(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072421
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】分割型フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181841
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】315018565
【氏名又は名称】株式会社グローバルアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】岩田 修司
(57)【要約】
【課題】煩雑な動作を必要とせず、下部を簡単に開閉でき、快適かつ衛生的に利用できるフェイスシールドを提供する。
【解決手段】上面部と下面部に分離されたフェイスシールドであって、透過性のプラスチックシートで構成する上面部は、顔の額、目及び鼻に対応した位置に取り付けられ、プラスチックシートで構成する下面部は、顔の鼻、口、顎及び首に対応した位置に取り付けられ、上面部と下面部は、鼻、口の位置で重なる。上面部と下面部の位置関係を安定して確保するために上面部に上面ストッパーを、下面部には上面ストッパーの先端が挿入できる大きさの下面開口部を設け、下面開口部の形状は上面ストッパーの先端が容易に挿入できるように、下面開口部の下辺に対応する下面開口下部の長さrと、下面開口部の上辺に対応するストッパー上部の長さkの関係をr≧kに設定したことが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部と下面部に分離されたフェイスシールドであって、
透過性のプラスチックシートで構成する前記上面部は、顔の額、目及び鼻に対応した位置に取り付けられ、
プラスチックシートで構成する下面部は、顔の鼻、口、顎及び首に対応した位置に取り付けられ、
前記上面部と前記下面部は、鼻、口の位置で重なることを特徴とする分割型フェイスシールド。
【請求項2】
前記上面部と前記下面部の位置関係を安定して確保するために上面部に上面ストッパーを、下面部には上面ストッパーの先端が挿入できる大きさの下面開口部を設け、下面開口部の形状は上面ストッパーの先端が容易に挿入できるように、下面開口部の下辺に対応する下面開口下部の長さrと、下面開口部の上辺に対応するストッパー上部の長さkの関係をr≧kに設定したことを特徴とする請求項1に記載の分割型フェイスシールド。
【請求項3】
前記上面部の上面ストッパー開口部の底辺に対応するストッパー下部の長さtと、下面開口部の上辺にあるストッパー上部の長さkの関係をt≦kに設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の分割型フェイスシールド。
【請求項4】
前記上面部にある上面ストッパーの傾斜角度が、上面ストッパー開口部の下辺にあたるストッパー下部を基線として垂直面に対して0~60°であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の分割型フェイスシールド。
【請求項5】
前記上面部には耳に取り付けるための耳掛け部が設けられ、耳掛け部の手前に角度が柔軟に変わる形状とした耳掛け湾曲部を設けたことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の分割型フェイスシールド。
【請求項6】
前記下面部に、透過性プラスチックシート、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックを含むモノカラー若しくはマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの少なくとも何れかを混色したフルカラーのプラスチックシート、又は、プラスチックシート表面にモノカラー若しくはフルカラーで文字図形画が描かれたプラスチックシートを用いたことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の分割型フェイスシールド。
【請求項7】
