IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝情報システム株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社東芝の特許一覧

特開2022-72401アナログニューロン演算器及びその電力制御方法
<>
  • 特開-アナログニューロン演算器及びその電力制御方法 図1
  • 特開-アナログニューロン演算器及びその電力制御方法 図2
  • 特開-アナログニューロン演算器及びその電力制御方法 図3
  • 特開-アナログニューロン演算器及びその電力制御方法 図4
  • 特開-アナログニューロン演算器及びその電力制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072401
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】アナログニューロン演算器及びその電力制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06G 7/60 20060101AFI20220510BHJP
   G06N 3/063 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G06G7/60
G06N3/063
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181807
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】391016358
【氏名又は名称】東芝情報システム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 学
(72)【発明者】
【氏名】杉野 順一
(72)【発明者】
【氏名】北村 俊光
(72)【発明者】
【氏名】田村 豊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 功次
(72)【発明者】
【氏名】丸亀 孝生
(57)【要約】
【課題】入力端子に入力信号が到来しているのか否かの観点から電力消費の低減を図る。
【解決手段】アナログニューロン演算器では、入力端子に到来する入力信号に重み値を掛ける演算処理を行うシナプス回路200を備えるアナログニューロン演算器であって、前記入力端子101に入力信号が到来したか途絶えたかを検出する入力信号検出手段110と、前記シナプス回路200の出力信号を保持するシナプス出力保持手段120と、前記入力端子101に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて少なくとも前記シナプス回路200へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御する電力制御部100とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に到来する入力信号に重み値を掛ける演算処理を行うシナプス回路を備えるアナログニューロン演算器であって、
前記シナプス回路の出力信号を保持するシナプス出力保持手段と、
前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて少なくとも前記シナプス回路へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御する電力制御部と
を具備することを特徴とするアナログニューロン演算器。
【請求項2】
前記電力制御部は、
前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかを検出する入力信号検出手段と、
前記入力信号検出手段の検出結果に応じて少なくとも前記シナプス回路へ電力を供給するか電力供給を停止するかを制御する電力制御手段と
を具備することを特徴とする請求項1に記載のアナログニューロン演算器。
【請求項3】
前記シナプス回路の出力側と前記シナプス出力保持手段との間には前記シナプス回路の出力信号をディジタル化する比較器が接続され、
前記電力制御部は、前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて前記シナプス回路及び前記比較器へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御することを特徴とする請求項2に記載のアナログニューロン演算器。
【請求項4】
前記入力信号検出手段は、
前記入力端子に入力する信号レベル変化の有無を検出する変化有無検出回路と、
前記変化有無検出回路により信号レベル変化無が検出されたときから、前記シナプス回路により行われる演算に必要な所定時間を計時するタイマと、
