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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072416
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20220510BHJP
   C09D 11/30 20140101ALN20220510BHJP
【FI】
C09D11/101
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181830
(22)【出願日】2020-10-29
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】小倉 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】池堂 圭祐
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD21
4J039BA13
4J039BE25
4J039EA04
4J039EA37
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】低粘度であるためにインクジェット適性及び塗布性が向上し、かつ硬化後の塗膜の耐熱性が向上した活性エネルギー線硬化型組成物を得ること。
【解決手段】 下記(A)~(D)を含有し、実質的に溶剤を含有しない活性エネルギー線硬化型組成物。
(A)酸化ジルコニウム微粒子
(B)単官能モノマー
(C)多官能モノマー
(D)3官能以上のチオール化合物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)を含有し、実質的に溶剤を含有しない活性エネルギー線硬化型組成物。
(A)酸化ジルコニウム微粒子
(B)単官能モノマー
(C)多官能モノマー
(D)3官能以上のチオール化合物
【請求項2】
(C)3官能以上のチオール化合物は、4官能以上のチオールを含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項3】
(C)3官能以上のチオール化合物は、3官能以上の2級のチオールを含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項4】
(C)3官能以上のチオール化合物は、4官能以上の2級のチオールを含む請求項2記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項5】
組成物の粘度が60mPa・s以下である請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【請求項6】
3官能以上のチオール化合物が、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及び1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンから選ばれた1種以上である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置画面の視野角を拡大するために、画面材料を高屈折率にする必要があるが、材料中に高屈折率ナノ粒子の配合量を増量することで可能になる。高屈折率ナノ粒子とUVモノマーから構成されたコーティング剤は、ナノ粒子のためか硬化性が悪くなる傾向にあり、硬化性を高めるために材料中の多官能モノマーを増量する必要があるが、多官能モノマーを増量すると組成物の粘度が高くなる。
有機ELの光取り出し効率向上のためには、屈折率が異なる界面でパターニングする必要がある。パターニングをインクジェット方式で行う場合、材料組成物の低粘度化が必要となる。また塗布を行う際も組成物が低粘度であると、その塗布性も向上する。しかしながら、材料組成物に多官能モノマーが含まれると粘度が高くなり、インクジェット吐出適性を付与することや塗布性を向上させることが困難であった。
【0003】
特許文献1に記載のUV硬化型の高屈折材料は、ジルコニアなどのナノ粒子とUVモノマーとの組み合わせで構成されるが、車載ディスプレイなどの表示装置の利用では、夏季に高温に晒される。高屈折材料の塗膜の耐熱性が劣ると、表示装置画面にクラックが発生する不適合が発生しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-152197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決する課題は、低粘度であるためにインクジェット適性及び塗布性が向上し、かつ硬化後の塗膜の耐熱性が向上した活性エネルギー線硬化型組成物を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の組成とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1.下記(A)~(D)を含有し、実質的に溶剤を含有しない活性エネルギー線硬化型組成物。
(A)酸化ジルコニウム微粒子
(B)単官能モノマー
(C)多官能モノマー
(D)3官能以上のチオール化合物
2.(C)3官能以上のチオール化合物は、4官能以上のチオールを含む1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
3.(C)3官能以上のチオール化合物は、3官能以上の2級のチオールを含む1記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
4.(C)3官能以上のチオール化合物は、4官能以上の2級のチオールを含む2記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
5.組成物の粘度が60mPa・s以下である1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
6.3官能以上のチオール化合物が、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及び1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンから選ばれた1種以上である1に記載の活性エネルギー線硬化型組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、酸素阻害の影響が少なく、3官能以上のチオール化合物の配合量が少量にできるため、組成物は低粘度となり、高い屈折率の塗膜を得ると共に、インクジェット吐出適正や塗布性を向上できる。
