(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072598
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】作業車両の表示システムおよび作業車両の表示方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20220510BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20220510BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20220510BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/24 B
B66F9/24 Z
H04N7/18 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182125
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(71)【出願人】
【識別番号】519366846
【氏名又は名称】株式会社シナスタジア
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小林 優樹
(72)【発明者】
【氏名】有年 亮博
(72)【発明者】
【氏名】高田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】崎山 和正
【テーマコード(参考)】
2D015
3F333
5C054
【Fターム(参考)】
2D015HA03
3F333AA02
3F333DB01
3F333FA40
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FD03
5C054FE18
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】正確な作業が可能で、かつオペレータの疲労を軽減可能な作業車両の表示システムおよび作業車両の表示方法を提供する。
【解決手段】第2補完撮像装置IS2は、第1補完撮像装置IS2の撮像範囲よりも下方を撮像する。コントローラ50は、第1補完撮像装置IS1の第1補完撮像画像および第2補完撮像装置IS2の第2補完撮像画像の少なくとも一方の補完撮像画像に基づいて死角を補完した表示画像をヘッドマウントディスプレイ200に表示する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置と、
第1補完撮像装置と、
前記第1補完撮像装置の撮像範囲よりも下方を撮像する第2補完撮像装置と、
前記第1補完撮像装置の第1補完撮像画像および前記第2補完撮像装置の第2補完撮像画像の少なくとも一方の補完撮像画像に基づいて死角を補完した表示画像を前記表示装置に表示するコントローラと、を備えた、作業車両の表示システム。
【請求項2】
主撮像画像を撮像する主撮像装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記少なくとも一方の補完撮像画像と前記主撮像画像とを重畳することにより前記死角を補完した前記表示画像を生成して前記表示装置に表示する、請求項1に記載の作業車両の表示システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1補完撮像画像と前記第2補完撮像画像とを統合した1つの統合画像を生成し、前記統合画像と前記主撮像画像とを重畳することにより前記死角を補完した前記表示画像を生成する、請求項2に記載の作業車両の表示システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記主撮像画像と重畳させる画像として前記第1補完撮像画像と前記第2補完撮像画像とを切り替える、請求項2に記載の作業車両の表示システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記主撮像画像に重畳させる画像としての前記第1補完撮像画像と前記第2補完撮像画像との切り替えを、前記作業車両に対する前記表示装置の傾斜角度と、視線検出センサにより検出されたオペレータの視線方向と、オペレータによって操作される操作レバーの操作角度と、オペレータが操作する表示切替スイッチの切替信号とからなる群から選ばれる1つ以上に基づいて行う、請求項4に記載の作業車両の表示システム。
【請求項6】
作業機をさらに備え、
前記コントローラは、前記作業機が通常作業および深堀作業のいずれを実行しているかを判定し、前記作業機が前記通常作業を実行していると判定した場合には前記第1補完撮像画像と前記主撮像画像とを重畳し、前記作業機が前記深堀作業を実行していると判定した場合には前記第2補完撮像画像と前記主撮像画像とを重畳する、請求項4または請求項5に記載の作業車両の表示システム。
【請求項7】
オペレータが搭乗する運転室をさらに備え、
前記第1補完撮像装置と前記第2補完撮像装置とは前記運転室外に配置される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の作業車両の表示システム。
【請求項8】
前記表示装置は、前記作業車両のオペレータが装着するヘッドマウントディスプレイである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の作業車両の表示システム。
【請求項9】
作業機と、
第1フロントピラーと、前記第1フロントピラーよりも前記作業機の近くに位置する第2フロントピラーとを有する運転室と、
作業車両のオペレータに装着される表示装置と、
補完撮像装置と、
前記補完撮像装置の補完撮像画像に基づいて前記第2フロントピラーによる死角を補完した表示画像を前記表示装置に表示するコントローラと、を備えた、作業車両の表示システム。
【請求項10】
床部を有する運転室と、
作業車両のオペレータに装着される表示装置と、
補完撮像装置と、
前記補完撮像装置の補完撮像画像に基づいて前記運転室の前記床部による死角を補完した表示画像を前記表示装置に表示するコントローラと、を備えた、作業車両の表示システム。
【請求項11】
表示装置と、
第1補完撮像装置と、
前記第1補完撮像装置の撮像範囲よりも下方を撮像する第2補完撮像装置と、を備える作業車両の表示方法であって、
前記第1補完撮像装置の第1補完撮像画像を取得するステップと、
前記第2補完撮像装置の第2補完撮像画像を取得するステップと、
前記第1補完撮像画像および前記第2補完撮像画像の少なくとも一方の補完撮像画像に基づいて死角を補完した表示画像を前記表示装置に表示するステップと、を備えた、作業車両の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両の表示システムおよび作業車両の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両において、ヘッドマウントディスプレイを用いて前方の視界を良好にする技術がたとえば特開2008-143701号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1では、フォークリフトの荷物昇降用マストなどの遮蔽物に相当する範囲を切り取った部分画像が外部景色に重ねられてヘッドマウントディスプレイに表示される。これによりオペレータが遮蔽物の裏の映像を同時に見ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし油圧ショベルのような作業車両においては、バケットなどの作業具が上下に移動する。このため通常の掘削作業から深堀作業に移る際には運転室の床面が障害となって掘削面または作業点(たとえばバケット刃先)が見えない場合が生じる。このような場合、オペレータは、掘削面などが見えないまま作業をするか、または体を前方に乗り出して掘削面などを覗き込むようにして作業を行っていた。掘削面などが見えないまま作業をすると、正確な作業を行うことができない。またオペレータが体を乗り出して作業すると、操作が不安定になったり、連続作業によって疲れやすくなったりする。
【0005】
本開示の目的は、正確な作業が可能で、かつオペレータの疲労を軽減可能な作業車両の表示システムおよび作業車両の表示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の作業車両の表示システムは、表示装置と、第1補完撮像装置と、第2補完撮像装置と、コントローラとを備えている。第2補完撮像装置は、第1補完撮像装置の撮像範囲よりも下方を撮像する。コントローラは、第1補完撮像装置の第1補完撮像画像および第2補完撮像装置の第2補完撮像画像の少なくとも一方の補完撮像画像に基づいて死角を補完した表示画像を表示装置に表示する。
