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特開2022-72613イメージング方法およびイメージング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072613
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】イメージング方法およびイメージング装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/335 20110101AFI20220510BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220510BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220510BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H04N5/335
G06T1/00 500A
H04N5/225 300
H04N5/232
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182157
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】下馬場 朋禄
(72)【発明者】
【氏名】塩見 日隆
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智義
【テーマコード(参考)】
5B057
5C024
5C122
【Fターム(参考)】
5B057BA12
5B057BA15
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE06
5C024CX37
5C024EX01
5C024EX41
5C024EX42
5C024HX28
5C024HX29
5C024HX30
5C024JX02
5C122EA37
5C122EA68
5C122FB03
5C122FC06
5C122HA85
5C122HA88
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができるイメージング方法およびイメージング装置を提供する。
【解決手段】撮像対象10の像と複数の投影パターンを重畳させた光を単位素子が少なくとも2つ以上1次元的に並んだリニアイメージセンサ3に結像させるステップと、リニアイメージセンサ3により取得された複数の1次元撮像データに基づいてリニアイメージセンサ3の集光方向に最適化計算を行うステップと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象の像と複数の投影パターンを重畳させた光を単位素子が少なくとも2つ以上1次元的に並んだリニアイメージセンサに結像させるステップと、
前記リニアイメージセンサにより取得された複数の1次元撮像データに基づいて前記リニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行うステップと、を有することを特徴とするイメージング方法。
【請求項2】
前記リニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行った後、前記集光方向と直交する方向に最適化計算を行うステップを有することを特徴とする請求項1に記載のイメージング方法。
【請求項3】
前記リニアイメージセンサの集光方向の最適化計算は、複数の前記投影パターンの照射を表す行列A、全変動を求める行列B、再構成される画像の集光方向のある1ラインを表すベクトルX^、撮影データを表すベクトルyを基に、数1に基づく演算を行い、撮影データと再構成される画像の集光方向のある1ラインの2乗誤差と、再構成される画像のある1ラインにおける全変動を最小化することを特徴とする請求項1または2に記載のイメージング方法。
【数1】
【請求項4】
前記リニアイメージセンサの集光方向の最適化計算と前記集光方向と直交する方向の最適化計算は、同じ数式が使用されることを特徴とする請求項3に記載のイメージング方法。
【請求項5】
前記行列Aは、複数の前記投影パターンの照射と光学系により一次元に集光する物理的な撮影過程を表す行列の条件を含むことを特徴とする請求項3または4に記載のイメージング方法。
【請求項6】
複数の投影パターンを出力する空間光変調器と、
単位素子が少なくとも2つ1次元的に並んだリニアイメージセンサと、
前記リニアイメージセンサに撮像対象の像と前記複数の投影パターンを重畳させた光を結像させる結像手段と、
