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  • 特開-植物由来法面用スペーサー 図1
  • 特開-植物由来法面用スペーサー 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072521
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】植物由来法面用スペーサー
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
E02D17/20 102F
E02D17/20 103A
E02D17/20 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182002
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】595118021
【氏名又は名称】高島 晃
(72)【発明者】
【氏名】高島 晃
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】公共土木事業法面工事用スペーサーは、材質がプラスチックであることから、工事完了後不要となっても大量数が長期間プラごみとして施工跡地に残る。これが自然災害時の崩壊で河川や海洋中への流出による環境負荷が懸念される。公共事業から排出するプラごみ問題。更にスペーサーは材質上法面植生に有益となる土壌肥料的効果は皆無である。この二つの課題を一挙に解決するスペーサーを提供する。
【解決手段】材質を植物由来とする。植物は自然界の生態系の保全、植物資源保護に配慮し農業資源を特定する。ここでは全国の稲作地帯では確保可能な稲もみ殻及び用途限定米による。ラス網列線3、4、V字形くぼみ1、2との接合、識別マーカー5で接合位置を瞬時に確認でき、シンプルな構造で、プラごみは出ない、微生物により分解し土に還り法面植生に二次的効果を付与する多くの特徴を有する植物由来法面用スペーサーにより課題は解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
公共土木事業法面工事用スペーサーの材質をプラスチックから代替した植物由来の農業資源。ここでは稲もみ殻堆肥100リットル、もみ殻燻炭16リットル及び米粉24リットルとすることにより、環境にやさしく優れた耐圧強度のスペーサーが生成され、工事跡地からプラごみは出ない。植生基材吹付工に用いたスペーサーは、分解し法面植生に有効活用され災害に強い法面造成維持できる特徴を有する植物由来法面用スペーサー。
【請求項2】
形状を下部に向ってゆるいマイナスのテーパー角を持つ逆四角錐で、それぞれ対応する角にくぼみの大きさ長さ10~13mm、幅4~6mm、深さ7~9mmを設け、ラス網列線上部(3)と上部くぼみV字形切込係合溝(1)、ラス網列線下部(4)と下部くぼみV字形切込係合溝(2)を係合する。スペーサーの中心部(6)に下部(8)まで貫通する直径25mmの植栽孔、上部くぼみ(1)を瞬時に判定できる識別マーカーのある請求項1に記載する植物由来法面用スペーサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公共土木事業法面工事用プラスチック製スペーサーの材質について、生分解性プラスチックを含む公共事業工事跡地から工事完了後不要となって発生するプラスチックごみの排出問題、及び植生基材吹付工においては材質がプラスチックであることから、工事完了後法面植生の成長に有益となる土壌肥料的機能性の恩恵は皆無である問題。この二つの課題解決に好適な植物由来法面用スペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
公共土木事業法面工事用スペーサーの材質は、一部にみられる生分解性を含むが主流はプラスチックが公知である(特許文献1)。そこでは法面にラス網設置に必要な工事用部材として使われ、工事完了後その役目は終える部材である。プラスチックに比べて分解の早い生分解性であっても環境保全上速やかな分解が望ましい。特に法面植生基材吹付工においては工事用部材としての使用目的後には、速やかに分解して土に還り法面植生特に初期生育に顕著な効果のある材質が望まれていた。
【0003】
