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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072485
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】清掃用ウェットシート
(51)【国際特許分類】
   A47L 13/17 20060101AFI20220510BHJP
   D04H 13/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A47L13/17 A
D04H13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020181948
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】新谷 尚己
【テーマコード(参考)】
3B074
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA08
3B074AB01
3B074AC02
3B074CC03
4L047AA08
4L047AB06
4L047CA12
4L047CC16
4L047DA00
(57)【要約】
【課題】ヘッド部を有する清掃具に取り付けて拭き掃除を行う際に、拭き筋の発生を低減することができる清掃用ウェットシートを提供する。
【解決手段】清掃用ウェットシート100は、第1の面に凸となり、長軸方向の向きが異なる凸エンボス21である第1凸エンボス211と第2凸エンボス212を各々複数備え、長軸方向と直交する短軸方向に隣り合う第1凸エンボス211は、短軸方向に一部が重なり、かつ、長軸方向にずれて配置され、短軸方向に隣り合う第2凸エンボス212は、短軸方向に一部が重なり、かつ、長軸方向にずれて配置され、複数の第1凸エンボス211及び第2凸エンボス212は、清掃用ウェットシート100の第1の辺から、第1の辺aと対向する第2の辺bまで連続的に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙シートに薬液が含浸されてなり、ヘッド部を有する清掃具に取り付けられて使用される清掃用ウェットシートであって、
当該清掃用ウェットシートの第1の面に凸となるエンボスである凸エンボスを備え、
前記凸エンボスは、長軸方向の向きが異なる第1凸エンボスと第2凸エンボスを各々複数備え、
前記長軸方向と直交する短軸方向に隣り合う前記第1凸エンボスは、前記短軸方向に一部が重なり、かつ、前記長軸方向にずれて配置され、
前記短軸方向に隣り合う前記第2凸エンボスは、前記短軸方向に一部が重なり、かつ、前記長軸方向にずれて配置され、
複数の前記第1凸エンボス及び第2凸エンボスは、前記清掃用ウェットシートの第1の辺から、前記第1の辺と対向する第2の辺まで連続的に配置されていることを特徴とする清掃用ウェットシート。
【請求項2】
前記第1凸エンボスと前記第2凸エンボスは、前記長軸方向が略直角をなすように隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項3】
前記清掃用ウェットシートの第2の面に凸となるエンボスである凹エンボスを備え、
前記凹エンボスは、前記長軸方向の向きが異なる第1凹エンボスと第2凹エンボスを各々複数備え、
前記短軸方向に隣り合う前記第1凹エンボスは、前記短軸方向に一部が重なり、かつ、前記長軸方向にずれて配置され、
前記短軸方向に隣り合う前記第2凹エンボスは、前記短軸方向に一部が重なり、かつ、前記長軸方向にずれて配置され、
複数の前記第1凹エンボス及び第2凹エンボスは、前記清掃用ウェットシートの前記第1の辺から、前記第2の辺まで連続的に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項4】
前記第1凹エンボスと前記第2凹エンボスは、前記長軸方向が略直角をなすように隣接して配置されていることを特徴とする請求項3に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項5】
原紙シートに薬液が含浸されてなり、ヘッド部を有する清掃具に取り付けられて使用される清掃用ウェットシートであって、
当該清掃用ウェットシートの第1の面に凸となるエンボスである凸エンボスと、第2の面に凸となるエンボスである凹エンボスを備え、
