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特開2022-72635非接触送電システム及び非接触給電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072635
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】非接触送電システム及び非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20220510BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220510BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20220510BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20220510BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220510BHJP
   B64F 1/12 20060101ALI20220510BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20220510BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/40
H02J50/80
B64C39/02
B64F1/12
B64F1/36
B64D27/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182187
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 慶一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 晶生
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 義範
(72)【発明者】
【氏名】田渕 功
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503CA11
5G503DA04
5G503FA06
5G503GB08
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】飛行体に搭載されたバッテリーに適切に給電することができる非接触送電システム及び非接触給電システムを提供することである。
【解決手段】非接触送電システム100は、電線路を構成する電線を中継する電柱10に配置され、非接触で受電する受電装置210を有する飛行体200が降着可能な飛行体用ポート110と、電線から電力を取得し、飛行体用ポート110に降着する飛行体200に非接触で送電する送電装置120と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線路を構成する電線を中継する支持設備に配置され、非接触で受電する受電装置を有する飛行体が降着可能な飛行体用ポートと、
前記電線から電力を取得し、前記飛行体用ポートに降着する前記飛行体に非接触で送電する送電装置と、
を備える、非接触送電システム。
【請求項2】
前記飛行体用ポートは、メッシュ状の板形状で構成される、
請求項1に記載の非接触送電システム。
【請求項3】
前記送電装置は、前記飛行体用ポートの周囲に送電用コイルを備える、
請求項1又は2に記載の非接触送電システム。
【請求項4】
前記送電装置は、前記飛行体用ポートに降着する前記飛行体に対して、少なくとも当該飛行体が次に降着する他の支持設備に配置された飛行体用ポートまで飛行可能な電力を送電する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の非接触送電システム。
【請求項5】
非接触で受電する受電装置を有する飛行体と、
電線路を構成する電線を中継する支持設備に配置され、前記飛行体が降着可能な飛行体用ポートと、
前記電線から電力を取得し、前記飛行体用ポートに降着する前記飛行体に非接触で送電する送電装置と、
を備え、
前記送電装置は、
前記飛行体用ポートの周囲に送電用コイルと、
前記飛行体用ポートの下部であって前記支持設備に取り付けられ、前記飛行体への送電を制御する送電用モジュールと、を有し、
前記飛行体は、
当該飛行体の脚部にそれぞれ配置された、受電用コイルと、前記送電装置からの受電を制御する受電用モジュールと、を有する、
