(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072426
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ハンガー装置及びこのハンガー装置に設置した回転タワーの駆動システム
(51)【国際特許分類】
B65G 17/20 20060101AFI20220510BHJP
B61B 13/06 20060101ALI20220510BHJP
B62D 65/18 20060101ALI20220510BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B65G17/20 D
B61B13/06 F
B62D65/18 A
B23P21/00 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181847
(22)【出願日】2020-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】初山 智伸
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 宏昭
【テーマコード(参考)】
3C030
3D114
3F034
【Fターム(参考)】
3C030AA19
3C030CC03
3C030DA01
3D114AA12
3D114BA13
3D114DA06
3F034AA04
3F034AB04
3F034AC01
3F034HA05
3F034HB11
3F034HB16
3F034HC01
3F034HD01
3F034HE05
3F034HE12
3F034NA01
3F034NB01
3F034PC03
(57)【要約】
【課題】吊り下げて搬送させる搬送物の形状や種類が(大きく)異なっていても、この形状変化に対応させ搬送物を確実に固定保持できるハンガー装置の駆動システムを提供する。
【解決手段】ハンガー装置1の回転タワー66を駆動させるために作業場所ごとに設置した回転タワー66の駆動システム10であって、回転タワー66を自動回転させ、搬送物のサイズ、形状、又は大きさなどの種類に合わせて当接部の切替え動作を行う回転駆動機構9を備えるとともに、ハンガー装置1の移動動作のタイミングに合わせて、回転駆動機構9を搬送路に向けて進退させる進退装置8を備え、制御部が、ハンガー装置1の進入に合わせ、ドアのサイズ、形状、又は大きさなどの種類に応じて回転タワー66を適宜の角度だけ回動させて複数種類の後当接部52の中から所定のものを自動的に選択して使用可能とするように構成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に配設された搬送路に沿って移動する搬送手段に吊架され、ドアなどの搬送物を垂下した状態で保持する吊下手段と、
この吊下手段に一体に設けられ、前記搬送物の少なくとも前端下縁部及び後端下縁部の2箇所を支承する支承手段と、
前記搬送物の前後両側に対応して配置され、搬送物の前後側に当接して両側から挟持把持する当接部を備える把持手段と、
を有するハンガー装置であって、
前記把持手段を構成する、前記搬送物の前後両側に配置された前記当接部のうちの少なくとも何れか一方のものは、スライド機構によって前記搬送物に対して進退可能に構成されているとともに、
前記少なくとも何れかの当接部は、前記搬送物の高さ及び/又は厚さ方向での当接位置を、前記搬送物の種類、形状、或いは大きさなどの種類に対応して切替え可能とする切替機構を備えた、
ことを特徴とするハンガー装置。
【請求項2】
前記切替機構は、取り付け高さ及び/又は挟持当接位置の異なる当接部を各側面に設けた多角柱(ポリゴン)状の回転タワーを備え、
前記搬送物の種類、形状、或いは大きさなどの種類に対応し、前記回転タワーを回転させて前記当接部を他の当接部に切替えることで、前記各搬送物での当接位置を適宜切替可能に構成した、
ことを特徴とする請求項1に記載のハンガー装置。
【請求項3】
前記回転タワーは、外側面が4面からなる四角柱であり、
前記当接部は、前記回転タワーの側面ごとにそれぞれ異なる位置に設けた4種類のもので構成した、
ことを特徴とする請求項2に記載のハンガー装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハンガー装置の回転タワーを駆動させるために所定作業場所に設置した回転タワーの駆動システムであって、
前記回転タワーを自動回転させるための駆動手段を備えた回転駆動機構と、
この回転駆動機構の前記駆動手段を搭載し、前記回転タワーを設けたハンガー装置が所定位置へ移動してきたところで、前記回転駆動機構の作動動作に先立ち、前記回転タワーに向けて前記回転駆動機構の駆動手段を前進移動させる進退装置と、
を備え、
前記搬送物のサイズ、形状、又は大きさなどの種類態様に応じて前記切替機構の複数種類の当接部の中から最適のものを選択して切替使用可能とするように構成した、
ことを特徴とするハンガー装置に設置した回転タワーの駆動システム。
【請求項5】
前記切替機構は、
前記ハンガー装置で把持するべき把持物のサイズ、形状、又は大きさなどの情報を受信する受信手段と、
前記ハンガー装置が現在使用中の当接部の種類を判別する判別手段と、
この判別手段からの前記当接部に関する種類情報に基づき、前記所定位置へ移動してきたハンガー装置で使用中の当接部が、次位の搬送物のサイズ、形状、又は大きさなどの種類に対応する当接部とは異なると判断した場合に、前記回転タワーの回転すべき角度を算出し、前記当接部の交換のために、その算出した角度分だけ前記回転タワーの回転制御を行う制御部と、
を備えた、
ことを特徴とする請求項4に記載のハンガー装置に設置した回転タワーの駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用のドアなどの搬送物を把持するとともに吊下げて搬送させるハンガー装置に係り、特に搬送物のサイズや種類に対応して把持位置や把持手段の種類を変更させることができるハンガー装置及びこのハンガー装置に設置した回転タワーの駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばドアのような搬送物を吊り下げることができるハンガー装置として、特許文献1及び特許文献2に記載のものなどが知られている。
【0003】
即ち、特許文献1には、その搬送ハンガーとして、搬送物の搬入側の部分に、サイドドアを縦向き姿勢で前後に並べて収容可能とする収容部を設け、この収容部の下端部にサイドドアを受ける4つのローラを設け、この収容部の中央部に下端近傍部を中心にして水平位置と鉛直位置とに位置切換え可能なセンターステーを設け、このセンターステーの前後両端部と収容部の前後両端部にサイドドアを固定する為の固定具を夫々設けたものが記載されている。また、この搬送ハンガーには、搬送中のサイドドアを把持する際に、ドアサイズに応じてそのドア前後方向での把持位置を調整する支持機構が設けられているとともに、この支持機構には、ドアが左右方向に倒れこまないようにするための規制部が付設されている。
【0004】
また、特許文献2には、一対の縦杆の各受け部材に支承されて搬送されるドアにおいて、その一方の側方縁端を一方側のクランプ部でクランプする固定クランプ装置と、ドアの他方の側方縁端を他方側のクランプ部でクランプする可動クランプ装置と、を備えたものが記載されている。そして、この可動クランプ装置には、一対の鋸歯状の螺子体からなり、これら螺子体を噛合させることで、他方側でのクランプ部によるドアのクランプ状態を固定させる、ロック装置が付設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平5-24611号公報
【特許文献2】特開平11-348777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のものにあっては、ドアを両側から固定把持(クランプ)させる固定具が、ドアの幅方向のサイズの変動に対応させることを可能とするスライド構造となっている。ところが、ドアを取付ける車種によっては、例えばセダンとRVRなどの車種の違いによっては、ボディーやタイヤハウスなどの大幅な相違に伴ってドアの形状が大きく異なる場合もある。その場合には、単にドア幅が異なるだけの対応のものでは、車種の異なるドアに対するドアの固定把持(クランプ)がうまく対応できない虞もある。
【0007】
一方、特許文献2に記載のものについても、固定把持(クランプ)させるドアの前後方向の側縁端に対して前進後退可能な構造、別言すればドアの幅方向に沿った移動を可能とする構成のものである。従って、これも、特許文献1のものと同様に、可動クランプ装置の一次元的な移動によってドアのクランプ位置の変更を可能とする構造である。そのため、同様なドア形状が大幅に異なるものに対しては、例えばドアの厚さ方向の固定把持(クランプ)位置の大幅な変更などの場合には、対応不可能な場合も考えられる。
【0008】
本発明は、係る問題点を解決するためになされたもので、吊り下げて搬送させる搬送物の形状や種類が(大きく)異なっていても、この形状変化に対応させ搬送物を確実に固定保持できるハンガー装置及びこのハンガー装置に設置した回転タワーの駆動システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係るハンガー装置は、所定方向に配設された搬送路に沿って移動する搬送手段に吊架され、ドアなどの搬送物を垂下した状態で保持する吊下手段と、
この吊下手段に一体に設けられ、前記搬送物の少なくとも前端下縁部及び後端下縁部の2箇所を支承する支承手段と、
前記搬送物の前後両側に対応して配置され、搬送物の前後側に当接して両側から挟持把持する当接部を備える把持手段と、
を有するハンガー装置であって、
前記把持手段を構成する、前記搬送物の前後両側に配置された前記当接部のうちの少なくとも何れか一方のものは、スライド機構によって前記搬送物に対して進退可能に構成されているとともに、
前記少なくとも何れかの当接部は、前記搬送物の高さ及び/又は厚さ方向での当接位置を、前記搬送物の種類、形状、或いは大きさなどの種類に対応して切替え可能とする切替機構を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、前記切替機構が、取り付け高さ及び/又は挟持当接位置の異なる当接部を各側面に設けた多角柱(ポリゴン)状の回転タワーを備え、
前記搬送物の種類、形状、或いは大きさなどの種類に対応し、前記回転タワーを回転させて前記当接部を他の当接部に切替えることで、前記各搬送物での当接位置を適宜切替可能に構成したことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、前記回転タワーは、外側面が4面からなる四角柱であり、
前記当接部は、前記回転タワーの側面ごとにそれぞれ異なる位置に設けた4種類のもので構成したことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のハンガー装置の回転タワーを駆動させるために所定作業場所に設置した回転タワーの駆動システムであって、
前記回転タワーを自動回転させるための駆動手段を備えた回転駆動機構と、
この回転駆動機構の前記駆動手段を搭載し、前記回転タワーを設けたハンガー装置が所定位置へ移動してきたところで、前記回転駆動機構の作動動作に先立ち、前記回転タワーに向けて前記回転駆動機構の駆動手段を前進移動させる進退装置と、
を備え、
前記搬送物に応じて回転タワーを適宜の角度だけ自動回動させ、前記搬送物のサイズ、形状、又は大きさなどの種類態様に応じて前記切替機構の複数種類の当接部の中から最適のものを選択して切替使用可能とするように構成したことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に係る発明は、前記切替機構が、前記ハンガー装置で把持するべき把持物のサイズ、形状、又は大きさなどの情報を受信する受信手段と、
前記ハンガー装置が現在使用中の当接部の種類を判別する判別手段と、
