(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007255
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】転てつ減摩器
(51)【国際特許分類】
E01B 7/02 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
E01B7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110103
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591036893
【氏名又は名称】鉄道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104064
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 岳人
(72)【発明者】
【氏名】高尾 賢一
(72)【発明者】
【氏名】東原 孝展
(72)【発明者】
【氏名】山室 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
(57)【要約】
【課題】電気絶縁性を図りつつ分岐器類の可動するレールの摺動抵抗力を軽減することができる転てつ減摩器を提供する。
【解決手段】転てつ減摩器12は、分岐器類のトングレール3aを転換自在に支持し、このトングレール3aが転換するときに発生する摩擦力を低減する機器である。転てつ減摩器12は、トングレール3aのレール底部3cを転換自在に支持するローラ部13A~13Cと、このローラ部13A~13Cを回転自在に保持する保持部14とを備えている。保持部14は、トングレール3aを摺動自在に支持する床板11Bと電気的に絶縁されている。保持部は、床板11Bと間隔Gをあけて配置されている。このため、トングレール3aが転換動作して基本レール4aから離間したときに、トングレール3aと基本レール4aとの間を簡単に電気的に絶縁することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐器類の可動するレールを転換自在に支持し、この可動するレールが転換するときに発生する摩擦力を低減する転てつ減摩器であって、
前記可動するレールの底部を転換自在に支持する回転支持部と、
前記回転支持部を回転自在に保持する保持部とを備え、
前記保持部は、前記可動するレールを摺動自在に支持する床板と電気的に絶縁されていること、
を特徴とする転てつ減摩器。
【請求項2】
請求項1に記載の転てつ減摩器において、
前記保持部は、前記床板と間隔をあけて配置されていること、
を特徴とする転てつ減摩器。
【請求項3】
請求項1に記載の転てつ減摩器において、
前記保持部は、絶縁部材の上面に形成された収容凹部に収容されること、
を特徴とする転てつ減摩器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の転てつ減摩器において、
前記保持部は、前記分岐器類を支持する支持体の上面の切欠部に収容されていること、
を特徴とする転てつ減摩器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分岐器類の可動するレールを転換自在に支持し、この可動するレールが転換するときに発生する摩擦力を低減する転てつ減摩器に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の分岐器類には、例えば、スリップスイッチなどの特殊分岐器類が存在する。このような特殊分岐器類では、基本レールとトングレールとの間の狭隘部で、基本レールにトングレールが接触及び離間してトングレールが転換している。特殊分岐器類では、トングレールが基本レールから離間したときに、基本レールとトングレールとの間を電気的に絶縁する必要がある。従来の軌道短絡防止構造を備える分岐器は、トングレールが転換したときに、異なった極性の基本レールとトングレールとが接触する前に、トングレールの電気的に中性な突起部同士を接触させて、異なった極性の基本レールとトングレールとが接触して軌道回路を短絡するのを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道では、分岐器類のトングレールの摺動抵抗力を軽減するための転てつ減摩器が使用されている。従来の特殊分岐器では、トングレールが転換するときに、トングレールのレール底部がまくらぎ上の絶縁板の上を摺動することによって、トングレールと基本レールとを電気的に絶縁している。このような従来の特殊分岐器では、絶縁板が摩耗したときには電気絶縁性を維持することが困難であるため、絶縁板を交換する必要がある。しかし、従来の特殊分岐器では、基本レールとトングレールとの間の狭隘部で絶縁板を交換する作業に手間がかかり、可能な限り絶縁板の交換の手間を低減する必要がある。また、従来の特殊分岐器では、トングレールのレール底部と絶縁板とが面接触して摺動するため、これらの摩擦抵抗を低減するために絶縁板に頻繁に塗油する必要がある。
【0005】
この発明の課題は、電気絶縁性を図りつつ分岐器類の可動するレールの摺動抵抗力を軽減することができる転てつ減摩器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、
図3~
図6、
図9~
図12及び
図15に示すように、分岐器類(1A,1B)の可動するレール(3a,3b)を転換自在に支持し、この可動するレールが転換(A
1,A
2)するときに発生する摩擦力を低減する転てつ減摩器であって、前記可動するレールの底部(3c)を転換自在に支持する回転支持部(13A~13C)と、前記回転支持部を回転自在に保持する保持部(14)とを備え、前記保持部は、前記可動するレールを摺動自在に支持する床板(11B,11A)と電気的に絶縁されていることを特徴とする転てつ減摩器(12)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の転てつ減摩器において、
図3~
図6及び
図15に示すように、前記保持部は、前記床板(11B)と間隔(G)をあけて配置されていることを特徴とする転てつ減摩器である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1に記載の転てつ減摩器において、
図9~
図14に示すように、前記保持部は、絶縁部材(19)の上面に形成された収容凹部(19c)に収容されることを特徴とする転てつ減摩器である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の転てつ減摩器において、
