(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072643
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】液体吐出容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
B65D83/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182200
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】392020428
【氏名又は名称】株式会社矢板製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 太一
(72)【発明者】
【氏名】矢板 大介
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC19
3E014PD11
3E014PE03
3E014PE08
3E014PE30
3E014PF03
(57)【要約】
【課題】円滑で確実な吐出動作を可能にするとともに、容器の内壁に液体が残存することがない液体吐出容器を提供する。
【課題の解決手段】液体吐出容器1は、容器本体3に取り付けられて容器本体3内の液体を外部に吐出するポンプ10を備え、ポンプ10の液体を導入する導入筒11dには導入チューブ23の一端を連結し、導入チューブ23には、シールリング24を少なくとも水平方向に変位可能に保持する取付部材25を、シールリング24を介して液密、かつ摺動可能に取り付け、取付部材25には、中央に取付筒26aを有し、外周環26cで容器本体3の内壁と液密に接合して内壁に沿って摺動可能な掻き落としピストン26を取付筒26aで篏合固定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する容器本体と、この容器本体に取り付けられて容器本体内の液体を外部に吐出するポンプを備え、
このポンプの液体を導入する導入部には導入チューブの一端を連結し、
前記導入チューブには、シールリングを少なくとも水平方向に変位可能に保持する取付部材を、前記シールリングを介して液密、かつ摺動可能に取り付け、
前記取付部材には、中央に取付孔を有し、外周部で前記容器本体の内壁と液密に接合して前記容器本体内を内壁に沿って摺動可能な掻き落としピストンを、前記取付孔で篏合固定してなる液体吐出容器。
【請求項2】
前記掻き落としピストンは、円環状の本体と、前記取付孔を形成する取付筒と、前記本体の外周に設けられた前記容器本体の内壁に上縁または下縁の少なくとも一縁で液密に摺接する外周環とからなる前記請求項1記載の液体吐出容器。
【請求項3】
前記容器本体の上端にはポンプを取り付ける小径口部を設け、前記掻き落としピストンは、取付孔を形成する取付筒を有し、この取付筒の上端は外径が端面に向けて徐々に縮径する傾斜部となり、この傾斜部を除く外径が前記小径口部下端の内径よりも大きく形成されている前記請求項1記載の液体吐出容器。
【請求項4】
前記掻き落としピストンは前記取付筒で前記取付部材に篏合固定し、前記取付部材は円筒状で下端部にシールリングを保持する保持室を有し、上端には前記取付筒の上端に係合する鍔部を設けてなる前記請求項2または3記載の液体吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に収容した化粧料などの各種液体を適量ずつ吐出するポンプを備えた液体吐出容器に関し、特に粘度の高い液体を収容して吐出するのに適した液体吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種容器内に収容した液体は、ポンプで吐出されていくのであるが、粘度の高い液体の場合は、ポンプで吐出されて容器内の液量が減ってきても、容器の内壁に接触している液体が流下しにくく、内壁に付着した状態を維持しやすい。このため、容器内の液体を排出し終わっても、内壁に付着した液体が残ってしまうという事態を生じ、容器内の液体をすべて排出しきることは困難だという不都合がある。