前記リニアイメージセンサにより取得された複数の1次元撮像データに基づいて前記リニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行う解析手段と、を備えることを特徴とするイメージング装置。
【請求項7】
前記解析手段は、前記リニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行った後、前記集光方向と直交する方向に最適化計算を行うことを特徴とする請求項6に記載のイメージング装置。
【請求項8】
前記空間光変調器は、デジタルマイクロミラーデバイスであることを特徴とする請求項6に記載のイメージング装置。
【請求項9】
前記結像手段は、シリンドリカルレンズであることを特徴とする請求項6に記載のイメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージセンサにより取得された撮像データから2次元画像もしくは3次元画像の再構成を行うためのイメージング方法およびイメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、イメージセンサにより取得された撮像データから2次元画像もしくは3次元画像の再構成を行う技術として、シングルピクセルイメージング(SPI)やCCD・CMOSによる高速カメラ技術が知られている。
【0003】
SPIは、撮像対象に特殊な投影パターンを重畳させた光をイメージセンサに結像させて撮影を繰り返し、取得された複数の撮像データに基づいて統計処理、線形変換、最適化計算等を行うことで撮像対象の像を再構成する技術である。また、SPIは、イメージセンサとして単位素子であるフォトダイオードを使用しているため、CCD・CMOSによる高速カメラ技術と比べて撮影できる波長帯の自由度が高く、原理的にはフォトダイオードの高速応答性に基づく高速イメージングが可能である。
【0004】
特許文献1のイメージング装置は、SPIを利用して3次元画像を再構成するものであり、照明光を照射する光源と撮像対象との間に設けられた空間光変調器と、該空間光変調器でパターン化された照明光が撮像対象に結像するように配置されるレンズと、撮像対象からの照明光の反射光または透過光が担持する撮像データを取得する撮像素子と、を備え、空間光変調器に表示される多値2次元の投影パターンを時間的に変化させ、空間光変調器に表示された投影パターンおよび、その投影パターンが表示された際に撮像素子の単位素子毎に取得された撮像データの関係を投影パターンの表示毎に取り込み、これら投影パターン毎に取り込んだ撮像データに基づいて、単位素子毎に2次元要素画像を再構成し、この再構成された単位素子毎の2次元要素画像に基づいて撮像対象の3次元画像を再構成することにより、解像度および奥行き方向の分解能に優れている。尚、特許文献1で使用される撮像素子は、単位素子を2次元的に配列させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-136837号公報(第5頁~第6頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のイメージング装置において高解像度の3次元画像を得るためには、単位素子毎に多くの投影パターンに基づく撮像データを取り込むことにより、解像度の高い2次元要素画像を再構成させる必要があることから、撮影に長い時間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができるイメージング方法およびイメージング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のイメージング方法は、
撮像対象の像と複数の投影パターンを重畳させた光を単位素子が少なくとも2つ以上1次元的に並んだリニアイメージセンサに結像させるステップと、
前記リニアイメージセンサにより取得された複数の1次元撮像データに基づいて前記リニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行うステップと、を有することを特徴としている。
この特徴によれば、リニアイメージセンサにより取得された1次元撮像データは、集光方向と直交する方向に重複や欠損がない連続したデータであり、データ圧縮されないことから、複数の1次元撮像データに基づいて集光方向に最適化計算を行い、その結果と集光方向と直交する方向のデータを組み合わせることにより、少ない投影パターン数で高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができる。また、本発明のイメージング方法は、撮像対象の像と複数の投影パターンを重畳させた光をリニアイメージセンサに結像させることにより、機械的走査を必要としないため、様々な撮像対象のイメージングに適用できる。
