(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072597
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレン化合物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 211/53 20060101AFI20220510BHJP
C07C 209/78 20060101ALI20220510BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220510BHJP
【FI】
C07C211/53 CSP
C07C209/78
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182124
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000187046
【氏名又は名称】東レ・ファインケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中谷 仁郎
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC52
4H006BA66
4H006BB24
4H006BB41
4H006BB42
4H006BE01
4H039CA71
4H039CF30
4H039CG10
(57)【要約】
【課題】9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン化合物系ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂硬化物の高ガラス転位温度化および高機械物性化するジアミンモノマーを提供する。
【解決手段】 本発明は、新規9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン化合物である9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを、アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒中で、酸触媒共存下、9-フルオレノンと2-メチル-6-エチルアニリンを反応させることにより製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレン。
【請求項2】
アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒中で、酸触媒共存下、9-フルオレノンと2-メチル-6-エチルアニリンを反応させる、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの製造法。
【請求項3】
前記非プロトン性極性溶媒が、N-メチルピロリドンまたはN-エチルピロリドンである、請求項2記載の9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン化合物である9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、工業的に有用な9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン化合物は、高分子化学の分野で用いられる化合物であり、特に、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂の原料として有用である。この化合物を含むポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂は電子情報材料、光学材料、複合材料など、工業用途として多岐にわたる分野で使用されている。
【0003】
非特許文献1では、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAFL)、9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-エチル-4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)フルオレンを用いて、ポリイミドが作成されている。
【0004】
しかしながら、従来の9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン化合物は、例えば、これをポリイミド樹脂のモノマーとして、使用した場合、得られたポリイミド樹脂のガラス転位温度および機械物性が必ずしも十分ではなく、光学特性も十分ではなかったため、ポリイミド樹脂の適用範囲が限られていた。すなわち、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン化合物系ポリイミド樹脂の高ガラス転位温度化、高機械物性化および高光学特性化か望まれていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Polymer 46(2005)5278-5283
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
種々の分野でポリイミド樹脂の高強度、高弾性率、高接着性、高靭性、耐熱性、および高い光学特性などが望まれていた。
そこで本発明の目的は、ポリイミド樹脂の性能を向上させる新規なジアミンおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記従来技術の現状に鑑み、新規なポリイミド樹脂について鋭意検討した結果、高性能なポリイミド樹脂を得ることができる新規なジアミンである9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを見出した。本発明の9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの製造方法は、アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒中で、酸触媒共存下、9-フルオレノンと2-メチル-6-エチルアニリンを反応させて、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の新規ジアミン9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンは、ポリイミド樹脂のジアミン成分として、用いることにより、高強度、高弾性率、高接着性、高靭性、耐熱性、および高い光学特性などを有する高機能なポリイミド樹脂を得ることができる。9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンは、ファインケミカル、医農薬原料、樹脂原料、さらには電子情報材料、光学材料など、工業用途として多岐にわたる分野で有用である。
