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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007240
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ドアウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
   B60J 10/246 20160101AFI20220105BHJP
   B60J 10/248 20160101ALI20220105BHJP
   B60J 10/86 20160101ALI20220105BHJP
   B60J 10/16 20160101ALI20220105BHJP
【FI】
B60J10/246
B60J10/248
B60J10/86
B60J10/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110085
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕二
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA06
3D201AA23
3D201BA01
3D201CA23
3D201DA16
3D201DA27
3D201DA41
3D201EA02D
3D201EA03Z
(57)【要約】
【課題】支持リップによる遮音性を確保しつつドア閉じ性の向上を図ることができるドアウェザーストリップを提供する。
【解決手段】ドアインナーパネル3aに取り付けられる内部中空状の取付基部13と、該取付基部に一体に設けられ、フロントドア1の閉時に、車体パネル10に弾接する中空シール部14と、取付基部から中空シール部の中に突出した支持リップ16と、を備え、支持リップは、取付基部側の基端部16aから中空シール部側の先端部16bまでのほぼ中間位置に薄肉な屈曲可能部が形成され、屈曲可能部を介して全体がく字形状に形成されており、フロントドアの閉時に、該ドアの押圧力で撓み変形した中空シール部の内面14dに先端部が当接して屈曲可能部を介して屈曲変形すると共に、ドア開時には、先端部が中空シール部の内面から離間するように形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアパネルに取り付けられる内部中空状の取付基部と、該取付基部に一体に設けられ、ドア閉時に、車体パネルに弾接する中空シール部と、前記取付基部から前記中空シール部の中に突出した支持リップと、を備えたドアウェザーストリップであって、
前記支持リップは、前記取付基部側の基端部から前記中空シール部側の先端部までの間の位置に屈曲可能部が形成され、ドア閉時に、該ドアの押圧力で撓み変形した前記中空シール部の内面に前記先端部が当接して前記屈曲可能部を介して屈曲変形すると共に、ドア開時には、前記先端部が前記中空シール部の内面から離間するように形成されていることを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のドアウェザーストリップであって、
前記支持リップは、自由状態では前記屈曲可能部を介してほぼく字形状に形成されていることを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項3】
請求項1に記載のドアウェザーストリップであって、
前記取付基部と中空シール部及び支持リップを、同じ比重のスポンジゴム材によって一体に成形したことを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項4】
請求項1に記載のドアウェザーストリップであって、
前記取付基部と中空シール部を、同じ硬質スポンジゴム材によって形成する一方、前記支持リップを、前記取付基部と中空シール部の比重より小さな軟質スポンジゴム材によって形成したことを特徴とするドアウェザーストリップ。
【請求項5】
請求項4に記載のドアウェザーストリップであって、
前記取付基部と中空シール部を、比重が0.90の硬質スポンジゴム材によって形成する一方、前記支持リップを、比重が0.40~0.75の軟質スポンジゴム材によって形成したことを特徴とするドアウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドアパネルに取り付けられ、該ドアパネルと車体パネルとの間をシールするドアウェザーストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のドアウェザーストリップとしては、以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
このドアウェザーストリップは、副中空部を有し、ドアパネルに取り付け固定される基底部と、該基底部に一体に設けられ、ドア閉時に車体パネルに弾接する中空シール部と、前記基底部の内面から前記中空シール部の中に突出した突起部と、を備えている。