【0009】
前記リニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行った後、前記集光方向と直交する方向に最適化計算を行うステップを有することを特徴としている。
この特徴によれば、先ず重複や欠損の多いリニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行い、その後、集光方向と直交する方向に2段階の最適化計算を行うことにより、より高解像度に再構成画像を得ることができる。
【0010】
前記リニアイメージセンサの集光方向の最適化計算は、複数の前記投影パターンの照射を表す行列A、全変動を求める行列B、再構成される画像の集光方向のある1ラインを表すベクトルX^、撮影データを表すベクトルyを基に、数1に基づく演算を行い、撮影データと再構成される画像の集光方向のある1ラインの2乗誤差と、再構成される画像のある1ラインにおける全変動を最小化することを特徴としている。
この特徴によれば、集光方向のライン毎に最適化計算を行うことにより1ラインの再構成を行い、同様の最適化計算を撮像対象の画素数に応じて所定回数繰り返すことにより、高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができる。
【0011】
【数1】
【0012】
前記リニアイメージセンサの集光方向の最適化計算と前記集光方向と直交する方向の最適化計算は、同じ数式が使用されることを特徴としている。
この特徴によれば、高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができる。
【0013】
前記行列Aは、複数の前記投影パターンの照射と光学系により一次元に集光する物理的な撮影過程を表す行列の条件を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができる。
【0014】
本発明のイメージング装置は、
複数の投影パターンを出力する空間光変調器と、
単位素子が少なくとも2つ1次元的に並んだリニアイメージセンサと、
前記リニアイメージセンサに撮像対象の像と前記複数の投影パターンを重畳させた光を結像させる結像手段と、
前記リニアイメージセンサにより取得された複数の1次元撮像データに基づいて前記リニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行う解析手段と、を備えることを特徴としている。
この特徴によれば、リニアイメージセンサにより取得された1次元撮像データは、集光方向と直交する方向に重複や欠損がない連続したデータであり、データ圧縮されないことから、複数の1次元撮像データに基づいて集光方向に最適化計算を行い、その結果と集光方向と直交する方向のデータを組み合わせることにより、少ない投影パターン数で高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができる。また、本発明のイメージング装置は、撮像対象の像と複数の投影パターンを重畳させた光をリニアイメージセンサに結像させることにより、機械的走査を必要としないため、様々な撮像対象のイメージングに適用できる。
【0015】
前記解析手段は、前記リニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行った後、前記集光方向と直交する方向に最適化計算を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、リニアイメージセンサの集光方向と、集光方向と直交する方向に2段階の最適化計算を行うことにより、より高解像度に再構成画像を得ることができる。
【0016】
前記空間光変調器は、デジタルマイクロミラーデバイスであることを特徴としている。
この特徴によれば、緻密な投影パターンを高速で出力することが可能となるため、より高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができる。
【0017】
前記結像手段は、シリンドリカルレンズであることを特徴としている。
この特徴によれば、簡素な構成で撮像対象の像と複数の投影パターンを重畳させた光をリニアイメージセンサに1次元的に結像させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例におけるイメージング装置を示す模式図である。
図2】実施例におけるイメージング方法の手順を示す図である。
