▶ 土橋 義英の特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072470
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】段階減圧式耐圧管
(51)【国際特許分類】
F16L 9/18 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
F16L9/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181928
(22)【出願日】2020-10-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】594126377
【氏名又は名称】土橋 義英
(72)【発明者】
【氏名】土橋 義英
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA04
3H111BA35
3H111CA13
3H111CA16
3H111CB03
3H111CB04
3H111CB14
3H111DA07
3H111DB27
(57)【要約】
【課題】本発明は耐圧管において、管の中に管を入れ、内側の管と外側の管との間の隙間を支えによって保持し、外側の管の両端の径を小さくすることによって軽量な耐圧管を提供するものである。
【解決手段】耐圧管において、管の中に管を入れ、内側の管と外側の管との間の隙間を支えによって保持し、外側の管の両端の径を小さくすることによって、内側の管と外側の管を流れる流体に圧力差を作り出し、外部との圧力比率を段階的に縮小させることにより圧力を分散させ、また、管内部を流れる流体自体を耐圧力として使うことを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の中に管を入れ、内側の管と外側の管との間の隙間を支えによって保持し、外側の管の両端の径を小さくした段階減圧式耐圧管。
【請求項2】
複数以上の管を入れ子にした請求項1の段階減圧式耐圧管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧管において、管の中に管を入れ、内側の管と外側の管との間の隙間を支えによって保持し、外側の管の両端の径を小さくし、管内部を流れる流体の圧力自体を耐圧力として使うことで、耐圧管を軽量化させる段階減圧式耐圧管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の耐圧管は積層構造を用いて管の強度を高めたり、また管の耐圧性を高めるために管の肉厚を厚くしたり、管の径を大きくするなどの手法が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2020-180048
【特許文献2】特願2020-180968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、管の外側を、管の外径より大きい内径の管で覆い、内側の管より外側の管で圧力低い流体を流すことで、内側の管から外側の管へ段階的に圧力を減じる耐圧管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、段階減圧式耐圧管において請求項1に係るものは、管の中に管を入れ、内側の管と外側の管との間の隙間を支えによって保持する。そして、外側の管の両端の径を小さくしたものである。
【0006】
請求項2に係るものは、請求項1に係るものにおいて、複数以上の管を入れ子にしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されており、以下に記載されるような効果を有する。 請求項1に係る仕組みを用いた場合、耐圧管において管の外側を、管の外径より大きい内径の別の管で覆い、内側の管と外側の管との間に支えを設けることによって管同士の隙間を保持する。また外側を覆う管において、両端の径を小さくすることにより、管の中に流入した流体が、内側の管と外側の管の間で圧力差が生じ、これによって、内側の管から外側の管へ段階的に圧力を減じ、耐圧性能を向上させることができる。