前記タイマによる計時が完了すると、前記シナプス回路及び前記比較器へ電力の供給を停止することを指示する指示回路と、
を具備し、
前記電力制御手段は、前記指示回路による指示信号を受けると、前記シナプス回路及び前記比較器へ電力の供給を停止することを特徴とする請求項3に記載のアナログニューロン演算器。
【請求項5】
前記シナプス出力保持手段は、
前記比較器の出力信号を記憶する論理記憶回路を具備し、
前記電力制御手段は、前記指示回路による指示信号を受けた場合にも前記論理記憶回路へ電力を供給する制御を行うことを特徴とする請求項3または4に記載のアナログニューロン演算器。
【請求項6】
前記論理記憶回路は、
前記比較器の出力信号をラッチするラッチ回路と、
第1の電圧と第2の電圧との間に直列接続された第1のスイッチと第2のスイッチを有し、この第1のスイッチと第2のスイッチの出力点を出力端子とするスイッチ回路であって、前記ラッチ回路に記憶されている論理値に応じて前記第1のスイッチと前記第2のスイッチが開閉するスイッチ回路と
を具備することを特徴とする請求項5に記載のアナログニューロン演算器。
【請求項7】
入力端子に到来する入力信号に重み値を掛ける演算処理を行うシナプス回路と、前記シナプス回路の出力信号を保持するシナプス出力保持手段とを備えるアナログニューロン演算器の電力制御方法であって、
前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかを検出する入力信号検出ステップと、
前記入力信号検出ステップの検出結果に応じて少なくとも前記シナプス回路へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御する電力制御ステップと
を具備することを特徴とするアナログニューロン演算器の電力制御方法。
【請求項8】
前記アナログニューロン演算器における、前記シナプス回路の出力側と前記シナプス出力保持手段との間には、前記シナプス回路の出力信号をディジタル化する比較器が接続され、
前記電力制御ステップでは、前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて前記シナプス回路及び前記比較器へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御することを特徴とする請求項5に記載のアナログニューロン演算器の電力制御方法。
【請求項9】
前記電力制御ステップは、
前記入力端子に入力する信号レベル変化の有無を検出する変化有無検出ステップと、
前記変化有無検出ステップにより信号レベル変化無が検出されたときから、前記シナプス回路により行われる演算に必要な所定時間を計時する計時ステップと、
前記計時ステップによる前記所定時間の計時が完了すると、前記シナプス回路及び前記比較器へ電力の供給を停止することを指示する指示ステップと、
を具備し、
前記電力制御ステップでは、前記指示ステップによる指示を受けると、前記シナプス回路及び前記比較器へ電力の供給を停止することを特徴とする請求項8に記載のアナログニューロン演算器の電力制御方法。
【請求項10】
前記比較器を用いて、前記シナプス回路の出力信号をディジタル化するディジタル化ステップと、
前記ディジタル化ステップにより得られた出力信号を論理記憶回路に記憶する記憶ステップとを具備し、
前記電力制御ステップでは、前記指示ステップによる指示信号を受けた場合にも前記論理記憶回路へ電力を供給する制御をすることを特徴とする請求項9に記載のアナログニューロン演算器の電力制御方法。
【請求項11】
前記論理記憶回路は、
前記比較器の出力信号をラッチするラッチ回路と、
第1の電圧と第2の電圧との間に直列接続された第1のスイッチと第2のスイッチを有し、この第1のスイッチと第2のスイッチの出力点を出力端子とするスイッチ回路と、
を具備し、
前記ラッチ回路に保持されている論理値に応じて前記第1のスイッチと前記第2のスイッチを開閉するスイッチ開閉ステップ
を具備することを特徴とする請求項10に記載のアナログニューロン演算器の電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アナログニューロン演算器及びその電力制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアナログニューロン演算器にあっては、入力信号が到来しているか否かに関わりなく、常時稼働状態となっている。また、ディジタルクロックによりニューロン回路の起動をコントロールするものも知られている。
【0003】
しかしながら、上記のように常時稼働状態とすることは電力供給が連続されることになり、無駄な電力消費が行われているものであった。これに対し、ディジタルクロックによりニューロンの起動をコントロールするものにあっては、待機時リーク電力以外の常時電力消費がある訳ではないため、常時稼働のものよりは優れるものの、入力信号の到来には無関係であり、必ずしも無駄な電力消費を抑制できるというものではない。