この判別手段からの前記当接部に関する種類情報に基づき、前記所定位置へ移動してきたハンガー装置で使用中の当接部が、次位の搬送物のサイズ、形状、又は大きさなどの種類に対応する当接部とは異なると判断した場合に、前記回転タワーの回転すべき角度を算出し、前記当接部の交換のために、その算出した角度分だけ前記回転タワーの回転制御を行う制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、搬送物の前後両側に配置された当接部のうち少なくとも何れか一方の当接部が、切替機構により、搬送物の種類、形状、或いは大きさに対応して当接位置を切替可能となっている。従って、種類、形状、或いは大きさが異なる搬送物であっても、その搬送物の前後両側何れかの部位に合わせて当接部での当接位置を変更させることで、搬送物を前後からしっかりと把持させることができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、切替機構には、それぞれ高さ及び厚さ方向について互いに異なる位置に当接部を設けた多面、多角柱(ポリゴン)状の回転タワーを備えている。従って、搬送物させるべき搬送物の種類、形状、或いは大きさに対応して回転タワーを回転させて当接部を切り替えることで、搬送物での当接位置を切替えることができる。換言すれば、搬送物のサイズ、形状、又は大きさなどの種類態様に応じて前記複数種類の当接部の中から最適のものを選択して切替使用可能とすることができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、回転タワーは、外面が4面からなる四角柱であり、その各面ごとにそれぞれ異なる位置に当接部を設けてあるので、4種類の異なる当接位置で当接部を当接・把持できる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、切替機構が備える回転駆動機構が、回転タワーを自動回転させ、搬送物のサイズ、形状、又は大きさに合わせて当接部の切替え動作を行うことができる。また、この切替機構に備える進退装置が、ハンガー装置の移動動作のタイミングに合わせ、搬送路に対応した所定位置に向けて回転駆動機構を進退させることができる。従って、進行してきたハンガー装置の移動動作に干渉することなく回転駆動機構を進退させ、把持物の種類に応じて回転タワーを適宜の角度だけ回動させて前記複数種類の当接部の中から所定のものを選択して使可能とすることができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、切替機構に備える制御部は、所定位置へ移動してきたハンガー装置で使用中の当接部が、次位の把持物のサイズ、形状、又は大きさなどの種類に対応する当接部とは異なる(不適当)と判断した場合に、回転タワーの回転すべき角度を算出する。そして、制御部は、搬送物の入れ替えに先立ち、その算出した角度分だけ回転タワーを回転させて当接部を交換させるための制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るハンガー装置の全体構成を示す外観正面図である。
【
図2】
図1におけるII-II線矢視概略平面図である。
【
図3】本発明に係る停止手段の概略構成を示す説明図である、
【
図4】本発明に係るハンガー装置の要部とこのハンガー装置に備えた回転タワーの駆動システムとを示す斜視図である。
【
図5】本発明のハンガー装置のスライド機構付近を示す斜視図である。
【
図6】(A)及び(B)は回転タワーを回転駆動させる前の回転タワーが回転ロックされた状態を示す模式図であって、(A)は断面図、(B)は平面図であり、一方、(C)及び(D)は回転タワーを回転させるために回転ロック状態を解除したときの状態を示すものであって、(C)は断面図、(D)は平面図を示す。
【
図7】本発明に係る回転タワーを駆動させるための回転駆動機構を進退移動させるための進退機構などの移動動作を示す説明図である。
【
図8】本発明に係る回転タワーの駆動システムの構成を示すブロック図である。
【
図9(A)】本発明の高精度検知手段及び判別手段の具体的例を示す斜視図である。
【
図9(B)】本発明に係る回転タワーがホームポジションに移動した後、高精度検知手段による正確な位置検出動作、及び判別手段によるユースポジション位置にある後当接部の検知動作を示す説明図である。
【
図10】本発明の回転タワーの駆動システムでの作業工程の流れを示すフローチャートである。
【
図11】本発明の回転タワーの駆動システムでの回転タワーでの回転作業の流れを示すフローチャートである。
【
図12】本発明の回転タワーでの後当接部の交換作業の流れを示すフローチャートである。
【
図13】本発明の駆動システムによって行う交換作業の具体的な例示を示す説明図である。
【
図14】(A)及び(B)は、本発明のハンガー装置に用いるロック機構の変形例での原理を示す説明図である。
【
図15】
図14に示す変形例のロック機構における要部(左半分)の構成を示す断面図である。
【
図16】本発明の第5の実施形態に係る高精度検知手段及び判別手段のための反射シール及び反射マーク(判別マーク)を取り付けたハンガー装置を示す側面図である。
【
図17】本発明の第5の実施形態に係る高精度検知手段及び判別手段のための反射シール及び反射マーク(判別マーク)を取り付けたハンガー装置を示す平面図である。
【
図18】本発明の第5の実施形態に係るハンガー装置を把持して移動する搬送手段の搬送ルート及びこの搬送ルートにおけるハンガー装置へのドアに着脱状況などを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の要旨は、所定方向に配設された搬送路に沿って移動する搬送手段に吊架され、ドアなどの搬送物を垂下した状態で保持する吊下手段と、前記吊下手段に一体に設けられ、前記搬送物の少なくとも前端下縁部及び後端下縁部の2箇所を支承する支承手段と、前記搬送物を前後両側に対応して配置された当接部を備える把持手段と、を有するハンガー装置であって、前記把持手段を構成する、把持物の前後両側に配置された当接部のうちの少なくとも何れか一方のものは、スライド機構によって前記把持物に対して進退可能に構成されているとともに、前記少なくとも何れかの当接部は、前記当接部を搬送物の高さ及び/又は厚さ方向での当接位置を、前記搬送物の種類、形状、或いは大きさに対応して切替え可能とする切替機構を備えたものである。
【0021】
以下、本発明の実施形態について添付図面により説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各部の配置や縦横寸法比率(アスペクト比)等は現実のものとは必ずしも一致するものではない。また、本実施形態のハンガー装置は、搬送物として車両用のドアを用いたドアハンガー装置であって、所定の作業現場まで搬送させてきたドアに対して、所定の作業を施すためにその所定場所で一時的にドアの搬送動作が停止するようになっている。なお、その停止したドアに対して、各図面のドアハンガー装置は、ドア幅方向についてはそのドアの搬送方向と同一であってこれをX方向、そのドアの厚さ方向をY方向、ドアの高さ方向をZ方向とし、右手系の3次元デカルト座標、即ち、XYZの3方向が互いに直交する3次元座標上で描像させてある。
【0022】
なお、ここで、各実施形態についての詳細な説明については、以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施形態・・・回転タワーを設けたハンガー装置
2.第2の実施形態・・・回転タワーの駆動システム
3.第3の実施形態・・・ハンガー装置を用いた作業全体の流れ
4.第4の実施形態・・・ハンガー装置に設けるロック機構の変形例
5.第5の実施形態・・・ハンガー装置における高精度検知手段の変形例
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、これらの各図において、その位置を明確に指し示すため、前述したように互いに直交するO-XYZの各方向については、それぞれ、同一向きに統一設定しているが、特にその原点O位置については、任意であって特に特定させているものではなく、各図で任意設定させてある。
【0023】
<ハンガー装置の構成>
図1は、本発明に係る第1の実施形態のハンガー装置1を示すものであり、このハンガー装置1は、大略構成として、搬送手段2と、吊下手段3と、支承手段4と、把持手段5と、スライド機構6と、切替機構7と、を備えている。
【0024】
一方、本発明(のハンガー装置1や搬送手段2など)が適用される工場内には、予め設定された指定作業場所(後述する第2実施形態での第3作業場所)毎に、進退機構8を備えた回転駆動機構9が設置されており、ハンガー装置1に備えたスライド機構6及び切替機構7に対して、進退機構8及び回転駆動機構9が所定の作業を自動で行うように構成されている。
【0025】
<搬送手段の構成>
搬送手段2は、所定位置で所定の作業を行うために搬送物である自動車用のドアDを搬送させるものである。本実施形態の搬送手段2は、
図1および
図2に示すように、工場内で所定のレイアウトに沿い予め配設されているガイドレールGRに沿ってハンガー装置1を移動させ、これに把持されたドアDを搬送させていく。なお、本実施形態では、搬送ルートの各作業場所間でのハンガー装置1の移動の際に、ドアを搭載させずに空の状態(空ハンガー状態)のままで移動していくエリアも存在する。
【0026】
本実施形態の搬送手段2は、ガイドレールGRとともにチェーンコンベアCCを備えており、(搬送路である)ガイドレールGRに案内されながらチェーンコンベアCCを構成するチェーンC1でドアDを搬送駆動させるようになっている。なお、
図1及び
図2においては、都合上、チェーンC1の形状を模式的に単純化させてある。
【0027】
チェーンC1は、ガイドレールGRの直上においてガイドレールGRと同一レイアウトに配置されている。本実施形態のチェーンC1は、天井に垂架された図示外の懸装部材に一定間隔おきに架設されているとともに、所定の作業領域に亘って無端円環状に配設されており、図示外のスプロケットなどを介してモータの駆動力により、常時一定速度で移動・走行している。
【0028】
このチェーンC1には、一部のチェーンの底部側にプッシャーC2が取り付けられており、図示外の枢支軸C3に回動可能に垂下されている。従って、このプッシャーC2には、自重に伴う重力加速度の作用で、チェーンC1の前進方向と同じ方向に向かう付勢力が付与しているが、図示外の回転規制部材により、最大回動角度が直下位置よりやや後方位置(
図1において、例えば時計短針で5時程度の向き)まで回動(傾動)可能となっている。なお、プッシャーC2には、枢支軸C3にトーションばねを付設するようにしてもよい。
【0029】
このように、プッシャーC2は、若干後方向きに傾斜した状態で移動する。そして、このプッシャーC2は、この進行方向前方において、ハンガー装置1の後述するトロリー部22のドグ22が停止・待機しているときには、ドグ22へ後方上面から乗り上げるようにして後述の嵌入孔22Aに嵌入するように構成されている。これにより、ドグ22を介して後述する第1滑動体21A~第3滑動体21C及びこれと一体のハンガー装置1は、チェーンC1の移動動作に従動しながら一緒に引き連られて移動していくことができる。
【0030】
本実施形態の搬送手段2には、
図1に示すように、トロリー部21と、後に詳述するドグ22と、を備えている。トロリー部21は、第1滑動部21A~第3滑動部21Cで構成されており、それぞれ、チェーンC1直下に配設したガイドレールGRにスライド自在に設置されている。本実施形態のドグ22は、先端側が尖状に形成された断面略三角形状を有しており、第1滑動部21Aの上部に一体に固設されている。また、このドグ22には、後に詳述するプッシャーC2の先端側を嵌入させることができる嵌入孔22Aが、上面側に形成されている。
【0031】
トロリー部21の第1滑動部21Aと第2滑動部21Bとは、横長棒形状の第1連結部材31Aによって一体に連結されている。一方、第2滑動部21Bと第3滑動部21Cとの間は、第1連結部材31Aよりも長い横長棒形状の第2連結部材31Bで一体に連結されている。
【0032】
従って、本実施形態の搬送手段2では、チェーンコンベアCCを構成するチェーンC1に付設されたプッシャーC2が、吊下手段3上部に取り付けた上述のトロリー部21のドグ22に嵌入・係止することで、移動するチェーンC1とともに後述のドアDも所定方向に移動していく。
【0033】
なお、ハンガー装置1では、詳細は
図10を参照しながら説明するが、所定の指定された所定の作業場所(後述する第2実施形態では第1作業場所)に到達すると、所要の作業、例えば作業対象車両からのドアの取り外し作業或いはそのドアDに対する各種のフィッテイング作業などの必要とする各種作業などを行う。このために、ハンガー装置1の搬送動作を停止させることが必要となる。そこで、例えば指定場所毎にハンガー装置1の停止手段25(これを、「第1停止手段25」と呼ぶことがある。)及び停止手段26(これを、「第2停止手段26」と呼ぶことがある。)が設置されている。なお、本発明での各種作業には、例えばドアトリム設置、ドア取外し後の車体への、インパネ、ワイヤハーネス、シート、その他の各種内装品の設置など、各種の作業項目が含まれる。
【0034】
<停止手段の構成>
第1停止手段25(以下、これを「第1停止手段」とよぶことがある)は、
図1及び
図3に示すように、エアシリンダである第1シリンダ251(
図3参照)によって回動動作が制御されるじゃま板(以下、「バフラー25A」とよぶ)を備えており、チェーンコンベアCCの搬送路の近傍に設置されている。
【0035】
より具体的には、第1シリンダ251と、この第1シリンダ251によって進退する第1ロッド252と、この第1シリンダロッド252に起伏自在に連結された連結アーム253と、この連結アーム253の先端側に設けた連結軸253Aに連結され最上位まで上昇した状態のときにドグ22の先端を衝止して走行動作が停止するバフラー25Aと、このバフラー25Aを一体に固着させているとともに、バフラー25Aを支軸254A中心に回動自在に枢支するため、ガイドレールGRに設置された首振りアーム254と、を備えている。また、この首振りアーム254の支軸254Aには、これと一体のバフラー25Aに対して、常時反時計回りの回転力を付勢させるためのトーションばね(図示せず)が設置されている。
【0036】
また、それに加えて、停止手段26(以下、これを「第2停止手段」とよぶことがある)として、適宜のタイミングで回動することで、ハンガーのステー32の下部側を、クランプして挟み込み、ハンガー装置1の下部側を固定するため、クランパ26A(
図1、
図2参照)を付設している。より具体的には、第1停止手段と同様に、図示しない第2シリンダ261及び図示外の第2シリンダロッドと、この第2シリンダロッドによって90度の回動範囲で作動してステー32を前後から挟持する前述した一対のクランパ26Aと、を備えている。
【0037】