前記凸エンボスと前記凹エンボスとの組み合わせからなるエンボスブロックは、前記清掃用ウェットシートの第1の辺から前記第1の辺と対向する第2の辺まで連続して複数配置されてエンボスブロック列をなし、
前記エンボスブロック列は、前記第1の辺と直交する第3の辺から、前記第3の辺と対向する第4の辺まで連続して複数配置されているとともに、隣接する第1のエンボスブロック列と第2のエンボスブロック列が前記第1の辺から前記第2の辺に向かう方向にずれて配置され、
第1のエンボスブロック内の前記凸エンボス及び前記凹エンボスは、隣接する第2のエンボスブロック内の前記凸エンボス及び前記凹エンボスと長軸方向の向きが異なり、かつ、前記第2のエンボスブロック内の隣接する前記凸エンボス及び前記凹エンボスと、前記長軸方向と直交する短軸方向に一部が重なるように配置されていることを特徴とする清掃用ウェットシート。
【請求項6】
前記第1のエンボスブロック内の前記凸エンボス及び前記凹エンボスと、前記第2のエンボスブロック内の前記凸エンボス及び前記凹エンボスは、前記長軸方向の向きが略直角となるように配置されていることを特徴とする請求項5に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項7】
前記エンボスブロックは、ひし形であることを特徴とする請求項5又は6に記載の清掃用ウェットシート。
【請求項8】
前記エンボスは、楕円形状であり、長軸方向の略中央部にくびれ部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃用ウェットシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、清掃用ウェットシートの清掃面に凸部を有するエンボスを施すことで、汚れの拭き取り性や操作性、シート汚れの視認性等が向上することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-064723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示すような清掃用ウェットシートにおいては、凸部における紙面上の向き(例えば、長軸方向の向き)が揃って直列に配置されているため、凸部による拭き取りが行われなかった箇所(いわゆる「拭き筋」)が被清掃面に発生してしまうことがある。拭き筋を視認した使用者は、薬液がまだシート内に残存しているにも関わらず、薬液が尽きて乾燥してきたと判断してシートを破棄してしまい、不要に多くのシートを使用してしまうことがある。
【0005】
本発明の目的は、ヘッド部を有する清掃具に取り付けて拭き掃除を行う際に、拭き筋の発生を低減することができる清掃用ウェットシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、原紙シートに薬液が含浸されてなり、ヘッド部を有する清掃具に取り付けられて使用される清掃用ウェットシートであって、
当該清掃用ウェットシートの第1の面に凸となるエンボスである凸エンボスを備え、
前記凸エンボスは、長軸方向の向きが異なる第1凸エンボスと第2凸エンボスを各々複数備え、
前記長軸方向と直交する短軸方向に隣り合う前記第1凸エンボスは、前記短軸方向に一部が重なり、かつ、前記長軸方向にずれて配置され、
前記短軸方向に隣り合う前記第2凸エンボスは、前記短軸方向に一部が重なり、かつ、前記長軸方向にずれて配置され、
複数の前記第1凸エンボス及び第2凸エンボスは、前記清掃用ウェットシートの第1の辺から、前記第1の辺と対向する第2の辺まで連続的に配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記第1凸エンボスと前記第2凸エンボスは、前記長軸方向が略直角をなすように隣接して配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記清掃用ウェットシートの第2の面に凸となるエンボスである凹エンボスを備え、
前記凹エンボスは、前記長軸方向の向きが異なる第1凹エンボスと第2凹エンボスを各々複数備え、
前記短軸方向に隣り合う前記第1凹エンボスは、前記短軸方向に一部が重なり、かつ、前記長軸方向にずれて配置され、
前記短軸方向に隣り合う前記第2凹エンボスは、前記短軸方向に一部が重なり、かつ、前記長軸方向にずれて配置され、