【0008】
管の圧力限界を求める式はP=(2tσ)/Dで表される。Pは内圧、tは管の肉厚、σは管の素材の引っ張りの強度、Dは外径である。この式から、管の肉厚tを大きくすれば、比例して圧力限界のPの値も大きくなることが分かる。つまり、管の肉厚を2倍にしたら圧力限界は約2倍になり、管の肉厚を3倍にしたら圧力限界は約3倍になる。
【0009】
上記の式での圧力限界Pの内圧とは外気圧が1気圧においてである。仮に外気圧が1気圧で圧力限界が10気圧の管があった場合、水深90mにおいては管の外側に約10気圧の力がかかるので、管の内側から10気圧を掛けても破裂することはない。その管を破裂させるためには管の内圧を10気圧の10倍の100気圧以上をかける必要がある。
【0010】
つまり、10気圧に耐えうる管の肉厚を倍にしても20気圧までしか耐えられないが、10気圧に耐えうる管を二重構造にして管の間を10気圧で満たせば、内側の管は100気圧までの内圧に耐えることができるようになる。
【0011】
管の外径より大きい内径の管で覆い、内側の管の外周部と外側の管の内周部に隙間を設ける。また外側を覆う管において、両側部以外の径を両側部より大きくすることにより、内側の管と外側の管に流体を同じ圧力で流した場合、ベルヌーイの定理によって、外側の管の径を大きくした中間部分の流速は遅くなり圧力は低下する。これによって、内側の管の耐圧力と外側の管の耐圧力を掛けた値の圧力が内側の管の耐圧力となる。管内部を流れる流体自体を耐圧力として使うことで、耐圧管の軽量化が出来る。
【0012】
請求項2に係る仕組みを用いた場合、請求項1に係る仕組みを用いた場合に加え、複数以上の管を入れ子にしたものである。これによって、全ての管の耐圧力を掛け合わせた数値が、一番内側の管の圧力限界値になる。例えば、管を3重にし、一番外の管と二番目の管の隙間に10気圧、二番目の管と中心部の管の隙間に100気圧を掛けた場合、中心部の管には1000気圧を掛けることができる。そして各管は圧力限界は10気圧でよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】発明を実施するための形態を示す断面の斜視図である。
【
図2】発明を実施するための形態を示す斜視図である。
【
図3】発明を実施するための形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態を
図1、
図2、
図3に基づいて説明する。
図1は
図2の第一減圧管の漏斗状部分(3)と第一減圧管の減圧維持部(4)を断面にし、内部構造を示した斜視図である。太さの変わらない中心管(1)が、同じく太さの変わらない第一減圧管の減圧維持部(4)の中に入れられている。第一減圧管の減圧維持部(4)の両側には、多孔円盤(2)が取り付けられている。そして、多孔円盤(2)の中心部には穴が空いており中心管(1)が通されている。多孔円盤(2)によって中心管(1)は第一減圧管の減圧維持部(4)との隙間を一定に保つことができている。第一減圧管の漏斗状部分(3)の形状は名称の通り漏斗のようになっており、漏斗の足に相当する部分の内径は、中心管(1)の外径より一回りほど大きく、漏斗の円錐状に開いた口に相当する部分の外径は第一減圧管の減圧維持部(4)の外径と同じである。そして、第一減圧管の漏斗状部分(3)は、多孔円盤(2)の第一減圧管の減圧維持部(4)が取り付けられている面の反対側に取り付けられている。
図1、
図2では多孔円盤(2)の直径は第一減圧管の減圧維持部(4)の外径と同じであるが、第一減圧管の減圧維持部(4)の内径と同じにして、第一減圧管の減圧維持部(4)の中に格納してもよい。多孔円盤(2)には円周上に沿って6つの穴が開いている。この6つの穴の合計面積は、中心管(1)と第一減圧管の漏斗状部分(3)の隙間の断面積より大きい。
【0015】