【0009】
本発明の9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの製造方法は、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを収率よく製造することができる。本発明の製造方法によれば、9-フルオレノンと2-メチル-6-エチル-4-アニリンを縮合反応させて、高収率で9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを製造することができる。本発明の9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの製造方法は工業的に優れた製造方法である。本発明の製造方法により得られた9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンは、電子情報材料、光学材料、複合材料などで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1で得られた9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの
1H-NMRチャート(溶媒:重DMSO)である。
【
図2】
図2は、実施例1で得られた9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンのIR吸収スペクトルチャートである。
【
図3】
図3は、参考例で得られたポリイミドポリマーのIR吸収スペクトルチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の詳細を記載する。
本発明のジアミン9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンは、新規化合物であり、ポリイミド樹脂のジアミン成分として用いることにより、高強度、高弾性率、高接着性、高靭性、耐熱性、および高い光学特性などを有する高機能なポリイミド樹脂を得ることができる。9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンは、ファインケミカル、医農薬原料、樹脂原料、さらには電子情報材料、光学材料など、工業用途として多岐にわたる分野で有用である。
【0012】
本発明において、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンは、9-フルオレノンと2-メチル-6-エチルアニリンを縮合反応させることにより製造される。
【0013】
縮合反応で用いる2-メチル-6-エチルアニリンは、9-フルオレノンのモル数に対し、好ましくは2.0~10モル倍、より好ましくは、2.0モル倍から5.0モル倍であるとよい。2-メチル-6-エチルアニリンを9-フルオレノンの2.0モル倍以上にすることにより、所望の9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを製造することができる。また2-メチル-6-エチルアニリンを10モル倍以下にすることにより、反応液から未反応の2-メチル-6-エチルアニリンを除去する労力を少なくすることができる。
【0014】
9-フルオレノンおよび2-メチル-6-エチルアニリンの縮合反応は、酸触媒の存在下で行われる。酸触媒として、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸等、ヘテロポリ酸のプロトン酸、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素-ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、三塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化スズ(IV)、塩化鉄(III)、フッ化アンチモン(V)、塩化アンチモン(V)、三塩化りん、五塩化りん、オキシ塩化りん、四塩化チタン、三塩化チタン、バナジルクロライド(VOCl2)、塩化ジルコニウム、塩化ハフニウム、テトライソプロポキシチタン、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、三塩化ニオブおよび五塩化ニオブなどのルイス酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ピバル酸、吉草酸、メタンスルフォン酸、パラトルエンスルフォン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、シリカアルミナ、ゼオライト等の固体酸が例示される。また、酸触媒を、2-メチル-6-エチルアニリンの酸塩の形で使用してもよい。
【0015】
酸触媒の量は、9-フルオレノンのモル数に対し、好ましくは0.1~10モル倍であり、より好ましくは、0.5~3モル倍である。酸触媒を0.5モル倍以上使用することにより、縮合反応を効率的に進めることができる。また、酸触媒を10モル倍以下使用することにより、後工程で中和に用いるアルカリ量を低減することができる。
【0016】
9-フルオレノンおよび2-メチル-6-エチルアニリンの縮合反応は、アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒中で行うことが好ましい。アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒以外の溶媒を用いると縮合反応が起きず、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンが生成しない。アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒として、例えば、N-メチルピロリドン(沸点202℃)またはN-エチルピロリドン(沸点218℃)などが挙げられる。中でも好ましく用いられる溶媒は、N-メチルピロリドンである。
【0017】
非プロトン性極性溶媒の使用量は、9-フルオレノンの質量に対して、好ましくは1~20質量倍であり、より好ましくは、2~10質量倍である。非プロトン性極性溶媒を1質量倍以上使用することにより、溶媒による反応促進効果が発現する。また、非プロトン性極性溶媒を20質量倍以下使用することにより、反応促進効果を発現させつつ、高い生産性を確保できる。
【0018】
9-フルオレノンおよび2-メチル-6-エチルアニリンの縮合反応において、水が副生するが、これを除去しながら反応させることが好ましい。この目的で反応系内に共沸溶媒を共存させて、連続的に副生水を除去する方法が好ましく用いられる。共沸溶媒としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられるが、トルエンまたはキシレンが好ましく用いられる。この共沸溶媒の使用量は、9-フルオレノンの質量に対し、0.5~10質量倍が好ましい。