なお、本実施形態では、バフラー25A及びクランパ26Aについて動作の開始及び終了を行わせるため、リミットスイッチ27(
図1、
図8参照)も備えている。このリミットスイッチ27は、例えば、ドアハンガー装置1が停止すべき作業場所の所定位置よりも進行方向後方側の所定場所などに設置されているが、特にその場所には限定されない。
【0038】
このリミットスイッチ27は、ここをハンガー装置1が通過する際に、ハンガー装置1の一部が物理的に触れるとON動作して所定の検知信号を、後述する制御部100に出力するよう、出力が制御部100の入力に接続されている。
本実施形態のリミットスイッチ27は、例えば
図1に示すように、ガイドレールGR上に設置したマイクロスイッチで構成されている。ハンガー装置1に設けた第1滑動部21Aがここを通過する際に、この第1滑動部21Aに設けた図示外のピンに触れ、このピンがそのリミットスイッチ27を押動することで、ハンガー装置1が到達したことを検知する。
なお、このリミットスイッチ27については、特にこのガイドレールに設置することには限定されるものではなく、例えばハンガー装置1のステーが通過する際にそのステーでスイッチが作動するような配置関係でリミットスイッチを設置した構成であってもよい。また、本発明のハンガー装置の到達検知手段としては、特にこのような物理的、機械的な検知方法に限定されるものではなく、例えば光学的、電磁気的、或いは超音波などの非接触手段で検知させる構成であっても構わない。
【0039】
一方、第1シリンダ251及び第2シリンダ261は、制御部100の出力と接続されており、制御部100を介してリミットスイッチ27からの検知信号を入力すると作動する。これにより、バフラー25AがチェーンコンベアCCの走行路近傍に立ち上がり、ドグ22の前方への走行を停止させる。また、一対のクランパ26Aが90度回動して、ステー32の下部側を挟持することで、ハンガー装置1の下部側をしっかり固定保持することができる。
【0040】
このように、本実施形態での第1停止手段25は、
図1及び
図3にて明示したように、第1シリンダ251で進退するバフラー25Aを備える。一方、第2停止手段26は、
図1及び
図2に明示したように、ストッパ26で構成されている。なお、本発明に係るハンガー装置1の停止手段25、26としては、勿論、上記以外外に各種のものが適用可能であり、本実施形態のものに特に限定されるものではない。
【0041】
<第1停止手段の作用>
第1停止手段である停止手段25は、後述する制御部100の制御により、
図3において、第1シリンダロッド252が右方へ後退移動すると、折り畳まれて横臥していた連結アーム253が半時計方向に起立を始める。これとともに、この連結アーム253と連結し、同様に横臥していたバフラー25Aが左方(反時計方向)へ回動して起立状態となる。そして、このバフラー25Aは、最上位の姿勢となるまで回動上昇し、チェーンコンベアCCの搬送路上に繰り出される。その後、プッシャーC2が連れ回していたドグ22がバフラー25Aに後方から突き当たることで、走行動作が終了する。一方、このドグ22連れ回していたプッシャーC2は、ドグ22との連結が切れ、ドグ22およびバフラー25Aの背面を乗り越えて、前方である左方へ離なれていく。
【0042】
従って、この第1停止手段25によれば、所定の停止位置直前に設けたリミットスイッチ27がハンガー装置1の通過時にONされる。すると、第1シリンダ251が制御部100からの制御で作動し、前述したように、バフラー25Aが最上位位置まで上昇起立する。
【0043】
これにより、ドグ22を押出し連れ回しながら走行するプッシャーC2が、バフラー25Aに上方から乗り上げる。これで、プッシャーC2は、走行方向に対して短針5時程度まで後傾状態であった姿勢が、さらに横臥するように、短針4時近くまで後方へ回動する。その結果、プッシャーC2は、ドグ22への係合状態を解除させることができる。その後、プッシャーC2は、引き続き前進移動を続ける。このため、プッシャーC2から解放されたドグ22およびこのドグ22と一体に連結されているハンガー装置1は、その場に停止することができる。
【0044】
即ち、このような構成の停止手段25によれば、制御部100の制御により、図示外のシリンダが作動し、
図1において、ガイドレールGRの近傍に付設したバフラー25AがガイドレールGRの軌道上に下側から押上がってくる。従って、プッシャーC2の下腹部側が、これに突き当たり上方へ押し上げられる格好となる。これにより、ドグ22との係合状態を解除でき、ドグ22側はそこで停止することとなる。
【0045】
このようにして、チェーンコンベア20とハンガー装置1との係合が解除され、ハンガー装置1は、その作業場所に停止する。一方、プッシャーC2は、ドグ22の上面(背面)側及びバフラー25Aの先端面側に乗り上げ、そのまま乗り越えていき、ドグ22を解放させながらチェーンコンベアCCとともに前進走行を続けていく。
【0046】
さらに、その場所での所定作業を終えたあとは、制御部100の制御により、さらに第1ピストンロッド252が第1ピストン251に向けて後退移動する。これにより、さらに連結アーム253が反時計方向に回動していくことで、バフラー25Aも同方向に回動し、ガイドレールGRの上部から退避する。このような状態で、次のプッシャーC2が来るのを待つ。次のプッシャーC2がドグ22の後方まで移動してくると、プッシャーC2は、先端側がドグ22の嵌入孔22Aに嵌入するのとほぼ同時に、ドグ22を係合させながら、再び、前進移動していく。これにより、ハンガー装置1も、ドグ22とともにプッシャーC2に連れ回されていく。
【0047】
<吊下手段の構成>
吊下手段3は、搬送手段2のチェーンコンベアCCでトロリー部21が所定方向に移動する際に、ドアDを吊り下げた状態に保持するものである。つまり、ドアDの幅方向を搬送手段2の移動方向に合わせ、ドアDを起立させた状態のまま吊下手段3によって搬送・移動させる。本実施形態の吊下手段3は、第2滑動部21Bと第3滑動部21Cの間に架渡する第2連結部材31Bにドア幅程度の間隔を保持して取り付けた、2個一対からなるステー32、33(以下、夫々これらを「前ステー32」、「後ステー33」と呼ぶ場合がある。)で構成されている。
【0048】
本実施形態のステー32、33は、搬送するドアDの表面(外面)側に対面配置させる構成となっている。この配置状態でドアDを把持するため、別言すれば、塗装済みのドアD表面(外面)に触れて傷などを付けぬようにするため、本実施形態のステー32、33は、例えば周囲に軟質皮革などで形成されたクッション部材34,35をそれぞれ巻装させてある。また、これらのステー32、33のそれぞれ上下方向の中間位置或いはそれよりもやや下方には、双方のステー32、33に対して水平方向に架け渡した状態で固設した中間支持体36を備えている。この中間支持体36は、ドアD表面(外面)と対面する側面部のほぼ中央に、ゴムなどの弾性部材でリング状に形成した緩衝部材37(
図1参照)が突設されており、ドアDの表面(外面)がステー32に衝突して傷付くのを防止している。
【0049】
<支承手段の構成>
支承手段4は、搬送物であるドアDの少なくとも前端下縁部及び後端下縁部の2箇所を下方から支承するものであって、吊下手段3と一体に設けられている。本実施形態の支承手段4は、各ステー32、33の下端部に夫々設置された受け部材41、42で構成されている。本実施形態の受け部材41、42は、弾性材や軟質材などの材料で形成され、上向きに開口した断面略V字状を有しており、ドアDがハンガー装置1から搬送中に脱落しないように、下方からドアDを支承・保持している。
【0050】
<把持手段の構成>
把持手段5は、搬送物であるドアDの前後両端側にそれぞれ対応して配置された当接部51,52(以下、これらを「前当接部51」、「後当接部52」と呼ぶ場合がある。)を備えている。これらの当接部51,52は、ドアDの前後側端面に当接することでドアDを前後両側から挟持し、把持するようになっている。
【0051】
本実施形態の当接部51,52のうち、ドアDの前側端部に当接する前当接部51については、前ステー32に固着された中間支持体34の先端側に固設されている。なお、これらの当接部51については、多様なドアDの種類や形状にも共用できるような形状を有していてもよい。
【0052】
後当接部52は、ドアDの着脱を可能かつ容易にさせるため、後端側に向けて進退可能な構造となっている。この後当接部52を取り付けている回転タワー66側には、詳細は後述するが、スライド機構6を付設している。さらに、所定の作業場所(後述する第3作業場所)には、ドアDの種類に応じて当接位置を変更可能とするため、後述の切替機構7を設置している。この切替機構7には、進退機構8及び回転駆動機構9を設けており、搬送するドアDの種類、サイズ、形状などに応じ、ドアD後端部への当接位置を自動的に変更させることで、ドアDの確実な把持動作が可能となっている。
【0053】
<スライド機構の構成>
スライド機構6は、
図4及び
図5に示すように、ドアDの搬送方向(X方向)に沿い、後ステー33から-X方向に向けて所定長だけ突設して設置された縦断面略コ字形のXガイド部材61と、このXガイド部材61の内面に沿って一方側端部から他方側端部に亘り平行に配置されたXシャフト62と、このXシャフト62に係止する略鉤状のロック歯(図示せず)を設けたロック部材63と、このロック部材63を回転可能な状態で取り付けるとともに、Xシャフト62にスライド可能な状態で係合するスライド部材64と、このスライド部材64と一体の基底板65と、この基底板65において高さ(Z)方向に回転可能に起立する回転タワー66と、を備えている。
【0054】
(ガイド部材の構成)
Xガイド部材61は、このXガイド部材61に付設するXシャフト62に係合しながらX方向に移動可能なスライド部材64と、このスライド部材64と一体の基底板65と、この基底板65に搭載した回転タワー66などとを、Xレール61によって+/-X方向に移動可能にするために設置されている。また、このXガイド部材61には、スライド部材64及び基底板65がXシャフト62に沿って(-X方向に)後退移動する際に、このXガイド部材61から脱線して工場内の床面などに脱落しないようにするため、最後部にストップ板68を立設させてあり、基底板65が最後部(ホームポジション)まで後退すると、このストップ板68に物理的に衝止してこれ以上後退できないようになっている。
【0055】
(ロック部材の構成)
ロック部材63は、
図5に示すように、全体として、首振りレバー状に形成されており、先端側に操作用の取手63Aを設けている。また、このロック部材63には、前述したように基端側に
図6に示す鉤状の歯を設けているとともに、スライド部材64に対して図示外のトーションばねで一定方向に回転力が付勢されており、この弾性回転力によりXシャフト62にしっかりと噛合してロックされている。このため、トーションばねの弾性力に抗して取手63Aを下向きに押し込むことで、図示外の歯とXシャフト62との噛合状態が解除される。従って、この噛合解除の状態のまま、取手63Aを掴んで+/-X方向の何れかへ押し出すと、回転タワー66を取り付けてあるスライド部材64がその位置を自在に変更可能となる。
【0056】
(スライド部材及び基底板の構成)
スライド部材64の基底板65には、
図5および
図6に示すように、回転孔65Aを開設しているとともに、この回転孔65Aには、回転可能で、かつ上下(Z)方向に昇降可能な昇降バー67が挿通されている。ちなみに、この昇降バー67は、後述の制御部100による制御により、回転駆動手段93のステップモータ93Aが90度単位で90、180、270、360度のいずれかの回転角度で回転するように構成されている。
【0057】
(昇降バーの構成)
この昇降バー67は、
図6に示すように、縦断面略逆T字形を有しており、下端部の押圧板67Aと基底板65との間に圧縮ばね67Bが介装されている。これにより、押圧板67Aには、基底板65から常時離間する下(-Z)方向に弾性力が付勢されている。この昇降バー67の上端には、回転タワー66が一体に固着されている。また、基底板65の上面の回転孔65Aの近傍には、略四角柱をなす回転タワー66の一側面に当接する回転ストッパ65Bが付設されている。
【0058】
<回転タワーの構成>
回転タワー66は、天井面が開口した多面体(多角柱)からなるポリゴン形状のもので構成されている。特に、本実施形態の回転タワー66は、外周面(以下、「各側面」とよぶ)が4面からなる四角柱状のもので構成されている。回転タワー66の各側面には、
図5に示すように、それぞれアーム66A~66D(以下、これらを「第1アーム66A」~「第4アーム66D」と呼ぶ場合がある。)が取り付けてある。これらのアーム66A~66Dには、夫々、先端部に、ゴムなどの弾性部材で形成された断面略V字形を有する第1後当接部52A~第4後当接部52D(これらは、全て後当接部52を構成している)を設けている。
【0059】
本実施形態の各アーム66A~66Dは、それぞれの全長(即ち、±X方向又は±Y方向での突出長さ)及び回転タワー66での設置高さ(Z方向)を異ならせるような状態で、各側面(4面)に一つずつ配置してある。これにより、詳細は後述するが、それぞれのアーム66A~66Dに固設した第1~第4後当接部52A~52Dは、(基底板65を基準としたときの)Y,Zの2方向に関する配置状態が異なるように構成されている。これにより、各種サイズ及びタイプの異なるドアに対応した確実な把持を可能としている。
【0060】
また、この回転タワー66の天井面は略方形状に開口66Eが形成されており、後述する押下シリンダ92(