非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触送電システム及び非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飛行体(例えば、ドローン等)に関する技術が発展し、スポーツやイベントにおける空撮、人が立ち入り難い災害現場への調査、広大な土地に建設された太陽光発電所の点検、及び無人による荷物の輸送等、飛行体の活用に対する期待感が高まっている。このような飛行体では、バッテリーが搭載されており、当該バッテリーの充電に関して、様々な技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、非接触給電により、飛行体に搭載されたバッテリーに充電しつつ、飛行体が離着陸する際の飛行動作を安定させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-71285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、飛行体は、様々な分野での活用が期待されており、そのような状況において、安定した飛行を維持するためのバッテリー管理が重要となる。例えば、飛行体の飛行開始時にバッテリーが満充電されていたとしても、飛行が長時間に及ぶ場合や長距離飛行が求められる場合には、途中でバッテリーの充電切れが生じてしまうおそれがある。
【0006】
飛行体の飛行時間及び飛行距離を伸ばすためには、飛行体に大容量の大型バッテリーを搭載することが考えられるが、その場合、大型バッテリーの荷重によって飛行効率が低下し、期待する飛行時間及び飛行距離を得られない可能性がある。一方、飛行体を小型化及び軽量化することによって、飛行効率を向上させようとすれば、飛行体に搭載されるバッテリーも小型及び軽量のものを採用することになるため、そのバッテリー容量には限界がある。
【0007】
そこで、本発明は、飛行体に搭載されたバッテリーの充電切れを回避しつつ、適切に給電することができる非接触送電システム及び非接触給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る非接触送電システムは、電線路を構成する電線を中継する支持設備に配置され、非接触で受電する受電装置を有する飛行体が降着可能な飛行体用ポートと、電線から電力を取得し、飛行体用ポートに降着する飛行体に非接触で送電する送電装置と、を備える。
【0009】
この態様によれば、電線路を構成する電線を中継する支持設備に飛行体が降着可能な飛行体用ポートが配置され、送電装置は、電線から電力を取得し、飛行体用ポートに降着する飛行体に非接触で送電する。これにより、飛行体は、支持設備に配置された飛行体用ポートに降着すれば、当該飛行体に搭載されるバッテリーに給電することができる。例えば、飛行体に小型及び軽量のバッテリーを搭載し、飛行体全体を小型化及び軽量化した場合であっても、飛行体は、支持設備に配置された飛行体用ポートに降着し、送電装置によって飛行体に搭載されたバッテリーに非接触で給電される。すなわち、飛行途中におけるバッテリーの充電切れを回避しつつ、バッテリーに適切に給電できるため、長時間飛行及び長距離飛行が可能な小型及び軽量の飛行体を実現することができる。
【0010】
上記態様において、飛行体用ポートは、メッシュ状の板形状で構成されてもよい。
【0011】
この態様によれば、飛行体用ポートは、一般的に屋外に設置された支持設備に配置されるが、風に煽られたり、雨に打たれたりしても、メッシュ状の板形状で構成されているため、それらの影響を受け難い。
【0012】
上記態様において、送電装置は、飛行体用ポートの周囲に送電用コイルを備えてもよい。
【0013】
この態様によれば、飛行体用ポートの周囲に送電用コイルを備えるため、飛行体が当該送電用コイルに囲われた範囲である飛行体用ポートに降着すれば、磁界共鳴方式を用いてバッテリーに非接触で給電される。
【0014】
上記態様において、送電装置は、飛行体用ポートに降着する飛行体に対して、少なくとも当該飛行体が次に降着する他の支持設備に配置された飛行体用ポートまで飛行可能な電力を送電してもよい。
【0015】
この態様によれば、飛行体用ポートは、例えば、街中に設置されている複数の支持設備にそれぞれ配置されており、飛行体としては、次に降着する他の支持設備に配置された飛行体用ポートまで飛行可能な電力を給電されればよい。すなわち、飛行体は、当該飛行体用ポートに長時間留まる必要がなく、バッテリーへの給電を短時間で済ますことができる。
【0016】
本発明の一態様に係る非接触給電システムは、非接触で受電する受電装置を有する飛行体と、電線路を構成する電線を中継する支持設備に配置され、飛行体が降着可能な飛行体用ポートと、電線から電力を取得し、飛行体用ポートに降着する飛行体に非接触で送電する送電装置と、を備え、送電装置は、飛行体用ポートの周囲に送電用コイルと、飛行体用ポートの下部であって支持設備に取り付けられ、飛行体への送電を制御する送電用モジュールと、を有し、飛行体は、当該飛行体の脚部にそれぞれ配置された、受電用コイルと、送電装置からの受電を制御する受電用モジュールと、を有する。
【0017】
