(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072410
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】焼却炉
(51)【国際特許分類】
F23G 5/00 20060101AFI20220510BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
F23G5/00 E ZAB
F23G5/50 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181822
(22)【出願日】2020-10-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 株式会社大川原製作所が、湖北環境衛生組合 石岡クリーンセンターに納品した焼却炉「型式番号ACE850A」に対して、山崎日出夫及び山内康史が発明した焼却炉に変更するための改造を、令和2年5月6~12日に該石岡クリーンセンター内で施した。 株式会社大川原製作所が、焼却炉「型式番号ACE850A」に対して令和2年5月6~12日に施した改造内容と改造による効果を記した報告書を、令和2年5月15日に湖北環境衛生組合に提出した。
(71)【出願人】
【識別番号】000149310
【氏名又は名称】株式会社大川原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】山崎 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】山内 康史
【テーマコード(参考)】
3K062
【Fターム(参考)】
3K062CA01
3K062CB03
3K062DA01
3K062DB28
(57)【要約】
【課題】クリンカの生成を抑制した焼却炉を提供する。
【解決手段】上記課題を解決する本発明の焼却炉1は、被焼却物BMが燃焼することで炎が形成される燃焼ゾーンBZと燃焼ゾーンBZよりも上方に設けられた排気ゾーンEZとを炉内に有する焼却炉本体2と、炉内に水滴を供給する水滴供給装置8とを備え、この水滴供給装置8は、燃焼ゾーンBZであって被焼却物BMよりも上方において蒸発する径の水滴を供給するものであることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼却物が燃焼することで炎が形成される燃焼ゾーンと該燃焼ゾーンよりも上方に設けられた排気ゾーンとを炉内に有する焼却炉本体と、
前記炉内に水滴を供給する水滴供給装置とを備え、
前記水滴供給装置は、前記燃焼ゾーンであって前記被焼却物よりも上方において蒸発する径の水滴を供給するものであることを特徴とする焼却炉。
【請求項2】
前記水滴供給装置は、前記排気ゾーンの上部を画定する面に配置された上部ノズルを有するものであり、
前記上部ノズルは、円錐状に水滴を放出するものであることを特徴とする請求項1記載の焼却炉。
【請求項3】
前記上部ノズルは、一流体ノズルであることを特徴とする請求項2項記載の焼却炉。
【請求項4】
前記水滴供給装置は、前記焼却炉本体の側壁に配置された側面ノズルを有するものであり、
前記側面ノズルは、前記焼却炉本体の炉底に平行に拡がる扇状に水滴を放出するものであることを特徴とする請求項1記載の焼却炉。
【請求項5】
前記炉内の温度を測定する温度測定装置と、
前記水滴供給装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記温度測定装置の測定結果に基づいて、前記水滴供給装置による水滴の供給開始と供給停止を切り替えるものであることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか1項記載の焼却炉。
【請求項6】
前記炉内に配置され、回転する上下方向に延在した回転軸と、該回転軸から水平方向に向かって放射状に突出した複数のアームと、該アームから下方に向かって突出した攪拌部とを有する攪拌装置を備えていることを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項記載の焼却炉。
【請求項7】
被焼却物が燃焼することで炎が形成される燃焼ゾーンと該燃焼ゾーンよりも上方に配置された排気ゾーンとを炉内に有する焼却炉本体と、
前記炉内に水滴を供給する供給口を有する水滴供給装置とを備え、
前記水滴供給装置は、係数Aを0.168以上0.312以下としたとき下記数式1を満たす水滴径の水滴を前記炉内に供給するものであることを特徴とする焼却炉。
Y=AX0.34・・・数式1
ここで、Yは前記水滴径(mm)、Xは前記供給口から前記燃焼ゾーンまでの上下方向の距離(m)を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被焼却物を焼却する焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、汚泥や廃プラスチックなどの被焼却物を焼却する焼却炉が知られている。この焼却炉は、炉底側の燃焼ゾーンと該燃焼ゾーンよりも上方に設けられた排気ゾーンとを炉内に有する焼却炉本体を備えている。燃焼ゾーンは、被焼却物が燃焼することで炎が形成される領域である。排気ゾーンは、燃焼脱臭や低濃度未燃ガスの燃焼などが行われるための領域であり、燃焼ゾーンで燃焼し切れなかったガス状の成分等が燃焼される。焼却炉では、運用上の都合で被焼却物の焼却量を増加させるために、時間あたりの被焼却物の炉内への投入量を出来る限り増加させたいという要求がある。