図7参照)のシリンダロッド(図略)が、この開口66Eからタワー内部に入り込むように、回転タワー66の回転中心に向けて(上方から)降下してきて進入し、タワー開口66Eに篏合するようになっている。
【0061】
このように、回転タワー66には、アーム66A~66Dを介して第1後当接部52A~第4後当接部52Dを固設させている。従って、搬送させるドアDの種類、形状、或いは大きさなどの変化に合わせて適正なアームを選択し、そのアームをドアDの後端縁に対面させて使用する。このため、制御部100は、回転タワー66を所要の角度回転させ、後当接部52を別の後当接部52に自動で切替えることができるようになっている。これにより、後当接部52は、ドアDに対する高さ(Z)方向及び/又は厚さ(Y)方向について、異なる当接位置での当接動作が切替え(変更)可能となる。なお、本実施形態では、回転タワー66の回転位置及び各後当接部52の配置位置を明確にさせるため、第1後当接部52Aを後述するユースポジションとして使用しているときの回転タワー66の回転位置を、回転タワー66におけるホーム角度位置状態(これが、角度位置がゼロ度に相当する)に設定することにする。
【0062】
このように、本実施形態では、回転タワー66の自動での回転操作によって後当接部の変更・切替えを自動で行う構成としてあるが、この自動切替作業のために進退機構8及び回転駆動機構9が各指定作業場所(後述の第3作業場所)に設置されている。また、さらに、これら進退機構8及び回転駆動機構9を回転タワー66に対して自動で確実に作動させるため、回転タワー66と、進退機構8及び回転駆動機構9と、の間の相対位置の正確な位置合わせが必須となっている。そこで、本実施形態では高精度検知手段310も設けられている。
【0063】
具体的には、本実施形態では、以下のような理由から、回転タワー66の高精度な位置決めが必要となっている。即ち、回転タワー66の回転動作を自動化させようとするには、これに先立ち、(XYテーブル72側に設けた)ステップモータ93Aの回転体93Bと、(基底板65側に設けた)回転タワー66の開口66Eとが合致していることが必要である。このように双方が正確に合致している状態のときにはじめて、回転体93Bが開口66Eにぴったりと挿入または嵌合できる。
【0064】
<高精度検知手段>
そこで、本実施形態では、
図7において、スライド部材64及びこれと一体の(回転タワー66を搭載した)基底板65を、XYテーブル72に対して高精度な停止位置決め(以下、これを「回転タワーの精度決め」と呼ぶ場合がある。)を行わせている。このような事情から、本実施形態では、基底板65に搭載した回転タワー66の、XYテーブル72に対する正確な停止位置状態にあることを確認させるため、
図8に示すような高精度検知手段310を設けている。因みに、本実施形態では、回転タワー66側が、前述したストップ板68に当接する位置(以下、これを「ホームポジション」とよぶ)のところまで後退移動するところまでスライド移動させると、丁度、XYテーブル72に対する正確な停止位置となるように設定してある。
【0065】
なお、本実施形態ではこの停止位置がホームポジションに設定してあるが、本発明では特にこの構成に限定するものではない。要は、(回転駆動機構9側の)回転体93Bと、(基底板側に設けた回転タワー側の)開口66Eと、押上シリンダ91とが、上下方向で軸線が完全合致するような相対位置関係であればよい。従って、回転タワーの開口66Eが、Xガイド部材61上においてどこの位置であっても問題ではなく、嵌合する相手先である回転体93Bが取り付けてあるスタンド73と、押上シリンダ91が設置してあるXYテーブル72と、回転タワーを設置してある基底板65との三者間の相対位置関係で一義的に決定されるものである。
【0066】
<切替機構の構成>
切替機構7は、
図4に示すように、ドアD(
図1参照)の種類(即ち、ドアの形状、或いは大きさなどの態様)に応じて、ドアDの高さ及び/又は厚さ方向での後当接部52(の当接位置)を、自動で切替えて、後当接部52を適正なものに交換させるものである。この切替機構7は、所定の作業場所(後述の第3作業場所)にそれぞれ設置される設備であって、基台71と、ガイドレールGR(
図1、
図2参照)の搬送路に向けて(+Y方向に)進退するXYテーブル72と、このXYテーブル72に起立した断面略略L字形のスタンド73と、を備えている。さらに、この切替機構7には、進退機構8及び回転駆動機構9も備えている。
【0067】
XYテーブル72は、
図7に示すように、進退機構8によって、基台71の上面に沿って+/-Y方向に前進可能な構成となっている。そのため、本実施形態のXYテーブル72には、前端側に、後述する回転駆動機構9の一部を構成する押上シリンダ91が直立状態で固設されているとともに、中央側には+Y方向に指向するスタンド73が起立状態で固設されている。また、このXYテーブル72は、ハンガー装置1が搬送路に沿って移動されてくるまでは、その移動動作の障害とならないように-Y方向に向けて最奥位置まで移動、つまり後退して待機しておくようになっている。そして、ハンガー装置1が所定位置まで移動してきたところで、制御部100の制御により進退機構8が作動し、XYテーブル72が、
図7に示すように、スライド機構6の回転タワー66の直下まで、+Y方向に前進移動するようになっている。
【0068】
このため、このXYテーブル72の上面に立設されている押上シリンダ91は、回転タワー66の直下まで潜り込むような状態で前進移動する際に、シリンダロッド91Bの上端の押上板91C(
図6(A)参照)が昇降バー67の下端に設けた押圧板67Aよりも下方位置となるように、その高さh(
図7参照)が制限されている。
【0069】
スタンド73は、縦断面逆L字形を有する形状のものであって、上端部が前方(Y)方向に向けて突出した庇部73Aを設けている。また、この庇部73Aの下面(天井面)には、直下に設けた押上シリンダ91と正対する位置関係で、押下シリンダ92及び回転駆動手段93を取り付けている。なお、XYテーブル72が回転タワー66に向けて前進移動してくる際に、回転タワー66の上端に回転駆動手段93が接触することがないようにするため、普段、押下シリンダ92のピストンロッドが下方へ降下動作を行わない状態のときには、下端から回転タワー66上端までの突出高さh´(
図4参照)が規制されている。
【0070】
<切替機構の付帯設備>
さらに、この切替機構7には、
図8に示すように、進退機構8及び後述する回転駆動機構9の動作を自動制御する制御部100が接続されている。
【0071】
(制御部の構成)
この制御部100は、進退機構8及び回転駆動機構9の各駆動手段と電気的に接続されているほか、(搬送手段2に付帯して設けた)前述した第1停止手段25、第2停止手段、受信部200を介したホストコンピュータ210、高精度検知手段310、及び、ハンガー装置1で搬送されてきたドアDの種類を判別する判別手段320などとも電気的に接続されている。
【0072】
具体的には、進退機構8は、Yシリンダ駆動手段81Bの入力が制御部100の出力に接続されている。回転駆動機構9も、押上シリンダ駆動手段91A及び押下シリンダ駆動手段92Aの入力が制御部100の出力に接続されている。さらに、ホストコンピュータ210は、受信部200を介して制御部100へ情報を送信するため、出力が受信部200の入力に接続されているとともに、受信部200は出力が制御部100の入力に接続されている。また、高精度検知手段310及び判別手段320は、出力が制御部100の入力に接続されている。
【0073】
(制御部の動作)
この制御部100は、ドアDを把持すべき位置(以下、これを「ユースポジション」と呼ぶ。)にて正対している後当接部52が、次に把持予定のドアのサイズ、種類などに対応していない(異なる)と判別手段320(
図8参照)が判断した場合に、この判別手段320からの判別信号を制御部100が入力する。これにより、後当接部52を自動交換させるため、回転駆動機構9の制御を、進退機構8の制御に続いて行うようになっている。即ち、この回転駆動機構9の制御のために、制御部100では、回転タワー66の回転すべき角度(90、180、270度のいずれか)を算出する。そして、制御部100では、その算出した角度分だけ回転タワー66を回転させて後当接部を交換する、といった回転駆動機構9の一連の制御動作を、後述する3種類のシリンダ91~93を適宜のタイミングで作動させて行うようになっている。
【0074】
このように、制御部100は、次に使用する予定の後当接部52を、ドアの後端に正対する、ユースポジションの角度位置まで繰り出させるために、まず、進退機構8を動作させる。そして、制御部100は、進退機構8を動作させることで、回転駆動機構9を搭載したXYテーブル72を所定位置まで高精度に前進させていき、その次に、回転駆動機構9を動作させる。このようにして、この制御部100は、必要となる後当接部が正対向きとなるユースポジションまで回転タワー66を回転動作させる一連の動作を、自動制御で行わせるように構成されている。
【0075】
さらに、この制御部100には、例えば搬送手段2によるハンガー装置1の搬送動作を所定の作業現場で緊急中断させる事態が発生したような場合のための中断スイッチ(図示せず)も設けている。
【0076】
受信部200は、次の作業を行う車種情報、特に次の車種に合わせて搬送予定のドアDのサイズ、形状、又は大きさなどの情報(以下、これを「ドア情報」と呼ぶことがある。)を
図8に示すホストコンピュータ210側から受信すると、このドア情報に対応する信号(以下、これを「ドア信号」と呼ぶことがある。)を制御部100へ出力するようになっている。
【0077】
<判別手段>
判別手段320は、現在のユースポジションにある後当接部52が、4つある後当接部52A~52Dうちのいずれのものであるかについての情報を検知させるための手段である。この判別手段320から得られる後当接部52に関するホームポジション情報と、受信部200から得られたドア情報(これから把持しようとするドアDの種類に関する情報、例えば次に使用すべき後当接部)との2つの情報に基づき、現在設置されている後当接部52が、所定の作業場所(例えば、後述の第2作業場所)へ向けて搬送されてくるハンガー装置1の回転タワー66のユースポジションと正しく対応・一致しているか否かを自動で判別するためのものである。
【0078】
(判別手段の構成)
本実施形態の判別手段320は、所定の作業場所(例えば、後述する第2作業場所)の近傍のハンガー装置1が通過する搬送路(搬送手段2のガイドレールGR)の直下の所定位置の床面に、高精度で位置決めされた状態で立設させた検知ボード300(
図9参照)に設置されている。即ち、この判別手段320は、検知ボード300に設けた所定波長の光を出射する発光素子からなる投光部320Aと、この投光部320Aからの光を反射させるために回転タワー66の各後当接部52A~52Dの端面に取り付けた、各後当接部52A~52Dによって異なる種類のものからなる、判別マークである反射シール(但し、
図9では反射シール521Cのみ表示する)と、これらの反射シールで反射する投光部320Aからの光を受光するフォトトランジスタ(phototransistor)などの受光部320Bと、で構成されている。
【0079】
投光部320A及び受光部320Bは、
図8に示すように、制御部100と接続されている。受光部320Bは、これから出力する情報信号を制御部100へ出力することで、現在どの後当接部52がユースポジションに設置されているかが判別可能になっている。これにより、現在使用可能な待機状態にある、つまりユースポジションにある後当接部52の種類情報を得た制御部100では、次のドアに使用する後当接部52に対応・一致しているか否かの判断を行うことができる。
【0080】
(判別手段の作用)
この判別手段320による後当接部52の判別方法としては、本実施形態では、
図9に示すように、回転タワー66の後当接部52として設けている後当接部52A~52Dのいずれかを検知することで判別している。このために、4面ある回転タワーの各後当接部52の端面には、何等かの判別マーク(例えば各端面に1個~4個の反射シール521)を設け、その数を光学的に検出するといった構成としている。なお、これ以外の適宜の判別方法であっても勿論可能である。
【0081】
なお、制御部100では、この判別手段320からの判別情報を入力すると、ユースポジションにある後当接部が次ドアに用いるべき後当接部と一致しているか否かを判別し、否と判断した場合には、正しい後当接部52への速やかな自動交換を行うため、進退機構8及び回転駆動機構9を作動させるための制御信号を直ちにこれらへ出力するように構成されている。
【0082】
このような後当接部52の交換作業の必要となる背景事情としては、例えば、所定の作業場所(後述する第2作業場所)までハンガー装置1でドアDを把持移動させ、その作業場所にてそのドアDを取外して所定の車両に取り付けたのち、次に同様のドア把持作業を行うのに先立ち、次に来るドアの種類が異なるような場合に必要となるものである。
【0083】
判別手段320は、制御部100の制御により、後当接部52の種類の見分け判別を所定位置で行わせる。即ち、本実施形態では、回転タワー66がXシャフト62の終端部まで移動したホームポジションで実行する。そこで、Xシャフト62を取り付けてあるXガイド部材61には、基底板65が最大後退位置までスライド後退すると、この基底板65が物理的に接触してそれ以上後退させないようにするため、前述のストップ板68(
図4及び
図5)を設けている。
【0084】