【0004】
この突起部は、基底部や中空シール部よりも低比重のスポンジゴム材によって成形されていると共に、前記基底部の副中空部が位置する部位から中空シール部のほぼ中央内面に向かってほぼ直線状に突出形成されている。
【0005】
そして、ドア閉時に、該ドアの押圧力によって前記中空シール部が内方へ撓み変形すると、前記突起部の先端部が軸心方向から中空シール部の内面に弾接して遮音壁となって、遮音性が得られるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-205852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたドアウェザーストリップは、前記突起部によって遮音性は得られものの、この突起部は肉厚が全体に比較的大きくかつ直線状に形成されていることから、前記ドア閉時に、中空シール部の内面が突起部の先端部に対して直交方向から当接した際に、突起部の反力が大きくなってドアの閉じ性が悪化するおそれがある。
【0008】
本発明は、前記特許文献1に記載された従来技術の技術的課題に鑑みて案出されたもので、支持リップによる遮音性を確保しつつドア閉じ性の悪化を抑制することのできるドアウェザーストリップを提供することを一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の発明は、車両のドアパネルに取り付けられる内部中空状の取付基部と、該取付基部に一体に設けられ、ドア閉時に、車体パネルに弾接する中空シール部と、前記取付基部から前記中空シール部の中に突出した支持リップと、を備えたドアウェザーストリップであって、前記支持リップは、前記取付基部側の基端部から前記中空シール部側の先端部までの間の位置に屈曲可能部が形成され、ドア閉時に、該ドアの押圧力で撓み変形した前記中空シール部の内面に前記先端部が当接して前記屈曲可能部を介して屈曲変形すると共に、ドア開時には、前記先端部が前記中空シール部の内面から離間するように形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本願請求項1に記載の発明によれば、ドアの高い遮音性を確保しつつドアの閉じ性の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のドアウェザーストリップが適用される自動車の側面図である。
図2】自動車のフロントドア及びリアドアに本実施形態のドアウェザーストリップが取り付けられた状態を示す概略図である。
図3】フロントドア側に取り付けられた本実施形態のドアウェザーストリップを示す図2のA-A線断面図である。
図4】フロントドアとリアドアの開閉時におけるそれぞれのドア前端部(ヒンジ)側のドアウェザーストリップの断面を示し、(a)はドア開時における図2のA-A線断面図、(b)はドア閉時における図2のA-A線断面図である。
図5】フロントドアとリアドアの開閉時におけるそれぞれのドア後端部(ロック)側のドアウェザーストリップの断面を示し、(a)はドア開時における図2のB-B線断面図、(b)はドア閉時における図2のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のドアウェザーストリップの実施形態を図面に基づいて詳述する。
【0013】
図1は本発明に係るドアウェザーストリップが適用される自動車の左側面図、図2は自動車のフロントドア及びリアドアに本実施形態のドアウェザーストリップが取り付けられた状態を示す概略図、図3はフロントドア側に取り付けられた本実施形態のドアウェザーストリップを示す図2のA-A線断面図、図4はドア前端部(ヒンジ)側のドアウェザーストリップの断面を示し、(a)はドア開時における図2のA-A線断面図、(b)はドア閉時における図2のA-A線断面図、図5はドア後端部(ロック)側のドアウェザーストリップの断面を示し、(a)はドア開時における図2のB-B線断面図、(b)はドア閉時における図2のB-B線断面図である。
である。
【0014】
すなわち、自動車のドアは、図1に示すように、車体6にそれぞれヒンジを介して開閉可能に設けられたフロントドア1とリアドア2と、該両ドア1,2の各ドア本体1a,2aの上端部に一体に設けられ、例えばロールフォーミングによって成形されたサッシュ部1b、2bと、を有している。前記ドア本体1a、2aは、それぞれ図外のドアアウターパネルとドアインナーパネル3a、4a(図4図5参照)とを外周部で接合してなり、前記サッシュ部1b、2bの前後端部が、ドア本体1a、2aの前後位置の内部に挿通配置されている。
【0015】
そして、前記ドア本体1a、2aの各ドアインナーパネル3a、4aの周縁部には、長尺な円環状のドアウェザーストリップ11,12がそれぞれ取り付けられている。フロントドア1(FR)側のドアウェザーストリップ11とリアドア2(RR)側のドアウェザーストリップ12は、それぞれ基本的に押出成形によって形成され、コーナー部では型成形部によって形成されており、横断面形状が同一に形成されている。