図15及び
図16に示すように、前記保持部は、前記分岐器類を支持する支持体(6)の上面(6a)の切欠部(6c)に収容されていることを特徴とする転てつ減摩器である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、電気絶縁性を図りつつ分岐器類の可動するレールの摺動抵抗力を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の第1実施形態に係る転てつ減摩器が使用される分岐器類を一例として模式的に示す平面図である。
【
図2】この発明の第1実施形態に係る転てつ減摩器が使用される分岐器類の他の例を模式的に示す平面図である。
【
図3】この発明の第1実施形態に係る転てつ減摩器の使用状態を概略的に示す平面図である。
【
図4】この発明の第1実施形態に係る転てつ減摩器の使用状態について一部を破断して概略的に示す縦断面図である。
【
図5】この発明の第1実施形態に係る転てつ減摩器の平面図である。
【
図6】
図5のVI-VI線で切断した状態を示す断面図である。
【
図7】
図5のVII-VII線で切断した状態を示す断面図である。
【
図8】
図5のVIII-VIII線で切断した状態を示す断面図である。
【
図9】この発明の第2実施形態に係る転てつ減摩器の使用状態を概略的に示す平面図である。
【
図10】この発明の第2実施形態に係る転てつ減摩器の使用状態について一部を破断して概略的に示す縦断面図である。
【
図11】この発明の第2実施形態に係る転てつ減摩器の平面図である。
【
図12】
図11のXII-XII線で切断した状態を示す断面図である。
【
図13】
図11のXIII-XIII線で切断した状態を示す断面図である。
【
図14】
図11のXIV-XIV線で切断した状態を示す断面図である。
【
図15】この発明の第3実施形態に係る転てつ減摩器の平面図である。
【
図16】
図15のXVI-XVI線で切断した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1及び
図2に示す分岐器1A,1Bは、一つの軌道を二つ以上の軌道に分ける装置である。分岐器1A,1Bは、ダイヤモンドクロッシングに渡り線を付けた軌道構造であるスリップスイッチであり、普通分岐器よりも複雑な構造を有する特殊分岐器である。
図1に示す分岐器1Aは、片側に渡り線があるシングルスリップスイッチである。
図2に示す分岐器1Bは、両側に渡り線があるダブルスリップスイッチである。分岐器1A,1Bは、ポイント部2などを備えている。分岐器1A,1Bは、トングレール3a,3bに取り付けられた転てつ棒を、電気転てつ機のような転換装置が発生する転換力によってA
1,A
2方向に往復移動して、トングレール3a,3bが図中実線位置と二点鎖線位置とに転換する。
【0013】
図1及び
図2に示すポイント部2は、分岐器1A,1Bを構成する部分のうち軌道を分ける部分である。ポイント部2は、
図1及び
図2に示すトングレール3a,3bと、基本レール4a,4bと、スリップレール5a,5bと、
図3、
図4及び
図6~
図8に示すまくらぎ6と、
図3及び
図4に示すレールブレス7と、
図3~
図5に示す締結部材8~10と、床板11A,11Bなどを備えている。
図1及び
図2に示すポイント部2は、転換装置の転換動作と連動して、分岐器1A,1Bのトングレール3a,3bがA
1,A
2方向に転換動作するスリップポイントである。ポイント部2は、トングレール3a,3bがA
1方向に転換したときには、トングレール3aが基本レール4aと密着し、トングレール3bが基本レール4bから離間する。一方、ポイント部2は、トングレール3a,3bがA
1方向とは反対方向のA
2方向に転換したときには、トングレール3aが基本レール4aから離間し、トングレール3bが基本レール4bと密着する。
【0014】
図1及び
図2に示すトングレール3a,3bは、先端部を尖らせた転換可能な可動するレールである。トングレール3a,3bは、いずれも同一構造であり、以下では
図3及び
図4に示すトングレール3aを中心に説明し、
図1及び
図2に示すトングレール3bについては詳細な説明を省略する。トングレール3aは、
図3及び
図4に示すように、床板11B上に支持されるレール底部3cを備えており、このレール底部3cは床板11Bと接触する底部下面3dを備えている。
【0015】
図1及び
図2に示す基本レール4a,4bは、トングレール3a,3bの先端部が密着及び分離する固定レールである。基本レール4a,4bは、いずれも同一構造であり、以下では
図3及び
図4に示す基本レール4aを中心に説明し、
図1及び
図2に示す基本レール4bについては詳細な説明を省略する。基本レール4aは、
図3及び
図4に示すように、床板11A,11Bを介してまくらぎ6に締結されている。基本レール4aは、鉄道車両の車輪と接触するレール頭部4cと、床板11A,11Bを介してまくらぎ6に支持されるレール底部(フランジ部)4dと、レール頭部4cとレール底部4dとを繋ぐレール腹部(ウェブ部)4eなどを備えている。レール頭部4cは、車輪を直接支持する頭頂面(頭部上面)4fと、レール頭部4cの左右の側面部分を構成し頭頂面4fと連続する頭部側面4gと、レール頭部4cとレール腹部4eとの間の境界面部分を構成する上首部4hなどを備えている。レール底部4dは、レールブレス7によって床板11A,11B上に着脱自在に取り付けられる。レール底部4dは、レールブレス7によって押さえ付けられる底部上面4iと、床板11A,11Bと接合する底部下面4jと、レール底部4dの左右の側面部分を構成する底部側面4kなどを備えている。
図1及び
図2に示すスリップレール5a,5bは、分岐器1A,2Aの渡り線の中でトングレール3a,3bの後端部を相互につなぐレールである。
【0016】
図3~
図8に示すまくらぎ6は、分岐器1A,1Bを支持する支持体(支承体)である。まくらぎ6は、
図1及び
図2に示す基本レール4a,4bを固定し軌間を正確に保持するとともに、トングレール3a,3b及び基本レール4a,4bから伝達される列車荷重を広く道床に分散させるために、トングレール3a,3b及び基本レール4a,4bと道床との間に設置される。
図3~
図8に示すまくらぎ6は、例えば、ガラス長繊維によって強化された発泡ウレタン樹脂を成形した合成まくらぎ、又は天然の樹木から製造され防腐処理が施された木まくらぎなどであり、分岐器1A,1Bに使用される分岐まくらぎである。まくらぎ6は、
図1及び
図2に示すトングレール3a,3b及び基本レール4a,4bの長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、トングレール3a,3b及び基本レール4a,4bを離散的に支持している。まくらぎ6は、