さらに硬化時において、チオールを介した結合が形成されるので、硬化膜が高温環境下にあっても、クラックや加熱収縮を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、上記A~Fの要件を満たすものであり、以下に順に説明する。
<A.酸化ジルコニウム微粒子>
本発明において、A成分として使用できる酸化ジルコニウム微粒子は、表面処理されたものでもよく、されていないものでも良い。また球状でもよく、球状ではないものでも良い。
酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径は、1~50nmであることが好ましい。
そして、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることがさらに好ましく、8nm以上であることが最も好ましい。また30nm以下であることがより好ましく、20nm以下であることがさらに好ましく15nm以下であることが最も好ましい。この平均粒子径は動的光散乱法により測定して得た一次粒子径である。
平均粒子径が小さい程、より硬化塗膜の透明性が向上する。
酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径が1nm以上であることにより、分散性が向上する。また、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径が50nm以下であることにより、得られるハードコート層において光の散乱が発生しにくくなり、ハードコート層の透明性が高くなる。なお、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒径は、動的光散乱法によって一次粒径を測定したものとする。
【0009】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の酸化ジルコニウム微粒子の含有量は、優れた塗膜硬度と高い屈折率を得るために、10.0~70.0質量%が好ましい。
その中でも、20.0質量%以上がより好ましく、30.0質量%以上がさらに好ましく、50.0質量%以上が最も好ましい。また67.0質量%以下がより好ましく、65.0質量%以下がよりさらに好ましい。
含有量がこの範囲であると、硬化塗膜が十分な硬度を有し、適切な屈折率とすることが容易になる。
【0010】
<B.単官能モノマー>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中に含有される単官能モノマーとしては以下のものが挙げられる。
ベンジル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2 -エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソテトラデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メトキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性コハク酸(メタ)アクリレート等単官能の(メタ)アクリレートを挙げられる。
その他、アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、スチレン、(メタ)アクリル酸、が挙げられる。
【0011】
このような単官能モノマーは、活性エネルギー線硬化型組成物中に専ら低粘度化を目的に含有され、5.0質量%以上が好ましく、10.0質量%以上がより好ましく、15.0質量%以上がさらに好ましい。また活性エネルギー線硬化型組成物中に40.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以下がより好ましく、28.0質量%以下がさらに好ましい。
【0012】
<C.多官能モノマー>
多官能モノマーとしては、分子中に炭素-炭素不飽和結合を複数有する化合物であり、例えば以下の化合物を採用できる。
ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート等を挙げることができる。
このような多官能モノマーの含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物中に1.0~10.0質量%である。
【0013】
<D.3官能以上のチオール化合物>
3官能以上のチオール化合物としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、及び1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンから選ばれた一種以上が好ましい。
また、中でも、4官能以上のチオール化合物が好ましく、さらに粘度を低下させることができる。
さらに3官能以上の2級のチオールや4官能以上の2級のチオールとすることが好ましい。
これらの3官能以上のチオール化合物の含有量、その含有量は、光重合性成分と3官能以上のチオール化合物の合計量に対して、0.5~10.0質量%が好ましい。そして、5.0質量%以下がより好ましく、2.5質量%以下がさらに好ましく、1.8質量%以下が最も好ましい。多官能チオール化合物は、その添加をする効果を発揮できる範囲内にて含有量が少ないほうが好ましい。
3官能以上のチオール化合物を含有させることにより、組成物の粘度が低下し、かつ塗膜耐熱性が向上し、また加熱収縮を低減できる。
【0014】
<本発明の活性エネルギー線硬化型組成物及びその硬化物の物性>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、溶媒の添加なしで、その粘度が60mPa・s以下であることが好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、44mPa・s以下であることが更に好ましい。このような 低粘度であると、インクジェット用インク組成物にしたり、インキ組成物にしたり、表面コート剤組成物として使用したりする際に円滑に印刷や塗布することができる。
なお、粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を用いて、25℃で測定する。
そして、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物は、その屈折率が1.60以上であることが好ましく、1.64以上がより好ましく、1.68以上が更に好ましい。このように屈折率が高いことにより形成された硬化被膜がより透明度を高く感じられ、美粧性に優れることになる。さらに表示装置の表示面表面に硬化被膜を形成することにより、その視野角を拡げることができる。
【0015】
