(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007256
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】ガード固定装置
(51)【国際特許分類】
E01B 5/18 20060101AFI20220105BHJP
F16B 5/02 20060101ALI20220105BHJP
F16B 35/04 20060101ALI20220105BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
E01B5/18
F16B5/02 B
F16B35/04 J
F16B43/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110104
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591036893
【氏名又は名称】鉄道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104064
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 岳人
(72)【発明者】
【氏名】高尾 賢一
(72)【発明者】
【氏名】正木 亮
(72)【発明者】
【氏名】山室 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
【テーマコード(参考)】
3J001
3J034
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001GA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA08
3J001JA10
3J001KA14
3J001KB05
3J034AA07
3J034BA03
3J034BB05
3J034BB07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボルト締結作業を省略し簡単に固定することができるとともに、固定状態を容易に確認することができるガード固定装置を提供する。
【解決手段】ガード固定装置12は、レールRに沿って車輪Wを誘導するガードレール4fを、このガードレール4fを支える支材10に着脱自在に固定する装置である。くさび部材は、ガードレール4fに引っ掛ける引っ掛け部材13の緩みを防止するために、この引っ掛け部材13と支材10との間に差し込まれる。線ばね20は、くさび部材の抜け出しを防止するために、このくさび部材に押付力を作用させる。押え部材18は、くさび部材を押さえ付ける。緩み止め部19は、くさび部材側の歯と押え部材18側の歯とを噛み合わせることによって、このくさび部材の緩みを防止する。線ばね20は、くさび部材側の歯と押え部材18側の歯とが密着するように、この押え部材18に押付力を作用させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールに沿って車輪を誘導するガードを、このガードを支える支材に着脱自在に固定するガード固定装置であって、
前記ガードに引っ掛ける引っ掛け部材と、
前記引っ掛け部材と前記支材との間に差し込まれるくさび部材と、
を備えるガード固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガード固定装置において、
前記くさび部材を押さえ付ける押え部材と、
前記押え部材に押付力を作用させる線ばねと、
前記くさび部材側の歯と前記押え部材側の歯とを噛み合わせることによって、このくさび部材の緩みを防止する緩み止め部とを備え、
前記線ばねは、前記くさび部材側の歯と前記押え部材側の歯とが密着するように、この押え部材に押付力を作用させること、
を特徴とするガード固定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガード固定装置において、
前記引っ掛け部材は、
前記線ばねを取り付けるばね受部材と、
前記ばね受部材とねじ結合した状態で、前記ガードを貫通するTボルトと、
前記Tボルトのボルト頭部と前記ガードとの間に挟み込まれる座金とを備え、
前記くさび部材は、前記支材と前記ばね受部材との間の隙間に差し込まれること、
を特徴とするガード固定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のガード固定装置において、
前記座金は、
前記ガードの挿入孔に嵌合する嵌合凸部と、
前記Tボルトのボルト頭部を嵌合させる嵌合凹部とを備えること、
を特徴とするガード固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レールに沿って車輪を誘導するガードを、このガードを支える支材に着脱自在に固定するガード固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の分岐器では、主レールとの間に所定の間隔をあけて、走行する車輪を誘導するガードレールが敷設されている。従来のガードレール固定装置は、ガードレールの腹部を貫通する貫通孔と、このガードレールを支える支材を貫通する貫通孔とに挿入される締結ボルトと、この締結ボルトの雄ねじ部に装着される締結ナットなどを備えている(例えば、特許文献1参照)。この従来のガードレール固定装置では、ガードレールの貫通孔と支材の貫通孔とに締結ボルトを挿入し、締結ボルトに締結ナットを締め付けることによって、ガードレールを支材に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガードレール固定装置では、ガードレール及び支材に横方向から締結ボルトが貫通する構造であり、主レールとガードレールとの間の隙間で締結ボルトに締結ナットを締結している。このため、従来のガードレール固定装置では、締結ボルトに締結ナットを締結するときに、主レールとガードレールとの間の隙間から作業員が工具を挿入して作業する必要があり、組立作業に手間がかかる問題点がある。また、従来のガードレール固定装置では、主レールとガードレールとの間の隙間から締結ボルトや締結ナットの状態を作業員が目視で容易に確認できない問題点がある。さらに、従来のガードレール固定装置では、線路上を走行する検測車の撮影装置によって撮影しながら線路の状態を検査するときに、締結ナットの緩みや締結ボルトの折損などを簡単に検出できない問題点がある。
【0005】
この発明の課題は、ボルト締結作業を省略し簡単に固定することができるとともに、固定状態を容易に確認することができるガード固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、以下に記載するような解決手段により、前記課題を解決する。
なお、この発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、この実施形態に限定するものではない。
請求項1の発明は、
図3~
図6に示すように、レール(R)に沿って車輪(W)を誘導するガード(4f,4g)を、このガードを支える支材(10)に着脱自在に固定するガード固定装置であって、前記ガードに引っ掛ける引っ掛け部材(13)と、前記引っ掛け部材と前記支材との間に差し込まれるくさび部材(17)とを備えるガード固定装置(12)である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のガード固定装置において、
図3、
図6、
図15及び
図16に示すように、前記くさび部材を押さえ付ける押え部材(18)と、 前記押え部材に押付力を作用させる線ばね(20)と、前記くさび部材側の歯(19a)と前記押え部材側の歯(19b)とを噛み合わせることによって、このくさび部材の緩みを防止する緩み止め部(19)とを備え、前記線ばねは、前記くさび部材側の歯と前記押え部材側の歯とが密着するように、この押え部材に押付力を作用させることを特徴とするガード固定装置である。
【0008】
請求項3の発明は、請求項2に記載のガード固定装置において、