複数の前記第1凹エンボス及び第2凹エンボスは、前記清掃用ウェットシートの前記第1の辺から、前記第2の辺まで連続的に配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記第1凹エンボスと前記第2凹エンボスは、前記長軸方向が略直角をなすように隣接して配置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、原紙シートに薬液が含浸されてなり、ヘッド部を有する清掃具に取り付けられて使用される清掃用ウェットシートであって、
当該清掃用ウェットシートの第1の面に凸となるエンボスである凸エンボスと、第2の面に凸となるエンボスである凹エンボスを備え、
前記凸エンボスと前記凹エンボスとの組み合わせからなるエンボスブロックは、前記清掃用ウェットシートの第1の辺から前記第1の辺と対向する第2の辺まで連続して複数配置されてエンボスブロック列をなし、
前記エンボスブロック列は、前記第1の辺と直交する第3の辺から、前記第3の辺と対向する第4の辺まで連続して複数配置されているとともに、隣接する第1のエンボスブロック列と第2のエンボスブロック列が前記第1の辺から前記第2の辺に向かう方向にずれて配置され、
第1のエンボスブロック内の前記凸エンボス及び前記凹エンボスは、隣接する第2のエンボスブロック内の前記凸エンボス及び前記凹エンボスと長軸方向の向きが異なり、かつ、前記第2のエンボスブロック内の隣接する前記凸エンボス及び前記凹エンボスと、前記長軸方向と直交する短軸方向に一部が重なるように配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記第1のエンボスブロック内の前記凸エンボス及び前記凹エンボスと、前記第2のエンボスブロック内の前記凸エンボス及び前記凹エンボスは、前記長軸方向の向きが略直角となるように配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記エンボスブロックは、ひし形であることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の清掃用ウェットシートであって、
前記エンボスは、楕円形状であり、長軸方向の略中央部にくびれ部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヘッド部を有する清掃具に取り付けて拭き掃除を行う際に、拭き筋の発生を低減することができる清掃用ウェットシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態の清掃用ウェットシートの使用時の状態を示す斜視図である。
図2】本実施の形態の清掃用ウェットシートを示す平面図である。
図3A】変形例に係る清掃用ウェットシートのエンボスブロックを示す図である。
図3B】変形例に係る清掃用ウェットシートを示す平面図である。
図4A】変形例に係る清掃用ウェットシートのエンボスブロックを示す図である。
図4B】変形例に係る清掃用ウェットシートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態である清掃用ウェットシート100について説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されず、あくまで特許請求の範囲の記載を基に判断される。
なお、以下においては、図1に示したように、X方向、Y方向及びZ方向を定めて説明する。
【0017】
[実施形態の構成]
図1は、本実施の形態の清掃用ウェットシート100の使用時の状態を示す図である。
図1に示すように、清掃用ウェットシート100は、例えば、矩形の平板状のヘッド部201と、ヘッド部201の上面に取り付けられた柄部202と、を備える清掃具200に交換可能に装着されて床清掃に用いられる、複数枚の原紙シートがプライ加工(積層)されたシートである。
清掃用ウェットシート100は、清掃具200のヘッド部201の底面を覆って清掃面を形成し、清掃具200のヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り曲げられてヘッド部201の上面に係止され、装着された状態となる。
なお、長手縁部201aとは、ヘッド部201の長手方向に沿った縁部を指す。すなわち、矩形のヘッド部201の4つの縁部のうちの、長い方の2つの縁部を指す。
【0018】
