(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072498
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】歯車加工装置と方法
(51)【国際特許分類】
B23F 5/04 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B23F5/04
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020181968
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】511194809
【氏名又は名称】国立中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】呉 育仁
(57)【要約】
【課題】ベッド、搭載ユニット、研削ユニットと制御ユニットを含む歯車加工装置を提供する。
【解決手段】搭載ユニットと研削ユニットはベッドに設置される。搭載ユニットは歯車を載せるためであり、研削ユニットはドライバーモジュール及びドライバーモジュールと接続した研削工具を含み、研削工具は搭載ユニットに対して複数軸の方向の運動を実施でき、歯車の歯面に接触する。制御ユニットは搭載ユニットと研削ユニットと電気的に接続し、制御ユニットはドライバーモジュールを制御し、研削過程において複数の軸の方向のうち少なくとも一つに対し付加運動を加え、研削工具を動かして歯車の歯面を研削する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車の歯面に表面加工をする歯車加工装置であり、歯車加工装置はベッド、搭載ユニット、研削ユニット、制御ユニットを含み、
前記搭載ユニットは前記ベッドに設置し、前記搭載ユニットは前記歯車を載せ、
前記研削ユニットは前記ベッドに設置し、前記研削ユニットはドライバーモジュール及び前記ドライバーモジュールと接続した研削工具を含み、前記研削工具は前記搭載ユニットに対して複数の軸の方向の運動を実施でき、これにより前記歯車の歯面に接触し、
前記制御ユニットは前記搭載ユニットと前記研削ユニットと電気的に接続し、前記制御ユニットは前記ドライバーモジュールを制御し、研削過程において前記複数の軸の方向のうち少なくとも1つに対し付加運動を加えることで、前記研削工具を動かして前記歯車の歯面を研削する歯車加工装置。
【請求項2】
前記付加運動は波動運動となる請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項3】
前記波形運動は、正弦波運動、矩形波運動、三角波運動、のこぎり波運動のうちの少なくとも一つ或いはその組み合わせである請求項2に記載の歯車加工装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは前記ドライバーモジュールを制御し、研削過程において前記複数の軸に対してそれぞれ異なる前記波形運動を加えることができる請求項3に記載の歯車加工装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは前記ドライバーモジュールを制御し、研削過程において前記複数の軸に対してそれぞれ異なるふり幅或いは周波数を有する同じ前記波形運動を加えることができる請求項3に記載の歯車加工装置。
【請求項6】
前記研削工具は研削盤である請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項7】
前記複数の軸は、直角座標系のX軸、Y軸、Z軸或いは回転軸のうち少なくとも2つを選択する請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項8】
歯車の歯面に表面加工する歯車加工方法であり、前記歯車加工方法が、
歯車加工装置を提供し、前記歯車加工装置が前記歯車を載せる搭載ユニットと研削ユニットを含み、前記研削ユニットがドライバーモジュール及び前記ドライバーモジュールと接続した研削工具を含むことと、
前記研削工具が前記搭載ユニットに対して複数の軸の方向の運動を実施することにより前記歯車の歯面に接触することと、
そのうち、前記ドライバーモジュールが研削過程において前記複数の軸のうち少なくとも1つに対し付加運動を加えることで、前記研削工具を動かして前記歯車の歯面を研削することを含む歯車加工方法。
【請求項9】
前記付加運動は波形運動となる請求項8に記載の歯車加工方法。
【請求項10】
前記波形運動は、正弦波運動、矩形波運動、三角波運動、のこぎり波運動のうちの少なくとも一つ或いはその組み合わせである請求項9に記載の歯車加工方法。
【請求項11】
前記ドライバーモジュールは研削過程において前記複数の軸に対してそれぞれ異なる前記波形運動を加える請求項10に記載の歯車加工方法。
【請求項12】
前記ドライバーモジュールは研削過程において前記複数の軸に対してそれぞれ異なるふり幅或いは周波数を有する同じ前記波形運動を加える請求項10に記載の歯車加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯車加工装置、特に歯車の歯面のリップリングと歯面粗さを変えられる歯車加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車はよく見られる伝動部品として、様々な用途による需要により、歯車は様々な材料で製造することができる。例を挙げると、歯車は乗り物の部品或いは高精度の測量装置に、運転の安定性と耐久性を保つために応用され、それらの歯車は硬い質の金属或いはその合金での製造が多く採用されている。そしてそれらの歯車の歯面に対して、通常は研削盤を利用して研削加工され、それにより歯車の歯面が形成される。
