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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072681
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】液体肥料供給装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 23/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
A01C23/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182256
(22)【出願日】2020-10-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 試験日:令和2年1月9日 試験場所:JA全農 営農・技術センター(神奈川県平塚市東八幡4-18-1)
(71)【出願人】
【識別番号】596029085
【氏名又は名称】株式会社パディ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 恒雄
【テーマコード(参考)】
2B052
【Fターム(参考)】
2B052BC07
2B052BC09
2B052DC07
2B052EB07
2B052EB14
2B052EC02
2B052EC10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡単な構成で液体肥料の安定供給と作業効率との両立が可能な液体肥料供給装置を提供する。
【解決手段】液体肥料供給装置11は、圃場への流し込み施肥を行う際の液体肥料を水口に供給するための装置であって、あらかじめ設定された流量の液体肥料を導出する設定流量導出手段12と、該設定流量導出手段からの液体肥料を流入させる液体肥料供給管13と、設定流量導出手段及び液体肥料供給管が設けられる基部材14とを備え、基部材の下端部には、圃場に差し込む差込部14bが設けられ、液体肥料供給管は、基部材の差込方向に対して交差する方向に延びるとともに、水面下に没した状態で、液体肥料を圃場に流出させる複数の液体肥料供給孔13aを有し、前記複数の液体肥料供給孔は、孔径が全て同径で液体肥料供給管の少なくとも両端部に設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場への流し込み施肥を行う際の液体肥料を水口に供給するための液体肥料供給装置であって、あらかじめ設定された流量の液体肥料を導出する設定流量導出手段と、該設定流量導出手段からの前記液体肥料を流入させる液体肥料供給管と、前記設定流量導出手段及び前記液体肥料供給管が設けられる基部材とを備え、
前記基部材の下端部には、前記圃場に差し込む差込部が設けられ、前記液体肥料供給管は、前記基部材の差込方向に対して交差する方向に延びるとともに、水面下に没した状態で、前記液体肥料を前記圃場に流出させる複数の液体肥料供給孔を有し、
前記複数の液体肥料供給孔は、孔径が全て同径で前記液体肥料供給管の少なくとも両端部に設けられていることを特徴とする液体肥料供給装置。
【請求項2】
前記基部材の上端部には、前記液体肥料を貯留する液肥貯留槽と、該液肥貯留槽内の液体肥料の液面を一定の高さに保持するための液面保持手段とが設けられ、前記液面保持手段は、外部から前記液肥貯留槽内に液体肥料を導入する液肥導入ノズルと、前記液肥貯留槽内の液位の上昇に伴って上昇したときに前記液肥導入ノズルの下端に設けた弁口を閉塞するフロート弁体とを備え、
前記設定流量導出手段は、前記液肥貯留槽からの前記液体肥料の導出量を設定可能な調整バルブと、前記導出量を確認可能な計量筒と、該計量筒から導出された前記液体肥料を前記液体肥料供給管内に流下させるガイド筒と、前記計量筒及び前記ガイド筒間を連通する液肥導出管とを備え、
前記計量筒は、透明材料で形成され、周面に前記液体肥料の導出量を示す目盛が付されていることを特徴とする請求項1記載の液体肥料供給装置。
【請求項3】
前記基部材は、上下方向に延びる円筒形状からなり、上端部に前記液肥貯留槽が嵌入固定される嵌入部を有し、下端部に前記差込部を形成する傾斜断面を有し、
前記液体肥料供給管は、前記基部材を径方向に貫通した状態で、前記計量筒と前記ガイド筒とを前記基部材の両側部にそれぞれ支持し、