原紙シートは、繊維集合体であれば特に限定されないが、例えば、単層又は多層の紙、不織布、あるいは化繊混抄紙等からなる。原紙シートが不織布からなる場合は、所定の繊維間をスパンレース、エアスルー、エアレイド、ポイントボンド、スパンボンド、ニードルパンチ等の周知の技術によって結合することで製造される。
【0019】
所定の繊維としては、天然、再生、合成を問わず用いることができるが、例えば、親水性繊維であるレーヨン、リヨセル、テンセル、コットン等のセルロース系繊維や、疎水性繊維であるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維が挙げられる。これらは単独で、あるいは親水性のものと疎水性のものを少なくとも1種類ずつ組み合わせて使用することができる。
【0020】
これらの繊維は、繊度が1.1dtexから5.5dtexのものが好ましく使用される。1.1dtex未満では繊維間の孔隙が小さく、繊維くずや毛髪の捕集に好ましくない。また5.5dtexを超えると、保持している薬液を放出しやすくなり好ましくない。
また、これらの繊維の繊維長は、製造に適するものであれば任意である。
【0021】
また、原紙シートが紙からなる場合は、原料となるパルプは、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等が挙げられ、これらを適宜任意の割合で配合したものが適する。
【0022】
より好ましくは、広葉樹晒クラフトパルプの配合割合が50重量%を超えるもの、すなわち広葉樹晒クラフトパルプに対する針葉樹晒クラフトパルプの配合比が1/1未満となるものが挙げられる。針葉樹晒クラフトパルプに対する広葉樹晒クラフトパルプの配合比を多くすることで、繊維間隙間が減少し、水分蒸散が抑制されるため、乾きにくさを向上させることができる。
また、粉砕されたパルプや、粉砕パルプを水解紙で覆ったり、挟んだりすることで構成されていてもよい。
【0023】
(目付け)
本発明の清掃用ウェットシート100の場合、目付け量は20~100g/m、特に30~60g/m程度であるのが好ましい。シートの目付け量が20g/m未満では汚れの保持能力が乏しくなり、清掃時のシートがよれやすく不安定になりやすい。また100g/mを超えると柔軟性が乏しくなり、清掃具200への清掃用ウェットシート100の取付けが困難になる。
【0024】
[水溶性バインダー]
また、原紙シートには紙力増強のための水溶性バインダーが付与されている。水溶性バインダーとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、デンプンまたはその誘導体、ヒドロキシプロピルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体等のバインダー成分が挙げられる。
【0025】
特に、架橋反応により湿潤強度を発現しうる点から、カルボキシル基を有する水溶性バインダーを用いることが好ましい。
カルボキシル基を有する水溶性バインダーは、水中で容易にカルボキシラートを生成するアニオン性の水溶性バインダーである。その例としては多糖誘導体、合成高分子、天然物が挙げられる。
【0026】
(多糖誘導体)
多糖誘導体としてはCMCの塩、カルボキシエチルセルロース又はその塩、カルボキシメチル化デンプン又はその塩などが挙げられ、特にCMCのアルカリ金属塩が好ましい。
【0027】
(CMC)
CMCについては、そのエーテル化度が0.6~2.0、特に0.9~1.8、更に好ましくは1.0~1.5であるのが望ましい。このようにすることで、水解性と湿潤紙力の発現が極めて良好となるためである。
また、CMCは、水膨潤性のものを用いることが好ましい。これは、本実施形態における薬液中の架橋剤であるアルミニウムイオンとの架橋により、未膨潤化のまま原紙シートを構成する繊維をつなぎとめる機能を発揮し、清掃・清拭作業に耐えうる清掃用ウェットシート100としての強度を発現することができるからである。
本実施形態の清掃用ウェットシート100の場合には、水溶性バインダーとして、CMCが付与されている。
【0028】
CMCは、原紙シートの厚み方向に均一に含浸された状態でも良いが、原紙シートの厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCMCの含有量が徐々に増加した状態となっていることが好ましい。これにより、清掃用ウェットシート100は、同量の水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて清掃面等を強く擦っても破れにくくなるからである。