しかしながら、被焼却物の時間あたりの投入量を増加させると、被焼却物の燃焼により炉内の温度が上昇し、焼却炉から排気される焼却炉排気も高温になる。炉内が高温になりすぎると、被焼却物を焼却した際に発生する燃焼灰からクリンカ(主に溶融灰による塊状物)が生成され、そのクリンカにより被焼却物の攪拌や燃焼及び燃焼灰の炉外への排出が阻害されてしまうことがある。炉内が高温になる原因としては、投入される被焼却物の発熱量が想定より高い場合があることも一因にある。また、焼却炉排気が高温になりすぎると、焼却炉よりも焼却炉排気の流れにおける後流にある排気処理装置で焼却炉排気が処理できなくなってしまうことがある。さらに、排気処理装置を傷めてしまう虞もある。このため、炉内に投入する前の被焼却物に水を噴霧して被焼却物を濡らしてから炉内に投入することで、炉内の温度上昇を抑制しつつ被焼却物の投入量を増加させる、あるいは発熱量の高い被焼却物の焼却が行われている。
【0003】
焼却炉では、焼却炉排気が高まり過ぎて所定温度を超えたときには被焼却物の投入を停止して燃焼を抑制する必要がある。炉内に投入する前の被焼却物を濡らしてから炉内に投入する焼却方法では、被焼却物の投入を停止することあるいは減らすことで炉内への水分の供給も停止あるいは減少してしまう。このため、被焼却物の投入の停止あるいは減少により、炉内に残留している被焼却物の燃焼が促進されて炉内の温度が一気に高まってしまう。しかも、残留している被焼却物の燃焼が完了すると、今度は炉内の温度が一気に低下してしまう。これらのため、炉内に投入する前の被焼却物に水を噴霧して被焼却物を濡らしてから炉内に投入する焼却炉は、炉内の温度が不安定になりがちであるといった問題があり、焼却炉の所定の処理能力を低下させる可能性の高い手段でもある。また、炉内に投入する前の被焼却物へ供給する水の量が多いと、炉内に投入する前の被焼却物が水の付着力によって塊になり、被焼却物を運ぶコンベアが詰まってしまう虞もある。さらに、被焼却物を貯留しているホッパ内で水を供給した場合は、ホッパ内で被焼却物がブリッジを形成することもある。なお、ブリッジとは、ホッパの対向する壁と壁との間において被焼却物が架け渡された状態をいう。ブリッジが発生すると、ホッパからコンベアに被焼却物が落下せず被焼却物の供給不良が発生することがある。
【0004】
これに対し、炉内に水を供給するノズルを焼却炉本体の天井部分に設けることで、焼却炉排気の温度を低下させる焼却炉も知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の焼却炉では、被焼却物の供給とは独立して炉内に水を供給できるので炉内の温度を安定させやすい。また、被焼却物が水によって塊になってブリッジが発生したりコンベアが詰まってしまう虞もない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、炉内に水を概ね0.2mm以下の液滴径で供給する焼却炉では、供給された水が排気ゾーンで蒸発してしまうことが分かった。供給された水が排気ゾーンで蒸発することで、焼却炉排気の高温化を抑制する効果は得られる。しかしながら、排気ゾーンにある排ガスは焼却炉本体の外部に排気されてしまうので、炉内に水を供給する焼却炉では、燃焼ゾーンの温度を低下する効果は殆ど得られない。このため、燃焼ゾーンでは発生した燃焼灰からクリンカが生成される虞がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、クリンカの生成を抑制した焼却炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明の焼却炉は、被焼却物が燃焼することで炎が形成される燃焼ゾーンと該燃焼ゾーンよりも上方に設けられた排気ゾーンとを炉内に有する焼却炉本体と、
前記炉内に水滴を供給する水滴供給装置とを備え、
前記水滴供給装置は、前記燃焼ゾーンであって前記被焼却物よりも上方において蒸発する径の水滴を供給するものであることを特徴とする。
【0009】
本発明の焼却炉によれば、前記燃焼ゾーンにおける温度を低下させてクリンカの生成を抑制することができる。また、前記被焼却物が濡れてしまうことも抑制できる。
【0010】
また、本発明の焼却炉において、前記水滴供給装置は、前記排気ゾーンの上部を画定する面に配置された上部ノズルを有するものであり、
前記上部ノズルは、円錐状に水滴を放出するものであってもよい。
【0011】
前記上部ノズルから円錐状に水滴を放出するので、前記炉内の広い範囲に水滴を行き渡らせて、該炉内の広い範囲で温度を低下させることができる。なお、前記上部ノズルは、前記排気ゾーンにおいて水滴を放出するものであってもよい。
【0012】
また、本発明の焼却炉において、前記上部ノズルは、一流体ノズルであってもよい。
【0013】
一流体ノズルを用いることで、水滴が細かくなりすぎず適度な径の水滴が供給できる。しかも、二流体ノズルと比較して気体を供給するためのコンプレッサも不要でありノズル自体も安価であることが多いため、前記水滴供給装置を安価に構成できる。
【0014】
さらに、本発明の焼却炉において、前記水滴供給装置は、前記焼却炉本体の側壁に配置された側面ノズルを有するものであり、
前記側面ノズルは、前記焼却炉本体の炉底に平行に拡がる扇状に水滴を放出するものであってもよい。
【0015】
前記側面ノズルから扇状に水滴を放出するので、前記燃焼ゾーンの広い範囲に水滴を行き渡らせて、燃焼ゾーンの広い範囲で温度を低下させることができる。