【0007】
本開示の他の作業車両の表示システムは、作業機と、運転室と、表示装置と、補完撮像装置と、コントローラとを備えている。運転室は、第1フロントピラーと、第1フロントピラーよりも作業機の近くに位置する第2フロントピラーとを有している。表示装置は、作業車両のオペレータに装着されている。コントローラは、補完撮像装置の補完撮像画像に基づいて第2フロントピラーによる死角を補完した表示画像を表示装置に表示する。
【0008】
本開示のさらに他の作業車両の表示システムは、運転室と、表示装置と、補完撮像装置と、コントローラとを備えている。運転室は、床部を有している。表示装置は、作業車両のオペレータに装着されている。コントローラは、補完撮像装置の補完撮像画像に基づいて運転室の床部による死角を補完した表示画像を表示装置に表示する。
【0009】
本開示の作業車両の表示方法は、表示装置と、第1補完撮像装置と、第2補完撮像装置とを備える作業車両の表示方法である。第2補完撮像装置は、第1補完撮像装置の撮像範囲よりも下方を撮像する。本開示の作業車両の表示方法は、以下のステップを有する。
【0010】
第1補完撮像装置の第1補完撮像画像が取得される。第2補完撮像装置の第2補完撮像画像が取得される。第1補完撮像画像および第2補完撮像画像の少なくとも一方の補完撮像画像に基づいて死角を補完した表示画像が表示装置に表示される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、正確な作業が可能で、かつオペレータの疲労を軽減可能な作業車両の表示システムおよび作業車両の表示方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態における作業車両の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】第1補完撮像装置の取付状態を示す斜視図である。
【
図3】第2補完撮像装置の取付状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す作業車両の表示システムの構成を示す図である。
【
図5】
図1に示す作業車両において通常作業と深堀作業とを説明するための図である。
【
図6】
図4に示すヘッドマウントディスプレイの構成を示す斜視図である。
【
図7】
図4に示す表示システムの機能ブロックの一例を示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態における作業車両の表示方法の一例を示すフロー図である。
【
図9】作業車両が深堀作業をしている様子を示す斜視図である。
【
図10】
図9に示す作業時に主撮像装置の主撮像画像と第2補完撮像装置の第2補完撮像画像とを重畳させる様子を示す図である。
【
図11】作業車両が法面の掘削作業をしている様子を示す側面図である。
【
図12】
図11に示す作業時に主撮像装置の主撮像画像と第1補完撮像装置の第1補完撮像画像とを重畳させる様子を示す図である。
【
図13】作業車両がダンプトラックに荷を積み込む様子を示す側面図である。
【
図14】
図13に示す作業時に主撮像装置の主撮像画像と第1補完撮像装置の第1補完撮像画像とを重畳させる様子を示す図である。
【
図15】
図4に示す表示システムの機能ブロックの他の例を示す図である。
【
図16】本開示の一実施形態における作業車両の表示方法の他の例を示すフロー図である。
【
図17】第1補完撮像装置の第1補完撮像画像と第2補完撮像装置の第2補完撮像画像とを統合して1つの統合画像を生成する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について図に基づいて説明する。
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0014】
本開示は、油圧ショベル以外に、ホイールローダ、ブルドーザ、モータグレーダ、フォークリフトなどの作業車両であれば適用可能である。以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、
図1に示す運転室4内の運転席4Sに着座したオペレータを基準とした方向である。
【0015】
<作業車両の構成>
まず本実施形態の作業車両の構成を
図1~
図3を用いて説明する。
【0016】
図1は、本開示の一実施形態における作業車両の構成を概略的に示す斜視図である。
図2は、第1補完撮像装置の取付状態を示す斜視図である。
図3は、第2補完撮像装置の取付状態を示す斜視図である。
【0017】
図1に示されるように、油圧ショベル100は、本体1と、油圧により作動する作業機2とを有している。本体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。油圧ショベル100は、履帯5Crの回転により走行可能である。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。走行モータ5Mは、油圧により作動する油圧モータである。なお、走行体5が車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0018】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能である。旋回体3は、運転室4(キャブ)を有している。油圧ショベル100のオペレータ(乗員)は、この運転室4に搭乗して、油圧ショベル100を操縦する。運転室4内には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられている。オペレータは、運転室4内において油圧ショベル100を操作可能である。オペレータは、運転室4内において、作業機2の操作が可能であり、走行体5に対する旋回体3の旋回操作が可能であり、また走行体5による油圧ショベル100の走行操作が可能である。
【0019】
旋回体3は、エンジンカバー9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有している。エンジンカバー9は、エンジンルームを覆っている。エンジンルームには、エンジンユニット(エンジン、排気処理構造体など)が配置されている。
【0020】
作業機2は、旋回体3に支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。作業機2は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とをさらに有している。
【0021】
ブーム6は、本体1(走行体5および旋回体3)に回動可能に接続されている。具体的にはブーム6の基端部は、ブームフートピン13を支点として旋回体3に回動可能に接続されている。
【0022】
アーム7は、ブーム6に回動可能に接続されている。具体的にはアーム7の基端部は、ブームトップピン14を支点としてブーム6の先端部に回動可能に接続されている。バケット8は、アーム7に回転可能に接続されている。具体的にはバケット8の基端部は、アームトップピン15を支点としてアーム7の先端部に回動可能に接続されている。バケット8は、複数の刃先8aを有している。
【0023】
ブームシリンダ10の一端は旋回体3に接続され、他端はブーム6に接続されている。ブーム6は、ブームシリンダ10により本体1に対して駆動可能である。この駆動により、ブーム6は、ブームフートピン13を支点として旋回体3に対して上下方向に回動可能である。
【0024】
アームシリンダ11の一端はブーム6に接続され、他端はアーム7に接続されている。アーム7は、アームシリンダ11によりブーム6に対して駆動可能である。この駆動により、アーム7は、ブームトップピン14を支点としてブーム6に対して上下方向または前後方向に回動可能である。
【0025】
バケットシリンダ12の一端はアーム7に接続され、他端はバケットリンクに接続されている。バケット8は、バケットシリンダ12によりアーム7に対して駆動可能である。この駆動により、バケット8は、アームトップピン15を支点としてアーム7に対して上下方向に回動可能である。
【0026】
運転室4は、床部FRと、複数のピラーと、前上梁BTと、屋根部RFとを主に有している。複数のピラーは、たとえば第1フロントピラーFPLと、第2フロントピラーFPRと、1対のセンターピラーと、1対のリアピラーとを有している。複数のピラーの各々は、床部FRから上方に延びている。前上梁BTは、第1フロントピラーFPLの上端と第2フロントピラーFPRの上端とを接続している。屋根部RFは、複数のピラーの上端に配置されている。