前記液肥導出管は、可撓性を有する着脱可能な配管であり、中間部が前記基部材の外周面に沿って曲げられていることを特徴とする請求項2記載の液体肥料供給装置。
【請求項4】
前記液体肥料の流通路における前記液体肥料供給管よりも上流かつ前記設定流量導出手段よりも下流に設けられ、前記水口に供給される用水の供給量が設定流量以下のときに、前記液体肥料供給管への液体肥料の流入を停止させる液体肥料供給制御手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液体肥料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体肥料供給装置に関し、詳しくは、圃場(水田)への流し込み施肥を行う際の液体肥料を効率よく供給するための液体肥料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水稲栽培における圃場への施肥作業を行う方法として、湛水深を低くした状態で、水口から圃場に流入する水流に乗せて肥料を施肥する流し込み施肥方法が知られている。この流し込み施肥を行う際に使用する液体肥料供給装置として、水口から圃場に流入する用水中に、一定割合の液体肥料を供給するための構造を有する液体肥料供給装置が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-77210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、農業生産性の向上を目的とする圃場整備に伴い、大規模な圃場に対して施肥作業を省力的に行える方法が求められている。しかしながら、特許文献1に記載された液体肥料供給装置では、圃場への施肥作業を行う際に、液肥貯留槽を据え付けるための治具が別途に必要であり、液体肥料供給装置の設置や撤収に手間がかかるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構成で液体肥料の安定供給と作業効率との両立が可能な液体肥料供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の液体肥料供給装置は、圃場への流し込み施肥を行う際の液体肥料を水口に供給するための液体肥料供給装置であって、あらかじめ設定された流量の液体肥料を導出する設定流量導出手段と、該設定流量導出手段からの前記液体肥料を流入させる液体肥料供給管と、前記設定流量導出手段及び前記液体肥料供給管が設けられる基部材とを備え、前記基部材の下端部には、前記圃場に差し込む差込部が設けられ、前記液体肥料供給管は、前記基部材の差込方向に対して交差する方向に延びるとともに、水面下に没した状態で、前記液体肥料を前記圃場に流出させる複数の液体肥料供給孔を有し、前記複数の液体肥料供給孔は、孔径が全て同径で前記液体肥料供給管の少なくとも両端部に設けられていることを特徴としている。
【0007】
また、前記基部材の上端部には、前記液体肥料を貯留する液肥貯留槽と、該液肥貯留槽内の液体肥料の液面を一定の高さに保持するための液面保持手段とが設けられ、前記液面保持手段は、外部から前記液肥貯留槽内に液体肥料を導入する液肥導入ノズルと、前記液肥貯留槽内の液位の上昇に伴って上昇したときに前記液肥導入ノズルの下端に設けた弁口を閉塞するフロート弁体とを備え、前記設定流量導出手段は、前記液肥貯留槽からの前記液体肥料の導出量を設定可能な調整バルブと、前記導出量を確認可能な計量筒と、該計量筒から導出された前記液体肥料を前記液体肥料供給管内に流下させるガイド筒と、前記計量筒及び前記ガイド筒間を連通する液肥導出管とを備え、前記計量筒は、透明材料で形成され、周面に前記液体肥料の導出量を示す目盛が付されていることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記基部材は、上下方向に延びる円筒形状からなり、上端部に前記液肥貯留槽が嵌入固定される嵌入部を有し、下端部に前記差込部を形成する傾斜断面を有し、前記液体肥料供給管は、前記基部材を径方向に貫通した状態で、前記計量筒と前記ガイド筒とを前記基部材の両側部にそれぞれ支持し、前記液肥導出管は、可撓性を有する着脱可能な配管であり、中間部が前記基部材の外周面に沿って曲げられていることを特徴としている。
【0009】