【0016】
またさらに、本発明の焼却炉において、前記炉内の温度を測定する温度測定装置と、
前記水滴供給装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記温度測定装置の測定結果に基づいて、前記水滴供給装置による水滴の供給開始と供給停止を切り替えるものであってもよい。
【0017】
前記炉内の温度に応じて前記水滴供給装置から前記炉内に水滴を供給することができる。なお、前記水滴供給装置が水滴を供給している状態として、連続供給状態と間欠供給状態とがあってもよい。さらに、前記連続供給状態における前記水滴供給装置から供給される単位時間あたりの水量と、前記間欠供給状態における前記水滴供給装置が水滴を供給しているときの通水時における単位時間あたりの水量とは同一の水量であってもよい。
【0018】
加えて、本発明の焼却炉において、前記炉内に配置され、回転する上下方向に延在した回転軸と、該回転軸から水平方向に向かって放射状に突出した複数のアームと、該アームから下方に向かって突出した攪拌部とを有する攪拌装置を備えていてもよい。
【0019】
前記攪拌装置により前記炉内を攪拌することで、該炉内の温度がより均一になりやすく、結果としてクリンカの生成をより抑制できる。
【0020】
また、上記目的を解決する本発明の焼却炉は、被焼却物が燃焼することで炎が形成される燃焼ゾーンと該燃焼ゾーンよりも上方に配置された排気ゾーンとを炉内に有する焼却炉本体と、
前記炉内に水滴を供給する供給口を有する水滴供給装置とを備え、
前記水滴供給装置は、係数Aを0.168以上0.312以下としたとき下記数式1を満たす水滴径の水滴を前記炉内に供給するものであることを特徴とする焼却炉。
Y=AX0.34・・・数式1
ここで、Yは前記水滴径(mm)、Xは前記供給口から前記燃焼ゾーンまでの上下方向の距離(m)を示す。
【0021】
この焼却炉によれば、前記燃焼ゾーンにおける炎の部分に水滴を到達させて該燃焼ゾーンにおける燃えている被焼却物の上部近傍の温度を低下させることで、クリンカの生成を抑制することができる。また、この炎の部分で水滴はほぼ蒸発してしまうので前記被焼却物が濡れてしまうことも抑制できる。被焼却物が濡れると、上述した様な濡れた被焼却物を焼却炉に投入した状況と類似の現象を生じることになる。なお、前記水滴径は、ザウタミーン径(SMD)である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の焼却炉によれば、クリンカの生成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態である焼却炉の系統図である。
【
図2】(a)は、
図1に示した焼却炉本体の具体的な構成例を示す平面図であり、(b)は、同図(a)に示した焼却炉本体の側壁の一部を切り欠いて示した正面図である。
【
図3】
図1に示した焼却炉の制御装置を表すブロック図である。
【
図4】
図1に示した焼却炉の動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示した焼却炉の定常運転における制御を説明する制御説明図である。
【
図6】(a)は、焼却炉の変形例を示す
図2(a)と同様の平面図であり、(b)は、同図(a)に示した焼却炉本体の側壁の一部を切り欠いて示した
図2(b)と同様の正面図である。
【
図7】第2実施形態の焼却炉における系統図である。
【
図8】
図7に示した焼却炉の定常運転における制御を説明する制御説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態である焼却炉の系統図である。
【0025】
図1に示すように、この実施形態の焼却炉1は、焼却炉本体2と、投入装置3と、攪拌装置4と、燃焼空気供給装置5と、灰抜出装置6と、バーナ7と、水滴供給装置8と、排気温度測定装置T1と、燃焼ゾーン温度測定装置T2と、制御装置9(
図3参照)を備えている。この焼却炉1は、廃プラスチックや下水処理場などから排出される汚泥などの被焼却物BMを焼却するものである。
【0026】
焼却炉本体2は、耐火断熱材によって構成され、頂部に排気口21が形成された中空状のものである。焼却炉本体2の炉内には、燃焼ゾーンBZと排気ゾーンEZとが形成されている。燃焼ゾーンBZは、被焼却物BMが燃焼することで炎が形成される領域であり、焼却炉本体2の炉底2a側に形成されている。
図1では燃焼ゾーンBZを細い一点鎖線で囲んで示している。この燃焼ゾーンBZは、炉底2aに100~200mm程度堆積した燃焼灰よりも上の領域である。本実施形態の燃焼ゾーンBZは、炉底2aから略1.1mの高さの領域である。被焼却物BMは、その燃焼灰の上に積み重なるように炉内に投入され、攪拌装置4によって炉底2aから0.1m~0.2m前後の高さに均される。
図1では、炉内にある被焼却物BMをハッチングを付して示している。排気ゾーンEZは、燃焼ゾーンBZの直上から排気口21までの間の領域である。
図1では排気ゾーンEZを細い破線で囲んで示している。排気ゾーンEZは、フリーボードと称されることもある空間である。この排気ゾーンEZにおいて燃焼脱臭や低濃度未燃ガスの燃焼などが行われる。排気ゾーンEZには、排気口21から排気された焼却炉排気の一部が循環ガスとして導入されている。循環ガスは、後述する回転軸41の回転方向とは反対方向に向かって炉内に吹き込まれる。この循環ガスは、燃焼ゾーンBZで生じた高温の排気ガスと排気ゾーンEZにおいて混合される。
【0027】