図3及び
図4に示すように、床板11A,11B及び転てつ減摩器12を取り付けるまくらぎ上面6aを備えており、このまくらぎ上面6aはまくらぎ6に形成された平坦面である。
【0017】
図3及び
図4に示すレールブレス7は、基本レール4a,4bの転倒を防止する部材である。レールブレス7は、
図4に示すように、トングレール3aと接触する側とは反対側の基本レール4aの上首部4h及びレール腹部4eと密着するとともに、基本レール4aの底部上面4iを押さえ付けている。レールブレス7は、
図3に示す挿入孔7aと、
図4に示す突起部7bなどを備えている。
図3に示す挿入孔7aは、締結部材8の締結ボルト8aを挿入する部分である。挿入孔7aは、床板11Aに対してレールブレス7をスライドさせた状態で、締結ボルト8aがレールブレス7を貫通するように長孔に形成されている。
図4に示す突起部7bは、床板11Aの嵌合溝11fと嵌合する部分である。突起部7bは、レールブレス7の下面から突出して形成されており、所定の長さで直線状に形成された凸部である。
【0018】
図3及び
図4に示す締結部材8は、基本レール4aを床板11Aに締結する部材である。締結部材8は、締結ボルト8aと、締結ナット8bと、座金8cなどを備えている。締結ボルト8aは、レールブレス7を締め付ける部材である。締結ボルト8aは、
図5(B)に示すボルト頭部8dと、
図5(A)(B)に示す回り止め部8eなどを備えている。
図5(B)に示すボルト頭部8dは、床板11Aの抜け止め部11sに引っ掛かる部分である。ボルト頭部8dは、
図5(A)に示す床板11Aの挿入孔11qに挿入可能なように、
図5(B)に示すように外観がT字状に形成されている。ボルト頭部8dは、
図5(A)に示す挿入孔11qから挿入されて、締結ボルト8aを回り止め部11rに向けてスライドさせることによって、抜け止め部11sに引っ掛ける。
図5(A)及び(B)に示す回り止め部8eは、締結ボルト8aの中心線回りの回転を阻止する部分である。回り止め部8eは、床板11A側の回り止め部11rと嵌合するように、ボルト頭部8dの首下の一部の横断面形状が正方形に形成されている。
図3及び
図4に示す締結ナット8bは、締結ボルト8aの雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部を有する部材である。座金8cは、締結ナット8bとレールブレス7との間に挟み込まれる部材である。
【0019】
図3及び
図4に示す締結部材9は、床板11Aをまくらぎ6に締結する部材である。締結部材9は、例えば、床板11Aをまくらぎ6に締結する止めくぎである。締結部材9は、
図3及び
図4に示すように、床板11Aの上面を押さえ付ける平面形状が円形の頭部9aと、
図4に示すように水平面で切断したときの断面形状が円形であり、床板11Aの締結孔11eに挿入されてまくらぎ6に打ち込まれるくぎ部9bなどを備えている。
【0020】
図3~
図5に示す締結部材10は、床板11Bをまくらぎ6に締結する部材である。締結部材10は、例えば、床板11Bをまくらぎ6に締結するコーチスクリューである。締結部材10は、
図3及び
図5に示すように、床板11Bの上面を押さえ付ける平面形状が六角形の頭部10aと、
図4に示すように床板11Bの締結孔11iに挿入されてまくらぎ6に打ち込まれるねじ部10bなどを備えている。
【0021】
図1及び
図2に示す床板11A,11Bは、トングレール3a,3bを転換自在に支持する部材である。床板11A,11Bは、
図4に示すように、トングレール3a,3b及び基本レール4a,4bとまくらぎ6との間に挿入されており、これらの間に挟み込まれた状態でまくらぎ6に締結される締結用部材である。床板11A,11Bは、
図4に示すように、まくらぎ6の長さ方向に並べて配置されており、床板11A,11Bは基本レール4aの底部下面4jを固定し支持しており、床板11Bはトングレール3aの底部下面3dを摺動自在に支持する。床板11Bは、
図5に示すように、床板11Aと転てつ減摩器12との間の隙間を埋める間詰床板として機能する。床板11A,11Bは、例えば、一般構造用圧延鋼材などの金属をプレス加工又は切断加工して所定の形状に形成されており、平面形状が長方形の板状部材である。
図4及び
図5に示す床板11A,11Bは、例えば、50kgNレール用床板又は60kgレール用床板である。床板11A,11Bは、
図4及び
図5に示す座面11a,11bと、
図5に示す摺動面11c,11dと、
図4及び
図5に示す締結孔11eと、嵌合溝11fと、
図5に示す締結孔11gと、固定部11hと、
図4に示す締結孔11iと、
図5に示す嵌合部11j,11kとなどを備えている。
【0022】
図4及び
図5に示す座面11a,11bは、基本レール4aの底部下面4jを搭載する部分である。座面11a,11bは、
図4に示すように、摺動面11c,11dよりも僅かに低く平坦面に形成されている。
図5に示すように、座面11aは床板11A側に形成されており、座面11bは床板11B側に形成されている。座面11a,11bは、
図5に示すように、床板11Aと床板11Bとを嵌合させたときに、
図4に示すようにこれらの座面11a,11bが同じ高さ(平坦面)になるように形成されている。座面11a,11bは、
図5に示すように、レール底部4dが床板11A上の所定の位置に位置決めされるように、このレール底部4dの底部側面4kが引っ掛かる段差部(ショルダ部)11m,11n,11pを備えている。段差部11mは、嵌合溝11f寄りの床板11Aの上面に形成されている。段差部11nは、嵌合部11j寄りの床板11Aの上面に形成されており、段差部11pは嵌合部11k寄りに床板11Bの上面に形成されている。段差部11n,11pは、床板11Aと床板11Bとを嵌合させたときに、これらの段差部11n,11pが直線状になるように形成されている。
【0023】
図5に示す摺動面11c,11dは、トングレール3aの底部下面3dが摺動する部分である。摺動面11c,11dは、
図4に示すように、トングレール3aがA
1,A
2方向に転換可能なように、座面11a,11bと平行な平坦面に形成されている。摺動面11c,11dは、
図5に示すように、床板11Aと床板11Bとを嵌合させたときに、これらの摺動面11c,11dが同じ高さ(平坦面)になるように形成されている。
【0024】
図4及び
図5に示す締結孔11eは、床板11Aを貫通する貫通孔である。締結孔11eは、締結部材9を挿入するために、床板11Aに形成された円形状の貫通孔である。締結孔11eは、
図5に示すように、床板11Aの長さ方向の端部の2箇所の角部に形成されている。
図3~
図5に示す嵌合溝11fは、レールブレス7の突起部7bが嵌合する溝である。嵌合溝11fは、