図3は本発明を実施するための形態を説明するための概略図である。説明を簡単にするために、中心管(1)、第一減圧管の漏斗状部分(3)、第一減圧管の減圧維持部(4)は線で示し、多孔円盤(2)は省略している。a1、a2、b1、c1、c2、c3はそれぞれ管を流れる一定時間当たりの流体の流量を示す。また、図中にc1、c2、c3が二か所に記載されているが、管の中心軸線に沿った断面であるため、空間として繋がっている。
【0016】
仮にa1から流体を隙間なく流した場合、ベルヌーイの定理により、一定時間当たりの流体の流量が、a1=a2であることが分かる。また、a1=b1+c1、a2=b1+c3であることも分かる。またそれによって、c1=c2=c3であることが証明される。ただし、c2は、c1、c3と比べて管の隙間が広いため流速は遅くなる。中心管(1)は径が変わらないためどの部分でも圧力は変わらないためb1だけで表記される。
【0017】
管内を流れる流体の流量と流速の関係は、Q=C×A×Vで表される。Qは流量、Cは流体係数、Aは流路断面積、Vは流速とする。QとCが変わらない場合、流路断面積Aが2倍になれば、流速は1/2になる。また、Pv=1/2pv^2によって、動圧(Pv)は速度(v)の二乗に比例するので、流体密度(p)がそれほど変わらないのであれば、流速が1/2になると管内の圧力は1/4に下がる。仮に
図3で、c2の流路断面積がそれぞれ、c1やc3に比べて2倍、外気圧を1気圧≒1000hpaだとした場合、a1に100000hpa(約100気圧)相当の圧力で、流体を流すと、第一減圧管の漏斗状部分(3)の足に相当する部分は、約100気圧の内圧に耐えられる強度が必要である。また、中心管(1)のc1、c3にあたる部分は、管の内外の圧力が釣り合っているので、あまり強度は必要でない。しかし、第一減圧管の減圧維持部(4)は約25気圧の圧力がかかるので、中心管(1)の第一減圧管の減圧維持部(4)の中にある部分は100/25=4で、約4気圧の内圧に耐えられる強度が必要になる。そして、第一減圧管の減圧維持部(4)は約25気圧の内圧に耐えられる強度が必要である。また、仮に
図3で、c2の流路断面積がそれぞれ、c1やc3に比べて3.16倍にして、他を先述した条件と同じとすれば、第一減圧管の減圧維持部(4)の流速は1/3.16になり、管内の圧力は約1/10になる。そして、第一減圧管の減圧維持部(4)の中にある部分は100/10=10で、約10気圧の内圧に耐えられる強度が必要になり、また第一減圧管の減圧維持部(4)も約10気圧の内圧に耐えられる強度が必要となる。
【実施例0018】
実施例1を
図4、
図5、
図6を基に説明する。
図4は実施例1を示す概略図であり、
図3の外側にさらに減圧管を設けたものである。具体的には、第一減圧管の減圧維持部(4)の外に、第二減圧管の減圧維持部(6)を設け、第二減圧管の減圧維持部(6)の両側に第二減圧管の漏斗状部分(5)を設けている。これによって、中心管(1)に流れる流体の圧力を3つに分散でき、同様に外側に減圧管を増やせばその分だけ中心管(1)の圧力を分散できるようになる。仮にb1が1000気圧、c2が100気圧、d2が10気圧になるようにした場合、中心管(1)と第一減圧管の減圧維持部(4)と第二減圧管の減圧維持部(6)はそれぞれ内側からの10気圧の圧力に耐えられる強度があればよい。
【0019】
図5は、
図4の片側を立体的にした断面図であり、内部構造を示した図である。中心管(1)の外側を第一減圧管の減圧維持部(4)が覆い、さらにその外側を第二減圧管の減圧維持部(6)が覆っている。第一減圧管の減圧維持部(4)と第二減圧管の減圧維持部(6)の端に多孔円盤(2)が備えられ、多孔円盤(2)の中心を中心管(1)が貫いている。多孔円盤(2)の第一減圧管の減圧維持部(4)と第二減圧管の減圧維持部(6)が取り付けられていない面に、第一減圧管の漏斗状部分(3)と第二減圧管の漏斗状部分(5)がとりつけられている。管の両端は同様の構造であるため、もう一方の端の描画は省略する。
【0020】
図6は
図5の分解図である。ただし各部分を断面にしていない。