図3】(a)は、撮像対象であり、(b)は、実施例におけるイメージング装置を用いたイメージング方法により再構成された撮像対象の再構成画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明者らは、シングルピクセルイメージング(Single-pixel Imaging:SPI)と同様に、撮像対象の像に投影パターンを重畳させた光を、単位素子が1次元的に並んだリニアイメージセンサに結像させて撮影を行い、投影パターンを変更しながらこの撮影を繰り返すことにより取得された複数の1次元撮像データに基づいてリニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行うことで、SPIと比べて格段に撮影回数を減らした上で、解像度を高めた画像再構成が可能となるとともに、CCD・CMOSによる高速カメラ技術と比べて格段にフレームレートが高く、解像度を高めた画像再構成が可能となるとの知見を得た。
【0020】
画像の再構成は、集光方向の1ライン毎に最適化計算を行い1ラインの再構成を行うものであり、この過程は以下数2の数式を用いて以下のように表現できる。
【0021】
【数2】
【0022】
ここで、Xは求めたい物体の集光方向の1ラインを表すベクトル、Aは複数の投影パターンの照射と光学系による集光を表す行列、Bは複数の投影パターンを照射した時の強度データを表すベクトルである。例えば、撮像対象の画素数をN×N画素、投影パターン照射回数をMとした場合、行列Aの行ベクトルはある投影パターン(N次元ベクトル)を表し、投影パターン照射回数がM回の場合は、異なる行ベクトルが列方向にM個並ぶこととなり、行列AはM×Nの行列となる。また、ベクトルXのサイズはN×1、ベクトルBのサイズはM×1となる。
【0023】
行列Aの逆行列が求められるのであれば、簡単にベクトルXを求められるが、この行列Aには逆行列が存在しないため、ベクトルX^の全変動がスパースであるという条件を入れて、前述した数1の数式を用いて以下の最適化を行うことでベクトルX^を推定する。
【0024】
本発明は、投影パターン毎にリニアイメージセンサに1次元的に結像されることで取得された複数の1次元撮像データに基づいてリニアイメージセンサの集光方向に最適化計算を行うことにより、高速かつ高解像度に2次元画像もしくは3次元画像の再構成を行うものである。好適には、集光方向の最適化計算に加え、集光方向と直交する方向の最適化計算を行うことにより、高速かつより高解像度に2次元画像もしくは3次元画像の再構成を行うものである。この2段階の最適化計算には、以下の数1の数式が用いられる。
【0025】
【数1】
【0026】
ここで、Aは複数の投影パターンの照射を表す行列、Bは全変動を求める行列、X^は再構成される画像の集光方向のある1ラインを表すベクトル、yは撮影データを表すベクトルであり、上記数式による最適化計算は、撮影データと再構成される画像の集光方向のある1ラインの2乗誤差と、再構成される画像のある1ラインにおける全変動を最小化するものである。また、行列Aは、複数の投影パターンの照射と光学系により一次元に集光する物理的な撮影過程を表す行列の条件を含むものである。尚、上記数式には、撮影の条件に応じた誤差等を反映する各種パラメータが追加されてもよい。
【0027】
好適には、数1の数式における行列Bは全変動を求める行列であって、ベクトルX^の隣接する画素の差分を取る演算を行う行列である。この最適化演算により、撮像対象の集光方向の1ラインの再構成が行われ、この作業を集光方向に直交する方向に合計N回繰り返すことで、N×N画素の画像の再構成が行われる。すなわち、この最適化演算により、集光方向に圧縮された画像の再構成が行われ、N×N画素の画像の再構成が可能となっている。好適には、集光方向と直交する方向にも同様の最適化を行うことでノイズが除去されたN×N画素の画像を再構成することができる。
【0028】
また、最適化計算に使用される数1の数式において、行列Aは、複数の投影パターンの照射と光学系により一次元に集光する物理的な撮影過程を表す行列の条件を含むことにより、リニアイメージセンサにより取得される1次元撮像データの解析精度を高めることができるため、高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができる。
【0029】
本発明に係るイメージング方法およびイメージング装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0030】
(イメージング装置)