加えて、前記液体肥料の流通路における前記液体肥料供給管よりも上流かつ前記設定流量導出手段よりも下流に設けられ、前記水口に供給される用水の供給量が設定流量以下のときに、前記液体肥料供給管への液体肥料の流入を停止させる液体肥料供給制御手段を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体肥料供給装置によれば、圃場に差し込まれる基部材に設定流量導出手段及び液体肥料供給管を設けているので、これらを一体的に取り扱って設置や撤収を効率的に行うことができる。また、液体肥料供給管が基部材の差込方向に対して交差する方向に延び、その両端部に液体肥料供給孔を設けているので、液体肥料供給装置の据付け向きが容易に定まるとともに、互いに離した位置にある液体肥料供給孔によって液体肥料を圃場の全体に効果的に供給することができる。さらに、液体肥料供給管における各孔の孔径を全て同径に統一しているので、液体肥料供給管が水没しさえすれば、液体肥料を各孔から均等に流出させることが可能となり、一定量の液体肥料を圃場にむらなく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1形態例を示す液体肥料供給装置の正面図である。
図2】同じく側面図である。
図3】同じく正面断面図である。
図4図1のIV-IV断面である。
図5図1のV-V断面図である。
図6図1のVI-VI断面図である。
図7】本発明の第2形態例を示す液体肥料供給装置の正面図である。
図8】同じく側面図である。
図9図7のIX-IX断面図である。
図10】同じく液体肥料供給制御手段の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至図6は、本発明の第1形態例における液体肥料供給装置を示すものである。第1の液体肥料供給装置11は、基本的に、軽量で強度のある材料、例えば、塩化ビニールパイプを複数組み合わせて一体的に形成したもので、あらかじめ設定された流量の液体肥料を導出する設定流量導出手段12と、該設定流量導出手段12からの液体肥料を流入させる液体肥料供給管13と、設定流量導出手段12及び液体肥料供給管13が設けられる基部材14とを備え、該基部材14の下端部が圃場に差し込まれることによって起立姿勢で据付け可能になっている。
【0013】
基部材14は、上下方向に延びる円筒形状からなり、上端部に液体肥料を貯留する有底円筒状の液肥貯留槽15が嵌入固定される嵌入部14aを有するとともに、下端部に前記円筒形状を斜めに切断してなる傾斜断面をもつ差込部14bを有している。
【0014】
液肥貯留槽15内には、液体肥料の液面を一定の高さに保持するための液面保持手段16が設けられている。液面保持手段16は、液肥貯留槽15の上部開口を覆う蓋体17の中央に設けた液肥導入ノズル18と、該液肥導入ノズル18の下端に設けた弁口18aを開閉するフロート弁体19とを備えている。また、液肥貯留槽15の上部には、槽内外を連通する通気孔(図示せず)が設けられている。
【0015】
液肥導入ノズル18には、液肥貯留槽15の外部の適当な位置に設置された大容量の液体肥料供給タンク(図示せず)に接続した液肥導入経路となる液肥導入パイプが接続可能であり、高所に設置した液体肥料供給タンク内の液体肥料は、自然流下によって液肥導入パイプを通り、液肥導入ノズル18から液肥貯留槽15の内部に流入する。
【0016】
フロート弁体19は、液肥貯留槽15内の液面の上下に伴って上下動するものであって、液肥貯留槽15の内径よりも僅かに小さな外径を有するPETボトルをフロート弁体19として使用し、キャップの上面に、前記弁口18aを閉塞可能な弁体部19aを設けている。
【0017】
液肥導入ノズル18から液肥貯留槽15の内部に液体肥料が流入して液肥貯留槽15内の液面が上昇し、該液面の上昇に伴ってフロート弁体19が上昇すると、あらかじめ設定された液面に達したときに弁体部19aが弁口18aを閉塞して液肥導入ノズル18からの液体肥料の流入を停止する。液肥貯留槽15内の液体肥料が前記設定流量導出手段12によって導出され、液肥貯留槽15内の液面が下降すると、該液面の下降に伴ってフロート弁体19が下降し、弁体部19aが弁口18aから離れて液肥導入ノズル18から液体肥料が液肥貯留槽15内に流入する。したがって、液肥貯留槽15内の液面の上下動に伴うフロート弁体19の上下動によって弁口18aが開閉されることにより、液肥貯留槽15内の液面が一定に保持される。
【0018】