【0004】
特許文献1には、ニューラルネットワークの演算を行う演算回路が、第1、第2論理回路と、第1乃至第4トランジスタと、第1、第2保持部と、を有する半導体装置である。この半導体装置は、第1論理回路の低電源電位入力端子は、第1、第3トランジスタに電気的に接続され、第2論理回路の低電源電位入力端子は、第2、第4トランジスタに電気的に接続されている。第1保持部によって、第1、第4トランジスタのそれぞれの第2ゲートの電位は、第1データに応じた電位として保持される。第2保持部によって、第2、第3トランジスタのそれぞれの第2ゲートの電位が保持される。第2データによって第1乃至第4トランジスタのそれぞれのオン状態又はオフ状態を決める。第1、第2論理回路のそれぞれの信号の入出力時間の差は、第1データと第2データとに応じて決まる。
【0005】
上記のように、第1論理回路の低電源電位入力端子と第2論理回路の低電源電位入力端子に接続されている第1乃至第4トランジスタのそれぞれのオン状態又はオフ状態を第2データにより決めて、電力消費を低減させている。
【0006】
引用文献2には、少ない消費電力で積和演算が可能な半導体装置が開示されている。また、この半導体装置によってニューラルネットワークの演算を行うことが記載されている。この半導体装置は、第1、第2入力端子と、第1、第2出力端子と、切り替え回路とを有する半導体装置であって、切り替え回路は第1乃至第4端子を有する。切り替え回路は、第1データに応じて、第1端子の電気的接続先として、第3端子又は第4端子の一方を選択し、第2端子の電気的接続先として、第3端子又は第4端子の他方を選択する機能を有する。また、切り替え回路はバックゲートを含む第1、第2トランジスタを有し、当該バックゲートの電位に応じて、第1端子と第3端子又は第4端子の一方との間の信号の伝達速度、第2端子と第3端子又は第4端子の他方との間の信号の伝達速度を定める機能を有する。なお、当該電位は第2データに応じて決まる。第1、第2端子に信号が入力されたとき、第3、第4端子から出力されるそれぞれの信号の時間差は、第1データと第2データとに応じて決まる。
【0007】
更に、特許文献3には実施形態に係る演算装置10が、ニューロンを模擬した非線形演算を簡易な構成で実現することが開示されている。特許文献3の演算装置10は、M個の係数との積和演算(乗累算)をアナログ処理により実行するもので、乗累算値に対応する信号に対して符号関数処理をして、出力信号を生成することができる。特に、演算装置10は、比較部36に入力される差電圧のダイナミックレンジを小さくすることができ、従って、演算装置10は、簡易な構成の比較部36を用いて演算を実行することができるものである。この特許文献3のものは、ニューロンを簡易な構成により実現するもので、電力消費低減の観点からの発明ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-21480号公報
【特許文献2】特開2020-9432号公報
【特許文献3】特開2019-53563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように従来のニューロン回路においては、入力端子に入力信号が到来しているのか、または到来していないのかという観点から電力消費の低減を図るものではなく、電力消費の低減に限界があった。
【0010】
本発明は上記のようなアナログニューロン演算器における現状に鑑みてなされたもので、その目的は、入力端子に入力信号が到来しているのか、または到来していないのかにより電力消費の低減を図る、アナログニューロン演算器及びアナログニューロン演算器の電力制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態に係るアナログニューロン演算器は、入力端子に到来する入力信号に重み値を掛ける演算処理を行うシナプス回路を備えるアナログニューロン演算器であって、前記シナプス回路の出力信号を保持するシナプス出力保持手段と、前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて少なくとも前記シナプス回路へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御する電力制御部とを具備することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るアナログニューロン演算器のブロック図。
図2】本発明の実施形態に係るアナログニューロン演算器における要部の構成を示すブロック図。
図3】本発明の実施形態に係るアナログニューロン演算器における要部の構成を示すブロック図。
図4】本発明の実施形態に係るアナログニューロン演算器の要部構成を示すブロック図。
