(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072645
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20220510BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20220510BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N33/483 C
G01N21/64 F
G01N21/78 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182202
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】518057480
【氏名又は名称】D-テック合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】田代 英夫
(72)【発明者】
【氏名】野田 紘憙
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
2G054
【Fターム(参考)】
2G043BA16
2G043EA01
2G043LA03
2G045DA36
2G045FA19
2G045FA26
2G045FB03
2G045FB12
2G045FB13
2G045FB15
2G045GC11
2G045JA07
2G054AA06
2G054CA21
2G054EA01
2G054EA03
2G054GB02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】グリッディング操作を行わず且つバイオチップ製作のコストをかけずに、簡便に直接的にスポット位置と形状とを特定して、スポット画像信号強度の計測を可能とする方法の提供。
【解決手段】バイオチップ(3)に対して光が照射される状態の明視野モードと、バイオチップ(3)に対して遮光された状態の暗視野モードと、を切り替え可能な明暗切替機構(13~16)と、明暗切替機構(13,14,16)が明視野モードでは明視野画像を撮像すると共に、明暗切替機構(13,14,16)が暗視野モードでは暗視野画像を撮像する撮像装置(11)と、を備えた検査装置(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体物質と試薬との反応で発光する被固定化物質が複数個スポット状に固定されたバイオチップと、
前記バイオチップに対して光が照射される状態の明視野モードと、前記バイオチップに対して遮光された状態の暗視野モードと、を切り替え可能な明暗切替機構と、
前記バイオチップ上の被固定化物質のスポット画像を撮像する撮像装置であって、前記明暗切替機構が前記明視野モードでは明視野画像を撮像すると共に、前記明暗切替機構が前記暗視野モードでは暗視野画像を撮像する前記撮像装置と、
を備えたことを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記明暗切替機構は、
前記バイオチップを囲んで遮光するフードと、
前記フードを前記バイオチップから離間させて外光が照射可能な明視野位置と、前記フードで前記バイオチップを囲んで遮光する暗視野位置と、の間で前記フードを移動させる移動装置であって、明視野モードでは前記フードを明視野位置に移動させると共に、前記暗視野モードでは前記フードを暗視野位置に移動させる前記移動装置と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記明暗切替機構は、
前記バイオチップを囲んで遮光するフードと、
前記フードの内側に配置されて前記バイオチップに光を照射可能な照明装置であって、前記明視野モードでは点灯されると共に、前記暗視野モードでは消灯される前記照明装置と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
明視野下で取得した前記スポット画像に画像処理技術を施すことにより、スポット位置と形状を特定して、暗視野下で同一スポット画像の信号強度を数値化する手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体分子マイクロアレイ(以下、バイオチップ、あるいは、チップと言う)を使用して生体物質の検査を行う検査装置において、スポット画像解析のため画像上の位置情報操作を正確かつ簡便に行うための検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