【0027】
床部FR、複数のピラーおよび屋根部RFにより取り囲まれた空間内に、運転席4Sが配置されている。運転席4Sは、床部FRの上であって、屋根部RFの下に配置されている。第1フロントピラーFPLおよび第2フロントピラーFPRの各々は、運転席4Sの前方に配置されている。第2フロントピラーFPRは、第1フロントピラーFPLよりも作業機2の近くに位置している。
【0028】
運転室4には、第1補完撮像装置IS1と、第2補完撮像装置IS2とが取り付けられている。第1補完撮像装置IS1および第2補完撮像装置IS2の各々は、第2フロントピラーFPRに取り付けられている。
【0029】
第1補完撮像装置IS1および第2補完撮像装置IS2の各々は、運転室4の外部に配置されており、運転室4の外側を撮像する。第1補完撮像装置IS1および第2補完撮像装置IS2の各々は、運転室4の前方に配置されており、かつ運転室4よりも前方を撮像可能である。
【0030】
第2補完撮像装置IS2は、第1補完撮像装置IS1よりも下方に取り付けられている。第2補完撮像装置IS2は、第1補完撮像装置IS1の撮像範囲よりも下方の撮像範囲を撮像する。
【0031】
図2に示されるように、第1補完撮像装置IS1は、ブラケットBR1およびホルダーCH1を介在して運転室4に取り付けられている。ブラケットBR1は、運転室4の外部であって、運転室4の右上角にネジなどにより取り付けられている。ホルダーCH1は、ブラケットBR1の前面にネジなどにより取り付けられている。第1補完撮像装置IS1は、ホルダーCH1にネジなどにより取り付けられている。第1補完撮像装置IS1は、第2フロントピラーFPRの上端の高さ位置よりも上方に位置している。
【0032】
図3に示されるように、第2補完撮像装置IS2は、ブラケットBR2およびホルダーCH2を介在して運転室4に取り付けられている。ブラケットBR2は、運転室4の外部であって、運転室4の前面右下側にネジなどにより取り付けられている。ブラケットBR2は、前方延在部EX1と、下方延在部EX2と、取付部APとを有している。
【0033】
前方延在部EX1は、運転室4の前方において前後方向へ延びている。下方延在部EX2は、前方延在部EX1の前端から下方へ延びている。取付部APは、下方延在部EX2の下端に取り付けられている。
【0034】
ホルダーCH2は取付部APの左右方向の両端部のうち作業機に近い側の端部にネジなどにより取り付けられている。第2補完撮像装置IS2は、ホルダーCH2にネジなどにより取り付けられている。第2補完撮像装置IS2は、第2フロントピラーFPRの下端の高さ位置よりも下側に位置している。
【0035】
<表示システムの構成>
次に、本実施形態の表示システムの構成について
図4および
図5を用いて説明する。
【0036】
図4は、
図1に示す作業車両の表示システムの構成を示す図である。
図5は、
図1に示す作業車両において通常作業と深堀作業とを説明するための図である。
図4に示されるように、本実施形態の表示システムは、運転室4と、ヘッドマウントディスプレイ200(表示装置)と、主撮像装置ISMと、第1補完撮像装置IS1と、第2補完撮像装置IS2と、撮像装置IIと、コントローラ50とを有している。
【0037】
ヘッドマウントディスプレイ200は、オペレータの頭部に装着される。ヘッドマウントディスプレイ200を装着したオペレータは、運転室4内の運転席4Sに着座して作業車両100を操作する。このためヘッドマウントディスプレイ200は、運転室4内に位置している。
【0038】
主撮像装置ISMは、ヘッドマウントディスプレイ200に取り付けられている。主撮像装置ISMの光軸OA3は、ヘッドマウントディスプレイ200を装着したオペレータの視線方向にほぼ一致する。
図4の場合は、光軸OA3は水平線HLにほぼ一致するようになっている。
【0039】
第1補完撮像装置IS1の光軸OA1は、作業車両100が水平な地面に載置された状態で、作業車両100の前方かつ上方を向いている。具体的には光軸OA1は、第1補完撮像装置IS1から前方に離れるほど上方に位置する上り勾配となるように傾斜している。第1補完撮像装置IS1の光軸OA1は、水平線HLに対して角度αで傾斜している。作業車両100が水平な地面に載置されている状態において、角度αはたとえば20°である。
【0040】
第2補完撮像装置IS2の光軸OA2は、作業車両100が水平な地面に載置された状態で、作業車両100の前方かつ下方を向いている。具体的には光軸OA2は、第2補完撮像装置IS2から前方に離れるほど下方に位置する下り勾配となるように傾斜している。第2補完撮像装置IS2の光軸OA2は、水平線HLに対して角度βで傾斜している。作業車両100が水平な地面に載置されている状態において、角度βはたとえば50°である。また光軸OA2は、たとえば運転席4Sに着座したオペレータのアイポイント付近(主撮像装置ISM付近)で光軸OA1と交差する。
【0041】
第2補完撮像装置IS2の撮像範囲VA2は、第1補完撮像装置IS1の撮像範囲VA1よりも下方に位置する。撮像範囲VA1と撮像範囲VA2とは、運転室4の前方において一部重なっていてもよい。
【0042】
撮像範囲VA1と撮像範囲VA2とが互いに重なり合う場合、側面視において、撮像範囲VA1と撮像範囲VA2とが互いに重なり始める点と主撮像装置ISMとを結んだ仮想の線BLを引くことができる。
【0043】
撮像装置IIは、運転室4の内部に配置されている。撮像装置IIは、運転室4の室内を撮影可能であり、たとえばヘッドマウントディスプレイ200およびそれを装着したオペレータの頭部付近を撮像可能である。撮像装置IIは、ヘッドマウントディスプレイ200を撮像することによりヘッドマウントディスプレイ200の位置を検出することができる。
【0044】
主撮像装置ISMと、第1補完撮像装置IS1、第2補完撮像装置IS2および撮像装置IIの各々は、たとえば複眼のステレオカメラである。ステレオカメラは、撮像対象の前後方向、左右方向および上下方向における位置情報を持つ点群データと、画像とを取得する。
【0045】
ここで点群データとは、直交座標(X、Y、Z)の基本的位置情報をもつ3次元データである。点群データと画像との双方を取得することによって、たとえば画像の画素毎に位置情報を付加することができる。これにより1枚の画像から3次元CG(Computer Graphics)モデルを作成することができる。
【0046】
また主撮像装置ISM、第1補完撮像装置IS1、第2補完撮像装置IS2および撮像装置IIの各々は、ステレオカメラに限定されず、点群データを持つ画像を取得できるものであればよい。主撮像装置ISM、第1補完撮像装置IS1、第2補完撮像装置IS2および撮像装置IIの各々は、たとえば単眼のカメラで撮像された画像に対してLiDAR(Light Detection and Ranging)で計測した位置情報を付加するものであってもよい。
【0047】
なお作業車両100は、運転室4内に操作装置21、22、23を有している。操作装置21、22、23は、左右一対の操作レバー21と、前後進レバー22と、操作ペダル23とを有している。
【0048】
左右一対の操作レバー21は、ブーム6、アーム7およびバケット8の駆動と、走行体5に対する旋回体3の旋回とを操作可能である。左右一対の前後進レバー22は、右側履帯5Crと左側履帯5Crとの駆動を操作可能である。
【0049】
図5に示されるように、第1補完撮像装置IS1は、通常作業をする作業機2を撮像することができる。具体的には、第1補完撮像装置IS1の撮像範囲VA1に、通常作業をする作業機2が含まれる。また第2補完撮像装置IS2は、深堀作業をする作業機2を撮像することができる。具体的には、第2補完撮像装置IS2の撮像範囲VA2に、深堀作業をする作業機2が含まれる。
【0050】
作業機2が通常作業の状態にあるか、深堀作業の状態にあるかは、たとえば上記の仮想の線BLを基準に判断されてもよい。具体的には、線BLよりも上方に作業機2が位置する場合には作業機2が通常作業を実施していると判断され、また線BLよりも作業機2が下方に位置している場合には作業機2が深堀作業を実施していると判断されてもよい。
【0051】
また作業機2が通常作業の状態にあるか、深堀作業の状態にあるかの判断は、線BL以外の基準を用いて行なわれてもよい。
【0052】
なお油圧ショベル100には、コントローラ50が搭載されている。コントローラ50の詳細は後述する。
【0053】
<ヘッドマウントディスプレイの構成>
次に、
図4に示されるヘッドマウントディスプレイ200の構成について
図6を用いて説明する。