前記上面部と前記下面部を作製する材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP/OPP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS/OPS)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、トリアセテート(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリイミド(PI)の少なくとも何れかを含む絶縁材料を用い、
前記上面部は透過性プラスチック材料で、前記下面部は透過性プラスチック材料あるいは不透明プラスチック材料で作製することを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の分割型フェイスシールド。
【請求項8】
前記上面部における上面部の底辺のラインと下面開口下部のラインを同じにすることにより、上面ストッパーを下面開口部から簡単に出し入れできるようにしたことを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の分割型フェイスシールド。
【請求項9】
前記下面部におけるストッパー下部から下面開口下部の長さrを確保しながら、下方向に下面端部の形状としたことを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の分割型フェイスシールド。
【請求項10】
前記上面部は、動物を含む所定のモチーフが表現されたデザインとすることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の分割型フェイスシールド。
【請求項11】
前記下面部の鼻部から下面部の口部にかけて下面部の口部の方向に段差aを設けた下面部により、顔の顎部と下面部の顎部の間隔を狭くしたことを特徴とする請求項1~10のどれかに記載の分割型フェイスシールド。
【請求項12】
前記上面部は、眼鏡ストッパーが設けられ、前記眼鏡ストッパーは、眼鏡ストッパー上部を基線として垂直面に対して下向きに0~60°の傾斜角度をもたせたものであって、前記眼鏡ストッパー上部を眼鏡のリードフレームに、係合されることにより、前記上面部と眼鏡が一体化されたことを特徴とする1~4の何れかに記載の分割型フェイスシールド。
【請求項13】
アルカリ金属ケイ酸塩化合物、又は、リン酸チタニア系化合物をベースとして構成される透過率向上薄膜が、前記上面部又は前記下面部の全域もしくは選択的に形成されたことを特徴とする請求項1~12の何れかに記載の分割型フェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルスの飛沫防止を目的としたフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスに感染した患者(感染者)が咳やくしゃみによって、あるいは大きな声を出すと、感染者の飛沫が空気中に飛び出し浮遊する。浮遊した飛沫微粒子が非感染者の眼の結膜、鼻腔、口腔粘膜に付着するとウイルスの感染リスクが高くなる。フェイスシールドはそれを防ぐために顔面に設けて、ウイルス感染を防護する有効な個人防護具である。
WHO(世界保健機関)が推奨しているフェイスシールドの主な要件として、A)透明プラスチック製で視界がよいもの、B)頭にしっかり固定でき、額にぴったり合うように着用できる調節可能なバンドがあるもの、C)顔全体を完全に覆うもの、D)曇りにくいものが望ましい、が挙げられており、
図18に示すようなフェイスシールド体101にフェイスバンド102が付いたフェイスシールド100が一般的な形状の一つとしている。先行技術としては、表示部材と、止め部材と、結合部材で構成されるフェイスガードが知られている(特許文献1を参照)。特許文献1についても、表示部材が
図8に示すフェイスシールド体101に当たり、止め部材がフェイスバンド102に当たるため、フェイスシールド100と同様の構造であるといえる。
【0003】
厚生労働省では新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴い、フェイスシールド100の有効性を示しており全国の医療機関に配布している状況にある。
厚生労働省が発表している咳、くしゃみによる飛沫感染予防策として、感染者の2m以内に近づかないことを挙げており、これは通常、飛沫はある程度の重さがあるため1~2m以内に落下する。つまり2m以上離れている場合には感染リスクが低下することから、有効なソーシャルディスタンスとして人々に実施を要請している。