【0019】
縮合反応は、酸素を含まない不活性雰囲気下で行うことが好ましい。具体的には、実質的に酸素を含まない窒素ガスを反応系内に通気させることで行うことができる。酸素存在下で行うと、2-メチル-6-エチルアニリンが酸化され、着色し、これが、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンに残存し着色させてしまうことがある。
【0020】
反応温度は、好ましくは80~200℃である。より好ましくは、120~180℃である。反応温度が80℃より低いと反応完結に長時間を要することになり、200℃よりも高いと、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンにさらに9-フルオレノンが反応した二量体が生成し、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの収率が低下することになる。
【0021】
反応時間は、反応温度に依存するが、好ましくは3~100時間、より好ましくは5~80時間である。反応終点は、9-フルオレノンが完全に消費され、中間体である9-フルオレノンに2-メチル-6-エチル-4-アニリン1分子が縮合したイミン体の残存量が反応液の液クロマトグラフィー分析で、好ましくはアニリン類のピーク面積を除く全体のピーク面積の10面積%以下、より好ましくは、2.0面積%以下となる時点と設定できる。
【0022】
縮合反応の終了後、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを反応液から分離する方法として、生成した9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの酸塩を一旦、ろ過により反応液から濾別し、これを有機溶媒中、アルカリで中和・解塩しても良いし、あるいは反応終了後の反応液を直接アルカリで中和し、生成した有機相と水相を分液しても良い。いずれにしても得られた有機相から9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを取得することができる。
【0023】
用いるアルカリとしては、水酸化ナトリウム水溶液または、水酸化カリウム水溶液が用いられ、中和で生じた塩を水相側へ抽出し、除去することができる。また、用いるアルカリの量は、縮合反応で用いた酸触媒と同じ当量あるいはそれ以上にすることができる。
【0024】
得られた有機相から9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの単離方法としては、有機相を濃縮する濃縮晶析法または有機相に貧溶媒を添加する貧溶媒晶析法が好ましく用いられる。
【0025】
濃縮晶析法では、アミド結合を有する沸点170℃以上の非プロトン性極性溶媒および/またはアニリン類を留去し、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを濃縮晶析させることで、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを得ることができる。
【0026】
濃縮は、常圧、減圧のどちらで行ってもよいが、常圧で2-メチル-6-エチルアニリンを留去しようとすると、200℃以上の高温条件が必要となり、これにより、2-メチル-6-エチルアニリンが酸化を受け着色し、2-メチル-6-エチルアニリンの回収率が低下することから、減圧下で、温度150℃以下で行うことが好ましい。好ましい減圧度としては、0.13~20kPaである。
【0027】
濃縮晶析後、冷却して得られたスラリーを固液分離することで、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンが得られる。得られた9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの表面に晶析母液が付着していることがあることから、得られた9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンに十分リンス液をかけて、洗浄する、あるいは溶媒でリスラリー洗浄することで高純度9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを得ることができる。
【0028】
リンスおよびリスラリーの溶媒としては、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒またはアミド系溶媒を使用してもよいが、好ましくは、アルコール系溶媒または芳香族炭化水素系溶媒が用いられる。アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールであり、芳香族炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレンである。リスラリーは、室温で行ってもよいし、溶媒がリフラックスする温度で行っても良い。
【0029】
使用するリンス液量は、9-フルオレノンに対し、好ましくは0.1~10質量倍であり、リスラリーで用いられるリスラリー液量は、9-フルオレノンに対し、1.0~30質量倍が好ましく用いられる。
【0030】
貧溶媒晶析法では、得られた有機相に水、アルコール類、低級脂肪族ケトン類から選ばれた少なくとも一つを含む溶媒を混合し、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを晶析させることで、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを高収率で取得する。
【0031】
貧溶媒晶析法に用いるアルコール類は、炭素数1~6のアルコール、および/または炭素数2~3のグリコールであり、例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノールおよび1-ヘキサノールなどの1級アルコール類、イソプロパノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-ヘキサノール、およびシクロヘキサノールなどの2級アルコール類、ターシャリーブタノール、ターシャリーペンタノール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールが挙げられる。好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、である。
【0032】
低級脂肪族ケトン類は、炭素数3~9の脂肪族ケトンであり、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジブチルケトン、メチルブチルケトンが挙げられる。好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンである。