プラスチックスペーサーは、複雑な構造体であっても製品製造は比較的容易、軽量で作業性が良い反面半永久的に分解しない、マイクロプラスチックによる海洋汚染など環境負荷する材質でもある。一方、天然物利用、化学合成利用、微生物が作る生分解性プラスチックは自然環境に悪影響を与えないと公知されているが、分解するまで期間を要し、製造が複雑、コストがかかるなど多くの課題があって使用実績は極めて少ない。
【0004】
本発明は、上述の欠点に対応したもので、工事完了後不要となるプラスチックスペーサーの材質を植物由来に代替することにより、速やかに分解し環境負荷の発生はなく、法面植生の初期生育に有効な土壌肥料的効果を特徴とする植物由来法面用スペーサーを提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-50463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のスペーサーによれば、公共土木事業法面工事用スペーサーの材質はプラスチックであり、スペーサーは工事完了後不要となってプラスチックごみとなって長期間土中に残る。これが崖崩れなどで公共事業工事跡地からプラスチックごみを排出し河川、海洋汚染など環境負荷の懸念される大きな課題があった。更に法面植生基材吹付工に使用したプラスチック製スペーサーによる土壌肥料的植生の生育に対する有益性は皆無であった。二つの大きな課題を解決しなければならない。
【0007】
本発明は、従来技術の材質には上述した通り環境負荷する懸念及び法面植生の生育に効果のない課題に対し、環境負荷なく自然災害に強い法面造成維持する多様な機能性を有するスペーサーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明において課題を解決するための手段は、スペーサーの材質をプラスチックから植物由来に代替することにある。植物は自然環境の生態系の維持保全、天然資源の消費の抑制、環境負荷の低減、農業資源の活用、全国各地で原料調達・製品製造容易、それぞれの条件すべてに配慮しなければならない。環境及び法面植生の双方に最も望ましい農業資源ここでは稲もみ殻、用途限定米とすることにより課題は解決する。
【0009】
植物由来法面用スペーサーに最も求められる耐圧強度は、ラス網に装着する作業性、安全性、耐久性、工事の正確性に対し急傾斜法面工事に十分対応可能なものであり、用途限定米の米粉から作る米のりの添加量により自在に求められる強度は確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明において、我が国の公共土木事業法面工事用プラスチック製スペーサーによる工事完了後に現出するプラスチックごみは、分解するまでの長期間は法面土壌中に残る材質上の問題がある。これが自然災害時の法面崩壊による河川や海洋中への流出等環境負荷の可能性が懸念される公共事業として望ましくない課題であったが、該製品により一切公共事業からのプラスチックごみの排出問題は完全に解決できる。
【0011】
また、工事完了後不要となったスペーサーは、これが例えば生分解性であってもプラスチック材質のため法面植生の生育に与える肥料的効果は皆無であった。この欠点を解消する植物由来の材質は土中で水分および微生物によって速やかに分解し有機質及び肥料分の供給源として植生に二次的活用され、最も望ましい植生による災害に強い法面を形成することができる。
【0012】
また、上面部(7)にあるマーカー(5)は、危険な急傾斜法面の作業に対するきめ細かな安全性、作業の能率性を重視したものである。急斜面に張ったラス網の上部列線(3)の位置と係合する本体上部のV字型くぼみ(1)の位置がマーカーによって瞬時に識別できる。本体を網目に挿入しラス網に平行して45度回転する簡単な操作により正確にワンタッチ装着できる作業の安全確保に役立つ特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】植物由来法面用スペーサーをラス網に装着した側面図である。
図2】植栽孔(6)に挿し木植栽した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図2に示す材質は植物由来の農業資源を特定したものである。ここでは稲もみ殻、用途限定米の米粉とし、更なる植生に対する土壌肥料的効果を最大となるための加工を施してある。即ちもみ殻原料をそのまま使用することなく法面植生の旺盛な初期生育を促す堆肥及び燻炭処理の条件を付すことにより、スペーサーの分解による良質の有機質供給、肥料成分供給、植物根圏域の土壌改良に二次的効果が得られる。