【0054】
図6は、
図4に示すヘッドマウントディスプレイの構成を示す斜視図である。
図6に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ200は、本体部101と、角度センサ102と、装着部103と、主撮像装置ISMとを有している。ヘッドマウントディスプレイ200は、たとえば透過型ディスプレイである。
【0055】
本体部101は、スクリーンを有している。このスクリーンは、ヘッドマウントディスプレイ200を装着したオペレータにより視認される位置に配置されている。このスクリーンには、主撮像装置ISM、第1補完撮像装置IS1、第2補完撮像装置IS2などにより撮像された画像が投影される。ヘッドマウントディスプレイ200を装着したオペレータは、このスクリーン上に投影された画像を視認することにより、ヘッドマウントディスプレイ200の外の様子を知ることができる。
【0056】
角度センサ102は、たとえば本体部101に取り付けられている。角度センサ102は、本体部101以外の部分、たとえば装着部103に取り付けられていてもよい。角度センサ102は、ヘッドマウントディスプレイ200の傾斜角度を検出する。
【0057】
装着部103は、ヘッドマウントディスプレイ200をオペレータに装着するための部分である。装着部103は、たとえばヘッドバンドである。
【0058】
主撮像装置ISMは、本体部101の前面に取り付けられている。主撮像装置ISMは、本体部101とは反対側を撮像する。主撮像装置ISMは、ヘッドマウントディスプレイ200の外側を撮像する。主撮像装置ISMは、運転室4の内部から運転室4の外部を撮像する。
【0059】
<表示システムの機能ブロックの構成>
次に、
図4に示す表示システムの機能ブロックの構成について
図7を用いて説明する。
【0060】
図7は、
図4に示す表示システムの機能ブロックの一例を示す図である。
図7に示されるように、コントローラ50は、画像取得部50a、50b、50cと、検出情報取得部50dと、画像選択部50eと、視点変換部50fと、画像重畳部50gと、ヘッドマウントディスプレイ制御部50hと、位置・角度算出部50iと、作業状態判定部50jと、記憶部50kとを有している。
【0061】
画像取得部50aは、主撮像装置ISMにより撮像された主撮像画像のデータを取得する。画像取得部50aは、取得した撮像画像のデータを画像重畳部50gへ出力する。
【0062】
画像取得部50bは、第1補完撮像装置IS1により撮像された第1補完撮像画像のデータを取得する。画像取得部50bは、取得した第1補完撮像画像のデータを画像選択部50eへ出力する。
【0063】
画像取得部50cは、第2補完撮像装置IS2により撮像された第2補完撮像画像のデータを取得する。画像取得部50cは、取得した第2補完撮像画像のデータを画像選択部50eへ出力する。
【0064】
検出情報取得部50dは、位置・角度検出センサSE1により検出されたヘッドマウントディスプレイ200の位置情報および角度情報を取得する。位置・角度検出センサSE1は、たとえば撮像装置II(
図4)と、角度センサ102(
図6)とを有している。
【0065】
撮像装置IIは、ヘッドマウントディスプレイ200の撮像画像のデータを取得し、位置情報として検出情報取得部50dへ出力する。角度センサ102は、ヘッドマウントディスプレイ200の傾斜角度を角度情報として検出情報取得部50dへ出力する。
【0066】
検出情報取得部50dは、取得した位置情報および角度情報を位置・角度算出部50iへ出力する。位置・角度算出部50iは、取得した位置情報および角度情報に基づいてヘッドマウントディスプレイ200の位置と傾斜角度とを算出する。具体的には位置・角度算出部50iは、角度センサ102により検出されたヘッドマウントディスプレイ200の傾斜角度に基づいて作業車両100に対するヘッドマウントディスプレイ200の傾斜角度を算出する。また位置・角度算出部50iは、撮像装置IIにより撮像されたヘッドマウントディスプレイ200の撮像画像データに基づいてヘッドマウントディスプレイ200の位置を算出する。
【0067】
撮像装置IIは、位置情報を持つ点群データを付加された画像を取得する。このため撮像装置IIの撮像画像からヘッドマウントディスプレイ200の位置を算出することができる。
【0068】
位置・角度算出部50iにより算出されたヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度は作業状態判定部50jおよび視点変換部50fの各々に出力される。作業状態判定部50jは、ヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度に基づいて、作業車両100が通常作業および深堀作業のいずれを実施しているかを判定する。
【0069】
この判定の際には、作業状態判定部50jは、記憶部50kからヘッドマウントディスプレイ200の所定位置と所定の傾斜角度とを取得し、その所定位置および所定傾斜角度を基準として通常作業か深堀作業かを判断する。この所定傾斜角度は、たとえば
図4または
図5における線BLの傾斜角度である。
【0070】
具体的には、ヘッドマウントディスプレイ200が所定の位置において所定傾斜角度を向くか、または所定傾斜角度よりも上側を向いている状態は通常作業と判断される。またヘッドマウントディスプレイ200が所定の位置において所定傾斜角度よりも下側を向いている状態は深堀作業と判定される。作業状態判定部50jによる判定結果を示す信号は画像選択部50eへ出力される。
【0071】
画像選択部50eは、作業車両100の作業状態に基づいて第1補完撮像画像および第2補完撮像画像のいずれかを選択する。具体的には作業車両100が通常作業の状態にあると判定した場合には、画像選択部50eは第1補完撮像画像を選択する。また作業車両100が深堀作業の状態にあると判定した場合には、画像選択部50eは第2補完撮像画像を選択する。画像選択部50eは選択した撮像画像のデータを視点変換部50fへ出力する。
【0072】
視点変換部50fは、位置・角度算出部50iから取得したヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度に基づいて、画像選択部50eにより選択された撮像画像を運転席4Sに着座するオペレータ視点の画像へ変換する。
【0073】
第1補完撮像装置IS1および第2補完撮像装置IS2の各々は、位置情報を持つ点群データを付加された画像を取得する。このため第1補完撮像画像および第2補完撮像画像の各々から3次元CGモデルを作成することができる。したがって第1補完撮像画像および第2補完撮像画像のいずれも、運転席4Sに着座するオペレータ視点の画像に変換することができる。視点変換部50fによりオペレータ視点の画像に変換された変換画像が画像重畳部50gへ出力される。
【0074】
画像重畳部50gは、画像取得部50aから取得した主撮像画像と、視点変換部50fから取得した変換画像とを重畳させる。ここで主撮像画像は、運転室4内に配置された主撮像装置ISMにより撮像された画像である。このため主撮像画像には、運転室4の外側の景色(地形、作業機2など)以外に運転室4の一部(たとえばピラー、床部、天井)などの遮蔽物が撮像されている。一方、変換画像は第1補完撮像画像および第2補完撮像画像のいずれかを変換した画像であり、第1補完撮像画像および第2補完撮像画像の各々は運転室4の外側の景色(地形、作業機2など)を撮像しており、運転室4の一部などの遮蔽物を撮像していない。このため主撮像画像と変換画像とを重畳することにより、遮蔽物を透過して死角を補完した表示画像が生成可能である。画像重畳部50gは、生成した表示画像をヘッドマウントディスプレイ制御部50hへ出力する。
【0075】
ヘッドマウントディスプレイ制御部50hは、表示画像をヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに表示するようにヘッドマウントディスプレイ200を制御する。これにより運転席4Sに着座したオペレータは、ヘッドマウントディスプレイ200のスクリーン上に投影された、遮蔽物が透過され死角が補完された表示画像を視認することができる。
【0076】
上記のようにコントローラ50は、第1補完撮像画像および第2補完撮像画像の少なくとも一方の補完撮像画像に基づいて死角を補完した表示画像をヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに表示する。
【0077】