<光重合開始剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物に配合できる光重合開始剤は特に限定されない。
使用できる光重合開始剤として例えば下記のものが挙げられるが、但し経時的に塗膜を黄変させる等の着色をさせる光重合性開始剤を使用しないことが好ましい。ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad819)、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等である。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物中の光重合開始剤の含有量は特に限定されず、光重合性成分100質量部に対して0.3~1.5質量部が好ましく、中でも0.4質量部以上がより好ましく、0.8質量部以下がより好ましい。
【0016】
<増感剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物には、400nm以上の主に紫外線の波長域で光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応の増感機能が発現する増感剤(化合物)を使用できる。また十分に硬化可能であれば使用しなくても良い。なお、上記「400nm以上の波長の光により増感機能が発現する」とは、400nm以上の波長域で光吸収特性を有することをいう。このような増感剤を用いることで、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、LED硬化性を向上できる。
【0017】
上記増感剤は、アントラセン系増感剤が好ましい、2以上の増感剤を併用してもよい。具体的には、増感剤は、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤等である。市販品の代表例は、アントラセン系増感剤としては、DBA、DEA(川崎化成工業(株)製)等である。
【0018】
増感剤を含有させる場合、好ましくは光重合性成分の総質量に対して0~8.0質量%である。8.0質量%を超えても効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。増感剤の含有量が8.0質量%を超える場合、インキ組成物は、増感剤を配合することによる効果が向上しにくく、過剰添加となる傾向がある。
なお、活性エネルギー線硬化型組成物が色味の変化の影響を受けやすいクリアーであるので、活性エネルギー線硬化型組成物は、光増感剤とてして、チオキサントン系増感剤を初めとする変色の可能性があるものを含まないことが好ましい。
【0019】
<その他の成分>
活性エネルギー線硬化型組成物は、任意成分として、必要に応じて、種々の機能性を発現させるため、各種の添加剤が配合されてもよい。任意成分は、たとえば、表面調整剤、光安定化剤、表面処理剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤等である。また、ヒンダードアミン化合物を含有しても含有しなくても良く、チオール基含有ポリシルセスキオキサンや、ポリウレタン( メタ) アクリレートやアクリル系重合体を含有しないことが好ましい。
【0020】
(表面調整剤)
活性エネルギー線硬化型組成物は、表面調整剤を好適に含む。表面調整剤は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤は、シリコーン系表面調整剤、フッ素系表面調整剤、アセチレン系表面調整剤等である。アセチレンジオール系表面調整剤は、ダイノール607、ダイノール609、EXP-4001、EXP-4300、オルフィンE1010(日信化学工業(株)製)等である。シリコーン系界面活性剤は、BYK-307、333、347、348、349、345、378、3455(ビックケミー社製)等である。フッ素系界面活性剤は、F-410、444、553(DIC社製)、FS-65、34、35、31、30(デュポン社製)等である。
表面調整剤が含有される場合において、表面調整剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、表面調整剤の含有量は、インキ組成物の表面張力が塗膜形成に適した範囲となるための量であることが好ましく、インキ組成物中に0.1~1.5質量%であることがより好ましい。
【0021】
(重合禁止剤)
重合禁止剤は特に限定されない。一例を挙げると、重合禁止剤は、N-CH3タイプ、N-Hタイプ、N-ORタイプ等のヒンダードアミン、フェノール系、アミン系、硫黄系、リン系等の重合禁止剤である。
【0022】
(消泡剤)
消泡剤は、シリコーン系消泡剤、プルロニック系消泡剤等である。
【0023】
(活性エネルギー線硬化型組成物の製造)
次に、これらの材料を用いて本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を製造する方法について説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して各成分を分散混合し、必要により活性エネルギー線硬化型組成物の粘度を調整して得ることができる。
【0024】
(用途)
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、透明基材に使用することができるが、中でも特に高い硬度や耐擦過性が要求される基材の表面層に対して使用する場合に適している。中でもガラスや樹脂を基材とする表面層に対して使用すること、さらに、該樹脂として塩化ビニル系重合体またはエチレン-酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等からなる表面層を対象にして使用することが、耐水性等の点において好ましい。また、該樹脂としてポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート、ターポリン、アクリル系樹脂等からなる表面層を対象にして使用することが、密着性等の点において好ましい。
なお、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の硬化物は、接着性や粘着性を有しない。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物によりパターンを形成、硬化する方法として、具体的には、バーコーター等公知の塗布装置により、任意の基材に対して塗膜やパターンを形成し、その後活性エネルギー線を照射にて、塗膜やパターンを硬化できる。
また、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェットヘッドにより基材に吐出した後、基材に着弾した本発明の組成物の塗膜を光で露光し硬化させる方法も挙げられる。