【0003】
しかしながら、研削盤加工の過程において、歯車の歯面に肉眼では見えないごく細かなリップリングが残る。研削盤は規則正しく一方向に沿って回転しているため、リップリングは大体直線状且つ互いに平行な模様になる。これらリップリングは回転時において歯車が容易に特定の周波数のノイズを形成し、且つ噛み合い区域において潤滑油膜の形成を不利にするため、歯車の回転の効能と品質に影響を及ぼす。そのため、歯車の歯面に形成される細かなリップリングがもたらす良くない影響を改善することによって、ノイズ生成の可能性を低くする。これは研究する価値のある課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は歯面のリップリングと歯面粗さを変えられる歯車加工装置を提供するものである。
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明の歯車加工装置はベッド、搭載ユニット、研削ユニット及び制御ユニットを含む。搭載ユニットと研削ユニットはベッドに設置される。搭載ユニットは歯車を載せるためである。研削ユニットはドライバーモジュール及びドライバーモジュールと接続した研削工具を含み、研削工具は搭載ユニットに対して複数軸の方向の運動を実施でき、歯車の歯面に接触する。制御ユニットは搭載ユニットと研削ユニットと電気的に接続し、制御ユニットはドライバーモジュールを制御し、研削過程において複数の軸の方向のうち少なくとも1つに対して付加運動を加えることができ、研削工具を動かして歯車の歯面を研削する。
【0006】
本発明の実施例において、付加運動は波形運動となる。
【0007】
本発明の実施例において、波形運動は次の中から選択する少なくとも一つ或いはその組み合わせである:正弦波運動、矩形波運動、三角波運動、のこぎり波運動。
【0008】
本発明の実施例において、制御ユニットはドライバーモジュールを制御し、研削過程において複数の軸に対しそれぞれ異なる波形運動を加えることができる。
【0009】
本発明の実施例において、制御ユニットはドライバーモジュールを制御し、研削過程において複数の軸に対してそれぞれ異なるふり幅或いは周波数の同じ波形運動を加えることができる。
【0010】
本発明の実施例において、研削工具は研削盤となる。
【0011】
本発明の実施例において、複数の軸の方向は次の中から選択する少なくとも二つである:直角座標系のX軸、Y軸、Z軸或いは回転軸。
【0012】
本発明は更に歯車の加工方法を含み、その方法は以下を含む:歯車加工装置を提供し、歯車加工装置は歯車を載せる搭載ユニットと研削ユニットを含み、研削ユニットはドライバーモジュール及びドライバーモジュールと接続した研削工具を含む;そして研削工具は搭載ユニットに対して複数の軸の方向の運動を実施して、歯車の歯面に接触する;その中で、ドライバーモジュールは研削過程において複数の軸のうち少なくとも一つに対し付加運動を加え、研削工具を動かして歯車の歯面を研削する。
【0013】
これにより、本発明の歯車加工装置は歯車の歯面で形成される複数のリップリングを変えられ、交錯した不平行な溝を発生させ、そして表面粗度の大きさをコントロールして、歯車の噛み合い時の特定の周波数のノイズを励起することを避け、そしてノイズ減少の効果を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の歯車加工装置のブロック図である。
【
図2】
図2は本発明の歯車加工装置の構造見取り図である。
【
図3】
図3は本発明の歯車加工装置の研削ユニットの付加運動の実施の見取り図である。
【
図4】
図4は本発明の歯車加工装置の対照組Aと実験組B~Cの歯車の歯面のリップリング結果の比較図である。
【
図5】
図5は本発明の歯車の加工方法の手順図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
それぞれの様態と実施例はただ実例且つそれだけに限らず、したがって本説明書を閲覧後、通常常識を持つ人は本発明を逸脱しない範疇において、またそのほかの様態と実施例も可能性がある。下記の詳細な説明と登録請求の範囲で述べることにより、実施例の特徴と利点がさらに顕彰されるだろう。
【0016】
本発明の個数は、特に記載がない場合を除き、一つまたは少なくとも一つであり、且つ複数である場合を含むことがある。
【0017】
本発明における「第一」或いは「第二」など類似する序数は主に区分・同じものを参照或いは類似の工具・構造などであり、且つ必ずしも工具と構造が空間と時間上の暗黙の順序になっているわけではない。理解すべきことは、ある状況と構成の元で序数は交換して使用しても本発明の実施には影響しない。
【0018】
本発明における「含む」や「備える」またそれらに類似する用語は、被排他的な包括物を網羅していることを意味する。例えば、複数の要素を含むユニットや構造・製品・装置は、本文に記載される要素に限らず、記載がなくとも該当するユニットや構造・製品・装置が通常持つ他の要素を包括することもできる。
【0019】
本発明の歯車加工装置は歯車の歯面に対し表面研削加工をすると、歯車の歯面の表面粗さを減少できる。
図1と
図2を合わせて参照すると、その中で
図1は本発明の歯車加工装置のブロック図であり、
図2は本発明の歯車加工装置の構造見取り図である。
図1と
図2が示すように、本発明の歯車加工装置1はベッド10、搭載ユニット20、研削ユニット30及び制御ユニット40を含む。ベッド10は本発明の歯車加工装置1の基礎構造部であり、各機能ユニット或いは部品を設置するためにある。
【0020】