【0033】
貧溶媒晶析法において、使用する溶媒量は、9-フルオレノンの質量に対し、好ましくは0.5~30質量倍、より好ましくは1.0~5質量倍である。
【0034】
晶析後、得られたスラリーを固液分離することで、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンが高収率で得られる。得られた9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの表面に晶析母液が付着していることがあることから、得られた9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンに十分リンス液をかけて洗浄する、あるいは溶媒でリスラリー洗浄することで高純度の9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンを得ることができる。
【0035】
リンスおよびリスラリーの溶媒としては、アルコール系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒またはアミド系溶媒を使用してもよいが、好ましくは、アルコール系溶媒または芳香族炭化水素系溶媒が用いられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが例示され、芳香族炭化水素系溶媒としては、トルエン、キシレンが例示される。リスラリーは、室温で行ってもよいし、溶媒がリフラックスする温度で行っても良い。
【0036】
使用するリンス液量は、9-フルオレノンの質量に対し、好ましくは0.1~10質量倍であり、リスラリーで用いられるリスラリー液量は、9-フルオレノンの質量に対し、1.0~30質量倍が好ましく用いられる。
【実施例0037】
以下、実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例に制限されるものではない。なお、本明細書において得られる9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの分析値は、次の方法により測定した。
【0038】
(化学純度)
以下の条件の液体クロマトグラフィー(島津製作所社製CLASS-VP)により測定された、全体のピーク面積からアニリン類のピーク面積を除いた面積に対する、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンのピーク面積の分率(HPLC 面積%)を測定し、これを化学純度(%)とした。
・カラム: YMC―Pack ODS-AM303 4.6φ×250mm
・カラム温度: 40℃
・移動相: 0.1%(v/v)リン酸水溶液を組成(A)、アセトニトリルを組成(B)とし、下記のグラジエントに示した組成(A/B)で変化させた。
・グラジエント
時間(分) 組成(A/B)
0 60/40
10 45/55
15 20/80
25 20/80
30 60/40
40 60/40
・流量: 1ml/min
・注入量: 10μl
・検出: UV 254nm
・分析時間: 40分
・分析サンプル調製:サンプル0.02gを秤量し、アセトニトリル約40mlに希釈
ただし、上記の分析条件に基づく分析結果と同じ結果が得られる限り、この分析条件に限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
温度計、滴下漏斗、冷却管および攪拌機を取り付けた300mL四つ口フラスコに、9-フルオレノン 15.0g(0.083モル)、N-メチルピロリドン 30.25g、トルエン 30.25gおよび35%塩酸 17.37g(0.166モル)を仕込んだ。窒素パージ攪拌下、溶液を15℃以下に冷却し、2―メチル-6-エチルアニリン 22.51g(0.166モル)を滴下した。発熱が収まった後、液温90~110℃に昇温し、系中の水とトルエンを共沸させた。留出が収まった後、さらにN-メチルピロリドン 15.0gを投入し、液温140℃まで昇温し、20時間撹拌しながら熟成することにより縮合反応を行った。
【0040】
縮合反応後、反応液を室温へ冷却し、スラリー液を濾過した。濾別したケークにイソプロパノール 15.0gのリンスを2回繰り返した。
【0041】
続いて、イソプロパノール 66.0g、水 66.0g、48%苛性ソーダ水溶液 13.87g(0.166モル)を仕込んだ溶液中に得られたケークを投入し、60℃で3時間攪拌し、解塩した。これを室温まで冷却し、結晶をろ過し、イソプロパノール 10g、水 10gの混合溶液で、2回リンスを行った。得られたケークを温度60℃、減圧度 0.01kPa以下で一晩真空乾燥し、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレン 28.3g(収率 79%/9-フルオレノン)を取得した。液体クロマトグラフィー分析による化学純度は、98.4%であった。
【0042】
図1に、実施例1で得られた9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンの
1H-NMRチャート(溶媒:重DMSO,500MHz)を、
図2に、実施例1で得られた9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレンのIR吸収スペクトルチャートを示す。
【0043】
(参考例)
温度計、冷却管および攪拌機を取り付けた200mL四つ口フラスコに、実施例1において取得した9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレン 4.33g、N-メチルピロリドン 32.9gを投入し、60℃で加温し、9,9-ビス(3-メチル-5-エチル-4-アミノフェニル)フルオレン完溶させた。ここに4,4′-オキシジフタル酸二無水物 3.10gを分割投入した。60℃で加温したまま、4時間熟成し、室温へ冷却して、一晩攪拌した。これにオルソ-ジクロロベンゼン 20.0gを投入し、185~190℃で4時間加熱し、オルソ-ジクロロベンゼンとともに生成水を共沸留去した。これを冷却し、ポリイミド溶液約30mlを得た。このポリイミド溶液にN-メチルピロリドンを加え、均一な溶液80mlを調製した。
【0044】
上記溶液をメタノール500gのフラスコへ滴下し、ポリマーを再沈させた。これをろ過した後、得られたポリマーのウェットケークを再度N-メチルピロリドンに溶解し、80ml溶液を調製した。再度メタノール500gへ滴下し、再沈させ、ろ過により、ポリマーのウェットケークを取得した。これを温度80℃、減圧度 0.01kPa以下で一晩減圧乾燥し、ポリマー粉末 6.35gを取得した。
【0045】
得られたポリイミドポリマー粉末のIRスペクトルチャートを
図3に示す。
また、このポリイミドポリマー粉末の20質量%N-メチルピロリドン(NMP)溶液の粘度は、450mPa・sec(E型粘度計、25℃)であった。