なお、本発明では、指定の作業場所(例えば、後述の第1作業場所など)でのドアDに関する必要な所定作業のため、ハンガー装置1の搬送動作の一時停止操作が必要となる。そこで、前述した停止手段25が設けられている。即ち、本実施形態には、
図1に示すように、ハンガー装置1が各指定作業場所(第1乃至第3作業場所)の所定位置に搬送・到達したところでチェーンコンベアCCからの搬送動作を解除させてハンガー装置1をストップさせるため、停止手段25を設けている。また、所定の作業場所(例えば、第2作業場所)には高精度検知手段310を設置しており、ここでの作業の作業が終了したところで、回転タワー66の高精度な位置検出を行う。
【0085】
なお、本実施形態では、この停止手段25に到達したハンガー装置1を、この作業場所毎に設けた停止手段25で強制的に停止させる構成であるので、特にハンガー装置1の停止位置検出のための手段は付設していない。しかしながら、例えば万一、停止手段25の動作エラーの場合に備えて、例えばハンガー装置1の停止位置への到来をその位置又はその直前であらかじめ検知させる手段などとして、ハンガー停止位置検知手段を付設させていてもよい。
【0086】
<高精度検知手段の構成>
高精度検知手段310については、次の第2の実施形態で詳述するので、ここでは簡単にその構成を説明するのにとどめておく。本実施形態の高精度検知手段310は、
図10における第2工程A2での終了時点で、回転タワー66側の停止位置を確認検知するためのものである。本実施形態の高精度検知手段310では、光学的な位置検知を行うため、例えば
図9において、投光部310A及び受光部310Bなどとともに、投光部310Aからの光を反射させる反射板として機能する反射シート311を回転タワー66の各側面の適宜位置に備えている。
【0087】
<ハンガー装置の作用・動作・効果>
なお、本実施形態であるハンガー装置1の作用・動作・効果に関しては、以下の実施形態で詳細に説明するので、この実施形態ではその作用・動作・効果の説明を省略する。
【0088】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同一部材については、同一符号を付して重複説明を避ける。
本発明では、
図4及び
図7に示すように、予め設定された所定の各作業場所で、ハンガー装置1が搬送・把持するドアDを、そのドアDの種類に合わせてアタッチメントの交換作業(後当接部52の交換作業)が必要となる場合がある。本実施形態では、後述する回転タワー66をその作業場所で回転駆動させることで、これに対応させるように構成されている。即ち、本実施形態では、ハンガー装置1の回転タワー66を回転させることによって、後当接部52の交換作業を行うように構成されている。このために、回転タワー66の駆動システム10がそれぞれの作業場所に設置されている。
【0089】
<回転タワーの駆動システムの構成>
この駆動システム10は、所定の作業場所(例えば、後述の第3作業場所)毎に夫々設置された切替機構7(
図4及び
図6参照)に備えられており、進退機構8と、この進退機構8を付設する回転駆動機構9と、これらの機構8,9を駆動制御するための制御部100(
図8参照)と、を備えている。なお、進退機構8及びこの進退機構8を付設する回転駆動機構9は、上述の作業場所(第3作業場所)毎に設けたXYテーブル72側に、それぞれ正確に位置決めされて設置させている。
【0090】
<進退機構の構成>
進退機構8は、ハンガー装置1の移動動作のタイミングに合わせて、例えば詳細は後述するが、
図10に示す第3作業場所での第3工程A3において、後述の回転駆動機構9を搭載したXYテーブル72をチェーンコンベアCCの搬送路に向け、Y方向に沿って進退させるものであり、
図7に示すYシリンダ81を備えている。
【0091】
Yシリンダ81は、
図7に示すように、Yシリンダ81のシリンダロッド81AをY方向に一定ストローク長Lだけ移動させるため、例えばソレノイドなどの電磁駆動手段で構成されたYシリンダ駆動手段81Bと、基台71の上面に設けた溝に係合する突起からなるガイド部81C(
図4参照)などと、を備えている。特に、このYシリンダ81については、後述する理由から、シリンダロッド81Aのストローク長Lを高精度に制御することが要請されている。なお、このシリンダロッド81Aは、高精度なストローク長Lだけでなく、XYテーブル72が最先端まで前進移動したときに後当接部52に当接することがないよう、ストローク長さが制御されている。
【0092】
Yシリンダ駆動手段としては、精度の高い前進移動動作が制御可能であるならば、例えば図示外のエアー供給手段で構成し、供給される空気圧によってYシリンダのシリンダロッドが、一定ストローク長Lだけ高精度で前進移動させるようにしてもよい。また、高い精度での精密送りを行わせることが可能な公知のボールネジ式の機構を採用してもよい。
【0093】
上述したように、Yシリンダ駆動手段81Bは、シリンダロッド81Aを一定ストローク長Lだけ前進移動させるように構成されており、
図8に示すように入力が制御部100の出力に接続されている。なお、Yシリンダ81のシリンダロッド81Aの前進移動可能長Lは、これと一体に前進移動動作するXYテーブル72の移動長を与える重要なものであり、前述した理由から、また次に説明する2つの要件を満たすことが必要であることから、その移動長Lは高精度であることが必要である。
【0094】
即ち、
1)XYテーブル72には回転駆動機構9の押上シリンダ91のシリンダロッド91Bが立設されているが、回転タワー66の回転ロック状態を解除させるためには、このシリンダロッド91B先端の押上板91Cの上面が、回転タワー66下端と一体の昇降バー67の先端面である押圧板67Aに対して、位置的な偏在を起こさずに確実に押上させるようにすること、
2)同じく、前進移動するXYテーブル72とともに、このXYテーブル72上のスタンド73の庇部73Aに垂設する(回転駆動機構9の)回転駆動手段93及び押下シリンダ92が、回転タワー66の直上に移動し、天井部分の開口66Eに篏合させるようにすること、
の2要件が満たされることが、回転タワー66を確実に回転させるために必要である。
【0095】
そこで、本実施形態では、XYテーブル72の前進移動長Lを高精度に設定させるため、XYテーブル72を前進移動させるシリンダロッド81Aの移動長に関係するYシリンダ81の内部長の加工精度を高めて対応させている。
【0096】
このような構成の本実施形態の進退機構8では、搬送移動するハンガー装置1が所定の作業位置に到達すると、ここまで自動搬送してきたドアDの取り外しのために、作業者が手動でスライド部材64をXシャフト62に沿い後退移動させる。これにより、後当接部52によるドアDの把持動作を解除させ、ドアDの取り外しができる。その後、このドアDに替わって別のドアを把持させる場合、現在使用していた後当接部52から次ドア用の後当接部に自動で切り替えるため、前述の高精度検知手段310を設けている。
【0097】
<高精度検知手段>
この高精度検知手段310は、回転タワー66に対して回転駆動機構9による回転動作を確実に自動で行わせるため、事前に、かつ、確認的な準備として行うものである。本実施形態では、後述する
図10に示す第2作業場所での第3工程A3において、ハンガー装置1からドアDを取外した後の空状態となったハンガー装置1に対して実施するが、特にこの第3工程A3に制限されるものではない。
【0098】
例えば第4作業場所での第4工程A4において、空ハンガー装置1が第4作業場所に到着したタイミングで、直ちに、回転タワー66の回転動作を行わせる直前に行ってもよい。実際、第3作業場所から第4作業場所にハンガー装置1を移動する際には、ロック部材63のロック力にもよるが、第4作業場所へのハンガー装置1の搬送動作中に慣性力などに起因した僅かな移動が発生する可能性も否定できない。このような事情から、第4工程A4に到着直後に高精度位置検知を行わせる構成である方が寧ろ良い場合もある。ただし、この第4作業場所での回転タワー66の後当接部52A~52Dの切替交換作業を完全自動化させるには、スライド部材64や基底板65をXガイド部材61に対して所定位置(ホームポジション)まで高精度な位置移動などが必要となるので、そのための移動手段を付設することが必要にはなる。
【0099】
本実施形態の高精度検知手段310は、回転駆動手段9と回転タワー66との相対位置の正確な確認検知を行う。なお、本実施形態では、上記相対位置の調整がうまく行われていない場合、
図8に示す制御部100が図示外の警告ブザーを鳴動させるなどして作業者に知らせ、手動による基底板65のホームポジションへの移動がきちんと行われているか位置調整を再度行うように促すようにしてある。
【0100】
上述したように、本発明の高精度検知手段310は、回転タワー66とXYテーブル72との正確な相対位置を高精度で確認検知するものであり、各種構成ものが適用可能であるが、本実施形態では、
図9(A)に示すように、回転タワー66に取り付けた後当接部52(
図9(A)では後当接部52Cのみ示す。)の端面に設けた反射シール521(
図9(A)では後当接部521Cのみ示す。)により正確な位置精度を検知させている。なお、この高精度検知手段の具体的な構成としては、勿論、次に詳述する構成に限定されるものではない。
【0101】
<高精度検知手段の構成>
即ち、この高精度検知手段310は、作業場所の近傍のハンガー装置1が通過する搬送路の直下の床面に立設させた前述の検知ボード300に設けた所定波長の光を出射する発光素子からなる投光部310Aと、この投光部310Aからの光を反射させるために回転タワー66の各側面下部に取り付けた反射シール311と、投光部310Aからの光をこの反射シール311で反射させたときの戻り光を受光するフォトトランジスタ(phototransistor)などの受光部310Bなどと、で構成されている。
【0102】
受光部310Bは、投光部310Aから出射する光が反射シール311で反射後に確実に高い位置精度でその光を受光可能となるような配置構成であればよい。例えば、投光部310A及び受光部310Bを、縦方向に延びたX方向については非常に細幅形状のもので構成するようにしてもよいし、それ以外の構成及び配置であってもよい。なお、本実施形態では、この高精度検知手段310を光学的な方法で構成して回転タワー66の精密位置検知を行う構成としたが、これ以外の適宜の方法、例えば電磁的な判別、超音波、赤外線、その他各種の精密測距方法の適用が可能である。
【0103】
<高精度検知手段の動作作用>
本実施形態の高精度検知手段310は、この回転タワー66が指定位置で正確に位置決めされているときにのみ、この状態を確認可能とするとともに、この確認検知にともなって所定の信号を制御部100へ出力する。制御部100は、この信号が入力したことを検出すると、回転タワー66の後当接部52の交換作業が必要と判断した場合にのみ、Yシリンダ駆動手段81Bへ駆動信号を出力する。これにより、Yシリンダ駆動手段81Bを作動し、XYテーブル72を所定位置までY方向に前進移動させ、回転タワー66に対する一連の回動動作を自動的に開始させる。
【0104】
このようにして、
図7に示すように、XYテーブル72がYシリンダ駆動手段81Bの駆動力で+Y方向に前進移動するが、これに先立ち既に指定位置まで回転タワー66が移動して待機しているので、この回転タワー66の直下までXYテーブル72が精度高く移動して来ることとなる。また、このXYテーブル72の移動動作により、同時に、XYテーブル72に搭載させてある押上シリンダ91、回転駆動手段93、及び押下シリンダ92も、回転タワー66の直下、及び直上部分まで、精度高く移動させてくることができる。
【0105】
<回転駆動機構の構成>
回転駆動機構9は、
図4に示すように、既に指定位置まで移動してきているハンガー装置1の(後当接部52を設けた)回転タワー66に対して、その回転タワー66を自動回転させ、ドアDのサイズ、形状、又は大きさなどの種類に合わせ、複数種類の後当接部52の中から何れか最適な後当接部52を自動で選択して自動で切替え動作を行うものである。
【0106】
本実施形態の回転駆動機構9は、前述した2種類のシリンダ及び回転装置、即ち、押上シリンダ91と、押下シリンダ92と、回転駆動手段93とを備えており、制御部100の制御によって適宜角度だけ回転タワー66を回転させて所望の後当接部52に自動で切替え操作する。
【0107】
押上シリンダ91は、
図7に示すように、XYテーブル72の上面においてXYテーブル72の前進(Y)方向の先端側に固設されており、このシリンダ内部には上下方向に昇降するシリンダロッド91Bと、この上端に取り付けた押上板91Cと、が設けられている。また押上シリンダ91には、上記シリンダロッド91Bの昇降動作を行うために、
図8に記載の駆動手段である押上シリンダ駆動手段91Aが備えてある。従って、この押上シリンダ91は、制御部100からの制御信号を入力すると、直上に待機する昇降バー67の下端の押圧板67Aを下方から押し上げるように構成されている。このため、押上シリンダ駆動手段91Aの入力が制御部100の出力に接続されている。
【0108】
なお、この押上シリンダ91は、前述したように、起立状態で設置された押上シリンダ91内部を上下(Z)方向に昇降するシリンダロッド91Bの最降下時の押上板91C上端高さ(XYテーブル72の床面から高さh、
図7参照)が、昇降バー67の下端に設けた押圧板67Aよりも下方位置となるように、押上シリンダ91非動作時の上記上端高さが制限されている。このように高さを規制させているので、XYテーブル72の前進移動の際に、スライド部材64の基底板65から垂下している昇降バー67下端の押圧板67Aに押上シリンダ91が衝突するのを回避して進入することができる。