図5】本発明の実施形態に係るアナログニューロン演算器の動作を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るアナログニューロン演算器及びアナログニューロンの電力制御方法を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1に、電力制御部100を備えた本発明の実施形態に係るアナログニューロン演算器のブロック図を示す。即ち、本発明の実施形態に係るアナログニューロン演算器は、シナプス回路200と電力制御部100とシナプス出力保持手段120を主な構成として備える。シナプス回路200は、入力端子101に到来する入力信号に重み値を掛ける演算処理を行うものである。
【0014】
電力制御部100は、上記入力端子101に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて少なくとも上記シナプス回路200へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御する。電力制御部100は、入力信号検出手段110、電力制御手段130を備える。
【0015】
入力信号検出手段110は、上記入力端子101に入力信号が到来したか途絶えたかを検出するものである。具体的には、図2に示されるように、入力信号検出手段110は、変化有無検出回路112と、タイマ113と、指示回路114とを備えている。
変化有無検出回路112は、入力端子101に入力する信号レベル変化の有無を検出するもので、排他的論理和回路112Aと遅延回路112Bとにより構成されている。排他的論理和回路112Aは、入力端子101から直接に到来する信号と、入力端子101から遅延回路112Bを介して遅延を受けた信号との排他的論理和演算を行う。遅延回路112Bは、入力端子101から到来する信号を僅かに遅延させて出力し、排他的論理和回路112Aによる論理和演算で入力端子101への信号到来を確実に検出可能としている。
【0016】
タイマ113は、上記変化有無検出回路112により信号レベル変化無が検出されたときから、上記シナプス回路200により行われる演算に必要な所定時間TA(図5)を計時する。上記所定時間TAは、上記シナプス回路200が行っている通常の演算に必要な時間に適当なマージンを加えた時間とすることができる。タイマ113は、上記所定時間TAの計時が完了すると出力を例えば0から1へ変換する。指示回路114は、例えばR-Sフリップフロップにより構成され、セット端子Sに排他的論理和回路112Aの出力信号が与えられ、リセット端子Rにはタイマ113の出力信号が与えられる。R-Sフリップフロップである指示回路114は、排他的論理和回路112Aの出力信号が立ち上がるとセットされ、タイマ113の出力信号が立ち上がると(0から1へ変化すると)リセットされる。
【0017】
シナプス出力保持手段120は、上記シナプス回路200の出力信号を保持するものである。上記シナプス回路200の出力側と上記シナプス出力保持手段120との間には上記シナプス回路200の出力信号をディジタル化する比較器121が接続される。シナプス出力保持手段120は、比較器121に直列接続された論理記憶回路122により構成される。論理記憶回路122は、比較器121の出力信号を記憶するものである。前述の電力制御部100は、上記入力端子101に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて上記比較器121へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御する。
【0018】
論理記憶回路122の具体的構成は、例えば図3に示すようにすることができる。論理記憶回路122は、Dラッチ回路124と、スイッチ回路125とを備えることができる。スイッチ回路125は、電源電圧とアースとの間に直列接続され、相補的に開閉する第1のスイッチ125Aと第2のスイッチ125Bを有し、この第1のスイッチ125Aと第2のスイッチ125Bの接続点を出力端子とする。この第1のスイッチ125Aと第2のスイッチ125Bの開閉は、Dラッチ回路124の出力により制御される。即ち、Dラッチ回路124の出力が1のとき第1のスイッチ125Aは閉、第2のスイッチ125Bは開とされ、Dラッチ回路124の出力が0のとき第1のスイッチ125Aは開、第2のスイッチ125Bは閉とされる。そして、第1のスイッチ125Aが閉、第2のスイッチ125Bが開のときには、プルアップ側電源の電圧(第1の電圧)が出力端子に出力され、その値は1となる。また、第1のスイッチ125Aが開、第2のスイッチ125Bが閉のときには、プルダウン側電源の電圧(第2の電圧)が出力端子に出力され、その値は0となる。このような原理により、シナプス回路200の出力信号が比較器121によりディジタル化されて、論理記憶回路122に記憶される。上記入力端子101に入力する入力信号が途絶えて、シナプス回路200及び比較器121に電力が供給されなくなった後にも、論理記憶回路122には電力が供給され続け、スイッチ回路125の状態は保持され、次の電力供給がスタートされたときには、保持された状態からスタートとなる。なお、上記で採用したDラッチ回路124は比較器121の出力信号をラッチするラッチ回路の一例であり、他のラッチ回路を採用することも可能である。