【0003】
従来において、この不都合を解消するものとして、流動体(高粘度の液体、半流動体、ゾルがジェリー状に固化したゲルやクリーム状物等と、通常の液体とを含む)を貯留するシリンダ部を備える有底円筒状の容器本体と、シリンダ部内の流動体を容器外部に吐出する吐出ポンプと、吐出ポンプに流動体を導入する管部材と、管部材に孔部で貫通支持され、シリンダ部内を流動体の減少にともない液密性を保って下降するピストンと、を有する流動体容器が知られている(特許文献1)。
【0004】
すなわち、特許文献1で開示されたピストンは、シリンダ部の内壁と弾力的に当接する先端凸部を有し(特許文献1、段落0065)、吐出ポンプで吐出されることによる流動体の減少にともなってシリンダ部内を下降していく。これによって、明示されてはいないが、シリンダ部内壁面に付着する流動体を掻き落とすので、流動体がシリンダ部に残ることを防ぐことができる。
【0005】
このピストンと管部材とは、ピストンの孔部内周面に設けた内側凸部が管部材の外周面に当接し、ピストンが管部材に対して摺動下降する関係にある(特許文献1、段落0068)。そして、ピストンは常にシリンダ部の軸心に対してピストンの軸心を一致させて下降するため(特許文献1、段落0066)、管部材が硬質性であれば、互いの軸心が一致して円滑な下降が行われるが、軟質性で、曲がりやねじれが存在する場合には、管部材の軸心が部分的に傾くので互いの軸心が一致せず、円滑な摺動下降をなしえないという新たな不都合を生じる。
【0006】
また、特許文献1に記載の流動体容器は、吐出ポンプを容器本体よりも小径な蓋部に取り付け、蓋部を吐出ポンプをともなって容器本体に篏合固定して、吐出ポンプに接続した管部材と管部材に嵌挿支持したピストンを、容器本体のシリンダ部内に配置するよう組み立てるので、あらかじめ前記シリンダ部内に流動体を充填した状態での組み立てが可能である(特許文献1、段落0078)。ところが、容器本体が円筒状ではなく、上端に小径の口部を有する場合には、吐出ポンプに接続した管部材と管部材に嵌挿支持したピストンを、前記口部から挿入できないので、前記ピストンをこの種容器には適用できないという、また別の不都合を生じる。
【0007】
この別の不都合に対応するため、従来においては、
図9に示す液体吐出容器101が提案されている。この液体吐出容器101は、容器本体102は筒状で、底面は底蓋103が着脱可能に螺合して液密に閉塞され、上端の縮径した小径口部104には、螺合したポンプ取付体105を介して、ポンプ106を取り付けたものである。そして、ポンプ106の液体を吸い込む導入筒107には導入チューブ108の上端部が嵌入固定され、この導入チューブ108の下端は前記底蓋103に接触している。
【0008】
さらに、導入チューブ108には、導入筒107の下端に接するようにピストン109が摺動可能かつ、液密に支持され、前記ピストン109の外周部は、容器本体102の内壁と摺動可能、かつ液密に接合している。前記ピストン109は、その外周面が容器本体102の内壁と接合する大きさであるため、小径口部104からは容器本体102内に配置することができず、底蓋103を外して開放した底面から、前記吸い込みチューブ108に挿入支持するようにして、容器本体102内に配置される。
【0009】
従来提案の液体吐出容器101によると、容器本体102内に収容した液体を、ポンプ106を作動して吐出することが可能であり、吐出後にはポンプ106内に吸い込んだ空気を空気孔110から容器本体102内に供給し、液体が減ることに加え、ピストン109上方に空気が流入することでピストン109を下降させる。このピストン109の下降時に、容器本体102の内壁の付着している液体は、内壁に液密に接合する前記ピストン109の外周部によって掻き落とされる。したがって、容器本体102内に収容した液体は、容器本体2の内壁に付着して残ることなく、ポンプ106で吐出することができ、ほぼ全量を使い切ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、上述した従来提案の液体吐出容器101では、容器本体102内に液体を充填した後から、ピストン109を配置できない、換言すると、径の小さい小径口部104からピストン109を容器本体102内に配置できない。このため、