【0021】
実施例2を
図7を基に説明する。多孔円盤(2)の代わりに支持部(7)を用いて管の隙間を保持している。多孔円盤(2)の役割は入れ子になっている管の隙間を保持することである。管の隙間を保持できるならば円盤でなくても構わない、またなるべく流体の流れを阻害しない手段で管の隙間を保持した方がよい。
【0022】
実施例3を
図8、
図9を基に説明する。
図8は実施例3を示す概略図である。仮にa1から流体を隙間なく流した場合、ベルヌーイの定理により、一定時間当たりの流体の流量が、a1=a2であることが分かる。また、a1=b1+c1、a2=b1+c5であることも分かる。またそれによって、c1=c2=c4=c5、c2=d2+c3=c4、およびd1=d2=d3であることが証明される。また、図中にc1、c2、c3、c4、c5、d1、d2、d3が二か所に記載されているが、管の軸線に沿った断面であるため、空間として繋がっている。実施例1と異なり第一減圧管(8)の両端に漏斗状の部分がなく径が小さくなっていないが、第二減圧管の漏斗状部分(5)を利用して、減圧された流体を確保する。そして、第二減圧管の漏斗状部分(5)を延長することによって、d1をさらにd2へと減圧している。
【0023】
仮に管の外の部分を1気圧とし、a1、a2の部分を1000気圧、断面積を1平方メートル、直径を約1.13mとし、b1の断面積を0.6平方メートル、直径約0.87m、c1、c5を0.4平方メートルとした場合について説明する。ただし、管の肉厚の面積や抵抗による損失については考慮しないものとする。また、断面積と述べた場合は管の中心軸と直交方向の断面積である。
【0024】
断面積でa1=a2、a1=b1+c1、a2=b1+c5なので、b1、c1、c5の部分の気圧も1000気圧である。次にu1からu2の破線とv1からv2の破線で挟まれた部分においてb1の断面積は変わらないが、c2の断面積は0.4平方メートルから3.16倍の約1.26平方メートルになり、v1からv2の破線の部分でc2の気圧は10分の1の100気圧に下がる。また断面積はb1+c2=約1.86平方メートルになるので、直径は約1.53mになる。
【0025】
次にv1からv2の破線の部分において、c2(1.26平方メートル)をc3(0.9平方メートル)とd1(0.36平方メートル)に分ける。そして、w1からw2の破線の部分において、d1の断面積は0.36平方メートルから約3.16倍の約1.14平方メートルになり、気圧は10分の1の10気圧に下がる。また、w1からw2の破線の部分の断面積は、b1(0.6平方メートル)+c3(0.9平方メートル)+d1(約1.14平方メートル)=約2.64平方メートルとなり、直径は約1.83mとなる。x1からx2の破線の部分より下は上記の説明と逆となる。これによって、中心管(1)が1000気圧、第一減圧管(8)が100気圧、第二減圧管の減圧維持部(6)が10気圧となり、各管を内側からの10気圧の圧力に耐えられるようにすればよい。
【0026】
図9は、
図8の片側を立体的にした断面図であり、内部構造を示した図である。第二減圧管の中に第一減圧管(8)があり、第一減圧管(8)の中に中心管(1)がある。第二減圧管は、第二減圧管の漏斗状部分(5)と第二減圧管の減圧維持部(6)に分けられる。中心管(1)と、第一減圧管(8)と、第二減圧管はそれぞれ、支持部(7)によって固定されている。また、第二減圧管の漏斗状部分(5)や、その部分にかかる中心管(1)、第一減圧管(8)は圧力に応じた対処が必要であるため、管の肉厚が厚くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0027】
この段階減圧式耐圧管は従来のストレートの管と比べて構造が複雑すぎるのでコストは非常に高くなる。そして普通であれば、管の径を広くするだけで流体の圧力に対処できるので、段階減圧式耐圧管を使う意味はほぼない。しかし、宇宙産業においては利用価値があると思われる。なぜなら段階減圧式耐圧管を用いてロケットの重量を軽くすることができるのであれば、高コストに見合うだけの効果が見込まれるからである。