またコントローラ50は、第1補完撮像画像および第2補完撮像画像の少なくとも一方の補完撮像画像と主撮像画像とを重畳することにより死角を補完した表示画像を生成してヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに表示する。
【0078】
またコントローラ50は、画像選択部50eにより第1補完撮像画像と第2補完撮像画像とのいずれかを選択することにより、主撮像画像と重畳させる画像として第1補完撮像画像と第2補完撮像画像とを切り替える。
【0079】
またコントローラ50は、作業状態判定部50jにより作業車両100が通常作業および深堀作業のいずれを実行しているかを判定し、作業車両100が通常作業を実行していると判定した場合には第1補完撮像画像と主撮像画像とを重畳し、作業車両100が深堀作業を実行していると判定した場合には第2補完撮像画像と主撮像画像とを重畳する。
【0080】
なお作業車両100の作業状態は、切替えスイッチSWの切換え信号または姿勢検出センサSE2の検出信号に基づいて作業状態判定部50jにより判定されてもよい。
【0081】
切替えスイッチSWは、運転室4内に搭乗したオペレータにより操作されるものである。切替えスイッチSWは、少なくとも通常作業と深堀作業とを切り替えることができるように構成されている。切替えスイッチSWは、切替え状態を示す信号を作業状態判定部50jへ出力する。作業状態判定部50jは、通常状態を示す信号を切替えスイッチSWから取得すると作業車両100が通常状態にあると判定する。また作業状態判定部50jは、深堀状態を示す信号を切替えスイッチSWから取得すると作業車両100が深堀状態にあると判定する。
【0082】
また姿勢検出センサSE2は、作業機2の姿勢を検出するためのセンサである。姿勢検出センサSE2は、たとえばストロークセンサ、ポテンショメータ、IMU(Inertial Measurement Unit)、撮像装置、操作レバー21による操作量検出センサなどである。
【0083】
姿勢検出センサSE2としてストロークセンサが用いられる場合、
図1に示されるブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12の各々にストロークセンサが取り付けられる。ストロークセンサにより各シリンダのストローク量を検出することができる。
【0084】
姿勢検出センサSE2としてポテンショメータが用いられる場合、
図1に示されるブームフートピン13、ブームトップピン14およびアームトップピン15の各々の付近にポテンショメータが取り付けられる。各ポテンショメータにより、本体1に対するブーム6の回転角度、ブーム6に対するアーム7の回転角度、アーム7に対するバケット8の回転角度の各々を検出することができる。
【0085】
姿勢検出センサSE2としてIMU(慣性計測装置)が用いられる場合、
図1に示されるブーム6、アーム7およびバケット8の各々にIMUが取り付けられる。IMUの各々は、3軸の角度(または角速度)と加速度とを検出する。IMUにより検出された3軸の角度(または角速度)と加速度とにより、ブーム6、アーム7およびバケット8の各々の姿勢を検出することができる。
【0086】
姿勢検出センサSE2として撮像装置が用いられる場合、撮像装置により、
図1に示されるブーム6、アーム7およびバケット8の状態が撮像される。撮像装置により撮像された撮像情報から、ブーム6、アーム7およびバケット8の各々の姿勢を検出することができる。
【0087】
操作レバー21による操作量検出センサは、
図4、
図10に示される操作レバー21がパイロット油圧方式である場合、パイロット油圧(PPC圧力)を検出する圧力センサである。また操作レバー21による操作量検出センサは、操作レバー21が電気方式である場合、操作レバーの操作角度を検出するポテンショメータである。
【0088】
姿勢検出センサSE2は、作業機2の姿勢を示す信号を作業状態判定部50jへ出力する。作業状態判定部50jは、作業機2の姿勢を示す信号に基づいて作業車両100が通常状態にあるか、深堀状態にあるかを判定する。
【0089】
<表示方法>
次に、本実施形態における作業車両の表示方法について
図7および
図8を用いて説明する。
【0090】
図8は、本開示の一実施形態における作業車両の表示方法の一例を示すフロー図である。
図8に示されるように、ヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度の情報がコントローラ50の検出情報取得部50d(
図7)により取得される(ステップS1)。主撮像画像がコントローラ50の画像取得部50a(
図7)により取得される(ステップS2)。第1補完撮像画像がコントローラ50の画像取得部50b(
図7)により取得される(ステップS3)。第2補完撮像画像がコントローラ50の画像取得部50c(
図7)により取得される(ステップS4)。
【0091】
検出情報取得部50d(
図7)により取得されたヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度の情報に基づいて、コントローラ50の位置・角度算出部50iによりヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度が算出される(ステップS5)。算出されたヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度に基づいて、コントローラ50の作業状態判定部50j(
図7)により作業車両100の作業状態が通常作業か深堀作業かが判定される(ステップS6)。
【0092】
作業状態が通常状態であると判定された場合、コントローラ50の画像選択部50eにより第1補完撮像画像が選択される(ステップS7)。また作業状態が深堀状態であると判定された場合、コントローラ50の画像選択部50e(
図7)により第2補完撮像画像が選択される(ステップS8)。
【0093】
第1補完撮像画像および第2補完撮像画像のうち選択された一方の補完撮像画像が、コントローラ50の視点変換部50f(
図7)により、運転席4Sに着座するオペレータ視点の画像に変換される(ステップS9)。この変換は、位置・角度算出部50i(
図7)により算出されたヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度に基づいて行われる。
【0094】
オペレータ視点に変換された補完撮像画像と主撮像画像とが、コントローラ50の画像重畳部50gにより互いに重畳される(ステップS10)。この際、運転室4の内部からバケット8の刃先8aへ向かう方向に位置する遮蔽物が透過され死角が補完された表示画像となるように、オペレータ視点に変換された補完撮像画像と主撮像画像とが重畳される。
【0095】
重畳された表示画像が、コントローラ50のヘッドマウントディスプレイ制御部50hによりヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに投影表示されるよう制御される(ステップS11)。これによりヘッドマウントディスプレイ200を装着したオペレータは、重畳された表示画像をヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンを通じて視認することができる。
【0096】
[深堀作業時における画像の重畳]
次に、深堀作業時における、オペレータ視点に変換された補完撮像画像と主撮像画像との重畳について
図9および
図10を用いて具体的に説明する。
【0097】
図9は、作業車両が深堀作業をしている様子を示す斜視図である。
図10は、
図9に示す作業時に主撮像装置の撮像画像と第2補完撮像装置の第2補完撮像画像とを重畳させる様子を示す図である。なお
図10においては、図の簡略化のため作業機2のバケット8以外の部材(ブーム6、アーム7など)の図示は省略されている。
【0098】
図9に示されるような深堀作業時には、作業車両100が載置される地面に深い縦溝TRが形成される。このため、深い縦溝TRの底面を掘削するバケット8は作業車両100の本体1に対して相当量下方に位置することになる。よって
図10(A)に示されるように、運転室4内の運転席4Sに着座したオペレータは、運転室4の床部FRなどによってバケット8および掘削面を視認できない場合が生じる。したがって主撮像装置ISM(
図2~
図4)によりオペレータ視点で撮像される主撮像画像CI2においては、深堀作業中のバケット8および掘削面が撮像されない場合が生じる。
【0099】
そこで
図10(B)に示されるように、第2補完撮像装置IS2(
図1、