搭載ユニット20はベッド10に設置する。搭載ユニット20は加工待ちの歯車Gを搭載する。搭載ユニット20は第一ドライバーモジュール21とワークテーブル22を含み、且つ第一ドライバーモジュール21はワークテーブル22と接続する。第一ドライバーモジュール21はワークテーブル22に複数の軸への運動をさせ、研削ユニット30はそれに合わせ歯車Gに対して加工をする;ワークテーブル22は加工待ちの歯車Gを置いて固定する。本発明の実施例において、第一ドライバーモジュール21はワークテーブル22に直角座標系の単数或いは複数軸への運動をさせる。例えばX軸・Y軸或いはZ軸に沿って直線移動を実施して、歯車Gに対しての加工位置が変えられる;第一ドライバーモジュール21もワークテーブル22に回転軸に沿って回転運動を実施させることができ、同時に歯車Gの回転を動かせる。そのほか、違う需要により、第一ドライバーモジュール21はワークテーブル22に更に別の回転軸に基づいて局部的な振れの運動を実施させ、歯車Gに対しての加工角度を変えられる。つまり、本実施例において、前述の複数軸は次のグループの中から選択する少なくとも一つ或いはその組み合わせである:直角座標系のX軸、Y軸、Z軸或いは回転軸。但し、本発明では上記について限られていない。
【0021】
研削ユニット30はベッド10に設置する。研削ユニット30は加工待ちの歯車Gに対して研削操作を実施する。研削ユニット30は第二ドライバーモジュール31及び研削工具32を含み、且つ第二ドライバーモジュール31は研削工具32に接続する。第二ドライバーモジュール31は研削工具32に搭載ユニット20に対して複数の軸の方向に運動を実施させて、歯車Gの歯面に接触並びに歯車Gに対し研削加工を進行する;研削工具32は加工待ちの歯車Gを研削する。本発明の実施例において、第二ドライバーモジュール31は研削工具32に直角座標系の単数或いは複数軸への運動を実施させられる。例えばX軸、Y軸或いはZ軸に沿って直線移動を実施すると、研削工具32の研削位置を変化できる;第二ドライバーモジュール31も研削工具32に回転軸に沿って回転運動を実施させて、同時に研削工具32の回転を動かせる。そのほか、違う需要により、第二ドライバーモジュール31は更に研削工具32に別の回転軸に基づいて局部的な振れの運動を実施させて、研削工具32の研削角度を変えさせる。つまり、本実施例において、前述の複数軸は次のグループの中から選択する少なくとも二つである:直角座標系のX軸、Y軸、Z軸或いは回転軸。但し、本発明では上記について限られていない。
【0022】
本発明の実施例において、研削工具32は研削盤となる。以下はウォーム研削盤を例に説明したものだが、本発明は限られていない。ウォーム研削盤の回転軸の方向と歯車Gの回転軸の方向は互いに垂直になり、研削過程においてウォーム研削盤の研削構造と歯車Gの歯面はお互いに噛み合いになって研削作業において有利である。
【0023】
制御ユニット40は搭載ユニット20と研削ユニット30と電気的に接続する。本発明の実施例において、制御ユニット40は同様にベッド10に設置し、本発明の歯車加工装置1は一体化の設計とできるが、本発明では限られておらず、例えば制御ユニット40は構造上ベッド10と分離でき、搭載ユニット20と研削ユニット30はケーブルだけで電気的に接続できる。制御ユニット40はチップ、プロセッサー或いはパソコンなどにもでき、それを使用して搭載ユニット20の第一ドライバーモジュール21或いは/および研削ユニット30の第二ドライバーモジュール31に指令を伝達してコントロールし、研削工具32を駆動して加工待ちの歯車Gに対して研削作業を実施する。
【0024】
そのほか、本発明の実施例において、本発明の歯車加工装置1は更に電源ユニット50を含み、電源ユニット50は搭載ユニット20、研削ユニット30及び制御ユニット40に電気的に接続する。電源ユニット50により外部電源に接続できるため、前述の各ユニットの所要の電力を提供する。
【0025】
図1と
図3を合わせて参照にすると、その中の
図3は本発明の歯車加工装置の研削ユニットが付加運動を実施した見取り図である。制御ユニット40によって前述の研削工具32と加工待ちの歯車Gを各々回転させて且つ互いの定位置への移動をさせる以外、研削過程において、本発明の歯車加工装置1は主に制御ユニット40によって第二ドライバーモジュール31を制御し、複数軸のうち少なくとも1つに対し付加運動を加えさせ(例えばY軸に対してのみ加える付加運動、或いは同時にX軸、Y軸及びZ軸に対して加える付加運動など)、研削工具32は第二ドライバーモジュール31により前述の付加運動の状態下で研削作業ができる。
図3が示すように、本発明の実施例において、前述の付加運動は微量の波形運動になり、波形運動は次のグループの中から選択する少なくとも一つ或いはその組み合わせである:正弦波運動、矩形波運動、三角波運動、のこぎり波運動である。どの波形運動もそれぞれのふり幅と周波数を有しており、需要に応じて、波形のふり幅と周波数は調整できる。
【0026】
本発明の実施例において、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、研削過程において複数の軸に対してそれぞれ違う波形運動を加えさせることができる。例を挙げると、仮に前述の複数の軸がX軸とY軸を含むなら、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、X軸に対して矩形波運動を、そしてY軸に対して正弦波運動を加えさせることができる;また、仮に前述の複数の軸がX軸、Y軸及びZ軸を含むなら、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、X軸に対して矩形波運動を、Y軸に対して正弦波運動を、そしてZ軸に対して三角波運動を加えさせることができる。本発明はそれに限らず、需要により変化できる。