【符号の説明】
【0028】
1 中心管
2 多孔円盤
3 第一減圧管の漏斗状部分
4 第一減圧管の減圧維持部
5 第二減圧管の漏斗状部分
6 第二減圧管の減圧維持部
7 支持部
8 第一減圧管
a1 流体の流量
a2 流体の流量
b1 流体の流量
c1 流体の流量
c2 流体の流量
c3 流体の流量
c4 流体の流量
c5 流体の流量
d1 流体の流量
d2 流体の流量
d3 流体の流量
e1 流体の流量
e2 流体の流量
【手続補正書】
【提出日】2021-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧管に設けた段階減圧式耐圧管であって、前記段階減圧式耐圧管は両端を耐圧管に接続され、前記耐圧管よりも内径が大きい外側の管と、前記外側の管よりも内径が小さい外側の管の中に挿入され、前記外側の管との間の間隙を支えによって保持される内側の管とからなり、前記内側の管は外側の管よりも長く、前記内側の管の両端は前記耐圧管内に間隙を設けて挿入されており、前記耐圧管の中に流通した流体が前記内側の管と外側の管に流入して前記内側の管と外側の管で圧力差を生じ、前記内側の管から外側の管へ段階的に圧力差を生じ、内側の管から外側の管へ圧力を減じ、耐圧性能を向上させることを特徴とする段階減圧式耐圧管。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧管において、管の中に管を入れ、内側の管と外側の管との間の隙間を支えによって保持し、外側の管の両端の径を小さくし、管内部を流れる流体の圧力自体を耐圧力として使うことで、耐圧管を軽量化させる段階減圧式耐圧管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の耐圧管は積層構造を用いて管の強度を高めたり、また管の耐圧性を高めるために管の肉厚を厚くしたり、管の径を大きくするなどの手法が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2020-180048
【特許文献2】特願2020-180968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、管の外側を、管の外径より大きい内径の管で覆い、内側の管より外側の管で圧力低い流体を流すことで、内側の管から外側の管へ段階的に圧力を減じる耐圧管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、段階減圧式耐圧管において請求項1に係るものは、耐圧管に設けた段階減圧式耐圧管であって、前記段階減圧式耐圧管は両端を耐圧管に接続され、前記耐圧管よりも内径が大きい外側の管と、前記外側の管よりも内径が小さい外側の管の中に挿入され、前記外側の管との間の間隙を支えによって保持される内側の管とからなり、前記内側の管は外側の管よりも長く、前記内側の管の両端は前記耐圧管内に間隙を設けて挿入されており、前記耐圧管の中に流通した流体が前記内側の管と外側の管に流入して前記内側の管と外側の管で圧力差を生じ、前記内側の管から外側の管へ段階的に圧力差を生じ、内側の管から外側の管へ圧力を減じ、耐圧性能を向上させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されており、以下に記載されるような効果を有する。 請求項1に係る仕組みを用いた場合、耐圧管に設けた段階減圧式耐圧管であって、前記段階減圧式耐圧管は両端を耐圧管に接続され、前記耐圧管よりも内径が大きい外側の管と、前記外側の管よりも内径が小さい外側の管の中に挿入され、前記外側の管との間の間隙を支えによって保持される内側の管とからなり、前記内側の管は外側の管よりも長く、前記内側の管の両端は前記耐圧管内に間隙を設けて挿入されており、前記耐圧管の中に流通した流体が前記内側の管と外側の管に流入して前記内側の管と外側の管で圧力差を生じ、前記内側の管から外側の管へ段階的に圧力差を生じ、内側の管から外側の管へ圧力を減じ、耐圧性能を向上させることができる。