図3~
図5に示すように、床板11Aの上面に所定の深さで床板11Aの幅方向に直線状に形成されており、床板11Aの一方の縁部から他方の端部まで形成されている。
【0025】
図5に示す締結孔11gは、床板11Aを貫通する貫通孔である。締結孔11gは、締結部材8の締結ボルト8aを床板11Aの上面側から挿入するために床板11Aに形成されている。締結孔11gは、嵌合溝11fが形成されている側の床板11Aの端部寄りに、この床板11Aの中心線上に形成されており、締結孔11eよりも内側に形成されている。締結孔11gは、床板11Aの上面側に平面形状が略T字状に形成されている。締結孔11gは、締結部材8のボルト頭部8dを挿入する挿入孔11qと、締結部材8の回り止め部8eと嵌合させて締結ボルト8aが中心線回りに回転するのを阻止する回り止め部11rと、回り止め部11rの下方の床板11Aの下面側を部分的に切り欠いて形成されており締結ボルト8aが締結孔11gから抜け出すのを阻止する抜け止め部11sなどを備えている。
【0026】
固定部11hは、締結部材10によって固定される部分である。固定部11hは、
図5に示すように、床板11Bの長さ方向の両端部に形成された板状部である。固定部11hは、締結部材10によって固定されたときにこの締結部材10の頭部10aがトングレール3aの底部下面3dと干渉しないように、
図4に示すように床板11Bの座面11b及び摺動面11dよりも高さが低く形成されている。
【0027】
図4に示す締結孔11iは、床板11Bを貫通する貫通孔である。締結孔11iは、締結部材10を挿入するために、床板11Bの固定部11hに形成された円形状の貫通孔である。締結孔11iは、
図5に示す床板11Bの長さ方向の端部の2箇所の角部に形成されている。
【0028】
図5に示す嵌合部11jは、床板11B側の嵌合部11kと嵌合する部分であり、嵌合部11kは床板11A側の嵌合部11jと嵌合する部分である。嵌合部11jは、締結孔11eが形成されている側とは反対側の床板11Aの端部に、床板11Aから突出して形成されている凸部である。嵌合部11kは、段差部11nが形成されている側の床板11Bの端部に、床板11Bを切り欠くように形成されている凹部である。
【0029】
図1及び
図2に示す転てつ減摩器12は、分岐器1A,1Bのトングレール3a,3bを転換自在に支持し、トングレール3a,3bが転換するときに発生する摩擦力を低減する機器である。転てつ減摩器12は、トングレール3a,3bがA
1,A
2方向に転換したときに発生するトングレール3a,3bの転換力を軽減及び転換力の変動を低減するために、トングレール3a,3bの長さ方向に間隔をあけて複数配置されている。転てつ減摩器12は、
図3及び
図4に示すように、まくらぎ上面6aに着脱自在に固定されており、床板11Bとの間に間隔(隙間)Gをあけて配置することによって、床板11Bとの間で電気的に絶縁されている。転てつ減摩器12は、
図3~
図6に示すローラ部13A~13Cと、
図3~
図8に示す保持部14などを備えている。
【0030】
図3~
図6に示すローラ部13A~13Cは、トングレール3aのレール底部3cを転換自在に支持する手段である。ローラ部13A~13Cは、外観が円筒状の部材であり、レール底部3cを転換自在に支持する回転支持部として機能する。ローラ部13A~13Cは、このローラ部13A~13Cの外周面にトングレール3aの底部下面3dが線接触するように、このローラ部13A~13Cの外周面が凸状の円弧面に形成されている。ローラ部13A~13Cは、
図5に示すように、床板11A,11Bの上面の中心線上に配置されており、このローラ部13A~13Cの外周面がトングレール3aの底部下面3dと中心線上で接触する。ローラ部13A~13Cは、
図3及び
図4に示すように、トングレール3aの転換方向に間隔をあけて配置されている。
【0031】
ローラ部13A~13Cは、
図6に示すように、11Bの摺動面11dよりも高低差Δ
1,Δ
2だけ僅かに突出している。ローラ部13B~13Cは、床板11Bの摺動面11dよりも高低差Δ
1だけ突出しており、トングレール3aに最も近いローラ部13Aよりも高さが高く設置されている。ローラ部13Aは、ローラ部13A~13Cと摺動面11dとの間でトングレール3aが容易に乗り移るように、床板11Bの摺動面11dよりも高低差Δ
2(Δ
1>Δ
2)だけ僅かに突出している。ローラ部13Aは、
図4に示すように、トングレール3aが基本レール4aと密着したときには、トングレール3aとの間に所定の隙間が形成されるように、転てつ減摩器12が位置調整されている。ローラ部13A~13Cは、
図4に二点鎖線で示すように、トングレール3aが基本レール4aから離間したときには、トングレール3aのレール底部3cがこのローラ部13A~13C上に位置するように、転てつ減摩器12が位置調整されている。ローラ部13A~13Cは、いずれも同一構造であり、
図7に示す支持軸13aを備えている。
【0032】
図7に示す支持軸13aは、ローラ部13A~13Cを回転自在に支持する部材である。支持軸13aは、端部の断面形状が四角形であり非回転の固定軸である。支持軸13aは、この支持軸13aの中心線を回転中心としてローラ部13A~13Cが回転するように、軸受を介してローラ部13A~13Cを回転自在に支持している。
【0033】
図3~
図8に示す保持部14は、ローラ部13A~13Cを回転自在に保持する手段である。保持部14は、トングレール3aを摺動自在に支持する床板11A,11Bと電気的に絶縁されている。保持部14は、
図3~
図6に示すように、ローラ部13A~13Cを所定の間隔をあけて保持しており、床板11Bと間隔Gをあけて配置されている。保持部14は、まくらぎ上面6aに着脱自在に装着される。保持部14は、ローラ部13A~13Cとともにユニット化されたローラパッケージ部を構成している。保持部14は、
図3~
図8に示す支持部15と、押さえ部16と、
図3、
図5及び
図8に示す締結部材17と、
図3、
図5及び
図7に示す締結部材18などを備えている。
【0034】
図3~
図8に示す支持部15は、ローラ部13A~13Cの支持軸13aを支持する手段である。支持部15は、上面が平行に交差させた桁状に形成された金属製の下板(下金具)である。支持部15は、
図6~
図8に示すように、この支持部15の下面がまくらぎ上面6aに搭載される。支持部15は、
図7に示す嵌合部15aと、
図3、
図5、
図7及び
図8に示す固定部15bと、
図8に示す締結孔15cと、
図7に示す締結孔15dなどを備えている。
図7に示す嵌合部15aは、ローラ部13A~13Cの支持軸13aが嵌合する部分である。嵌合部15aは、支持部15の上面に形成された凹部である。
図3、