投入装置3は、中間ホッパ31と、被焼却物供給コンベア32とを備えている。中間ホッパ31は、ホッパ部311と、送出部312とから構成されている。ホッパ部311は、被焼却物BMを一時的に貯留する部分である。送出部312は、ホッパ部311に貯留された被焼却物BMを送り出す部分である。送出部312は、スクリューコンベアで構成されている。被焼却物供給コンベア32は、送出部312によって送り出された被焼却物BMを受け入れ、受け入れた被焼却物BMを焼却炉本体2の炉内に投入するものである。被焼却物供給コンベア32も、スクリューコンベアで構成されている。なお、被焼却物供給コンベア32を省略して送出部312から直接炉内に被焼却物BMを投入してもよい。また、被焼却物BMに汚泥などの湿ったものが含まれる場合、事前に乾燥機で乾燥させたものをホッパ部に貯留してもよい。さらに、ホッパ部は、汚泥などの発熱量が比較的低いものと廃プラスチックなどの発熱量が比較的高いものを両方貯留するものであってもよい。この場合、送出部312は、これらの発熱量が異なるものが均一に分散するように混ぜ合わせるながら送り出すものであってもよい。
【0028】
攪拌装置4は、回転軸41と、駆動機構42と、複数のアーム43,43・・・と、複数の攪拌部44,44・・・とを有する。回転軸41は、上下方向に延在した中空の軸であり上側部分が焼却炉本体2の炉底2aから上方に向かって炉内に突出している。回転軸41の上端は閉塞され、下端は燃焼空気供給装置5に接続されている。駆動機構42は、回転軸41を回転させるものである。駆動機構42は、電動機421(
図2(b)参照)を備えている。その電動機421を駆動することで、回転軸41は上下方向を回転中心として回転する。回転軸41が回転すると、各アーム43,43・・・と各攪拌部44,44・・・は回転軸41とともに回転する。複数のアーム43,43・・・は、回転軸41の上端部分から水平方向に向かって放射状に突出している。本実施形態のアーム43は、上方から見て十字状になるように回転軸41の上端部分から4本突出して設けられている。アーム43も内部が中空をしており、アーム43の中空部分は回転軸41の中空部分と連続している。またアーム43の突出端は閉塞されている。複数の攪拌部44,44・・・は、各アーム43,43・・・から下方に向かってそれぞれ突出している。攪拌部44も内部が中空をしており、攪拌部44の中空部分はアーム43の中空部分と連続している。攪拌部44の側面には、中空部分に連なった複数の吹出孔が形成されている。すなわち、回転軸41と各アーム43,43・・・と攪拌部44,44・・・の内部は連続しており、後述する燃焼空気供給ファン51から吹き出された燃焼空気の流通経路になっている。攪拌部44の吹出孔は、流通経路を通ってきた燃焼空気が吹き出す、回転方向とは反対方向に向かって開口した孔である。
【0029】
燃焼空気供給装置5は、燃焼空気供給ファン51とダンパ52を有している。燃焼空気供給ファン51は、燃焼空気を吸い込んで回転軸41に向かって送り出すものである。ダンパ52は、燃焼空気供給ファン51から送出する燃焼空気(通常は外気)の風量を調整するものである。燃焼空気供給ファン51から送り出された燃焼空気は、回転軸41の下端から燃焼空気の流通経路を通って攪拌部44の側面に形成された複数の吹出孔から回転軸41の回転方向とは反対方向に向かって吹き出す。この燃焼空気によって被燃焼物の燃焼が促進される。また、この燃焼空気の吹き出しと、上述の循環ガスの炉内への導入によって炉内には、回転軸41の回転方向とは反対方向に向かう旋回流が形成される。なお、燃焼空気は、加熱された空気であってもよい。
【0030】
灰抜出装置6は、不図示の灰抜出コンベアを備えており、その灰抜出コンベアを駆動することで炉低に堆積した砂を炉外に排出する。
【0031】
バーナ7は、焼却炉1の始動時において燃焼を開始する際や炉内の温度が低下した際に用いるものである。このバーナ7は、燃焼ゾーンBZに向けて炎を吹き出すように配置されている。バーナ7には不図示のバーナ用ファンが組み込まれている。バーナ7の火力は強と弱の2段階に調整することができる。ただし、バーナ7は火力調整できないものでもよく、3段階以上に調整できるものであってもよい。また、バーナ7は複数設けられていてもよい。
【0032】
水滴供給装置8は、炉内に水滴を供給(散布)することによって、燃焼ゾーンBZや排気ゾーンEZの過熱を抑制するものである。水滴供給装置8は、上部ノズル81と水滴供給弁82とを有している。上部ノズル81は、焼却炉本体2の天井部分に配置されている。すなわち、上部ノズル81は、排気ゾーンEZの上部を画定する面に配置されている。本実施形態の上部ノズル81は、一流体ノズルであり、水滴供給弁82を通って送られてきた水を適度な径の水滴にして上部供給口811から炉内に供給する。上部供給口811から供給される水滴は、上部供給口811から燃焼ゾーンBZまでの上下方向の距離(高さ)に応じてノズルの種類を選択することで、燃焼ゾーンBZであって被焼却物BMよりも上方において蒸発する径になるように設定されている。本実施形態における上部ノズル81が放出する水滴は、0.26(mm)であり、上部供給口811から燃焼ゾーンBZまでの高さは1.2(m)である。上部ノズル81として、下記数式1を満たす水滴径の水滴を供給するノズルを用いることで、大半の水滴が燃焼ゾーンBZに到達するとともに炉底2aにある被焼却物BMよりも上で蒸発して消滅する。
Y=AX0.34・・・数式1
