(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072553
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】液晶表示装置及びその駆動方法
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20220510BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20220510BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20220510BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 611E
G09G3/20 611J
G09G3/20 642A
G09G3/20 680H
G09G3/20 641P
G09G3/20 623C
G09G3/20 621B
G09G3/20 612U
G02F1/133 550
G02F1/1343
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182057
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】島村 尚吾
【テーマコード(参考)】
2H092
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H092JB24
2H092NA01
2H193ZA04
2H193ZB02
2H193ZB03
2H193ZF22
2H193ZF24
2H193ZF31
5C006AA16
5C006AC11
5C006AC21
5C006AF13
5C006AF45
5C006AF46
5C006AF78
5C006BB16
5C006BC22
5C006BF08
5C006FA20
5C006FA22
5C006FA23
5C006FA37
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD05
5C080DD06
5C080EE29
5C080FF11
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
(57)【要約】
【課題】走査線が多層配線構造であっても表示品位の低下を抑制可能な液晶表示装置及びその駆動方法を提供すること。
【解決手段】液晶表示装置は、スイッチング素子と、スイッチング素子に接続された液晶容量とを有する複数の画素と、それぞれのスイッチング素子に接続され、スイッチング素子をオンするための走査信号を伝送する複数の走査線と、それぞれのスイッチング素子に接続され、スイッチング素子を介して液晶容量に印加される表示信号を伝送する複数の信号線と、複数の信号線のそれぞれに表示信号を印加する信号線駆動回路とを備える。複数の走査線は、多層配線構造を有する。信号線駆動回路は、走査線の層毎に異なる補正値を加えた表示信号を対応する信号線に印加する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子と、前記スイッチング素子に接続された液晶容量とを有する複数の画素と、
それぞれの前記スイッチング素子に接続され、前記スイッチング素子をオンするための走査信号を伝送する複数の走査線と、
それぞれの前記スイッチング素子に接続され、前記スイッチング素子を介して前記液晶容量に印加される表示信号を伝送する複数の信号線と、
複数の前記信号線のそれぞれに前記表示信号を印加する信号線駆動回路と、
を具備し、
複数の前記走査線は、多層配線構造を有し、
前記信号線駆動回路は、前記走査線の層毎に異なる補正値を加えた前記表示信号を対応する前記信号線に印加する液晶表示装置。
【請求項2】
前記信号線駆動回路は、前記表示信号の極性を一定間隔毎に反転し、
前記補正値は、一定間隔毎に前記液晶容量に印加される前記表示信号の平均値に基づいて算出される、
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記信号線駆動回路は、前記表示信号の極性を一定間隔毎に反転し、
前記補正値は、一定間隔毎に前記液晶容量に印加される前記表示信号の振幅に基づいて算出される、
