IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北陸電力株式会社の特許一覧 ▶ 北陸電力送配電株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社成宏電機の特許一覧

<>
  • 特開-充放電システム 図1
  • 特開-充放電システム 図2
  • 特開-充放電システム 図3
  • 特開-充放電システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072557
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】充放電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20220510BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220510BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02J3/32
H02J7/00 P
H02J7/34 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182064
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000242644
【氏名又は名称】北陸電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520123216
【氏名又は名称】北陸電力送配電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514175999
【氏名又は名称】株式会社成宏電機
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】特許業務法人みなみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 英俊
(72)【発明者】
【氏名】杉本 仁志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 茂男
(72)【発明者】
【氏名】浜下 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】夏梅 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平野 博之
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5G066HB09
5G066JA01
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503DA04
5G503DA16
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB03
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】簡易な構成であって電気自動車などの蓄電池を電源とすることができる充放電システムを提供する。
【解決手段】パワーコンディショナと、パワーコンディショナに接続された複数の直流変換器および変圧器と、各直流変換器に接続されたものであって蓄電池を備える車両が接続される車両接続部と、変圧器に接続されたものであって負荷が接続される負荷接続部と、直流変換器を制御する制御部を備えるものであって、制御部は、1台または複数台の車両の蓄電池から他の1台または複数台の車両の蓄電池へ電力を供給するように直流変換器を制御する車両間充電手段と、1台または複数台の車両の蓄電池から負荷へ電力を供給するように直流変換器を制御する負荷給電手段と、他の車両または負荷へ電力を供給する給電元の車両を別の車両に切り替える車両切替手段を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーコンディショナと、パワーコンディショナに接続された複数の直流変換器および変圧器と、各直流変換器に接続されたものであって蓄電池を備える車両が接続される車両接続部と、変圧器に接続されたものであって負荷が接続される負荷接続部と、直流変換器を制御する制御部を備えるものであって、
制御部は、1台または複数台の車両の蓄電池から他の1台または複数台の車両の蓄電池へ電力を供給するように直流変換器を制御する車両間充電手段と、1台または複数台の車両の蓄電池から負荷へ電力を供給するように直流変換器を制御する負荷給電手段と、他の車両または負荷へ電力を供給する給電元の車両を別の車両に切り替える車両切替手段を有することを特徴とする充放電システム。
【請求項2】
制御部は、車両接続部に接続された各車両の蓄電池の残容量を取得する残容量取得手段を有するものであって、
車両切替手段は、当初の給電元の車両の蓄電池の残容量が無くなる前に、当初の給電元の車両からの給電量を漸減させるとともに新たな給電元の車両からの給電量を漸増させて、給電元の車両を無瞬断で別の車両に切り替えるものであることを特徴とする請求項1記載の充放電システム。
【請求項3】
制御部は、車両接続部に接続された各車両の蓄電池の残容量を取得する残容量取得手段と、各車両に必要な蓄電池の残容量である必要容量を取得する必要容量取得手段を有するものであって、