設定流量導出手段12は、液肥貯留槽15からの液体肥料の導出量を設定可能な調整バルブ20と、該調整バルブ20の操作に伴って液体肥料の導出量を確認可能な有底円筒状の計量筒21と、該計量筒21から導出された液体肥料を液体肥料供給管13内に流下させる無底円筒状のガイド筒22と、計量筒21及びガイド筒22間を連通する液肥導出管23とを備えている。
【0019】
計量筒21及びガイド筒22は、所定長さをもって基部材14の径方向(左右方向)両側部にそれぞれ配置されている。その中でも計量筒21は、透明材料で形成されるとともに、下端開口が底蓋21aによって閉塞されている。また、計量筒21の周面には液体肥料の導出量を示す目盛21bが付されている。
【0020】
調整バルブ20と計量筒21との間は、基部材14の長手方向(上下方向)に沿う液肥導入管24によって連通されている。具体的には、液肥導入管24は、その一端(下端)が計量筒21の下部外周面に継手部材25を介して接続され、他端(上端)がバルブ本体20aに継手部材26を介して接続されている。
【0021】
調整バルブ20は、バルブ本体20aが液肥貯留槽15の下部外周面にねじ込まれて固定されており、ハンドル20bによって回動される。この回動により、バルブ本体20aの弁体が水平方向に微動され、液肥貯留槽15からの液体肥料の導出量が調整される。ここで、調整バルブ20を操作して、計量筒21内に導入された液体肥料の液面を前記目盛21bに合わせれば、その液位に基づいて液肥導出管23への導出量を増減させることが可能になる。
【0022】
液肥導出管23は、可撓性材料からなる配管、例えば、内径6mmのビニールチューブであり、両端部が継手部材27,28を介して計量筒21及びガイド筒22にそれぞれ着脱可能になっている。また、両継手部材27,28の接続口を基部材14の外周面接線方向に向けて取り付けることで、液肥導出管23の中間部が基部材14の外周面に沿って円弧状に曲げられている。ここで、長さ違いの液肥導出管23を複数用意しておけば、選択した長さに基づいて液体肥料の導出量(流量)を増減させることが可能になる。
【0023】
液体肥料供給管13は、基部材14における差込部14bのやや上方位置を径方向に貫通して固定されており、基部材14から突出した長さは左右均等で、かつ、差込み操作を受けて圃場(地表面)に接地した状態から沈み込まない程度の接触面圧が得られる長さに形成されている。また、液体肥料供給管13には、計量筒21及びガイド筒22が嵌め込まれる上向きの連結部(パイプ嵌合部)29,30が設けられている。これにより、計量筒21及びガイド筒22は、基部材14の両側部において、液体肥料供給管13上に安定的に支持されている。
【0024】
さらに、液体肥料供給管13は、長手方向(左右方向)の両端部及び中央部の合計3箇所に、液体肥料を圃場に流出させる液体肥料供給孔13aを有している。これらの液体肥料供給孔13aは、孔径が全て同径に、例えば、直径3mmに統一され、中心位置が基部材14の差込方向に揃えられている。これにより、液体肥料供給管13が圃場に接地されると、全ての液体肥料供給孔13aが同一高さ位置に保持されるようになっている。
【0025】
このように形成した液体肥料供給装置11を使用して圃場に流し込み施肥を行う際には、所定濃度の液体肥料、あるいは、固形肥料を所定濃度で水に溶解した液体肥料を液体肥料供給タンクに投入するとともに、液体肥料供給タンクと液肥導入ノズル18とを液肥導入パイプで接続する。ここで、液体肥料供給装置11について、液体肥料供給孔13aの位置(供給向き)を確認して水口際に差し込むと、液体肥料供給管13が水面下に没して接地される。こうして、液体肥料供給装置11は、安定した起立姿勢で、つまり液体肥料供給管13が水平状態で、圃場に据え付けられる。
【0026】
計量筒21内の液位は、水口への液体肥料の供給量に応じて設定される。計量筒21内の液面及び液体肥料供給孔13a間の高低差と、液体肥料の供給量(cc/時間)との関係は、実験によって求めることができる。つまり、液体肥料の種類や濃度などに応じてあらかじめ両者の関係が求められており、この求められた供給量に適うように計量筒21の目盛21bが付されている。
【0027】
調整バルブ20を開いて計量筒21内の液面を上昇させると、液圧がかかり液肥導出管23内の液体肥料の流速が上昇する。ここで、液面を計量筒21の目盛21bに合わせ、液体肥料の供給量を設定する。これにより、液肥導出管23を通じてガイド筒22から流下した液体肥料は、液体肥料供給管13に備わる3箇所の液体肥料供給孔13aから均等に流出する。すなわち、液体肥料供給孔13aから流出した液体肥料は、用水の流れに混入して、中央部の孔からの流れは液体肥料供給管13の貫通孔13bを抜けて正面方向へ、両端部の孔からの流れは左右両側方にそれぞれ分散しながら圃場の全体にわたって供給されてゆく。