【0019】
シナプス回路200の構成は、本願の発明者らが特願2019-103803号としてすでに出願したものに掲載されている。例えば、図4に示されるようである。主制御装置41を除く構成は、ニューロン演算装置を構成する。また、ニューロンは、少なくとも1つのニューロンコア部10を備え、これに必要な重み値供給コントロール部30、制御処理装置40を備える構成を採用することができる。この実施形態は、3並列のニューロンとすることが可能な構成を示すものである。
【0020】
この実施形態では、1つのニューロンコア部10を備える。ニューロンコア部10は、データ入力端子Xとデータ出力端子Yと重み値入力端子Wと有し、上記データ入力端子Xから到来する入力データxと上記重み値入力端子Wから到来する重み値wとに基づきアナログ積和演算を行うもので、図1のシナプス回路200に相当する。この重み値wは、後に述べる重み値w0、w1、w2のいずれかである。データ入力端子Xは第1のインタフェース81に接続され、入力データxは第1のインタフェース81を介して到来する。このニューロンコア部10においてはアナログ積和演算を行って、演算結果をデータ出力端子Yから出力データyとして出力する。このアナログ積和演算は関数をfとしてy=f(x,w)で表わされる。また、出力データyは第2のインタフェース82を介して送出される。上記ニューロンコア部10の構成に電力制御部100を付加してニューロンコア部10に対する電力制御を行う構成を、アナログニューロン演算器とすることができる。
【0021】
重み値入力端子Wには、重み値供給コントロール部30を構成するセレクタ31とレジスタ32-0、32-1、32-2が接続され、この重み値供給コントロール部30から重み値が供給される。即ち、重み値供給コントロール部30は、それぞれ重み値w0、w1、w2を保持する複数のレジスタ32-0、32-1、32-2と、この複数のレジスタ32-0、32-1、32-2のいずれかを選択して重み値wとして上記重み値入力端子Wへ与える経路を開閉するためのセレクタ31とを具備する。
【0022】
重み値供給コントロール部30には、制御処理装置40が接続されている。制御処理装置40は、従属制御部42と主制御装置41により構成される。主制御装置41は、当該ニューロンを統括制御するものであり、コンピュータなどにより構成することができる。また、従属制御部42は、上記主制御装置41の指示に基づき上記ニューロンコア部10、上記重み値供給コントロール部30を直接制御するインタフェースであり、コントローラ、シーケンサ、コマンドレジスタの機能を有する。従って、上記主制御装置41から、幾つかの直列演算、幾つかの並列演算、幾つかの直列演算と幾つかの並列演算の混合演算を実行する指示と必要なデータが従属制御部42へ与えられると、従属制御部42は、このニューロンとしての処理が行われる期間は、上記主制御装置41が介在することなく、最終演算結果を得ることが可能であるように処理動作を行う。従属制御部42は、レジスタ32-0、32-1、32-2に重み値w0、w1、w2をセットするときに、制御信号線C0、C1、C2を介してレジスタ32-0、32-1、32-2に対しデータ(重み値)を受け入れ状態とさせるための制御信号を送る制御を行う。また、従属制御部42は、制御信号線C3を介してセレクタ31に制御信号を送ってレジスタ32-0、32-1、32-2のいずれかから重み値を選択してニューロンコア部10の重み値入力端子Wへ到るように制御を行う。
【0023】
以上のように構成されたニューロンでは、入力データxが、第1のインタフェース81を介してニューロンコア部10のデータ入力端子Xへ到来する前に、主制御装置41の制御の下でレジスタ32-0、32-1、32-2へ所要の重み値w0、w1、w2をセットしておく。入力データxがニューロンコア部10のデータ入力端子Xへ到来し、ニューロンコア部10のアナログ積和演算のタイミングとなると、制御処理装置40がこのタイミングに同期して上記重み値供給コントロール部30から重み値w(w0、w1、w2)を供給する制御を行う。
【0024】
即ち、第1回目のアナログ積和演算のタイミングではセレクタ31を制御してレジスタ32-0から重み値w0が送られるように制御を行い、第2回目のアナログ積和演算のタイミングではセレクタ31を制御してレジスタ32-1から重み値w1が送られるように制御を行い、第3回目のアナログ積和演算のタイミングではセレクタ31を制御してレジスタ32-2から重み値w2が送られるように制御を行う。
【0025】