【0007】
管の圧力限界を求める式はP=(2tσ)/Dで表される。Pは内圧、tは管の肉厚、σは管の素材の引っ張りの強度、Dは外径である。この式から、管の肉厚tを大きくすれば、比例して圧力限界のPの値も大きくなることが分かる。つまり、管の肉厚を2倍にしたら圧力限界は約2倍になり、管の肉厚を3倍にしたら圧力限界は約3倍になる。
【0008】
上記の式での圧力限界Pの内圧とは外気圧が1気圧においてである。仮に外気圧が1気圧で圧力限界が10気圧の管があった場合、水深90mにおいては管の外側に約10気圧の力がかかるので、管の内側から10気圧を掛けても破裂することはない。その管を破裂させるためには管の内圧を10気圧の10倍の100気圧以上をかける必要がある。
【0009】
つまり、10気圧に耐えうる管の肉厚を倍にしても20気圧までしか耐えられないが、10気圧に耐えうる管を二重構造にして管の間を10気圧で満たせば、内側の管は100気圧までの内圧に耐えることができるようになる。
【0010】
管の外径より大きい内径の管で覆い、内側の管の外周部と外側の管の内周部に隙間を設ける。また外側を覆う管において、両側部以外の径を両側部より大きくすることにより、内側の管と外側の管に流体を同じ圧力で流した場合、ベルヌーイの定理によって、外側の管の径を大きくした中間部分の流速は遅くなり圧力は低下する。これによって、内側の管の耐圧力と外側の管の耐圧力を掛けた値の圧力が内側の管の耐圧力となる。管内部を流れる流体自体を耐圧力として使うことで、耐圧管の軽量化が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】発明を実施するための形態を示す断面の斜視図である。
【
図2】発明を実施するための形態を示す斜視図である。
【
図3】発明を実施するための形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を
図1、
図2、
図3に基づいて説明する。
図1は
図2の第一減圧管の漏斗状部分(3)と第一減圧管の減圧維持部(4)を断面にし、内部構造を示した斜視図である。太さの変わらない中心管(1)が、同じく太さの変わらない第一減圧管の減圧維持部(4)の中に入れられている。第一減圧管の減圧維持部(4)の両側には、多孔円盤(2)が取り付けられている。そして、多孔円盤(2)の中心部には穴が空いており中心管(1)が通されている。多孔円盤(2)によって中心管(1)は第一減圧管の減圧維持部(4)との隙間を一定に保つことができている。第一減圧管の漏斗状部分(3)の形状は名称の通り漏斗のようになっており、漏斗の足に相当する部分の内径は、中心管(1)の外径より一回りほど大きく、漏斗の円錐状に開いた口に相当する部分の外径は第一減圧管の減圧維持部(4)の外径と同じである。そして、第一減圧管の漏斗状部分(3)は、多孔円盤(2)の第一減圧管の減圧維持部(4)が取り付けられている面の反対側に取り付けられている。
図1、
図2では多孔円盤(2)の直径は第一減圧管の減圧維持部(4)の外径と同じであるが、第一減圧管の減圧維持部(4)の内径と同じにして、第一減圧管の減圧維持部(4)の中に格納してもよい。多孔円盤(2)には円周上に沿って6つの穴が開いている。この6つの穴の合計面積は、中心管(1)と第一減圧管の漏斗状部分(3)の隙間の断面積より大きい。
【0013】
図3は本発明を実施するための形態を説明するための概略図である。説明を簡単にするために、中心管(1)、第一減圧管の漏斗状部分(3)、第一減圧管の減圧維持部(4)は線で示し、多孔円盤(2)は省略している。a1、a2、b1、c1、c2、c3はそれぞれ管を流れる一定時間当たりの流体の流量を示す。また、図中にc1、c2、c3が二か所に記載されているが、管の中心軸線に沿った断面であるため、空間として繋がっている。
【0014】