【0029】
(合成高分子)
合成高分子としては、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらと共重合可能な単量体としては、これら不飽和カルボン酸のエステル、酢酸ビニル、エチレン、アクリルアミド、ビニルエーテルなどが挙げられる。特に好ましい合成高分子は、不飽和カルボン酸としてアクリル酸やメタクリル酸を用いたものであり、具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸メタクリル酸共重合体の塩、アクリル酸又はメタクリル酸とアクリル酸アルキル又はメタクリル酸アルキルとの共重合体の塩が挙げられる。
天然物としては、アルギン酸ナトリウム、ザンサンガム、ジェランガム、タラガントガム、ペクチンなどが挙げられる。
【0030】
(CNF)
また、清掃用ウェットシート100には、セルロースナノファイバー(CNF)を添加することができる。
すなわち、水溶性バインダー(本実施形態の場合には、CMC)には、CNFを添加することができ、原紙シートの比表面積はパルプのみの組成のものより大きくなる。
【0031】
ここで、CNFとは、パルプ繊維を解繊して得られる微細なセルロース繊維をいい、一般的に繊維幅がナノサイズ(1nm以上、1000nm以下)のセルロース微細繊維を含むセルロース繊維をいうが、平均繊維幅は、100nm以下の繊維が好ましい。平均繊維幅の算出は、例えば、一定数の数平均、メジアン、モード径(最頻値)などを用いる。
【0032】
CNFは、原紙シートの厚み方向に均一に含浸された状態でも良いが、原紙シートの厚み方向の中央から表面及び裏面に向かうにつれてCNFの含有量が徐々に増加した状態となっていることが好ましい。これにより、清掃用ウェットシート100は、同量の水溶性バインダーを均一に含浸させた従来品に比べて清掃面等を強く擦っても破れにくくなるからである。
【0033】
(CNFに使用可能なパルプ繊維)
CNFの製造に使用可能なパルプ繊維としては、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ、晒サーモメカニカルパルプ(BTMP)、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプ、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙等から製造される古紙パルプ、古紙パルプを脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)等が挙げられる。これらは、本発明の効果を損なわない限り、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(CNFの解繊方法)
CNFの製造に用いられる解繊方法としては、例えば、高圧ホモジナイザー法、マイクロフリュイダイザー法、グラインダー磨砕法、ビーズミル凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的手法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
なお、上記解繊方法などにより機械的処理のみ施した(変性させていない)CNF、すなわち、官能基未修飾のCNFは、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたものに対し、熱安定性が高いため、より幅広い用途に使用可能であるが、リン酸基やカルボキシメチル基などの官能基修飾されたCNFを本発明に使用することも可能である。
また、例えば、パルプ繊維に対して機械的手法の解繊処理を施したものに、カルボキシメチル化等の化学的処理を施しても良いし、酵素処理を施しても良い。化学的処理を施したCNFとしては、例えば、TEMPO酸化CNF、リン酸エステル化CNF、亜リン酸エステル化CNF等の、直径が3~4nmとなるiCNF(individualized CNF)(シングルナノセルロース)が挙げられる。
また、化学的処理や酵素処理のみを施したCNFや、化学的処理や酵素処理を施したCNFに、機械的手法の解繊処理を施したCNFでもよい。
【0035】
[薬液]