【0016】
したがって、以下では、ドア本体1a、2aの周縁部に取り付けられたドアウェザーストリップの基本構造を、便宜上、図3に示すフロントドア1側のドアウェザーストリップ11について主として説明する。
【0017】
このドアウェザーストリップ11は、前記ドアインナーパネル3aの内側周縁部に取り付け固定される取付基部13と、該取付基部13の車内側端部に一体に設けられた中空シール部14と、取付基部13の車外側端部に設けられたシールリップ15と、取付基部13の上壁13aに一体に固定されて、中空シール部14の内部に突出した支持リップ16と、を備えている。
【0018】
前記ドアウェザーストリップ11は、その全体、つまり、取付基部13と中空シール部14、シールリップ15及び支持リップ16のすべてが同じ比重のスポンジゴム材によって押出成形によって一体に成形されている。
【0019】
すなわち、ドアウェザーストリップ11は、たとえば、形状安定性を考慮して押出成形直後の肉厚を確保するために、発砲倍率が1.5~3.3倍であって、かつ比重が0.40~0.90のEPDM(エチレンプロピレンジエン)のスポンジゴム材によって成形されている。
【0020】
前記取付基部13は、横断面ほぼ矩形状に形成されて、内部に外形と相似形の矩形状の中空部13bが長手方向に沿って形成されている。また、取付基部13は、底壁13cの下面がドアインナーパネル3aの内側周縁部の内周面3bに当接している。また、底壁13cには、図外のクリップ挿通孔が長手方向の所定間隔位置に形成されており、このクリップ挿通孔を挿通する図外のクリップによって取付基部13がドアインナーパネル3aに取り付け固定されている。
【0021】
中空シール部14は、自由状態では横断面ほぼU字形状に形成され、一端部14aが取付基部13の上壁13aの前記シールリップ15側の一端縁に結合され、他端部14bが取付基部13の上壁13aの他端縁に結合されている。また中空シール部14は、先端側に逆V字形状の凸部14cを有している。また、中空シール部14は、フロントドア1(リアドア2)の閉時に、図4(b)、図5(b)に示すように、前記凸部14c側の外面に車体パネル10が弾接して各凸部14c側が潰れ状態に撓み変形して、フロントドア1(リアドア2)と車体パネル10との間をシールするようになっている。
【0022】
シールリップ15は、それぞれのドアインナーパネル3a、4aの端面に当接して車体パネル10との間をシールするようになっている。
【0023】
支持リップ16は、取付基部13の長手方向に沿って延長形成されて、自由状態では薄肉平板状に形成されており、基端部16aが取付基部13の上壁13aの中空部13bの形成位置に結合されている一方、先端部16bが中空シール部14の内面14dの凸部14c方向に指向している。
【0024】
また、支持リップ16は、基端部16aから先端部16bまでの間の中間位置、つまり、幅方向のほぼ中央位置に屈曲可能部17が形成されている。この屈曲可能部17は、支持リップ16の他の部位よりも僅かに薄肉状に形成されて屈曲変形可能になっている。
【0025】
支持リップ16は、自由状態では、屈曲可能部17を中心として全体がほぼく字形状に折曲形成されており、その開き角度はほぼ180°に近い角度になっている。さらに、支持リップ16は、その肉厚が屈曲可能部17よりも僅かに厚くなっているが、全体として比較的薄肉に形成されて撓み変形可能になっている。
【0026】
支持リップ16は、ドアウェザーストリップ11全体の押出成形時に一体に設けられ、前述したように、取付基部13や中空シール部14などと同じ比重のスポンジゴム材によって形成されている。
【0027】
〔本実施形態のドアウェザーストリップの作用効果〕
以上の構成を有するドアウェザーストリップ11、12は、フロントドア1やリアドア2が開いているとき、つまり、自由状態では図3図4(a)、図5(a)に示すように、ヒンジ側とロック側では、共に中空シール部14がほぼU字形状の原形状を維持することから、支持リップ16もく字形状の原形状を維持している。このとき、それぞれの支持リップ16は、先端部16bが中空シール部14の内面14dから一定の距離をもって離間している。
【0028】
そして、フロントドア1とリアドア2を閉じて車体6の開口部を閉止した場合は、それぞれのヒンジ側では図4(b)に示すように、各ドアウェザーストリップ11、12の中空シール部14に車体パネル10の端部が所定角度から弾接することによって圧縮変形する。すなわち、車体パネル10に弾接することによって、中空シール部14の凸部14c側が潰される方向(圧縮方向)に押圧されて、中空シール部14全体が斜めに圧縮変形する。そうすると、支持リップ16は、先端部16bが中空シール部14の内面14dの凸部14c近傍にほぼ直線方向から弾接すると、前記屈曲可能部17を中心に屈曲変形して全体がほぼクランク状に容易に撓み変形する。
【0029】
このように、支持リップ16は、先端部16bが中空シール部14の内面14dに弾接することによって隔壁状になる。これによって、支持リップ16が遮音壁として機能することから遮音効果を十分に発揮することが可能になる。