図10に示すように、ポンプ106やピストン109を配置した状態で、容器本体102を上下逆さにした倒立状態とし、底蓋103を外して開放した底面から、充填ノズル111を挿入して液体を充填することになる。
【0012】
この充填に当たっては、液体が容器本体102からこぼれるのを防ぐため、満杯まで若干余裕を残した状態で充填を終了する必要がある。また、充填ノズル111が吸い込みチューブ108やピストン109に当たらないように注意する必要がある。
【0013】
図10状態で充填が終了し、底蓋103を螺合した後、倒立状態の容器本体102を通常状態(
図9状態)に戻すと、充填した液体の粘度が高い場合には、若干余裕を残した空隙に存在する空気が上方に抜けずに底部に空気溜まりが生じることがある。そして、この空気溜まりが生じると、液体吐出容器101に使われるポンプ106の性能では、この空気溜まりの空気を完全に吸い出すことができないため、吐出不良というさらに別の不都合を生じてしまう。また、この液体吐出容器101では、導入チューブ108が軟質性の場合に生じる上述した不都合を解消することはできない。
【0014】
本発明は、上述したすべての不都合を解消して、円滑で確実な吐出動作を可能にするとともに、容器の内壁に液体が残存することがない液体吐出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するため本発明の請求項1に係る液体吐出容器は、液体を収容する容器本体と、この容器本体に取り付けられて容器本体内の液体を外部に吐出するポンプを備え、このポンプの液体を導入する導入部には導入チューブの一端を連結し、前記導入チューブには、シールリングを少なくとも水平方向に変位可能に保持する取付部材を、前記シールリングを介して液密、かつ摺動可能に取り付け、前記取付部材には、中央に取付孔を有し、外周部で前記容器本体の内壁と液密に接合して前記容器本体内を内壁に沿って摺動可能な掻き落としピストンを、前記取付孔で篏合固定したものである。
【0016】
また、同じく前記目的を達成するために、本発明の請求項2に係る液体吐出容器は、前記請求項1の構成において、前記掻き落としピストンは、円環状の本体と、取付孔を形成する取付筒と、前記本体の外周に設けられた容器本体の内壁に上縁または下縁の少なくとも一縁で液密に摺接する外周環とからなるものである。
【0017】
さらに、同じく前記目的を達成するために、本発明の請求項3に係る液体吐出容器は、前記請求項1の構成において、前記容器本体の上端にはポンプを取り付ける小径口部を設け、前記掻き落としピストンは、取付孔を形成する取付筒を有し、この取付筒の上端は外径が端面に向けて徐々に縮径する傾斜部となり、この傾斜部を除く外径が前記小径口部下端の内径よりも大きく形成されているものである。
【0018】
またさらに、同じく前記目的を達成するために、本発明の請求項4に係る液体吐出容器は、前記請求項2または3の構成において、前記掻き落としピストンは前記取付筒で前記取付部材に篏合固定し、前記取付部材は円筒状で下端部にシールリングを保持する保持室を有し、上端には前記取付筒の上端に係合する鍔部を設けたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の請求項1、2に係る液体吐出容器によれば、取付部材のシールリングは少なくとも水平方向に変位可能なので、導入チューブが軟質性で、曲がったり、ねじれたりしていても、これに追随して円滑に摺動することにより、取付部材に取り付けた掻き落としピストンを容器本体内の液体の減少にともない円滑、かつ確実に容器本体内壁沿って下降させることができるという効果を奏する。
【0020】
また、本発明の請求項3に係る液体吐出容器によれば、上記効果に加えて、掻き落としピストンの取付筒を、容器本体に底蓋を固定する前段階で解放された底面から挿入して、その傾斜部を小径口部の下端内周面に嵌入支持できるので、容器本体内への液体の充填を、前記取付筒内に充填ノズルを挿入して、通常の充填作業と同様にして行うことができるという効果を奏する。