ここで、Yは水滴径(mm)、Xは供給口から燃焼ゾーンBZまでの上下方向の距離(m)、係数Aは、0.168以上0.312以下の範囲である。なお、Yの水滴径は、ザウタミーン径(SMD)である。数式1は、焼却炉において水滴の供給が必要になる平均的な炉内温度において水滴が蒸発するまでの上下方向の距離(X)と水滴径(Y)の関係を実験により求め、その距離と水滴径の関係を回帰分析することで得られた式である。係数Aの範囲は、水滴の供給が必要になる炉内温度の範囲と、燃焼ゾーンBZの高さと、水滴径のばらつきを考慮して計算により得られた範囲であり、0.168未満では、水滴の多くが燃焼ゾーンBZに到達する前に蒸発して消滅してしまい、0.312を超えると水滴の多くが被燃焼物BMまで達して被燃焼物BMを濡らしてしまう。また、係数Aが、0.228以上0.252以下になるような水滴を供給するノズルを用いた場合、水滴径のばらつきを考慮してもほぼ全ての水滴が燃焼ゾーンBZに到達するとともに被焼却物BMよりも上で蒸発して消滅する。また、この場合、大半の水滴が攪拌装置4よりも上で蒸発して消滅する。本実施形態の上部ノズル81は、排気ゾーンEZの上側部分から下方にある燃焼ゾーンBZの被焼却物BMに向かって円錐状に拡がるように水滴を放出する。こうすることで、炉内の広い範囲に水滴を行き渡らせて、炉内の広い範囲の温度を低下させることができる。
【0033】
水滴供給弁82は、開閉することで上部ノズル81への給水と断水を切り替える電磁弁である。水滴供給弁82を開放した時に上部ノズル81から炉内に供給される水滴の単位時間あたりの供給量は一定である。ただし、電磁弁に代えて流量調整が可能な電動弁で水滴供給弁82を構成することで単位時間当たりの供給量を調整可能にしてもよい。なお、水の供給量が調整可能なポンプを水源に設置し、水滴供給弁82の代わりにそのポンプから送り出す水の量で単位時間当たりの供給量を調整する態様にしてもよい。
【0034】
排気温度測定装置T1は、焼却炉本体2から排気される直前の焼却炉排気の温度を測定するものであり、先端にある温度測定部分が排気ゾーンEZの上端部に挿入されている。排気温度測定装置T1は、排気口21近傍の焼却炉排気の温度である排気温度を測定する。また、燃焼ゾーン温度測定装置T2は、燃焼ゾーンBZの温度を測定するものであり、先端にある温度測定部分が燃焼ゾーンBZに挿入されている。なお、焼却炉本体2で発生した焼却炉排気は、焼却炉本体2の上端に設けられた排気口21から排気され、焼却炉排気の流れにおける後流に設けられた不図示の排気処理装置で処理され、一部が循環ガスとして再度焼却炉本体2の炉内に導入される。
【0035】
図2(a)は、
図1に示した焼却炉本体の具体的な構成例を示す平面図である。また、
図2(b)は、同図(a)に示した焼却炉本体の側壁の一部を切り欠いて示した正面図である。なお、
図2(b)では、焼却炉本体2の左下側部分手前にある側壁を切り欠いて示している。また、
図2(a)および
図2(b)では、排気温度測定装置T1と、燃焼ゾーン温度測定装置T2は図示省略している。
【0036】
図2(a)および
図2(b)に示すように、焼却炉本体2は、4本の脚291,291・・・を有する台29の上に設置されている。焼却炉本体2は、下側が円筒状の側壁であり、上側が排気ゾーンの上部を画定する円錐状の天井壁を有する中空の容器である。本実施形態の焼却炉本体2の炉底2aから排気口21までの上下方向の距離(高さ)は4mであり、円筒部分の内径は直径3.6mである。この焼却炉本体2には、2つの被焼却物供給コンベア32,32と、2つのバーナ7、7が前記側壁に固定され、4つの上部ノズル81,81が前記円錐状の天井壁に固定されている。上部ノズル81を複数設けることで、炉内のより広い範囲に水滴を行き渡らせて、炉内の広い範囲で温度を低下させることができる。上部ノズル81は、平面視において2つの被焼却物供給コンベア32,32によって被焼却物BMが投入され燃焼する位置の近傍に偏って配置されている。これは、この位置においてより被焼却物BMが燃焼し高温になりやすいためである。攪拌装置4の回転軸41と各アーム43,43・・・と攪拌部44,44・・・は、
図2(a)に円弧状の矢印で示すように平面視で反時計回りに回転する。2つの被焼却物供給コンベア32,32から投入された被焼却物BMは、投入された後に攪拌部44,44・・・により平面視で時計回りに徐々に移動されるため、上部ノズル81もまたこれに合わせ、被焼却物BMが投入装置3,3から落下する位置よりも平面視で時計回り側に少しずれた位置に配置されている。ただし、上部ノズル81は、被焼却物BMが投入装置3,3から落下する位置に対して平面視で均等に配置されていてもよい。また、上部ノズル81の数は4つ以外でもよい。尚、天井壁の周方向の360°全周に均等に上部ノズル81を複数に配置することもできる。これらの上部ノズル81,81・・・からは、水が水滴状になって供給される。なお、この
図2(b)に示すように、この具体例では、上部ノズル81は、焼却炉本体2の天井面の傾斜部分下端付近から、真下に対して傾斜した方向に向かって円錐状に水滴を放出する例が示されている。しかし、
図1に示したように、上部ノズル81は、真下に向かって円錐状に水滴を放出する構成としてもよい。すなわち、上部ノズル81が水滴を放出する方向はどの方向でも構わない。ただし、上部ノズル81は、燃焼ゾーンBZに向かって、且つ被焼却物BMが燃焼しやすい範囲を指向して水滴を放出することが好ましい。なお、
図1および
図2(b)では、水滴が直線状に散布されるように示されているが、実際の水滴はガスや炎の流れ、重力の影響を幾らか受けて落下していく。
図3は、