例えば、基材への吐出(画像の印字)は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物をインクジェット用の低粘度対応のプリンタヘッドに供給し、基材に対して塗膜の膜厚が、例えば、1~60μmとなるように該インク組成物をプリンタヘッドから吐出することにより行うことができる。また、光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗布された本発明の活性エネルギー線硬化型組成物の塗膜に光を照射することにより行うことができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を印字する装置としては、従来から使用されているインクジェットパターン形成用プリンター装置等が利用できる。 上記塗膜の硬化における光源としては、紫外線(UVランプ)、紫外線(発光ダイオード(LED))、電子線、可視光線等を挙げることができ、環境面から好ましくは発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオード(LED)である。
発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線とは、「発光ピーク波長が350~420nmの範囲である紫外線を発生する、発光ダイオードから照射される光」とする。
【実施例0026】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。表中の顔料、分散剤、樹脂、溶剤及び合計に関する欄の数値の単位は「質量%」である。
【0027】
(組成物の粘度)
実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化型組成物をE型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を使用して、温度25℃で粘度(mPa・s)を測定した。
【0028】
(塗膜硬化性)
UV照射後の塗膜硬化性を塗膜表面のタックの有無により評価した。
UV照射強度 180mJ/cm
塗膜厚さ 1~2μm
○(タック無)
×(タック有)
【0029】
(塗膜耐熱性)
硬化塗膜を200℃で、30分間加熱した後の表面クラック有無を目視で確認した。
○(クラック無)
×(クラック有)
【0030】
(屈折率)
ガラス基板にスピンコーターで1μm厚さに塗布し、UV照射強度180mJ/cmで硬化して塗膜を作製し、反射分光膜厚計により測定した。
【0031】
(実施例1)
<実施例1の活性エネルギー線硬化型組成物の製造>
平均粒子径11nmの酸化ジルコニウムのメチルエチルケトン分散液(酸化ジルコニウム含有量70重量%)2.86g、ベンジルアクリレート1.11g、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)0.19g、ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad819(IGM Resins B.V.製、光重合開始剤))0.06g、BYK-307(ビックケミー製、シリコン系表面調整剤)0.006gを配合し、減圧下50℃で1時間の条件でジルコニア分散液の溶剤を留去し、組成物を得た。
【0032】
(実施例2)
実施例1中のベンジルアクリレートの含有量を1.04gとし、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)を1,3,5-トリス(2-(3-スルファニルブタノイルオキシ)エチル)-1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオンに変更し、その含有量を0.26gとした以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0033】
(実施例3)
実施例1中のベンジルアクリレートの含有量を1.10gとし、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)をトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)に変更し、その含有量を0.20gとした以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0034】
(比較例1)
実施例1中のベンジルアクリレートの含有量を1.09gとし、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)を1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタンに変更し、その含有量を0.21gとした以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0035】
(比較例2)
実施例1中のベンジルアクリレートを0.99gとし、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタンを0.31gに変更したこと以外は、比較例1と同様にして組成物を得た。この場合、塗膜の性質が良好であっても、組成物の粘度が高過ぎて塗膜にしづらかった。
【0036】
(比較例3)
実施例1中のベンジルアクリレートを1.16gとし、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)をトリメチロールプロパントリアクリレート0.14gに変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0037】
(比較例4)
実施例1中のベンジルアクリレートを1.17gとし、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.13gに変更した以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0038】
【表1】
【0039】
本発明によれば、硬化前において低粘度であり、高屈折率かつ、塗膜硬化性及び塗膜耐熱性に優れた塗膜を得た。
また、各実施例によれば、硬化塗膜には硬化収縮がほとんど無かった。
それに対して比較例1及び3ではUV照射によっても硬化しなかった。そのため塗膜耐熱性と屈折率は評価できなかった。比較例2によれば、塗膜の評価まではできるが、高粘度であるために塗膜形成の困難性が高かった。比較例4によれば、スピンコーターの回転数調整により塗布可能であり、塗膜の評価まではできるが、高粘度であるために塗膜形成の困難性が高かった。加えて、加熱により硬化収縮が起き、塗膜にクラックが発生して屈折率を測定できなかった。