【0027】
本発明の実施例において、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、研削過程において複数の軸に対してそれぞれ違うふり幅或いは周波数の同じ波形運動を加えさせることができる。例を挙げると、仮に前述の複数の軸がX軸とY軸を含むなら、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、X軸とY軸に対して正弦波運動を加えさせることができるが、X軸に対して加えた正弦波運動のふり幅は3.6μmになり、周波数は30Hzになり、そしてY軸に対して加えた正弦波運動のふり幅は5.0μmになり、周波数は30Hzになる。本発明はそれに限らず、需要により変化できる。
【0028】
本発明の実施例において、異なる波形運動を任意の軸に対して加える波形運動の方程式は以下のとおりである:
【0029】
上述の方程式中でv・a・b・nの添え字1から4はそれぞれ正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波をあらわしている。そして式(1)は正弦波運動を加える際の方程式をあらわしており、式(2)は矩形波運動を加える際の方程式をあらわしており、式(3)は三角波運動を加える際の方程式をあらわしており、そして式(4)はのこぎり波運動を加える際の方程式をあらわしている。その中でa、bはそれぞれ波形のふり幅と周波数を制御し、ωは回転速度、tは時間、fは周波数である。その中でnの数値は大きいほど、波形は実際の形状に近づく。
【0030】
上述のそれぞれの波形運動方程式と本発明の歯車加工装置中の各軸の元々の運動方程式とを合わせると、各軸に対応する研削制御方程式ができ、そして歯車の歯面粗度と歯面のリップリングの形状を算出することができる。
【0031】
以下
図1と
図4を合わせて参照して、その中の
図4は本発明の歯車加工装置の対照組Aと実験組B~Cの歯車の歯面のリップリング結果の比較図である。以下の実験中、本発明の歯車加工装置1を用いて同規格の歯車の歯面に対して一度の研削作業を実施する際、X軸、Y軸及びZ軸に対していかなる波形運動も加えないことを設定条件にするものを対照組Aと定義し、X軸、Y軸及びZ軸に対していずれも正弦波運動を加えることを設定条件にするものを実験組Bと定義し、X軸、Y軸及びZ軸に対していずれも矩形波運動を加えることを設定条件にするものを実験組Cと定義し、歯車の歯面の研削作業後における、歯車の軸の向きと歯形方向に沿ったリップリングの結果の画像、歯面のリップリングの最大深さ、及び歯面粗度の数値をシミュレーション並びに取得する。その中で波形運動の周波数はいずれも30Hzで、X軸に対する波形運動のふり幅はいずれも3.6μmで、Y軸に対する波形運動のふり幅はいずれも5.0μmで、Z軸に対する波形運動のふり幅はいずれも4.0μm、ウォーム研削盤の軸への送り速度は20mm/s、螺旋角は0°で、ウォーム研削盤の研削盤の半径は200mmで、且つウォーム研削盤の研磨剤の粒径は470μmである。
【0032】
図4が示すように、実験シミュレーションの結果を分析すると、対照組Aのリップリングの形状は大体まっすぐなリップリングになり、実験組Bのリップリングの形状はだいたい斜めに交差したリップリングになり、実験組Cのリップリングの形状は対照組Aと同様に大体まっすぐなリップリングになる。リップリングの形状が斜めのリップリングになる時、歯車が噛み合い時に引き起こす単一周波数のノイズを有効に減らすことができ、それによって、正弦波運動の実験組Bは対照組Aと比較してノイズを減らす効果に優れている。矩形波運動の実験組Cは歯面のリップリングの形状を大きく改善することができていない。
【0033】
次に、リップリングの最大深さhmaxに関して、対照組Aのリップリングの最大深さは約1.60μm、実験組Bのリップリングの最大深さは約1.44μm、実験組Cのリップリングの最大深さは約1.62μmである。対照組Aと比べると、実験組Bのリップリングの最大深さは約16%下降し、そして実験組Cのリップリングの深さに対しては改善が限られる。
【0034】
また、歯面粗度Raに関して、対照組Aの歯面粗度は約0.422μm、実験組Bの歯面粗度は約0.473μm、実験組Cの歯面粗度は約0.246μmである。対照組Aと比べると、実験組Cの表面粗度の値に対して改善効果があり、実験組Bより優れているのが明らかである。
【0035】
図5を参照すると、本発明の歯車加工方法の手順図である。
図5が示すように、本発明は更に歯車加工方法を含み、その方法は本発明の歯車加工装置或いは類似した性能や特徴の他の装置に応用できる。本発明の歯車加工方法は以下の手順を含む:
【0036】
手順S1:歯車加工装置を提供し、歯車加工装置は歯車を載せる搭載ユニットと研削ユニットを含み、研削ユニットはドライバーモジュール及びドライバーモジュールを接続する研削工具を含む。
【0037】
手順S2:研削工具は搭載ユニットに対して複数軸の方向の運動を実施して、歯車の歯面に接触する;その中で、ドライバーモジュールは研削過程において複数の軸のうち少なくとも1つに対し付加運動を加え、研削工具を動かして歯車の歯面を研削する。
【0038】
以上により、本発明の歯車加工装置及び方法は研削工具が複数軸の運動を行う時、複数軸のうち少なくとも1つに対し微量の付加運動が加わることにより、研削工具は歯車の歯面のリップリングの形状、角度と深さに対して変化でき、異なる歯面粗度が形成され、そして歯車噛み合い時の振動により発生するノイズを減少させ、加工後の歯車の品質と効果を高める。
【0039】
