(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072425
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】シミュレーション装置
(51)【国際特許分類】
A63B 69/00 20060101AFI20220510BHJP
A63B 22/06 20060101ALI20220510BHJP
A63B 22/08 20060101ALI20220510BHJP
A63B 23/04 20060101ALI20220510BHJP
A63B 24/00 20060101ALI20220510BHJP
A63F 13/245 20140101ALI20220510BHJP
A63F 13/285 20140101ALI20220510BHJP
A63F 13/52 20140101ALI20220510BHJP
A63F 13/803 20140101ALI20220510BHJP
G09B 9/058 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A63B69/00 A
A63B22/06 L
A63B22/08
A63B23/04 A
A63B24/00
A63F13/245
A63F13/285
A63F13/52
A63F13/803
G09B9/058 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181846
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】大久保 伸一
(57)【要約】
【課題】より実際に近い走行環境を模擬するシミュレーション装置を提供する。
【解決手段】シミュレーション装置1は、ペダル漕ぎ運動を行うことの可能な運動具2におけるユーザの運動状況を検出する運動状況検出部6と、運動具2がユーザに与える運動負荷を調整する運動負荷調整部8と、運動状況検出部6の検出情報に基づいて仮想空間内でのユーザの現在位置を検出し、検出した現在位置に対応する予め設定した仮想風景を表示装置4に表示すると共に、運動具2がユーザに与える運動負荷が現在位置に対応して予め設定した仮想運動負荷となるように運動負荷調整部8を制御する制御装置9と、を備え、さらに、制御装置9は、仮想空間内の位置と対応付けて記憶している風速情報のうち現在位置に対応する風速情報を取得し、取得した風速情報で特定される風速の風を発生するように横風発生用の送風機3を駆動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダル漕ぎ運動を行うことの可能な運動具におけるユーザの運動状況を検出する運動状況検出部と、
当該運動状況検出部の検出情報に基づいて仮想空間内での前記ユーザの現在位置を検出する位置検出部と、
前記運動具が前記ユーザに与える運動負荷を調整する運動負荷調整部と、
前記位置検出部で検出した前記現在位置に対応する予め設定した仮想風景を表示装置に表示すると共に、前記運動具が前記ユーザに与える運動負荷が前記現在位置に対応して予め設定した仮想運動負荷となるように前記運動負荷調整部を制御する仮想空間模擬部と、
前記仮想空間内の位置と対応付けられ、風速情報を記憶する風速情報記憶部と、
前記運動具の少なくとも左右いずれか一方に向けて横風を発生させる横風発生用の送風機と、
前記風速情報記憶部から、前記現在位置に対応する風速情報を取得し、取得した風速情報で特定される風速の風を発生するように前記送風機を駆動する送風機制御部と、
を備えることを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
前記仮想空間における予め設定した走行コース上の位置に対応する前記仮想風景が前記走行コース上の位置と対応付けられて記憶された仮想風景記憶部と、
前記走行コース上の位置に対応して予め設定した仮想運動負荷が、前記走行コース上の位置と対応付けられて記憶された仮想運動負荷記憶部と、を有し、
前記位置検出部は、前記走行コース上の前記現在位置を検出し、
前記仮想空間模擬部は、前記位置検出部で検出した前記走行コース上の前記現在位置に対応する前記仮想風景及び前記仮想運動負荷を、前記仮想風景記憶部及び前記仮想運動負荷記憶部のそれぞれから取得することを特徴とする請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記走行コースは複数設定され、
前記風速情報は、前記走行コース上の位置と対応付けられて前記風速情報記憶部に記憶され、
複数の前記走行コースの中から一の走行コースを選択する選択部を備え、
前記位置検出部は、前記選択部で選択された前記走行コース上の位置を前記現在位置として検出し、