【0015】
図1ないし図2は本発明に係る植物由来法面用スペーサーの実施例を示す。
植物由来農業資源の主材料もみ殻は、収穫した籾を玄米に籾摺り調整する際に出る農業副産物で軽量、大きさ4~5mmほぼ均一な形状を呈しており、秋の収穫時期には米の生産農家の庭先又はJA大規模乾燥調製施設から大量に排出され、米作地帯においては全国各地において原料調達、製品製造が容易。他用途米は、国の施策による食用米に供することのできない米を製粉し、米粉は接着剤米のりの材料である。
【0016】
型式及び使用目的は、植栽機能のない高さ30mmのOS型、植栽機能付き高さ50mm、60mm、80mmのOPS型の2型がある。スペーサーは、ラス網の設置位置を基材吹付厚層の中間位置に固定するためスペーサーのくぼみV 字形切込溝(1、2)をラス網に装着して地盤から浮かせる間隔保持用部材である。ラス網はラスピンで固定、スペーサー装着後牧草種子を含む法面土壌基材を吹付ける。吹付層厚はスペーサー頂部が埋没するまでを目安とする。工事完了後のラス網は吹付厚層の中間位置に張られた状態となり、ラス網によって急斜面の土層は崩壊せず安定した法面ができる。
【0017】
危険な急傾斜法面のラス網上での作業において破損しない耐圧強度500kg保有する。法面は吹付基材の自重とラス網で安定した後は、スペーサーは工事用部材としての役割を果たし法面土中で不要となるが、植物由来の材質はその後継続して植生に有効活用される利点がある。
【0018】
また、法面植生に対する最大の二次的効果を現出するため、高度な農業技術により主材料稲もみ殻を肥料成分含有する堆肥に加工、及び土壌改良材として法面土づくりに効果のある燻炭に加工する。もみ殻堆肥の製造法は、稲もみ殻を好気性発酵することにより植生に利用される窒素成分2%以上含有する発酵堆肥ができる。もみ殻燻炭は、法面植生の土づくりに不可欠な土壌改良材としてもみ殻を原形のまま燻炭処理機により炭化し、これを微粉末状に調整することによりできる。
【0019】
また、本発明の最大の特長である米のりは、主材料の堆肥と燻炭を接着固化する強力な接着剤として、化学合成糊の使用を一切回避し環境に配慮したものである。製造法は用途限定米を製粉して得られた米粉を加水加熱攪拌して作る。米のりは主材料のもみ殻堆肥と同じく分解し貴重な有機質資源として永く法面植生に利用される利点がある。
【0020】
これらの材料の調整方法は、もみ殻堆肥は水分35%以下、3mm以下に粉砕、夾雑物除去篩選別調整する。もみ殻燻炭は水分0%、3mm以下の微粉末状に調整する。米のりは米粉24リットルに対し水32リットル加え加熱攪拌して作る。
これらの材料を攪拌混錬機により適度の硬さの団子状の圧縮成型用原料を作る。圧縮成型機で成型するとV字形切込溝のある製品ができる。これを乾燥すると強固な製品ができる。マーカーを付し、ラス網目装着製品テストを経て完成する。
【0021】
形状は、全体がシンプルな構造で、下部(8)に向ってゆるやかなマイナスのテーパー角を持つ逆四角錐。ラス網正四角形1辺50mmの網目に挿入した係合部位(1、2)は1辺47mm、下部(8)43mm、上面部(7)55mm、高さは基材吹付厚層と同等、角(9)に接するラス網の上部及び下部の列線には5mmの格差があり、それぞれの辺に正確に係合するように、V字型くぼみ切込溝(1、2)がある。本体中心位置に下部(8)に貫通する径25mmの植栽孔がある。
植栽孔に植栽する方法は、挿し木は装着時に地面まで差込む。幼木苗、樹木種子などは装着直前に予め孔に充填しておくことにより、急斜面上でスペーサーをラス網装着作業と同時に植栽できる。景観形成、植栽経費の節減を目的とする。
【0022】
また、植物材料を全国統一としたことによるメリットは、全国各地において該技術の適応を可能とし、植物材料の調達、製品製造が容易、統一した製造技術による高品質製品製造、現製造プラントをモデルにした施設投資の抑制、輸送経費の節減、近郊の工事現場に提供、地域振興を促す望ましい地産地消体制の実現が可能である。
【符号の説明】
【0023】
1-上部V字形くぼみ切込係合溝
2-下部V字形くぼみ切込係合溝
3-上部ラス網列線
4-下部ラス網列線
5-上部V字形くぼみ切込係合溝識別マーカー
6-植栽孔
7-上面部
8-下部
9-縦の角
図1
図2