この態様によれば、電線路を構成する電線を中継する支持設備に飛行体が降着可能な飛行体用ポートが配置され、送電装置は、電線から電力を取得し、飛行体用ポートに降着する飛行体に非接触で送電する。さらに、飛行体用ポートの周囲に送電用コイルを備え、送電用モジュールは、飛行体用ポートの下部であって支持設備に取り付けられるため、飛行体用ポートの中央領域に飛行体が降着し易く、さらに、飛行体が当該飛行体用ポートに降着すれば、磁界共鳴方式を用いてバッテリーに非接触で給電される。例えば、飛行体に小型及び軽量のバッテリーを搭載し、飛行体全体を小型化及び軽量化した場合であっても、飛行体は、支持設備に配置された飛行体用ポートに降着し、送電装置によって飛行体に搭載されたバッテリーに非接触で給電される。すなわち、飛行途中におけるバッテリーの充電切れを回避しつつ、バッテリーに適切に給電できるため、長時間飛行及び長距離飛行が可能な小型及び軽量の飛行体を実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、飛行体に搭載されたバッテリーの充電切れを回避しつつ、適切に給電することができる非接触送電システム及び非接触給電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る非接触送電システム100を示す概要図である。
図2】本発明の一実施形態に係る非接触送電システム100及び飛行体200における各部の構成を示す拡大図である。
図3】本発明の一実施形態に係る非接触給電システム300における各部の機能を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る非接触給電システム300が実行する飛行体200に給電する給電方法400を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る非接触送電システム100を飛行体200が中継しながら飛行する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0021】
<一実施形態>
[非接触送電システムの概要]
一般的に、発電所で発電された電気は、種々の変電所を介して街中の電線に配電されている。街中には、所謂、電柱と呼ばれる支持設備が設けられており、当該電柱は、主に、高圧配電線、低圧配電線及び柱上変圧器を備えている。高圧配電線には、配電用変電所からの高圧(6600V)の電気が流れており、低圧配電線には、柱上変圧器によって変圧された低圧(100V又は200V)の電気が流れている。電柱は、高圧配電線及び低圧配電線を中継しつつ、引き込み線を介して低圧配電線に流れる電気を各家庭用に送っている。
【0022】
なお、実際には、電柱には、高圧配電線及び低圧配電線と電柱とを絶縁する碍子、異常電流を遮断するヒューズ、及びアース線等が備えられているが、ここでは、電柱の詳しい説明は省略する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る非接触送電システム100を示す概要図である。図1において、非接触送電システム100は、電柱10に取り付けられることによって構成されている。上述したように、電柱10は、高圧配電線、低圧配電線及び柱上変圧器等を備えており、一般的に街中に設置されているもので構わない。
【0024】
非接触送電システム100は、電柱10の上部に、飛行体が降着可能な飛行体用ポート110を備えており、電柱10に備えられている低圧配電線(100V又は200V)から電気を取得し、当該飛行体用ポート110に降着した飛行体に送電する。
【0025】
[非接触送電システムの構成]
図2は、本発明の一実施形態に係る非接触送電システム100及び飛行体200における各部の構成を示す拡大図である。図2において、非接触送電システム100は、飛行体用ポート110と送電装置120とを備え、さらに、送電装置120は、送電用コイル121及び送電用モジュール122を有する。飛行体200は、受電用コイル211及び受電用モジュール212を有する受電装置210を備え、さらには、プロペラ、モーター及びバッテリー等を搭載している。
【0026】
飛行体用ポート110は、電柱10の上部に配置され、飛行体200が降着可能な領域を有している。具体的には、飛行体用ポート110は、連結金具、ボルト、ナット、ネジワイヤ等の金属製の部材を用いて、電柱10の上部に取り付けられて固定される。また、飛行体用ポート110を電柱10の上部に取り付けて安定して固定するために、その他の部材を用いてもよく、例えば、プラスチックベルト等、樹脂製の部材を用いても構わない。
【0027】
飛行体用ポート110の中央領域は、例えば、略水平であって、飛行体200の降着に際して障害となるものが存在せず、又は少なくなるように構成されている。これにより、飛行体200が降着し易く、降着した際に倒れたりする可能性を軽減し、さらには、発出する際にもスムーズに飛行できる。
【0028】
また、ここでは、飛行体用ポート110は、略長方形であるが、これに限定されるものではなく、例えば、正方形、円形、楕円形等、飛行体200が降着し易い形状であれば、その他の形状であっても構わない。
【0029】
さらに、飛行体用ポート110は、メッシュ状の板形状で構成されており、風に煽られたり、雨に打たれたりしても、それらの影響を受け難い。
【0030】