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記補正値は、前記走査線の層毎のフィードスルー電圧の差分に対応した補正値である請求項1乃至3の何れか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
スイッチング素子と、前記スイッチング素子に接続された液晶容量とを有する複数の画素と、それぞれの前記スイッチング素子に接続され、前記スイッチング素子をオンするための走査信号を伝送する複数の走査線と、それぞれの前記スイッチング素子に接続され、前記スイッチング素子を介して前記液晶容量に印加される表示信号を伝送する複数の信号線と、複数の前記信号線のそれぞれに前記表示信号を印加する信号線駆動回路とを具備し、複数の前記走査線は、多層配線構造を有している液晶表示装置の駆動方法であって、
前記信号線駆動回路により、前記走査線の層毎に異なる補正値を加えた前記表示信号を対応する前記信号線に印加することを具備する液晶表示装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、液晶表示装置及びその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)をアクティブ素子として使用するアクティブマトリクス型の液晶表示装置が知られている。液晶表示装置は、表示電極と、共通電極と、画素とを有する。画素は、表示電極と共通電極とに狭持される液晶層を含んでいる。液晶表示装置では、TFTを介して表示電極に印加される電圧の大きさを制御することによって表示の際の階調を変えることができる。
【0003】
ここで、液晶表示装置に用いられる液晶は、直流電圧が印加され続けると劣化する。このため、液晶表示装置は、液晶層に印加される電圧の極性を例えばフレーム毎といった一定間隔で反転させる交流駆動によって駆動される。交流駆動の場合、TFTがオンからオフに切り替わるタイミングでフィードスルー電圧が発生する。フィードスルー電圧により、表示電極に印加される電圧は降下する。したがって、適正な階調レベルでの表示が行われるためには、フィードスルー電圧による電圧降下を補正する必要がある。従来、フィードスルー電圧に相当する電圧降下分だけ共通電極に印加する共通電圧を増加させることでフィードスルー電圧による電圧降下が補正されている。
【0004】
また、近年、液晶表示装置の表示パネルのさらなる狭額縁化が要求されている。表示パネルの狭額縁化の手法として、TFTを駆動する走査線を多層配線構造にする手法が知られている。多層配線構造の場合、配線を形成する条件の違いによって同一配線材料が用いられたとしても配線の幅等の出来栄えが変化する。走査線の幅等の変化は、フィードスルー電圧の変化に繋がる。つまり、多層配線構造では、フィードスルー電圧が層毎に変化し得る。フィードスルー電圧が層毎に異なることにより、表示の際に横スジが発生したり、フリッカが発生したりといった表示品位の低下が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
層毎にフィードスルー電圧が異なっている場合、共通電圧を変えることではフィードスルー電圧による電圧降下を補正することはできない。
【0007】
本実施形態は、走査線が多層配線構造であっても表示品位の低下を抑制可能な液晶表示装置及びその駆動方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る液晶表示装置は、スイッチング素子と、スイッチング素子に接続された液晶容量とを有する複数の画素と、それぞれのスイッチング素子に接続され、スイッチング素子をオンするための走査信号を伝送する複数の走査線と、それぞれのスイッチング素子に接続され、スイッチング素子を介して液晶容量に印加される表示信号を伝送する複数の信号線と、複数の信号線のそれぞれに表示信号を印加する信号線駆動回路とを備える。複数の走査線は、多層配線構造を有する。信号線駆動回路は、走査線の層毎に異なる補正値を加えた表示信号を対応する信号線に印加する。
【0009】