【0109】
押下シリンダ92は、XYテーブル72に立設するスタンド73の庇部73Aの天井面に固設している。また、この押下シリンダ92の図示外のシリンダロッドの先端、即ち下端に回転駆動手段93を固設させている。なお、押下シリンダ92は、下方(-Z)へ前進・降下可能な上記シリンダロッドを備えているとともに、このロッドを下方(-Z)へ前進(下降)動作させるために、駆動手段である押下シリンダ駆動手段92A(
図8参照)が設けられている。この押下シリンダ駆動手段92Aも、押上シリンダ駆動手段91Aと同様、入力が制御部100の出力に接続されている。
【0110】
回転駆動手段93は、押下シリンダ92の図示しないシリンダロッド先端側と一体に固設されており、本実施形態ではステップモータ93Aと、回転タワー66の上部開口66Eに嵌挿可能な回転体93Bとで構成されている。
【0111】
ステップモータ93Aは、制御部100の制御で90度、180度、270度の何れかの角度で回転する。回転体93Bは、ステップモータ93Aの回転軸(図略)の先端に固着状態で取り付けられており、多少の形状変化を可能とする弾性材若しくは樹脂材などの適宜材料を用い、回転タワー66の上部開口サイズよりも若干小さな略四角柱状に形成されている。このように構成された回転駆動手段93によれば、ステップモータ93Aとともに回転体93Bも同一角度だけ回転する。本実施形態のステップモータ93Aも、制御部100からの制御信号によって駆動を制御させるため、
図8に示すように入力が制御部100の出力に接続されている。
【0112】
なお、ステップモータ93Aの回転軸に一体に取り付けられた回転体93Bは、本実施形態のような略四角柱状の形状に限るものではなく、例えば回転タワー66の回転中心に向けて進入し易くするために、先端(下端)側が先に行くほど窄まった略四角錘台形状を有する形状などであってもよい。
【0113】
このような構成の回転体93Bは、XY方向に関して多少変位可能な材質のもので形成してあれば、回転タワー66の開口66Eとの間に多少の位置的な誤差があっても、最終的にはその相対位置誤差を回転体が変形することで吸収し、回転体93Bを回転タワー66の開口66Eに確実に篏合可能となる。また、このような材料で形成した回転体でなくても、例えば押下シリンダに対してステップモータ及び回転体を、XY平面方向について多少の遊びを設けて取り付けるように構成にすれば、回転体93Bの回転中心と、回転タワー66の開口66Eの中心との間に多少の誤差があっても、先述の遊びで吸収できる。これにより、回転体93Bを回転タワー66の開口66Eに確実に篏合可能となる。
【0114】
なお、ステップモータ93Aの回転軸に取り付けた回転体93Bの下端も、XYテーブル72からの高さが規制されており、換言すれば、押下シリンダ93の(図示外のシリンダロッド)下端から回転体93Bの下端までの距離(高さh´、
図4参照)が一定長に規制されている。このように高さ規制させているので、押上シリンダ91の場合と同様、XYテーブル72が前進移動する際に、回転タワー66の上端に回転体93Bが触れたり衝突したりするのを回避させ、安全に進入できるようになっている。
【0115】
<回転駆動機構の作動前の準備>
次に、ハンガー装置1に設置した回転タワー66の駆動システム10である、回転駆動動作、即ち切替機構7に備えた回転駆動機構9の動作システム、及びこの動作に先立って作動させる進退機構8の動作システムについて、
図6及び
図7などを参照しながら詳細に説明する。
【0116】
図1に示すドアDの前後両側端部に前当接部51及び後当接部52が当接することでしっかりと挟持しているドアDに対して、この交換作業を行うには、最初に、後当接部52によるドアDの把持動作を一旦解除させておくことが必要である。そこで、この当接状態解除のため、
図4及び
図5に示すロック部材63を操作してXシャフト62とロック部材63との係合ロック状態を解除させた後、回転タワー66を搭載している基底板65を後方(-X方向)へある程度の移動量で後退させる。なお、この移動動作につきましては、最終的な後退移動調整位置である、ホームポジションまで後退させておいてもよい。
【0117】
これにより、ドアDの前後の両側端部での当接を解除することにより、これまで搬送・把持してきたドアDをハンガー装置1から取り外すことができる。このドアDを取り外した後のハンガー装置1は、手動で指定位置(ホームポジション)へ移動させるとともに、この移動位置を高精度検知手段310のアシストにより、高精度に位置調整できていることを確認できる。その後、制御部100の制御によって、回転タワー66の自動による回転操作により、後当接部52の交換作業を行う。なお、ここで、この後当接部52の自動交換作業を行う場合には、前述したように、回転タワー66の停止位置を高精度検知手段310(
図9参照)で精度高く確認調整させる必要がある。
【0118】
そこで、指定の作業場所(第2作業場所)の最終段階などでは、後当接部52及び回転タワー66を備えた基底板65及びこれと一体のスライド部材64を、指定位置(ホームポジション)までXシャフト62に沿って-X方向に移動させる。この移動の際に、基底板65及びスライド部材64は、高精度検知手段310(
図9(B)参照)での高精度な位置決めがなされ、指定位置に位置決めされて静置し、回転タワー66への自動回転動作が行われるのを待機する。なお、上記指定の作業場所(第2作業場所)での高精度位置調整が確認完了した時点では、ロック部材63がXシャフト62に噛み込んで左右に移動せぬようしっかりとロックされ、固定保持されていることが必要である。
【0119】
なお、本実施形態では、この高精度検知手段310での位置検知が正確に行われていないと、警告音が鳴動するように構成してある。このときには、例えば手動操作によってスライド部材64およびこれと一体の基底板65に設けた回転タワー66をXシャフト62に沿って所定の措定位置(ホームポジション)まで正確にスライド移動させることが必要となる。このホームポジションへの高精度な位置移動が完了すると、これを高精度検知手段310が確認・検知して検知信号を制御部100へ出力する。これにより、次の第3工程A3では、制御部100では、後当接部52の交換作業が必要と判断した場合に、回転タワー66の回動動作が可能な状態に設定される。
【0120】
<回転駆動機構の具体的動作>
ここまでの一連の予備的な手動作業による回転タワー66側の所定位置(ホームポジション)への移動動作後、後当接部52の交換作業が必要な場合にのみ、次に後当接部52の交換作業が自動で行われる。
【0121】
回転タワー66に対するこのような精度の高い位置決め状態の下で、回転タワー66は、
図6(A)及び(B)に示すように、圧縮ばね67Bの弾性力で最下部まで降下している。その状態の回転タワー66は、4つの側面のうちの何れか1面が、回転ストッパ65Bの端面と当接しているので、回転タワー66が不用意に回転するのが阻止されている。従って、回転タワー66の各側面に設けてあるアーム66A~66Dの先端側の第1~第4後当接部52A~52Dは、その位置が不動状態となっており、このままの状態では後当接部52の交換ができない。
【0122】
ここで、所定の高精度位置まで移動してロック状態で停止しているスライド機構6の基底板65などに対して、
図7に示すように、切替機構7のXYテーブル72がYシリンダ駆動手段81Bによって指定位置までY方向に前進移動して繰り出してくる。その結果、XYテーブル72の前端寄りの上面に立設する押上シリンダ91が、基底板65に取り付けてある昇降バー67の直下に移動してくるとともに、回転駆動手段93及び押下シリンダ92が回転タワー66の真上に移動してくる。
【0123】
この状態で、
図6(C)及び(D)に示すように、押上シリンダ91が作動してこのシリンダロッド91B及び押上板91Cが上昇し、昇降バー67の押圧板67Aを下から押圧する。その結果、圧縮ばね67Bの弾性力に抗して、昇降バー67及びその上に一体に取り付けた回転タワー66が押上げられて上昇する。その結果、回転タワー66は、回転ストッパ65Bとの係合状態から解放され、回転フリーな状態となる。その直後に、押下シリンダ駆動手段92Aが作動し、回転タワー66の真上に位置する押下シリンダ92が、ステップモータ93Aとともに押下する。これにより、ステップモータ93Aの回転体93Bが、回転タワー66の天井面の開口へ自動で進入するとともに篏合する。
【0124】
このようにして、ステップモータ93Aの回転体93Bが回転タワー66と嵌合一体化された後、ステップモータ93が作動し、所定角度(90度)単位で回転するので、それと同じ角度だけ回転タワー66も回転される。これにより、回転タワー66の何れかの側面に取り付けたアームの先端側の後当接部52の角度位置も変動し、ドアの種類に応じた最適な後当接部52がユースポジションの角度位置に繰り出されてくる。
【0125】
これにより、ドアの種類に応じた最適な後当接部52を入れ替えて、ドアの後端に当接させることが可能となるが、この入れ替えた後当接部52を次ドアに当接させるのに先立ち、進退機構8を作動させて、切替機構7のXYテーブル72を元の位置まで後退させて戻しておく。これは、回転タワー66を設けた基底板65やスライド部材64が次のドアの方に向けX方向に前進するときの障害となるのを回避するためである。
<本実施形態の作用および効果>
【0126】
また、本実施形態では、回転タワー66の回転動作を、庇部73Aの天井面に設置した押下シリンダ92及び回転駆動手段93で行っているので、回転タワー66の開口66Eと押下シリンダ92の軸心合わせに一定の精度が要求されている。
【0127】
そこで、本実施形態では、例えば回転タワー66の回転駆動機構に対して要求されている軸心合わせを緩和させるとともに、構成を簡素化させるため、押上シリンダ91には押上板91Cを設けてある。即ち、この押上板91Cは回転機能を付与していないので、押下シリンダ92の軸心合わせが必要なく、その分、押上シリンダ91側での位置決め精度フリーを実現させてある。但し、押上板91Cは、押圧板67Aに対してスラスト軸受け或いはこの種の機能を備えた、若しくは摩擦抵抗をできるだけ抑えた材質、かつ、平滑性の高い形状などのもので構成するのが好ましい。
【0128】
また、本実施形態のような構成の他に、例えば押上シリンダ91に押下シリンダ92及び回転駆動手段93の機能も付与して兼用させるような構成にすれば、押下シリンダ92及び回転駆動手段93が不要となる分、簡素化を図ることができる。但し、その場合には、押下シリンダ92のシリンダロッドがなくなるため、回転タワー66を回転させる際に回転タワー66自体が左右に揺動する虞がある。そこで、回転タワー66自体に対して、何らかの揺動防止手段を付設することが好ましい。例えば、揺動ストッパ65Bのような構造のものを回転タワー66の側面に押し当てるようにして回転時の揺れ止めを行うようにしてもよい。このような構成とすれば、回転駆動手段93及び押下シリンダ92の削減に伴う構成の簡素化が図れるばかりか、回転タワー66の開口に対する回転体93Bなどの高い位置決め精度を必要とせず、便宜である。
【0129】
[第3の実施形態]
以下、本発明の第3の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1、第2の実施形態と同一部材については、同一符号を付して重複説明を避ける。
<ハンガー装置全体の動作の流れ>
本発明の第3の実施形態に係るハンガー装置1全体での作業動作の流れの一態様について、
図10を参照しながら詳細に説明する。
図10は、本実施形態に係るハンガー装置1全体の動作の一例である作業工程を示すものであり、大略構成として、第1工程A1から第4工程A4で構成されている。
【0130】
第1工程A1では、所定の作業場所(以下、第1作業場所)にて送り込まれてきた図示外の車両から所定作業のために、ドアを取り外すとともに、その取り外したドアに対して所要の作業を行う。因みに、この作業については、例えば本実施形態の場合、取り外したドアに対してドアミラー、スピーカ、その他の各種フィッテイング作業などを行っているが、勿論これらの作業内容には限定されるものではない。なお、本実施形態での第1作業場所へは、例えば
図1において、前述の搬送手段2によってハンガー装置1がドアDを搭載されていない空状態(これを、「空ハンガー状態」と呼ぶ場合がある。)で送り込まれてくる。
【0131】
この作業場所には、停止手段25が設置されている。そこで、この送り込まれてきた空のハンガー装置1(これを、「空ハンガー装置1」と呼ぶ場合がある。)は、その停止位置で停止させるべく停止手段25が作動し、ドアDへの所要の作業完了までの間、搬送動作が停止する。また、この第1工程A1では、所要の作業を完了したドアDに対しては、そのドアDをハンガー装置1に搭載させるとともに、制御部100の制御で停止手段25による停止動作を解除する。これにより、搬送手段2が作動し、ドアDを搭載した状態のハンガー装置1が第2工程A2、第3工程A3までドアDを搬送させていくことができる。
【0132】
第2工程A2でも、所定の作業場所(以下、第2作業場所)までドアDを搭載させた状態(これを、「実ハンガー状態」とよぶ場合がある。)にあるハンガー装置1(これを、「実ハンガー装置1」とよぶ場合がある。)は、第1作業場所と同様に設けた停止手段25に実ハンガー装置1が到着すると、停止手段25のバフラー25Aによって実ハンガーの搬送動作が停止する。そこで、作業者は、ハンガー装置1に架設されたドアDに対して、各種の作業を行う。このときの作業の種類については、例えば、ドア用ガラスの取付け、スピーカなどの設置、フェンダーミラーの取付けなど各種の作業を行うが、その作業の種類には特に制限はない。