【0021】
さらに、本発明の請求項4に係る液体吐出容器によれば、上記各効果に加えて、掻き落としピストンはその取付筒で取付部材に篏合固定し、前記取付部材の上端には前記取付筒の上端に係合する鍔部を設けたので、前記掻き落としピストンを前記取付部材に確実に固定することができ、前記掻き落としピストンの容器本体内壁沿った下降動作をより一層円滑、かつ確実なものにすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の好適な一実施形態における初期待機状態を示す中央縦断面図。
【
図3】同じくポンプの吐出終了状態を示す部分拡大中央縦断面図。
【
図6】同じく掻き落としピストンと取付部材の篏合部分を示す拡大断面図。
【
図7】同じく容器本体内への液体充填状態を示す中央縦断面図。
【
図8】同じく掻き落としピストンが最下降位置に達した状態を示す中央縦断面図。
【
図9】従来の小径口部を有する液体吐出容器の一例を示す中央縦断面図。
【
図10】同じく容器本体内への液体充填状態を示す中央縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な一実施形態について説明する。
図1に示すように、液体吐出容器1は、底蓋2で底面が液密に閉塞された筒状の容器本体3を備えている。前記底蓋2には、2段に形成された液溜まり2aを設けている。前記容器本体3の開口上端部は縮径されて小径口部3aとなり、この小径口部3a外周には雄ネジ3bが設けられ、内周の下端には環状突縁が設けられてさらに縮径されている。この雄ネジ3bに内周面の雌ネジ4bを螺合することでポンプ取付体4が固定されている。
【0024】
図1~
図3に示すように、ポンプ取付体4の天面には断面逆U字状の取付筒4aが一体的に設けられ、この取付筒4aに、容器本体2に収容された液体(図示せず、
図7参照、以下同じ)を適量ずつ、液体吐出容器1外に排出するポンプ10が、そのハウジング11の上端が嵌入して取り付け固定されている。前記ハウジング11の環状の鍔部11aは、上面がポンプ取付体4の天面の下面に液密に当接し、下面は環状シール12を介して小径口部3aの上端縁に液密に当接している。前記環状シール12によって、容器本体3内は密閉される。
【0025】
ポンプ10の上端に位置するほぼ円筒状の上部ピストン13には、駆動ヘッド14の嵌合筒14aが嵌合されている。前記駆動ヘッド14の外周面下端は、ポンプ取付体4の天面に一体的に立設された環状の案内壁4cの内周面と相対している。また、前記駆動ヘッド14には嵌合筒14aに連通する吐出ノズル15が設けられ、この吐出ノズル15は、前記上部ピストン13を介してハウジング11内部と連通している。前記駆動ヘッド14は上下動可能で、この上下動にともない前記上部ピストン13も上下動する。
【0026】
上部ピストン13は取付筒4aに上下動可能に支持され、下端部は拡径されてハウジング11内に伸びるとともに、前記ハウジング11内に上下動可能に配置されたほぼ円筒状の下部ピストン16と篏合固定している。前記下部ピストン16は、上部は円筒状で、下部は丸棒状であり、これらの境界部にはスカート部16aが形成されている。前記下部ピストン16の上部には上下方向に間隔をおいて各一対の連通孔16b、16cが設けられている。
【0027】
ハウジング11の下部に設けた縮径部11bの内面で弁座17を形成し、この弁座17に逆止弁であるボール弁18が配置されている。また、弁座17近傍には筒状ストッパ19が配置され、筒状ストッパ19の下端鍔部とスカート部16aの段部との間にはコイルバネ20が配設され、このコイルバネ20によって下部ピストン16は上方に弾発付勢され、筒状ストッパ19は下方に弾発付勢されている。なお、図では明らかでないが、筒状ストッパ19の内周面には、この筒状ストッパ19の上端鍔部とボール弁18との間に小コイルバネが配設され、前記筒状ストッパ19は上方に弾発付勢され、前記ボール弁18は下方に弾発付勢されている。
【0028】