発明は当業者であれば諸般の修飾が可能であるが、いずれも後付の特許請求の範囲の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 歯車加工装置
10 ベッド
20 搭載ユニット
21 第一ドライバーモジュール
22 ワークテーブル
30 研削ユニット
31 第二ドライバーモジュール
32 研削工具
40 制御ユニット
50 電源ユニット
G 歯車
S1、S2 手順
【手続補正書】
【提出日】2022-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車の歯面に表面加工をする歯車加工装置であり、歯車加工装置はベッド、搭載ユニット、研削ユニット、制御ユニットを含み、
前記搭載ユニットは前記ベッドに設置し、前記搭載ユニットは第一ドライバーモジュール及び、前記第一ドライバーモジュールと接続したワークテーブルを含み、前記ワークテーブルは前記歯車を載せ、前記第一ドライバーモジュールは前記ワークテーブルに複数軸への運動をさせ、並びに、ワークテーブルを回転軸に沿って回転運動と局部的な振れの運動を実施させることができ、
前記研削ユニットは前記ベッドに設置し、前記研削ユニットは第二ドライバーモジュール及び前記第二ドライバーモジュールと接続した研削工具を含み、前記第二ドライバーモジュールは前記研削工具を動かし、前記研削工具を前記搭載ユニットに対して複数の軸の方向の運動を実施できるようにさせ、並びに、前記第二ドライバーモジュールは、前記研削工具を回転軸に沿って局部的な振れの運動を実施させ、これにより前記研削工具が前記歯車の歯面に接触し、
前記制御ユニットは前記搭載ユニットと前記研削ユニットと電気的に接続し、前記制御ユニットは前記第二ドライバーモジュールを制御し、研削過程において前記複数の軸の方向及び前記回転軸のうち少なくとも1つに対し波形運動を加えることで、前記研削工具を動かして前記歯車の歯面を研削する歯車加工装置。
【請求項2】
前記波形運動は、正弦波運動、矩形波運動、三角波運動、のこぎり波運動のうちの少なくとも一つ或いはその組み合わせである請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは前記第二ドライバーモジュールを制御し、研削過程において前記複数の軸、或いは前記回転軸に対してそれぞれ異なる前記波形運動を加えることができる請求項2に記載の歯車加工装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは前記第二ドライバーモジュールを制御し、研削過程において前記複数の軸、或いは前記回転軸に対してそれぞれ異なるふり幅或いは周波数を有する同じ前記波形運動を加えることができる請求項2に記載の歯車加工装置。
【請求項5】
前記研削工具は研削盤である請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項6】
前記複数の軸は、直角座標系のX軸、Y軸或いはZ軸のうち少なくとも1つを選択する請求項1に記載の歯車加工装置。
【請求項7】
歯車の歯面に表面加工する歯車加工方法であり、前記歯車加工方法が、
歯車加工装置を提供し、前記歯車加工装置が前記歯車を載せる搭載ユニットと研削ユニットを含み、前記研削ユニットが第二ドライバーモジュール及び前記第二ドライバーモジュールと接続した研削工具を含むことと、
前記第二ドライバーモジュールは、前記研削工具が前記搭載ユニットに対して複数の軸の方向の運動を実施させ、これにより前記歯車の歯面に接触することと、
前記第二ドライバーモジュールは、前記研削工具を回転軸に沿って局部的な振れの運動を実施させ、これにより前記歯車の歯面に接触し、
そのうち、前記第二ドライバーモジュールが研削過程において前記複数の軸のうち少なくとも1つに対し波形運動を加えることで、前記研削工具を動かして前記歯車の歯面を研削することを含む歯車加工方法。
【請求項8】
前記波形運動は、正弦波運動、矩形波運動、三角波運動、のこぎり波運動のうちの少なくとも一つ或いはその組み合わせである請求項7に記載の歯車加工方法。
【請求項9】
前記ドライバーモジュールは研削過程において前記複数の軸、或いは回転軸に対してそれぞれ異なる前記波形運動を加える請求項8に記載の歯車加工方法。
【請求項10】
前記ドライバーモジュールは研削過程において前記複数の軸、或いは前記回転軸に対してそれぞれ異なるふり幅或いは周波数を有する同じ前記波形運動を加える請求項8に記載の歯車加工方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯車加工装置、特に歯車の歯面のリップリングと歯面粗さを変えられる歯車加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯車はよく見られる伝動部品として、様々な用途による需要により、歯車は様々な材料で製造することができる。例を挙げると、歯車は乗り物の部品或いは高精度の測量装置に、運転の安定性と耐久性を保つために応用され、それらの歯車は硬い質の金属或いはその合金での製造が多く採用されている。そしてそれらの歯車の歯面に対して、通常は研削盤を利用して研削加工され、それにより歯車の歯面が形成される。
【0003】
しかしながら、研削盤加工の過程において、歯車の歯面に肉眼では見えないごく細かなリップリングが残る。研削盤は規則正しく一方向に沿って回転しているため、リップリングは大体直線状且つ互いに平行な模様になる。これらリップリングは回転時において歯車が容易に特定の周波数のノイズを形成し、且つ噛み合い区域において潤滑油膜の形成を不利にするため、歯車の回転の効能と品質に影響を及ぼす。そのため、歯車の歯面に形成される細かなリップリングがもたらす良くない影響を改善することによって、ノイズ生成の可能性を低くする。これは研究する価値のある課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は歯面のリップリングと歯面粗さを変えられる歯車加工装置を提供するものである。