車両切替手段は、給電元の車両の蓄電池の残容量が必要容量を維持するように、給電元の車両を別の車両に切り替えるものであることを特徴とする請求項1または2記載の充放電システム。
【請求項4】
必要容量取得手段は、車両が車両接続部に接続された時点における蓄電池の満容量と残容量の差をその車両の必要容量とするものであることを特徴とする請求項3記載の充放電システム。
【請求項5】
変圧器は、絶縁変圧器であって、その容量がパワーコンディショナの容量以下のものであることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の充放電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車(EV)などの蓄電池を備える車両を接続して、車両間で充電させたり車両から種々の負荷へ給電させたりするための充放電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電池を搭載した電気自動車の普及が進んでおり、この蓄電池が、地震や台風などの自然災害による停電時における非常用電源としても用いられている。すなわち、停電時に、電気自動車の蓄電池から住宅の電灯などの種々の負荷へ給電するものである。
【0003】
このように蓄電池を非常用電源とするために用いられるのが、たとえば特許文献1に示すような充放電器である。この充放電器は、住宅に付設されるものであって、電気自動車と接続することで、平常時には商用電源から電気自動車の蓄電池に充電し、非常時には電気自動車の蓄電池から住宅の負荷へ給電するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-178234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の充放電器は、平常時において商用電源から電気自動車の蓄電池を充電するための充電器として用いられることを前提とし、これに非常時のための機能を追加したものだったので、構成が複雑であった。
【0006】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、簡易な構成であって電気自動車などの蓄電池を電源とすることができる充放電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、パワーコンディショナと、パワーコンディショナに接続された複数の直流変換器および変圧器と、各直流変換器に接続されたものであって蓄電池を備える車両が接続される車両接続部と、変圧器に接続されたものであって負荷が接続される負荷接続部と、直流変換器を制御する制御部を備えるものであって、制御部は、1台または複数台の車両の蓄電池から他の1台または複数台の車両の蓄電池へ電力を供給するように直流変換器を制御する車両間充電手段と、1台または複数台の車両の蓄電池から負荷へ電力を供給するように直流変換器を制御する負荷給電手段と、他の車両または負荷へ電力を供給する給電元の車両を別の車両に切り替える車両切替手段を有することを特徴とする。なお、蓄電池を備える車両とは、電気自動車のように蓄電池の電力で走行する車両と、ガソリン車などのように走行用ではない蓄電池を積載した車両の両方を含む。
【0008】
また、制御部は、車両接続部に接続された各車両の蓄電池の残容量を取得する残容量取得手段を有するものであって、車両切替手段は、当初の給電元の車両の蓄電池の残容量が無くなる前に、当初の給電元の車両からの給電量を漸減させるとともに新たな給電元の車両からの給電量を漸増させて、給電元の車両を無瞬断で別の車両に切り替えるものであってもよい。
【0009】
また、制御部は、車両接続部に接続された各車両の蓄電池の残容量を取得する残容量取得手段と、各車両に必要な蓄電池の残容量である必要容量を取得する必要容量取得手段を有するものであって、車両切替手段は、給電元の車両の蓄電池の残容量が必要容量を維持するように、給電元の車両を別の車両に切り替えるものであってもよい。
【0010】
また、必要容量取得手段は、車両が車両接続部に接続された時点における蓄電池の満容量と残容量の差をその車両の必要容量とするものであってもよい。
【0011】
また、変圧器は、絶縁変圧器であって、その容量がパワーコンディショナの容量以下のものであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パワーコンディショナと、直流変換器および変圧器からなる簡易な構成のシステムにより、車両の蓄電池から種々の負荷へ電力を供給するのみならず、車両の蓄電池から他の車両の蓄電池へ電力を供給することも可能である。また、給電元の車両を切り替えてより大きな容量の電力を供給することができる。
【0013】
また、車両切替手段が、当初の給電元の車両からの給電量を漸減させるとともに新たな給電元の車両からの給電量を漸増させるものであれば、給電元の車両の切り替え時においても、途切れることなくシームレスに電力を供給可能であり、給電先に対して影響を及ぼすことがない。
【0014】
また、車両切替手段が、給電元の車両の蓄電池の残容量が必要容量を維持するように、給電元の車両を別の車両に切り替えるものであれば、給電元の車両の蓄電池の残容量が無くなり走行できなくなることを避けられる。
【0015】