図4、
図5、
図10及び
図11に示すように、前記引っ掛け部材は、前記線ばねを取り付けるばね受部材(15)と、前記ばね受部材とねじ結合した状態で、前記ガードを貫通するTボルト(14)と、前記Tボルトのボルト頭部(14a)と前記ガードとの間に挟み込まれる座金(16)とを備え、前記くさび部材は、前記支材と前記ばね受部材との間の隙間に差し込まれることを特徴とするガード固定装置である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のガード固定装置において、
図4、
図5、
図11~
図13、
図20及び
図21に示すように、前記座金は、前記ガードの挿入孔(4h)に嵌合する嵌合凸部(16b)と、前記Tボルトのボルト頭部を嵌合させる嵌合凹部(16c)とを備えることを特徴とするガード固定装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明によると、ボルト締結作業を省略し簡単に固定することができるとともに、固定状態を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置を備える分岐器が定位側に転換したときの状態を模式的に示す平面図である。
【
図2】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置を備える分岐器が反位側に転換したときの状態を模式的に示す平面図である。
【
図3】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置を備える床板を概略的に示す平面図である。
【
図4】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置を備える床板の一部を破断して示す正面図である。
【
図5】
図3のV-V線で切断した状態を示す断面図である。
【
図6】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置を備える床板の右側面図である。
【
図7】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置を備える床板の支材の右側面図である。
【
図8】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置によって固定されるガードレールの側面図である。
【
図9】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置を備える床板で使用される調整座金の外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のIX-IXB線で切断した状態を示す断面図である。
【
図10】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置の引っ掛け部材の外観図であり、(A)は一部を破断して示す正面図であり、(B)は平面図であり、(C)は右側面図であり、(D)は左側面図である。
【
図11】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置の座金の外観図であり、(A)は正面図であり、(B)は平面図であり、(C)は右側面図であり、(D)は背面図であり、(E)は底面図であり、(F)は(D)のXI-XIF線で切断した状態を示す断面図である。
【
図12】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置の座金の挿入孔にボルト頭部を挿入した状態を示す模式図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のXII-XIIB線で切断した状態を示す部分断面図であり、(C)は(A)のXII-XIIC線で切断した状態を示す部分断面図である。
【
図13】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置の座金を回転させてガードレールの挿入孔に嵌合させ座金にボルト頭部を嵌合させた状態を示す模式図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のXIII-XIIIB線で切断した状態を示す部分断面図であり、(C)は(A)のXIII-XIIIC線で切断した状態を示す部分断面図である。
【
図14】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置の引っ掛け部材と支材との間にくさび部材を差し込んだ状態を拡大して示す正面図である。
【
図15】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置のくさび部材の外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は正面図であり、(C)は左側面図である。
【
図16】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置の押え部材の外観図であり、(A)は平面図であり、(B)は正面図であり、(C)は底面図であり、(D)は左側面図であり、(E)はくさび部材に装着した状態を示す断面図である。
【
図17】この発明の第1実施形態に係るガード固定装置の組立方法を説明するための模式図であり、(A)は引っ掛け部材を組み立てる組立工程を示す模式図であり、(B)は引っ掛け部材を支材に挿入する挿入工程を示す模式図であり、(C)は座金をガードレールに嵌合させ引っ掛け部材を座金に嵌合させる嵌合工程を示す模式図であり、(D)はくさび部材を差し込む差し込み工程を示す模式図であり、(E)は押え座金をくさび部材に装着する装着工程を示す模式図であり、(F)は押え座金を線ばねによって締結する締結工程を示す模式図である。
【
図18】この発明の第2実施形態に係るガード固定装置を備える床板の一部を破断して示す正面図である。
【
図19】この発明の第2実施形態に係るガード固定装置の引っ掛け部材と支材との間にくさび部材を差し込んだ状態を拡大して示す正面図である。
【
図20】この発明の第2実施形態に係るガード固定装置の座金の外観図であり、(A)は正面図であり、(B)は平面図であり、(C)は右側面図であり、(D)は背面図であり、(E)は底面図であり、(F)は(D)のXX-XXF線で切断した状態を示す断面図である。
【
図21】この発明の第2実施形態に係るガード固定装置の座金の挿入孔にボルト頭部を挿入した状態を示す模式図であり、(A)は正面図であり、(B)は(A)のXXI-XXIB線で切断した状態を示す部分断面図であり、(C)は(A)のXXI-XXIC線で切断した状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、この発明の第1実施形態について詳しく説明する。
図1、
図2、
図4及び
図5に示す車輪Wは、レールRと回転接触する部材である。車輪Wは、レール頭部R
1の頭頂面R
11と接触して摩擦抵抗を受ける踏面W
1と、脱輪を防止するために車輪Wの外周部に連続して形成されたフランジ面W
2と、車輪Wの踏面W
1側とは反対側のフランジ背面(車輪背面)W
3などを備えている。
【0013】
図1~
図6に示すレールRは、車輪Wを案内する部材である。レールRは、車輪Wを支持し案内して鉄道車両を走行させる。レールRは、
図3~
図5に示すように、車輪Wと接触するレール頭部R
1と、レールRを支持する支持体(支承体)に取り付けられるレール底部(フランジ部)R
2と、レール頭部R
1とレール底部R
2とを繋ぐレール腹部(ウェブ部)R
3などを備えている。レール頭部R
1は、車輪Wと接触する部分であり、車輪Wを直接支持する頭頂面(頭部上面)R
11と、レール頭部R
1の左右の側面部分を構成し頭頂面R
11と連続する頭部側面R
12などを備えている。レール底部R
2は、床板8上に取り付けられる部分である。レール底部R
2は、線ばね7によって押さえ付けられる底部上面R
21と、床板8上に設置される底部下面R
22と、レール底部R