制御処理装置40は、上記制御と共に、上記データ出力端子Yから上記アナログ積和演算毎の出力データを直列な出力データとして及び/または並列な出力データとして処理する。本実施形態では、3つの並列な出力データとして処理するため、上記第1回目の演算により得られた出力データy0、上記第2回目の演算により得られた出力データy1、上記第3回目の演算により得られた出力データy2について、それぞれの演算後のタイミングで出力データyとして取り出す。即ち、時分割で3つの出力データy0、y1、y2を得る処理を行い、第2のインタフェース82に接続されている図示しない例えば3つの経路へ時分割の順で送出する。本実施形態によれば、並列で3つの出力データy0、y1、y2を得るまでに時間を要するものの、3つのニューロンコア部10を用いる必要がなく構成を簡素化できるものである。上記シナプス回路200の構成は、この図4の構成以外に特願2019-103803号に実施形態として開示したものの構成を採用することができる。
【0026】
図1に示されている電力制御手段130は、上記入力信号検出手段110の検出結果に応じて少なくとも上記シナプス回路200へ電力を供給するか電力供給を停止するかを制御するものである。具体的には本実施形態では、電力制御手段130は、上記指示回路114による指示信号を受けると、上記シナプス回路200及び比較器121へ電力の供給を停止する。
【0027】
以上のように構成された電力制御部100では、図5のタイミングチャートに示される手順で動作する。このとき入力信号検出ステップであり、入力端子101に入力信号が到来したか途絶えたかを検出する。入力端子101に入力信号の到来が始まると指示回路114の出力信号が0から1へと変位し、これを受けた電力制御手段130は、上記シナプス回路200と上記比較器121への電力供給をスタートさせる電力制御ステップが行われる(T1)。
【0028】
暫く入力端子101に入力信号の到来しており、時刻T2のときに、入力信号の到来が止むと、タイマ113が計時を開始する計時ステップが実行される。タイマ113は、上記所定時間TAの計時が完了すると出力を例えば0から1へ変換する(図5のT3)。これにより、指示回路114の出力信号が1から0へと変位する指示ステップが行われる。この指示回路114から出力信号を受けた電力制御手段130は、上記シナプス回路200及び比較器121への電力供給を停止する(電力制御ステップ)。このとき、論理記憶回路122に電力が供給され続けられることから、上記シナプス回路200への電力供給がなくなった後にも、スイッチ回路125の状態は保持され、次の電力供給がスタートされたときには、論理記憶回路122に保持された状態からスタートとなる。
【0029】
以上のようにして本実施形態では、入力端子に入力信号が到来しているのか、または到来していないのかにより電力消費の的確な低減を図ることができるばかりか、その後の電力供給再開の場合に、演算結果が残っており、適切に次の処理へとつなげた電力消費の低減が可能である。
【0030】
なお、本実施形態では、シナプス回路200と電力制御部100を別のものとしたが、シナプス回路200内に本実施形態の電力制御部100を含ませて全体をシナプス回路とすることもできる。この場合には、シナプス回路が電力制御機能と電源断時点の出力値を記憶する機能を有することになる。
【符号の説明】
【0031】
10 ニューロンコア部 30 重み値供給コントロール部
31 セレクタ 32-0~32-2 レジスタ
40 制御処理装置 41 主制御装置
42 従属制御部 81 第1のインタフェース
82 第2のインタフェース 100 電力制御部
101 入力端子 110 入力信号検出手段
112 変化有無検出回路 112A 排他的論理和回路
112B 遅延回路 113 タイマ
114 指示回路 120 シナプス出力保持手段
121 比較器 122 論理記憶回路
124 Dラッチ回路 125 スイッチ回路
125A 第1のスイッチ 125B 第2のスイッチ
130 電力制御手段 200 シナプス回路
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子に到来する入力信号に重み値を掛ける演算処理を行うシナプス回路を備えるア
ナログニューロン演算器であって、
前記シナプス回路の出力信号を保持するシナプス出力保持手段と、
前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて少なくとも前記シナプス回路
へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御する電力制御部と
を具備することを特徴とするアナログニューロン演算器。
【請求項2】
前記電力制御部は、
前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかを検出する入力信号検出手段と、
前記入力信号検出手段の検出結果に応じて少なくとも前記シナプス回路へ電力を供給す