第2の態様に係る液晶表示装置の駆動方法は、スイッチング素子と、スイッチング素子に接続された液晶容量とを有する複数の画素と、それぞれのスイッチング素子に接続され、スイッチング素子をオンするための走査信号を伝送する複数の走査線と、それぞれのスイッチング素子に接続され、スイッチング素子を介して液晶容量に印加される表示信号を伝送する複数の信号線と、複数の信号線のそれぞれに表示信号を印加する信号線駆動回路とを備え、複数の走査線は、多層配線構造を有している液晶表示装置の駆動方法であって、信号線駆動回路により、走査線の層毎に異なる補正値を加えた表示信号を対応する信号線に印加することを備える。
【発明の効果】
【0010】
実施形態によれば、走査線が多層配線構造であっても表示品位の低下を抑制可能な液晶表示装置及びその駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る液晶表示装置のレイアウト図である。
【
図5】
図5は、液晶表示装置の駆動時の信号波形を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態の液晶表示装置の駆動方法を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、実施形態の液晶表示装置の駆動方法における正極駆動時の画素毎の表示電極電圧の平均値の配置を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、実施形態の液晶表示装置の駆動方法における負極駆動時の画素毎の表示電極電圧の平均値の配置を示す図である。
【
図8】
図8は、表示信号の補正値の算出方法について示すフローチャートである。
【
図9A】
図9Aは、aグループの測定用パターンを示す図である。
【
図9B】
図9Bは、bグループの測定用パターンを示す図である。
【
図10】
図10は、変形例の液晶表示装置の駆動方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係る液晶表示装置1のレイアウト図である。液晶表示装置1は、画素アレイ10と、ドライバ集積回路(IC)11とを備えている。また、
図1には、X方向とY方向とが定義されている。X方向とY方向とは交差している。X方向は、例えば液晶表示装置1の水平方向である。Y方向は、例えば液晶表示装置1の垂直方向である。
【0013】
画素アレイ10には、それぞれがX方向に延びる複数の走査線GLと、それぞれがY方向に延びる複数の信号線SLとが配設される。走査線GLは、走査信号を伝送するための配線である。
図1において、走査線GLは、
図1の上から順に、GL1、GL2、GL3、…、と番号付けされている。
図1に示すように、奇数番目の走査線GL1、GL3、GL5、…、は、画素アレイ10の左側から引き回されている。偶数番目の走査線GL2、GL4、GL6、…、は、画素アレイ10の右側から引き回されている。信号線SLは、表示信号を伝送するための配線である。
図1において、信号線SLは、
図1の左から順に、SL1、SL2、SL3、…、と番号付けされている。
【0014】
図2Aは、
図1の2A-2A線断面図である。
図2Bは、
図1の2B-2B線断面図である。
図2A及び
図2Bに示すように、走査線GLは、2層配線構造を有している。画素アレイ10が形成されるガラス基板GSの上に、走査線GLが配設されるM1層とM2層とがこの順で形成される。M1層とM2層とは層間絶縁膜によって絶縁されている。そして、
図2Aに示すように、奇数番目の走査線GL1、GL3、GL5、…、は、2層に分けられて配設されている。例えば、走査線GL1、GL5、GL9、…、は、下層であるM1層に配設されている。また、走査線GL3、GL7、GL11、…、は、上層であるM2層に配設されている。同様に、
図2Bに示すように、偶数番目の走査線GL2、GL4、GL6、…、も、2層に分けられて配設されている。例えば、走査線GL2、GL6、GL10、…、は、下層であるM1層に配設されている。また、走査線GL4、GL8、GL12、…、は、上層であるM2層に配設されている。
【0015】
ここで、
図2A及び
図2Bに示すように、M1層に形成される走査線GL1、GL2、GL5、GL6の配線幅は、M2層に形成される走査線GL3、GL4、GL7、GL8の配線幅よりも広く図示されている。これは、M1層の走査線がガラス基板GSの上に形成されるのに対し、M2層の走査線がM1層の上に形成されるためである。配線の形成を形成する条件の違いにより、同一の配線材料が用いられて同一幅に形成しようとしたとしても配線の幅等の出来栄えの差が生じる。