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明の歯車加工装置はベッド、搭載ユニット、研削ユニット及び制御ユニットを含む。搭載ユニットと研削ユニットはベッドに設置される。搭載ユニットは歯車を載せるためである。研削ユニットは第二ドライバーモジュール及び第二ドライバーモジュールと接続した研削工具を含み、第二ドライバーモジュールは研削工具は搭載ユニットに対して複数軸の方向の運動を実施できるように前記研削工具を駆動し、第二ドライバーモジュールは、前記研削工具が歯車の歯面に接触し回転軸に沿って部分的たわみ運動を行うために前記研削工具を駆動する。制御ユニットは搭載ユニットと研削ユニットと電気的に接続し、制御ユニットは第二ドライバーモジュールを制御し、研削過程において複数の軸の方向のうち少なくとも1つの回転軸に対して波形運動を加えることができ、研削工具を動かして歯車の歯面を研削する。
【0006】
本発明の実施例において、波形運動は次の中から選択する少なくとも一つ或いはその組み合わせである:正弦波運動、矩形波運動、三角波運動、のこぎり波運動。
【0007】
本発明の実施例において、制御ユニットはドライバーモジュールを制御し、研削過程において複数の軸にと回転軸対しそれぞれ異なる波形運動を加えることができる。
【0008】
本発明の実施例において、制御ユニットはドライバーモジュールを制御し、研削過程において複数の軸と回転軸に対してそれぞれ異なるふり幅或いは周波数の同じ波形運動を加えることができる。
【0009】
本発明の実施例において、研削工具は研削盤となる。
【0010】
本発明の実施例において、複数の軸の方向は次の中から選択する少なくとも一つである:直角座標系のX軸、Y軸或いはZ軸。
【0011】
本発明は更に歯車の加工方法を含み、その方法は以下を含む:歯車加工装置を提供し、歯車加工装置は歯車を載せる搭載ユニットと研削ユニットを含み、研削ユニットは第二ドライバーモジュール及び第二ドライバーモジュールと接続した研削工具を含む;第二ドライバーモジュールは研削工具が搭載ユニットに対して複数の軸の方向の運動を実施するように駆動し、歯車の歯面に接触する;そして、第二駆動モジュールは、歯車の歯面に接触するために、回転軸に沿って研削ユニットを部分的たわみ運動をするように駆動する。その中で、ドライバーモジュールは研削過程において複数の軸のうち少なくとも一つの回転軸に対し波形運動を加え、研削工具を動かして歯車の歯面を研削する。
【0012】
これにより、本発明の歯車加工装置は歯車の歯面で形成される複数のリップリングを変えられ、交錯した不平行な溝を発生させ、そして表面粗度の大きさをコントロールして、歯車の噛み合い時の特定の周波数のノイズを励起することを避け、そしてノイズ減少の効果を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は本発明の歯車加工装置のブロック図である。
【
図2】
図2は本発明の歯車加工装置の構造見取り図である。
【
図3】
図3は本発明の歯車加工装置の研削ユニットの付加運動の実施の見取り図である。
【
図4】
図4は本発明の歯車加工装置の対照組Aと実験組B~Cの歯車の歯面のリップリング結果の比較図である。
【
図5】
図5は本発明の歯車の加工方法の手順図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
それぞれの様態と実施例はただ実例且つそれだけに限らず、したがって本説明書を閲覧後、通常常識を持つ人は本発明を逸脱しない範疇において、またそのほかの様態と実施例も可能性がある。下記の詳細な説明と登録請求の範囲で述べることにより、実施例の特徴と利点がさらに顕彰されるだろう。
【0015】
本発明の個数は、特に記載がない場合を除き、一つまたは少なくとも一つであり、且つ複数である場合を含むことがある。
【0016】
本発明における「第一」或いは「第二」など類似する序数は主に区分・同じものを参照或いは類似の工具・構造などであり、且つ必ずしも工具と構造が空間と時間上の暗黙の順序になっているわけではない。理解すべきことは、ある状況と構成の元で序数は交換して使用しても本発明の実施には影響しない。
【0017】
本発明における「含む」や「備える」またそれらに類似する用語は、被排他的な包括物を網羅していることを意味する。例えば、複数の要素を含むユニットや構造・製品・装置は、本文に記載される要素に限らず、記載がなくとも該当するユニットや構造・製品・装置が通常持つ他の要素を包括することもできる。
【0018】
本発明の歯車加工装置は歯車の歯面に対し表面研削加工をすると、歯車の歯面の表面粗さを減少できる。
図1と
図2を合わせて参照すると、その中で
図1は本発明の歯車加工装置のブロック図であり、
図2は本発明の歯車加工装置の構造見取り図である。
図1と
図2が示すように、本発明の歯車加工装置1はベッド10、搭載ユニット20、研削ユニット30及び制御ユニット40を含む。ベッド10は本発明の歯車加工装置1の基礎構造部であり、各機能ユニット或いは部品を設置するためにある。
【0019】