2の左右の側面部分を構成する底部側面R
23などを備えている。レール腹部R
3は、レール頭部R
1とレール底部R
2とを繋ぐ部分であり、レール頭部R
1に作用する輪重及び横圧をレール底部R
2に伝達する。
【0014】
図1及び
図2に示す分岐器1は、一つの軌道を二つ以上の軌道に分ける装置である。
図1に示す分岐器1は、基準線L
Mが直線であり分岐線(他の一線)L
Bが曲線である片開き分岐器である。分岐器1は、ポイント部2と、リード部3と,クロッシング部4などを備えている。
【0015】
ポイント部2は、分岐器1を構成する部分のうち軌道を分ける部分である。ポイント部2は、先端部を尖らせた転換可能な可動するレールであるトングレール2a,2bと、このトングレール2a,2bの先端部が密着及び分離する基本レール2c,2dなどを備えている。ポイント部2は、
図1に示すように、車輪WがA方向に転動するときには、トングレール2a,2bがC
1方向に転換して、トングレール2aが基本レール2cと密着し、トングレール2bが基本レール2dから離間している。一方、ポイント部2は、
図2に示すように、車輪WがB方向に転動するときには、トングレール2a,2bがC
1方向とは反対方向のC
2方向に転換して、トングレール2aが基本レール2cから離間し、トングレール2bが基本レール2dと密着している。ポイント部2は、分岐器1を転換するための転換力を発生する電気転てつ機などの転換装置と連動するように、この転換装置につながれている転てつ棒にトングレール2a,2bが連結されている。
図1及び
図2に示すリード部3は、分岐器1を構成する部分のうちポイント部2とクロッシング部4とを連絡する部分である。リード部3は、トングレール2a,2bの後端とクロッシング部4の前端とを繋ぐリードレール3a,3bなどを備えている。
【0016】
クロッシング部4は、分岐器1を構成する部分のうち軌道が交わる部分である。クロッシング部4は、基本レール2c,2dと繋がる主レール4a,4bと、クロッシング前端では軌間線を構成しクロッシング後端では車輪Wのフランジ背面W3を誘導するウィングレール4c,4dと、クロッシング前端を構成し先端の頭部が尖ったノーズレール4eと、ガードレール4f,4gなどを備えている。
【0017】
ガードレール4f,4gは、レールRに沿って車輪Wを誘導するガードである。ガードレール4f,4gは、車輪Wの脱線を防止するとともにレールRの摩耗を防止するために、フランジ背面W
3と接触して車輪Wを誘導する。ガードレール4fは、
図2に示すB方向に転動する車輪Wをガイドするように分岐器1の分岐線L
B側に配置されており、ガードレール4gは
図1に示すA方向に転動する車輪Wをガイドするように分岐器1の基準線L
M側に配置されている。ガードレール4fは、
図2に示すB方向に左右一対の車輪Wが分岐線L
Bを通過するときに、進行方向左側の車輪Wのフランジ背面W
3と接触することによって、左右一対の車輪Wが基準線L
Mに異線進入するのを防止する。ガードレール4gは、
図1に示すA方向に左右一対の車輪Wが基準線L
Mを通過するときに、進行方向右側の車輪Wのフランジ背面W
3と接触することによって、左右一対の車輪Wが分岐線L
Bに異線進入するのを防止する。
【0018】
ガードレール4f,4gは、
図1及び
図2に示すように、主レール4a,4bに沿って所定の隙間Δ
1をあけて対向して配置されている。ここで、隙間Δ
1は、主レール4a,4bとガードレール4f,4gとの間を車輪Wのフランジが通過するように形成された間隙部(フランジウェー)におけるレール頭部R
1間の間隔(フランジウェー幅)である。ガードレール4f,4gは、いずれも同一構造であり、以下では一方のガードレール4fについて説明し、他方のガードレール4gについては詳細な説明を省略する。
【0019】
ガードレール4fは、
図3~
図6に示すように、主レール4a側のレールRと同様に、レール頭部R
1と、レール底部R
2と、レール腹部R
3などを備えている。ガードレール4fは、
図4~
図6に示すように、主レール4a側のレール頭部R
1よりもガードレール4f側のレール頭部R
1が僅かに高くなるように敷設されている。ガードレール4fは、主レール4aと同種のレールRを切削加工して製作されている。ガードレール4fは、
図4及び
図5に示すように、主レール4a側のレールRの頭部側面R
12とは異なり、車輪Wのフランジ背面W
3と接触する側のレール頭部R
1の頭部側面R
12と、レール頭部R
1の頭頂面R
11とが平坦面に切削加工されている。ガードレール4fは、主レール4aと対向する側とは反対側のレール頭部R
1の頭部側面R
12及びレール底部R
2の底部側面R
23が調整座金11と密着するように平坦面に切削加工されている。
図1~
図6に示すガードレール4fは、主レール4aとボルトによって固定せずに、
図3~
図5に示すように主レール4aとは独立して床板8に取り付けることによって、高速走行が可能なH形ガードであり、新幹線又は在来線の60kgレール及び高速用分岐器などに使用される。
【0020】
ガードレール4fは、
図8に示すように、挿入孔4hを備えている。挿入孔4hは、
図10に示す引っ掛け部材13のTボルト14を挿入する部分である。挿入孔4hは、
図8に示すように、ガードレール4fのレール腹部R
3を貫通する貫通孔であり、ガードレール4fの長さ方向に長い長孔に形成されている。
【0021】
図4~
図6に示すまくらぎ5は、分岐器1を支持する支持体(支承体)である。まくらぎ5は、
図1及び
図2に示すレールRを固定し軌間を正確に保持するとともに、レールRから伝達される列車荷重を広く道床に分散させるために、レールRと道床との間に設置される。
図4~
図6に示すまくらぎ5は、例えば、ガラス長繊維によって強化された発泡ウレタン樹脂を成形した合成まくらぎ、又は天然の樹木から製造され防腐処理が施された木まくらぎなどであり、分岐器1に使用されるのは分岐まくらぎである。まくらぎ5は、
図1及び
図2に示すレールRの長さ方向に所定の間隔をあけて配置されており、レールRを離散的に支持している。
【0022】
図3~
図5に示す締結部材6は、床板8をまくらぎ5に締結する部材である。締結部材6は、例えば、床板8をまくらぎ5に締結する止めくぎである。締結部材6は、
図3~
図5に示すように、床板8の上面を押さえ付ける平面形状が円形の頭部6aと、
図4に示すように水平面で切断したときの断面形状が円形であり、床板8の締結孔8bに挿入されてまくらぎ5に打ち込まれるくぎ部6bなどを備えている。
【0023】
図3~
図5に示す線ばね7は、主レール4aを床板8に締結する部材である。線ばね7は、床板8のばね受台9とともに線ばね式締結装置(無螺定式弾性締結装置)を構成する。線ばね7は、ばね力によって主レール4aを床板8に締結するばねクリップとして機能する。線ばね7は、ばね受台9の脚部9bに挿入されるばね後端部(クリップ後端)7aと、線ばね7を弾性変形させてばね受台9の座面9cに載り上げるばね座部(クリップ座部)7bと、主レール4aの底部上面R
21を押さえ付けばね先端部(クリップ先端)7cなどを備えている。線ばね7は、ばね後端部7aを脚部9bに押し込み、座面9cにばね座部7bを載り上げさせて座面9cを支点として線ばね7を弾性変形させ、座面9cを支点として発生するばね力を、主レール4aの底部上面R
21に押付力(締結力)としてばね先端部7cが作用させる。
【0024】
図3~
図7に示す床板8は、主レール4a及びガードレール4fを支持する部材である。床板8は、
図4及び
図5に示すように、主レール4a及びガードレール4fとまくらぎ5との間に挿入されており、これらの間に挟み込まれた状態でまくらぎ5に締結される締結用部材である。床板8は、まくらぎ5の長さ方向に並べて配置されており、主レール4aの底部下面R
22及びガードレール4fの底部下面R
22を固定し支持する。床板8は、例えば、一般構造用圧延鋼材などの金属をプレス加工又は切断加工して平面形状が四角形に形成されている。床板8は、
図3~
図5に示す座面8aと、
図4に示す締結孔8bと、
図3~
図5に示すばね受台9と、
図3~
図7に示す支材10などを備えている。
【0025】
図3~