送電装置120は、電線から電力を取得し、飛行体用ポート110に降着する飛行体200に非接触で送電する。具体的には、送電用モジュール122は、電柱10における低圧配電線に流れる電気を電源として取り込み、送電用コイル121に高周波電力を送ることによって、飛行体200への送電を制御している。
【0031】
送電用コイル121は、飛行体用ポート110の周囲に配置されており、当該飛行体用ポート110に降着する飛行体200に送電する。具体的には、送電用コイル121と飛行体200の脚部に配置された受電用コイル211との間において、磁界共鳴方式による非接触での電力伝送が行われている。
【0032】
送電用モジュール122は、飛行体用ポート110の下部であって電柱10に取り付けられ、飛行体200が飛行体用ポート110に降着する際に、障害とならない。また、飛行体200やその他の物(例えば、鳥、ゴミ、廃棄物等)と接触する可能性も低く、故障となる要因を排除している。
【0033】
飛行体200は、飛行体用ポート110に降着することにより、当該飛行体200に搭載されたバッテリーへの給電が行われる。具体的には、飛行体200の脚部に受電用コイル211が配置されており、上述したように、当該受電用コイル211と送電用コイル121との間において磁界共鳴方式による非接触での電力伝送が行われ、受電用モジュール212によって受電が制御されている。
【0034】
このように、飛行体200が電柱10に取り付けられた非接触送電システム100の飛行体用ポート110に降着することによって、当該飛行体200に搭載されたバッテリーへの給電が行われる。
【0035】
なお、受電用コイル211は、送電用コイル121との位置関係を考慮すれば、飛行体200の下部周辺である、例えば、脚部に取り付けられる。受電用モジュール212は、飛行体200のいずれの位置に取り付けられても構わないが、受電用モジュール212を受電用コイル211が取り付けられる脚部以外の脚部に取り付けられることにより、飛行体200の重量バランスを確保することができる。
【0036】
また、飛行体200は、飛行体用ポート110に降着し、給電されている期間において、適切な位置に固定されるようにしても構わない。例えば、風が強い場合等、飛行体200が傾いたり、倒れたり、飛行体用ポート110から落下したりする等、適切な給電位置からずれないように、飛行体用ポート110に固定式又は開閉式の柵、及び開閉式の蓋等を設けても構わない。また、固定具によって飛行体200と飛行体用ポート110とを固定しても構わないし、飛行体200の構造において飛行体用ポート110の一部に嵌合したり、磁石や粘着剤によって一時的に接着したりするようにしても構わない。
【0037】
[送電用コイル及び受電用コイルの構成]
上述したように、送電用コイル121は、飛行体用ポート110の周囲に配置されるが、より具体的には、ソレノイド型又はスパイラル型(サーキュラー型)の円形コイルを飛行体用ポート110の外周を囲うように配置する。
【0038】
一方、受電用コイル211は、例えば、飛行体200の脚部に取り付けられるが、受電用コイル211も、送電用コイル121と同様に、ソレノイド型又はスパイラル型(サーキュラー型)であって、当該飛行体200の取り付け部分(脚部)の形状等に応じて、円形又は長円形コイルを適用すればよい。さらに、受電用コイル211は、飛行体用ポート110における飛行体200の降着面に略平行となるように配置される。
【0039】
このように、送電用コイル121と受電用コイル211とが配置されることにより、飛行体200が飛行体用ポート110に降着した際に、効率よく電力伝送が行われる。
【0040】
なお、送電用コイル121及び受電用コイル211に適用されるコイルの種類及び配置は、これに限定されるものではなく、効率よく電力伝送が行われるのであれば、その他の態様であっても構わない。
【0041】
[非接触給電システムの機能]
図3は、本発明の一実施形態に係る非接触給電システム300における各部の機能を示す機能ブロック図である。図3において、送電側の非接触送電システム100における送電装置120と、受電側の飛行体200における受電装置210とにより、飛行体200に搭載されるバッテリー220に給電するが、これらは、1つの非接触給電システム300として捉えることができる。
【0042】
送電装置120は、送電用コイル121及び送電用モジュール122を備える。さらに、送電用モジュール122は、高周波電源部123、制御部124及び記憶部125を含む。
【0043】
高周波電源部123は、例えば、直流電源装置及びインバータ回路等を備える。直流電源装置は、電柱10における低圧配電線から電源として取り込まれた交流電圧を整流回路により整流し、平滑コンデンサにより平滑することによって、直流電圧を生成する。そして、直流電源装置は、生成した直流電圧を、DC-DCコンバータ回路により所定のレベル(目標電圧)の直流電圧に変換してインバータ回路へ出力する。インバータ回路は、直流電力を高周波電力に変換する回路であり、変換して得られる高周波電圧を送電用コイル121へ出力する。
【0044】