【0133】
第3工程A3では、所定の作業場所(以下、第3作業場所とよぶ)に移動されてきた実ハンガー装置1からドアDを取り外し、そのドアDを待機中の所定車両へ取り付ける(付け戻す)。その作業が完了したら、空状態になった空ハンガー装置1に対して、作業者がホームポジションまで回転タワー66を後退させることで、高精度検知手段310がその位置まで後退してきたことを確認検知する。これにより、ハンガー装置1の搬送動作が再開し、次の作業場所まで移動する。
【0134】
第4工程A4では、第3工程A3からドアDが取り外されたハンガー装置1を把持した空ハンガー状態で搬送手段2によって搬送されてハンガー装置1が送り込まれてくる。そして、この第3工程A3では、所定の作業場所(以下、第3作業場所)まで送り込まれてきたハンガー装置1に対して、この第3作業場所へ到着すると、第1、第2工程の場合と同様、この第3工程A3に設けた停止手段が作動して所定位置にてハンガー装置1が走行動作を停止する。
【0135】
この第3作業場所にハンガー装置1が到着したとき、回転タワー66については、既に第2工程A2で所定位置であるホームポジションにおいて精密な位置調整が行われてロック状態に保持されている。即ち、高精度で位置決めされた状態が確保されている。そこで、この位置で静置している回転タワー66に対して、進退機構8及び駆動機構9が順次作動し、次ドアの種類に対応して後当接部52の交換が必要であるかを判断する。必要と判断した場合には、制御部100の制御により、自動で所定の必要角度だけ回転タワー66が自動的に回動され、次に搬送するドアDのサイズ及び大きさに対応した後当接部52へ交換される。
【0136】
このようにして、ハンガー装置1は、次のドアDに対応した適正な後当接部52へ交換されて用意されたならば、この後当接部52の交換準備が終了したことを制御部100が検知する。この検知動作の後、制御部100は、その制御により、再び次ドアに対する所定作業を行うために、搬送手段2に連れ回して移動させるため、停止手段25,26による停止動作を解除させる。これにより、搬送手段2のプッシャーC2の到着とともにドグ22がプッシャーC2と嵌合し、プッシャーC2の走行動作によって一体となりながら移動する。つまり、第1工程A1へ向けて空ハンガー状態でハンガー装置1の搬送を開始する。なお、後当接部52の交換作業の完了検知は、例えば本実施形態の場合、進退機構8による切替機構7のXYテーブル72の後退動作の作動を制御部100が完了させたことで、交換準備の終了を検知するように構成している。しかしながら、この発明では、特にこのような構成に限定されているものではなく、各種の手段や方法が適用可能である。
【0137】
このように、本実施形態によれば、第3工程A3では、
図8に示す制御部100の制御により、全自動で回転タワー66の回動動作が実施可能となっている。従って、完全自動での後当接部52の交換作業が行えるので、例えば人為的なミスのために後当接部52の交換をうまく行えずにドアDの付け替え作業を失敗してドアの破損や損傷などのトラブルを生じる、といったことを確実に回避できる。
【0138】
<駆動システムの具体的動作>
(第3工程での作業内容)
次に、ハンガー装置1による各種作業の中の第4工程A4(
図10参照)における後当接部52の自動交換作業について、特に回転タワーの自動切替機構を構成する駆動システム10の動作について、
図11~
図13を参照しながら具体的に説明する。
【0139】
本実施形態の第4工程A4での後当接部52の自動交換作業については、
図11に示すように、第1ステップS1~第4ステップS4で構成されている。
【0140】
第1ステップS1では、制御部100が、回転タワー66の回転作業、つまり後当接部52の交換作業が必要か否かを、ホストコンピュータ210からのドア情報に基づき判断する。そして交換作業が必要と判断した場合には、第2ステップS2へ移行する。一方、交換作業が不要である場合には、第3ステップS3へ移行する。
第2ステップS2では、後述する交換作業を
図12に示すフローに沿って行うが、その具体的な作業については後述する。
第3ステップS3では、第1工程S1へ戻るか否かについて、つまり、このハンガー装置1を用いたドアに対する所要の作業を終了するか否かについて、ホストコンピュータ210からの作業指示情報に基づき、制御部100が判断する。そして、第1工程へ戻る必要があると判断した場合には、第1工程へ移行して再度同様の工程を繰り返す。一方、作業をここで終了すると判断した場合には、第4ステップS4に移行する。
第4ステップS4では、例えば工場全体のライン停止などに伴い、ハンガー装置を用いた一連の作業を終了する。また、必要に応じて、例えばこの作業の再開開始の際のドアの種類などの情報が分かっている場合には、その情報に基づき必要な角度だけ回転タワーを回動させてから一連の作業を終了するようにしてもよい。
【0141】
(回転タワーの自動切替動作)
この回転タワーの自動切替動作について、
図12を参照しながら詳細に説明する。
この自動切替動作は、第2-1ステップS21から第2-6ステップS26で構成されている。
初めに、第2-1ステップS21での作業に先立ち、以下のような動作を行っている。即ち、前後の当接板51,52で挟持されたドアDは第3工程A3で取り出されて車両に着け戻されるので、搬送手段2によって第3作業所まで搬送されてくるハンガー装置1はドアDを把持した実ハンガー状態で移動してくる。因みに、後当接板52を取り付けてある回転タワー66は、基底板65に搭載されているが、スライド機構6のXガイド部材61のXシャフト62に沿ってX方向の終端であるホームポジション位置まで後退移動した状態で戻されており、ハンガー装置1の一部として搬送されてくる。
【0142】
第2-1ステップS21では、このようにして移動されてくるハンガー装置1は、所定の第1作業場所まで搬送手段2であるチェーンコンベア20で搬送されてくる。そして、指定の作業位置に到達したところで、待機する停止手段25により、その場所にてハンガー装置1は停止させられる。なお、本実施形態の場合、この停止位置に関する精度は、停止手段25の位置などに依存する。また、この停止手段25の動作タイミングなどに関しては、制御部100により高精度での時間調整が可能であるものとする。
【0143】
第2-2ステップS22では、ホストコンピュータ210から、次に搬送すべきドアに対応する車種情報が送信されてくる。そして、これを受信した受信部200から制御部100へその車種情報(この場合、第1後当接部52Aが次に使用予定とする。)が出力される。一方、これを入力した制御部100は、後述する車種情報の内容によっては、つまり次の車種が現在の車種と異なり現在の後当接部52Cでは不適切というような場合、所定の指示信号を出力する。
【0144】
そして、次のドア用の後当接部にこれまでとは異なる後当接部を用いる場合には、この制御部100からの制御信号により、進退機構8及び回転駆動機構9が作動し、回転タワーが所定の必要角度だけ回転制御される。
【0145】
なお、次のドアが現在のドアDと同じもしくはこれと類似するタイプである場合には、引き続き同じ後当接部52を用いるが、その場合、後当接部は交換する必要がないので、回転タワー66の回転動作を行わせるといった操作が不要である。ただし現在のドアDを取り外すためには、スライド部材64を後退移動させ、後当接部52によるドアDの把持動作解除を行わせるため、ロック部材63Aを操作してXシャフト62との係合を解除させることが必要である。
【0146】
第2-3ステップS23では、現在、搬送されてきたハンガー装置1に使用されている後当接部52がどれであるかを高精度検知手段310が判別する。その判別方法は、例えば本実施形態では、
図9を用いて前述したように、4面からなる回転タワー66の各アーム先端に取り付けてある後当接部52の外端面に設けた反射シール521の光学的な読み取りによって、現状の後当接部52を判別している。なお、この場合には、
図13の<S23>に示すように、現状の後当接部が第3後当接部52Cになっているものとする。なお、
図9には、後当接部52は、便宜上、一面のみ記載してある。
【0147】
第2-4ステップS24では、現状の後当接部52Cから次に使用したい後当接部へ交換させるために、回転タワー66の回転させるべき角度を、例えば制御部100に備えるCPU(Central Processing Unit)などからなる演算部で算出させる。
【0148】
この場合、第3後当接部52Cから第1後当接部52Aへ切替えるため、
図13<S24>に示すように、第3後当接部52Cから第4後当接部52Dへ、さらに第1後当接部52Aへ回転タワー66を(時計回りに)回転させることが必要である。従って、90度×2=180度が回転タワー66に対する回転操作すべき角度である。なお、本実施形態では、回転駆動機構9の構成上の都合から、回転タワー66を上から見た時の回転可能な方向が時計回りのみに制限されているものとする。
【0149】
第2-5ステップS25では、作業場所へ移動してきたハンガー装置1では、次に使用するドアDの種類に対応させるために、
図13<S25>に示すように、現状の後当接部52Cから、この次に使用する後当接部52Aへ後当接部52の交換を行う。この交換作業では、この場合、回転タワー66を所定角度180度回転させるために、進退機構8及び回転駆動機構9を所定のタイミングで作動させる(ここでの各機構の動作については、既に詳細は前述した)。
【0150】
この場合、第2-4ステップS24で行って得られた回転角度の算出情報から、回転タワー66を180度だけ回転させることで、第3後当接部52Cから第1後当接部52Aへ後当接部52の交換作業を自動で行わせる。なお、この後当接部52の具体的な自動交換作業などについては、<回転駆動機構9の動作>の欄で既に詳細に説明したので、ここではその説明を省略する。
【0151】
第2-6ステップS26では、第2-5ステップS25にて回転タワー66の回転操作が終了しているので、
図8に示す制御部100の制御でXYテーブル72を元の状態まで後退させる。その後、制御部100の制御により、停止手段25によるハンガー装置1の走行停止状態が解除される。これにより、搬送手段2のチェーンコンベア20のドグ22にハンガー装置1のプッシャC2を係合させてあることで、ハンガー装置1がこれに従動して次位の作業場所へ向けて移動していく。
【0152】
<駆動システムによる効果>
従来、毎回所定の作業場所へ送り込まれてくる車両に取り付けてあるドアDの種類に応じて、態々、ドアDの基端側を把持する手段である後当接部52を確認し、もし種類の異なるドアを設けた車両が送り込まれてくる場合には、これに備え予め後当接部52を交換する煩瑣な作業が強いられていた。しかしながら、本実施形態に係る駆動システム10によれば、以下のような効果が得られる。
・次の車両に取り付けてあるドアの種類の確認作業が不要になる。
・もし次の車両のドアがその直前のドアの種類と異なる場合でも、これを自動化させて行える。このため、そのドアに対応した(アタッチメントである)後当接部の作業者による手動での付け替え作業が不要になる。
・後当接部(アタッチメント)の交換作業が極めて短時間で迅速に行えるようになり、作業時間のスピードアップを図ることができる。
従って、本実施形態によれば、以上のような数多くの顕著な効果が得られるようになる。
【0153】
[第4の実施形態]
(ロック部材63の代替手段:変形例)
以下、本発明の第4の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1、2、3の実施形態と同一部材については、同一符号を付して重複説明を避ける。
【0154】
図14及び
図15は、本発明に係るハンガー装置に用いることができるロック機構400を示すものであり、このロック機構400は、ロック動作を行わせることによって、X方向にスライド自在な回転タワー66側を所望位置で自由に固定させることができる。
【0155】
(ロック機構の構成)
本実施形態のロック機構400は、スライダ410と、解除プレート420と、リテーナ430と、剛球440と、アウタリング450と、圧縮ばね460と、を備えている。
【0156】
スライダ410は、中央部にはXシャフト62が貫通する中央部材411が設けられており、略平面視略T字形に形成されている。また、スライダ410は、後述する他部材、即ち、解除プレート420、リテーナ430、剛球440、アンタリング450、及び圧縮ばね460などを一体に保持しており、Xシャフト62に沿ってX方向に移動自在に構成されている。このスライダ410は、断面略コ字形のXガイド部材61の内面に沿って摺動可能に構成することで、Xシャフト62に対してYZ平面に沿って上下に揺動するのを回避させることができるので、安定した状態でX方向へスライド可能となる。
【0157】
また、このスライダ410及びこれと一体の上記各部材は、図示外のロック部材で移動動作のロック及びロック解除の各設定を行うことができるようになっている。即ち、このロック部材は、第1の実施形態で説明した
図2などに示すロック部材63などの構造のものとは必ずしも同一である必要はないが、手動で所要方向(例えば+/-Z方向、或いは+/-Y方向)に押動又は回動動作させることで、ロック動作の設定および解除を行うように構成されているものであればよい。なお、このロック及びロック解除の設定動作は、必ずしも上述した方向への動作である必要はなく、要はロック及びロック解除の操作が行えればよい。