図2A及び
図2Bには、この配線の形成の際の出来栄えの差が示されている。
【0016】
ドライバIC11は、画素アレイ10の下側の位置に配置されている。ドライバIC11は、走査線GL、信号線SLに接続される。ドライバIC11は、ICチップで構成され得る。
【0017】
図3は、液晶表示装置1のブロック図である。前述したように、画素アレイ10には、X方向に延びる複数の走査線GL1、GL2、…、と、Y方向に延びる複数の信号線SL1、SL2、…、とが配設される。走査線GLと信号線SLとの交差領域には、画素PXが配置される。
【0018】
図4は、画素PXの構成を示す図である。1つの画素PXは、液晶容量Clcと、スイッチング素子101と、蓄積容量Csとを有している。
【0019】
液晶容量Clcは、表示電極DEと、共通電極CEと、液晶層LCとにより構成される。表示電極DEは、ITO等の透明電極であり、前述したガラス基板GSの上に画素PX毎に形成される。共通電極CEは、ガラス基板GSと対向するように配置されるガラス基板の上に形成され、それぞれの表示電極DEと対向する例えば1枚の透明電極である。液晶層LCは、表示電極DEと共通電極CEとの間に挟まれる液晶の層である。
【0020】
スイッチング素子101は、例えば薄膜トランジスタ(TFT)である。スイッチング素子101がTFTであるとき、TFTのソース電極Sは信号線SLに接続され、ゲート電極Gは走査線GLに接続され、ドレイン電極Dは液晶容量Clcの表示電極DEに接続される。
【0021】
蓄積容量Csは、液晶容量Clcに並列接続される。蓄積容量Csは、表示電極DEに生じる電位変動を抑制するとともに、液晶層LCに印加される電圧を次の表示信号が印加されるまで保持する機能を有する。蓄積容量Csは、表示電極DEと、蓄積電極(蓄積容量線ともいう)AEと、これらに挟まれた絶縁膜ILとにより構成される。
【0022】
ドライバIC11は、走査線駆動回路111と、信号線駆動回路112と、共通電極駆動回路113と、電圧発生回路114と、制御回路115とを有している。
【0023】
走査線駆動回路111は、走査線GLに電気的に接続される。走査線駆動回路111は、制御回路115から送られる制御信号に基づいて、画素PXに含まれるスイッチング素子101をオン又はオフするための走査信号を画素アレイ10に送る。
【0024】
信号線駆動回路112は、信号線SLに電気的に接続される。信号線駆動回路112は、制御回路115から制御信号及び表示データを受ける。信号線駆動回路112は、制御信号に基づいて、表示データに対応する表示信号を画素アレイ10に送る。表示信号は、表示データに対応した階調レベルを有する電圧信号である。実施形態の信号線駆動回路112は、補正値メモリ112aを含む。補正値メモリ112aは、多層配線構造を有する走査線の出来栄えの差に起因する層毎のフィードスルー電圧の違いを補正する補正値を記憶するためのフラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。
【0025】
共通電極駆動回路113は、共通電極CEと蓄積電極AEとに接続されている。共通電極駆動回路113は、共通電圧を生成し、この共通電圧を画素アレイ10内の共通電極CEと蓄積電極AEとに供給する。
【0026】
電圧発生回路114は、走査線駆動回路111で用いられる電圧、信号線駆動回路112で用いられる電圧、共通電極駆動回路113で用いられる電圧といった、液晶表示装置1の動作に必要な各種の電圧を生成し、これら電圧を対応する回路に供給する。
【0027】
制御回路115は、液晶表示装置1の動作を統括的に制御する。制御回路115は、外部から表示データDT及び制御信号CNTを受ける。制御回路115は、表示データDT及び制御信号CNTに基づいて、各種の制御信号を生成し、生成した制御信号を対応する回路に送る。
【0028】
次に、液晶表示装置1の動作を説明する。液晶表示装置1において画像の表示が行われるに際して、制御回路115に表示データDTと制御信号CNTとが入力される。表示データDTは、画像を構成するそれぞれの画素の階調レベルを表すデータである。制御回路115は、制御信号CNTから制御信号を生成する。生成される制御信号は、例えば垂直同期信号及び水平同期信号である。制御回路115は、垂直同期信号及び水平同期信号をそれぞれ決められたタイミングで走査線駆動回路111に送る。また、制御回路115は、垂直同期信号及び水平同期信号をそれぞれ決められたタイミングで信号線駆動回路112に送る。さらに、制御回路115は、表示データを信号線駆動回路112に送る。