図5、
図7及び
図8に示す固定部15bは、締結部材18によって固定される部分である。固定部15bは、支持部15の長さ方向の両端部に形成された板状部である。固定部15bは、
図7及び
図8に示すように、締結部材18によって固定されたときにこの締結部材18の頭部18aがトングレール3aの底部下面3dと干渉しないように、ローラ部13A~13Cの上縁部よりも高さが低く形成されている。
図8に示す締結孔15cは、支持部15を貫通する貫通孔である。締結孔15cは、締結部材17を挿入するために支持部15に形成された円形状の貫通孔である。締結孔15cは、押さえ部16の下面と接合する支持部15の接合面に間隔をあけて4箇所に形成されている。
図7に示す締結孔15dは、支持部15を貫通する貫通孔である。締結孔15dは、締結部材18を挿入するために、支持部15の固定部15bに形成された円形状の貫通孔である。締結孔15dは、支持部15の長さ方向の両端部に形成されている。
【0035】
図3~
図8に示す押さえ部16は、ローラ部13A~13Cの支持軸13aを押さえる手段である。押さえ部16は、
図7に示すように、支持部15との間でローラ部13A~13Cの支持軸13aを挟み込むように、支持部15に重ねて装着される。押さえ部16は、支持部15側の接合面と同一形状の接合面を備えており、平行に交差させた桁状の金属製の上板(上金具)である。押さえ部16は、この押さえ部16の下面が支持部15の上面と接合するように支持部15の上面に搭載される。押さえ部16は、
図7に示す嵌合部16aと、
図3、
図5及び
図8に示す雌ねじ部16bなどを備えている。
図7に示す嵌合部16aは、ローラ部13A~13Cの支持軸13aが嵌合する部分である。嵌合部16aは、押さえ部16の下面に形成された凹部である。
図3、
図5及び
図8に示す雌ねじ部16bは、締結部材17の雄ねじ部17aと噛み合う部分である。雌ねじ部16bは、押さえ部16を貫通する貫通孔であり、支持部15の上面と接合する押さえ部16の接合面に間隔をあけて4箇所に形成されている。
【0036】
図3、
図5及び
図8に示す締結部材17は、支持部15と押さえ部16とを締結する部材である。締結部材17は、例えば、支持部15と押さえ部16とを締結する六角穴付きボルトなどの締結ボルトである。締結部材17は、
図8に示すように、支持部15の下面側の締結孔15cから挿入されて、押さえ部16の雌ねじ部16bと噛み合う雄ねじ部17aを備えている。
【0037】
図3、
図5及び
図7に示す締結部材18は、転てつ減摩器12の支持部15をまくらぎ6に締結する部材である。締結部材18は、例えば、支持部15の固定部15bをまくらぎ6に締結するねじくぎである。締結部材18は、
図3及び
図5に示すように、支持部15の固定部15bの上面を押さえ付けるように平面形状が円形の頭部18aと、
図7に示すように水平面で切断したときの断面形状が円形であり支持部15の締結孔15dに挿入されてまくらぎ上面6aの下穴にねじ込まれる雄ねじ部18bなどを備えている。
【0038】
次に、この発明の第1実施形態に係る転てつ減摩器の作用について説明する。
図5に示す床板11Aの嵌合部11jと床板11Bの嵌合部11kとを嵌合させた状態で、まくらぎ上面6aに床板11A,11Bを作業員が位置決めする。
図4及び
図5に示す床板11Aの締結孔11eに締結部材9のくぎ部9bを作業員が挿入して、まくらぎ6にくぎ部9bを作業員が打ち込むと、
図5に示すようにまくらぎ6に床板11Aが取り付けられる。同様に、
図4に示す床板11Bの締結孔11iに締結部材10のねじ部10bを作業員が挿入して、まくらぎ上面6aの下穴にねじ部10bを作業員がねじ込むと、
図5に示すようにまくらぎ6に床板11Bが取り付けられる。次に、
図3及び
図4に示す床板11A,11Bの座面11a,11b上に基本レール4aが搭載されるとともに、床板11A,11Bの摺動面11c,11d上にトングレール3aが搭載される。その結果、
図1及び
図2に示すように、トングレール3a,3b及び基本レール4a,4bとまくらぎ6との間に床板11A,11Bが設置される。
【0039】
この状態で、
図4に示すレールブレス7の突起部7bを床板11Aの嵌合溝11fに作業者が嵌合させて、基本レール4aの上首部4h及びレール腹部4eにレールブレス7を作業者が密着させる。
図3及び
図4に示す床板11A上にレールブレス7を作業員が位置決めした後に、
図3に示すレールブレス7の挿入孔7a及び
図5(A)に示す床板11Aの挿入孔11qに締結ボルト8aのボルト頭部8dを作業員が挿入する。次に、
図5(A)に示す締結ボルト8aの回り止め部8eを床板11Aの回り止め部11rに作業員が嵌め込むと、
図5(B)に示す締結ボルト8aのボルト頭部8dが床板11Aの抜け止め部11sに引っ掛かる。
図3及び
図4に示すように、締結ボルト8aの雄ねじ部に座金8cを作業員が装着し、この締結ボルト8aの雄ねじ部に締結ナット8bを作業員が締め付けると、
図3及び
図4に示すように床板11Aを介してまくらぎ6に基本レール4aが締結される。
【0040】
図7に示すローラ部13A~13Cの支持軸13aを支持部15の嵌合部15aと押さえ部16の嵌合部16aとの間に作業者が嵌め込み、支持部15と押さえ部16とが接合される。この状態で、
図8に示す締結部材17を締結孔15cに作業者が挿入し、締結部材17の雄ねじ部17aを押さえ部16の雌ねじ部16bに作業者がねじ込むことによって転てつ減摩器12が組み立てられる。次に、
図3~
図6に示すように、床板11Bと間隔Gをあけてまくらぎ上面6aに転てつ減摩器12を作業者が装着して、
図7に示す締結部材18を締結孔15dに作業者が挿入し、締結部材18の雄ねじ部18bをまくらぎ上面6aの下穴に作業者がねじ込むことによって、
図3~
図5及び
図7に示すように転てつ減摩器12がまくらぎ上面6aに搭載される。
【0041】
図1及び
図2に示すように、トングレール3aがA
1方向に転換を開始すると、
図3及び
図4に示すトングレール3aの底部下面3dがローラ部13Cからローラ部13Aに向かって移動して、トングレール3aの底部下面3dがローラ部13Aから摺動面11c,11dに乗り移る。トングレール3aがA
1方向にさらに転換すると、トングレール3aの底部下面3dが床板11Bの摺動面11d上を摺動して、トングレール3aが基本レール4aと密着して停止する。一方、
図1及び
図2に示すトングレール3aがA
2方向に転換を開始すると、
図3及び
図4に示すトングレール3aの底部下面3dが床板11Bの摺動面11d上を摺動し、摺動面11c,11dからローラ部13Aに乗り移る。トングレール3aがA