図1に示した焼却炉の制御装置を表すブロック図である。
【0037】
制御装置9は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)90と、投入装置制御回路91と、燃焼空気供給装置制御回路93と、灰抜出装置制御回路94と、バーナ制御回路95と、水滴供給装置制御回路96と、排気処理装置制御回路97とを備えている。PLC90は、内部にCPUとメモリを備えており、PLC90の代わりにハードワイヤーロジックであってもよい。PLC90は、排気温度測定装置T1と燃焼ゾーン温度測定装置T2が接続されており、接点信号またはアナログ信号が入力される。排気温度測定装置T1が測定した排気温度と燃焼ゾーン温度測定装置T2が測定した燃焼ゾーン温度は接点信号またはアナログ信号としてPLC90に入力される。
【0038】
投入装置制御回路91は、PLC90からの出力信号に従い、投入装置3の送出部312と被焼却物供給コンベア32の動作を制御する回路である。燃焼空気供給装置制御回路93は、PLC90からの出力信号に従い、燃焼空気供給装置5の燃焼空気供給ファン51の動作を制御する回路である。灰抜出装置制御回路94は、PLC90からの出力信号に従い、灰抜出装置6の灰抜出コンベアの動作を制御する回路である。バーナ制御回路95は、PLC90からの出力信号に従い、バーナ7に設けられたバーナ用ファンの動作とバーナ7における着火動作および消火動作を制御する回路である。水滴供給装置制御回路96は、PLC90からの出力信号に従い、水滴供給弁82の動作を制御する回路である。排気処理装置制御回路97は、焼却炉本体2から排気された焼却炉排気を処理する不図示の排気処理装置(集塵装置、排気ファン等を含む設備)の動作を制御する回路である。
図4は、
図1に示した焼却炉の動作を示すフローチャートである。このフローチャートにおける動作は、手操作または制御装置9からの信号によって実行される動作である。
【0039】
図4に示すように、設備の起動を開始するとまず排気処理装置が起動する(ステップS11)。次に、攪拌装置4の電動機421を駆動することで、回転軸41と各アーム43,43・・・と攪拌部44,44・・・の回転を開始させる(ステップS12)。そして、燃焼空気供給装置5の燃焼空気供給ファン51と、バーナ7に設けられたバーナ用ファンを起動する(ステップS13)。その後、バーナ7を着火する(ステップS14)。燃焼ゾーン温度測定装置T2から入力される温度が、たとえば550℃などの所定温度以上になったら(ステップS15でYES)、投入装置3の送出部312と被焼却物供給コンベア32の動作を開始することで炉内への被焼却物BMの投入を開始する。また、灰抜出装置6の灰抜出コンベアを起動して焼却炉本体2の炉底2aに堆積した灰の抜出を開始する(以上ステップS16)。なお、灰抜出コンベアは、起動した後も炉底2aに堆積した灰の量が所定量を超えたときのみ駆動するように構成してもよく、定期的に動作と停止を繰り返すように構成してもよい。以上で焼却炉1の起動動作が完了し、後に詳述する定常運転を開始する(ステップS17)。
【0040】
定常運転が完了し、焼却炉1を停止する際は、まず、投入装置3の送出部312と被焼却物供給コンベア32の動作を停止することで被焼却物BMの炉内への投入を停止する。また、灰抜出コンベアを停止する(以上ステップS18)。なお、未燃物が残らぬようにバーナ7による追い焚き燃焼を行い、その後にバーナを消火する(ステップS19)。被焼却物BMの投入を停止した後、焼却炉本体2の炉内にある被焼却物BMが燃焼することで一時的に炉内の温度が上昇することもあるが、被焼却物BMは徐々に減少し、バーナ用ファンから送られた空気、燃焼空気供給ファン51から送られた燃焼空気および排気処理装置から送り込まれる循環ガスによって炉内の温度は低下していく。燃焼ゾーン温度測定装置T2から入力される温度が、たとえば550℃などの所定温度以下になったら(ステップS20でYES)、遅延後に燃焼空気供給装置5の燃焼空気供給ファン51と、バーナ7に設けられたバーナ用ファンを停止する(ステップS21)。そして、攪拌装置4の電動機421を停止することで、回転軸41と各アーム43,43・・・と攪拌部44,44・・・の回転を停止させる(ステップS22)。そして最後に、排気処理装置を停止する(ステップS23)。
【0041】
図5は、
図1に示した焼却炉の定常運転における焼却炉温度制御当該部分を説明する制御説明図である。この
図5には、縦軸に示された排気温度の温度に応じた、バーナ7と水滴供給装置8と投入装置3の動作が示されている。この制御説明図に示された動作も、手操作または制御装置9からの信号によって実行される動作である。また、
図5に示された排気温度は、排気温度測定装置T1が測定した温度である。なお、
図5に示された排気温度は単なる一例であり、焼却炉1の大きさや被焼却物の種類などに応じて適宜設定される。
【0042】
図5示すように、排気温度が550℃を超えて658℃未満までは、バーナ7を高火力で運転し、投入装置3によって被焼却物BMを炉内に連続投入する。排気温度が685℃以上673℃未満では、バーナ7を低火力で運転し、投入装置3によって被焼却物BMを炉内に連続投入する。なお、定常運転においては、投入した被焼却物BMは、攪拌装置4によって均されながら燃焼し、燃焼ゾーンBZには、旋回流に沿った炎が立ち上がって旋回炎が形成される。排気温度が673℃以上695℃未満では、バーナ7を消火し、被焼却物BMを炉内に連続投入する。
【0043】