図6に示す座面8aは、主レール4aの底部下面R
22を搭載する部分である。座面8aは、
図4~
図6に示すように、座面10aよりも僅かに低く平坦面に形成されている。
図4に示す締結孔8bは、床板8を貫通する貫通孔である。締結孔8bは、締結部材6を挿入するために、床板8に形成された円形状の貫通孔である。締結孔8bは、
図3に示す床板8の長さ方向の端部の2箇所の角部に形成されている。
【0026】
図3~
図5に示すばね受台9は、線ばね7を取り付ける部分である。ばね受台9は、床板8の座面8aに溶接され固定されている。ばね受台9は、
図4及び
図5に示すように、座面8aに取り付けられるショルダ部9aと、ショルダ部9aの上面に形成されており線ばね7のばね後端部7aを挿入する逆U字状の脚部(センターレッグ)9bと、ショルダ部9aの上面に脚部9bと平行に形成されておりばね座部7bが載り上がる座面(クリップ座面)9cなどを備えている。
【0027】
図3~
図7に示す支材10は、ガードレール4fを支える部材である。支材10は、
図3に示すように床板8に対して水平に配置された四角形の板材10Aと、
図4及び
図5に示すように板材10Aに対して垂直に配置された四角形の板材10Bと、板材10A,10Bに対して垂直に配置されて板材10Aと板材10Bとを繋ぎ補強する三角形のリブ材10Cとを備えている。支材10は、板材10A,10B及びリブ材10Cを溶接してブラケット状に形成されており、床板8の座面8aに溶接され固定されている。支材10は、ガードレール4fを受ける受け台として機能し、ガードレール4fを所定の位置に位置決めするとともに、ガードレール4fが転倒するのを防止する。支材10は、
図4~
図7に示す座面10aと、
図4及び
図5に示す段差部(ショルダ部)10bと、接合面10cと、
図4、
図5及び
図7に示す挿入孔10dと、嵌合部10eと、
図3~
図5及び
図7に示す接合部10fなどを備えている。
【0028】
図4~
図7に示す座面10aは、ガードレール4fの底部下面R
22を搭載する部分である。座面10aは、
図4~
図6に示すように、主レール4aのレール頭部R
1よりもガードレール4fのレール頭部R
1が高くなるように、座面8aよりも僅かに高く平坦面に形成されている。
図4及び
図5に示す段差部10bは、主レール4aの底部側面R
23と接合する部分である。段差部10bは、ばね受台9との間で主レール4aを位置決めするために、ばね受台9と間隔をあけて対向するように、支材10の端部に垂直な平坦面に形成されている。接合面10cは、調整座金11と接合する部分である。接合面10cは、ガードレール4fと対向する支材10の前部に形成された垂直な平坦面である。
図4、
図5及び
図7に示す挿入孔10dは、引っ掛け部材13のTボルト14を挿入する部分である。挿入孔10dは、支材10を貫通する貫通孔であり、
図7に示すようにガードレール4f側の挿入孔4hと同様に長孔に形成されている。
【0029】
図4、
図5及び
図7に示す嵌合部10eは、引っ掛け部材13のばね受部材15が嵌合する部分である。嵌合部10eは、支材10のリブ材10Cの傾斜面の一部を切り欠くように凹状に形成されている。嵌合部10eは、
図6及び
図7に示すように、間隔をあけて対向する垂直で平坦な壁面10gと、
図4~
図7に示すように壁面10gに対して直交する平坦な底面10hと、
図7に示すように壁面10g及び底面10hに対して直交し挿入孔10dが開口する平坦な壁面10iなどを備えている。嵌合部10eは、
図4及び
図5に示すように、線ばね20が取り付けられた状態で、ばね受部材15がこの嵌合部10eに装着されたときに、線ばね20が建築限界L
Sを侵すことがないような位置に形成されている。ここで、建築限界L
Sとは、鉄道車両を安全に運行するために、車両にいかなるものも触れず、施設のいかなる部分も侵すことが許されないものとして、軌道上に確保された空間の境界線である。
【0030】
図3~
図5及び
図7に示す接合部10fは、くさび部材17と接合する部分である。接合部10fは、支材10の背部の傾斜面の一部を切り欠くように嵌合部10eの上側に形成されている。接合部10fは、
図3に示すように、ガードレール4fの長さ方向に対して傾斜する平坦な傾斜面10jと、
図4~
図7に示すようにこの傾斜面10jに対して直交する平坦な底面10kなどを備えている。
【0031】
図3~
図5及び
図9に示す調整座金11は、主レール4aとガードレール4fとの間の隙間Δ
1を調整する座金である。調整座金11は、例えば、一般構造用圧延鋼材などの金属板を長方形に加工して形成された板状部材である。調整座金11は、厚さの異なる複数種類が用意されており、
図3~
図5に示す主レール4aとガードレール4fとの間の隙間Δ
1を調整するときに、ガードレール4fの頭部側面R
12及び底部側面R
23と支材10の接合面10cとの間に挟み込まれる。調整座金11は、任意の厚さのものを単数枚又は複数枚重ねて使用することによって、主レール4aとガードレール4fとの間の隙間Δ
1を最適な幅に調整する。調整座金11は、
図4、
図5及び
図9に示すように、挿入孔11aを備えている。挿入孔11aは、引っ掛け部材13のTボルト14を挿入する部分である。挿入孔11aは、調整座金11を貫通する貫通孔であり、
図8に示すガードレール4f側の挿入孔4h及び
図7に示す支材10側の挿入孔10dと同様に、長孔に形成されている。
【0032】
図3~
図6に示すガード固定装置12は、ガードレール4fを支材10に着脱自在に固定する装置である。ガード固定装置12は、従来のガード固定装置のような締結ボルト及び締結ナットによる締結構造を省略したボルトレス構造の固定装置である。ガード固定装置12は、
図4、
図5及び
図10に示す引っ掛け部材13と、
図4、
図5及び
図11に示す座金16と、
図3~
図6、
図14及び
図15に示すくさび部材17と、
図3~
図6、
図14及び
図16に示す押え部材18と、
図14及び
図16(E)に示す緩み止め部19と、
図3~
図6及び
図14に示す線ばね20などを備えている。ガード固定装置12は、線ばね20による固定構造を採用することによって、従来のガード固定装置の締結構造のような締結ボルトの脱落や締結ナットの緩みを防止するとともに固定状態の視認性を向上させる。
【0033】
図4、
図5及び
図10に示す引っ掛け部材13は、ガードレール4fに引っ掛ける部材である。引っ掛け部材13は、
図4及び
図5に示すように、この引っ掛け部材13の先端部が主レール4aと対向する側のガードレール4fの表面に引っ掛かり、この引っ掛け部材13の後端部が支材10の嵌合部10eに嵌合する。引っ掛け部材13は、水平方向に伸びた軸状部材であり、支材10を貫通して支材10に着脱自在に装着されている。引っ掛け部材13は、
図4、
図5及び
図10に示すTボルト14と、
図4、
図5、
図10及び
図14に示すばね受部材15と、
図4、
図5及び
図11~
図13に示す座金16などを備えている。
【0034】
図4、
図5及び
図10に示すTボルト14は、ばね受部材15とねじ結合した状態で、ガードレール4fを貫通する部材である。Tボルト14は、
図4及び
図5に示すように、ガードレール4fの挿入孔4h、支材10の挿入孔10d、調整座金11の挿入孔11a及び座金16の挿入孔16aに挿入可能なように、これらの挿入孔4h,10d,11a,16aの長孔よりも小さく形成されている。Tボルト14は、挿入孔4h,10d,11a,16aを貫通した状態で、ガードレール4fに着脱自在に装着される。Tボルト14は、例えば、機械構造用炭素鋼鋼材などの金属を所定の形状に加工して形成されている。Tボルト14は、
図4、
図5及び
図10に示すように、このTボルト14の先端部に形成されたT字状のボルト頭部14aと、
図5及び
図10に示すようにこのTボルト14の後端部に形成された雄ねじ部14bなどを備えている。
【0035】
図4、
図5、
図10及び
図14に示すばね受部材15は、線ばね20を取り付ける部分である。ばね受部材15は、
図4、
図5及び
図14に示すようにTボルト14とねじ結合しており、支材10の嵌合部10eに着脱自在に装着される。ばね受部材15は、例えば、一般構造用圧延鋼材などの金属を所定の形状に加工して形成されている。ばね受部材15は、