図1に示されるように、本実施例におけるイメージング装置1は、複数の投影パターンを変調面2aに出力可能な空間光変調器2と、単位素子が1次元的に並んだリニアイメージセンサ3と、撮像対象10の像を空間光変調器2の変調面2aに結像するレンズ4と、撮像対象10の像と空間光変調器2の変調面2aに出力される投影パターンを重畳させた光をリニアイメージセンサ3に1次元的に結像する結像手段としてのシリンドリカルレンズ5と、リニアイメージセンサ3により取得された1次元撮像データをアナログデータからデジタルデータに変換するA/Dコンバータ6と、デジタル変換された複数の1次元撮像データと空間光変調器2の投影パターンデータに基づいて最適化計算を行う解析手段としてのパーソナルコンピュータ7と、から主に構成されている。
【0031】
パーソナルコンピュータ7は、空間光変調器2の変調面2aに出力される投影パターン毎に対応する1次元撮像データを記憶する記憶部と、記憶部に記憶された複数の1次元撮像データに基づいて2段階の最適化計算を行う解析部と、解析部により再構成された画像データを入力し再構成画像を表示する表示部と、を備えている。
【0032】
空間光変調器2は、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device:DMD)であり、入力光に対する出力光の光強度を変調可能な複数の画素領域が配列された変調面2aを有し、設定された投影パターンに基づいて変調面2aの複数の画素領域それぞれにおいて2値以上の光強度変調が可能となっている。空間光変調器2としてDMDを使用することにより、緻密な投影パターンを高速で出力することができる。
【0033】
尚、本実施例において空間光変調器2は、投影パターンとして白黒による2値2次元のランダムパターン(図1参照)を出力するものとして説明するが、これに限らず、白黒の他にグレイレベルを有する値を含めて3値以上からなる2次元のランダムパターンを出力することにより、画像再構成に必要な1次元撮像データの数を減らして解析を容易にしてもよい。また、投影パターンは、ランダムパターンに限らず、アダマール変換や離散コサイン変換(Discrete Cosine Transform:DCT)を用いたパターンに設定されることにより、より高速に再構成画像を得られるようにしてもよい。
【0034】
リニアイメージセンサ3は、Teledyne DALSA社製のLinea HS 32k(16384画素,300KHz/ライン)である。
【0035】
尚、本発明のイメージング方法におけるリニアイメージセンサは、理論上、単位素子が1次元的に2つ並んだものであってもよい。
【0036】
レンズ4は、両凸レンズであり、撮像対象10の像を空間光変調器2の変調面2aに結像させる。
【0037】
結像手段は、平凸型のシリンドリカルレンズ5であり、レンズ4により空間光変調器2の変調面2aに結像される撮像対象10の像と、空間光変調器2の変調面2aに出力される投影パターンを重畳させた光を集光しリニアイメージセンサ3に1次元的に結像させる。
【0038】
尚、本実施例において、リニアイメージセンサ3の集光方向とは、シリンドリカルレンズ5により集光される方向、すなわちリニアイメージセンサ3の短手方向(図1参照)のことであり、リニアイメージセンサ3の集光方向と直交する方向とは、シリンドリカルレンズ5により集光されない方向、すなわちリニアイメージセンサ3の長手方向(図1参照)、言い換えればリニアイメージセンサ3を構成する単位素子が1次元的に並ぶ方向のことである。
【0039】
(イメージング方法)
次に、本実施例におけるイメージング装置1を用いたイメージング方法について図2のフローチャートを用いて説明する。先ず、撮像対象10の像がレンズ4により空間光変調器2の変調面2aに結像(ステップS01)されると、空間光変調器2の変調面2aに予め設定された投影パターンの出力(ステップS02)が行われ、撮像対象10の像と空間光変調器2の変調面2aに出力される投影パターンを重畳させた光がシリンドリカルレンズ5によりリニアイメージセンサ3に1次元的に結像(ステップS03)される。
【0040】
次いで、リニアイメージセンサ3により1次元撮像データが取得(ステップS04)されると、当該1次元撮像データがA/Dコンバータ6によりアナログデータからデジタルデータに変換(ステップS05)され、デジタル変換された1次元撮像データが撮影時に空間光変調器2の変調面2aに出力された投影パターンデータと紐付けられてパーソナルコンピュータ7の記憶部に記憶(ステップS06)される。
【0041】
次いで、パーソナルコンピュータ7は、記憶部に記憶された1次元撮像データの数が予め設定された撮影回数と同数に到達したか否かを判定(ステップS07)する。尚、記憶部に記憶された1次元撮像データの数が予め設定された撮影回数に到達するまで空間光変調器2の変調面2aに出力される投影パターンを変更しながらステップS02~S07が繰り返される。
【0042】