なお、本願明細書及び特許請求の範囲において、「スポット画像」とは、バイオチップの基体上に被固定化物質が固定された微小部位であるスポットの位置と形状を撮像した際の画像を指す。
【0003】
多数の微小スポットに検知用の物質を配して、単一検体の多項目同時検査を行うバイオチップ用計測装置は、各スポットの位置を認識して、そのスポットから発する化学発光あるいは蛍光を画像として観測し、スポットごとの信号強度を数値化する必要がある。
【0004】
バイオチップの計測法には、カメラで一括計測する画像取得法と共焦点レーザーを用いるスキャニング法とがあるが、いずれにしても得られたスポット画像信号を数値化しなければならない。即ち、多数ある各スポット画像のピーク強度や平均強度等の情報に変換する操作を要する。
【0005】
バイオチップの画像は、通常そのままではスポットごとの信号強度等を数値化できないため、解析ソフトウェアにより、“グリッディング”という操作を行う。グリッディングとは、チップ上のスポットの縦横の個数や各スポット間の距離(間隔)及びスポットの直径を入力し、各スポットを四角の枠又は円で囲む操作を言う。
【0006】
このスポットを囲む枠を想定して処理する目的は、バイオチップ画像の中に反応しない、即ち、光らないスポットが存在するので、これに対処するためである。
【0007】
前記グリッディング操作により、各スポット画像の最大値や平均値あるいは中間値を算出、即ち数値化する。それらを、そのスポット画像の信号値とすることにより、バイオチップの定量的解析が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
スポット画像のグリッディングは、一義的にできるものではない。なぜならば、画像上の2次元座標に対してスポット座標を一律に指定できないためである。これは、画像上、バイオチップのスポット位置は、実際には設計上の格子点位置からのずれを生じることがあることや、計測装置にバイオチップを装着する位置は、バイオチップごとにわずかにずれがあるためである。このため、スポットの位置は通常±100~300μmのずれがあるものと考えてよい。これに対してスポットのサイズは、直径20~400μmのものが一般的である。
【0010】
バイオチップ画像では同じチップを使用したとしても、一枚ごとにスポット画像についてグリッディングを行う必要がある。即ち、チップごとにスポット位置が一律に決まっているという保証がないためである。また、スポットサイズの変動や形状の違いへの対処もバイオチップ計測の課題である。このようなグリッディング操作の高信頼化と簡便化がバイオチップ計測の課題である。
【0011】
この解決法の一つとしてスポット位置の厳密化がある。即ち、画像上のスポットの位置ずれが常に一定となるように位置設定を厳密化することである。そのためには、バイオチップ自体の形状の誤差、チップ内のスポット位置の誤差、計測装置に対するバイオチップの装着誤差等を最小におさえ±20μm以下におさえる必要がある。実現不可能ではないが、コストアップになり検査等の応用には向いていない。
【0012】
グリッディング操作の簡略化のための一つの方法として、特許文献1にあるように、バイオチップ内に位置指標を設け、この位置指標をまず認識しそれを座標情報として、別途与えたスポット座標情報からグリッディングする方法がある。この場合、位置指標の認識工程とスポットの位置精度の高精度化が要求されるので、コストアップの要因となる。
【0013】
本発明は、前記グリッディング操作を行わず且つバイオチップ製作のコストをかけずに、簡便に直接的にスポット位置と形状とを特定して、スポット画像信号強度の計測を可能とすることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の検査装置は、
生体物質と試薬との反応で発光する被固定化物質が複数個スポット状に固定されたバイオチップと、
前記バイオチップに対して光が照射される状態の明視野モードと、前記バイオチップに対して遮光された状態の暗視野モードと、を切り替え可能な明暗切替機構と、
前記バイオチップ上の被固定化物質のスポット画像を撮像する撮像装置であって、前記明暗切替機構が前記明視野モードでは明視野画像を撮像すると共に、前記明暗切替機構が前記暗視野モードでは暗視野画像を撮像する前記撮像装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の検査装置において、
前記明暗切替機構は、
前記バイオチップを囲んで遮光するフードと、
前記フードを前記バイオチップから離間させて外光が照射可能な明視野位置と、前記フードで前記バイオチップを囲んで遮光する暗視野位置と、の間で前記フードを移動させる移動装置であって、明視野モードでは前記フードを明視野位置に移動させると共に、前記暗視野モードでは前記フードを暗視野位置に移動させる前記移動装置と、