これに加え厚生労働省は国の専門家会議が提言した「新しい生活様式」に沿った生活スタイルの実践例を示している。実践例では日常生活を営む上での基本的生活様式の一つとして食事環境についても触れており、その中で食事中は食事に集中して会話(おしゃべり)は控えめと提示している。この実践例を踏まえて、レストランや居酒屋等ではテーブル間の距離を空けたり、一つ置きの椅子に座ることを実践している他、テーブル間に飛沫防止のためのパーテションを設けて、飛沫感染の防止策を取り入れているところもある。
【0004】
ホテルや旅館の宿泊先や居酒屋、レストラン等での食事は、家庭では味わえない料理を食べながら,多くの人が集まる場所での自然に笑顔がこぼれる光景を身近に感じて楽しむ場でもあり、人々に幸福感を与えてくれる。新型コロナウイルスの感染拡大を受け安心して楽しめる場を提供するために、ある飲食店では医療現場で用いる形状のフェイスシールドを利用してどのような注意と工夫をすれば従来のように楽しい食事ができるかの実験も試みられている。
このように食事現場における新しい生活様式を産み出す一環として、医療現場で用いている形状のフェイスシールドを用いて家庭では味わえない料理を食べながら,多くの人が集まる場所での自然と笑顔がこぼれる従来の雰囲気に少しでも近づけるためには、フェイスシールドは以下の課題を解決する必要がある。
【0005】
会話(おしゃべり)時には飛沫防止のためフェイスシールドを
図18のように口元まで下げておく必要があるので、飲食する際には
図19に示すようにコップ103に入った水を飲む場合、顔面より大きいフェイスシールド100を口元より上に上げる必要がある。このように飲食をするにはフェイスシールド100を頻繁に上げ下げする動作を繰り返す必要が生じ、食の楽しみを妨げる可能性が高くなる。
医療現場で用いている形状のフェイスシールド100を利用すると、人々が楽しむ食空間に医療現場で使用する防具を持ち込むことになるので抵抗感や違和感を感じたり、料理の美味しさにも影響を与える可能性がある。
顔全体にフェイスシールド100を覆っているので、料理の内容によっては顔中央部の温度が上昇し不快感が生じる可能性がある。
フェイスバンド102が額と密着する構造のフェイスシールド100では、フェイスバンド102と額部分に汗をかき不快感が生じる可能性がある。
フェイスシールド100を額上部で固定した場合,下部が大きく開き飛沫防止力が低下する可能性がある。
眼鏡使用者は、フェイスシールド100の上げ下げにより眼鏡がずれてしまう可能性がある。
室内の蛍光灯程度の光量でも、フェイスシールド100の表面で光が反射し視界を妨げる可能性がある。
息や温かい料理によっては、フェイスシールド100の内面が曇る可能性がある。
【0006】
以上のように厚生労働省が「新しい生活様式」に沿った生活スタイルの実践例を示しているものの、安全を確保しながら以前のように家庭では味わえない料理の食事,多くの人が集まる場所での自然と笑顔がこぼれるその光景を与えてくれる空間を実現していくために、医療現場で用いている飛沫防止用のフェイスシールドでは多くの課題を解決する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
新型コロナウイルスの感染を防止する策として、感染者からの飛沫を遮断するフェイスシールドは有効な個人防護具であるが、このフェイスシールドをホテルや旅館の宿泊先での食事や居酒屋、レストラン等での食事空間で利用するためには多くの課題を解決する必要がある。
1)会話(おしゃべり)時には飛沫防止のためフェイスシールドを口元まで下げておく必要があるので、飲食する際には顔面より大きいフェイスシールド100を口元より上に上げる必要がある。このように飲食をするにはフェイスシールド100を頻繁に上げ下げする動作を繰り返す必要が生じ、食の楽しみを妨げる可能性が高くなる。
2)医療現場で用いている形状のフェイスシールド100を利用すると、人々が楽しむ食空間に医療現場で使用する防具を持ち込むことになるので抵抗感や違和感を感じたり、料理のおいしさにも影響を与える可能性がある。
3)顔全体にフェイスシールドを覆っているので、料理の内容によっては顔中央部の温度が上昇し不快感が生じる可能性がある。
4)フェイスバンドが額と密着する構造のフェイスシールドでは、フェイスバンドと額部分に汗をかき不快感が生じる可能性がある。
【0009】
5)フェイスシールドを額上部で固定した場合,下部が大きく開き飛沫防止力が低下する可能性がある。
6)眼鏡使用者は、フェイスシールドの上げ下げにより眼鏡がずれてしまう可能性がある。
