(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072662
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】微粒子材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20220510BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
B01J19/08 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182226
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】504119424
【氏名又は名称】株式会社魁半導体
(72)【発明者】
【氏名】山原 基裕
(72)【発明者】
【氏名】北川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】登尾 一幸
(72)【発明者】
【氏名】田口 貢士
【テーマコード(参考)】
4G072
4G075
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB05
4G072GG03
4G072GG05
4G072HH28
4G072HH30
4G072LL01
4G072LL03
4G072RR11
4G072RR25
4G072RR28
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA27
4G075BA06
4G075BA08
4G075CA48
4G075CA62
4G075DA02
4G075EB43
4G075EC21
4G075FA03
4G075FA14
4G075FB02
4G075FB06
(57)【要約】
【課題】プラズマ用ガスによるプラズマ中に、原料を含む液体又は蒸気を供給することで、微粒子を生成する製造方法を提供する。
【解決手段】一方の電極が原料を含む液体又は蒸気を供給する管を兼ねた電極と、他方の電極がコイル状ではないプラズマ発生装置を使用することにより、安定的にプラズマを生成し、プラズマ用ガスによるプラズマ中に、原料を含む液体又は蒸気を供給する液体原材料供給装置を設置し、液体原材料を液体又は蒸気の状態でプラズマ中に供給することにより、微粒子を生成することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子の製造方法であって、
プラズマ用ガスによるプラズマ中に、原料を含む液体又は蒸気を供給することにより微粒子を生成することを特徴とする微粒子材料の製造方法。
【請求項2】
前記プラズマを発生する電極において、
一方の電極が原料を含む液体又は蒸気を供給する管を兼ねた電極であり、
他方の電極がコイル状ではないことを特徴とする請求項1に記載の微粒子材料の製造方法。
【請求項3】
前記他方の電極が平板状、または空間を有する形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の微粒子材料の製造方法。
【請求項4】
前記空間を有する形状の電極において、メッシュ、エキスパンドルメタル、パンチングメタルの群から選ばれる1種であることを特徴とする請求項3のいずれかに記載の微粒子材料の製造方法。
【請求項5】
前記原料を含む液体又は蒸気が、アルコキシシラン、シラザン、シロキサンの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の微粒子材料の製造方法。
【請求項6】
前記原料を含む液体又は蒸気が、1または複数の金属を含む水溶性金属化合物を含む溶液であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の微粒子材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子等の微粒子は、半導体基板、プリント基板、各種電気絶縁部品などの電気絶縁材料、切削工具、ダイス、軸受などの高硬度高精度の機械工作材料、粒界コンデンサ、湿度センサなどの機能性材料、精密焼結成形材料などの焼結体の製造、エンジンバルブなどの高温耐摩耗性が要求される材料などの溶射部品製造、燃料電池の電極、電解質材料および各種触媒、さらには化粧品や医薬品などの分野で用いられている。
一般に微粒子の生成方法として、砕料に機械的なエネルギーを加えて微細化する「ブレークダウン(break-down) 」と、原子やイオンあるいは分子の集合体を化学反応により、その組み立て、成長を制御することにより微粒子とする「ビルドアップ(build-up)」とに大別される。
前記ブレークダウン法では、スケールアップが容易ではなく、エネルギー効率が低く、コンタミ等の問題がある。しかし、プロセス、処理量を考えるとサブミクロン領域の微粒子の生成には、 ブレークダウンである「粉砕法」が有利と考えられる。
一方、ビルドアップ法では、ガスや溶液の化学反応、物理的な冷却などにより原子もしくは分子状の凝集性物質から核生成と成長により、粒子へと作り上げる為、ナノ粒子を生成するのに有利である。後で微粒子となる原材料の最初の状態により、「気相法」「液相法」「固相法」の3つに分類される。