図6、
図10及び
図14に示す上面15aと、
図3~
図6、
図10及び
図14に示す嵌合部15bと、
図10及び
図14に示す雌ねじ部15cと、
図3~
図6、
図10及び
図14に示す脚部(センターレッグ)15dと、
図3~
図6、
図10(A)~(C)及び
図14に示す座面(クリップ座面)15eと、
図10(A)(B)(D)及び
図14に示す装着面15fなどを備えている。
【0036】
図6、
図10及び
図14に示す上面15aは、くさび部材17と接合する部分である。上面15aは、
図6及び
図14に示すように、ばね受部材15が支材10側の嵌合部10eに装着されたときに、
図14に示すようにこの上面15aが支材10側の接合部10fの底面10kと同じ高さになるように形成されている。上面15aは、底面10kとともにくさび部材17の底面17dを支持する。
【0037】
図3~
図6、
図10及び
図14に示す嵌合部15bは、支材10側の嵌合部10eと嵌合する部分である。嵌合部15bは、
図10に示すように、外観が略直方体のブロックである。嵌合部15bは、
図4~
図6、
図10(A)(C)(D)及び
図14に示すように、支材10の底面10hと接合する底面15gと、
図6及び
図10に示すように支材10の壁面10gと接合する側面15hなどを備えている。
図10及び
図14に示す雌ねじ部15cは、Tボルト14の雄ねじ部14bと噛み合う部分である。雌ねじ部15cは、
図10(A)(B)(D)及び
図14に示す装着面15fに所定の深さで形成されており、雄ねじ部14bとの噛み合い量を調整することによって引っ掛け部材13の長さを変更させる。
【0038】
図3~
図6、
図10及び
図14に示す脚部15dは、線ばね20のばね後端部20aを挿入する部分である。脚部15dは、
図4、
図10(A)及び
図14に示すように、外観が逆U字状に形成されており、上面15aに溶接され固定されている。
図3~
図6、
図10(A)~(C)及び
図14に示す座面15eは、線ばね20のばね座部20bが載り上がる部分である。座面15eは、
図10(A)(C)及び
図14に示すように、上面15aよりもわずかに高くなるように,この上面15aと平行に形成された平坦面である。
図10(A)(B)(D)及び
図14に示す装着面15fは、Tボルト14を装着する部分である。装着面15fは、
図4及び
図5に示す支材10の挿入孔10dに引っ掛け部材13を挿入したときに、この装着面15fと支材10の壁面10iとを接触させて引っ掛け部材13を停止させるストッパとして機能する。
【0039】
図4、
図5及び
図11に示す座金16は、Tボルト14のボルト頭部14aとガードレール4fとの間に挟み込まれる部材である。座金16は、
図4及び
図5に示すように、ガードレール4fの挿入孔4hからボルト頭部14aが抜け出すのを防止する抜け止め部として機能する。座金16は、例えば、一般構造用圧延鋼材などの金属を四角形に加工して形成されている。座金16は、
図4、
図5及び
図11に示す挿入孔16aと、
図11(B)~(F)に示す嵌合凸部16bと、
図4、
図5及び
図11(A)(C)(D)(F)に示す嵌合凹部16cと、
図4、
図5及び
図11(B)~(F)に示す接合部16dなどを備えている。
【0040】
図4、
図5及び
図11に示す挿入孔16aは、引っ掛け部材13のTボルト14を挿入する部分である。挿入孔16aは、座金16を貫通する貫通孔であり、
図11(A)(D)に示すようにガードレール4f側の挿入孔4h、支材10側の挿入孔10d及び調整座金11側の挿入孔11aと同様に長孔に形成されている。
【0041】
図11(B)~(F)に示す嵌合凸部16bは、ガードレール4fの挿入孔4hと嵌合する部分である。嵌合凸部16bは、
図11(D)に示すように、挿入孔16aの両側に形成された半円状の突起部であり、
図13(C)に示すようにガードレール4fの挿入孔4hの両端部の内周面と嵌合する。嵌合凸部16bは、
図12に示すように、ボルト頭部14aを挿入孔16aに挿入した状態でD方向に座金16を回転させて、
図13に示すようにガードレール4fの挿入孔4hに嵌合する。嵌合凸部16bは、
図12に示すように、挿入孔16aにボルト頭部14aを挿入した後に、引っ掛け部材13の中心線回りに座金16をD方向に90°回転させて、
図13に示すようにガードレール4fの挿入孔4hに嵌め込まれる。
【0042】
図4、
図5及び
図11(A)(C)(D)(F)に示す嵌合凹部16cは、Tボルト14のボルト頭部14aが嵌合する部分である。嵌合凹部16cは、
図11(A)(D)に示すように、嵌合凸部16bが形成されている側とは反対側の座金16の表面に、挿入孔16aの中心線に対して直交する方向に形成された溝部である。嵌合凹部16cは、
図13に示すように、ボルト頭部14aが装着される座面として機能する。嵌合凹部16cは、
図13(C)に示すように、ガードレール4fの挿入孔4hに嵌合凸部16bを嵌合させた状態で、ボルト頭部14aを嵌合させる。嵌合凹部16cは、
図11(A)に示すように、ボルト頭部14aの幅よりも僅かに幅が広くなるように、座金16の一方の縁部から他方の縁部に形成されている。嵌合凹部16cは、
図13(C)に示すように、挿入孔16aに嵌合凸部16bを嵌合させた後に、引っ掛け部材13を支材10側に引っ張ることで、ボルト頭部14aが嵌め込まれる。
【0043】
図4、
図5及び
図11(B)~(F)に示す接合部16dは、ガードレール4fと接合する部分である。接合部16dは、
図11(C)~(F)に示すように、嵌合凸部16bが形成されている側の座金16の表面に、
図13(B)に示すようにガードレール4fのレール腹部R
3の表面と密着するように形成されている。接合部16dは、この接合部16dをガードレール4fのレール腹部R
3の表面に密着させたときに、ボルト頭部14aの座面と嵌合凹部16cとが密着するように、ガードレール4fのレール腹部R
3の表面に沿って曲面状に形成されている。
【0044】
図3~
図6、
図14及び
図15に示すくさび部材17は、引っ掛け部材13と支材10との間に差し込まれる部材である。くさび部材17は、
図4、
図5及び
図14に示すように、引っ掛け部材13のばね受部材15を支材10の嵌合部10eに装着したときに、ばね受部材15と支材10との間の隙間Δ
2に差し込まれて、引っ掛け部材13が支材10から抜け出すのを阻止する。くさび部材17は、ガードレール4fの長さ方向(横方向)から着脱自在に挿入されるくさび座金である。くさび部材17は、例えば、一般構造用圧延鋼材などの金属を所定の形状に加工して形成されている。くさび部材17は、
図3、
図14及び
図15に示す上面17aと、側面17b,17cと、
図14及び
図15に示す底面17dなどを備えている。
【0045】
図3、
図14及び
図15に示す上面17aは、くさび部材17の長さ方向に傾斜する傾斜面である。上面17aは、
図15(C)に示すように、側面17b側が高く側面17c側が低く形成されており、側面17b側から側面17c側に向かって、くさび部材17の幅方向に一定の傾斜角度(勾配)で傾斜する平坦面である。上面17aは、例えば、
図4及び
図5に示す線ばね7のばね先端部7cが押さえ付けるレール底部R
2の底部上面R
21と略同じ傾斜角度に形成されている。
【0046】
図14及び
図15に示す側面17bは、支材10側の傾斜面10jと接合する部分である。側面17bは、
図3に示すように、傾斜面10jと同じ傾斜角度(勾配)でくさび部材17の長さ方向に傾斜する平坦面である。
図14及び
図15に示す側面17cは、ばね受部材15の脚部15dと接合する部分である。側面17cは、ガードレール4fと平行になるように底面17dに対して垂直に形成された平坦面である。底面17dは、
図14に示すように、支材10側の底面10k及びばね受部材15の上面15aと接合する部分である。底面17dは、支材10側の底面10k及びばね受部材15の上面15aと密着するように平坦面に形成されている。
【0047】
図14及び