仮にa1から流体を隙間なく流した場合、ベルヌーイの定理により、一定時間当たりの流体の流量が、a1=a2であることが分かる。また、a1=b1+c1、a2=b1+c3であることも分かる。またそれによって、c1=c2=c3であることが証明される。ただし、c2は、c1、c3と比べて管の隙間が広いため流速は遅くなる。中心管(1)は径が変わらないためどの部分でも圧力は変わらないためb1だけで表記される。
【0015】
管内を流れる流体の流量と流速の関係は、Q=C×A×Vで表される。Qは流量、Cは流体係数、Aは流路断面積、Vは流速とする。QとCが変わらない場合、流路断面積Aが2倍になれば、流速は1/2になる。また、Pv=1/2pv^2によって、動圧(Pv)は速度(v)の二乗に比例するので、流体密度(p)がそれほど変わらないのであれば、流速が1/2になると管内の圧力は1/4に下がる。仮に
図3で、c2の流路断面積がそれぞれ、c1やc3に比べて2倍、外気圧を1気圧≒1000hpaだとした場合、a1に100000hpa(約100気圧)相当の圧力で、流体を流すと、第一減圧管の漏斗状部分(3)の足に相当する部分は、約100気圧の内圧に耐えられる強度が必要である。また、中心管(1)のc1、c3にあたる部分は、管の内外の圧力が釣り合っているので、あまり強度は必要でない。しかし、第一減圧管の減圧維持部(4)は約25気圧の圧力がかかるので、中心管(1)の第一減圧管の減圧維持部(4)の中にある部分は100/25=4で、約4気圧の内圧に耐えられる強度が必要になる。そして、第一減圧管の減圧維持部(4)は約25気圧の内圧に耐えられる強度が必要である。また、仮に
図3で、c2の流路断面積がそれぞれ、c1やc3に比べて3.16倍にして、他を先述した条件と同じとすれば、第一減圧管の減圧維持部(4)の流速は1/3.16になり、管内の圧力は約1/10になる。そして、第一減圧管の減圧維持部(4)の中にある部分は100/10=10で、約10気圧の内圧に耐えられる強度が必要になり、また第一減圧管の減圧維持部(4)も約10気圧の内圧に耐えられる強度が必要となる。
【0016】
実施例1を
図4、
図5、
図6を基に説明する。
図4は実施例1を示す概略図であり、
図3の外側にさらに減圧管を設けたものである。具体的には、第一減圧管の減圧維持部(4)の外に、第二減圧管の減圧維持部(6)を設け、第二減圧管の減圧維持部(6)の両側に第二減圧管の漏斗状部分(5)を設けている。これによって、中心管(1)に流れる流体の圧力を3つに分散でき、同様に外側に減圧管を増やせばその分だけ中心管(1)の圧力を分散できるようになる。仮にb1が1000気圧、c2が100気圧、d2が10気圧になるようにした場合、中心管(1)と第一減圧管の減圧維持部(4)と第二減圧管の減圧維持部(6)はそれぞれ内側からの10気圧の圧力に耐えられる強度があればよい。
【0017】
図5は、
図4の片側を立体的にした断面図であり、内部構造を示した図である。中心管(1)の外側を第一減圧管の減圧維持部(4)が覆い、さらにその外側を第二減圧管の減圧維持部(6)が覆っている。第一減圧管の減圧維持部(4)と第二減圧管の減圧維持部(6)の端に多孔円盤(2)が備えられ、多孔円盤(2)の中心を中心管(1)が貫いている。多孔円盤(2)の第一減圧管の減圧維持部(4)と第二減圧管の減圧維持部(6)が取り付けられていない面に、第一減圧管の漏斗状部分(3)と第二減圧管の漏斗状部分(5)がとりつけられている。管の両端は同様の構造であるため、もう一方の端の描画は省略する。
【0018】
図6は
図5の分解図である。ただし各部分を断面にしていない。
【0019】
実施例2を
図7を基に説明する。多孔円盤(2)の代わりに支持部(7)を用いて管の隙間を保持している。多孔円盤(2)の役割は入れ子になっている管の隙間を保持することである。管の隙間を保持できるならば円盤でなくても構わない、またなるべく流体の流れを阻害しない手段で管の隙間を保持した方がよい。
【0020】
実施例3を
図8、
図9を基に説明する。