排気温度が695℃以上710℃未満では、水滴供給装置8の水滴供給弁82を繰り返し開閉することで炉内に水滴を間欠供給し、被焼却物BMを炉内に連続投入する。この水滴の間欠供給における水滴を供給しているときの供給水量は、1つの上部ノズル81あたり4L/minで合計16L/minである。なお、水滴供給弁82の開時間と閉時間はPLC90のメモリやタイマー等に記憶されている。たとえば、水滴供給弁82の開時間と閉時間が同一である場合、水滴の間欠供給における総合的な供給水量は、1つの上部ノズル81あたり2L/min相当で合計8L/min相当になる。排気温度が710℃以上725℃未満では、水滴供給装置8の水滴供給弁82を開放したままにすることで炉内に水滴を連続供給し、被焼却物BMも炉内に連続投入する。この水滴の連続供給における供給水量は、1つの上部ノズル81あたり4L/minで合計16L/minである。排気温度が725℃以上740℃未満では、水滴供給装置8によって炉内に水滴を連続供給し、被焼却物BMは炉内に間欠投入する。なお、この間欠投入における投入装置3の駆動時間と停止時間はPLC90のメモリやタイマー等に記憶されている。排気温度が740℃以上では、水滴供給装置8によって炉内に水滴を連続供給し、投入装置3を停止させて被焼却物BMの炉内への投入を休止する。また、排気温度が820℃以上では高温警報を発報表示し、550℃未満では低温警報を発報表示する。なお、高温警報や低温警報は、制御装置9に設けられた不図示の表示装置や焼却炉1に設けられた不図示の警報ランプなどを用いて表示される。なお、定常運転終了後も、排気温度が710℃よりも低下するまでは水滴供給装置8による炉内への水滴の連続供給は継続され、排気温度が695℃以上710℃未満では炉内への水滴の間欠供給が行われる。
【0044】
以上説明した本実施形態の焼却炉1は、以下の効果を奏する。まず、水滴供給装置8によって炉内に供給される水滴が燃焼ゾーンBZに到達するので、水滴の供給により燃焼ゾーンBZにおける温度が低下する。これにより、被焼却物BMの投入量を増加させても、あるいは発熱量が高い被焼却物が投入されても、クリンカの生成を抑制することができる。加えて、大半の水滴が攪拌装置4よりも上で蒸発して消滅するので、攪拌装置4が水滴によって急冷されて耐久性が低下してしまうことも抑制できる。また、供給された水滴の殆どが被焼却物BMよりも上で蒸発して消滅するので、炉底2aにある被焼却物BMが濡れてしまうことも抑制できる。さらに、上部ノズル81に一流体ノズルを用いているので、水滴が細かくなりずぎず適度な径の水滴が供給できる。しかも、一流体ノズルは、気体を供給するためのコンプレッサも不要であり二流体ノズルと比較してノズル自体も安価であるため、水滴供給装置8を安価に構成できる。加えて、制御装置9は、排気温度測定装置T1が測定した温度に基づいて水滴供給装置8の動作を制御しているので、必要なときに炉内に水滴を供給することができる。またさらに、攪拌装置4により炉内を攪拌して被焼却物BMを均しているので、炉内の温度がより均一になりやすく、局所的な温度上昇によってクリンカが生成されてしまうことを抑制できる。、尚、本実施形態における変形例として、各アーム43,43・・・と攪拌部44,44・・・が、上部ノズル81からの水滴で濡れない回転位置に至るタイミングを検知して、このとき上部ノズル81からの水滴の供給を行う方法も可能である。これによれば各アーム43,43・・・と攪拌部44,44・・・が濡れることを避けながら、水滴を燃焼ゾーンBZの被焼却物BMの直上まで到達させ、直上の温度を低下させることが可能となる。
【0045】
続いて、これまで説明してきた焼却炉1の変形例について説明する。以下の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ構成要素の名称には、これまで用いた符号と同じ符号を付すことがあり、重複する説明は省略する。
【0046】
図6(a)は、焼却炉本体の変形例を示す
図2(a)と同様の平面図である。また、
図6(b)は、同図(a)に示した焼却炉本体の側壁の一部を切り欠いて示した
図2(b)と同様の正面図である。
【0047】
図6に示す焼却炉本体2は、先の実施形態に示した焼却炉本体2とは水滴供給装置8の配置と構成が異なる。水滴供給装置8は上部ノズル81に代えて側面ノズル85を備えている。側面ノズル85は焼却炉本体2の側壁に4つ配置されている。この側面ノズル85も、一流体ノズルであり、送られてきた水を適度な大きさの水滴にして側面供給口851から炉内に供給する。また、4つの側面ノズル85、85・・・それぞれは、焼却炉本体2の中心方向に向かって、焼却炉本体2の炉底2aに平行に拡がる、すなわち上下方向はつぶれ横方向に拡がる扇状に水滴を放出する。尚、側面ノズル85を焼却炉本体2の側壁の円周上に適宜の間隔を空けて複数を配置することもできる。この変形例では、側面ノズル85から放出した水滴はすぐに燃焼ゾーンBZに到達するので、水滴は細かくてもよい。しかし、この変形例では、燃焼ゾーンBZの上部空間を水滴で覆う様に水滴を放出させることが好ましい。このため、便宜的には側面供給口851から回転軸41までの距離と側面ノズル85から被焼却物BMまでの高さを考慮して水滴の径を決めればよい。すなわち、この側面ノズル85から放出した水滴が回転軸41近傍まで到達し、かつ被焼却物BMに到達する前に蒸発する水滴径の水滴を側面ノズル85から放出することが望ましい。前者は必須ではないが、水滴が回転軸41近傍まで到達することで、燃焼ゾーンBZの広い範囲を冷却することができる。