図16に示す押え部材18は、くさび部材17を押さえ付ける部材である。押え部材18は、
図3~
図6及び
図14に示すように、くさび部材17に重ね合わせて装着されており、くさび部材17の上面17aを押圧することによって、支材10とばね受部材15との間でくさび部材17が緩むのを阻止する。押え部材18は、くさび部材17に対して上下方向から着脱自在に装着される押え座金である。押え部材18は、例えば、一般構造用圧延鋼材などの金属を所定の形状に加工して平面形状が四角形に形成されている。押え部材18は、
図3~
図6、
図14及び
図16に示す上面18aと、
図14及び
図16に示す下面18bと、接合部18cと、抜け止め部18dなどを備えている。
【0048】
図3~
図6、
図14及び
図16に示す上面18aは、線ばね20によって押さえ付けられる部分である。上面18aは、線ばね20によって押付力(締結力)が作用する押圧面として機能する。上面18aは、ばね受部材15に線ばね20を取り付けて線ばね20のばね座部20bがばね座面15eに乗り上げたときに、ばね座面15eを支点として発生するばね力がばね先端部20cによってこの上面18aに作用する。上面18aは、
図14に示すように、押え部材18がくさび部材17に装着されたときに、ばね受部材15側に向かって下方に傾斜するように、くさび部材17の上面17aと同じ傾斜角度(勾配)で押え部材18の幅方向に傾斜する平坦面である。
【0049】
図14及び
図16に示す下面18bは、くさび部材17の上面17aと対向する部分である。下面18bは、くさび部材17に押え部材18が重ねて装着されたときに、くさび部材17の上面17aと平行になるように平坦面に形成されている。接合部18cは、ばね受部材15が接合する部分である。接合部18cは、
図16(A)(C)に示すように、押え部材18の一方の縁部を切り欠くように形成された凹部である。接合部18cは、ばね受部材15の脚部15dの一方の側面部と着脱自在に接合する。
【0050】
図14及び
図16に示す抜け止め部18dは、くさび部材17が抜け出すのを防止する部分である。抜け止め部18dは、
図16(E)に示すように、くさび部材17側の歯19aと押え部材18側の歯19bとが噛み合った状態で、くさび部材17及び押え部材18が抜け出すのを防止するストッパとして機能する。抜け止め部18dは、
図14に示すように、支材10の嵌合部10eにばね受部材15が嵌合した状態で、
図16に示すようにばね受部材15の脚部15dの一方の端部にこの抜け止め部18dが引っ掛かることによって、くさび部材17及び押え部材18が抜け出すのを防止する。
【0051】
図14及び
図16(E)に示す緩み止め部19は、くさび部材17の緩みを防止する部分である。緩み止め部19は、支材10とばね受部材15との間でくさび部材17が緩み、これらの間からくさび部材17が抜け出すのを防止する。緩み止め部19は、
図15及び
図16(E)に示す歯19aと、
図16(B)~(E)に示す歯19bとを備えている。緩み止め部19は、
図16(E)に示すように、くさび部材17側の歯19aと押え部材18側の歯19bとを噛み合わせることによって、くさび部材17の緩みを防止する。緩み止め部19は、
図3及び
図6に示すくさび部材17の長さ方向の任意の位置で押え部材18を装着した場合であっても、
図16(E)に示す歯19aと歯19bとを噛み合わせることでくさび部材17の緩みを防止する。
【0052】
図15及び
図16(E)に示す歯19aは、押え部材18側の歯19bと噛み合う部分であり、
図16(B)~(E)に示す歯19bはくさび部材17側の歯19aと噛み合う部分である。歯19aは、くさび部材17の上面17aに形成されたラック状の凹凸であり、上面17aの長さ方向に所定のピッチで形成されている。歯19bは、押え部材18の下面18bに形成されたラック状の凹凸であり、下面18bの長さ方向に歯19aと同じピッチで形成されている。
【0053】
図3~
図6及び
図14に示す線ばね20は、くさび部材17の抜け出しを防止するために、くさび部材17に押付力を作用させる部材である。線ばね20は、
図3~
図5に示す線ばね7と略同一構造で平面形状が略e字状のばねクリップ(eクリップ)であり、ばね力によって押え部材18をくさび部材17に締結する。線ばね20は、くさび部材17側の歯19aと押え部材18側の歯19bとが密着するように、押え部材18に押付力を作用させる。線ばね20は、
図3~
図6、
図10及び
図14に示すように、ばね後端部(クリップ後端)20aと、ばね座部(クリップ座部)20bと、ばね先端部(クリップ先端)20cと、アーチ部20d,20eなどを備えている。
【0054】
図3~
図6、
図10及び
図14に示すばね後端部20aは、ばね受部材15の脚部15dに挿入される部分である。ばね後端部20aは、線ばね20を着脱するときに使用される専用工具によって、脚部15dに押し込まれて脚部15dに保持される。ばね座部20bは、ばね受部材15の座面15eに載り上がる部分である。ばね座部20bは、
図14に示す座面15eに載り上がったときに線ばね20を弾性変形させて、このばね座部20bを支点としてばね先端部20cを押え部材18の上面18aに押し付ける。ばね座部20bは、ばね先端部20cが押え部材18の上面18aに押し付けられたときに、このばね先端部20cに上面18aから作用する反力を受ける反力受け部としても機能する。ばね座部20bは、線ばね20を着脱するときに使用される専用工具によって、押え部材18の上面18aに押付力を付与して設置される。
【0055】
図3~
図6、
図10及び
図14に示すばね先端部20cは、押え部材18の上面18aを押さえ付ける部分である。ばね先端部20cは、
図5及び
図14に示す押え部材18の上面18aと密着するように、上面18aとの接触面が平坦面に形成されている。ばね先端部20cは、
図14に示すばね座部20bがばね受部材15の座面15eに載り上がったときに、座面15eを支点として発生するばね力を、押え部材18の上面18aに押付力(締結力)として作用させる。
図3~
図6、
図10及び
図14に示すアーチ部20d,20eは、線ばね20の軸線が上方に凸状な曲線の部分である。
図4及び
図14に示すように、アーチ部20dはばね先端部20cとばね座部20bとを繋ぐ先端アーチであり、アーチ部20eはばね先端部20cとばね座部20bとを繋ぐ後端アーチである。
【0056】
次に、この発明の第1実施形態に係るガード固定装置の作用を説明する。
図4及び
図5に示すように、引っ掛け部材13が支材10側の挿入孔10dから挿入されて、Tボルト14のボルト頭部14aが座金16を介してガードレール4fに引っ掛かると、支材10とばね受部材15との間の隙間Δ
2にくさび部材17が差し込まれる。このため、従来のガード固定装置のような締結ボルト及び締結ナットによってガードレール4fを支材10に締結する必要がなく、支材10とばね受部材15との間の隙間Δ
2に打ち込まれたくさび部材17によって、ガードレール4fが支材10に固定される。
図16(E)に示すように、くさび部材17側の歯19aと押え部材18側の歯19bとが噛み合った状態で、くさび部材17に押え部材18が重ね合わされる。
図14に示すように、押え部材18に線ばね20から押付力が作用するため、くさび部材17に押え部材18が押し付けられて、くさび部材17側の歯19aと押え部材18側の歯19bとが密着し、くさび部材17の緩みが防止される。くさび部材17及び押え部材18が緩んだとしても、
図16に示すようにばね受部材15の脚部15dの一方の端部にこの抜け止め部18dが引っ掛かるため、くさび部材17及び押え部材18の抜け出しが防止される。
【0057】
次に、この発明の第1実施形態に係るガード固定装置の組立方法について説明する。
図3~
図5に示す隙間Δ
1が最適なフランジウェー幅になるように、ガードレール4fと支材10との間に調整座金11を作業員が単数又は複数挟み込み、ガードレール4fが床板8の座面10a上に位置決めされる。次に、
図17(A)に示すように、Tボルト14の突出量を作業者が確認しながら、Tボルト14の雄ねじ部14bをばね受部材15の雌ねじ部15cに作業者がねじ込み、Tボルト14をばね受部材15に挿入し、引っ掛け部材13が組み立てられる。