また、本実施形態の清掃用ウェットシート100には、グリコールエーテル類、水性洗浄剤、防腐剤、除菌剤、低級アルコール、有機溶剤等の補助剤を含む所定の薬液が含浸されている。薬液は、清掃用ウェットシート100の基材である原紙シートの質量に対して100質量%~500質量%含浸させるが、好ましくは150質量%~300質量%である。
当該薬液は、水溶性バインダーが塗布された後に乾燥された原紙シートに対して含浸され、親水性繊維に含浸された薬液は、清掃用ウェットシート100の使用時に表面ないし裏面から放出される。
【0036】
[清掃用ウェットシート]
図2は、本実施の形態の清掃用ウェットシート100の一例を示す平面図である。
図2に示すように、清掃用ウェットシート100は、X方向に長尺な略矩形状であって、例えば、X方向(長手方向)において250mmから300mm、好ましくは260mmから290mm、Y方向(短手方向)において180mmから230mm、好ましくは200mmから210mmに形成されている。
【0037】
清掃用ウェットシート100において、清掃具200のヘッド部201の長手縁部201aに沿って折り曲げられる部分を折曲部Sと称する。
この折曲部Sは、規定の清掃具200のヘッド部201に合わせて、予めおおよその位置が設定されている。すなわち、清掃用ウェットシート100のY方向の所定位置において、X方向に延在する2列の折曲部Sが設定されている。なお、折曲部Sは、使用者が認識できるように、例えば、清掃用ウェットシート100に予め折曲部Sに対応する直線を印刷しても良いし、清掃用ウェットシート100に折曲部Sに対応する折れ線を形成しても良い。
そして、清掃用ウェットシート100の略全面に亘って、エンボス20が配置されている。
【0038】
(エンボス)
エンボス20は、清掃用ウェットシート100において、シートがZ方向に圧縮された部分である。
エンボス20は、図2に示すように、平面視において、一方向に短尺で幅が狭い楕円形状であり、長軸方向略中央部にくびれ部を有する、いわゆるひょうたん形に形成されている。エンボス20の形状としてはこれに限られず、例えば、多角形等種々の形状や、各形状を組み合わせた形状としてもよいが、汚れの掻き取り性向上の観点からは、このようなひょうたん形とするのが好ましい。
【0039】
かかるエンボス20は、例えば、温度80℃~200℃、エンボス圧0.2MPa~1.0MPaの条件による熱エンボスにて形成することができる。熱エンボスによりエンボス20を形成する場合、凸エンボスロールとしては、少なくとも外周面が炭素鋼、ステンレス鋼あるいはポリプロピレン、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂等の硬化樹脂等からなるものを用いることができる。中でも耐久性や耐熱性の観点から、ステンレス鋼からなるものを用いるのが好ましい。
また、熱エンボスによりエンボス加工を行う場合は、清掃用ウェットシート100に薬液を含浸させる工程の前に行うのが、凹凸形状の付与させやすさから好ましい。
【0040】
(凸エンボス、凹エンボス)
エンボス20としては、Z方向上側(清掃用ウェットシート100の第1面側)に凸型となる凸エンボス21と、下側(清掃用ウェットシート100の第2面側)に凸型となる(すなわち、Z方向上側に凹型となる)凹エンボス22と、が形成されている。なお、図1から図4Bにおいては、凸エンボス21を実線、凹エンボス22を破線で示している。
凸エンボス21は、長軸方向において5mmから10mm、好ましくは6mmから8mmであり、長軸方向と直交する短軸方向において2mmから5mm、好ましくは3mmから4mmであり、Z方向において(中間部(後述)からの高さ)0.5mmから2mm、好ましくは0.7mmから1.5mmに形成される。凹エンボス22は、断面視において、凸エンボス21と上下逆さまに、かつ、略同一の形状に形成され、Z方向下側に向かって凸となる形状に形成されている。
【0041】
(中間部)
清掃用ウェットシート100に形成された各エンボス20の間には、中間部が形成されている。中間部は、エンボス20が形成されていない部分であるため、Z方向において、凸エンボス21よりも低く、凹エンボス22よりも高い位置となる。
【0042】
[エンボスパターン]