ボール弁18を下方に弾発付勢する小コイルバネの弾発力は、前記コイルバネ20の弾発力よりも弱く設定され、前記筒状ストッパ19を上方へ移動させることができない一方、ハウジング11内の圧力が容器本体3内の圧力よりも所定以上小さくなるまでは、前記ボール弁18を弁座17に密着させて閉鎖状態を維持できるように設定している。なお、21は前記ハウジング11に設けた通気孔で、待機状態時には後述する2重環状のシール弁22によって閉塞されている(
図2参照)が、吐出終了状態時には開放されて(
図3参照)、ポンプ取り付け筒4aと上部ピストン13の間隙からハウジング11内に入った空気を容器本体3内に流入させるものである。
【0029】
下部ピストン16の上部外周面とハウジング11の内周面との間には、下部で連結された2重環状のシール弁22が、摺動可能に配置されている。このシール弁22は、その内環22aの内周面全周に間隔をおいて多数形成した突縁で、下部ピストン16の一対の連通孔16b、16cの間の外周面に適宜な摩擦力を介して摺接する一方、その外環22bの上下両端部の外周面でハウジング11の内周面に適宜な摩擦力を介して摺接している。このシール弁22の前記下部ピストン16と摺接する突縁の間には、多数の縦方向に延びる凹溝(図示せず、以下同じ)が全周にわたって存在し、これら凹溝によって上下空間を連通している。
【0030】
シール弁22は、
図1及び
図2に示す上下各ピストン13,16が最上位位置にある待機状態時には、内環22aの下端が下部ピストン16のスカート部16aに密接し、外環22bの上端がポンプ取付筒4aの内周面の下端に密接して、ハウジング11内の空間と前記各ピストン13,16内の空間を遮断状態としている。一方、
図3に示す前記各ピストン13,16が最下位位置にある吐出終了時には、前記シール弁22は、外環22bの下端がハウジング11の段部11cに密接し、内環22aの上端が上部ピストン13の段部13aに密接して、ハウジング11内の空間と上下各ピストン13,16内の空間を連通状態としている。
【0031】
図1~
図3に示すように、ハウジング11の縮径部11bには、ハウジング11内に液体を導入する導入部たる導入筒11dが一体的に形成されている。この導入筒11dには、軟質性プラスチックからなる導入チューブ23の一端が嵌入固定され、導入チューブ23aの他端は底蓋2の液溜まり2a内に位置している。
【0032】
導入チューブ23には、軟質ゴム製のシールリング24を液密、かつ摺動可能に篏合し、このシールリング24は円筒状の取付部材25の下端部に設けた保持室25a内に、上下方向に若干傾斜可能で、水平方向に変位可能に保持されている。前記シールリング24は、中央の透孔に向けて徐々に肉薄となるよう形成され、最も薄い部分で前記導入チューブ23の外周面に摺接している(
図4参照)。前記取付部材25は、初期待機状態においては、その上端内周面がハウジング11の縮径部11b近傍の外周面に摺接し、上端に設けた環状の鍔部25の外周面が小径口部3aの下端内周面である突縁に篏合している。
【0033】
図4及び
図5で理解できるように、保持室25aは、中間壁25cと底壁25dを上下に有し、周面の一部に開口を設けたものであり、前記中間壁25cと底壁25dには導入チューブ23が挿通する透孔が設けられている。シールリング24は前記開口から保持室25a内に挿入配置されるもので、前記シールリング24の周囲には空隙が存在するので、水平方向に変位可能なものである。また、図では明らかでないが、前記シールリング24の上面側にも若干の空隙があるので、上下方向に若干傾斜することも可能である。なお、
図1及び
図2に示すように、初期待機状態においては、前記中間壁25cの上面に、ハウジング11の導入筒11dの下端が接合している。
【0034】
図1~
図3に示すように、取付部材25の外周面には、掻き落としピストン26を、内周面が取付孔を形成する取付筒26aで篏合固定している。この篏合固定は、
図6に示すように、取付部材25の外周面に設けた環状突縁25eが前記掻き落としピストン26の取付筒26aの内周面下端に設けた環状凹部26eに篏合することによって確実になされる。前記掻き落としピストン26は、前記取付筒26aの下端から水平方向に延びる下に窪んだ円環状の本体26bと、この本体26bの外周に設けられた外周環26cとからなる。この外周環26cは容器本体3の内壁に上下の縁部で液密に接合して、前記取付部材25の移動にともない、前記容器本体3内をその内壁に沿って摺動可能なものである。