また、必要容量取得手段が、車両が車両接続部に接続された時点における蓄電池の満容量と残容量の差をその車両の必要容量とするものであれば、容易な方法で、少なくともその車両が前回充電した場所まで走行するための残容量を確保することができる。
【0016】
また、絶縁変圧器の容量がパワーコンディショナの容量以下のものであれば、給電先の負荷の起動時の突入電流によりパワーコンディショナが過電流・過負荷となって停止することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】充放電システムの全体を示すブロック図である。
図2】給電元の車両を切り替える際の給電量の変化を示すグラフである。
図3】車両間で充電を行う場合の説明図であり、(a)は1台から1台に充電する場合、(b)は1台から複数台に充電する場合、(c)は複数台から1台に充電する場合、(d)は複数台から複数台に充電する場合を示す。
図4】車両から負荷へ給電する場合の説明図であり、(a)、(b)により給電元の車両の切り替えを示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の充放電システムの具体的な内容について説明する。ここで示す実施形態において、充放電システムは、それ自体が車両(トラックの荷台など)に載せられた、可搬式のものである。そして、図1に示すように、この充放電システムは、パワーコンディショナ(PCS)1と、パワーコンディショナ1に接続された複数(本実施形態では5つとする)の直流変換器(DCDC)2と、同じくパワーコンディショナ1に接続された絶縁変圧器3および電灯変圧器4と、各直流変換器2に接続されたものであって蓄電池を備える車両である電気自動車Eが接続される車両接続部5と、絶縁変圧器3および電灯変圧器4にそれぞれ接続されたものであって負荷Lが接続される負荷接続部6と、機器の制御および各種の値の計測を行う制御部7と、この充放電システム自体に電力を供給するための電源部8と、この充放電システムに商用電源や、発電機・ポータブル電源などの各種の交流電源を外部電源として接続するための接続部9を備える。
【0019】
なお、以下において、5つの直流変換器2に共通の説明をする際には、5つをまとめて直流変換器2とよび、個々の直流変換器2について説明をする際には、それぞれA系直流変換器2a、B系直流変換器2b、C系直流変換器2c、D系直流変換器2d、E系直流変換器2eとよぶ。また、後述のように、各直流変換器2にそれぞれ複数台の電気自動車Eが接続可能であるが、全ての電気自動車Eに共通の説明をする際には、全てをまとめて電気自動車Eとよび、個々の電気自動車Eについて説明をする際には、A系直流変換器2aに接続された電気自動車については、A系1号車Ea1、A系2号車Ea2、・・・とよび、B系直流変換器2bに接続された電気自動車については、B系1号車Eb1、B系2号車Eb2、・・・とよび、C系直流変換器2cに接続された電気自動車については、C系1号車Ec1、C系2号車Ec2、・・・とよび、D系直流変換器2dに接続された電気自動車については、D系1号車Ed1、D系2号車Ed2、・・・とよぶ(E系直流変換器2eに接続された電気自動車については、以下の説明の中には登場しないので省略する)。さらに、負荷Lには、エレベータなどの三相交流の電気で動作するものと、照明器具などの単相交流の電気で動作するものがあるが、全ての負荷Lに共通の説明をする際には、全てをまとめて負荷Lとよび、三相交流の電気で動作する負荷Lについては、三相動力負荷Laとよび、単相交流の電気で動作する負荷Lについては、単相電灯負荷Lbとよぶ。
【0020】
パワーコンディショナ1は、電気自動車Eの蓄電池から給電される直流の電気を、交流の電気に変換して出力するものである。また、パワーコンディショナ1は、制御部7と接続されており、制御部7に対して電流・電圧などの各種計測値のデータを送信するとともに、制御部7から制御のための信号を受信する。
【0021】
直流変換器2は、電気自動車Eの蓄電池から給電される直流の電気について、直流のまま電圧を変換して出力するものである。本実施形態では、上述のとおり5つの直流変換器2(A系直流変換器2a、B系直流変換器2b、C系直流変換器2c、D系直流変換器2d、E系直流変換器2e)を備えており、パワーコンディショナ1の入力端に対して、5つの直流変換器2が並列に接続されている。また、各直流変換器2は、制御部7と接続されており、制御部7に対して電流・電圧などの各種計測値のデータを送信するとともに、制御部7から制御のための信号を受信する。
【0022】
絶縁変圧器3は、飽和変圧器からなり、パワーコンディショナ1から負荷L側に直流電流が流出することを確実に防ぎ、電路を絶縁するためのものである。絶縁変圧器3の容量は、パワーコンディショナ1の容量と同じである。また、電灯変圧器4は、V字結線変圧器からなり、パワーコンディショナ1から出力される三相交流の電気を単相交流の電気に変換するものである。電灯変圧器4の容量は、パワーコンディショナ1の容量よりも大きい。そして、絶縁変圧器3と電灯変圧器4は、パワーコンディショナ1の出力端に対して並列に接続されている。なお、絶縁変圧器3と電灯変圧器4には、それぞれ接地電流を検出するための電流センサ31,41が設けられている。そして、電流センサ31,41は、制御部7に接続されており、制御部7に対して電流の計測値のデータを送信する。また、絶縁変圧器3と電灯変圧器4の負荷L側には、それぞれ電圧を検出するための電圧センサ32,42が設けられている。そして、電圧センサ32,42は、制御部7に接続されており、制御部7に対して電圧の計測値のデータを送信する。