制御部124は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備える。制御部124には、各部の動作を制御するための制御プログラム等が記憶されており、当該制御プログラムを実行し、さらに、記憶部125に記憶された各種プログラムを実行することによって、各部の動作を制御する。例えば、制御部124は、送電装置120としての送電開始及び終了の判断や送電処理等の制御を行う。
【0045】
記憶部125は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)及びフラッシュメモリ等を用いた記憶装置であり、記憶部125には、CPUによって実行される各種コンピュータプログラム、及び各種コンピュータプログラムを実行する際に用いられるデータ等が記憶される。
【0046】
送電用コイル121は、高周波電源部123から供給される高周波電力を、給電対象であるバッテリー220を搭載する飛行体200へ送電する。具体的には、送電用コイル121と共振コンデンサ(図示せず)とによって共振回路を構成し、当該共振回路の共振周波数は、高周波電源部123より供給される高周波電力の周波数と一致するように、送電用コイル121及び共振コンデンサが設計される。
【0047】
次に、受電側の飛行体200における受電装置210について説明する。受電装置210は、受電用コイル211及び受電用モジュール212を備える。
【0048】
受電用コイル211は、送電側の送電用コイル121と磁気結合して、送電装置120から送電される高周波電力を非接触で受電する。具体的には、受電用コイル211と共振コンデンサ(図示せず)とによって共振回路を構成し、当該共振回路の共振周波数は、送電側の共振周波数と一致するように、受電用コイル211及び共振コンデンサが設計される。
【0049】
受電用モジュール212は、受電用コイル211を介して受電した高周波電力をバッテリー220に給電するように制御する。具体的には、受電用モジュール212は、受電される高周波電力を直流電力に変換する整流平滑回路を備え、整流平滑回路によって変換された直流電力をバッテリー220へ供給する。
【0050】
バッテリー220は、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等の充放電が可能な二次電池である。なお、バッテリー220は、リチウムイオン電池又はリチウムポリマー電池に限定されるものではなく、充放電可能な他の二次電池を用いても構わない。
【0051】
このようにバッテリー220に給電され、飛行体200は、例えば、モーター制御部によりモーターを駆動させることによってプロペラを回転させ、飛行することができる。
【0052】
[非接触給電システムの動作]
図4は、本発明の一実施形態に係る非接触給電システム300が実行する飛行体200に給電する給電方法400を示すフローチャートである。図4において、給電方法400は、ステップS410~S440を含み、各ステップは、非接触送電システム100及び飛行体200に含まれるCPU等のプロセッサに制御されることによって実行される。
【0053】
ステップS410では、非接触送電システム100は、飛行体用ポート110に飛行体200が降着したか否かを判断する。飛行体用ポート110に飛行体200が降着したことを検知した場合、ステップS420の処理に進む(ステップS410のYes)。一方、飛行体用ポート110に飛行体200が降着したことを検知していない場合、継続して、飛行体用ポート110に飛行体200が降着するか否かを監視する(ステップS410のNo)。
【0054】
具体的には、飛行体用ポート110の近傍にセンサを備え、当該センサによって飛行体200の降着を検知しても構わない。センサは、例えば、可視光又は赤外線等を用いた光学式の非接触センサ、接触式センサ、磁気センサ、重量センサ、圧力センサ、カメラ等、飛行体用ポート110に飛行体200が降着したことを検知できるものであれば、何でも構わない。
【0055】
ステップS420では、非接触送電システム100は、送電処理を開始する。具体的には、送電装置120によって送電用コイル121を介して受電装置210における受電用コイル211に対して電力伝送を開始する。
【0056】
ステップS430では、非接触送電システム100は、所定量の送電に達したか否かを判断する。所定量の送電に達した場合、ステップS440の処理に進む(ステップS430のYes)。一方、所定量の送電に達していない場合、所定量に達するまで、継続して送電する(ステップS430のNo)。
【0057】
また、非接触送電システム100が送電を停止するか(ステップS430のYes)、継続するか(ステップS430のNo)の判断は、給電されるバッテリー220の電池電圧を監視し、当該電池電圧が所定値に達したか否かで判断しても構わない。当該電池電圧が所定値に達した場合、ステップS440の処理に進み(ステップS430のYes)、所定値に達していない場合、送電を継続すればよい(ステップS430のNo)。
【0058】
所定量の送電に達したか否かは、例えば、非接触送電システム100及び飛行体200にそれぞれ通信部を備え、各通信部が無線通信を行うことにより、飛行体200に搭載されるバッテリー220への給電に関する情報について、飛行体200から送電装置120へ通知することによって判断すればよい。