を有することを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の検査装置において、
前記明暗切替機構は、
前記バイオチップを囲んで遮光するフードと、
前記フードの内側に配置されて前記バイオチップに光を照射可能な照明装置であって、前記明視野モードでは点灯されると共に、前記暗視野モードでは消灯される前記照明装置と、
を有することを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の検査装置において、
明視野下で取得した前記スポット画像に画像処理技術を施すことにより、スポット位置と形状を特定して、暗視野下で同一スポット画像の信号強度を数値化する手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、明暗切替機構で明視野モードと暗視野モードを切り替えて撮像することができ、グリッディング操作を行わず且つバイオチップ製作のコストをかけずに、簡便に直接的にスポット位置と形状とを特定して、スポット画像信号強度の計測を可能とすることができる。
請求項2に記載の発明によれば、フードの移動で暗視野モードと明視野モードを簡便に切り替えることができる。
請求項3に記載の発明によれば、明視野モードで照明装置が点灯されることで、光量が安定した状態で明視野のスポット画像を撮像することができる。
請求項4に記載の発明は、明視野モードでスポット位置と形状を特定して、暗視野モードで各スポットにおける発光を撮影でき、スポット画像信号強度を数値化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の検査装置の説明図であり、
図1Aはフードが上方に移動した状態の説明図、
図1Bはフードが下方に移動した状態の説明図である。
【
図2】
図2は検査装置の撮像工程の説明図であり、
図2Aは従来の撮像工程の説明図、
図2Bは実施の形態の撮像工程の説明図である。
【
図3】
図3は、実施例1のバイオチップの撮影画像の説明図であり、
図3Aは明視野のスポット画像の一例の図、
図3Bは
図3Aのスポット画像をエッジ抽出した図である。
【
図4】
図4は
図3のバイオチップの暗視野画像の説明図であり、
図4Aは暗視野のスポット画像から数値化処理を行った画像の図、
図4Bは
図4Aの画像からコントラスト強調を行った画像の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例を説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本発明の検査装置の説明図であり、
図1Aはフードが上方に移動した状態の説明図、
図1Bはフードが下方に移動した状態の説明図である。
本発明の実施の形態の検査装置1は、チップトレイ2を有する。チップトレイ2の上面には、バイオチップ3が支持されている。バイオチップ3の上方には、撮像装置の一例としてのカメラ11が配置されている。カメラ11のバイオチップ3側には、光学系の一例としてのレンズ12が配置されている。
【0022】
カメラ11を囲むように、フード13が配置されている。フード13は遮光可能な材料で構成されており、中空の筒状(暗筒状)に構成されている。フード13は、移動装置14により上下方向に移動可能に支持されている。移動装置14は、フード13を
図1Aに示す上方の明視野位置と、
図1Bに示す下方の暗視野位置との間で移動させる。明視野位置では、バイオチップ3に対して外光が照射可能であり、暗視野位置では、バイオチップ3はフード13で囲まれて遮光された状態となる。また、暗視野位置で、バイオチップに対して照明装置により照射し明視野モードにすることができる。
【0023】
バイオチップ3の上方且つフード13が暗視野位置に移動した場合のフード13の内側の位置に、照明装置16が配置されている。前記照明装置16は、白色光がバイオチップに照射できれば何でも良く、一例として、白色LEDが使用できる。
前記フード13や移動装置14、照明装置16、移動装置14および照明装置16を制御する制御回路等により、実施の形態の明暗切替機構13~16が構成されている。なお、実施の形態の明暗切替機構13~16は照明装置16を有する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、明視野での撮像で外光のみを使用する場合には、照明装置16を設けない構成とすることも可能である。
【0024】