るか電力供給を停止するかを制御する電力制御手段と
を具備することを特徴とする請求項1に記載のアナログニューロン演算器。
【請求項3】
前記シナプス回路の出力側と前記シナプス出力保持手段との間には前記シナプス回路の
出力信号をディジタル化する比較器が接続され、
前記電力制御部は、前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて前記シナ
プス回路及び前記比較器へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御することを特
徴とする請求項2に記載のアナログニューロン演算器。
【請求項4】
前記入力信号検出手段は、
前記入力端子に入力する信号レベル変化の有無を検出する変化有無検出回路と、
前記変化有無検出回路により信号レベル変化無が検出されたときから、前記シナプス回
路により行われる演算に必要な所定時間を計時するタイマと、
前記タイマによる計時が完了すると、前記シナプス回路及び前記比較器へ電力の供給を
停止することを指示する指示回路と、
を具備し、
前記電力制御手段は、前記指示回路による指示信号を受けると、前記シナプス回路及び
前記比較器へ電力の供給を停止することを特徴とする請求項3に記載のアナログニューロ
ン演算器。
【請求項5】
前記シナプス出力保持手段は、
前記比較器の出力信号を記憶する論理記憶回路を具備し、
前記電力制御手段は、前記指示回路による指示信号を受けた場合にも前記論理記憶回路
へ電力を供給する制御を行うことを特徴とする請求項3または4に記載のアナログニュー
ロン演算器。
【請求項6】
前記論理記憶回路は、
前記比較器の出力信号をラッチするラッチ回路と、
第1の電圧と第2の電圧との間に直列接続された第1のスイッチと第2のスイッチを有
し、この第1のスイッチと第2のスイッチの出力点を出力端子とするスイッチ回路であっ
て、前記ラッチ回路に記憶されている論理値に応じて前記第1のスイッチと前記第2のス
イッチが開閉するスイッチ回路と
を具備することを特徴とする請求項5に記載のアナログニューロン演算器。
【請求項7】
入力端子に到来する入力信号に重み値を掛ける演算処理を行うシナプス回路と、前記シ
ナプス回路の出力信号を保持するシナプス出力保持手段とを備えるアナログニューロン演
算器の電力制御方法であって、
前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかを検出する入力信号検出ステップと、
前記入力信号検出ステップの検出結果に応じて少なくとも前記シナプス回路へ電力を供
給するか電力の供給を停止するかを制御する電力制御ステップと
を具備することを特徴とするアナログニューロン演算器の電力制御方法。
【請求項8】
前記アナログニューロン演算器における、前記シナプス回路の出力側と前記シナプス出
力保持手段との間には、前記シナプス回路の出力信号をディジタル化する比較器が接続さ
れ、
前記電力制御ステップでは、前記入力端子に入力信号が到来したか途絶えたかに応じて
前記シナプス回路及び前記比較器へ電力を供給するか電力の供給を停止するかを制御する
ことを特徴とする請求項に記載のアナログニューロン演算器の電力制御方法。
【請求項9】
前記電力制御ステップは、
前記入力端子に入力する信号レベル変化の有無を検出する変化有無検出ステップと、
前記変化有無検出ステップにより信号レベル変化無が検出されたときから、前記シナプ
ス回路により行われる演算に必要な所定時間を計時する計時ステップと、
前記計時ステップによる前記所定時間の計時が完了すると、前記シナプス回路及び前記
比較器へ電力の供給を停止することを指示する指示ステップと、
を具備し、
前記電力制御ステップでは、前記指示ステップによる指示を受けると、前記シナプス回
路及び前記比較器へ電力の供給を停止することを特徴とする請求項8に記載のアナログニ
ューロン演算器の電力制御方法。
【請求項10】
前記比較器を用いて、前記シナプス回路の出力信号をディジタル化するディジタル化ス
テップと、
前記ディジタル化ステップにより得られた出力信号を論理記憶回路に記憶する記憶ステ
ップとを具備し、
前記電力制御ステップでは、前記指示ステップによる指示信号を受けた場合にも前記論
理記憶回路へ電力を供給する制御をすることを特徴とする請求項9に記載のアナログニュ
ーロン演算器の電力制御方法。
【請求項11】
前記論理記憶回路は、
前記比較器の出力信号をラッチするラッチ回路と、
第1の電圧と第2の電圧との間に直列接続された第1のスイッチと第2のスイッチを有
し、この第1のスイッチと第2のスイッチの出力点を出力端子とするスイッチ回路と、
を具備し、
前記ラッチ回路に保持されている論理値に応じて前記第1のスイッチと前記第2のスイ
ッチを開閉するスイッチ開閉ステップ
を具備することを特徴とする請求項10に記載のアナログニューロン演算器の電力制御
方法。