【0028】
このように、第1の液体肥料供給装置11によれば、圃場に差し込まれる基部材14に設定流量導出手段12及び液体肥料供給管13を設けているので、これらを一体的に取り扱って設置や撤収を効率的に行うことができる。また、液体肥料供給管13が基部材14の差込方向に対して交差する方向に延び、その両端部に液体肥料供給孔13aを設けているので、液体肥料供給装置11の据付け向きが容易に定まるとともに、互いに離した位置にある液体肥料供給孔13aによって液体肥料を圃場の全体に効果的に供給することができる。さらに、液体肥料供給管13における各孔13aの孔径を全て同径に統一しているので、液体肥料供給管13が水没しさえすれば、液体肥料を各孔13aから均等に流出させることが可能となり、一定量の液体肥料を圃場にむらなく供給することができる。
【0029】
また、第1の構成では、特許文献1に記載された実績のある液肥貯留槽の構成を一部に流用しているので、定量供給を安価に達成でき、これに加えて、設定流量導出手段12として、液肥貯留槽15からの液体肥料の導出量を設定可能な調整バルブ20と、前記導出量を確認可能な計量筒21と、該計量筒21から導出された液体肥料を液体肥料供給管13内に流下させるガイド筒22と、これらの間を連通する液肥導出管23とを備えているので、水口から圃場に流入する用水中に、一定割合の液体肥料を確実に供給することができる。さらに、液肥導出管23を交換して長さ変更が可能なことから、流路抵抗の増減によって供給量の調整が行え、もって供給精度の向上が容易に達成される。加えて、液肥導出管23が長くなっても基部材14の外周に巻き付けておくだけの簡単な処理で弛みを解消でき、実用性に優れたものとなる。
【0030】
また、基部材14が嵌入部14aを有して液肥貯留槽15と一体的に形成されているので、計量筒21及びガイド筒22をその近傍にまとまりよく配置でき、使用や保管する際の利便性が向上する。とりわけ、基部材14の下端部に差込部14bを形成する傾斜断面を有しているので、製作性の向上が図れるだけでなく、据付け作業の労力も軽減することができる。さらに、基部材14を径方向に貫通した液体肥料供給管13によって計量筒21及びガイド筒22を支持するので、耐久性に優れた液体肥料供給装置11の構造が実現される。
【0031】
図7乃至図10は、本発明の第2形態例における液体肥料供給装置を示すものである。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
第2の液体肥料供給装置51は、図7乃至図9に示すように、第1の液体肥料供給装置11の特徴的な構成をそのまま有し、液体肥料供給制御手段52をさらに備えることによって圃場への液体肥料の供給を停止させ、あるいは、液体肥料の供給量を増減可能に構成している。
【0033】
液体肥料供給制御手段52は、液体肥料が流通する管路において、液体肥料供給管13よりも上流かつ設定流量導出手段12よりも下流に設けられており、ガイド筒53に取り付けた継手部材(エルボ)54の下流側を、つまり基部材14に巻き付けた液肥導出管55が接続される流入口とは反対側の流出口を受口54aとして、この受口54aに当接可能なテーパ周面56aを有するシャフト状の弁体56と、ガイド筒53の周面を貫通する前記弁体56の軸部を内挿して、前記テーパ周面56aを継手部材54の受口54aに押し付ける方向に付勢するコイルばね57と、基部材14の長手方向に沿う回動軸58に軸支され、水口に供給される用水の流れを受けて前記回動軸58まわりに回動可能な平板状の圃場給水状態検知用フィン59と、一端が弁体56の基端部に、他端が圃場給水状態検知用フィン59の回動基部にそれぞれ接続されたチェーン60とを有している。
【0034】
これにより、用水の供給量が、コイルばね57のばね特性を考慮して設定した流量(設定流量)以下のときには、コイルばね57の弾性力によって弁体56のテーパ周面56aが継手部材54の受口54aに押し付けられた状態(閉じ状態)となり、液体肥料供給管13への液体肥料の流入が停止される。一方、用水の供給量が設定流量以上のときには、用水の流れに沿う方向に圃場給水状態検知用フィン59が所定の角度回動し、これに伴い、チェーン60で引っ張られた弁体56は、コイルばね57の弾性力に抗してテーパ周面56aが継手部材54の受口54aから離れた状態(開き状態)となり、液体肥料供給管13への液体肥料の流入が継続される。