次いで、記憶部に記憶された1次元撮像データの数が予め設定された撮影回数に到達すると、解析部において上述した数式を使用して複数の1次元撮像データと投影パターンデータに基づいてリニアイメージセンサ3の集光方向に最適化計算(ステップS08)が行われ、その後、同じ数式を使用してリニアイメージセンサ3の集光方向に直交する方向に最適化計算(ステップS09)が行われる。
【0043】
次いで、解析部において、ステップS07とステップS08における最適化計算の結果を組み合わせることにより画像再構成(ステップS10)が行われ、再構成された画像が表示部に表示(ステップS11)される。
【0044】
尚、パーソナルコンピュータ7には、空間光変調器2が接続されており、予め設定された撮影回数および撮影毎に空間光変調器2の変調面2aに出力される投影パターン等の情報が共有されている。
【0045】
このように、本実施例におけるイメージング装置1を用いたイメージング方法は、撮像対象10の像と空間光変調器2の変調面2aに出力される複数の投影パターンを重畳させた光をシリンドリカルレンズ5により集光してリニアイメージセンサ3に1次元的に結像させることにより、リニアイメージセンサ3により取得される複数の1次元撮像データは、リニアイメージセンサ3の集光方向にはデータ圧縮されるが、集光方向と直交する方向にはデータ圧縮されず重複や欠損がない連続したデータとなることから、投影パターン毎に取得された複数の1次元撮像データに基づいてリニアイメージセンサ3の集光方向に最適化計算を行った後、リニアイメージセンサ3の集光方向と直交する方向に最適化計算を行い、これらの結果を組み合わせることにより、少ない投影パターン数で高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができる。
【0046】
本実施例におけるイメージング装置1を用いたイメージング方法が従来のSPIと比べて格段に撮影回数を減らした上で、解像度を高めた画像再構成が可能となるとともに、CCD・CMOSによる高速カメラ技術と比べて格段にフレームレートが高く、解像度を高めた画像再構成が可能となる理由として、撮像対象の像に投影パターンを重畳させた光を1つの単位素子からなるポイントセンサに結像させて撮影を行うSPIと比較すると、リニアイメージセンサ3は単位素子が1次元的に並んでいることにより単位素子の数が増えているため、1回の撮影で取得できる情報量が多くなる。詳しくは、リニアイメージセンサ3は単位素子が1次元的に並んでいるため、リニアイメージセンサ3の長手方向、すなわちリニアイメージセンサ3の集光方向と直交する方向における空間分解能が高くなっている。そのため、撮像対象10の像に投影パターンを重畳させた光をシリンドリカルレンズ5により集光しリニアイメージセンサ3に1次元的に結像することで取得される1次元撮像データは、集光方向にはデータ圧縮され、SPIと同様に解像度の低い点データと見なすことができ、集光方向と直交する方向にはデータ圧縮されず、重複や欠損がない高解像度の連続したデータと見なすことができる。
【0047】
このように、リニアイメージセンサ3により取得される1次元撮像データは、リニアイメージセンサ3の集光方向と直交する方向に重複や欠損がない連続した高解像度のデータであるため、1回の撮影で取得できる情報量が多く、投影パターン毎に取得された複数の1次元撮像データに基づいて最適化計算を行わなくても各データの関連性がある適度明らかな状態となっている。そのため、投影パターン毎に取得された複数の1次元撮像データから画像再構成を行うためには、少なくとも解像度の低い点データと見なすことができるリニアイメージセンサ3の集光方向のデータに基づいて最適化計算を行うことにより、集光方向のデータの関連性を求めればよいこととなり、結果的に画像再構成に必要な撮影回数を減らした上で、解像度を高めた画像再構成が可能となる。
【0048】
また、本実施例のイメージング装置1を用いたイメージング方法では、リニアイメージセンサ3の集光方向と、集光方向と直交する方向の2段階の最適化計算を行う上に、これらの最適化計算には同じ数式が使用されるため、より高速かつ高解像度に再構成画像を得ることができる。
【0049】
ここで、本実施例のイメージング装置1を用いたイメージング方法と、CMOSによる高速カメラ技術との比較を行った結果について説明する。高速カメラ技術に使用されるイメージセンサとして、キャノン社製の120MXS CMOSセンサ(13272×9176画素)を使用した。尚、当該CMOSセンサは、フレームレート9.4fpsで、データの転送には11.3Gbpsが必要となる。対して、本実施例のイメージング装置1を構成するリニアイメージセンサ3は、Teledyne DALSA社製のLinea HS 32k(16384画素,300KHz/ライン)を使用した。尚、本実施例のイメージング装置1を用いたイメージング方法では、1ラインの50%の投影パターン数があれば十分高解像度の再構成画像(16384×16384画素)が得られることが発明者らによって検証されている。