【0035】
掻き落としピストン26の取付筒26aの上端は、外径が端面に向けて徐々に縮径する傾斜部26dとなり、この傾斜部26dを除く外径が小径口部3a下端の突縁の内径よりも大きく形成されている。また、前記掻き落としピストン26の取付筒26aの傾斜部26d上端には、取付部材25の鍔部25bが係合している。
【0036】
上述のように、掻き落としピストン26の傾斜部26dの外径を小径口部3a他端の突縁の内径よりも小さく形成したので、容器本体3に底蓋2を固定する前に、前記掻き落としピストン26を開放底面から容器本体3内に挿入して、取付筒26aの傾斜部26dを前記小径口部3aの内周面下端の突縁に嵌入支持することができる。この状態で底蓋2を容器本体3にレーザー溶着などの適宜手段で液密に固定する。
図7がこの状態を示すもので、小径口部3a及び取付筒26a内に従来と同様の充填ノズル111を挿入して、容器本体3内に所望の液体を充填することができ、充填量も掻き落としピストン本体26b底面にほぼ達する状態まで充填できる。
【0037】
この容器本体3内に液体を充填して状態で、ポンプ取付体4にポンプ10を取り付け、導入チューブ23にシールリング24を保持した取付部材25を篏合固定したうえ、前記導入チューブ23及び前記取付部材25を小径口部3aから容器本体3内に挿入する。そして、小径口部3aの雄ネジ3bと取付筒4aの雌ネジ4bを螺合していくと、取付部材25の環状突縁25eが掻き落としピストン26の環状凹部26eと篏合し、掻き落としピストン26の傾斜部26d上端に取付部材25の鍔部25bが係合し、前記鍔部25bの外周面が小径口部3aの下端の突縁の内周面に接合して、掻き落としピストン26の傾斜部26dは小径口部3aから離脱し、
図1、
図2の初期待機状態となる。
【0038】
続いて、上述のように構成した液体吐出容器1におけるポンプ10の動作を掻き落としピストン26の動作とともに説明する。容器本体3内に液体が充満している初期待機状態において(
図1参照)、駆動ヘッド14を押し下げると、上下各ピストン13,16もコイルバネ20の弾発力に抗して下降し、下部ピストン16のスカート部16aはシール弁22の内環22a下端から離反して、遮断状態であったハウジング11内の空間と下部ピストン16内の空間とを連通孔16cを介して連通状態とする。これによって、前記ハウジング11内におけるスカート部16aから下の空間の圧力が高まり、この圧力によって前記スカート部16aから下の空間の液体は、連通孔16cを通って下部ピストン16内に移動し始める。
【0039】
駆動ヘッド14の下降にともない、上部ピストン13の段部13aとシール弁22の内環22aの上端が密接し、前記シール弁22は上下各ピストン13,16とともに下降して、ハウジング11内におけるスカート部16aから下の空間の圧力がより高まると、前記上下各ピストン13,16内の液体が吐出ノズル15から吐出され始める。さらに駆動ヘッド14を押し下げて、シール弁22の外環22bの下端がハウジング11の段部11cに密接すると、下降が阻止され、下部ピストン16は最下位位置に達する(
図3参照)。この状態でハウジング11内の液体への圧力は最大となり、吐出ノズル15からの液体の吐出動作は終了する。そして、吐出ノズル15内には液体が残留し、液体の粘度によっては、表面張力で前記吐出ノズル15から突出した状態となる。
【0040】
ここで、駆動ヘッド14に加えていた押し下げ力を解除すると、コイルバネ20の弾発力で上下各ピストン13,16は上方に移動するので、ハウジング11内の容積は増加して、容器外部に対して負圧となり、前記上下各ピストン13,16内の液体は連通孔16b及び内環22aの凹溝と連通孔16cを通ってハウジング11内に引き込まれ、これとともに吐出ノズル15内に残留する液体は前記上下各ピストン13,16内に引き込まれる。これによって、液だれが防止される。
【0041】