【0030】
一方、フロントドア1側とリアドア2側のロック側では、図5(b)に示すように、各ドアウェザーストリップ11,12の中空シール部14が車体パネル10の端部に所定角度方向から弾接して圧縮変形する。すなわち、車体パネル10に弾接することによって、中空シール部14の凸部14c側が潰される方向(圧縮方向)に押圧されて、中空シール部14全体が斜めに圧縮変形する。そうすると、支持リップ16は、屈曲可能部17から先端部16b側の一側面が中空シール部14のシールリップ15側の一側壁の内面14dに横方向から弾接する。これによって、支持リップ16は、全体が基端部16aと屈曲可能部17を支点に僅かに倒れる方向へ撓み変形して先端部16b側の一部が中空シール部14の内面14dに面接触状態で弾接する。
【0031】
これにより、支持リップ16は、フロントドア1側と同じく、先端部16bが中空シール部14の一側壁の内面14dに弾接することにより隔壁状になることから、遮音壁として機能するため、遮音効果を十分に発揮することが可能になる。
【0032】
本願発明の発明者は、実験により支持リップ16の有無による透過音レベルの比較を行った。この結果、支持リップ16が無い場合に比較して支持リップ16を設けた場合には、周波数が約1250Hz~約2000Hzの領域で透過音レベルが下がったことが分かった。これは、支持リップ16による遮音壁としての機能が十分に発揮されたことによるものである。
【0033】
なお、支持リップ16は、その肉厚差や比重の大きさによって遮音効果が変化するが、本実施形態では特に高周波領域の透過音レベルを低減することが可能である。
【0034】
しかも、フロントドア1やリアドア2のそれぞれの閉時には、前述のように、支持リップ16は、ヒンジ側では、前記屈曲可能部17を介して全体がクランク状に容易に撓み変形し、また、ロック側では、基端部16aや屈曲可能部17を支点として全体が僅かに倒れる方向へ容易に撓み変形する。
【0035】
このため、それぞれのドア閉時における中空シール部14の反力が十分に小さくなってドア閉じ性の悪化を抑制できる。特に、支持リップ16は、自由状態で予めく字形状に屈曲形成されていることから、薄肉化と相俟って車体パネル10の押圧力によって容易に撓み変形し易くなるので前記反力の上昇を効果的に抑制できる。
【0036】
特に、支持リップ16は、全体が肉厚な直線状ではなく薄肉板状のリップ形状になっていることから、初期撓み時の反力が十分に小さくなるのでドア閉じ性に対する影響が少なくなり、閉じ性の悪化をさらに抑制できる。
【0037】
さらに、支持リップ16は、基端部16aが取付基部13の上壁13aのうち中空部13bに位置する部位に結合されていることから、さらに撓み変形し易くなり前記反力を一層効果的に抑制できるので、ドアの閉じ性を一層向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、各支持リップ16を含む各ドアウェザーストリップ11全体が同じ比重のスポンジゴム材によって形成されていることから、多重押出成形法ではなく、いわゆるシングル押出成形法を用いることができる。このため、部分的に材料の面密度を大きくする必要がなく、取付基部13や中空シール部14の比重を小さくできると共に、薄肉に形成することが可能になる。この結果、ドアウェザーストリップ11全体の軽量化が図れると共に、ドア閉じ性の悪化をさらに抑制することができる。
【0039】
換言すれば、ドアウェザーストリップ11の各部位を比重が異なる2以上の材料で成形した場合には、いわゆる多重押出成形法によって成形することになるが、この多重押出成形法は、部分的に材料の面密度を大きくする必要があり、この面密度を大きくために取付基部13や中空シール部14の比重が高くなるばかりか、肉厚を厚くしなければならない。このため、ドアウェザーストリップ11全体の重量の増加が余儀なくされると共に、ドアの閉じ性が悪化するおそれがある。
【0040】
しかし、本実施形態では、前述したように、ドアウェザーストリップ11が同一比重のスポンジゴム材によって成形されていることから、ドアウェザーストリップ11全体の軽量化が図れると共に、ドアの閉じ性の悪化をさらに抑制することができるのである。
【0041】
また、ドアウェザーストリップ11,12は、それぞれ全体の横断面形状が同一に形成されていることから、フロントドア1やリアドア2の開閉進入方向によって撓みの態様が異なるが、特に、図4図5に示すヒンジ側からロック方向への撓みを支持リップ16が屈曲変形することによって前述した反力の上昇を抑えることが可能になる。
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態として、ドアウェザーストリップの各部位の材質を変更したものであって、前記取付基部13と中空シール部14を、同じ硬質スポンジゴム材によって形成する一方、前記支持リップ16を、取付基部13と中空シール部14の比重より小さな軟質スポンジゴム材によって形成したものである。
【0042】