【0050】
これらの条件で本実施例のイメージング装置1を用いたイメージング方法によるイメージング性能を見積もると、投影パターン数は8192回となるため、フレームレート37fps(≒300KHz/8192)の速度で、16384×16384画素の画像を取得できる見積もりとなる。このように、本実施例のイメージング装置1を用いたイメージング方法とは、CMOSによる高速カメラ技術と比べて格段に高フレームレートで解像度を高めた画像再構成が可能となることが確認された。
【0051】
また、本実施例のイメージング装置1を用いたイメージング方法によるデータの転送には、1Gbpsが必要となる。これは、本実施例のイメージング装置1を用いたイメージング方法には、暗にデータ圧縮の機能が備わっていることを示している。
【0052】
また、本実施例のイメージング装置1を用いたイメージング方法と、SPIとの比較を行った結果について説明する。SPIで16384×16384画素の画像を再構成することを考えると、最適化手法(圧縮センシング)を使用した場合には再構成画像の画素数の約10%、すなわち約2680万回の投影パターン数が必要となり、深層学習の場合には再構成画像の画素数の約2%、すなわち540万回の投影パターン数が必要となる。本実施例のイメージング装置1を用いたイメージング方法では、16384×16384画素の画像を再構成するために必要な投影パターン数は8192回であることから、SPIと比べて格段に撮影回数を減らした上で解像度を高めた画像再構成が可能となることが確認された。
【0053】
尚、リニアイメージセンサ3は、1ラインのものを想定しているが、複数ラインのものを使用することにより、撮影回数をさらに減らして画像再構成を行うことができる。この場合、リニアイメージセンサのライン毎に受光角度が変化するため、ライン毎に最適化計算の数式における行列Aが設定される。
【0054】
また、本実施例におけるイメージング装置1を用いたイメージング方法は、撮像対象10の像と複数の投影パターンを重畳させた光をシリンドリカルレンズ5によりリニアイメージセンサ3に1次元的に結像させることにより、機械的走査を必要としないため、様々な撮像対象のイメージングに適用できる。
【0055】
尚、本実施例においては、1つのリニアイメージセンサ3を用いて1次元撮像データから2次元画像を再構成する態様について説明してきたが、これに限らず、例えばリニアイメージセンサを複数配置して異なる角度から1次元撮像データをそれぞれ取得させることにより、三角測量の原理を応用して3次元画像を再構成してもよい。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0057】
例えば、前記実施例では、2段階の最適化計算において同じ数式を使用する態様について説明したが、これに限らず、例えば集光方向と直交する方向の最適化計算において異なる数式が使用されてもよい。
【0058】
また、前記実施例では、最適化計算の数式を用いた1次元撮像データの解析により画像再構成を行うものとして説明したが、深層学習により画像再構成を行ってもよい。
【0059】
また、リニアイメージセンサは、単位素子が1次元的に連続して複数並んだものに限らず、SPIに使用されるポイントセンサが所定間隔置きに複数並んだものであってもよい。
【0060】
また、空間光変調器は、DMDに限らず、高精度かつ高速に変調を行うことができるものであればよい。
【0061】
また、前記実施例では、撮像対象の像を空間光変調器の変調面に結像して投影パターンと重畳させる態様について説明したが、これに限らず、空間光変調器の変調面に出力された投影パターンを撮像対象に照射して撮像対象の像と重畳させてもよい。
【0062】
また、結像手段は、シリンドリカルレンズに限らず、リニアイメージセンサに撮像対象の像と投影パターンを重畳させた光を1次元的に結像できるように構成されるものであればよい。
【0063】
また、撮像対象の像と投影パターンを重畳させた光は、少なくともリニアイメージセンサが感度を有する波長であればよく、撮像対象の像は、撮影用に設定された光源からの照射光により得られるものであっても、太陽光等の自然光により得られるものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 イメージング装置
2 空間光変調器
2a 変調面
3 リニアイメージセンサ
4 レンズ
5 シリンドリカルレンズ(結像手段)
6 A/Dコンバータ
7 パーソナルコンピュータ(解析手段)
10 撮像対象
図1
図2
図3