金属酸化物粒子として、固相法で製造可能な金属酸化物微粒子の粒径の下限は数百nm程度であり、それよりも粒径が小さな金属酸化物微粒子は、液相法または気相法で製造されている。特に、プラズマを使用した気相法について、例えば、特許文献1には、試験装置レベルで、アークプラズマに代表されるプラズマ法が存在するが、海外の技術も含めて生産能力が非常に低く、微粒子を量産する装置は存在しないことが記載されている。また、特許文献2にはテトラメトキシシランを処理対象物に塗布し、その後プラズマを照射することにより、二酸化珪素が形成されることが開示されている。
また、非特許文献1には、トリクロロメチルシランを原料として、プラズマ気相反応により炭化珪素微粒子を生成していることが開示されている。さらに、特許文献3には、珪素粒子をアルコール等の液体に分散したスリラーを使用して、珪素/炭化珪素複合微粒子の生成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-098867号公報
【特許文献2】特開2011-222404号公報
【特許文献3】特開2011-213524号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】粉体と粉末冶金,第27巻第8号(1980),P249-251
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2において二酸化珪素を形成されているが、コーティング処理を行っており、粉体生成については言及されていない。また、非特許文献1においては、トリクロロメチルシランをアルゴンキャリアガスによりプラズマトーチに搬送し、気相反応により炭化珪素粒子を作製しているが、プラズマトーチの構造として電極が黒鉛棒とガラス管の外側にワークコイルを用いた構造を有しており、プラズマを安定的に発生するには細かい調整が必要な構造となり、製造装置として使用するには難しいものとなっている。さらに特許文献3においては、スラリー液滴を供給する供給管の材質が記載されておらず、プラズマトーチ内は大気圧以下であり、高周波発振用コイルを使用し、プラズマガスを供給することにより熱プラズマ炎を発生させているが、こちらもプラズマを安定的に発生するには細かい調整が必要な構造となり、製造装置として使用するには難しいものとなっている。
特に、液相からワークコイル状電極を使用せずに微粒子の粉体を生成する方法は未だ検討されていない。
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、簡便な構造で複雑な調整が不要で、且つ安定的にプラズマを発生し、液体原料から直接、容易に微粒子を生成することができ、高い生産性を実現する微粒子材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、下記の[1]~[6]のいずれかに記載の微粒子の製造方法を提供するものである。
【0007】
[1]微粒子の製造方法であって、プラズマ用ガスによるプラズマ中に、原料を含む液体又は蒸気を供給することにより微粒子を生成する微粒子材料の製造方法。
[2]前記プラズマを発生する電極において、一方の電極が原料を含む液体又は蒸気を供給する管を兼ねた電極であり、他方の電極がコイル状ではない微粒子の製造方法。
[3]前記他方の電極が平板状、または空間を有する形状である微粒子の製造方法。
[4]前記空間を有する形状の電極において、メッシュ、エキスパンドルメタル、パンチングメタルの群から選ばれる1種である微粒子の製造方法。
[5]前記原料を含む液体又は蒸気が、アルコキシシラン、シラザン、シロキサンの群から選ばれる少なくとも1種である微粒子の製造方法。
[6]前記原料を含む液体又は蒸気が、1または複数の金属を含む水溶性金属化合物を含む溶液である微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一方の電極が原料を含む液体又は蒸気を供給する管を兼ねた電極であり、他方の電極がコイル状ではないプラズマ発生装置を使用し、プラズマ用ガスによるプラズマ中に、原料を含む液体又は蒸気を供給することにより、簡便、容易にかつ再現性よく微粒子を製造することが可能である。
また、本発明では原料が液体又は蒸気であるため、原料を気化させる工程や、温度管理等が容易であるため、製造コストを低減することができ、所望の粒径の微粒子を簡便かつ容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る微粒子材料の製造方法を実施するための微粒子製造装置の全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図1中のプラズマトーチ付近を拡大して示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態においてTEOSから生成された微粒子のSEM写真である。
【
図4】第1の実施形態における生成された微粒子とシリカゲルのFT-IRスペクトルである。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る微粒子材料の製造方法を実施するための微粒子製造装置の全体構成を示す模式図である。
【
図6】第2の実施形態においてTEOSから生成された微粒子のSEM写真である。
【
