒体データD200(例えばID情報)に基づいて、その記憶媒体T20が帯同する水産物に対応するトレースデータD100が参照可能となる。
【0023】
次に、本発明の第一実施形態におけるフローについて説明する。図3は、トレース対象の水産物が、漁港等から加工場に配送され、その後販売店に配送されるときの、本発明のシステムTS1におけるフローの一例である。トレース対象の水産物の各在処それぞれにおける、本発明のシステムTS1の動作内容も記されている。図3に示される通り、トレース対象の水産物が漁港等にあり、生産者がその水産物を競りにかける際の取引を行うと、その取引の内容が、トレース対象の水産物の生産情報D110として生成され、トレースデータ管理部100に、その生産情報D110が入力される。入力された生産情報D110は、トレースデータD100と成り、トレース対象の水産物と帯同する記憶媒体T20の媒体データD200と紐づく。そして、当該情報は、記憶媒体T20が有する媒体データD200に基づき、情報端末TMN等から参照可能となる。
【0024】
次に、トレース対象の水産物が競り落とされて、競り落とした仲買人は配送業者と取引し、水産物の加工のため、加工場への配送が行われる際について記す。配送の履歴を含む取引の内容が、トレース対象の水産物の流通情報D120として生成され、トレースデータ管理部100に、その流通情報D120が入力される。入力された流通情報D120は、トレースデータD100と成り、トレース対象の水産物と帯同する記憶媒体T20の媒体データD200と紐づく。そして、当該情報は、記憶媒体T20が有する媒体データD200に基づき、情報端末TMN等から参照可能となる。
【0025】
トレース対象の水産物が加工場に到着し、加工が行われると、加工の履歴を含む取引の内容が、トレース対象の水産物の加工情報D130として生成され、トレースデータ管理部100に、その加工情報D130が入力される。入力された加工情報D130は、トレースデータD100と成り、トレース対象の水産物と帯同する記憶媒体T20の媒体データD200と紐づく。そして、当該情報は、記憶媒体T20が有する媒体データD200に基づき、情報端末TMN等から参照可能となる。
【0026】
最後に、トレース対象の水産物が販売店に到着したときには、加工場から販売店までの配送業者が関わる取引の内容が、トレース対象の水産物の流通情報D120として生成される。入力された流通情報D120は、トレースデータD100と成り、レース対象の水産物と帯同する記憶媒体T20の媒体データD200と紐づく。そして、当該情報は、情報端末TMN等から参照可能となる。
【0027】
以上が本発明の第一実施形態におけるフローだが、トレースデータ管理部100は、情報端末TMN等からの要求に応じて、対応するトレースデータD100を都度出力可能であり、すなわち、情報端末TMN等からトレースデータD100は随時参照可能である。
【0028】
このように構成した本発明の第一実施形態による作用効果について述べる。本システムTS1によれば、水産物に関係する取引の内容である、水産物の生産、流通、及び加工の履歴をトレースするための作業が、共通基盤である、本システムTS1のデータベース部DB10を用いて実行されるので、作業が利便化及び円滑化し、流通コストが削減できる。
【0029】
特に、従来手作業や紙媒体で扱われている、原産地等の情報を電子データ化でき、さらに、それらの情報はデータベース部DB10を用いてやりとりが可能なので、紙面の証明書が必要な場合は紙面に出力したり、ペーパーレスの場合は電子データのまま証明書の役割を担ったりすることで、物理的な情報共有の作業が不要となるので、水産業全体における流通コストを削減できる。
【0030】
また、情報端末TMNがデータベース部DB10に接続しさえすれば、情報端末TMNの操作者には特別なスキルは必要ないので、末端消費者や、国内のみならず、国外においても本システムTS1を容易に利用できるため、国内外における販路及び販売機会拡大等の、水産業に関わるビジネスの活性化にも寄与できる。
【0031】
加えて、全ての作業が自動的に行われる必要は無く、一部のみ手入力で行われてもよいので、大規模なシステムを導入することや、システム全体が従来文化への迎合することは不要なので、本システムTS1を容易に利用でき、水産業に関わるビジネスの活性化に寄与できる。
【0032】