バイオチップ3は、公知のバイオチップを採用可能であるが、バイオチップ3の構成を概説する。大別して、生体物質等を固定化するための基体と反応液や試薬等を入れる収納部から成る。前記基体に、生体物質から成る被固定化物質を固定化するための固定化担体(以下、ビーズと言う)を保持するための層を設け、当該層の上に前記ビーズをスポット状に固定する。前記ビーズとして、有機微粒子、または無機微粒子、あるいは磁性微粒子を用いることができる。
なお、固定化担体を使用せず、被固定化物質をバイオチップ3上に直接固定することも可能である。
【0025】
つぎに、前記バイオチップ3の具体的な使用法を概説する。被固定化物質として、前記ビーズに予め抗原を固定し、基体上にスポッティングする。収容部に生体物質である抗体を注入して、反応液等を入れ一定時間反応させた後、発光試薬を注入して、発光スポット画像を撮像する。発光試薬は、化学発光試薬、蛍光試薬どちらでも使用可能である。
【0026】
前記使用法に対応する装置は、大別して2種類ある。一つは、量産用装置として、反応時間が長い反応部と、処理時間が短い撮像部を分ける。そして反応終了後、前記チップを撮像部に装着して発光スポット画像を撮像する。もう一つは、反応部と撮像部が一体になったPOCT(Point Of Care Test)用装置である。いずれの用途でも、前記バイオチップ3とカメラ11は使用可能である。
【0027】
図2は検査装置の撮像工程の説明図であり、
図2Aは従来の撮像工程の説明図、
図2Bは実施の形態の撮像工程の説明図である。
図2Aにおいて、従来法では、専用ソフトウェアにより、先ず、スポットの位置情報(個数、配列、サイズ)を入力した後、暗視野下でスポット画像を取得する。そして、チップごとにグリッディングを行う、例えば、枠の中心にあるべきスポット位置ずれの調整など、を行う。つぎに、専用ソフトウェアにより、スポット画像信号強度を数値化する。
【0028】
図2Bにおいて、実施の形態の検査装置1では、先ず、明視野下でスポット画像を取得する。すなわち、バイオチップ3に光が照射された状態で、カメラ11で照射光による光散乱像を撮像する。バイオチップ3に光が照射される状態は、明暗切替機構13~16が明視野モードの状態であり、
(i)フード13を明視野位置に移動し且つ照明装置16を消灯、
(ii)フード13を明視野位置に移動し且つ照明装置16を点灯、
(iii)フード13を暗視野位置に移動し且つ照明装置16を点灯、
の3つのパターンの中から、利用者が選択して明視野で撮像が可能である。(iii)のパターンは、検査装置1の設置環境に左右されやすい自然外光の代わりに、照明装置16を用いて、フード13を降ろし遮光した状態で、明視野下(と暗視野下の両者)で撮像できる。したがって、照明を使用する(ii),(iii)のパターン、特に(iii)のパターンでは外光に左右されにくく、安定した光量で明視野のスポット画像を撮像可能である。
【0029】
以上を要約すれば、スポット画像には1個のチップに対して、同一位置かつ同一カメラにより暗視野で撮像する発光スポット画像と、明視野で撮像する光散乱スポット画像を得ることができる。
【0030】
そして、明視野でのスポット画像のエッジを抽出することにより、スポットの位置と形状を直接特定する。つまり、従来法のようにバイオチップごとにスポット位置の事前情報を入力せず、スポットの位置と形状を特定できる。なお、このように原理的にはスポット個数の情報も不要であるが、スポット個数の事前情報を使って整合していることを常に確認することはフェイルセーフの観点から有益である。スポットの位置と形状の特定は、エッジ抽出法に限定されない。例えば、AI(人工知能)を使用した特徴抽出や、予め準備されていた基準となるスポット画像とを比較する方法等の任意の画像処理技術でスポットの位置と形状を特定することも可能である。
また、前記明視野像の例として、反応液中の前記ビーズの散乱光だけでなく、ビーズを用いない生体物質をスタンプ(固定)した通常のバイオチップのスポットでも、反応液のないドライな状態では、スタンプ液の組成である塩が析出するためスポットからの散乱光を常に得ることができる。
【0031】
つぎに、暗視野下で同一スポット画像を取得する。すなわち、バイオチップ3に光が照射されない状態(遮光された状態)で、生体物質等の化学発光や蛍光、あるいは、これらの光のビーズからの散乱光をカメラ11で撮像する。実施の形態では、バイオチップ3が遮光された状態は、明暗切替機構13~16が暗視野モードの状態であり、フード13を暗視野位置に移動させ且つ照明装置16を消灯させた状態で実現可能である。そして、撮影された暗視野での画像に基づいて、専用ソフトウェアにより、スポット画像信号強度を数値化する。
【0032】