図7】第2の実施形態における生成された微粒子とシリカゲルのFT-IRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態を
図1から
図3により説明する。
図1および
図3は、それぞれ第1実施形態および第2実施形態に係る微粒子材料製造装置の全体構成を示す模式図である。また、
図2は、第1の実施形態に係る微粒子材料製造装置のプラズマトーチ付近を拡大して示す断面図である。
(第1の実施形態)
【0011】
まず、本発明の第1の実施形態について
図1により説明する。以下では、液体原材料19として前駆体物質であるテトラエトキシシラン(以下、TEOS)をプラズマ8中に供給することにより、二酸化珪素の微粒子が生成される場合について説明する。
図1に示すように、本実施形態の微粒子製造装置1は、液体の前駆体材料を供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極2と、プラズマ生成用ガスを供給するコネクター部3と、石英管からなるプラズマ生成ガス誘導管4と、ステージを兼ねた他方の電極5からなるプラズマトーチ部があり、プラズマを発生するための電源6、プラズマ生成ガス供給源7と、液体原材料供給装置9とを含んで構成される。
【0012】
本実施形態においては、二酸化珪素の前駆体液体原料(本実施の形態の場合、TEOSの原液)を、液体の状態で直接微粒子製造装置1に供給し、プラズマ照射により、二酸化珪素の微粒子が製造される。
【0013】
図2に示すプラズマトーチ部は、石英管からなるプラズマ生成ガス誘導管4と、ステージを兼ねた平板状の電極5とで構成されている。プラズマトーチ部の上部には、前述した液体の前駆体材料を供給する管を兼ねたプラズマを発生させる電極2がその中央部に設けられており、プラズマガス供給口7aが形成されている。
【0014】
プラズマガス17は、プラズマガス供給源7からプラズマガス供給口7a(
図2参照)へ送り込まれる。
本実施形態においては、プラズマガス17として、例えば、水素、ヘリウム、アルゴン、酸素等が挙げられ、好ましくは、水素、ヘリウム、アルゴンを使用する。プラズマガスは、単体に限定されるものではなく、水素とアルゴン、ヘリウムとアルゴンのように組み合わせて使用してもよい。
プラズマガス供給源7には、例えば、アルゴンの1種類のプラズマガスが準備されている。プラズマガス17は、プラズマガス供給源7から、
図2に示すプラズマガス供給口7aを介して、矢印で示されるようにプラズマ生成ガス誘導管4によってプラズマトーチ内に送り込まれる。そして、電極2と電極5間に高周波電圧が印加されて、プラズマ8が発生する。
【0015】
図1に示すように、材料供給装置9は、液体の前駆体材料を供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極2を介してプラズマトーチの上部に接続され、酸化珪素の液体原材料供給装置9からプラズマトーチ内へ定量的に供給する。
液体原材料供給装置9は、液体原材料19を入れる容器と高圧をかけてプラズマトーチ内に供給するためのポンプ(図示せず)又は/及び、液体原材料をプラズマトーチ内へ噴霧するためのキャリアガスを供給するキャリアガス供給源(図示せず)と、プラズマトーチ内に供給する供給管を含み構成されている。
前記原材料供給装置9は、液体原材料をプラズマトーチ内に供給する手段として、ポンプのみによる供給でもキャリアガスのみによる供給のどちらでもよく、両方を併用しても構わない。キャリアガスには、例えば、アルゴン、ヘリウム、水素等が単独または適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0016】
一方、
図1及び
図2に示したように、前記ステージを兼ねた平板状の電極5がプラズマトーチ下方に設けられている。プラズマトーチ内のプラズマ8に液体原材料19を供給されることにより液体原材料がエネルギーの高い状態となり、その上、プラズマ中のエネルギー状態が高くなった大気中の分子や原子と反応することとなる。プラズマ中には、イオン状態のものやラジカル状態のものが混在するため、原材料の酸化反応、及び加水分解且つ脱水縮合反応的な反応が混在的に起こることにより、二酸化珪素が生成されることになる。その後、前記ステージを兼ねた平板状の電極5上で急冷されて、前記二酸化珪素の微粒子が前記ステージを兼ねた平板状の電極5上に付着する。
【0017】
前記ステージを兼ねた平板状の電極5として、電極となるものであれば、何ら材料として限定されるものではない。また、ステージを兼ねた電極5として、生成された微粒子が付着することを防止するために、電極メッシュ構造、エキスパンドルメタル、パンチングメタルのものが好ましい。
【0018】
本実施形態において、液体原材料19としては、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン、または水溶性金属化合物の群から選ばれる1種または複数の液体の原材料である。シラン化合物としては、例えば、TEOS、メチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。シラザン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン(以下、HMDS)、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン等が挙げられる。シロキサン化合物として、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンの他、液体のポリシロキサン化合物等、液体のシロキサン化合物であれば、何ら限定されるものではない。