前記仮想空間模擬部及び前記送風機制御部はそれぞれ、前記選択部で選択された前記走行コース上の、前記位置検出部で検出された現在位置に対応する前記仮想風景及び前記仮想運動負荷と、前記風速情報とを取得することを特徴とする請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記走行コースは実在の走行コースを模擬したものであって、
前記仮想風景と前記仮想運動負荷と前記風速情報として、前記実在の走行コースにおける風景と運動負荷と風速が設定されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記運動具の左右それぞれに配置された前記横風発生用の送風機と、
前記運動具の前方に配置された向かい風発生用の送風機と、を備え、
前記風速情報は、前記風速情報と風向情報とを含み、
前記送風機制御部は、前記風速情報で特定される風速及び風向の風を発生するように前記送風機を駆動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記運動具は、自転車であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のシミュレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エクササイズ機器とバーチャルリアリティシステムとを組み合わせたシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のシステムにおいては、仮想空間内における仮想風景や、走行路状況に応じた負荷等を模擬することは可能であるが、風については模擬していない。そのため、例えば、自転車で海岸沿いの道を走行する状況を模擬する場合には、実際に海岸沿いの道を走行したときには横風を受けるのに対し、仮想空間内では風を感じない。つまり、画面上では海岸沿いを走行しているにも関わらず横風を感じないため、臨場感が出ず、よりリアリティのある模擬が望まれていた。特に、グーグル(登録商標)社製のグーグルアース等の三次元地図ソフトを用いて仮想風景を表示する場合等には、表示される仮想風景のリアリティが高いため、より実際に近い環境を再現することが望まれていた。
【0005】
そこで、この発明は、上記従来の未解決の課題に着目してなされたものであり、より実際に近い走行環境を提供することの可能なシミュレーション装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の一態様によれば、ペダル漕ぎ運動を行うことの可能な運動具におけるユーザの運動状況を検出する運動状況検出部と、運動状況検出部の検出情報に基づいて仮想空間内での前記ユーザの現在位置を検出する位置検出部と、運動具が前記ユーザに与える運動負荷を調整する運動負荷調整部と、位置検出部で検出した現在位置に対応する予め設定した仮想風景を表示装置に表示すると共に、運動具が前記ユーザに与える運動負荷が現在位置に対応して予め設定した仮想運動負荷となるように運動負荷調整部を制御する仮想空間模擬部と、仮想空間内の位置と対応付けられ、風速情報を記憶する風速情報記憶部と、運動具の少なくとも左右いずれか一方に向けて横風を発生させる横風発生用の送風機と、風速情報記憶部から、現在位置に対応する風速情報を取得し、取得した風速情報で特定される風速の風を発生するように前記送風機を駆動する送風機制御部と、を備えるシミュレーション装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より臨場感のある模擬を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシミュレーション装置の一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るシミュレーション装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
ここで、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
〔シミュレーション装置の構成〕
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るシミュレーション装置1の一例を示す概略構成図であり、
図2はブロック図である。
【0012】
シミュレーション装置1は、ユーザにより選択されたサイクリングコース(走行コース)に対応した風景画像を表示し、ペダル漕ぎ運動を行うことの可能な運動具に対するユーザによる操作に応じて風景画像を更新する。また、サイクリングコースにおける走行路状況に応じて、運動具がユーザに与える運動負荷を調整することで、サイクリングコースを走行している状況を仮想空間内において模擬するようになっている。
【0013】