図4)で撮像した第2補完撮像画像をオペレータ視点に変換した視点変換後の第2補完撮像画像MI1が用いられる。第2補完撮像装置IS2は、運転室4の外側に配置されている。このため視点変換後の第2補完撮像画像MI1には、運転室4の床部FRなどが撮像されていない。したがって深堀作業中のバケット8が運転室4の前方側から手前側へ矢印で示す方向に移動しても、視点変換後の第2補完撮像画像MI1にバケット8を撮像することが可能である。
【0100】
図10(A)に示された主撮像画像CI2と、
図10(B)に示された視点変換後の第2補完撮像画像MI1とが重畳される。これにより、
図10(C)に示されるように、運転室4の床部FRの一部が透過され死角が補完された表示画像DI1が生成される。この表示画像DI1がヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに投影される。このスクリーンを通じて、ヘッドマウントディスプレイを装着したオペレータは、床部FRを透過して深堀作業中のバケット8を視認することが容易となる。
【0101】
なお
図10(C)に示される表示画像DI1においては、操作装置21、22、23、表示装置DLなどが透過されずに表示されてもよい。これによりオペレータは操作装置21、22、23の操作が容易となり、また表示装置DLの表示画面を視認することも可能となる。
【0102】
[法面の掘削作業時における画像の重畳]
次に、法面の掘削作業時における、オペレータ視点に変換された補完撮像画像と主撮像画像との重畳について
図11および
図12を用いて具体的に説明する。
【0103】
図11は、作業車両が法面SFの掘削作業をしている様子を示す側面図である。
図12は、
図11に示す作業時に主撮像装置の主撮像画像と第1補完撮像装置の第1補完撮像画像とを重畳させる様子を示す図である。
【0104】
図11に示されるような法面SFの掘削作業時には、運転室4の上面よりも上側にバケット8が位置する場合がある。このため
図12(A)に示されるように、運転室4内の運転席4Sに着座したオペレータは、運転室4の前上梁BT、屋根部RFなどによりバケット8および掘削面を視認できない場合が生じる。したがって主撮像装置ISM(
図4、
図6)によりオペレータ視点で撮像された主撮像画像CI1aにおいては、法面SFの掘削作業中のバケット8および掘削面が撮像されない場合が生じる。
【0105】
そこで
図12(B)に示されるように、第1補完撮像装置IS1(
図1、
図4)で撮像した第1補完撮像画像をオペレータ視点に変換した視点変換後の第1補完撮像画像MI2が用いられる。第1補完撮像装置IS1は、運転室4の外側に配置されている。このため視点変換後の第1補完撮像画像MI2には、運転室4の前上梁BT、屋根部RFなどが撮像されていない。したがって法面SFの掘削作業中でもバケット8を視点変換後の第1補完撮像画像MI2に撮像することが可能である。
【0106】
図12(A)に示された主撮像画像CI1aと、
図12(B)に示された第1補完撮像画像MI2とが重畳される。これにより、
図12(C)に示されるように、運転室4の前上梁BT、屋根部RFなどが透過され死角が補完された表示画像DI2が生成される。この表示画像DI2がヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに投影される。このスクリーンを通じて、ヘッドマウントディスプレイを装着したオペレータは、前上梁BT、屋根部RFなどを透過して法面SFの掘削作業中のバケット8を視認することが容易となる。
【0107】
なお表示画像DI2においては、前上梁BTおよび屋根部RFだけでなく、第2フロントピラーFPRが透過されてもよい。また
図12(C)に示される表示画像DI2においては、表示装置DL(
図10)などが透過されずに表示されてもよい。これによりオペレータは表示装置DLの表示画面を視認することも可能となる。視野の高さによっては、モニタの表示画面を視認することができる。
【0108】
[ダンプトラックへの荷の積込み作業時における画像の重畳]
次に、ダンプトラックへの荷の積込み作業時における、オペレータ視点に変換された補完撮像画像と主撮像画像との重畳について
図13および
図14を用いて具体的に説明する。
【0109】
図13は、作業車両がダンプトラックに荷を積み込む様子を示す側面図である。
図14は、
図13に示す作業時に主撮像装置の撮像画像と第1補完撮像装置の撮像画像とを重畳させる様子を示す図である。
【0110】
図13に示されるようなダンプトラック300への荷の積込み作業時には、バケット8が運転室4の上面よりも上側でかつ運転室4の前方に近付く場合がある。このため
図14(A)に示されるように、運転室4内の運転席4Sに着座したオペレータは、運転室4の第2フロントピラーFPR、前上梁BTなどによりバケット8を視認できない場合が生じる。したがって主撮像装置ISM(
図4、
図6)を用いてオペレータの視点で撮像された主撮像画像CI1bにおいては、荷の積込み作業中のバケット8が撮像されない場合が生じる。
【0111】
そこで
図14(B)に示されるように、第1補完撮像装置IS1(
図1、
図4)で撮像した第1補完撮像画像をオペレータ視点に変換した視点変換後の第1補完撮像画像MI3が用いられる。第1補完撮像装置IS1は、運転室4の外側に配置されている。このため視点変換後の第1補完撮像画像MI3には、運転室4の第2フロントピラーFPR、前上梁BTなどが撮像されていない。したがって荷の積込み作業中でもバケット8を視点変換後の第1補完撮像画像MI3に撮像することが可能である。
【0112】
図14(A)に示された主撮像画像CI1bと、
図14(B)に示された第1補完撮像画像MI3とが重畳される。これにより、
図14(C)に示されるように、運転室4の第2フロントピラーFPR、前上梁BTなどが透過された表示画像DI3が生成される。この表示画像DI3がヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに投影される。このスクリーンを通じて、ヘッドマウントディスプレイ200を装着したオペレータは、第2フロントピラーFPR、前上梁BTなどを透過して荷の積込み作業中のバケット8を視認することが容易となる。
【0113】
また
図14(C)に示される表示画像DI2においては、表示装置DLなどが透過されずに表示されてもよい。これによりオペレータは表示装置DLの表示画面を視認することも可能となる。
【0114】
<効果>
次に本実施形態の効果について説明する。
【0115】
本実施形態によれば
図10、
図12および
図14に示されるように、第1補完撮像画像MI2、MI3および第2補完撮像画像MI1の少なくとも一方の補完撮像画像に基づいて死角を補完した表示画像DI1、DI2、DI3がヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに表示される。死角が補完された表示画像DI1、DI2、DI3においては遮蔽物が透過されるため、オペレータは、バケット8などの作業具を視認しながら作業することが可能となる。これにより正確な作業が可能になるとともに、無理な姿勢で作業を行う必要が無く作業時におけるオペレータの疲労を軽減することもできる。
【0116】
また本実施形態によれば
図10、
図12および
図14に示されるように、第1補完撮像画像MI2、MI3および第2補完撮像画像MI1の少なくとも一方の補完撮像画像と主撮像画像CI2、CI1a、CI1bとが重畳されることにより主撮像画像CI2、CI1a、CI1bの死角が補完される。これによりオペレータは、いわゆるビデオ透過型ヘッドマウントディスプレイ200において、死角が補完された表示画像DI1、DI2、DI3を視認することができる。
【0117】
また本実施形態によれば
図7に示されるように、コントローラ50は、主撮像画像と重畳させる画像として第1補完撮像画像と第2補完撮像画像とを画像選択部50eにより切り替える。このように画像を切り替えて重畳することにより、画像を統合して重畳する場合に比較して画像処理の負荷を低減することができる。
【0118】
また本実施形態によれば
図7に示されるように、コントローラ50は、作業機2が通常作業および深堀作業のいずれを実行しているかを作業状態判定部50jにより判定する。そしてコントローラ50は、作業機2が通常作業を実行していると判定した場合には、
図11および
図12に示されるように第1補完撮像画像MI2と主撮像画像CI1aとを重畳する。またコントローラ50は、作業機2が深堀作業を実行していると判定した場合には、
図9および
図10に示されるように第2補完撮像画像MI1と主撮像画像CI2とを重畳する。これにより通常作業時および深堀作業時のいずれにおいても遮蔽物を透過して死角を補完した表示画像DI1、DI2を得ることができる。
【0119】
また本実施形態によれば