7)室内の蛍光灯程度の光量でも、フェイスシールド表面で光が反射し視界を妨げる可能性がある。
8)息や温かい料理によっては、フェイスシールド内面が曇る可能性がある。
【0010】
かかる状況に鑑みて、本発明は、煩雑な動作を必要とせず、下部を簡単に開閉でき、快適かつ衛生的に利用できる分割型フェイスシールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明の分割型フェイスシールドは、上面部と下面部に分離されたフェイスシールドであって、透過性のプラスチックシートで構成する上面部は、顔の額、目及び鼻に対応した位置に取り付けられ、プラスチックシートで構成する下面部は、顔の鼻、口、顎及び首に対応した位置に取り付けられ、上面部と下面部は、鼻、口の位置で重なることを特徴とする。飲食時は下面部だけを取り外して飲食を可能とし、下面部は上面部から簡単に取り外しが行える。このため、飲んだり、食べたりする行為が頻繁に起こっても負担なく繰り返すことができ、食の楽しみを継続することができる。
また、上面部と下面部の間には小さな隙間を設けているので、顔中央部の温度が上昇しても空気の対流があることにより温度上昇が抑えられ、不快感を防止することができる。
【0012】
本発明の分割型フェイスシールドは、上面部と下面部の位置関係を安定して確保するために上面部に上面ストッパーを、下面部には上面ストッパーの先端が挿入できる大きさの下面開口部を設け、下面開口部の形状は上面ストッパーの先端が容易に挿入できるように、下面開口部の下辺に対応する下面開口下部の長さrと、下面開口部の上辺に対応するストッパー上部の長さkの関係をr≧kに設定する。これにより、下面部は上面部に固定した位置から簡単に取り外しが行える構造が提供できるので、飲んだり、食べたりする行為が頻繁に起こっても負担なく繰り返すことができ、食の楽しみを継続することができる。
【0013】
本発明の分割型フェイスシールドは、上面部の上面ストッパー開口部の底辺に対応するストッパー下部の長さtと、下面開口部の上辺にあるストッパー上部の長さkの関係をt≦kに設定する。かかる構成とされることにより、下面部は上面部に固定した位置から簡単に取り外しが行える構造が提供できるので、飲んだり、食べたりする行為が頻繁に起こっても負担なく繰り返すことができ、食の楽しみを継続することができる。
【0014】
本発明の分割型フェイスシールドは、上面部にある上面ストッパーの傾斜角度が、上面ストッパー開口部の下辺にあたるストッパー下部を基線として垂直面に対して0~60°である。これにより、下面部は上面部に固定した位置から簡単に取り外しが行える構造が提供できるので、飲んだり、食べたりする行為が頻繁に起こっても負担なく繰り返すことができ、食の楽しみを継続することができる。
【0015】
本発明の分割型フェイスシールドは、上面部には耳に取り付けるための耳掛け部が設けられ、耳掛け部の手前に角度が柔軟に変わる形状とした耳掛け湾曲部を設ける。かかる構成とされることにより、従来のフェイスシールドに必要であったフェイスバンドが不要となると共に、耳掛け部により上面部は簡単にそして迅速に顔の所定位置に取り付けることができる。また上面部の大きさと上面部を取り付ける人の顔のサイズが必ずしも一致しない場合でも、耳掛け部の手前に設けた耳掛け湾曲部により上面部を簡単に取り付けることができる。
また、フェイスバンドを使用していない構造であるので、フェイスバンドが額と密着してフェイスバンドと額部分に汗をかき不快感が生じるという問題も解消される。
【0016】
本発明の分割型フェイスシールドは、下面部に、透過性プラスチックシート、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックを含むモノカラー若しくはマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックの少なくとも何れかを混色したフルカラーのプラスチックシート、又は、プラスチックシート表面にモノカラー若しくはフルカラーで文字図形画が描かれたプラスチックシートを用いる。これにより、下面部は透明性のプラスチックシート以外に好みの色を有したプラスチックシートやプラスチックシートの表面に図柄模様を描いたプラスチックシートが使用できるので、今までのフェイスシールドではできなかったファッション性のものやお洒落なフェイスシールドが得られる。
【0017】