図2に示すように、本実施形態に係る清掃用ウェットシート100には、凸エンボス21として、長軸方向の向きが互いに異なる第1凸エンボス211と第2凸エンボス212が複数設けられている。そして、短軸方向に隣り合う第1凸エンボス211同士は、短軸方向に両第1凸エンボス211の一部が重なり、かつ、長軸方向にずれるように配置されている。また、短軸方向に隣り合う第2凸エンボス212同士は、短軸方向に両第2凸エンボス212の一部が重なり、かつ、長軸方向にずれるように配置されている。そして、このような複数の第1凸エンボス211及び第2凸エンボス212が、清掃用ウェットシート100の第1の辺aから、第1の辺aと対向する第2の辺bまで連続的に配置されている。
【0043】
通常、ヘッド部201を有する清掃具200に取り付けられた清掃用ウェットシート100は、拭き掃除を行う際にはX方向又はY方向に略垂直に動かされるが、上記したようなエンボスパターンを有する清掃用ウェットシート100の場合、清掃用ウェットシート100のX方向又はY方向に対向する2辺を繋ぐように、凸エンボス21による重なりしろが生まれるため、拭き掃除を行う際に、拭き筋の発生を低減することができる。
【0044】
このとき特に、第1凸エンボス211及び第2凸エンボス212は、その長軸方向及び短軸方向の中心部を、X方向に対して45°の角度の直線が通過するように配置されているのが好ましい。また、隣り合う第1凸エンボス211同士と第2凸エンボス212同士は、短軸方向に少なくとも0.1mm以上の重なりを有し、かつ、長軸方向のずれが5mm以内(すなわち、凸エンボス21の長軸方向の幅以内)となるように配置されているのが好ましい。また、第1凸エンボス211と第2凸エンボス212は、図2に示すように、長軸方向が略直角をなすように、隣接して配置されているのが好ましい。
【0045】
このようなエンボスパターンとすることで、清掃用ウェットシート100の1つの頂点から、0°から30°の角度で引いた直線の範囲内と、60°から90°の角度で引いた直線の範囲内には、凸エンボス21が必ず配置されていることとなる。よって、X方向及びY方向に対して30°以内、すなわち、0°~30°、60°~120°、150°~210°、240°~300°、330°~360°の方向に清掃用ウェットシート100を動かした場合は、凸エンボス21同士で重なりしろが生まれ、拭き筋の発生をより低減することができる。
【0046】
このような清掃用ウェットシート100においては、凹エンボス22として、長軸方向の向きが異なる第1凹エンボス221と第2凹エンボス222とを、凸エンボス21と同様のエンボスパターンで配置するのが好ましい。
【0047】
具体的には、凹エンボス22として、長軸方向の向きが互いに異なる第1凹エンボス221と第2凹エンボス222が設けられている。そして、長軸方向と直交する短軸方向に隣り合う第2凹エンボス222同士は、短軸方向に両第2凹エンボス222の一部が重なり、かつ、長軸方向にずれるように配置されている。また、短軸方向に隣り合う第2凹エンボス222同士は、短軸方向に両第2凹エンボス222の一部が重なり、かつ、長軸方向にずれるように配置されている。このような複数の第2凸エンボス212及び第2凹エンボス222が、清掃用ウェットシート100の第1の辺aから、第1の辺aと対向する第2の辺bまで連続的に配置されている。
【0048】
凸エンボス21と同様のエンボスパターンで凹エンボス22が配置されていることで、凸エンボス21が配置された清掃用ウェットシート100の第1の面に限られず、第1の面の凹エンボス22がZ方向上側に凸となる清掃用ウェットシート100の第2の面も、第1の面と同程度の清掃能力を有するようになり、清掃用ウェットシート100の1枚辺りの清掃面積を増やすことができる。
【0049】
[変形例1]
清掃用ウェットシート100におけるエンボスパターンとしては、上記したものに限られない。
例えば図3Aに示すように、凸エンボス21と凹エンボス22との組み合わせからなる略矩形状のエンボスブロック30を、図3Bに示すように、X方向に沿って、清掃用ウェットシート100の第1の辺aから、第1の辺aと対向する第2の辺bまで複数配置してなるエンボスブロック列31を、Y方向に沿って、第3の辺cから第4の辺dまで連続して複数配置する。
【0050】
このとき、例えば、隣接する第1のエンボスブロック列31と第2のエンボスブロック列31とがX方向にずれるように配置することで、第1のエンボスブロック30内の凸エンボス21及び凹エンボス22を、隣接する第2のエンボスブロック30内の凸エンボス21及び凹エンボス22と長軸方向の向きと異なる向きかつ、第2のエンボスブロック30内の隣接する凸エンボス21及び凹エンボス22と短軸方向に一部が重なるように配置すると、清掃用ウェットシート100の第1の辺aから第2の辺bにかけて、また第3の辺cから第4の辺dにかけて複数の凸エンボス21同士の重なりしろが生まれるようになるため、ヘッド部201を有する清掃具200に取り付けて拭き掃除を行う際に、拭き筋の発生を低減することができる。