【0023】
車両接続部5は、各直流変換器2に接続されたものであって、複数本に枝分かれした配線のそれぞれの先端に設けられた、電気自動車Eと接続するためのプラグ51と、それぞれの配線を開閉するリレー接点52と、リレー接点52の1つを択一的に閉とする電気的インターロック装置53を備える。なお、図3および図4においては、閉状態のリレー接点52に「ON」、開状態のリレー接点52に「OFF」と付記してある。プラグ51を通じて電気自動車Eの蓄電池から給電し、また蓄電池に充電するとともに、車載用の通信プロトコルとして一般的なCANプロトコルにより電気自動車Eの各種情報(蓄電池の残容量や満容量など)が制御部7に送信される。また、電気的インターロック装置53は、既知の機構であり詳細は説明しないが、制御部7からの指令に基づき、複数のリレー接点52のうちの1つのみを閉とし、同時に複数のリレー接点52が閉となることがないように動作するものである。なお、以下において、たとえばA系直流変換器2aに接続された車両接続部5やそのプラグ51などについて、A系の車両接続部5やA系のプラグ51などという場合がある。また、上記の車両接続部5を用いずに、別途直流電源用プラグ54を有する直流電源用ケーブル55を用いて、直流変換器2にガソリン車Gやディーゼル車の補機電源用ダイナモ、あるいは種々のバッテリなどの直流電源を接続することもできる(図1においては、E系直流変換器2eにガソリン車Gが接続されており、E系の車両接続部5は図示省略してある)。
【0024】
負荷接続部6は、絶縁変圧器3と電灯変圧器4にそれぞれ接続されたものであって、配線の先端に設けられた、負荷Lと接続するためのコネクタ61を備える。なお、本実施形態において、このコネクタ61が接続される負荷L側のコネクタには、通常時は商用電源の系統のコネクタが接続されており、負荷Lは商用電源から給電されている。そして、非常時において、商用電源の系統のコネクタを取り外して負荷接続部6のコネクタ61を接続し、負荷Lに対して電気自動車Eから給電するものである。なお、この負荷接続部6のコネクタ61または商用電源の系統のコネクタと負荷L側のコネクタとの接続部分には、商用電源の系統が非通電状態にならないと、給電元を商用電源側から電気自動車側に切り替えることができないような、機械的なインターロックシステムが設けられている。
【0025】
制御部7は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)71と、PLC71に接続されたタッチパネル72、通信機73およびBルートアダプタ74を備える。PLC71は、演算装置、記憶装置および入出力装置を備えるものであり、記憶装置に記録されたプログラムに基づいて、この充放電システムに種々の動作をさせる。すなわち、制御部7(PLC71)は、この充放電システムを動作させるための種々の手段を有しており、制御部7自体がそれらの手段として機能するものであるともいえる。タッチパネル72は、この充放電システムの使用者が操作可能なものであって、電気自動車Eから負荷Lや他の電気自動車Eへの給電や、給電元の電気自動車Eの切り替えなど、各種の操作を行うことができる。また、タッチパネル72には、この充放電システムおよび接続された電気自動車Eや負荷Lの状態などの各種情報が表示される。通信機73は、携帯電話回線などを通じて外部の機器と通信できるものであり、パソコンやスマートフォンなどから、この充放電システムを遠隔制御するために用いられる。なお、遠隔制御には、エコーネットライト規格の通信プロトコルが用いられており、これにより、電力の供給量に需要量を合わせるデマンドレスポンス(DR)や、多数の分散型電源を1つの発電所のようにまとめて制御するバーチャルパワープラント(VPP)にも対応できる。Bルートアダプタ74は、建物に設置されたスマートメータMと無線接続するためのものであり、給電の対象の負荷Lが設けられた建物における商用電源の受電状況や消費電力量などのデータを得ることができる。
【0026】
電源部8は、パワーコンディショナ1に対して直流変換器2と並列になるように接続された充電器81と、充電器81に接続された電源部直流変換器82と、電源部直流変換器82に接続された制御電源83と、充電器81と電源部直流変換器82の間に接続されたバックアップ用蓄電池84を備える。制御電源83は、この充放電システムを動作させるための電源となるものであって、無停電式のものであり、図示しない配線により各部に接続されており、電力を供給する。そして、充放電システムに電気自動車Eまたは後述の商用電源や発電機などの別の電源が接続されている場合には、それらから充電器81および電源部直流変換器82を介して制御電源83に電力を供給する。
【0027】
接続部9は、パワーコンディショナ1に対して直流変換器2と並列になるように接続された電圧調整器91と、電圧調整器91に接続された整流器92を備える。整流器92に対して、商用電源や発電機などの別の電源を接続することができるものであり、図1においては、商用電源Pが接続された状態を示す。
【0028】
なお、この充放電システムにおけるこれらの構成要素のうち、電気自動車Eを接続するためのプラグ51および負荷Lを接続するためのコネクタ61以外は、図示しない筐体に納められており、この筐体が車両に載せられている。タッチパネル72は、筐体の表面に露出しており、外部から操作できるようになっている。