具体的には、シミュレーション装置1は、ペダル漕ぎ運動を行うことの可能な運動具2と、送風機3と、表示装置4と、入力装置5と、運動状況検出部6と、模擬情報記憶部7と、運動負荷調整部8と、シミュレーション装置1の各部を制御する制御装置9と、を備える。
【0014】
運動具2は、少なくともペダルと着座部とを備え、ユーザが着座部に腰掛け、ペダルを漕ぐことにより、自転車の車輪が回転する状況を模擬する。また、後述の運動負荷調整部8によりユーザに与える運動負荷が調整されるようになっている。運動具2としては、例えば運動負荷調整部8の機能を有するエルゴメータを適用することができる。
【0015】
送風機3は、運動具2を挟んで左右の少なくとも何れか一方に配置され、運動具2を使用中のユーザに風が当たるように配置する。
図1では、運動具2の前方に配置された向かい風発生用の送風機3aと、運動具2を挟んでその両側に1台ずつ配置された横風発生用の送風機3b及び3cの計3台の送風機3を備え、これらの送風機3a~3cは、運動具2を使用中のユーザに風が当たるように配置される。送風機3は、例えば風速を変更可能に構成され、制御装置9によって例えば無線により風速を変更できるようになっている。送風機3としては、家庭内で用いている扇風機を用いることができる。なお、制御装置9によって有線で送風機3の風速を変更するように構成してもよく、また、風速だけでなく風向も変更するように構成してもよい。また、送風機3は、少なくとも運動具2の左右のいずれか一方に配置されていればよい。例えば運動具2の左右に横風発生用の送風機を一台ずつ設けてもよく(3b、3c)、運動具2の左右それぞれに複数の送風機3を横風発生用として設けてもよい。同様に、運動具2の前方に複数の向かい風発生用の送風機3を設けてもよい。
【0016】
表示装置4は、運動具2を用いて運動しているユーザから見えやすい位置に配置される。表示装置4は、例えば、運動具2の前方の、送風機3の上方等、送風機3で発生する風が妨げられない位置に配置される。表示装置4には、後述の入力装置5による操作によって選択されたサイクリングコースに対応した風景画像が、ユーザによるペダル漕ぎ運動の実施状況に応じて順に更新されて表示され、これによって、ユーザがあたかもサイクリングコースを自転車で走行しているかのように仮想空間を模擬している。
【0017】
入力装置(選択部)5は、例えば、運動具2のハンドル等、運動具2の、ユーザが操作しやすい位置に配置される。入力装置5は、例えばタッチパネル等で構成され、模擬するサイクリングコースの選択、風を模擬するか否かの選択、等、仮想空間における模擬条件を設定できるようになっている。なお、入力装置5は、運動具2に配置されていなくともよく、運動中のユーザの邪魔にならない位置に配置されていてもよい。
【0018】
運動状況検出部6は、ユーザの運動状況を検出するセンサであって、運動具2のペダルの回転軸に設けられ、ペダルの回転数を検出する回転数センサを含む。
【0019】
模擬情報記憶部7は、仮想風景情報を記憶する仮想風景記憶部7aと、仮想運動負荷情報を記憶する仮想運動負荷記憶部7bと、風速情報を記憶する風速情報記憶部7cと、を含む。模擬情報記憶部7は、複数のサイクリングコースそれぞれに対応する風景画像情報として、例えば三次元空間画像等の画像情報(例えば、ストリートビュー(登録商標)画像)が含まれている。
【0020】
また、各サイクリングコースの各地点における風速情報及び、各サイクリングコースの各地点における走行路状況に応じた仮想運動負荷情報が、サイクリングコース毎に、それぞれ各サイクリングコース上の各地点と対応付けて、風速情報記憶部7c及び仮想運動負荷記憶部7bに格納されている。走行路状況に応じた仮想運動負荷情報とは、走行路を実際に自転車で走行した場合に、ユーザに加わる運動負荷であって、風量と、走行路の勾配と、空気抵抗と等により決定される。例えば向かい風が吹いている場合、強い風であり風量が大きければ仮想運動負荷は大きくなり、弱い風であり風量が小さければ仮想運動負荷は小さくなる。また、例えば上り坂ならば仮想運動負荷は大きくなり、下り坂ならば仮想運動負荷は微小又は零となる。また、急な上り坂であるときほど仮想運動負荷は大きくなる。空気抵抗は、ユーザの体型や仮想空間におけるユーザの移動速度等によって決定され、大柄な人ほど空気抵抗は大きくなり、また移動速度が高速であるほど空気抵抗は大きくなる。
【0021】
仮想運動負荷情報は、例えば、風量及び空気抵抗による運動負荷は一定値とし、走行路の勾配による運動負荷は変数として予め推測し、これらの和を、サイクリングコースの各地点における運動負荷として設定してもよい。また、風量及び空気抵抗による運動負荷も変数としてもよい。この場合には、例えば風量による運動負荷はランダムに設定し、空気抵抗による運動負荷は、後述の位置検出部9aで演算したユーザの現在位置から移動速度を求めこの移動速度に基づき逐次演算し、予め推定した走行路の勾配による運動負荷と、予めランダムに設定した風量による運動負荷とを仮想運動負荷情報として、予め記憶しておく。空気抵抗による運動負荷は、移動速度に応じて逐次設定し、予め記憶していた風量及び走行路の勾配による運動負荷の和と、逐次設定される空気抵抗による運動負荷との和を、仮想空間におけるユーザの現在位置における仮想運動負荷としてもよい。また、前述のように空気抵抗による運動負荷はユーザの体型にも左右されることから、例えば、ユーザがサイクリングコースを入力装置5で選択する際に、体型も選択可能に構成し、空気抵抗による運動負荷を、選択された体型と、移動速度とに応じて空気抵抗による運動負荷を演算するように構成してもよい。