【0058】
図17(B)に示すように、引っ掛け部材13のボルト頭部14aを支材10の嵌合部10eの挿入孔10dから作業者が挿入して、支材10の嵌合部10eにばね受部材15の嵌合部15bを作業者が嵌合させる。支材10の壁面10iにばね受部材15の装着面15fが接触するまで、引っ掛け部材13を作業者が押し込むと、調整座金11の挿入孔11a及びガードレール4fの挿入孔4hの順にボルト頭部14aが通過する。ガードレール4fの挿入孔4hからボルト頭部14aが突出すると、座金16の挿入孔16aにボルト頭部14aを作業者が通過させて、Tボルト14に座金16が装着される。
【0059】
図17(C)に示すように、座金16の挿入孔16aにボルト頭部14aを通過させた状態で、
図12(B)に示すようにTボルト14の中心線回りに作業者が座金16をD方向に90°回転させて座金16の向きを変える。次に、
図13(C)に示すように、座金16の嵌合凸部16bをガードレール4fの挿入孔4hに作業者が嵌合させる。
図17(C)に示すように、引っ掛け部材13のばね受部材15を作業者が手前に引っ張ると、
図13(C)に示すように座金16の嵌合凹部16cにTボルト14のボルト頭部14aが嵌合する。
【0060】
図17(C)に示すように、引っ掛け部材13のばね受部材15と支材10との間の隙間Δ
2に、
図17(D)に示すようにくさび部材17を作業者が打ち込む。その結果、
図14に示すように、支材10の傾斜面10jとくさび部材17の側面17bとが密着するとともに、ばね受部材15の脚部15dとくさび部材17の側面17cとが密着する。その後に、
図17(D)に示すTボルト14のボルト頭部14aと座金16の嵌合凹部16cとの間、ガードレール4fと調整座金11との間、及び調整座金11と支材10との間などの各箇所に隙間がないか作業者が確認する。支材10とばね受部材15との間の隙間Δ
2に、くさび部材17の幅が合わないときには、引っ掛け部材13を支材10から作業者が抜き取り、
図17(A)に示すTボルト14の雄ねじ部14bとばね受部材15の雌ねじ部15cとの噛み合い量を作業者が再調整する。最後に、
図3~
図5に示す隙間Δ
1及びバックゲージが適正値であるか否かを作業者が確認する。ここで、バックゲージとは、
図3~
図4に示すガードレール4fの頭部側面R
12と、
図1及び
図2に示すノーズレール4eの頭部側面との間の距離である。
【0061】
図17(E)に示すように、くさび部材17に押え部材18を作業者が重ね合わせて、くさび部材17側の歯19aと押え部材18側の歯19bとを作業者が嵌め合わせると、くさび部材17に押え部材18が装着される。
図16(E)に示すように、くさび部材17及び押え部材18の長さ方向に所定の間隔をあけて歯19a,19bが形成されている。このため、くさび部材17の長さ方向の最適な位置に作業者によってくさび部材17に押え部材18が装着されて、くさび部材17の緩みを緩み止め部19が阻止する。
【0062】
図17(F)に示すように、線ばね20のばね後端部20aをばね受部材15の脚部15dに専用工具を使用して作業者が押し込むと、ばね後端部20aが脚部15dに保持されるとともに、線ばね20のばね座部20bがばね受部材15の座面15eに載り上がる。その結果、座面15eを支点として線ばね20が弾性変形して、押え部材18の上面18aにばね先端部20cが押付力を作用させる。
【0063】
この発明の第1実施形態に係るガード固定装置には以下に記載するような効果がある。
(1) この第1実施形態では、ガードレール4fに引っ掛け部材13を引っ掛けて、引っ掛け部材13と支材10との間にくさび部材17が差し込まれる。このため、従来のガード固定装置のようなボルト締結構造を省略し、くさび構造を採用することによって、ガードレール4fを支材10に簡単に固定することができる。また、従来のガード固定装置のようなボルト締結構造と異なり、くさび部材17によって固定する構造であるため、ガードレール4fの固定状態を作業員が目視で容易に点検することができる。さらに、従来のガード固定装置のような隙間Δ1から工具を挿入して締結ナットを締結する作業が不要になり、引っ掛け部材13と支材10との間にくさび部材17を打ち込み簡単に固定することができ、組立作業の作業性を向上させることができる。
【0064】
(2) この第1実施形態では、くさび部材17を押え部材18が押さえ付け、押え部材18に線ばね20が押付力を作用させ、くさび部材17側の歯19aと押え部材18側の歯19bとを噛み合わせることによって、くさび部材17の緩みを緩み止め部19が防止する。また、この実施形態では、くさび部材17側の歯19aと押え部材18側の歯19bとが密着するように、線ばね20が押え部材18に押付力を作用させる。このため、くさび部材17側の歯19aと押え部材18側の歯19bとを噛み合わせる位置を調整することによって、くさび部材17の長さ方向の任意の位置で押え部材18を装着することができる。その結果、線ばね20によって押え部材18を最適な位置で押さえ付けることができる。また、列車通過時などに発生する振動によって、くさび部材17が緩むの防止することができるとともに、くさび部材17が脱落するのを防止することができる。また、従来のガード固定装置にような横方向から締結する構造に比べて、折損や脱落などの破損の発見が容易な線ばね20によって縦方向から締結する構造であるため、ガードレール4fの固定状態を作業員が目視で容易に点検することができる。さらに、従来のガード固定装置のような隙間Δ1から工具を挿入して締結ナットを締結する作業が不要になり、線ばね20によって上下方向から簡単に締結することができ、組立作業の作業性を向上させることができる。
【0065】
(3) この第1実施形態では、線ばね20がばね受部材15に取り付けられており、ばね受部材15とねじ結合した状態で、ガードレール4fをTボルト14が貫通し、Tボルト14のボルト頭部14aとガードレール4fとの間に座金16が挟み込まれている。また、この実施形態では、支材10とばね受部材15との間の隙間Δ2にくさび部材17が差し込まれる。このため、ガードレール4fと支材10との間に挟み込まれる調整座金11の厚さに応じて、Tボルト14とばね受部材15とのねじ込み量を調整し、引っ掛け部材13の全長を簡単に変化させることができる。また、Tボルト14とばね受部材15とのねじ込み量を調整することによって、支材10とばね受部材15との間にくさび部材17を挿入するための隙間Δ2を簡単に形成することができる。
【0066】
(4) この第1実施形態では、ガードレール4fの挿入孔4hに座金16の嵌合凸部16bを嵌合させ、Tボルト14のボルト頭部14aを嵌合凹部16cに嵌合させる。このため、座金16を介してTボルト14をガードレール4fに簡単に引っ掛けることができる。また、Tボルト14のボルト頭部14aを座金16に固定し、Tボルト14が中心線回りに回転するのを確実に阻止することができる。
【0067】
(第2実施形態)
以下では、
図1~
図17に示す部分と同一の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
図18及び
図19に示す支材10は、嵌合部10eと浮き上がり防止部10mなどを備えている。嵌合部10eは、
図14に示す嵌合部10eとは異なり、
図19に示すように、ばね受部材15の嵌合部15bの底面15gの全面を、支材10の底面10hが支持するように底面10hが長く形成されている。嵌合部10eは、ばね受部材15の底面15gの全面を支材10の底面10hによって支持することによって、くさび部材17が差し込まれたときにばね受部材15が下方に曲がるのを防止する。
【0068】
浮き上がり防止部10mは、くさび部材17の浮き上がりを防止する部分である。浮き上がり防止部10mは、支材10とばね受部材15との間にくさび部材17を差し込むときに、くさび部材17が浮き上がるのを防止する。浮き上がり防止部10mは、支材10の接合部10fに形成された凹部(溝部)であり、くさび部材17の上面17a、側面17b及び底面17dが嵌合する。浮き上がり防止部10mは、支材10とばね受部材15との間の隙間Δ2にくさび部材17を打ち込むときに、くさび部材17が浮き上がるのを防止するガイド部として機能する。