【0158】
解除プレート420は、スライダ410に対して傾斜可能な左右一対のもので構成されており、それぞれ、先端側(以下、これを“被押動部421”と呼ぶ)が互いに相手側の解除プレート420へ向けて折れ曲った略L字形状を有している。各解除プレート420は、基端側がスライダ410対して一定の遊びを設けて軸装させるための遊孔(図略)を設けている。同様に、先端側である被押動部421にも、Xシャフト62に対して一定の遊びを設けて軸装させるための遊孔421(
図14参照)を設けている。このような構成により、詳細は後述するが、被押動部421を-Z方向に押動させることで、後述の一対からなるアウタリング450が互いに接近動作し、これによりXシャフト62へのロック状態を解除可能となる(
図14(B)及び
図15参照)。
【0159】
リテーナ430は、
図14に示すように、左右一対の円筒状のものから構成されており、それぞれ、スライダ410の中央部材411と解除プレート420との間に挟持されている。本実施形態のリテーナ430は、アウタリング450の内側に重層された状態で設置されており、横方向に長く延びた円柱状のXシャフト62の外周面に対してわずかな隙間を保持して外挿されている。このリテーナ430は、所定の内径寸法を有する嵌入孔431を複数個所(本実施形態では4カ所)に設けており、この嵌入孔441に剛球440が転動自在、かつ、リテーナ430の半径方向に対して内外へ向けて僅かに移動可能な状態で遊嵌する。また、これらのリテーナ430は、外端部にステップ状の段部432を周設させている。この段部442に後述の圧縮ばね460の一端が係合している。
【0160】
剛球440は、リテーナ430の嵌入孔441に嵌入した状態で設置されている。この剛球440は、リテーナ430に対して外装されたアウタリング450の内周面が当接するようになっており、これによって剛球440が嵌入孔441から外部へ飛び出して脱出するのを阻止している。
【0161】
アウタリング450は、略中空円筒状のものであって、中央部材411を挟持した状態でその左右に一対設けられている。このアウタリング450は、より詳細には、中央部材411と解除プレート420との間で、かつ、リテーナ43の外周面側に重層するように設置されている。アウタリング450の内周面には、中央部材411寄りにテーパ状の押圧カム面451が周設されている。これにより、アウタリング450が互いに離間する方向(例えば
図15では左方向)にスライド移動すると、押圧カム面451によって各剛球441が中心方向に押し込められる。その結果、これらの剛球441を介してリテーナ430がXシャフト62方向への自由なスライド動作を行うことができなくなり、ロック機構400でのロック動作が行われる。即ち、回転タワー66側をスライド不可な状態で固定させることができる。なお、アウタリング450の、中央部材411側と対峙する端面(内側寄り端面)とは反対側端面(外側寄り端面)に近い内周面に、略輪状のストッパ部材470が固設されている。
【0162】
圧縮ばね460は、リテーナ430の先述した段部432とアウタリング450に固設されたストッパ部材470との間で圧縮された状態に挟持されており、常時、リテーナ430とアウタリング450とが互いに離間するような状態を保持させている。換言すれば、この圧縮ばね460は、リテーナ430に対して中心部材411へ当接させるような押当力を付与するのと同時に、各アウタリング450に対して中心部材4から遠ざかる離間力を付与させている。
【0163】
(ロック機構の作用効果)
従って、本実施形態のロック機構400によれば、普段は、この圧縮ばね460の弾性力により、このロック機構400と基底板65を介して一体に接続されたタワー66は、所望の位置で不動状態を保持することができるようになっている。このため、Xガイド部材61に対して正確に位置決めさせた状態のまま、このロック機構400でその位置を固定保持すれば、進退機構8及び回転駆動機構9を作動させることで、タワー66を適宜角度回動させることができる。これにより、把持しようとするドアのタイプに合わせて所望の後当接部52に自動で切り替えることができる。
【0164】
[第5の実施形態]
(高精度検知手段及び判別手段の代替手段:変形例)
以下、本発明の第5の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態において、第1乃至第4の実施形態と同一部材については、同一符号を付して重複説明を避ける。
【0165】
(構成)
本実施形態の高精度検知手段310及び判別手段320については、第1の実施形態の場合と同様、
図10における第3工程A3において、ハンガー装置1からドアDを取外した直後に、基底板65をホームポジションである最終後退位置まで移動させてあるかを高精度検知手段310により確認する。本実施形態では、このための高精度検知手段310を設置する検知ボード300´の設置位置が、第1の実施形態の検知ボード300と異なる。
【0166】
また、本実施形態の検知ボード300´には、
図9に示す第1の実施形態の検知ボード300とは異なり、
図16及び
図17に示すように、高精度検知手段310及び判別手段320が縦配置ではなく、水平配置されている。
【0167】
また、この検知ボード300´については、平面視でガイドレールGRの近傍側方に設置した第1の実施形態のものとは異なり、
図17に示すように、ガイドレールGRの搬送経路に重畳するような配置となっているように見える。しかしながら、このガイドレールGRは、
図18に示すように、上下に大きく上昇下降する配置状態となっており、検知ボード300´はそのガイドレールGRの急降下する直下に配置されているので、ハンガー装置1が搬送移動する際の障害となるのを回避させてある。
【0168】
なお、本実施形態での判別手段320では、第1の実施形態での判別手段の場合と異なり、判別手段320が検知する対象の後当接部52は、ユースポジションの後当接部52ではなく、90度遅れで配置されている後当接部である。従って、制御部100では、この分の90度の位相ずれを考慮して、回転タワー66の回動動作を制御する必要がある。
【0169】
(作用)
従って、本実施形態によれば、ガイドレールGRが上下に大きく変動するような構成の場合であっても、その直下に配置した検知ボード300´に対して、高精度検知手段310及び判別手段320をコンパクトにまとめて設置することができる。しかも、ハンガー装置1の近傍側方に検知ボード300´を設置しなくて済むので、作業者は、ハンガー装置1及びドアDに対する各種の作業を行う際の邪魔にならず、便宜である。
【0170】
<本発明及び各実施形態が有する効果>
従来、送られてくる車の車種などの種類に応じて、その車に取り付けるドアの種類も大きく変化することもあったが、このドアを移動搬送させるハンガー装置に設けるドアの把持用のアタッチメントとなる当接部がスピーディに交換できなかったという事情があった。このことから、ハンガー装置ごと交換させることが必要になっていたので、余分な時間を要するとともに、面倒かつ厄介な作業を強いられていた。
【0171】
ところが、本発明では、車種の変更に伴うドアの種類の変更が必要となっても、変更するドアに対応する別種類のドア把持用の当接部(アタッチメント)を各種取り揃えた回転タワーを備えている。そして、回転タワーの駆動システムにより、必要となる当接部(アタッチメント)を自動で交換できるように構成している。従って、本発明のハンガー装置及びこのハンガー装置に設置した回転タワーの駆動システムによれば、ドアの種類に応じてドアを把持する当接部を全自動で切り替える機能を備えており、把持するドアの交換に容易に、かつ、迅速に対応させることができるようになる。
【0172】
特に、本実施形態の回転タワーの駆動システムでは、ドアを把持する後当接部52の交換を自動的な構成のもので実現させている。即ち、本実施形態では、制御部100が全自動で回転タワー66と(この回転タワーの回転動作を行う)回転駆動機構9との精度の高い位置調整の確認を行った後、回転駆動機構9が回転タワー66の回転動作を自動で行い、後当接部52の切替え交換ができるように構成されている。従って、大掛かりなシステムを組むことが必要なく、省力化、作業効率のアップなど、コスト的なメリットなどの効果も大きい。
【0173】
また、本発明のハンガー装置によれば、搬送物を両側から挟持して把持させるアタッチメント(当接部)の一方側のみを交換させて多様な搬送物の種類に対応できるような構成とする。このため、多面体からなる回転タワーの各側面に、ドアの種類に対応させた交換用の(一方側の)アタッチメントをそれぞれ設置して用意してある。これにより、各種のドアに応じて回転タワーを回転させてホームポジションでの配置を切り替えることで、アタッチメントが自動で交換可能である。従って、必要最小限の機構のみでシステムを組むことが可能となり、合理的な構成となっている。
【0174】
換言すれば、本来ならば多数の当接部の設置には大きなスペース空間を必要とするのであるが、本発明では、スペース効率よく取り付け可能な多面体の回転タワーを使用することでこれを実現させているので、小型で多数種類の当接部が交換可能となる。
【0175】
特に、本実施形態によれば、ハンガー装置に付設する回転タワーは、略四角柱状のもので構成するとともに、各面毎に異なる後当接部を設置した、スペース的な工夫がなされたコンパクトな構造のものである。このため、大きな構造のものを必要とせずに済み、ハンガー装置の大型化を回避できるのと同時に、コストの削減も図ることができる。
【0176】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、等も含まれる。即ち、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものであり、例えば搬送物として特に車両用のドアなどに限定されるものではない。また、回転タワーについても、特に4角柱である必要はなく、例えば三角柱、五角柱、六角柱、・・・など多角柱状の形状を用いることで、多数のアタッチメントを用意して確保することもできる。
【0177】
また本発明では、例えばハンガー装置を停止させるための具体的な方法として、
図1および
図2に示す構成の停止手段をガイドレール近傍に付設するように構成したが、このような構成に限定されるものではない。なお、これ以外に、搬送移動中のハンガー装置がストップするときの具体的な態様としては、例えばハンガー装置が複数個渋滞して走行が停止している箇所において、停止中の最後部のハンガー装置の、トロリー部の第3滑動部と一体のテイルに対して、走行・搬送中の次のハンガー装置のドグが後方から衝止する場合でも起こり得る。即ち、ドグの先端側が、最後部のハンガー装置のテイルに後方から一部被さるような状態で突き当たって移動動作が停止する場合もあるが、これに関しては本発明では特に考慮しないものとする。
【符号の説明】
【0178】
1 ハンガー装置
10 回転タワーの駆動システム
2 搬送手段
21 トロリー部
21A~21C 第1滑動部~第3滑動部
22 ドグ
22A 嵌入孔
23 テイル
25、26 停止手段
25A じゃま板 (バフラー)
25B クランパ
251 第1シリンダ
252 第1シリンダロッド
253 連結アーム
253A 連結軸
254 首振りアーム
254 支軸
26A クランパ
261 第2シリンダ
27 リミットスイッチ
3 吊下手段
31A 第1連結部材
31B 第2連結部材
32 前ステー
33 後ステー
34 クッション部材
35 クッション部材
36 中間支持体
37 緩衝部材
4 支承手段
41 受け部材
42 受け部材
5 把持手段
51 前当接部
52 後当接部
52A~52D 第1~第4後当接部
521 反射シール(判別マーク)
6 スライド機構
61 Xガイド部材
62 Xシャフト
63 ロック部材
64 スライド部材
65 基底板
65A 回転孔
65B 回転ストッパ
66 回転タワー
66A~66D アーム
66E 開口
67 昇降バー
67A 押圧板
67B 圧縮ばね
68 ストップ板(反射板)
7 切替機構
71 基台
72 XYテーブル
73 スタンド
73A 庇部
8 進退機構
81 Yシリンダ
81A シリンダロッド
81B Yシリンダ駆動手段(駆動手段)
81C ガイド部
9 回転駆動機構
91 押上シリンダ
91A 押上シリンダ駆動手段(駆動手段)
91B シリンダロッド
91C 押上板
92 押下シリンダ
92A 押下シリンダ駆動手段(駆動手段)
93 回転駆動手段
93A ステップモータ
93B 回転体
100 制御部
200 受信部
210 ホストコンピュータ
300,300´ 検知ボード
310 高精度検知手段
311 反射シール
310A 投光部
310B 受光部
320 判別手段
320B 投光部(発光素子)
320C 受光部(フォトトランジスタ)
400 ロック機構
410 スライダ
420 解除プレート
430 リテーナ
440 剛球
450 アウタリング
460 圧縮ばね
470 ストッパ部材
A1 第1工程
A2 第2工程
A3 第3工程
A4 第4工程
CC チェーンコンベア
C1 チェーン
C2 プッシャー
C3 枢支軸
D ドア(搬送物)
h 押上シリンダのピストンロッド上端の高さ
h´ 押出シリンダのピストンロッド下端の突出高さ
GR ガイドレール
L Yシリンダのシリンダロッドの前進移動可能長さ
X ドア幅方向及びドアの搬送方向
Y ドアの厚さ方向
Z ドアの高さ方向