本発明の分割型フェイスシールドは、上面部と下面部を作製する材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP/OPP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS/OPS)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、トリアセテート(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリイミド(PI)の少なくとも何れかの絶縁材料を用いる。上面部は透過性プラスチック材料で、下面部は透過性プラスチック材料あるいは不透明プラスチック材料で作製する。これにより、熱や光により任意な形状の上面部や下面部を作製することができ、また薄くて軽い透明あるいは不透明のフェイスシールドのものが得られる。
【0018】
本発明の分割型フェイスシールドは、上面部における上面部の底辺のラインと下面開口下部のラインを同じにすることにより、上面ストッパーを下面開口部から簡単に出し入れできる。これにより、下面部は上面部に固定した位置から簡単に取り外しが行える構造が提供できるので、飲んだり、食べたりする行為が頻繁に起こっても負担なく繰り返すことができ、食の楽しみを継続することができる。
【0019】
本発明の分割型フェイスシールドは、下面部におけるストッパー下部から下面開口下部の長さrを確保しながら、下方向に下面端部の形状としたものである。かかる構成とされることにより、下面部を上面部に取り付けたり、取り外したりすることが簡単にできるので、飲んだり、食べたりする行為が頻繁に起こっても負担なく繰り返すことができ、食の楽しみを継続することができる。
【0020】
本発明の分割型フェイスシールドは、上面部は、動物を含む所定のモチーフが表現されたデザインである。これにより、医療現場で用いる従来の形状と異なるデザインのものが作製できることになる。したがって、飛沫を防止する機能を保ちながら、従来のフェイスシールドではできなかったファッション性のものが実現でき、取り付けて楽しい、見て楽しいお洒落なフェイスシールドが得られる。
【0021】
本発明の分割型フェイスシールドは、下面部の鼻部から下面部の口部にかけて下面部の口部の方向に段差aを設けた下面部により、顔の顎部と下面部の顎部の間隔を狭くしている。これにより、顎部、首部の隙間から入る飛沫微粒子の量を削減でき、フェイスシートにおける飛沫防止力の低下を抑制することができる。
【0022】
本発明の分割型フェイスシールドにおいて、上面部は、眼鏡ストッパーが設けられ、眼鏡ストッパーは、眼鏡ストッパー上部を基線として垂直面に対して下向きに0~60°の傾斜角度をもたせたものであって、眼鏡ストッパー上部を眼鏡のリードフレームに、係合されることにより、上面部と眼鏡が一体化される。かかる構成とされることにより、眼鏡使用者であってもフェイスシールドの上げ下げにより眼鏡がずれる問題が低減される。
【0023】
本発明の分割型フェイスシールドは、アルカリ金属ケイ酸塩化合物、又は、リン酸チタニア系化合物をベースにとして構成される透過率向上薄膜が、上面部又は下面部の全域もしくは選択的に形成される。これにより、室内の蛍光灯程度の光量でも、フェイスシールド表面で光が反射し視界を妨げる問題や、息や温かい料理によって生じるフェイスシールド表面が曇る問題が改善される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の分割型フェイスシールドは、会話(おしゃべり)時と食事時に応じた構造に簡単に切り替えることができるので飛沫の防止と食事の楽しさが同時に提供できると共に、従来のフェイスシールドでは実現できなかったお洒落な形状やファッション性のあるものが得られる。また、フェイスシールドによる反射光の低減や防曇が可能なので、楽しい食事空間が提供できる。したがって、本発明の機能性フェイスシールドによれば、煩雑な動作を必要とせず、下部を簡単に開閉でき、快適かつ衛生的に利用できるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】本発明の分割フェイスシールドを顔に取り付けた図
【
図5】本発明の分割フェイスシールドの上面部を下面部に取り付ける様子を示した図
【
図6】本発明の分割フェイスシールドを
図5の手順で顔に取り付けた図
【
図7】本発明の分割フェイスシールドの下面部を上面部から取り外す様子を示した図
【