【0029】
次に、制御部7がこの充放電システムをどのように動作させるものであるのかについて、すなわち、制御部7が有する各種の手段について説明する。
【0030】
制御部7は、車両間充電手段を有しており、制御部7自体が車両間充電手段として機能する。車両間充電手段は、1台または複数台の電気自動車Eの蓄電池から他の1台または複数台の電気自動車Eの蓄電池へ電力を供給するように、直流変換器2を制御するものである。この場合、車両接続部5の電気的インターロック装置53により、1つの直流変換器2には常に1台の電気自動車Eが電気的に接続された状態となるものであり、1つまたは複数の直流変換器2に接続された電気自動車Eから、他の1つまたは複数の直流変換器2に接続された電気自動車Eへ電力を供給するように、各直流変換器2を制御する。具体的には、1台から1台への充電の場合、たとえば、A系直流変換器2aに接続されたA系1号車Ea1から、B系直流変換器2bに接続されたB系1号車Eb1に充電される。1台から複数台への充電の場合、たとえば、A系直流変換器2aに接続されたA系1号車Ea1から、B系直流変換器2bに接続されたB系1号車Eb1とC系直流変換器2cに接続されたC系1号車Ec1に充電される。複数台から1台への充電の場合、たとえば、A系直流変換器2aに接続されたA系1号車Ea1とB系直流変換器2bに接続されたB系1号車Eb1から、C系直流変換器2cに接続されたC系1号車Ec1に充電される。複数台から複数台への充電の場合、たとえば、A系直流変換器2aに接続されたA系1号車Ea1とB系直流変換器2bに接続されたB系1号車Eb1から、C系直流変換器2cに接続されたC系1号車Ec1とD系直流変換器2dに接続されたD系1号車Ed1に充電される。
【0031】
また、制御部7は、負荷給電手段を有しており、制御部7自体が負荷給電手段として機能する。負荷給電手段は、1台または複数台の電気自動車Eの蓄電池から負荷Lへ電力を供給するように、直流変換器2を制御するものである。この場合、車両接続部5の電気的インターロック装置53により、1つの直流変換器2には常に1台の電気自動車Eが電気的に接続された状態となるものであり、1つまたは複数の直流変換器2に接続された電気自動車Eから、負荷Lへ電力を供給するように、各直流変換器2を制御する。具体的には、1台から負荷Lへの給電の場合、たとえば、A系直流変換器2aに接続されたA系1号車Ea1から、負荷Lに給電される。複数台から負荷Lへの給電の場合、たとえば、A系直流変換器2aに接続されたA系1号車Ea1とB系直流変換器2bに接続されたB系1号車Eb1から、負荷Lに給電される。さらに、負荷給電手段は、1台または複数台のガソリン車Gの補機電源用ダイナモ(またはその他の直流電源)から負荷Lへ電力を供給するように、直流変換器2を制御するものである。この際、ガソリン車Gの補機電源用ダイナモのみから負荷Lへ電力を供給することもできるし、電気自動車Eの蓄電池とガソリン車Gの補機電源用ダイナモから同時に負荷Lへ電力を供給することもできる。
【0032】
また、制御部7は、残容量取得手段を有しており、制御部7自体が残容量取得手段として機能する。残容量取得手段は、車両接続部5に接続された各電気自動車Eの蓄電池の残容量を取得するものである。蓄電池の残容量は、車両接続部5のプラグ51を通じてCANプロトコルにより得られるものである。
【0033】
また、制御部7は、必要容量取得手段を有しており、制御部7自体が必要容量取得手段として機能する。必要容量取得手段は、各電気自動車Eに必要な蓄電池の残容量である必要容量を取得するものである。そして、必要容量取得手段は、電気自動車Eが車両接続部5に接続された時点における蓄電池の満容量と残容量の差を、その電気自動車Eの必要容量とするものである。蓄電池の満容量は、車両接続部5のプラグ51を通じてCANプロトコルにより得られるものであり、必要容量は、満容量と残容量から制御部7(PLC71)が演算して求める。
【0034】
また、制御部7は、車両切替手段を有しており、制御部7自体が車両切替手段として機能する。車両切替手段は、車両間充電手段により他の電気自動車Eへ電力を供給する給電元の電気自動車Eまたは負荷給電手段により負荷Lへ電力を供給する給電元の電気自動車Eを、別の電気自動車Eに切り替えるものである。この場合、給電元の電気自動車Eは、別の直流変換器2に接続された電気自動車Eに切り替える。たとえば、給電元がA系直流変換器2aに接続されたA系1号車Ea1である場合に、次の給電元として、B系直流変換器2bに接続されたB系1号車Eb1に切り替え、さらに次の給電元として、A系直流変換器2aに接続されたA系2号車Ea2に切り替えるように、A系直流変換器2a、B系直流変換器2bおよび電気的インターロック装置53を制御する。そして、車両切替手段は、給電元の電気自動車Eを別の電気自動車Eに切り替える際に、当初の給電元の電気自動車Eの蓄電池の残容量が無くなる前に、当初の給電元の電気自動車Eからの給電量を漸減させるとともに新たな給電元の電気自動車Eからの給電量を漸増させて、給電元の電気自動車Eを無瞬断で別の電気自動車Eに切り替えるものである。より具体的には、図2に示すように、切り替えの際、当初の給電元の電気自動車Eからの給電量を線形的に減少させていき、新たな給電元の電気自動車Eからの給電量を線形的に増加させていくことで、2台の電気自動車Eからの給電量の和が一定(1台で給電する場合と同量)となるようにする。さらに、車両切替手段は、給電元の電気自動車Eの蓄電池の残容量が必要容量を維持するように、給電元の電気自動車Eを別の電気自動車Eに切り替えるものである。この場合、上記のとおり切り替えは瞬時に行われるものではなく、当初の給電元の電気自動車Eからの給電量を徐々に減少させる形で行われるので、切り替え開始後の容量の減少量を見越して、残容量が必要容量に達するよりも前に切り替えを開始する。