2方向にさらに転換すると、トングレール3aの底部下面3dがローラ部13Aからローラ部13Cに向かって移動して停止し、トングレール3aが基本レール4aから離間する。このとき、トングレール3aがローラ部13A~13Cを回転させながら、トングレール3aがローラ部13A~13C上を移動する。このため、トングレール3aの底部下面3dが床板11B上を摺動するときに発生する摩擦力に比べて、ローラ部13A~13C上をトングレール3aの底部下面3dが移動するときに発生する摩擦力が低減する。
図3~
図6に示すように、床板11Bと転てつ減摩器12とが間隔Gをあけてまくらぎ上面6aに設置されている。その結果、トングレール3aが基本レール4aから離間してトングレール3aがローラ部13A~13C上に位置するときに、床板11Bと転てつ減摩器12とが電気的に絶縁されているため、トングレール3aと基本レール4aとの短絡が防止される。
【0042】
この発明の第1実施形態に係る転てつ減摩器には、以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、トングレール3a,3bのレール底部3cを転換自在にローラ部13A~13Cが支持し、ローラ部13A~13Cを回転自在に保持部14が保持しており、トングレール3a,3bを摺動自在に支持する床板11A,11Bと電気的に保持部14が絶縁されている。このため、電気絶縁性を図りつつ分岐器1A,1Bのトングレール3a,3bの摺動抵抗力を軽減することができる。例えば、分岐器1A,1Bのような特殊分岐器の狭隘箇所で電気的な絶縁を図りつつ無給油化を図ることができる。その結果、従来の特殊分岐器の絶縁板のような摩耗によって電気絶縁性を維持することが困難になるのを防ぐことができるとともに、絶縁板を交換するような手間のかかる作業を低減することができる。また、従来の特殊分岐器のようなトングレールのレール底部と絶縁板との間の摩擦抵抗が増加して頻繁に塗油する必要がなく、ローラ部13A~13Cに給油する期間を長くすることができる。
【0043】
(2) この第1実施形態では、保持部14が床板11Bと間隔Gをあけて配置されている。このため、床板11A,11Bとの間に隙間をあけて、絶縁体であるまくらぎ上面6aに保持部14を配置することによって、トングレール3a,3bが転換動作して基本レール4a,4bから離間したときに、トングレール3a,3bと基本レール4a,4bとの間を簡単に電気的に絶縁することができる。
【0044】
(第2実施形態)
以下では、
図1~
図8に示す部分と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図11に示す嵌合部11jは、絶縁部材19側の嵌合部19eと嵌合する部分である。
図9~
図14に示す転てつ減摩器12は、
図3~
図8に示す転てつ減摩器12とは異なり、絶縁材埋め込み形の減摩器である。転てつ減摩器12は、
図9及び
図10に示すように、まくらぎ上面6aに着脱自在に固定されており、
図9~
図14に示すように絶縁部材19に収容されることによって、床板11Aとの間で電気的に絶縁されている。ローラ部13A~13Cは、
図11に示すように、床板11A及び絶縁部材19の上面の中心線上に配置されており、このローラ部13A~13Cの外周面がトングレール3aの底部下面3dと中心線上で接触する。
【0045】
図9~
図14に示す保持部14は、絶縁部材19の上面に形成された収容凹部19cに収容されている。保持部14は、絶縁部材19の収容凹部19cに収容された状態で、まくらぎ上面6aに着脱自在に装着される。保持部14は、
図10及び
図12~
図14に示す支持部15と、
図9~
図14に示す押さえ部16と、
図9、
図11及び
図14に示す締結部材17などを備えている。
【0046】
図10及び
図12~
図14に示す支持部15は、
図13に示す嵌合部15aと、
図14に示す締結孔15cと、
図13及び
図14に示す嵌合部15eなどを備えている。嵌合部15eは、絶縁部材19側の嵌合部19dと嵌合する部分である。嵌合部15eは、支持部15の両縁部から突出して形成されている板状部であり、支持部15の上面よりも高さが低くなるように支持部15の厚さよりも薄く形成されている。嵌合部15eは、絶縁部材19から保持部14が抜け出すのを防止する抜け止め部として機能するとともに、絶縁部材19とまくらぎ6との間に挟み込まれてまくらぎ6に固定される固定部として機能する。
【0047】
図9~
図14に示す絶縁部材19は、保持部14を電気的に絶縁する部分である。絶縁部材19は、
図10に示すように、トングレール3a及び基本レール4aとまくらぎ6との間に挿入されており、これらの間に挟み込まれた状態でまくらぎ上面6aに着脱自在に装着される。絶縁部材19は、
図11に示すように、平面形状が枠状の合成樹脂製の絶縁板(絶縁材)である。絶縁部材19は、床板11Aと押さえ部材20との間に挟み込まれた状態で、床板11A及び押さえ部材20とともにまくらぎ6の長さ方向に並べて配置されている。絶縁部材19は、
図10に示すように、基本レール4aの底部下面4jを支持するとともに、トングレール3aの底部下面3dを摺動自在に支持する。絶縁部材19は、例えば、フッ素発泡プラスチック樹脂(Fluoroplastic Foam Resin(FFR))などの合成樹脂を成型加工によって所定の形状に形成されている。絶縁部材19は、
図10及び
図11に示す座面19aと、
図9~
図14に示す摺動面19bと、収容凹部19cと、
図13及び
図14に示す嵌合部19dと、
図11に示す嵌合部19e,19fなどを備えている。
【0048】
図10及び
図11に示す座面19aは、基本レール4aの底部下面4jを搭載する部分である。座面19aは、
図10に示すように、摺動面19bよりも僅かに低く平坦面に形成されている。座面19aは、
図11に示すように、床板11Aと絶縁部材19とを嵌合させたときに、
図10に示すようにこれらの座面11a,19aが同じ高さ(平坦面)になるように形成されている。座面19aは、
図10及び
図11に示すように、レール底部4dが絶縁部材19上の所定の位置に位置決めされるように、このレール底部4dの底部側面4kが引っ掛かる段差部19gを備えている。段差部19gは、
図11に示すように、嵌合部19e寄りの絶縁部材19の上面に形成されている。段差部19gは、床板11Aと絶縁部材19とを嵌合させたときに、床板11A側の段差部11n及びこの段差部19gが直線状になるように形成されている。
【0049】
図10~
図12に示す摺動面19bは、トングレール3aの底部下面3dが摺動する部分である。摺動面19bは、
図1及び
図2に示すトングレール3a,3bがA
1,A
2方向に転換可能なように、
図10に示すように座面19aと平行な平坦面に形成されている。摺動面19bは、
図11に示すように、床板11Aと絶縁部材19とを嵌合させたときに、