図1に示されるように、第1補完撮像装置IS1と第2補完撮像装置IS2との各々は運転室4の外に配置される。これにより運転室4の構成部品が写らない補完撮像画像を得ることが可能となる。
【0120】
また本実施形態によれば
図6に示されるように、表示装置は、作業車両100のオペレータが装着するヘッドマウントディスプレイ200である。これによりオペレータは、死角を補完した表示画像を通して、あたかも自身が直接視認しているかの如くバケット8および掘削面を視認することができる。
【0121】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0122】
上記実施形態においては、
図7および
図8に示されるように、第1補完撮像画像と第2補完撮像画像とのいずれか一方が画像選択部50eにより選択された後に、視点変換部50fにより視点を変換される。
【0123】
しかし
図15および
図16に示されるように、第1補完撮像画像および第2補完撮像画像のそれぞれが視点変換部50fa、50fbにより視点を変換された後に、視点変換後の第1補完撮像画像および第2補完撮像画像のいずれか一方が画像選択部50eにより選択されてもよい。
【0124】
この場合、
図15に示されるように、画像取得部50bは、取得した第1補完撮像画像のデータを視点変換部50faへ出力する。また画像取得部50cは、画像取得部50cは、取得した第2補完撮像画像のデータを視点変換部50fbへ出力する。
【0125】
視点変換部50faは、位置・角度算出部50iから取得したヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度に基づいて、第1補完撮像画像を運転席4Sに着座するオペレータ視点の画像に変換する(ステップS9a:
図16)。視点変換部50faは、視点変換後の第1補完撮像画像のデータを画像選択部50eへ出力する。
【0126】
また視点変換部50fbは、位置・角度算出部50iから取得したヘッドマウントディスプレイ200の位置および傾斜角度に基づいて、第2補完撮像画像を運転席4Sに着座するオペレータ視点の画像に変換する(ステップS9b:
図16)。視点変換部50fbは、視点変換後の第2補完撮像画像のデータを画像選択部50eへ出力する。
【0127】
画像選択部50eは、作業車両100の作業状態に基づいて、視点変換された第1補完撮像画像および第2補完撮像画像のいずれかを選択する。具体的には作業車両100が通常作業の状態にあると判定した場合には、画像選択部50eは、視点変換された第1補完撮像画像を選択する(ステップS7:
図16)。また作業車両100が深堀作業の状態にあると判定した場合には、画像選択部50eは、視点変換された第2補完撮像画像を選択する(ステップS8:
図16)。画像選択部50eは選択した撮像画像のデータを視点変換部50fへ出力する。
【0128】
なお、
図15に示された機能ブロックの構成のうち上記以外の構成は、
図7に示された機能ブロックの構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0129】
また、
図16に示された表示方法のうち上記以外のステップは、
図8に示されたステップとほぼ同じであるため、同一のステップについては同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0130】
また上記実施形態においては、コントローラ50は、第1補完撮像画像と第2補完撮像画像とのいずれか一方を画像選択部50eにより選択したうえで主撮像画像と重畳して表示画像を生成する。しかしコントローラ50は、第1補完撮像画像と第2補完撮像画像とを統合して1つの統合画像を生成し、その統合画像と主撮像画像とを重畳することにより遮蔽物を透過した表示画像を生成してもよい。
【0131】
具体的には、
図17(A)に示されるように、コントローラ50の視点変換部50fa(
図15)は、視点変換された第1補完撮像画像を生成する。また
図17(B)に示されるように、コントローラ50の視点変換部50fb(
図15)は、視点変換された第2補完撮像画像を生成する。この後、
図17(C)に示されるように、コントローラ50は、視点変換された第1補完撮像画像と視点変換された第2補完撮像画像とを統合し、1つの統合画像を生成する。
【0132】
この後、コントローラ50の画像重畳部50g(
図15)は、統合画像と主撮像画像とを重畳させて、主撮像画像の中の遮蔽物が透過した表示画像を生成する。
【0133】
また上記実施形態においては、表示画像において作業車両100の一部が透過される場合について説明したが、表示画像において透過される箇所は地形の一部であってもよい。以下、表示画像において地形の一部が透過されることを
図18および
図19を用いて説明する。
【0134】
図18および
図19は、深堀作業の状態を示す正面図および側面図である。
図18および
図19におけるVPは、オペレータ視点である。また
図19においては、図の簡略化のためブームシリンダ10の図示は省略されている。
図18に示されるように、深堀作業の場合、地面には深い縦溝TRが形成される。深堀作業においては、縦溝TRの底面BWが掘削面となる。このためオペレータは、縦溝TRの底面BWを視認しながら深堀作業を行うことが好ましい。しかし縦溝TRが深くなると、縦溝TRの壁面SW1がオペレータの視界を遮る。このためオペレータが直接視認できる縦溝TR内の下限は、
図18中矢印LS1で示されるように縦溝TRの壁面SW2となる。したがって運転席4Sに着座するオペレータは、掘削面となる底面BWを直接視認できなくなる。
【0135】
そこで第2補完撮像装置IS2が縦溝TRの内部を撮像する。第2補完撮像装置IS2は、好ましくは作業車両100の正面視において縦溝TRの真上領域内に位置している。このため第2補完撮像装置IS2は、掘削面となる縦溝TRの底面BWと、底面BWを掘削するバケット8とを撮像できる。
【0136】
第2補完撮像装置IS2は、上記のとおり位置情報を持つ点群データを付加された画像を撮像する。このため第2補完撮像装置IS2で撮像した1枚の画像から3次元CGモデルを作成することができる。したがって第2補完撮像装置IS2で撮像された画像をオペレータ視点の画像に変換することができる。また壁面SW1を点群データに基づいて識別し、視点変換された画像から壁面SW1を含む図中一点鎖線で囲む領域R1を削除することができる。このため視点変換後の第2補完撮像画像と主撮像画像とを重畳させることにより、遮蔽部としての壁面SW1を含む領域R1が透過された表示画像を生成することができる。この表示画像をヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに投影することにより、オペレータは矢印LS2、LS3で示すように掘削面となる底面BWとバケット8とを視認することが可能となる。
【0137】
図19に示されるように、深堀作業の場合、縦溝TRが深くなると、縦溝TRの手前壁面SW3がオペレータの視界を遮る。このため
図19中矢印LS4で示されるように、オペレータはバケット8を直接視認できなくなる場合が生じる。
【0138】
そこで第2補完撮像装置IS2が縦溝TRの内部を撮像する。第2補完撮像装置IS2は、たとえば運転室4の前面よりも前方に配置されている。このため第2補完撮像装置IS2は、掘削面となる縦溝TRの底面BWと、底面BWを掘削するバケット8とを撮像できる。
【0139】
第2補完撮像装置IS2は、上記のとおり位置情報を持つ点群データを付加された画像を撮像する。このため第2補完撮像装置IS2で撮像された画像をオペレータ視点の画像に変換することができる。また手前壁面SW3を点群データに基づいて識別し、視点変換された画像から手前壁面SW3を含む図中一点鎖線で囲む領域R2を削除することができる。このため視点変換後の第2補完撮像画像と主撮像画像とを重畳させることにより、遮蔽部としての手前壁面SW3を含む領域R2が透過された表示画像を生成することができる。この表示画像をヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに投影することにより、オペレータは矢印LS5で示すように掘削面となる底面BWとバケット8とを視認することができる。
【0140】
上記においては主撮像画像と補完撮像画像とを重畳させることにより作業車両100の一部または地形の一部を遮蔽物として透過させることについて説明したが、透過される遮蔽物は作業車両100の一部または地形の一部に限定されない。透過される遮蔽物は、オペレータと作業具(たとえばバケット8)との間に位置するものであればよい。この場合、主撮像画像および補完撮像画像に含まれる点群データに基づいてオペレータと作業具との間に位置する物体を特定し、主撮像画像と補完撮像画像とを重畳させることによりその物体を遮蔽物として透過させることができる。