【0022】
サイクリングコースは、実在のコースであってもよく、また仮想的に設定したコースであってもよい。
【0023】
サイクリングコースが実在のコースである場合には、実際に、実在のコースを自転車で走行して風景を撮影し、撮影した動画を風景画像情報として用いてもよく、また、実在のサイクリングコースを模擬したCG(computer graphics)風景を作製し、これを風景画像情報として用いてもよい。仮想的に設定したコースである場合には、例えば変化に富んだコース等を想定してCG(computer graphics)風景を作製し、これを風景画像情報として用いてもよい。
【0024】
また、風速情報は、サイクリングコースが実在のコースである場合には、実際に自転車で実在のコースを走行し、予め設定した測定点で風速及び風向を測定し、測定点の位置座標と対応付けて記憶してもよい。測定点は、例えば、海岸沿いの地点等といった海からの風等の影響を受ける地点、また、下り坂等、地形や建物等の影響により、その箇所だけ強い風が吹く地点等、風が変化する地点等を設定すればよい。また、サイクリングコースが実在しないコースである場合、また、実在のコースである場合であっても、各サイクリングコースに対応する風景画像情報に基づき地形等から風速を推測してもよい。
【0025】
また、走行路状況に応じた仮想運動負荷情報は、サイクリングコースが実在のコースである場合には、実際に自転車で実在のコースを走行し、予め設定した測定点でユーザにかかる運動負荷を測定すること、等により設定してもよい。或いは各サイクリングコースに対応する風景画像情報から得られる走行路の状況、つまり上り坂、下り坂等からユーザに係る運動負荷を推測し、仮想運動負荷情報として設定してもよい。仮想運動負荷情報の測定点は、上り坂、下り坂、等、走行路の状況によってユーザにかかる運動負荷が大きく変化する地点等を設定すればよい。
【0026】
運動負荷調整部8は、運動具2による運動負荷を調整するものであって、運動負荷調整部8は、制御装置9からの指示に応じて運動負荷を変更する。例えば、運動具2に後輪が設けられている場合には、ユーザがペダルを漕ぐに伴い回転する後輪のリムの部分を挟み込み、リムブレーキをかける状態として車輪が回転しにくくすることにより運動負荷を増大させるようになっている。または運動負荷調整部8は、ディスクブレーキをかける状態とすることにより車輪を回転しにくくすることによって、運動負荷を増大させるようにしてもよい。
【0027】
また、運動具2としてエルゴメータ等の既存の装置を用いる場合には、エルゴメータの機能として備えられている運動負荷の設定機能を利用し、制御装置9からの指示に応じて運動負荷調整部8が、エルゴメータの運動負荷を切り替えることで、運動負荷を増減してもよい。
【0028】
制御装置9は、仮想空間内でのユーザの現在位置を検出する位置検出部9aと、仮想風景の表示及び運動具2がユーザに与える運動負荷が予め設定した仮想運動負荷となるように運動負荷調整部8を制御する仮想空間模擬部9bと、送風機3(3a~3c)を駆動する送風機制御部9cと、を含む。
【0029】
位置検出部9aは、運動状況検出部6で検出されたペダルの回転数に基づき、この回転数で自転車が仮想的に走行したときの自転車の速度を推測し、推測した速度に基づき仮想空間におけるユーザの現在位置、具体的には、選択されたサイクリングコース上の位置を推測する。仮想空間模擬部9bは、入力装置5で選択されたサイクリングコースに対応する風景画像情報を、模擬情報記憶部7の仮想風景記憶部7aから取得する。そして、仮想空間模擬部9bは、位置検出部9aで推測した速度で自転車が走行したときにユーザに見えるはずの風景画像が表示装置4に表示されるように、サイクリングコース上の位置に対応する風景画像を、仮想空間におけるユーザの現在位置に応じて順次更新する。これによって、ユーザがペダル漕ぎ動作を行うことによって、単位時間当たりのペダルの回転数から推測されるサイクリングコース上の現在位置に応じて風景画像が順次更新されて表示装置4に表示され、仮想空間内において、ユーザがサイクリングコースをあたかも走行しているかのように模擬することができる。
【0030】