また、側面ノズル85は、横方向に拡がる扇状に水滴を放出しているので燃焼ゾーンBZの広い範囲に水滴を行き渡らせて、燃焼ゾーンBZの広い範囲で温度を低下させることができる。ここで、水滴を回転軸41まで到達させるのは、燃焼ゾーンBZの上側部分の空間を水滴で覆う様にするのが目的であるので、側面ノズル85から放出する水滴は、炉底2aに平行に限らず、状況に応じて供給方向を若干排気ゾーンEZ側を向けての上方に指向させても構わない。なお、側面ノズル85を、燃焼ゾーンBZよりも上方(燃焼ゾーンBZに近接する排気ゾーンEZ)に配置してもよい。この場合、先の実施形態同様に、その側面ノズル85においても上述の数式1において係数Aが、0.168以上0.312以下になるような水滴を供給するノズルを用いることで、大半の水滴が燃焼ゾーンBZの上部空間を覆う様に水滴が供給され、被焼却物BMよりも上で蒸発して消滅する。また、係数Aが、0.228以上0.252以下になるような水滴を供給するノズルを用いることで、ほぼ全ての水滴が燃焼ゾーンBZに到達するとともに大半の水滴が攪拌装置4よりも上で蒸発して消滅する。
【0048】
次に、第2実施形態の焼却炉について説明する。
図7は、第2実施形態の焼却炉における系統図である。
【0049】
図7に示す焼却炉1は、
図1に示した焼却炉1とは、投入装置3に噴霧装置33が取り付けられている点が異なる。噴霧装置33は、噴霧ノズル331と噴霧水供給弁332とを備えている。噴霧ノズル331は、ホッパ部311の上側部分に設置されている。噴霧装置33は、噴霧ノズル331からホッパ部311内にある被焼却物BMに水を噴霧することで、炉内に投入する前の被焼却物BMを濡らすものである。噴霧水供給弁332は、開閉することで噴霧ノズル331への給水と断水を切り替える電磁弁である。また、図示省略するが、この第2実施形態の制御装置9には、PLC90等からの出力信号に従い、噴霧水供給弁332の動作を制御する噴霧装置制御回路が設けられている。
【0050】
図8は、
図7に示した焼却炉の定常運転における制御を説明する制御説明図である。なお、定常運転以外の制御は、
図4に示した先の実施形態の焼却炉1における制御と同様であるため説明は省略する。また、定常運転における噴霧装置33以外の動作は、
図5に示した先の実施形態の焼却炉1における制御と同様であるため説明を省略する。この
図8における制御説明図に示された動作も、制御装置9からの信号によって実行される動作である。
【0051】
図8示すように、排気温度が685℃未満では、噴霧水供給弁332は閉塞され、噴霧装置33は水を噴霧していない。排気温度が685℃以上700℃未満では、噴霧水供給弁332を繰り返し開閉することで噴霧装置33はホッパ部311内へ水を間欠噴霧する。この間欠噴霧における噴霧をしているときのホッパ部311内への噴霧水量は、4L/minである。なお、噴霧水供給弁332の開時間と閉時間はPLC90のメモリに記憶されている。たとえば、噴霧水供給弁332の開時間と閉時間が同一である場合、間欠噴霧における噴霧水量は、2L/min相当である。排気温度が700℃以上740℃未満では、噴霧水供給弁332を開放したままにすることで噴霧装置33はホッパ部311内に水を連続噴霧する。この連続噴霧における噴霧水量は4L/minである。排気温度が740℃以上では、噴霧水供給弁332を閉塞し、噴霧装置33は水の噴霧を休止する。また、定常運転終了後は、排気温度に関わらず噴霧水供給弁332を閉塞し、噴霧装置33は水の噴霧を停止する。
【0052】
この第2実施形態の焼却炉1においても、先の実施形態と同様の効果を奏する。特に、水滴供給装置8のみでは対応の難しい被焼却物BMであることが判明した場合、容易に追加設備として噴霧装置33を設けることが可能である。また、噴霧装置33によって被焼却物BMを濡らすことで、早期に炉内の温度を低下させることができる。なお、水滴供給装置8の補器として利用するため、噴霧装置33による噴霧水量を少なく抑えることができ、炉内に投入する前の被焼却物BMが水によって付着性が増して塊になることが抑制され、被焼却物供給コンベア32が詰まってしまうことも抑制される。また、噴霧装置33による噴霧水量が少ないので、ホッパ部311内で被焼却物BMがブリッジを形成する虞も抑制される。さらに、排気温度が高まり740℃に達して噴霧装置33による噴霧を休止した後も、水滴供給装置8による水滴の供給が継続されるので炉内の温度が急激に高まることは防止される。
【0053】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態の水滴供給装置は、常に同一径の水滴を供給しているが、例えば炉内の温度に応じて、例えば供給する水量を変えるなどにより、水滴径を変化させてもよい。また、側面ノズル85は、燃焼ゾーンBZに水滴を放出していたが、排気ゾーンEZに水滴を放出する構成としてもよい。
また、円錐状の天井壁の周方向の360°全周に均等に上部ノズル81を複数配置する構成である場合、あるいは円筒状の側壁の円周上に側面ノズル85を均等間隔に複数配置する構成である場合、燃焼ゾーンBZを放射温度計等の検出手段により計測し、所定値より高温の場所を検知し、その場所に水滴の供給可能な上部ノズル81、あるいは側面ノズル85から水滴を供給することで、その高温の場所が大きく変化する場合でも対応が可能である。
【0054】
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 焼却炉
8 水滴供給装置
BM 被焼却物
BZ 燃焼ゾーン
EZ 排気ゾーン