【0035】
また、制御部7は、給電停止手段を有しており、制御部7自体が給電停止手段として機能する。給電停止手段は、給電元の電気自動車Eの蓄電池の残容量が所定値(たとえば満容量の10%など)に達すると、音やタッチパネル72の表示などで警報を発報し、その電気自動車Eからの給電を停止する。蓄電池は残容量が無くなるまで完全に放電してしまうと損傷するおそれがあり、それを防止するためのものである。
【0036】
また、制御部7は、商用電源監視手段を有しており、制御部7自体が商用電源監視手段として機能する。商用電源監視手段は、制御部7のBルートアダプタ74が建物に設置されたスマートメータMと無線接続された状態において、商用電源の状態(通電、停電、復電)を監視する。あるいは、商用電源監視手段は、Bルートアダプタ74以外の経路からの情報、たとえば、人が検電して商用電源の状態を確認した結果の情報であってタッチパネル72から入力されたものに基づいて、商用電源の状態を監視することもできる。
【0037】
また、制御部7は、充放電切替手段を有しており、制御部7自体が充放電切替手段として機能する。充放電切替手段は、この充放電システムに対して商用電源Pが接続された状態において、商用電源Pの電圧を監視し、電圧が所定値以下に下がった場合に、電気自動車Eの蓄電池から負荷Lへ電力を供給するように直流変換器2を制御し(すなわち負荷給電手段として機能する)、電圧が所定値以上に上がった場合に、商用電源Pから1台または複数台の電気自動車Eの蓄電池へ電力を供給するように直流変換器2を制御する。これは、高負荷時には電圧が下がり、低負荷時には電圧が上がることに基づいて、このように制御するものである。同様に、周波数を検出することで、電力需要の高負荷・低負荷を検知することもできる。
【0038】
また、制御部7は、寿命予測手段を有しており、制御部7自体が寿命予測手段として機能する。寿命予測手段は、電気自動車Eを充電する際に、対象となる車両ごとの充電時間、充電電流の変化や充電電力量およびSOH(State Of Health:ある時点での満充電容量/初期の満充電容量)を計測・記録し、その情報に基づいて、蓄電池の経年劣化を診断して寿命予測を行うものである。診断・予測の結果は、タッチパネル72に表示される。
【0039】
また、制御部7は、絶縁性能評価手段を有しており、制御部7自体が絶縁性能評価手段として機能する。絶縁性能評価手段は、負荷Lへ電力を供給する際に、パワーコンディショナ1側に帰還する接地電流値を計測・記録し、その情報に基づいて、負荷Lの絶縁性を評価するものであり、時系列で評価することで、絶縁性能の経年劣化を診断して予防保全を行うことができる。評価・診断の結果は、タッチパネル72に表示される。
【0040】
続いて、このように構成された充放電システムを使用する際の具体的な手順について示す。この充放電システムは、車両に搭載された可搬式のものであるから、システム自体を任意の場所へ運んで利用することができる。たとえば、電気自動車Eが電欠となった場合に、この充放電システムを派遣して救済する場合を想定する。この場合、図3(a)に示すように、1つの直流変換器2(B系直流変換器2bとする)に接続された車両接続部5の1つのプラグ51を、電欠となった電気自動車E(B系1号車Eb1)に接続し、他の直流変換器2(A系直流変換器2aとする)に接続された車両接続部5の1つのプラグ51を、別の電気自動車E(A系1号車Ea1)に接続する。ただし、A系1号車Ea1は、蓄電池の残容量に余裕があるものとする。
【0041】
2台の電気自動車Eを接続したら、タッチパネル72を操作して、車両間充電手段を動作させる。すると、A系1号車Ea1からB系1号車Eb1へ電力が供給され、B系1号車Eb1が充電される。この際、残容量取得手段がA系1号車Ea1およびB系1号車Eb1の蓄電池の残容量を取得するとともに、必要容量取得手段が、給電元の電気自動車EであるA系1号車Ea1の必要容量(車両接続部5に接続された時点における蓄電池の満容量と残容量の差)を取得する。これらの情報に基づき、B系1号車Eb1の蓄電池が満充電となるか、A系1号車Ea1の蓄電池の残容量が必要容量となったら、充電が終了する(それより前に、タッチパネル72を操作して、任意の時点で充電を終了することもできる)。これにより、B系1号車Eb1は走行できるようになり、またA系1号車Ea1には少なくとも前回充電した場所まで走行するための残容量が残される。なお、何らかの理由により給電元の電気自動車EであるA系1号車Ea1の必要容量が取得できなかった場合でも、A系1号車Ea1の蓄電池の残容量が所定値まで減少したら、給電停止手段が給電を停止して、蓄電池の損傷を防ぐ。また、このように車両間で充電が行われる際には、パワーコンディショナ1は関与しない。そして、B系1号車Eb1については、充電されている間に、寿命予測手段が、充電時間、充電電流の変化や充電電力量およびSOHを計測・記録し、その情報に基づいて、蓄電池の経年劣化を診断して寿命予測を行う。その結果はタッチパネル72に表示される。