図8】本発明の分割フェイスシールドの上面部の一例を示す図
【
図9】本発明の分割フェイスシールドの下面部の一例を示す図
【
図10】本発明の分割フェイスシールドの上面部におけるデザインの一例を示す図
【
図11】本発明の分割フェイスシールドの上面部におけるデザインの一例を示す図
【
図12】本発明の分割フェイスシールドの上面部におけるデザインの一例を示す図
【
図13】本発明の分割フェイスシールドの下面部の一例を示す図
【
図14】本発明に用いる眼鏡を掛けた人の正面顔と横顔を示す図
【
図15】本発明の分割フェイスシールドの上面部を示した図
【
図16】本発明の分割フェイスシールドの上面部を顔に取り付けた図
【
図19】従来のフェイスシールドで水を飲む場面を示した図
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例0027】
図1は、本発明に用いる顔の名称を示す図である。
図2は、本発明の分割フェイスシールドを顔に取り付けた図である。
図3は、本発明の分割フェイスシールドの分解図である。
図4は、本発明の分割フェイスシールドの斜視図である。以下、
図1、
図2、
図3、
図4を用いて本実施例について説明する。
図1において、正面顔1は正面からの顔、側面顔2は横顔である。
図2、
図3、
図4は、正面顔1、側面顔2に取り付けている分割型フェイスシールドの主要部分の名称を示している。
【0028】
図2に示すように、上面部3は、正面顔1(側面顔2)の額、目、鼻に対応した位置に取り付ける。上面部3は、前方が鮮明に見える透過性の良いプラスチックシートを用いて作製する。下面部4は、正面顔1(側面顔2)の鼻、口、顎、首に対応した位置につける。ここで上面部3と下面部4は鼻、口の位置で概ね重なるような構造になっていると共に、飛沫微粒子が鼻や口に入りにくくするために上面部3の鼻の先端12と下面部4における鼻先に対応する位置13との間隔14はできるだけ小さくする。好ましくは鼻の先端12と下面部4における鼻先に対応する位置13が接触し、間隔14はゼロに近い方が好ましい。下面部4は口の動きがはっきり見える方が良いので、透過性に優れる透明プラスチックシートで構成するのが好ましいが、不透明プラスチックで構成しても良い。
【0029】
図3に示すように、上面部3は、顔にしっかりと取り付けるために上面部3には耳掛け部7が設けられている。耳掛け部7を設けることにより従来のフェイスシールドに必要であったフェイスバンドが不要となる。耳掛け部7を設けることにより、上面部3を簡単にそして迅速に顔の所定位置に取り付けることができる。上面部3の大きさと取り付ける人の顔のサイズが必ずしも一致しないので、耳掛け部7の手前に耳掛け湾曲部16を設ける。耳掛け湾曲部16は耳掛け部7を耳15にはめる際に、その角度が柔軟に変わる形状にしておくことが好ましく、そのためには耳掛け湾曲部16の形状を曲がりやすい平面状、円筒状、長方形状等に設計するのが好ましい。
【0030】
図2に示すように、下面部4は、正面顔1(側面顔2)の鼻、口、顎、首に対応した位置につけ、特に上面部3の鼻、口の位置で概ね重なるような構造にする。このような位置関係にすることにより、顔表面の露出を無くすことができると共に、間隔14を可能な限り小さくすることにより咳、くしゃみや大きな声の飛沫を防止できる。
【0031】
このような上面部3と下面部4の位置関係を安定して確保するために上面部3には上面ストッパー6を、下面部4には上面ストッパー6の先端が挿入できる大きさの下面開口部5を設ける。
図4に示すように、下面開口部5の形状は上面ストッパー6の先端が容易に挿入できるように、下面開口部5の下面開口下部17の長さrをストッパー上部11の長さkに対してr≧kに設定しておく。これにより上面ストッパー6の先端が下面開口部5に簡単に挿入できる。
【0032】
上面ストッパー6の作製は、上面ストッパー開口部8にストッパー下部10を残して切込みを入れ、その切込みに沿って上面部3を作製するための材料として用いている透明プラスチックシートを切り離していくことにより、
図4に示しているような上面ストッパー6を得ることができる。透明プラスチックシートがある程度の靭性を有しているので、上面ストッパー6はストッパー下部10を基線として垂直面に対して0~60°程度の傾斜角度をもたせることができ、
図2の正面顔1や
図3に示しているように斜め方向の傾斜をもたせた上面ストッパー6を得ることができる。