搭載ユニット20はベッド10に設置する。搭載ユニット20は加工待ちの歯車Gを搭載する。搭載ユニット20は第一ドライバーモジュール21とワークテーブル22を含み、且つ第一ドライバーモジュール21はワークテーブル22と接続する。第一ドライバーモジュール21はワークテーブル22に複数の軸への運動をさせ、研削ユニット30はそれに合わせ歯車Gに対して加工をする;ワークテーブル22は加工待ちの歯車Gを置いて固定する。本発明の実施例において、第一ドライバーモジュール21はワークテーブル22に直角座標系の単数或いは複数軸への運動をさせる。例えばX軸・Y軸或いはZ軸に沿って直線移動を実施して、歯車Gに対しての加工位置が変えられる;第一ドライバーモジュール21もワークテーブル22に回転軸に沿って回転運動を実施させることができ、同時に歯車Gの回転を動かせる。そのほか、違う需要により、第一ドライバーモジュール21はワークテーブル22に更に別の回転軸に基づいて局部的な振れの運動を実施させ、歯車Gに対しての加工角度を変えられる。つまり、本実施例において、前述の複数軸は次のグループの中から選択する少なくとも一つ或いはその組み合わせである:直角座標系のX軸、Y軸、Z軸或いは回転軸。但し、本発明では上記について限られていない。
【0020】
研削ユニット30はベッド10に設置する。研削ユニット30は加工待ちの歯車Gに対して研削操作を実施する。研削ユニット30は第二ドライバーモジュール31及び研削工具32を含み、且つ第二ドライバーモジュール31は研削工具32に接続する。第二ドライバーモジュール31は研削工具32に搭載ユニット20に対して複数の軸の方向に運動を実施させて、歯車Gの歯面に接触並びに歯車Gに対し研削加工を進行する;研削工具32は加工待ちの歯車Gを研削する。本発明の実施例において、第二ドライバーモジュール31は研削工具32に直角座標系の単数或いは複数軸への運動を実施させられる。例えばX軸、Y軸或いはZ軸に沿って直線移動を実施すると、研削工具32の研削位置を変化できる;第二ドライバーモジュール31も研削工具32に回転軸に沿って回転運動を実施させて、同時に研削工具32の回転を動かせる。そのほか、違う需要により、第二ドライバーモジュール31は更に研削工具32に別の回転軸に基づいて局部的な振れの運動を実施させて、研削工具32の研削角度を変えさせる。つまり、本実施例において、前述の複数軸は次のグループの中から選択する少なくとも二つである:直角座標系のX軸、Y軸、Z軸或いは回転軸。但し、本発明では上記について限られていない。
【0021】
本発明の実施例において、研削工具32は研削盤となる。以下はウォーム研削盤を例に説明したものだが、本発明は限られていない。ウォーム研削盤の回転軸の方向と歯車Gの回転軸の方向は互いに垂直になり、研削過程においてウォーム研削盤の研削構造と歯車Gの歯面はお互いに噛み合いになって研削作業において有利である。
【0022】
制御ユニット40は搭載ユニット20と研削ユニット30と電気的に接続する。本発明の実施例において、制御ユニット40は同様にベッド10に設置し、本発明の歯車加工装置1は一体化の設計とできるが、本発明では限られておらず、例えば制御ユニット40は構造上ベッド10と分離でき、搭載ユニット20と研削ユニット30はケーブルだけで電気的に接続できる。制御ユニット40はチップ、プロセッサー或いはパソコンなどにもでき、それを使用して搭載ユニット20の第一ドライバーモジュール21或いは/および研削ユニット30の第二ドライバーモジュール31に指令を伝達してコントロールし、研削工具32を駆動して加工待ちの歯車Gに対して研削作業を実施する。
【0023】
そのほか、本発明の実施例において、本発明の歯車加工装置1は更に電源ユニット50を含み、電源ユニット50は搭載ユニット20、研削ユニット30及び制御ユニット40に電気的に接続する。電源ユニット50により外部電源に接続できるため、前述の各ユニットの所要の電力を提供する。
【0024】
図1と
図3を合わせて参照にすると、その中の
図3は本発明の歯車加工装置の研削ユニットが付加運動を実施した見取り図である。制御ユニット40によって前述の研削工具32と加工待ちの歯車Gを各々回転させて且つ互いの定位置への移動をさせる以外、研削過程において、本発明の歯車加工装置1は主に制御ユニット40によって第二ドライバーモジュール31を制御し、複数軸のうち少なくとも1つに対し付加運動を加えさせ(例えばY軸に対してのみ加える付加運動、或いは同時にX軸、Y軸及びZ軸に対して加える付加運動など)、研削工具32は第二ドライバーモジュール31により前述の付加運動の状態下で研削作業ができる。
図3が示すように、本発明の実施例において、前述の付加運動は微量の波形運動になり、波形運動は次のグループの中から選択する少なくとも一つ或いはその組み合わせである:正弦波運動、矩形波運動、三角波運動、のこぎり波運動である。どの波形運動もそれぞれのふり幅と周波数を有しており、需要に応じて、波形のふり幅と周波数は調整できる。
【0025】
本発明の実施例において、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、研削過程において複数の軸に対してそれぞれ違う波形運動を加えさせることができる。例を挙げると、仮に前述の複数の軸がX軸とY軸を含むなら、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、X軸に対して矩形波運動を、そしてY軸に対して正弦波運動を加えさせることができる;また、仮に前述の複数の軸がX軸、Y軸及びZ軸を含むなら、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、X軸に対して矩形波運動を、Y軸に対して正弦波運動を、そしてZ軸に対して三角波運動を加えさせることができる。本発明はそれに限らず、需要により変化できる。
【0026】