【0019】
また、本実施形態において、液体原材料19としての水溶性金属化合物としては、チタン、ジルコニア、ハフニウム、タンタル、ニオブ、ビスマス、タングステン、モリブデン等のリン酸や水溶性リンオリゴマー、グリコール酸、シュウ酸、リンゴ酸、乳酸等による配位子による水溶性金属錯体が挙げられ、水溶性金属錯体であれば、何ら限定されることはない。
【0020】
本実施例形態においては、液体原材料19の流量、プラズマガス17の流量、電源のパワーを調節することにより粉末の粒径や、生成量、微粒子の状態を調整することが可能である。さらに、
図1に於いて、前記液体の前駆体材料を供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極2の径、前記石英管からなるプラズマ生成ガス誘導管4の径、それらの出口の形状、前記液体の前駆体材料を供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極2と前記ステージを兼ねた平板状の電極5との電極間距離、前記石英管からなるプラズマ生成ガス誘導管4を前記液体の前駆体材料を供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極2に被せる長さを調整することにより、微粒子の生成状況を制御することが可能である。
【0021】
ここで、液体原材料19としてTEOSの流量が30μL/min、TEOSの温度60℃、プラズマガスをアルゴンとし、プラズマガスの流量が10L/min、電源のパワーが60Wの時に生成した微粒子のSEM写真とFT-IRスペクトルをそれぞれ
図3、
図4(a)に示す。
図4(b)は、シリカゲルのFT-IRスペクトルである。これらのFT-IRスペクトルにより、
図4(a)の微粒子の二酸化珪素微粒子が生成されたことを確認した。
(第2の実施形態)
【0022】
次に、第2の実施形態について、
図5により説明する。以下では、液体原材料29として前駆体物質であるHMDSをプラズマ28中に供給することにより、二酸化珪素の微粒子が生成される場合について説明する。
図5に示すように、本実施形態の微粒子製造装置21は、液体の前駆体材料及びプラズマガスを供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極22と、石英管24と、ステージを兼ねた他方の電極25からなるプラズマトーチ部があり、プラズマを発生するための電源26、プラズマ生成ガス兼キャリアガス供給源27と、液体原材料供給装置29とを含んで構成される。
【0023】
本実施形態においては、二酸化珪素の前駆体液体原料(本実施の形態の場合、HMDS液)を、液体の状態で直接微粒子製造装置21に供給し、プラズマ照射により、二酸化珪素の微粒子が製造される。
【0024】
図5に示すプラズマトーチ部は、石英管24と、ステージを兼ねた平板状の電極25とで構成されている。プラズマトーチ部の上部には、前記した液体の前駆体材料及びプラズマガスを供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極22がその中央部に設けられている。
【0025】
プラズマガスは、プラズマガス供給源27から前記液体原材料供給装置29に送り込まれ、液体原材料39をバブリングし、液体原材料の蒸気をキャリアするキャリアガスを兼ねて、前記した液体の前駆体材料及びプラズマガスを供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極22へ送り込まれる。
本実施形態においては、プラズマガスとして、例えば、水素、ヘリウム、アルゴン、酸素等が挙げられ、好ましくは、水素、ヘリウム、アルゴンを使用する。プラズマガスは、単体に限定されるものではなく、水素とアルゴン、ヘリウムとアルゴンのように組み合わせて使用してもよい。
プラズマガス供給源27には、例えば、アルゴンの1種類のプラズマガスが準備されている。プラズマガス供給源27から前記液体原材料供給装置29に送り込まれ、液体原材料39をバブリングし、液体原材料の蒸気をキャリアするキャリアガスを兼ねて、前記した液体の前駆体材料及びプラズマガスを供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極22によってプラズマトーチ内に送り込まれる。そして、電極22と電極25間に高周波電圧が印加されて、プラズマ28が発生する。
【0026】
液体原材料供給装置29は、液体原材料39を入れる容器に液体原材料をプラズマトーチ内へ噴霧するためのキャリアガスを供給するキャリアガスとプラズマガスを兼ねたガス供給源27によりバブリングを行い、液体原料の蒸気とキャリアガス兼プラズマガス39をプラズマトーチ内に供給する供給管を含み構成されている。
キャリアガスとプラズマガスを兼ねたガス供給源27内のガスは、例えば、アルゴン、ヘリウム、水素等が単独または適宜組み合わせて用いることが可能である。
【0027】
一方、