図12に示すように摺動面11cとこの摺動面19bとが同じ高さ(平坦面)になるように形成されている。
【0050】
図9~
図14に示す収容凹部19cは、転てつ減摩器12の保持部14を収容する部分である。収容凹部19cは、
図11に示すように、絶縁部材19の両縁部及び両端部よりも内側の絶縁部材19の上面に形成されており、平面形状が長方形に形成されている。収容凹部19cは、絶縁部材19の上面の中心線上にこの収容凹部19cの上側開口部の中心線が位置しており、絶縁部材19の上面の中心線を対称軸としてこの収容凹部19cの平面形状が線対称である。収容凹部19cは、
図10及び
図12~
図14に示すように、絶縁部材19を貫通する貫通孔である。
【0051】
図13及び
図14に示す嵌合部19dは、支持部15側の嵌合部15eと嵌合する部分である。嵌合部19dは、収容凹部19cの底部側の両縁部を切り欠くように形成されている段部であり、収容凹部19cの幅よりも広く形成されている。嵌合部19dは、絶縁部材19の下側から保持部14を挿入するときに、絶縁部材19から保持部14が抜け出すのを防止する抜け止め部として機能するとともに、絶縁部材19とまくらぎ6との間に支持部15を挟み込むことによって支持部15を所定の位置に位置決めする位置決め部として機能する。
【0052】
図11に示す嵌合部19eは、床板11A側の嵌合部11jと嵌合する部分であり、嵌合部19fは押さえ部材20側の嵌合部20bと嵌合する部分である。嵌合部19eは、段差部19gが形成されている側の端部に、絶縁部材19を切り欠くように形成されている凹部である。嵌合部19fは、段差部19gが形成されている側の端部とは反対側の端部に、絶縁部材19を切り欠くように形成されている凹部である。
【0053】
図9~
図12に示す押さえ部材20は、床板11Aとの間で絶縁部材19を押さえ付ける部材である。押さえ部材20は、
図11に示すように、まくらぎ6の長さ方向に床板11A及び絶縁部材19とともに並べて配置されており、
図10及び
図12に示すようにまくらぎ上面6aに着脱自在に装着される。押さえ部材20は、
図10~
図12に示すように、床板11Aとの間で絶縁部材19を挟み込むことによって、絶縁部材19を押える押え板(押え金具)として機能する。押さえ部材20は、例えば、一般構造用圧延鋼材などの金属をプレス加工又は切断加工して所定の形状に形成されており、
図9及び
図11に示すように平面形状が略長方形の板状部材である。押さえ部材20は、
図10及び
図11に示す締結孔20aと、
図9及び
図11に示す嵌合部20bなどを備えている。
【0054】
図10及び
図11に示す締結孔20aは、押さえ部材20を貫通する貫通孔である。締結孔20aは、締結部材21を挿入するために、押さえ部材20に形成された円形状の貫通孔である。締結孔20aは、
図11に示すように、押さえ部材20の長さ方向の両端部に形成されている。
図9及び
図11に示す嵌合部20bは、絶縁部材19側の嵌合部19eと嵌合する部分である。嵌合部20bは、押さえ部材20の一方の縁部に、押さえ部材20から突出して形成されている凸部である。
【0055】
図9、
図10及び
図12に示す締結部材21は、押さえ部材20をまくらぎ6に締結する部材である。締結部材21は、例えば、押さえ部材20をまくらぎ6に締結する止めくぎである。締結部材21は、
図9に示すように、押さえ部材20の上面を押さえ付ける平面形状が円形の頭部21aと、
図10に示すように水平面で切断したときの断面形状が円形であり、押さえ部材20の締結孔20aに挿入されてまくらぎ6に打ち込まれるくぎ部21bなどを備えている。
【0056】
次に、この発明の第2実施形態に係る転てつ減摩器の作用について説明する。
図13に示すローラ部13A~13Cの支持軸13aを支持部15の嵌合部15aと押さえ部16の嵌合部16aとの間に嵌め込んだ状態で、支持部15と押さえ部16とを作業者が接合する。
図14に示す締結部材17の雄ねじ部17aを押さえ部16の雌ねじ部16bに作業者がねじ込み、転てつ減摩器12が組み立てられる。次に、
図13及び
図14に示すように、転てつ減摩器12の保持部14を絶縁部材19の収容凹部19cに絶縁部材19の底面側から作業者が挿入して、支持部15の嵌合部15eを絶縁部材19の嵌合部19dに作業者が嵌合させると、絶縁部材19に転てつ減摩器12が装着される。
【0057】
図13及び
図14に示す転てつ減摩器12が絶縁部材19に装着された状態で、
図11に示すように床板11Aの嵌合部11jと絶縁部材19の嵌合部19eとを嵌合させて、
図10に示すようにまくらぎ上面6aに床板11A及び絶縁部材19を作業員が位置決めする。同様に、
図11に示すように、絶縁部材19の嵌合部19fと押さえ部材20の嵌合部20bとを嵌合させて、
図10に示すようにまくらぎ上面6aに絶縁部材19及び押さえ部材20を作業員が位置決めする。この状態で、
図10に示す床板11Aの締結孔11eに締結部材9のくぎ部9bを作業員が挿入して、まくらぎ6にくぎ部9bを作業員が打ち込むとともに、押さえ部材20の締結孔20aに締結部材21のくぎ部21bを作業員が打ち込む。その結果、
図9及び
図10に示すように、床板11Aと押さえ部材20との間に絶縁部材19が挟み込まれた状態で、床板11A,絶縁部材19及び押さえ部材20がまくらぎ6に取り付けられて、転てつ減摩器12がまくらぎ上面6aに搭載される。
【0058】
次に、
図10に示す床板11A及び絶縁部材19の座面11a,19a上に基本レール4aが搭載されるとともに、床板11A及び絶縁部材19の摺動面11c,19b上にトングレール3aが搭載される。その結果、トングレール3a及び基本レール4aとまくらぎ6との間に床板11A及び絶縁部材19が設置される。この状態で、
図9及び
図10に示すレールブレス7を床板11Aに作業者が装着して、基本レール4aにレールブレス7を作業者が密着させる。レールブレス7と床板11Aとを締結部材8によって作業者が締結すると、
図10に示すように床板11Aを介してまくらぎ6に基本レール4aが締結される。
【0059】
図10に示すように、トングレール3aがA
1方向に転換を開始すると、トングレール3aの底部下面3dがローラ部13Cからローラ部13Aに向かって移動して、トングレール3aの底部下面3dがローラ部13Aから摺動面11c,19bに乗り移る。トングレール3aがA
1方向にさらに転換すると、トングレール3aの底部下面3dが床板11A及び絶縁部材19の摺動面11c,19b上を摺動して、トングレール3aが基本レール4aと密着して停止する。一方、トングレール3aがA
2方向に転換を開始すると、トングレール3aの底部下面3dが床板11A及び絶縁部材19の摺動面11c,19b上を摺動し、摺動面11c,19bからローラ部13Aに乗り移る。トングレール3aがA