【0029】
走査線駆動回路111は、水平同期信号を受ける毎に走査線GLを介してスイッチング素子101をオンする走査信号を送る。これにより、水平同期信号に同期して、走査線GL1、GL2、…、の順で1行ずつ、スイッチング素子101がオンする。
【0030】
信号線駆動回路112は、表示データをデコードし、表示データによって表される階調レベルに対応した振幅を有する表示信号を生成する。そして、信号線駆動回路112は、水平同期信号を受ける毎に、信号線SLを介して1行分の表示信号を送る。スイッチング素子101がオンされているとき、表示信号は対応する画素PXの表示電極DEに印加される。これにより、対応する画素PXの液晶層LCには、表示信号に応じた表示電極電圧と共通電極CEに印加されている共通電圧との差分に応じた電圧が印加される。液晶は、印加される電圧の大きさに応じて透過率が変化する特性を有する。このため、例えばガラス基板GSの裏面に配置されたバックライトの光の透過率は、液晶容量Clcにかかる電圧によって変化する。これにより、それぞれの画素PXは、階調レベルに応じた輝度の光を透過させる。このようにして、液晶表示装置1における画像の表示が行われる。
【0031】
また、蓄積容量Csには、液晶容量Clcと同じ大きさの電圧が印加される。蓄積容量Csにより、表示電極DEに生じる電位変動が抑制され、液晶層LCに印加される電圧が次の表示信号が印加されるまで保持される。
【0032】
ここで、液晶は、直流電圧が印加され続けると劣化する特性を有する。このため、信号線駆動回路112は、液晶層LCに印加される電圧の極性、すなわち表示電極DEに印加する表示信号の極性を一定間隔で反転させる交流駆動を行う。この一定間隔は、例えば垂直同期信号を受ける間隔である1フレーム間隔である。
【0033】
図5は、液晶表示装置1の駆動時の信号波形を示す図である。
図5は、上から順に走査線GL1-GL5の走査信号、表示電極電圧(正極駆動時、負極駆動時)を示している。また、
図5では、各行の画素PXに同一の階調レベルに対応した表示信号が印加されるものとしている。
【0034】
交流駆動では、
図4に示した画素PXのスイッチング素子(TFT)101のゲート電極Gと表示電極DEとの間の寄生容量によってスイッチング素子101のオフ時にフィードスルー電圧が発生する。フィードスルー電圧により、表示電極電圧には電圧降下が発生する。スイッチング素子101のオン期間よりもオフ期間の方が十分に長い場合、表示電極電圧の平均値からフィードスルー電圧を引いた電圧が実質的な液晶層LCにかかる電圧の平均値となる。このようなフィードスルー電圧の影響により、正極駆動時と負極駆動時とで液晶層LCにかかる電圧の平均値の絶対値に差が生じる。つまり、正極駆動時には液晶層にかかる電圧は本来の電圧よりも低くなり、負極駆動時には液晶層にかかる電圧は本来の電圧よりも高くなる。正極駆動時と負極駆動時とでの液晶層LCにかかる電圧の違いは、1フレーム周期のフリッカとなって表れる。ここで、フィードスルー電圧がすべての水平期間で一定であれば、共通電圧をフィードスルー電圧の分だけ増加させておくことにより、フィードスルー電圧による電圧降下の影響は補正され得る。
【0035】
これに対し、走査線GLの抵抗及び容量の影響によって走査信号が鈍った場合、スイッチング素子101がオフとなる電圧は走査信号に鈍りのない場合に比べ高くなる。このためフィードスルー電圧は低くなる。例えば、
図2A及び
図2Bに示すように、M2層の走査線GL3、GL4の配線幅のほうがM1層の走査線GL1、GL2、GL5の配線幅よりも狭い場合、走査線GL3、GL4の配線抵抗のほうが走査線GL1、GL2、GL5の配線抵抗よりも高くなる。したがって、
図5で示すように、走査線GL3、GL4の走査信号には鈍りが生じ得る。走査線GL3、GL4の走査信号に鈍りが生じているとすると、