図5に示したように、前記ステージを兼ねた平板状の電極25がプラズマトーチ下方に設けられている。プラズマトーチ内のプラズマ28に液体原材料及びキャリアガス兼プラズマガス39を供給されることにより液体原材料がエネルギーの高い状態となり、その上、プラズマ中のエネルギー状態が高くなった大気中の分子や原子と反応することとなる。プラズマ中には、イオン状態のものやラジカル状態のものが混在するため、原材料の酸化反応、及び加水分解且つ脱水縮合反応的な反応が混在的に起こることにより、二酸化珪素が生成されることになる。その後、前記ステージを兼ねた平板状の電極25上で急冷されて、前記二酸化珪素の微粒子が前記ステージを兼ねた平板状の電極25上に付着する。
【0028】
前記ステージを兼ねた平板状の電極25として、電極となるものであれば、何ら材料として限定されるものではない。また、ステージを兼ねた電極25として、生成された微粒子が付着することを防止するために、電極メッシュ構造、エキスパンドルメタル、パンチングメタルのものが好ましい。
【0029】
本実施形態において、液体原材料としては、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン、または水溶性金属化合物の群から選ばれる1種または複数の液体の原材料である。シラン化合物としては、例えば、TEOS、メチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。シラザン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン(以下、HMDS)、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン等が挙げられる。シロキサン化合物として、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサンの他、液体のポリシロキサン化合物等、液体のシロキサン化合物であれば、何ら限定されるものではない。
【0030】
また、本実施形態において、液体原材料としての水溶性金属化合物としては、チタン、ジルコニア、ハフニウム、タンタル、ニオブ、ビスマス、タングステン、モリブデン等のリン酸や水溶性リンオリゴマー、グリコール酸、シュウ酸、リンゴ酸、乳酸等による配位子による水溶性金属錯体が挙げられ、水溶性金属錯体であれば、何ら限定されることはない。
【0031】
本実施例形態においては、液体原材料の流量、プラズマガスの流量、電源のパワーを調節することにより粉末の粒径や、生成量、微粒子の状態を調整することが可能である。さらに、
図5に於いて、液体の前駆体材料及びプラズマガスを供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極22の径、前記石英管24の径、それらの出口の形状、液体の前駆体材料及びプラズマガスを供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極22と前記ステージを兼ねた平板状の電極25との電極間距離、前記石英管4を液体の前駆体材料及びプラズマガスを供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極22に被せる長さを調整することにより、微粒子の生成状況を制御することが可能である。
【0032】
ここで、液体原材料39としてHMDSの温度が24℃、蒸気圧が2.0×10
3Pa、キャリア兼プラズマガスをアルゴンとし、キャリア兼プラズマガスの流量が0.8L/min、電源のパワーが45Wの時に生成した微粒子のSEM写真とFT-IRスペクトルをそれぞれ
図6、
図7(a)に示す。
図7(b)は、シリカゲルのFT-IRスペクトルである。これらのFT-IRスペクトルにより、
図7(a)の微粒子の二酸化珪素微粒子が生成されたことを確認した。
【0033】
以上の結果から、液体原材料をプラズマ中に供給することにより、簡便、容易にかつ再現性よく微粒子を製造することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0034】
液体原材料から直接的に微粒子を生成することができ、原料を気化させる工程や、温度管理等が容易であるため、製造コストを低減することができ、所望の粒径の微粒子を簡便かつ容易に製造することができ、研磨粒子やカラム充填剤、高精度フィルター等、様々な用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0035】
1、21・・・微粒子製造装置
2・・・液体の前駆体材料を供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極
3・・・プラズマ生成用ガスを供給するコネクター部
4・・・石英管からなるプラズマ生成ガス誘導管
5、25・・・ステージを兼ねた平板状の電極
6、26・・・電源
7・・・プラズマガス供給源
7a・・・プラズマガス供給口
8、28・・・プラズマ
9、29・・・液体原材料供給装置
17・・・プラズマガス
19・・・液体原材料
22・・・液体の前駆体材料及びプラズマガスを供給する管を兼ねたプラズマを発生させる一方の電極
24・・・石英管
27・・・キャリアガスとプラズマガスを兼ねたガス供給源
39・・・キャリアガス兼プラズマガス