2方向にさらに転換すると、トングレール3aの底部下面3dがローラ部13Aからローラ部13Cに向かって移動して停止し、トングレール3aが基本レール4aから離間する。このとき、トングレール3aがローラ部13A~13Cを回転させながら、トングレール3aがローラ部13A~13C上を移動する。このため、トングレール3aの底部下面3dが床板11A及び絶縁部材19上を摺動するときに発生する摩擦力に比べて、ローラ部13A~13C上をトングレール3aの底部下面3dが移動するときに発生する摩擦力が低減する。
図9及び
図11に示すように、転てつ減摩器12が絶縁部材19内に収容された状態で、床板11Aと絶縁部材19とがまくらぎ上面6aに並べて設置されている。その結果、トングレール3aが基本レール4aから離間してトングレール3aがローラ部13A~13C上に位置するときに、床板11Aと転てつ減摩器12とが電気的に絶縁されているため、トングレール3aと基本レール4aとの短絡が防止される。
【0060】
この発明の第2実施形態に係る転てつ減摩器には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第2実施形態では、絶縁部材19の上面に形成された収容凹部19cに保持部14が収容される。このため、絶縁部材19内に保持部14を埋め込むことによってトングレール3a,3bと基本レール4a,4bとの間を簡単に電気的に絶縁することができる。
【0061】
(第3実施形態)
図15及び
図16に示すまくらぎ6は、段差部6bと、切欠部6cと、取付部6dなどを備えている。段差部6bは、まくらぎ上面6aに形成された高低差であり、
図15に示すように床板11Bが取り付けられるまくらぎ上面6aの外側に形成されている。切欠部6cは、段差部6bを切り欠くように形成されている部分である。切欠部6cは、保持部14をこの切欠部6c内で位置調整可能なように、保持部14の長さよりも長さが長く形成されており、保持部14の幅よりも僅かに大きくなるように、平面形状が長方形に形成されている。取付部6dは、転てつ減摩器12の保持部14を取り付ける部分である。取付部6dは、
図16に示すように、まくらぎ上面6aと同じ高さに形成された平坦面である。
【0062】
図15及び
図16に示す転てつ減摩器12は、
図3~
図14に示す転てつ減摩器12とは異なり、まくらぎ埋め込み形の減摩器である。転てつ減摩器12は、
図16に示すように、まくらぎ上面6aに着脱自在に固定されており、
図15に示すように絶縁体であるまくらぎ6に収容されることによって、床板11Aとの間で電気的に絶縁されている。転てつ減摩器12は、
図16に示すように、保持部14の支持部15の下面を取付部6dの上面に取り付けたときに、段差部6bの上面からローラ部13A~13Cの上部が僅かに突出している。保持部14は、
図15及び
図16に示すように、まくらぎ上面6aの切欠部6cに収容されており、支持部15の下面が取付部6dに搭載された状態で、取付部6dに着脱自在に装着される。
【0063】
この発明の第3実施形態に係る転てつ減摩器には、第1実施形態及び第2実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
この第3実施形態では、分岐器1A,1Bを支持するまくらぎ6のまくらぎ上面6aの切欠部6cに保持部14が収容されている。このため、例えば、電気絶縁性を有する合成まくらぎに転てつ減摩器12を簡単に埋め込むことができる。
【0064】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、分岐器1A,1Bがシングルスリップスイッチ又はダブルスリップスイッチなどの特殊分岐器である場合を例に挙げて説明したが、複分岐器又は三線式分岐器などの他の特殊分岐器についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、まくらぎ6が合成まくらぎ又は木まくらぎである場合を例に挙げて説明したが、緊張材として使用される鋼材によってプレストレスが与えられたプレストレストコンクリート製まくらぎ(PC(Prestressed concrete)まくらぎ)についても、この発明を適用することができる。この場合には、PCまくらぎに埋め込まれた埋込栓の雌ねじ部と噛み合う締結ボルトによって転てつ減摩器12の支持部15をPCまくらぎに締結することができる。さらに、この実施形態では、締結部材10が止めくぎである場合を例に挙げて説明したが、犬くぎ又はねじくぎなどの他の締結部材についても、この発明を適用することができる。
【0065】
(2) この実施形態では、回転支持部としてローラ部13A~13Cを例に挙げて説明したが、トングレール3a,3bのレール底部3cを玉軸受(ボールベアリング)によって支持する回転支持部についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、ローラ部13Aがローラ部13B~13Cよりも高さが低い場合を例に挙げて説明したが、ローラ部13A~13Cの高さを限定するものではない。例えば、ローラ部13A~13Cの高さをトングレール3a,3bに近い側から遠い側の順に高さを段階的に増加させたり、ローラ部13A~13Cの高さを全て同じ高さにしたりする場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、3個のローラ部13A~13Cによってトングレール3a,3bのレール底部3cを支持する場合を例に挙げて説明したが、ローラ部13A~13Cの設置個数を限定するものではない。例えば、トングレール3a,3bの可動範囲が広いトングレール3a,3bの先端部側についてはローラ部13A~13Cの設置個数を多くし、トングレール3a,3bの可動範囲が狭いトングレール3a,3bの後端部側についてはローラ部13A~13Cの設置個数を少なくする場合についても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1A,1B 分岐器(分岐器類)
2 ポイント部
3a,3b トングレール(可動するレール)
4a,4b 基本レール(固定レール)
5a,5b スリップレール
6 まくらぎ
7 レールブレス
8~10 締結部材
11A,11B 床板
11a,11b 座面
11c,11d 摺動面
12 転てつ減摩器
13A~13C ローラ部(回転支持部)
13a 支持軸
14 保持部
15 支持部
16 押さえ部
17,18 締結部材
19 絶縁部材
19a 座面
19b 摺動面
19c 収容凹部
20 押さえ部材
21 締結部材
A1,A2 方向(転換方向)
Δ1,Δ2 高低差
G 間隔