図5に示すように、走査線GL3及びGL4に対応した水平期間のフィードスルー電圧は、走査線GL1、2及びGL5に対応した水平期間のフィードスルー電圧よりも低くなる。結果として、走査線GL3及びGL4に対応した水平期間において液晶層LCにかかる電圧の平均値は、他の水平期間よりも高くなってしまう。液晶層LCにかかる電圧の違いは、1フレーム期間内の表示の際の横スジとなって表れる。また、走査信号に鈍りがない時と同様に正極駆動時と負極駆動時とでの液晶層LCにかかる電圧の違いは、1フレーム周期のフリッカとなって表れる。ただし、走査線GL1、GL2、GL5に対応した水平期間と走査線GL3、GL4に対応した水平期間とではフィードスルー電圧の大きさが異なる。したがって、例えば走査線GL1、GL2、GL5に対応した水平期間におけるフィードスルー電圧に合わせて共通電圧を増加させたとしても、走査線GL3、GL4に対応した水平期間におけるフリッカは抑制されない。
【0036】
図6は、実施形態の液晶表示装置の駆動方法を示す図である。実施形態では多層配線構造を有する走査線GLの層毎の出来栄えの差に起因する層毎のフィードスルー電圧の違いを、走査線GLの層毎のグループの単位で補正する。具体的には、信号線駆動回路112は、2水平期間毎に、表示電極DEに印加する階調レベルに応じた表示信号に補正値を加える。
図6の「a」は、M1層の走査線GLに接続される画素PIXのグループであるグループaの表示電極電圧の平均値である。また、
図6の「b」は、M2層の走査線GLに接続される画素PIXのグループであるグループbの平均値である。グループbでは、本来の印加されるべき表示信号にさらに補正値が加えられることにより、表示電極電圧の平均値が層毎のフィードスルー電圧の差分だけ低下される。この状態においてグループaの表示電極電圧の平均値とグループbの表示電極電圧の平均値からそれぞれで異なる大きさのフィードスルー電圧が引かれることによって、同じ階調レベルに対応した表示信号が印加されているときには、液晶層LCにかかる電圧の平均値は走査線GLの層によらずに一定になる。
【0037】
図7A及び
図7Bは、実施形態の液晶表示装置の駆動方法における画素PIX毎の表示電極電圧の平均値の配置を示す図である。
図7Aは正極駆動時の表示電極電圧の平均値の配置であり、
図7Bは負極駆動時の表示電極電圧の平均値の配置である。
図7A及び
図7Bの「a」は、M1層の走査線GLに接続される画素PIXのグループであるグループaの平均値であることを意味している。「b」は、M2層の走査線GLに接続される画素PIXのグループであるグループbの平均値であることを意味している。
図7A及び
図7Bに示すように、2行毎に同一のグループになる。
【0038】
図8は、表示信号の補正値の算出方法について示すフローチャートである。表示信号の補正値は、aグループとbグループの表示電極電圧の平均値の差分を測定することで求めることができる。
図8の処理は、例えば液晶表示装置1の製造時に実施され得る。
【0039】
ステップS1において、作業者は、液晶表示装置1により、aグループの測定用パターンの表示を開始させる。
図9Aは、aグループの測定用パターンを示す図である。
図9Aaに示すように、aグループの測定用パターンでは、aグループに属する画素PIXを点灯状態とし、bグループに属する画素PIXを不灯状態とする。点灯状態とする画素PIXの表示データは、同じ中間階調レベルを表す表示データであるとする。また、不灯状態とする画素PIXに印加される表示信号は、同じ黒レベルを表す表示データであるとする。不灯状態が用いられるのは異なるグループの影響を排除するためである。点灯状態として中間階調レベルを表す表示データが用いられるのは、最低階調レベル及び最大階調レベルに比べて中間階調レベルの方がより小さい電位の変化で透過率を変化させる特性を液晶が有しているためである。勿論、点灯状態として、中間階調レベル以外の表示データが用いられてもよい。
【0040】
ステップS2において、作業者は、液晶表示装置1の表示を見ながら、フリッカが最小になるように共通電極駆動回路113で生成される共通電圧を操作する。前述したように、共通電圧が操作されていないとき、正極駆動時と負極駆動時とでの液晶層にかかる電圧の違いはフリッカとなって表れる。作業者は、このフリッカが見えなくなるように共通電圧を操作する。ステップS2で操作された共通電圧の値は、グループaの共通電圧の値として例えばパーソナルコンピュータに入力される。なお、共通電圧の操作は自動的に行われてもよい。つまり、共通電極駆動回路113は、正極駆動時と負極駆動時との間のグループaの画素PIXのフリッカが最小となるように共通電圧を操作してよい。
【0041】