また、仮想空間模擬部9bは、入力装置5で選択されたサイクリングコースに対応する仮想運動負荷情報を、仮想運動負荷記憶部7bから取得し、また、仮想空間におけるユーザの移動速度及びユーザの体型等による空気抵抗分の運動負荷を加味し、加味した後の仮想運動負荷をユーザに与えるように、運動負荷調整部8を制御する。これにより、仮想空間内において、ユーザがサイクリングコースをあたかも走行しているかのように、運動負荷を模擬することができる。
【0031】
また、制御装置9は、風の模擬を行うことが入力装置5で選択されている場合には、送風機制御部9cが、選択されたサイクリングコースに対応する風速情報を、風速情報記憶部7cから取得し、仮想空間におけるユーザの現在位置に対応する風速情報に基づき、現在位置の風速及び風向相当の風を発生するように向かい風発生用の送風機3a、横風発生用の送風機3b及び3cを駆動する。
【0032】
以上によって、仮想空間におけるサイクリングコース上のユーザの現在位置に応じた仮想風景が表示装置4に表示され、現在位置に応じた仮想運動負荷が運動具2によりユーザに与えられると共に、現在位置に応じた風が送風機3により模擬される。
〔効果〕
【0033】
このように、ユーザが運動具2でペダル漕ぎ運動を行うことによって、選択したサイクリングコースに対応する風景画像が表示装置4に表示され、ペダル漕ぎ運動に伴い仮想空間における現在位置が変化すると、これに応じて風景画像が順次更新される。さらに、仮想空間における現在位置に応じて送風機3が駆動されて運動具2の周囲からユーザに向けて風が発生すると共に、運動具2がユーザに与える運動負荷が変動する。そのため、ユーザは、選択されたサイクリングコースを実際に走行した場合と同等の仮想風景を表示装置4で見ることができると共に、走行路状況に応じて運動負荷が変化し、風を感じることになる。そのため、サイクリングコースを実際に走行した場合により近い模擬が行われることによって、ユーザはより臨場感を味わうことができる。
【0034】
特に、海岸沿いに設けられたサイクリングコースの場合、横風の影響を受けやすく、言い換えれば横風の影響を受けつつ走行することにより、海岸沿いのサイクリングコースを走行していることを実感することができる。そのため、仮想空間の海岸沿いのサイクリングコースにおいて、少なくとも横風発生用の送風機3b又は3cを駆動し、横風を模擬することによって、ユーザに対して、より臨場感を与えることができる。また、海岸に向かって走行している場合等、海からの向かい風を受けるコースの場合には、向かい風用の送風機3aを駆動し、向かい風を模擬すると共に向かい風による空気抵抗に伴う運動負荷を模擬することによって、実際の状況に近い模擬を行うことができ、ユーザに対してより臨場感を与えることができる。
【0035】
また、風を発生するか否かを選択できるようになっているため、風を発生させたりさせなかったりすることによって、よりバリエーションに富んだ模擬を行うことができる。
【0036】
また、実際、比較的軽いロードバイクは、横風により流されることがある。そのため、シミュレーション装置1により、海岸沿いのサイクリングコースを走行した場合に受ける横風と同等の横風を体験した後、実際に海岸沿いのサイクリングコースを走行することによって、横風発生時には、より的確に対処を行うことができる。
【0037】
また、三次元空間画像等の画像情報として、実際に撮影した画像が表示装置4に表示されるため、サイクリングコースとして行ったことのない場所や山岳コース等を設定することによって、走る楽しさをより実感することができる。
【0038】
また、風を模擬する方法として、運動中、送風機3を作動させておく方法も考えられる。しかしながら、送風機3を作動させておくと、例えば横風相当の強い風を発生させた場合等には、運動開始時等ユーザの身体が温まっていない状態では、ユーザにとってオーバークール状態となる。これを回避するために実際の横風よりも弱い風を発生させた場合には、運動中、オーバーヒート状態となる。
【0039】
これに対し、上記実施形態においては、サイクリングコース上における横風や、向かい風等を、仮想空間内における現在位置に応じて発生させるようにしている。そのため、運動中のユーザが、オーバークール状態或いはオーバーヒート状態となることを抑制しつつ、横風等、サイクリングコース上における風を的確に模擬することができる。
〔変形例〕
【0040】
なお、上記実施形態においては、運動具2の前方、及び運動具2の左右それぞれに送風機3を設ける場合について説明したが、さらに、送風機3を運動具2の後方にも設け、追い風も模擬するように構成してもよい。
また、運動具2の左右のみに設け、送風機3によって横風のみを模擬してもよい。向かい風発生用の送風機3aを設けない場合、ユーザは向かい風を感じることはないが、風向風量を加味した仮想運動負荷をユーザに与えるように、運動負荷調整部8を制御しているため、ユーザに対して向かい風による仮想運動負荷は与えることができる。
また、上記実施形態においては、運動具2を用いてシミュレーションを行う場合について説明したが、これに限るものではない。