【0042】
また、このように1台の電気自動車Eの蓄電池から他の1台の電気自動車Eの蓄電池へ電力を供給するのみならず、給電元や給電先の電気自動車Eが複数台であってもよい。すなわち、1台から複数台への充電の場合、たとえば図3(b)に示すように、A系1号車Ea1からB系1号車Eb1とC系1号車Ec1に充電される。また、複数台から1台への充電の場合、たとえば図3(c)に示すように、A系1号車Ea1とB系1号車Eb1からC系1号車Ec1に充電される。さらに、複数台から複数台への充電の場合、たとえば図3(d)に示すように、A系1号車Ea1とB系1号車Eb1からC系1号車Ec1とD系1号車Ed1に充電される。
【0043】
次に、災害時において、停電している建物(避難所など)の負荷Lに電力を供給するためにこの充放電システムを派遣する場合を想定する。なお、負荷Lには、エレベータなど三相交流の電気で動作する三相動力負荷Laと、照明器具など単相交流の電気で動作する単相電灯負荷Lbがあるが、ここでは三相動力負荷Laを対象とする。また、最低限1台の電気自動車Eがあれば負荷Lに電力を供給できるが、ここでは複数台の電気自動車Eがあるものとする。この場合、図4に示すように、複数の直流変換器2(A系直流変換器2aとB系直流変換器2bとする)のそれぞれの車両接続部5の複数のプラグ51に、それぞれ電気自動車Eを接続する。A系の車両接続部5に接続された電気自動車Eを、順にA系1号車Ea1、A系2号車Ea2、・・・とし、B系の車両接続部5に接続された電気自動車Eを、順にB系1号車Eb1、B系2号車Eb2、・・・とする。ただし、接続された電気自動車Eは、何れも蓄電池の残容量に余裕があるものとする。また、絶縁変圧器3に接続された負荷接続部6のコネクタ61に、三相動力負荷Laを接続する。そして、図4では図示省略したが、図1に示すように、E系直流変換器2eには、直流電源用プラグ54を有する直流電源用ケーブル55によってガソリン車Gを接続する。また、Bルートアダプタ74により、制御部7と建物のスマートメータMを無線接続する。さらに、接続部9に対して商用電源Pを接続する。
【0044】
各部の接続が完了したら、タッチパネル72を操作して、負荷給電手段を動作させる。すると、まず図4(a)に示すように、A系の車両接続部5の電気的インターロック装置53により、A系1号車Ea1に繋がる配線のリレー接点52が閉とされ、他のリレー接点52が開とされる。そして、A系1号車Ea1から、A系直流変換器2a、パワーコンディショナ1および絶縁変圧器3を介して三相動力負荷Laへ電力が供給され、三相動力負荷Laが駆動する。この際、商用電源監視手段が、Bルートアダプタ74などを通じて商用電源の状態を監視しており、停電状態であることを条件に、電気自動車Eから電力を供給する。また、残容量取得手段がA系1号車Ea1の蓄電池の残容量を取得するとともに、必要容量取得手段が、給電元の電気自動車EであるA系1号車Ea1の必要容量(車両接続部5に接続された時点における蓄電池の満容量と残容量の差)を取得する。これらの情報に基づき、A系1号車Ea1の蓄電池の残容量が必要容量を維持するように、車両切替手段が、給電元の電気自動車Eを別の電気自動車Eに切り替える(それより前に、タッチパネル72を操作して、任意の時点で切り替えることもできる)。この際、給電元の電気自動車Eは、A系直流変換器2aに接続されたA系1号車Ea1から、図4(b)に示すように、B系直流変換器2bに接続されたB系1号車Eb1に切り替わり、B系1号車Eb1から、B系直流変換器2b、パワーコンディショナ1および絶縁変圧器3を介して三相動力負荷Laへ電力が供給され、三相動力負荷Laが駆動し続ける。そして、切り替えの際には、A系1号車Ea1からの給電量を線形的に減少させていき、B系1号車Eb1からの給電量を線形的に増加させていくことで、2台の電気自動車Eからの給電量の和が一定となるようにする。これにより、電気自動車Eの切り替え時においても途切れることなくシームレスに電力が供給される。このようにして、給電元の電気自動車Eを、A系1号車Ea1→B系1号車Eb1→A系2号車Ea2→B系2号車Eb2→・・・というふうに、使用する直流変換器2が入れ替わる形で切り替えていき、給電が継続される(もちろんC系直流変換器2cやD系直流変換器2dに電気自動車Eを接続して給電元としてもよい)。給電が終わった電気自動車Eには、少なくとも前回充電した場所まで走行するための残容量が残される。なお、何らかの理由により給電元の電気自動車Eの必要容量が取得できなかった場合でも、その電気自動車Eの蓄電池の残容量が所定値まで減少したら、給電停止手段が給電を停止して、蓄電池の損傷を防ぐ。また、負荷給電手段は、電気自動車Eの蓄電池ではなく、ガソリン車Gの補機電源用ダイナモから三相動力負荷Laへ給電させることもできる。さらに、商用電源Pが復電した場合には、負荷給電手段による三相動力負荷Laへの給電が停止し、充放電切替手段が、商用電源Pから電気自動車Eの蓄電池へ電力を供給するとともに、電源部8にも電力を供給して充電器81によりバックアップ用蓄電池84を充電する。そして、負荷Lについては、電力を供給される際に、絶縁性能評価手段が、パワーコンディショナ1側に帰還する接地電流値を計測・記録し、その情報に基づいて、絶縁性を評価するものであり、時系列で評価することで、絶縁性能の経年劣化を診断して予防保全を行うことができる。その結果は、タッチパネル72に表示される。