ステップS3において、作業者は、液晶表示装置1により、bグループの測定用パターンの表示を開始させる。
図9Bは、bグループの測定用パターンを示す図である。
図9Bに示すように、bグループの測定用パターンでは、aグループに属する画素PIXを不灯状態とし、bグループに属する画素PIXを点灯状態とする。点灯状態及び不灯状態のときの階調レベルは、aグループの測定用パターンと同じである。
【0042】
ステップS4において、作業者は、液晶表示装置1の表示を見ながら、フリッカが最小になるように共通電極駆動回路113で生成される共通電圧を操作する。ステップS4で操作された共通電圧の値は、グループbの共通電圧の値として例えばパーソナルコンピュータに入力される。なお、共通電圧の操作は自動的に行われてもよい。つまり、共通電極駆動回路113は、正極駆動時と負極駆動時との間のグループbの画素PIXのフリッカが最小となるように共通電圧を操作してよい。
【0043】
ステップS5において、パーソナルコンピュータは、グループaの共通電圧とグループbの共通電圧との差分を算出する。グループaとグループbとでフィードスルー電圧が同じであれば、フリッカが見えなくなる共通電圧の値は同じになる。つまり、グループaの共通電圧とグループbの共通電圧との差分は、そのままグループaのフィードスルー電圧とグループbのフィードスルー電圧との差分になる。そして、パーソナルコンピュータは、液晶表示装置1の補正値メモリ112aに、共通電圧の差分の値、すなわちフィードスルー電圧の差分の値を補正値として補正値メモリ112aに記憶させる。その後、
図8の処理は終了する。
【0044】
図8の処理以後、信号線駆動回路112は、グループbに対応した画素の表示の際には、表示電極DEに印加する本来の階調レベルに応じた表示信号に補正値を加えることによって、グループbにおける表示電極電圧の平均値をグループaにおける表示電極電圧の平均値よりも走査線の層のグループ毎のフィードスルー電圧の差分だけ低くする。
【0045】
以上説明したように実施形態によれば、多層配線構造を有する走査線の層毎の出来栄えの差に起因するフィードスルー電圧の差の影響が走査線の層のグループ毎の表示電極電圧の平均値の制御によって補正される。これにより、走査線が多層配線構造であっても表示品位の低下が抑制される。
【0046】
[変形例]
実施形態の変形例を説明する。前述した実施形態では、多層配線構造を有する走査線の層毎の出来栄えの差に起因するフィードスルー電圧の差の影響がグループ毎の表示電極電圧の平均値の制御によって補正される。これに対し、多層配線構造を有する走査線の層毎の出来栄えの差に起因するフィードスルー電圧の差の影響によるグループ毎の輝度差が著しく、大きな横スジ等が発生しているときには、
図10のように表示電極電圧そのもので輝度が補正されてもよい。この場合、輝度の測定に際しては、
図9A及び
図9Bで示した測定用パターンが用いられ得る。例えば、
図9Aの測定用パターンで表示がされてグループaの各画素の輝度が測定され、また、
図9Bの測定用パターンで表示がされてグループbの各画素の輝度が測定される。そして、グループaの各画素の輝度とグループbの各画素の輝度との差がゼロになるbグループの表示信号の振幅の値が求められ、この表示信号の振幅の値が補正値として補正値メモリ112aに記憶される。信号線駆動回路112は、グループbに対応した画素の表示の際には、表示電極DEに印加する本来の階調レベルに応じた表示信号に補正値を加えることによって、グループbにおける表示電極電圧をグループaにおける表示電極電圧よりもフィードスルー電圧の差分だけ変える。このようにして、走査線が多層配線構造であっても表示品位の低下が抑制される。
【0047】
また、実施形態では、走査線は2層構造である。走査線は、3層構造以上の多層構造を有していてもよい。この場合も、走査線の層毎にグループ分けされる。そして、補正値は、グループ毎に補正値メモリ112aに記憶される。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0049】
1…液晶表示装置、10…画素アレイ、101…スイッチング素子、Clc…液晶容量、DE…表示電極、CE…共通電極、GL…走査線、SL…信号線、111…走査線駆動回路、112…信号線駆動回路、112a…補正値メモリ、113…共通電極駆動回路、114…電圧発生回路、115…制御回路。