図8は実施例3を示す概略図である。仮にa1から流体を隙間なく流した場合、ベルヌーイの定理により、一定時間当たりの流体の流量が、a1=a2であることが分かる。また、a1=b1+c1、a2=b1+c5であることも分かる。またそれによって、c1=c2=c4=c5、c2=d2+c3=c4、およびd1=d2=d3であることが証明される。また、図中にc1、c2、c3、c4、c5、d1、d2、d3が二か所に記載されているが、管の軸線に沿った断面であるため、空間として繋がっている。実施例1と異なり第一減圧管(8)の両端に漏斗状の部分がなく径が小さくなっていないが、第二減圧管の漏斗状部分(5)を利用して、減圧された流体を確保する。そして、第二減圧管の漏斗状部分(5)を延長することによって、d1をさらにd2へと減圧している。
【0021】
仮に管の外の部分を1気圧とし、a1、a2の部分を1000気圧、断面積を1平方メートル、直径を約1.13mとし、b1の断面積を0.6平方メートル、直径約0.87m、c1、c5を0.4平方メートルとした場合について説明する。ただし、管の肉厚の面積や抵抗による損失については考慮しないものとする。また、断面積と述べた場合は管の中心軸と直交方向の断面積である。
【0022】
断面積でa1=a2、a1=b1+c1、a2=b1+c5なので、b1、c1、c5の部分の気圧も1000気圧である。次にu1からu2の破線とv1からv2の破線で挟まれた部分においてb1の断面積は変わらないが、c2の断面積は0.4平方メートルから3.16倍の約1.26平方メートルになり、v1からv2の破線の部分でc2の気圧は10分の1の100気圧に下がる。また断面積はb1+c2=約1.86平方メートルになるので、直径は約1.53mになる。
【0023】
次にv1からv2の破線の部分において、c2(1.26平方メートル)をc3(0.9平方メートル)とd1(0.36平方メートル)に分ける。そして、w1からw2の破線の部分において、d1の断面積は0.36平方メートルから約3.16倍の約1.14平方メートルになり、気圧は10分の1の10気圧に下がる。また、w1からw2の破線の部分の断面積は、b1(0.6平方メートル)+c3(0.9平方メートル)+d1(約1.14平方メートル)=約2.64平方メートルとなり、直径は約1.83mとなる。x1からx2の破線の部分より下は上記の説明と逆となる。これによって、中心管(1)が1000気圧、第一減圧管(8)が100気圧、第二減圧管の減圧維持部(6)が10気圧となり、各管を内側からの10気圧の圧力に耐えられるようにすればよい。
【0024】
図9は、
図8の片側を立体的にした断面図であり、内部構造を示した図である。第二減圧管の中に第一減圧管(8)があり、第一減圧管(8)の中に中心管(1)がある。第二減圧管は、第二減圧管の漏斗状部分(5)と第二減圧管の減圧維持部(6)に分けられる。中心管(1)と、第一減圧管(8)と、第二減圧管はそれぞれ、支持部(7)によって固定されている。また、第二減圧管の漏斗状部分(5)や、その部分にかかる中心管(1)、第一減圧管(8)は圧力に応じた対処が必要であるため、管の肉厚が厚くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0025】
この段階減圧式耐圧管は従来のストレートの管と比べて構造が複雑すぎるのでコストは非常に高くなる。そして普通であれば、管の径を広くするだけで流体の圧力に対処できるので、段階減圧式耐圧管を使う意味はほぼない。しかし、宇宙産業においては利用価値があると思われる。なぜなら段階減圧式耐圧管を用いてロケットの重量を軽くすることができるのであれば、高コストに見合うだけの効果が見込まれるからである。
【符号の説明】
【0026】
1 中心管
2 多孔円盤
3 第一減圧管の漏斗状部分
4 第一減圧管の減圧維持部
5 第二減圧管の漏斗状部分
6 第二減圧管の減圧維持部
7 支持部
8 第一減圧管
a1 流体の流量
a2 流体の流量
b1 流体の流量
c1 流体の流量
c2 流体の流量
c3 流体の流量
c4 流体の流量
c5 流体の流量
d1 流体の流量
d2 流体の流量
d3 流体の流量
e1 流体の流量
e2 流体の流量