本発明の実施例において、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、研削過程において複数の軸に対してそれぞれ違うふり幅或いは周波数の同じ波形運動を加えさせることができる。例を挙げると、仮に前述の複数の軸がX軸とY軸を含むなら、制御ユニット40は第二ドライバーモジュール31を制御し、X軸とY軸に対して正弦波運動を加えさせることができるが、X軸に対して加えた正弦波運動のふり幅は3.6μmになり、周波数は30Hzになり、そしてY軸に対して加えた正弦波運動のふり幅は5.0μmになり、周波数は30Hzになる。本発明はそれに限らず、需要により変化できる。
【0027】
本発明の実施例において、異なる波形運動を任意の軸に対して加える波形運動の方程式は以下のとおりである:
【0028】
上述の方程式中でv・a・b・nの添え字1から4はそれぞれ正弦波、矩形波、三角波、のこぎり波をあらわしている。そして式(1)は正弦波運動を加える際の方程式をあらわしており、式(2)は矩形波運動を加える際の方程式をあらわしており、式(3)は三角波運動を加える際の方程式をあらわしており、そして式(4)はのこぎり波運動を加える際の方程式をあらわしている。その中でa、bはそれぞれ波形のふり幅と周波数を制御し、ωは回転速度、tは時間、fは周波数である。その中でnの数値は大きいほど、波形は実際の形状に近づく。
【0029】
上述のそれぞれの波形運動方程式と本発明の歯車加工装置中の各軸の元々の運動方程式とを合わせると、各軸に対応する研削制御方程式ができ、そして歯車の歯面粗度と歯面のリップリングの形状を算出することができる。
【0030】
以下
図1と
図4を合わせて参照して、その中の
図4は本発明の歯車加工装置の対照組Aと実験組B~Cの歯車の歯面のリップリング結果の比較図である。以下の実験中、本発明の歯車加工装置1を用いて同規格の歯車の歯面に対して一度の研削作業を実施する際、X軸、Y軸及びZ軸に対していかなる波形運動も加えないことを設定条件にするものを対照組Aと定義し、X軸、Y軸及びZ軸に対していずれも正弦波運動を加えることを設定条件にするものを実験組Bと定義し、X軸、Y軸及びZ軸に対していずれも矩形波運動を加えることを設定条件にするものを実験組Cと定義し、歯車の歯面の研削作業後における、歯車の軸の向きと歯形方向に沿ったリップリングの結果の画像、歯面のリップリングの最大深さ、及び歯面粗度の数値をシミュレーション並びに取得する。その中で波形運動の周波数はいずれも30Hzで、X軸に対する波形運動のふり幅はいずれも3.6μmで、Y軸に対する波形運動のふり幅はいずれも5.0μmで、Z軸に対する波形運動のふり幅はいずれも4.0μm、ウォーム研削盤の軸への送り速度は20mm/s、螺旋角は0°で、ウォーム研削盤の研削盤の半径は200mmで、且つウォーム研削盤の研磨剤の粒径は470μmである。
【0031】
図4が示すように、実験シミュレーションの結果を分析すると、対照組Aのリップリングの形状は大体まっすぐなリップリングになり、実験組Bのリップリングの形状はだいたい斜めに交差したリップリングになり、実験組Cのリップリングの形状は対照組Aと同様に大体まっすぐなリップリングになる。リップリングの形状が斜めのリップリングになる時、歯車が噛み合い時に引き起こす単一周波数のノイズを有効に減らすことができ、それによって、正弦波運動の実験組Bは対照組Aと比較してノイズを減らす効果に優れている。矩形波運動の実験組Cは歯面のリップリングの形状を大きく改善することができていない。
【0032】
次に、リップリングの最大深さhmaxに関して、対照組Aのリップリングの最大深さは約1.60μm、実験組Bのリップリングの最大深さは約1.44μm、実験組Cのリップリングの最大深さは約1.62μmである。対照組Aと比べると、実験組Bのリップリングの最大深さは約16%下降し、そして実験組Cのリップリングの深さに対しては改善が限られる。
【0033】
また、歯面粗度Raに関して、対照組Aの歯面粗度は約0.422μm、実験組Bの歯面粗度は約0.473μm、実験組Cの歯面粗度は約0.246μmである。対照組Aと比べると、実験組Cの表面粗度の値に対して改善効果があり、実験組Bより優れているのが明らかである。
【0034】
図5を参照すると、本発明の歯車加工方法の手順図である。
図5が示すように、本発明は更に歯車加工方法を含み、その方法は本発明の歯車加工装置或いは類似した性能や特徴の他の装置に応用できる。本発明の歯車加工方法は以下の手順を含む:
【0035】
手順S1:歯車加工装置を提供し、歯車加工装置は歯車を載せる搭載ユニットと研削ユニットを含み、研削ユニットはドライバーモジュール及びドライバーモジュールを接続する研削工具を含む。
【0036】
手順S2:研削工具は搭載ユニットに対して複数軸の方向の運動を実施して、歯車の歯面に接触する;その中で、ドライバーモジュールは研削過程において複数の軸のうち少なくとも1つに対し付加運動を加え、研削工具を動かして歯車の歯面を研削する。
【0037】
以上により、本発明の歯車加工装置及び方法は研削工具が複数軸の運動を行う時、複数軸のうち少なくとも1つに対し微量の付加運動が加わることにより、研削工具は歯車の歯面のリップリングの形状、角度と深さに対して変化でき、異なる歯面粗度が形成され、そして歯車噛み合い時の振動により発生するノイズを減少させ、加工後の歯車の品質と効果を高める。
【0038】
発明は当業者であれば諸般の修飾が可能であるが、いずれも後付の特許請求の範囲の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 歯車加工装置
10 ベッド
20 搭載ユニット
21 第一ドライバーモジュール
22 ワークテーブル
30 研削ユニット
31 第二ドライバーモジュール
32 研削工具
40 制御ユニット
50 電源ユニット
G 歯車
S1、S2 手順
【外国語明細書】