【0035】
すなわち、圃場に用水が供給されていないときは、圃場給水状態検知用フィン59が非動作位置(図9の実線)に保持され、用水の供給が開始されると、用水の流れを受けて圃場給水状態検知用フィン59が回動を始め、弁が閉じ状態から開き状態へ徐々に移行する。そして、圃場給水状態検知用フィン59の回動が最大となる動作位置(図9の想像線)において、弁が全開状態になる。
【0036】
このように形成した液体肥料供給装置51を使用して圃場に流し込み施肥を行う際、液体肥料供給装置51は、上述の第1形態例と同様の手順で水口際に据え付けられる。ここで、図10に示すように、水口には用水供給パイプ(図示せず)からの用水の供給量を調節する給水弁61が設置されており、給水弁61のハンドル61aを操作することによって所定量の用水が圃場に供給される。液体肥料供給制御手段52では、用水の流れを受けて圃場給水状態検知用フィン59が回動すると、弁が開き状態となって圃場への液体肥料の供給が開始される。これにより、液体肥料供給装置51から供給される液体肥料と、水口に供給される用水とを混合することで、所定量の液体肥料を混合した状態の用水が圃場に供給される。
【0037】
ところで、使用条件によっては、施肥作業中に用水の流量が低下する事態が予想されるが、第2の液体肥料供給装置51によれば、用水の供給量が設定流量以下に低下した時点で、圃場給水状態検知用フィン59が元の位置に復帰して弁が閉じ状態となり、液体肥料供給管13への液体肥料の流入が停止される。これにより、用水の供給量低下に起因して生じる液体肥料の液溜まりの発生を回避できる。すなわち、施肥作業を開始した後は、人手による操作を一切介さず、液体肥料供給制御手段52によって液体肥料の流出を用水の供給状態に整合させることが可能となり、圃場に対して、液体肥料を混合した用水を常に一定の混合割合で供給し続けることができる。
【0038】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、設定流量導出手段は、市販の小型定量ポンプを組み込んで構成することができる。この場合、基部材に設けた取付板にポンプ本体が固定され、吸入側に液肥導入パイプが、吐出側に液肥導出管がそれぞれ配管接続される。また、基部材には、据付性の観点から、圃場に差し込む差込部(脚部)を備えたものであればよく、圃場や水口の状況に応じて種々の構成が適用される。さらに、複数の液体肥料供給孔は、全て同一孔径であればよく、液体肥料供給管の両端部を含む適宜な箇所に孔を設けることができる。この場合、一旦、液体肥料供給管が水面下に没すれば、完全に水平でも多少の傾斜があっても、管内の液体肥料は、その孔径の大きさに比例して圃場に均等に流出される。
【0039】
また、液肥導出管の長さは、基部材に2回巻き付け可能な程度の長さとすれば、比較的に緩やかな流量が得られ、好適であるが、これに限られず、所望の流量が得られる長さのものを選択することができる。さらに、液体肥料供給制御手段についても、用水の流れを検知して液体肥料の供給を停止できる機構であればよく、例えば、弁体の動作に必要な検知用フィンは、その表面積がある程度以上の大きさであれば、上述のものに限定されず、各種の形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0040】
11…液体肥料供給装置、12…設定流量導出手段、13…液体肥料供給管、13a…液体肥料供給孔、13b…貫通孔、14…基部材、14a…嵌入部、14b…差込部、15…液肥貯留槽、16…液面保持手段、17…蓋体、18…液肥導入ノズル、18a…弁口、19…フロート弁体、19a…弁体部、20…調整バルブ、20a…バルブ本体、20b…ハンドル、21…計量筒、21a…底蓋、21b…目盛、22…ガイド筒、23…液肥導出管、24…液肥導入管、25,26,27,28…継手部材、29,30…連結部、51…液体肥料供給装置、52…液体肥料供給制御手段、53…ガイド筒、54…継手部材、54a…受口、55…液肥導出管、56…弁体、56a…テーパ周面、57…コイルばね、58…回動軸、59…圃場給水状態検知用フィン、60…チェーン、61…給水弁、61a…ハンドル
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
図9
図10