続いて、本発明の第二実施形態について説明する。第二実施形態のシステムTS2は、基本構成は第一実施形態のシステムTS1と同一だが、データベース部DB10に対して、ブロックチェーンが施される点において相違する。第二実施形態のシステムTS2は、図4に示される通り、第一実施形態のシステムTS1の各機能部に加え、保護部300を備え、保護部300は、データベース部DB10に対してブロックチェーンを施す。保護部300は、システムTS2内部に有されればよく、システムTS2のデータベース部DB20内部に有されても、外部に有されてもよい。
【0033】
第二実施形態のシステムTS2においては、生産情報D110がトレースデータD100として生成されると、その生成がブロックとして記録される。同様に、流通情報D120がトレースデータD100として生成されると、その都度、生成の記録がブロックとなり、また、その流通の関係者で相互に承認が行われる。加工情報D130においても、加工情報D130がトレースデータD100として生成されると、その都度、生成の記録がブロックとなり、その加工の関係者で相互に承認が行われる。図5は、水産物の生産及び流通に伴うブロックのイメージであり、図5に示される通り、取引(本実施例においては、トレースデータD100内の情報の生成)の都度、その取引(情報の生成)の記録がブロックとなり、トレースデータD100はセキュリティがかかり、情報の改ざん等から強固に保護される。
【0034】
各ブロックには、取引の内容だけでなく、それと繋がっているひとつ前のブロックの要約も格納されており、各ブロックは、どのブロックと繋がっているか、そしてその繋がっているブロックに記録されている情報も有している。ブロックチェーンに記録される各取引には、その関係者によるデジタル署名が付与され、これに公開暗号鍵が使われてもよく、取引を行い受領や支払いを行う場合には送付された秘密鍵が必要となり、この秘密鍵が正式な取引証拠としてブロックに格納され改変不可となるため、セキュアなトランザクションが可能となる。一方、各ブロックの記録は一般に公開されており、参照可能なので、よって、容易に情報端末TMN等から参照可能である。
【0035】
一方、ブロックチェーンが施されたトレースデータD100内の情報は、指定書式に編集されて、衛生証明書等の公的書類として電子証明書の形態で発行されてもよい。本発明のシステムTS2は、秘密鍵を生成する機能を有していてもよく、航空機等によりトレース対象の水産物を輸出したのち、システムTS2において生成された秘密鍵を、相手国の輸入者に対し電子メール等で送信し、相手国の輸入者は、その秘密鍵を、輸入の際に提出することにより、輸入物が本物であることと、証明書に間違いがないことの証明を行ってもよい。秘密鍵は、輸出入者独自のシステムを介して公開されているブロックチェーン上の証明書に対応するものであってもよい。
【0036】
ブロックチェーンを実行する方法は、本発明においては特定せず、本発明のシステムTS2を用いる方法、他のシステムを用いる方法、どちらでもよい。
【0037】
次に、本発明の第二実施形態におけるフローについて説明する。第二実施形態におけるフローは、基本フローは第一実施形態のフローと同一だが、第二実施形態では、図6に示される通り、各情報がトレースデータD100として生成されるたび、それがブロックとなる点において相違する。
【0038】
また、図6に示されるように、トレース対象の水産物が輸出入されるとき、輸出のための保健所申請において、トレースデータD100内の各情報が出力され、指定書式に編集され、衛生証明書等の公的書類として電子証明書の発行が行われる。そして、輸出又は輸入の際の税関において、その電子証明書が用いられる。
【0039】
このように構成した本発明の第二実施形態による作用効果について述べる。第二実施形態による作用効果は、第一実施形態の作用効果に加え、データベース部DB10に対し、ブロックチェーンが施されるので、トレースデータD100及び媒体データD200が有する、トレース対象の水産物に関係する取引の内容である、生産地、流通、及び加工の履歴は強固に保護され、情報の改ざんを防止できる。
【0040】
本発明上記の実施形態に限定されない。例えば、水産物に限らず農産物の流通管理のために利用されてもよい。また、トレースデータはオンライン決済に利用されてもよい。一方、トレース対象の水産物に帯同する記憶媒体は、水産物の箱ごとでもよいし、その他のまとまりで付与されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
TS1、TS2 水産物流通管理システム
DB10、DB20 データベース
100 トレースデータ管理部
D100 トレースデータ
T20 記憶媒体
200 動作部
D200 媒体データ

図1
図2
図3
図4
図5
図6