【0041】
例えば、実際に自転車を用いてシミュレーションを行うようにしてもよい。この場合には、
図3に示すように、自転車の前輪を、前輪の向きが変わらないように支持する前輪支持台21に載置し、自転車の後輪を、後輪を浮かせた状態に保持する後輪支持部材22に載置する。そして、自転車の後輪に、運動負荷調整部8を取り付け、後輪に運動負荷を与える。また、運動状況検出部6として、ペダルの回転数を検出する回転数センサをペダルの回転軸に取り付ける。この状態で上記実施形態と同様に、自転車の前及び左右それぞれに送風機3を配置し、また、表示装置4を、自転車前方の送風機3により生じた風の進路を妨げない位置に配置してシミュレーションを行う。
【0042】
この場合も上記実施形態と同等の作用効果を得ることができると共に、実際の自転車を用いてシミュレーションを行うため、ユーザはより臨場感を味わうことができる。
【0043】
また、上記実施形態において、仮想空間において風を模擬することにより横風の模擬を行うことができるが、実際には、横風が吹いたときには、風により流されハンドルをとられたり、車体が風下側に流されたりすることがある。そのため、横風と共に、ハンドルをとられる状況も模擬するようにしてもよい。例えば、運動具2として自転車を用いる場合には、前輪を支持する前輪支持台21を回転可能に構成する。これによって、横風を模擬した際にはハンドルがとられそうになるため、横風を受けた場合に近い状況が模擬されることになる。また、横風によりハンドルをとられる状況を模擬する際に、仮想空間内でのユーザの現在位置を風下側に変更してもよい。
【0044】
また、上記実施形態において、さらにブレーキレバーの操作状況も模擬するようにしてもよい。この場合には、ブレーキレバーの操作の有無を検出するブレーキレバーセンサを設け、ブレーキレバーセンサの検出情報に基づいて、ブレーキレバーが操作されたことを検出したときには、運動負荷調整部8により付加する運動負荷を大きくするようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、選択可能なサイクリングコースの風景画像情報をサイクリングコース毎に予め取得しておく場合について説明したがこれに限るものではない。例えば、仮想空間内における現在位置に応じて、三次元地図データを逐次取得し、取得した三次元地図データを表示装置4に表示してもよい。
【0046】
また、上記実施形態において、さらに複数の自転車が集団で走行している状況を模擬するようにしてもよい。つまり、集団で走行している場合、風上にいる自転車は、風よけとなり、風下にいる自転車は、風の影響をそれほど受けない。したがって、集団で走行している状況を模擬する場合、風上にいるか否かによって、送風機3で発生させる風の風速を変更するようにしてもよい。例えば、入力装置5において、集団走行を模擬するか否かの選択を可能に構成する。また、集団走行する場合の他人の走行位置を含む仮想風景情報を、予めサイクリングコース毎にCG画像によって作成しておく。また、サイクリングコースのCG画像において、ユーザが風上にいるか、風下にいるかに応じて、風速情報を増減し、集団走行用の風速情報を設定する。
【0047】
そして、入力装置5によって、集団走行を模擬することが選択されたときには、選択されたサイクリングコース上におけるユーザの現在位置に応じて、集団走行用の風速情報を利用して送風機3を駆動する。これによって、表示装置4には、集団走行している風景画像が表示装置4に表示され、集団の中におけるユーザの走行位置が例えば風上の位置に替わると、走行位置の変化に伴い、例えば送風機3の風量が大きくなり風を強く受ける状態となり、この状態から風下の位置に替わると、送風機3の風量が小さくなり、風量が小さくなる。そのため、ユーザは、あたかも集団走行しているかのように感じることができる。
【0048】
また、上記実施形態において、ペダル漕ぎ運動を行う際に、ペダルの回転により発電させ、発電電力を利用して送風機3を駆動する構成としてもよい。送風機3の数が増加するほどこれらを駆動するためのコストが増加するため、ペダルの回転による発電電力を利用することにより、コスト増加の抑制に寄与することができる。
【0049】
また、上記実施形態においては、表示装置4を運動具2の前方に配置する場合について説明したが、例えば、バーチャルリアリティゴーグルやヘルメットのようなビジュアル投影装置に投影するようにしてもよい。
【0050】
なお、上述した実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 シミュレーション装置
2 運動具
3 送風機
4 表示装置
5 入力装置
6 運動状況検出部
7 模擬情報記憶部
7a 仮想風景記憶部
7b 仮想運動負荷記憶部
7c 風速情報記憶部
8 運動負荷調整部
9 制御装置
9a 位置検出部
9b 仮想空間模擬部
9c 送風機制御部