したがって、実施の形態のスポット画像は、被固定化物質、生体試料、試薬の反応で発光した場合は発光した状態の画像となり、発光しなかった場合は非発光の状態の画像となる。また、照明光や外光がある状態(明視野)では、照明光等がバイオチップのスポット位置で反射、散乱された光も含まれる画像となる。すなわち、スポット画像とは、基体上にスポット状に固定した生体物質と試薬との反応がスポット状の発光や非発光あるいは光散乱現象として発現する画像を言う。
【0033】
なお、実施の形態のカメラ11は、ズーム機能なしの固定焦点レンズ12を用い、かつ画角は一定に設定しているので、レンズ12と前記バイオチップ3のスポットとの間の距離は不変である。よって、前記明視野像および暗視野像内での各々のスポットの位置は変わらない。即ち、明視野像と暗視野像を重ね合わせれば、両者のスポット画像は合致する。
【0034】
前記構成を備えた実施の形態の検査装置1では、明視野下で取得した前記スポット画像のエッジ抽出を行うことにより、直接、スポット位置と形状を特定して、暗視野下で同一スポット画像の信号強度を数値化することができる。この実施の形態によるバイオチップ3のスポット画像の位置と形状判定法は、バイオチップ3の製造時におけるスポット位置精度や、測定時、検査装置1内でのバイオチップ3の装着位置精度を特別に指定することなく、即ち、通常の機械工作精度の範囲内で、正確かつ簡便に位置と形状を判定することを可能にする。
【0035】
具体的には、明視野像を取り込むことにより、スポット位置を正確に取得し、暗視野像の弱発光と無発光(正確には発光を検知できない)スポットにおいても信号強度を正確に算出することができる。
【0036】
また、バイオチップ3ごとにスポット画像の位置と形状判定を行うので、バイオチップ3自体の形状精度やバイオチップ3内のスポット位置精度のばらつきに影響を受けない。
【0037】
その結果、スポット画像信号強度の数値化の精度が高くなり、例えば、抗原抗体反応結果のユーザーである患者及び医師の期待に応えることができる。
【実施例0038】
図3は、実施例1のバイオチップの撮影画像の説明図であり、
図3Aは明視野のスポット画像の一例の図、
図3Bは
図3Aのスポット画像をエッジ抽出した図である。
【0039】
図3Aでは、バイオチップ基体に、生体物質を結合させたビーズと反応液を、63スポッティングした。ほかに、ビーズのないタンパク質と反応液を6スポッティングした。さらに、何もスポットがない領域12スポット分を準備した。図からわかるように、ビーズスポットはビーズからの散乱光により、明視野像として明瞭に撮像できた。しかし、タンパクスポットとスポットなしの領域は、明視野像として撮像されなかった。
【0040】
図3Bは、明視野像として明瞭に撮像されたスポット画像を、公知の画像処理技術の一つであるエッジ抽出を用いてスポットの輪郭を強調した。前記63個のビーズスポットが明瞭に表され、明視野像の目的が達成できた。
【0041】
図4は
図3のバイオチップの暗視野画像の説明図であり、
図4Aは暗視野のスポット画像から数値化処理を行った画像の図、
図4Bは
図4Aの画像からコントラスト強調を行った画像の図である。
図4Aからわかるように、各々のビーズスポットに明暗はあるものの、取得した各スポット画像の信号強度から数値化処理を行った。
図4Bにおいて、前記
図4Aの暗視野像のコントラスト強調を行うことで、より明瞭なスポット画像を取得することができ、数値化処理も容易に実行可能である。実際の数値データ記載は省略する。
【0042】
(変更例)
前記実施の形態では、フード13やカメラ11がバイオチップ3の上方に配置された形態を例示したが、これに限定されない。例えば、フード13やカメラ11をバイオチップ3の下方または側方に配置して、バイオチップ3に対して接近、離間する方向に移動可能とすることも可能である。
なお、カメラ11等をバイオチップ3の下方や側方に配置する場合には、バイオチップ3内をドライな状態で撮影するか、カバー等でバイオチップ3内の液体を密封してバイオチップ3を上下反転または横向きにして撮影することが可能である。
また、例えば、バイオチップ3の底板をアクリル等の透明な素材で形成して、底板の下方からカメラ等で撮像する構成とすることも可能である。この時、暗視野画像の撮影を可能とするために、バイオチップ3の上面や側面に遮光用の部材(蓋やカバー)を配置することが望ましい。
さらに、実施の形態では、撮像装置の一例としてカメラを例示したが、これに限定されない。例えば、静止画や動画を撮影可能なビデオカメラや、非可視領域の光を撮像可能な赤外線カメラ等、発光位置とその強度を取得可能な光度計(例えば共焦点走査計)等を使用することも可能である。