【0059】
具体的には、飛行体200に搭載されるバッテリー220を監視し、当該バッテリー220への充電が所定量に達した場合、例えば、WiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線通信方式を用いて、飛行体200から送電装置120へ通知する。これに応じて、非接触送電システム100は、所定量の送電に達したと判断すればよい。
【0060】
また、バッテリー220の電池電圧を監視する場合、受電用モジュール212は、バッテリー220の電池電圧を監視し、当該電池電圧が所定値に達すれば整流平滑回路とバッテリー220間の電力伝送路を遮断(OPEN)する。当該電力伝送路が遮断されると、送電用モジュール122によって検出される反射波電力が増加するため、バッテリー220の電池電圧が所定値に達して、バッテリー220への充電が所定量に達したと判断することができる。これにより、非接触送電システム100は、送電を停止すればよい。この方式では、送電用モジュール122に進行波電力及び反射波電力を検出する機能を備えることで、非接触送電システム100及び飛行体200にそれぞれ通信部を備えなくても、非接触送電システム100は、送電を停止するか否かを判断することができる。
【0061】
また、飛行体200に搭載されるバッテリー220を監視しなくても、例えば、ステップS420において非接触送電システム100が送電処理を開始してからの送電時間に基づいて、バッテリー220の充電量を推定し、当該推定したバッテリー220の充電量が所定量に達した際に、所定量の送電に達したと判断しても構わない。
【0062】
ここで、所定量とは、飛行体200に搭載されるバッテリー220の最大容量であっても構わないし、最大容量の30%、50%、80%等であっても構わないし、予め設定された所定量等であっても構わない。また、飛行体用ポート110は、街中に設置されている電柱10に取り付けられていることを考慮すれば、バッテリー220には大容量の給電は必要なく、隣接する又は次に降着予定の電柱10(飛行体用ポート110)まで、飛行体200が飛行できる程度の給電がなされればよい。
【0063】
ステップS440では、非接触送電システム100は、送電処理を停止する。
【0064】
その後、飛行体200は、飛行体用ポート110から発出する。例えば、飛行体200は、バッテリー220への給電処理が停止された後に、飛行体用ポート110から発出する。バッテリー220への給電処理が停止されたことについて、飛行体200及び非接触送電システム100にそれぞれ通信部を備え、各通信部が無線通信を行うことにより、非接触送電システム100が送電処理を停止したことを示す情報を、非接触送電システム100から飛行体200へ通知しても構わない。
【0065】
以上のように、本発明の一実施形態に係る非接触送電システム100、非接触給電システム300、及び給電方法400によれば、電柱10に飛行体用ポート110が配置され、当該飛行体用ポート110の周囲に送電用コイル121を備えているため、送電装置120は、電線から電力を取得し、飛行体用ポート110に降着する飛行体200に非接触で送電することができる。飛行体200に小型及び軽量のバッテリー220を搭載し、飛行体200全体を小型化及び軽量化した場合であっても、飛行体200は、電柱10に配置された飛行体用ポート110に降着すれば、磁界共鳴方式を用いてバッテリー220に非接触で給電される。すなわち、飛行途中におけるバッテリー220の充電切れを回避しつつ、バッテリー220に適切に給電できるため、長時間飛行及び長距離飛行が可能な小型及び軽量の飛行体200を実現することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、飛行体用ポート110は、メッシュ状の板形状で構成されていたが、これに限定されるものではなく、屋外に設置される際に、風や雨による影響を受け難い構成であれば、例えば、複数の通気孔を設けた板形状等であっても構わない。通気孔は、例えば、線形、波形、四角形、三角形、円形、楕円形等が配置されても構わないし、飛行体用ポート110が風に煽られたり、雨に打たれたりしても、それらの力を逃がすことができ、飛行体200が飛行体用ポート110に安定して降着できるのであれば、その他の形状であっても構わない。
【0067】
また、本実施形態では、飛行体用ポート110は、電柱10の上部に配置される構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、低圧配電線の近傍で電気を取り込み易い位置、又は電柱10のうち固定し易い位置に配置されても構わない。
【0068】