この時、ボール弁18は小コイルバネの弾発力で便座17に密接して閉鎖状態を維持するので、ハウジング11内の圧力が下がっても容器本体3内の液体が前記ハウジング11内に流入することはなく、前記ハウジング11内の負圧状態は維持されて、前述した上下各ピストン13,16内の液体を連通孔16b及び凹溝と連通孔16cを通ってハウジング11内に引き込む吸引動作及び吐出ノズル15に残留する液体を各上下ピストン13,16内に引き込む吸引動作は確実になされる。また、上下各一対の連通孔16b、16cから液体を引き込むので、この吸引動作は連通孔が一つの場合よりも迅速になされる。
【0042】
上下各ピストン13,16が上昇して、スカート部16aにシール弁22の内環22aの下端が当接すると、ハウジング11内と上下各ピストン13,16内とは遮断状態になるので、前述の吸引動作は停止し、前記シール弁22は上下各ピストン13,16とともに上昇する。さらに上下各ピストン13,16が上昇すると、ハウジング11内の圧力はより小さくなっていき、所定圧力以下になると、小コイルバネの弾発力に抗してボール弁18が開放状態となって、ハウジング11内に容器本体3内の液体が流入する。この流入によって、ハウジング11内の圧力が一定以上になると、ボール弁18は小スプリングの弾発力で再び閉鎖状態に復帰し、ハウジング11内と容器本体3内を非連通状態とする。
【0043】
このハウジング11内への容器本体3内からの液体流入によって、前記容器本体3内の圧力が下がると、未だシール弁22の外環22bと対応していない開放状態にある通気孔21を通って、前記ハウジング11内の空気が前記容器本体3内へ流入する。また、前記容器本体内3の液体が減少したことにより、掻き落としピストン26は取付部材25とともに導入チューブ23に沿って下降し、前記容器本体3の内壁に付着している液体を前記掻き落としピストン26の外周環26cが掻き落とす。このとき、シールリング24は保持室25a内で上下方向に傾斜可能、かつ水平方向に変位可能に保持されているので、前記導入チューブ23に曲がりやねじれが存在してもこれに追随して液密に摺動し、前記取付部材25及び掻き落としピストン26の円滑、かつ確実な下降動作を保証する。
【0044】
さらに上下各ピストン13,16が上昇して、シール弁22の外環22bの上端がポンプ取付筒4aの下端に当接すると、駆動ヘッド14、上下各シリンダ13,16及びシール弁22の上昇動作は停止し、次の動作に備える待機状態(
図1参照)となる。このとき、通気孔21は閉塞状態となっている。以上の動作を繰り返して、容器本体3内の液体をすべて吐出すると、掻き落としピストン26と取付部材25が最下降位置にある
図8状態となる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、ポンプ10の構成は、いかなるものでもよい。また、容器本体3内に収容する液体は、高粘度のものに限らず、低粘度のものにも適用可能である。さらに、導入チューブ23の曲がりやねじれは大きなものではないので、シールリング24は少なくとも水平方向に変位可能に保持すれば、所望の作用を奏することができる。またさらに、掻き落としピストン26の形状は種々変更可能であり、例えば、本体26bが下に湾曲する断面円弧状で、外周環26cは本体26aから一体的に延びるように湾曲し、その上端縁で容器本体3の内壁に接合するものでもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 液体吐出容器
2 底蓋
3 容器本体
3a 小径口部
4 ポンプ取付体
4a 取付筒
10 ポンプ
11 ハウジング
11d 導入筒
13 上部ピストン
14 駆動ヘッド
15 吐出ノズル
16 下部ピストン
16b、16c 連通孔
18 ボール弁
19 筒状ストッパ
20 コイルバネ
21 通気孔
22 シール弁
23 導入チューブ
24 シールリング
25 取付部材
25a 保持室
25b 鍔部
25c 中間壁
25d 底壁
25e 環状突縁
26 掻き落としピストン
26a 取付筒
26b 本体
26c 外周環
26d 傾斜部
26e 環状凹部
111 充填ノズル