【0141】
また作業車両100の一部を透過させる場合などには、予め透過される部位が設定され、その設定された部位が記憶部50k(
図7、
図15)などに記憶されていてもよい。この場合、第1補完撮像装置IS1または第2補完撮像装置IS2により撮像された補完撮像画像から、記憶された設定部位の箇所が切り取られ、切り取られた設定部位の部分における画像が主撮像画像に組み合わされてもよい。このようにして設定部位において遮蔽物が透過された表示画像が作成されてもよい。
【0142】
また
図6に示されるヘッドマウントディスプレイ200は、光学透過型であってもよい。この場合、本体部101は、半透過スクリーンを有している。ヘッドマウントディスプレイ200を装着したオペレータは、半透過スクリーンを通してヘッドマウントディスプレイ200の外の様子を視認することができる。また半透過スクリーン上には、第1補完撮像装置IS1、第2補完撮像装置IS2などにより撮像された画像が投影される。このためヘッドマウントディスプレイ200を装着したオペレータは、半透過スクリーンを透過した外部の様子に加えて、半透過スクリーン上に投影された撮像画像を視認することができる。
【0143】
光学透過型のヘッドマウントディスプレイ200によれば、ヘッドマウントディスプレイ200への電力供給が絶たれた場合でも、オペレータは半透過スクリーンを通してヘッドマウントディスプレイ200の外部の様子を視認することができる。このためヘッドマウントディスプレイ200への電力供給が絶たれた場合でも、オペレータは作業車両100を用いた作業を行うことができる。
【0144】
光学透過型のヘッドマウントディスプレイ200が用いられる場合、主撮像装置ISMは省略される。この場合、視点変換された第1補完撮像画像および第2補完撮像画像の少なくとも一方が遮蔽物の部分のみ切り取られる。そして、その切り取られた遮蔽物の部分の画像のみが半透過スクリーンに投影される。これによりオペレータが半透過スクリーンを通して視認していた外部の様子に、遮蔽物が透過された画像が投影されるため、死角が補完された表示画像が半透過スクリーンに投影されることになる。
【0145】
また遮蔽物が透過された表示画像の地形と目標地形とが互いに重ね合わされた状態で、ヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに投影されてもよい。ここで目標地形とは、3次元施工設計情報(設計面)のことである。
【0146】
また遮蔽物が透過された表示画像と目標地形とは、互いに異なる色度で表示されてもよい。たとえば現況地形に対して掘る部分が赤色で示され、仕上がった部分が緑色で示されてもよい。またたとえば施工面がワイヤーフレームで示され、足場が橙色、施工面が緑色で示されてもよい。また今日作業すべき箇所がたとえば黄色枠で示されてもよい。これにより遮蔽物が透過された表示画像と目標地形との区別が容易となる。
【0147】
上記実施形態においては第2補完撮像装置IS2が運転室4に取り付けられた構成について説明したが、第2補完撮像装置IS2はブーム6に取り付けられてもよい。この場合、ブーム6に取り付けられた、たとえば加速度センサ、ポテンショメータなどにより第2補完撮像装置IS2の位置が検出される。検出された第2補完撮像装置IS2の位置に基づいて、第2補完撮像装置IS2で撮像された第2補完撮像画像が視点変換されて主撮像画像と重畳される。これにより第2補完撮像装置IS2が、駆動する作業機と干渉することが防止できる。
【0148】
また上記実施形態においては、第1補完撮像装置IS1と第2補完撮像装置IS2とが上下に配置された構成について説明したが、これ以外の補完撮像装置が第1補完撮像装置IS1および第2補完撮像装置IS2の左右方向に配置されていてもよい。たとえば作業車両100の側方に光軸が延びる補完撮像装置または作業車両100の後方に光軸が延びる補完撮像装置が追加されてもよい。これにより作業車両100のエンジンカバー9、手摺りなどを遮蔽物として透過させることも可能となる。
【0149】
また上記実施形態においては、表示画像がヘッドマウントディスプレイ200のスクリーンに投影される場合について説明したが、表示画像はそのスクリーン以外に、ヘッドマウントディスプレイ200とは別個に設けられたモニターなどに表示されてもよい。
【0150】
またコントローラ50は、作業車両100に対するヘッドマウントディスプレイ200の傾斜角度と、視線検出センサにより検出されたオペレータの視線方向と、オペレータによって操作される操作レバー21の操作角度と、オペレータが操作する表示切替スイッチSWの切替信号とからなる群から選ばれる1つ以上に基づいて、主撮像画像と重畳させる画像として第1補完撮像画像と第2補完撮像画像とを切り替える。
【0151】
ヘッドマウントディスプレイ200の傾斜角度は、ヘッドマウントディスプレイ200に取り付けられた角度センサ102により検出可能である。オペレータによって操作される操作レバー21の操作角度は、操作レバー21の操作量検出センサ(圧力センサ、ポテンショメータなど)により検出可能である。
【0152】
オペレータの視線方向は、ヘッドマウントディスプレイ200に取り付けられた視線検出センサにより検出可能である。視線検出センサは、たとえばオペレータの左右両眼における瞳孔が向く方向を追跡して検出する追跡センサであり、たとえば赤外線カメラである。オペレータの視線方向は、たとえばステレオカメラで撮像された画像内の眼球中心位置と瞳孔、虹彩などの位置とを結ぶ直線が向く方向として推定される。
【0153】
また地面の壁面SW1、SW3を透過させるか否かは、AI(Artificial Intelligence)により判断されてもよい。
【0154】
図4、
図7および
図15の各々に示されるコントローラ50は、作業車両100に搭載されていてもよく、作業車両100の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ50が作業車両100の外部に離れて配置されている場合、コントローラ50は、主撮像装置ISM、補完撮像装置IS1、IS2、センサSE1、切替えスイッチSW、姿勢検出センサSE2、ヘッドマウントディスプレイ200などと無線により接続されていてもよい。コントローラ50は、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0155】
図5および
図13の各々に示される記憶部50kは、コントローラ50に内蔵されていてもよく、またコントローラ50とは別に設けられていてもよい。記憶部50kは、たとえばメモリである。
【0156】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0157】
1 本体、2 作業機、3 旋回体、4 運転室、4S 運転席、5 走行体、5Cr 履帯、5M 走行モータ、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、8a 刃先、9 エンジンカバー、10 ブームシリンダ、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、13 ブームフートピン、14 ブームトップピン、15 アームトップピン、21 操作レバー、22 前後進レバー、23 操作ペダル、50 コントローラ、50a,50b,50c 画像取得部、50d 検出情報取得部、50e 画像選択部、50f,50fa,50fb 視点変換部、50g 画像重畳部、50h ヘッドマウントディスプレイ制御部、50i 角度算出部、50j 作業状態判定部、50k 記憶部、100 作業車両、101 本体部、102 角度センサ、103 装着部、200 ヘッドマウントディスプレイ、300 ダンプトラック、AP 取付部、BL 線、BR1,BR2 ブラケット、BT 前上梁、BW 底面、CH1,CH2 ホルダー、CI1a,CI1b,CI2 主撮像画像、DI1,DI2,DI3 表示画像、DL 表示装置、EX1 前方延在部、EX2 下方延在部、FPL 第1フロントピラー、FPR 第2フロントピラー、FR 床部、HL 水平線、II 撮像装置、IS1 第1補完撮像装置、IS2 第2補完撮像装置、ISM 主撮像装置、MI1 第2補完撮像画像、MI2,MI3 第1補完撮像画像、OA1,OA2,OA3 光軸、R1,R2 領域、RF 屋根部、RX 旋回軸、SE1 角度検出センサ、SE2 姿勢検出センサ、SF 法面、SW 切替スイッチ、SW1,SW2 壁面、SW3 手前壁面、TR 縦溝、VA1,VA2 撮像範囲、VP オペレータ視点。