さらに、飛行体用ポート110は、電柱10のうち、飛行体200が降着し易い位置に配置されることが好ましく、例えば、電柱10の最上段に取り付けられるとよい。また、飛行体用ポート110を、電柱10のうち地上から離れた位置に配置されると、地上にある電子機器や人体への影響を低減することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、非接触送電システム100を設置する支持設備として、街中に設置されている電柱10を例に挙げたが、支持設備としてはこれに限定されるものではなく、例えば、郊外や山中等に設けられている電柱でも構わないし、その他、電源としての電力を取得できるのであれば、送電鉄塔や電信柱等であっても構わない。
【0070】
[非接触給電システムの活用]
以下に、非接触給電システム300の活用例として、飛行体200が電柱10に取り付けられた非接触送電システム100を利用しながら飛行する一例について説明する。
【0071】
図5は、本発明の一実施形態に係る非接触送電システム100を飛行体200が中継しながら飛行する様子を示す図である。図5において、飛行体200は、例えば、街中において数百m毎に設置された、電柱10に取り付けられた飛行体用ポート110に順に降着する。
【0072】
飛行体200は、飛行体用ポート110に降着し、当該飛行体200に搭載されたバッテリー220に給電して、次の電柱10に取り付けられた飛行体用ポート110まで飛行する。ここで、飛行体200に搭載されたバッテリー220には、少なくとも、次に降着する飛行体用ポート110まで飛行可能な電力を給電する。
【0073】
飛行体用ポート110は、街中に多数設置されている電柱10に取り付けられているため、飛行体200は、バッテリー220の充電切れになる前に、適宜、飛行体用ポート110に降着してバッテリー220に給電することができる。
【0074】
具体例として、飛行体200は、カメラを搭載し、飛行中及び飛行体用ポート110に降着後、当該飛行体200の周辺を撮影し、当該カメラによって撮影された画像を当該飛行体200が備える記憶装置に保存する、又は、別途サーバ装置やコンピュータ装置に送信しても構わない。
【0075】
これにより、街中に設置された電柱10及び当該電柱10に中継されている電線等の状態を確認することができ、例えば、電柱や電線の劣化状態を点検したり、仮に停電等の障害が発生している場合には、断線箇所の特定等、その原因を調査したりすることができる。さらには、所定の街中、地域、建物及び施設等を監視することができ、警備及び防犯に用いることができる。
【0076】
また、飛行体200に荷物の輸送をさせても構わない。この場合、飛行体200が輸送する荷物の大きさや重量がバッテリー220の消費に影響する。街中に設置されている電柱10の位置を把握できていれば、飛行体200がどの電柱10の飛行体用ポート110に降着しながら目的地まで飛行するかを示す飛行経路を予め設定することができる。
【0077】
飛行経路を予め設定すれば、次に降着する飛行体用ポート110までの飛行距離、輸送する荷物の大きさや重量、及び搭載するバッテリー220の容量や性能に応じて、降着した飛行体用ポート110において給電すべき電力を把握することができる。すなわち、飛行体200は、バッテリー220の充電切れになる前に、適宜、飛行体用ポート110に降着してバッテリー220に給電しながら、目的地まで荷物を輸送することができる。
【0078】
なお、図5に示されている例では、飛行体200は、電柱10に取り付けられた飛行体用ポート110に降着し、バッテリー220を給電した後、順に、隣接する電柱10に取り付けられた飛行体用ポート110まで飛行するとしたが、次に降着する他の電柱10に設けられた飛行体用ポート110は、これに限定されるものではない。例えば、飛行体200に搭載されるバッテリー220の容量や性能、及びその時の消耗状況等に応じて、飛行体用ポート110から所定の範囲である、又は、目的地に応じて予め設定された経路に基づいて順に定められても構わない。
【0079】
このように、飛行体200が次に降着する飛行体用ポート110を把握し、当該飛行体用ポート110までの飛行に必要な給電が行われればよく、過剰な給電、及びそれに伴う飛行体用ポート110への長時間の滞留を回避することができる。すなわち、充電切れを回避しつつ、必要十分な給電を迅速に適切に行うことができる。
【0080】
飛行体200に搭載されるバッテリー220への給電を可能とする飛行体用ポート110が、例えば、数百m毎に設置されていれば、頻繁に細かく給電することができる。したがって、飛行体200に大容量の大型バッテリーを搭載する必要がなく、飛行体200の小型化・軽量化が実現でき、結果的に、飛行効率も向上させることができる。
【0081】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
10…電柱、100…非接触送電システム、110…飛行体用ポート、120…送電装置、121…送電用コイル、122…送電用モジュール、123…高周波電源部、124…制御部、125…記憶部、200…飛行体、210…受電装置、211…受電用コイル、211…受電用コイル、212…受電用モジュール、220…バッテリー、300…非接触給電システム、400…給電方法、S410~S440…給電方法400の各ステップ
図1
図2
図3
図4
図5