下面開口部5の作製は下面部4を作製するプラスチックシートを下面開口部5の形状に沿ってカッティングし、カッティングした部分を取り除くことによって下面開口部5を得る。
【0033】
ここで上面部3の上面ストッパー開口部8の底辺にあるストッパー下部10の長さtと、下面開口部5の上辺にあるストッパー上部11の長さkの関係をt≦kとすることにより、下面開口部5に差し込まれた上面ストッパー6はストッパー下部10とストッパー上部11のところで安定に固定することができるので、常に下面部3と上面部4は正常な位置関係を保つことができる。
【0034】
図5は、本発明の分割フェイスシールドの下面部4を上面部3に取り付ける様子を示した図である。
飲食のために外していた下面部4を会話(おしゃべり)する際には、飛沫を防ぐために上面部3に取り付ける必要がある。
まず下面部4の下面開口部5を上面部3の上面ストッパー6の位置のところまで持ってくる。下面開口部5の下面開口下部17の長さrが下面ストッパー部10の長さtに対してr≧tとしているので、上面ストッパー6を下面開口部5の中に容易に挿入できる。上面ストッパー6の形状は上にいくほど先細りになっており、さらに下面開口部5への挿入が容易となる。説明では上面ストッパー6の形状を上にいくほど先細りとしているが、長方形状であっても問題はない。
ここで下面開口部5における開口上部11の長さがkとすると、上面ストッパー6の底辺に当たるストッパー下部10の長さtとの関係をt≦kとすることにより、特にt=kとすることにより下面部4は下面開口部5の開口上部11と上面部3のストッパー下部10の地点できっちりと安定に固定することができる。このように下面部4における下面開口部5の開口上部11と上面部3のストッパー下部10の位置関係をあらかじめ定めておくことにより、本発明の分割フェイスシールドが所定の顔位置に取り付けることが可能となる。
【0035】
図6は、本発明の分割フェイスシールドを
図5の手順で顔に取り付けた図である。
図7は、本発明の分割フェイスシールドの下面部4を上面部3から取り外す様子を示した図である。
会話(おしゃべり)による飛沫を防ぐために下面部4を上面部3に取り付けるが、食事の際には上面部3から下面部4を外す必要がある。下面部4を上面部3に取り付けられている状態は、下面開口部5の開口上部11が上面部3のストッパー下部10のところで固定されている状態であるが、下面部4を上面部3から取り外すのは下面開口部5を上面ストッパー6から外すだけでよいので、下面部4を上向き方向に軽く持ち上げるだけで外れる。すなわち下面開口部5の開口上部11の長さkと下面開口下部17の長さrとの関係がr≧kとしているので、下面部4を上の方向に持ち上げるだけで簡単に上面部3から外すことができる。
このように下面部4を上面部3から取り外すことにより、口元が開くことになるので食事が可能となる。
このように本発明の分割フェイスシールドの下面部4を上面部3に取り付ける
図5に示す手順と、
図7に示す本発明の分割フェイスシールドの下面部4を上面部3から取り外す手順を繰り返すことにより、食事と会話(おしゃべり)が違和感なく自然に行うことができ、会話(おしゃべり)の際に下面部4を上面部3に取り付けておけば、飛沫微粒子の拡散を防止することができる。
【0036】
尚、本発明の分割フェイスシールドを作製する透明なプラスチックの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP/OPP)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS/OPS)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、トリアセテート(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリイミド(PI)等の絶縁材料を用いることが好ましい。なお上面部3は、前方が鮮明に見える透過性プラスチックシートやプラスチックフィルムで構成する。下面部4は口の動きがはっきり見える方が良いので、その場合は透過性プラスチックを用いるのが良いが、お洒落や意匠性を楽しみたい場合は、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラック等のモノカラーおよびこれらを混色したフルカラーのプラスチックシート、あるいはプラスチックシートやプラスチックフィルムの表面にモノカラーやフルカラーで文字図形画等を描いたプラスチックシートを用いても良い。