具体的には、取付基部13と中空シール部14を、EPDMで比重が0.9の硬質スポンジゴム材によって形成し、前記支持リップ16を、同じEPDMで比重が0.40~0.75の軟質スポンジゴム材によって形成した。
【0043】
したがって、この実施形態によれば、支持リップ16のみを軟質スポンジゴム材によって形成したことによって、屈曲可能部17を介してく字形状による反力の低減効果と相俟ってさら材質による反力の低減化が図れる。このため、高い遮音効果が得られることは勿論のこと、ドア閉時の閉じ性の悪化をさらに抑制することが可能になる。
【0044】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、支持リップ16の肉厚を前記実施形態のものよりも少し厚くして屈曲可能部17のみを薄肉に形成することも可能である。
【0045】
また、前記屈曲可能部17は、支持リップ16の自由な屈曲性を確保できるのであれば、必ずしも予めく字形状に形成する必要はなく単に薄肉状に形成することも可能である。
【0046】
さらに、各ドアウェザーストリップ11,12の各部位の材質は、車両の仕様などによって任意に変更することも可能であり、例えば取付基部13を硬質のソリッドゴム材によって形成し、中空シール部14を比重の低いスポンジゴム材で形成し、さらに、支持リップ16を中空シール部14と比重の異なる軟質のスポンジゴム材で形成することも可能である。つまり、少なくとも支持リップ16の材質は、遮音性やドア閉時の反力の低減効果などからして少なくともEPDMで比重が0.40~0.75の軟質スポンジゴム材であることが望ましい。
【0047】
以上説明した実施形態に基づくドアウェザーストリップとしては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
【0048】
その一つの態様において、車両のドアパネルに取り付けられる内部中空状の取付基部と、該取付基部に一体に設けられ、ドア閉時に、車体パネルに弾接する中空シール部と、前記取付基部から前記中空シール部の中に突出した支持リップと、を備えたドアウェザーストリップであって、
前記支持リップは、前記取付基部側の固定端部から前記中空シール部側の先端部までのほぼ中間位置に屈曲可能部が形成され、ドア閉時に、該ドアの押圧力で撓み変形した前記中空シール部の内面に前記先端部が当接して前記屈曲可能部を介して屈曲変形すると共に、ドア開時には、前記先端部が前記中空シール部の内面から離間するように形成されている。
【0049】
この発明の態様によれば、ドア閉時には、このドアの押圧力で内方へ撓み変形した中空シール部の内面に支持リップの先端部が当接して遮音壁状態となることから、例えば1250~20000Hzの周波数帯の騒音を遮断することができる。したがって、遮音効果が高くなって遮音性が向上する。
【0050】
しかも、支持リップは、前述のように、先端部が中空シール部の内面で長手方向から押圧されると、屈曲可能部から折れ曲がることから、中空シール部の撓み変形時の反力が小さくなる。これによって、ドアの閉じ性の悪化を抑制できる。
【0051】
さらに好ましくは、前記支持リップは、自由状態では前記屈曲可能部を介してほぼく字形状に形成されている。
【0052】
さらに好ましくは、前記取付基部と中空シール部及び支持リップを、同じ比重のスポンジゴム材によって一体に成形した。
【0053】
この発明の態様によれば、取付基部と中空シール部及び支持リップが同じゴム材によって成形されていることから、多重押出成形法ではなく、いわゆるシングル押出成形法を用いることができる。このため、部分的に材料の面密度を大きくする必要がなく、取付基部や中空シール部の比重を小さくできると共に、薄肉に形成することが可能になる。この結果、ドアウェザーストリップ全体の軽量化が図れると共に、ドアの閉じ性が悪化をさらに抑制することができる。
【0054】
さらに好ましくは、前記取付基部と中空シール部を、同じ硬質スポンジゴム材によって形成する一方、前記支持リップを、前記取付基部と中空シール部の比重より小さな軟質スポンジゴム材によって形成した。
【0055】
この発明の態様によれば、支持リップを軟質スポンジゴム材によって形成したことによって、前記く字形状による反力の低減効果と相俟ってさら材質による反力の低減化が図れることから、高い遮音効果が得られることは勿論のこと、ドア閉時の閉じ性の悪化をさらに抑制することが可能になる。
【0056】
さらに好ましくは、前記取付基部と中空シール部を、比重が0.90の硬質スポンジゴム材によって形成する一方、前記支持リップを、比重が0.40~0.75の軟質スポンジゴム材によって形成した。
【符号の説明】
【0057】
1…フロントドア
1a…ドア本体
2…リアドア
2a…ドア本体
3a・4a…ドアインナーパネル
6…車体
10…車体パネル
11・12…ドアウェザーストリップ
13…取付基部
13a…上壁部
13b…中空部
13c…底壁部
14…中空シール部
16…支持リップ
16a…基端部
16b…先端部
17…屈曲可能部
図1
図2
図3
図4
図5