【0051】
[変形例2]
また、エンボスブロック30の構成は上記したものに限られない。例えば、凸エンボス21と凹エンボス22とがX方向及びY方向に交互に配置されたエンボスブロック30において、凸エンボス21及び凹エンボス22の長軸方向の向きを、X方向に対して30°~60°の範囲内で傾けることで、図4Aに示すように、エンボスブロック30をひし形としても良い。
【0052】
このようなエンボスブロック30を、図4Bに示すように、変形例1と同様に、第1の辺aから第2の辺bまで連続して配置してなるエンボスブロック列31を、第3の辺cから第4の辺dまで連続して複数配置し、隣接する第1のエンボスブロック30内の凸エンボス21及び凹エンボス22の長軸方向の向きとは異なる向きに、かつ、短軸方向に一部が重なるように、第2のエンボスブロック30内の凸エンボス21及び凹エンボス22を配置した場合、エンボスブロック30はひし形であるため、エンボスブロック30同士が必然的にずれるように配置される。
そのため、意図して第1のエンボスブロック列31と第2のエンボスブロック列31をずれるように配置しようとする必要が無い。
【0053】
(非エンボス部)
また、図4Bに示すように、エンボスブロック30同士の間には、清掃用ウェットシート100がZ方向に圧縮なされておらず、起毛を有している非エンボス部40を設けるようにしても良い。
【0054】
非エンボス部40は、エンボス20を形成する凸エンボスロールを、非エンボス部40の形状を除くようにデザインすることで、あるいは、起毛が残存する程度に、エンボス20の圧縮がなされている部分と比較して軽度に圧縮することで、形成することができる。
非エンボス部40を設けることで、清掃用ウェットシート100を所定の方向に動かして清掃を行った際に、非エンボス部40にゴミが溜まりやすくなるため、ごみの捕集性を高めることができる。
【0055】
ただし、図4Bに示すように、非エンボス部40が一直線となるように形成された場合、清掃用ウェットシート100を動かす角度によっては拭き筋が発生しやすくなるおそれがある。そこで、非エンボス部40が一直線とならないように、第1のエンボスブロック30を隣接する第2のエンボスブロック30からずれた位置に配置するのが好ましい。
【0056】
また、上記変形例1及び2のエンボスパターンにおいても、隣接する凸エンボス21同士は長軸方向が略直角をなすように隣接して配置されているのが好ましい。
【0057】
その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
例えば、清掃用ウェットシート100に含浸される薬液は、その用途に応じて変更可能である。
また、清掃用ウェットシート100は複数枚の原紙シートがプライ加工(積層)されたものであるとしたが、これに限られず、単層のものであっても構わない。
また、図2及び図4Bにおいては、第1の辺a及び第2の辺bを清掃用ウェットシート100における長手の辺とし、図3Bにおいては、第3の辺c及び第4の辺dを長手の辺としたが、これに限られない。
【0058】
なお、図2から図4Bにおいては、凸エンボス21及び凹エンボス22はいずれも平面視において略同一の形状となるひょうたん形としたが、凸エンボス21と凹エンボス22とで異なる形状としてもよい。
【0059】
ただし、上記したいずれのエンボスパターンにおいても、清掃用ウェットシート100に配置される凸エンボス21と凹エンボス22は、略同形かつ略同数となるようにされるのが好ましい。このようにすることで、清掃用ウェットシート100の第1面と第2面が同程度の清掃機能を有するようになり、清掃用ウェットシート100の1枚辺りの清掃面積を大きくすることができる。
【符号の説明】
【0060】
100 清掃用ウェットシート
20 エンボス
21 凸エンボス
211 第1凸エンボス
212 第2凸エンボス
22 凹エンボス
221 第1凹エンボス
222 第2凹エンボス
30 エンボスブロック
31 エンボスブロック列
a 第1の辺
b 第2の辺
c 第3の辺
d 第4の辺
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B