【0045】
このような本発明の充放電システムによれば、パワーコンディショナ1、直流変換器2、絶縁変圧器3および電灯変圧器4を備える簡易な構成のシステムにより、負荷給電手段により電気自動車Eの蓄電池から種々の負荷Lへ電力を供給するのみならず、車両間充電手段により電気自動車Eの蓄電池から他の電気自動車Eの蓄電池へ電力を供給することも可能である。そして、絶縁変圧器3と電灯変圧器4を備えることにより、三相動力負荷Laと単相電灯負荷Lbのどちらにも電力を供給できる。また、車両切替手段により給電元の電気自動車Eを切り替えてより大きな容量の電力を供給することができる。そして、残容量取得手段が、電気自動車Eの蓄電池の残容量を取得するものであって、車両切替手段が、当初の給電元の電気自動車Eからの給電量を漸減させるとともに新たな給電元の電気自動車Eからの給電量を漸増させるものであるから、給電元の電気自動車Eの切り替え時においても、途切れることなくシームレスに電力を供給可能であり、給電先に対して影響を及ぼすことがない。また、必要容量取得手段が、電気自動車Eに必要な蓄電池の残容量である必要容量を取得するものであって、車両切替手段が、給電元の電気自動車Eの蓄電池の残容量が必要容量を維持するように、給電元の電気自動車Eを別の電気自動車Eに切り替えるものであるから、給電元の電気自動車Eの蓄電池の残容量が無くなり走行できなくなることを避けられる。さらに、必要容量取得手段が、電気自動車Eが車両接続部5に接続された時点における蓄電池の満容量と残容量の差をその電気自動車Eの必要容量とするものであるから、容易な方法で、少なくともその電気自動車Eが前回充電した場所まで走行するための残容量を確保することができる。また、絶縁変圧器3の容量がパワーコンディショナ1の容量以下のものであるから、給電先の三相動力負荷Laの起動時の突入電流によりパワーコンディショナ1が過電流・過負荷となって停止することを防ぐことができる。
【0046】
また、給電停止手段が、給電元の電気自動車Eの蓄電池の残容量が所定値に達すると警報を発報して給電を停止するものであるから、残容量が無くなるまで完全に放電して蓄電池が損傷することを防止できる。さらに、商用電源監視手段が、建物のスマートメータMを通じて商用電源の状態を監視するものであるから、この充放電システムへの過電流を防止することができる。また、充放電切替手段により、デマンド計を用いることなく、高負荷時にのみ、電気自動車Eによる補助を行うことができる。また、この充放電システムを利用することによって、付随的に、寿命予測手段による電気自動車Eの蓄電池の寿命予測や、絶縁性能評価手段による負荷Lの絶縁性の評価の結果が得られる。この結果が、その後電気自動車Eや負荷Lを利用する際に役立つものであるとともに、このような結果が得られることが、この充放電システムを利用することの動機付けとなるものである。
【0047】
また、直流変換器2にガソリン車Gなどの直流電源を接続することも可能であるから、ガソリン車Gの補機電源用ダイナモなどから得られる電力を負荷Lへ給電することもできる。さらに、この充放電システムによれば、電気自動車Eの蓄電池から商用電源の系統への給電、すなわち低圧側から高圧側への逆充電を行うこともできる。また、電気自動車Eを接続して給電を受けられるということは、すなわち、電気自動車Eによって電力を輸送できるということである。これにより、電気自動車Eが走行可能である限り、送配電網の無い無電化地域に設置された水力発電などの独立電源からも、電力の供給を受けることができる。
【0048】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨の範囲内で適宜変更できる。たとえば、ガソリン車などの直流電源を接続するための専用の直流変換器を有するものであってもよい。また、電灯変圧器は、三相交流の電気から単相交流の電気を取り出すことができるものであればよく、たとえばスコット結線変圧器などであってもよい。さらに、直流変換器には、太陽光発電装置や風力発電装置などの再生可能エネルギー発電装置を接続することもできる。また、上記の実施形態は、システム自体が車両に載せられた可搬式のものであるが、システムの電源として、その車両のバッテリを利用するものであってもよい。さらに、制御部のPLCはプログラムにより自在に動作させることが可能なものであり、上記の実施形態の寿命予測や絶縁性能評価だけでなく、種々の計測・入力された情報などに基づいて、多様なサービスを提供することが可能である。
【0049】
なお、この充放電システムは、災害時のみならず、種々の場面で用いることができる。たとえば、商用電源の系統と連携しないオフグリッドでの使用例として、イベント会場や工事現場などで一時的に電力を供給する場合などが挙げられる。
【0050】
また、商用電源の系統と連携したオングリッドでの使用例として、商用電源から電力の供給を受けつつ、電力需要が増大したときなどに車両の蓄電池などから補助的に電力の供給を受けることで、基準のデマンド値を超過しないように管理する場合などが挙げられる。
【符号の説明】
【0051】
1 パワーコンディショナ
2 直流変換器
3 絶縁変圧器
4 電灯変圧器
5 車両接続部
6 負荷接続部
7 制御部

図1
図2
図3
図4