【0069】
図18、
図20及び
図21に示す座金16は、Tボルト14のボルト頭部14aとガードレール4fとの間のボルト軸に対して交差する方向から差し込まれるU字型角座金(馬蹄座金)のような差込座金である。座金16は、
図20及び
図21に示すように、差し込み部16eを備えている。差し込み部16eは、Tボルト14のボルト頭部14aとガードレール4fとの間に差し込まれる部分である。差し込み部16eは、
図20(A)(D)に示すように、座金16の上縁部を切り欠くように形成されたU字状の凹部である。差し込み部16eは、Tボルト14のボルト軸の中心線に対して交差する方向から、ボルト頭部12aとガードレール4fとの間の隙間に挿入されて、このボルト軸に嵌め込まれる。差し込み部16eは、
図20(D)に示すように、一対の嵌合凸部16b間に形成されており、
図20(A)に示すように嵌合凹部16cの中心線に対して直交する方向に形成されている。
【0070】
次に、この発明の第2実施形態に係るガード固定装置の組立方法について説明する。
この第2実施形態に係るガード固定装置の組立方法は、
図17に示すガード固定措置の組立方法と略同一であり、以下では座金をガードレールに嵌合させ引っ掛け部材を座金に嵌合させる嵌合工程についてのみ説明する。
図21に示すように、ガードレール4fの挿入孔4hからボルト頭部14aが突出した状態で、ボルト頭部14aとガードレール4fとの間に座金16の差し込み部16eをTボルト14のボルト軸の下方から作業者が差し込み、Tボルト14のボルト軸に座金16が装着される。次に、Tボルト14のボルト軸に座金16が装着された状態で、ガードレール4fの挿入孔4hに嵌合凸部16bを作業者が嵌合させる。引っ掛け部材13のばね受部材15を作業者が手前に引っ張ると、座金16の嵌合凹部16cにTボルト14のボルト頭部14aが嵌合する。
【0071】
この発明の第2実施形態に係るガード固定装置には、第1実施形態の効果に加えて、以下に記載するような効果がある。
(1) この第2実施形態では、くさび部材17の浮き上がりを浮き上がり防止部10mが防止する。このため、支材10とばね受部材15との間の隙間Δ2にくさび部材17を打ち込むときにくさび部材17が持ち上がり、支材10とばね受部材15との間でくさび部材17が緩み、くさび部材17が脱落するのを防止することができる。
【0072】
(2) この第2実施形態では、Tボルト14のボルト頭部14aとガードレール4fとの間に座金16の差し込み部16eを差し込み、ガードレール4fの挿入孔4hに嵌合凸部16bが嵌合し、Tボルト14のボルト頭部14aを嵌合凹部16cに嵌合させる。このため、Tボルト14のボルト頭部14aとガードレール4fとの間に座金16を差し込むだけでこれらの間に座金16を短時間で挟み込むことができる。その結果、第1実施形態に比べて座金16の挿入孔14aにTボルト14のボルト頭部14aを挿入して、座金16を回転させる作業を省略することができ作業性を向上させることができる。
【0073】
(他の実施形態)
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、分岐器類として分岐器1が片開き分岐器である場合を例に挙げて説明したが、この発明を片開き分岐器に限定するものではない。例えば、両開き分岐器、内方分岐器、外方分岐器、振分分岐器、三枝分岐器、複分岐器又は三線式分岐器などの分岐器類や、シーサースクロッシング、ダブルスリップスイッチ、シングルスリップスイッチ、固定K字クロッシング又は可動K字クロッシングなどの他の分岐器類についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、分岐器類のガードレール4f,4gを固定するガード固定装置12を例に挙げて説明したが、分岐器類のガードレール4f,4gにこの発明を限定するものではない。例えば、分岐器類のトングレール及び基本レールの側摩耗を防止するポイントガード(F形ガード)のようなガードや、踏切ガード、脱線防止ガード、逸脱防止ガード又は安全レールなどのガードを固定するガード固定装置についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、分岐器1の基本レール2c,2dと主レール4a,4bとの間に継ぎ目がある場合を例に挙げて説明したが、これらのレールに継ぎ目がなく、主レール4a,4bを含めて基本レール2c,2dである場合についても、この発明を適用することができる。
【0074】
(2) この実施形態では、線ばね20のばね先端部20cによって押え部材18の上面18aを押さえ付け、ばね先端部20cとばね後端部20aとの間のばね座部20bをばね受部材15の座面15eに載り上げるeクリップを使用する線ばね構造を例に挙げて説明したが、このような線ばね構造にこの発明を限定するものではない。例えば、線ばね20のばね先端部をばね受部材15の座面15eに載り上げさせて、ばね先端部とばね後端部との間の部分によって押え部材18の上面18aを押さえ付けるPRクリップを使用する線ばね構造についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、押え部材18を介してくさび部材17に線ばね20の押付力を作用させる場合を例に挙げて説明したが、押え部材18を省略して線ばね20の押付力をくさび部材17に直接作用させる場合についても、この発明を適用することができる。
【0075】
(3) この実施形態では、まくらぎ5が合成まくらぎ又は木まくらぎである場合を例に挙げて説明したが、緊張材として使用される鋼材によってプレストレスが与えられたプレストレストコンクリート製まくらぎ(PC(Prestressed concrete)まくらぎ) 又は鋳鉄製の鉄まくらぎなどの他のまくらぎについても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、支承体としてまくらぎ5を例に挙げて説明したが、このような支承体に限定するものではない。例えば、矩形平板状のプレキャストのコンクリート板(軌道スラブ)によって構成されて道床とまくらぎとを一体化させた省力化軌道の一種である軌道スラブ、又は左右のレールをそれぞれ支持するプレストレスコンクリート構造(PRC構造)の縦梁を鋼管製の継材によって連結する梯子状のラダーまくらぎなどの支承体についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、締結部材6が止めくぎである場合を例に挙げて説明したが、犬くぎ又はねじくぎなどの他の締結部材についても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 分岐器(分岐器類)
2 ポイント部
2a,2b トングレール
2c,2d 基本レール
4 クロッシング部
4a,4b 主レール
4c,4d ウィングレール
4e ノーズレール
4f,4g ガードレール(ガード)
4h 挿入孔
5 まくらぎ
6 締結部材
7 線ばね
8 床板
9 ばね受台
10 支材
10a 座面
10d 挿入孔
10e 嵌合部
10j 傾斜面
10m 浮き上がり防止部
11 調整座金
11a 挿入孔
12 ガード固定装置
13 引っ掛け部材
14 Tボルト
14a ボルト頭部
14b 雄ねじ部
15 ばね受部材
15b 嵌合部
15c 雌ねじ部
15d 脚部
15e 座面
16 座金
16a 挿入孔
16b 嵌合凸部
16c 嵌合凹部
16d 接合部
16e 差し込み部
17 くさび部材
17b,17c 側面
18 押え部材
18a 上面
18c 接合部
18d 抜け止め部
19 緩み止め部
19a,19b 歯
20 線ばね
20a ばね後端部
20b ばね座部
20c ばね先端部
20d,20e アーチ部
W 車輪
W1 踏面
W2 フランジ面
W3 フランジ背面
R レール
R1 レール頭部
R2 レール底部
R3 レール腹部
R11 頭頂面
R12 頭部側面
R21 底部上面
Δ1 隙間(フランジウェー幅)
Δ2 隙間