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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072757
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】アシスト装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/74 20060101AFI20220510BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20220510BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61F2/74
B25J11/00 Z
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182377
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久高
(72)【発明者】
【氏名】村田 元気
(72)【発明者】
【氏名】西田 ともみ
【テーマコード(参考)】
3C707
4C097
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HS21
3C707KS33
3C707KV15
3C707LV12
3C707MT13
3C707XK03
3C707XK06
3C707XK13
3C707XK15
3C707XK24
3C707XK66
3C707XK86
4C097AA20
4C097BB02
4C097BB03
4C097BB08
4C097CC01
4C097CC10
4C097CC18
(57)【要約】
【課題】アシスト感が過度に変動することを抑制する技術を提供する。
【解決手段】アシスト装置は、第1装具と第2装具とを連結し、内圧が上昇すると短縮し前記内圧が減少すると伸長する人工筋と、人工筋の内圧を調整する圧力調整装置と、を備える。圧力調整装置は、人工筋に気体を供給する気体供給源と、気体供給源と前記人工筋との間に接続されて、前記人工筋への前記気体の供給を行う給気状態と、前記人工筋からの排気を行う排気状態と、を含む複数の状態のいずれかに切り替え可能なバルブと、前記人工筋の内圧を検出する圧力センサーと、予め定められた基準圧力範囲を前記圧力センサーで検出された検出圧力の目標制御範囲として、前記検出圧力に応じて前記バルブの状態を切り替える制御部とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の動作を支援するアシスト装置であって、
前記使用者の第1部位に装着される第1装具と、
前記使用者の第2部位に装着される第2装具と、
前記第1装具と前記第2装具とを連結し、内圧が上昇すると短縮し前記内圧が減少すると伸長する人工筋と、
前記人工筋の内圧を調整する圧力調整装置と、
を備え、
前記圧力調整装置は、
前記人工筋に気体を供給する気体供給源と、
前記気体供給源と前記人工筋との間に接続されて、前記人工筋への前記気体の供給を行う給気状態と、前記人工筋からの排気を行う排気状態と、を含む複数の状態のいずれかに切り替え可能なバルブと、
前記人工筋の内圧を検出する圧力センサーと、
予め定められた基準圧力範囲を前記圧力センサーで検出された検出圧力の目標制御範囲として、前記検出圧力に応じて前記バルブの状態を切り替える制御部と、
を備えるアシスト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアシスト装置であって、
前記バルブは、前記給気状態と、前記排気状態と、前記人工筋への給排気を停止する保持状態の3つの状態を有し、
前記制御部は、前記検出圧力が、
(i)前記基準圧力範囲よりも低いときには前記バルブを前記給気状態に切り替え、
(ii)前記基準圧力範囲よりも高いときは前記バルブを前記排気状態に切り替え、
(iii)前記基準圧力範囲内であるときは前記バルブを前記保持状態に切り替える、
アシスト装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアシスト装置であって、
前記制御部は、前記圧力センサーで検出された前記検出圧力のみに応じて前記バルブの状態を切り替える、アシスト装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のアシスト装置であって、
前記第1部位は肩部であり、前記第2部位は下肢部である、アシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使用者の動作を支援するアシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、内圧に応じて伸縮する人工筋を利用して使用者の動作を支援するアシスト装置が開示されている。圧縮気体を駆動源として用いる人工筋は、一般的にマッキベン型といわれる空圧人工筋で、内圧が増大すると短縮し内圧が減少すると伸長する特性を有する。すなわち、人工筋の内圧が増大すると内部空間が大きくなって人工筋の幅が増大し、長さは減少する。一方、人工筋の内圧が減少すると内部空間が小さくなって人工筋の幅が減少し、長さは増大する。また、人工筋の空気供給口を閉止した状態で外部の力で人工筋を伸長させると、人工筋の内部空間が小さくなるので内圧が上昇して伸長量に比例した張力(収縮力)が発生する。伸長した状態から外部の力を弱めると前述の収縮力により短縮し、上昇した人工筋の内圧が減少する。
【0003】
特許文献1のアシスト装置は関節駆動装置であり、この関節駆動装置では、人工筋に供給する内圧の変化は、使用者の所定の動作毎に予め設定されており、この変化に応じて人工筋が伸縮する。特許文献2のアシスト装置は動作補助スーツであり、この動作補助スーツでは、使用者が手元のスイッチを押している間は空気が供給されて人工筋が短縮し、スイッチから指を離すと排気されて人工筋が伸長して元の長さに戻るように人口筋が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-340852号公報
【特許文献2】特開2017-148488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術のアシスト装置において、人工筋に気体を封入した状態で使用者が物体を持上げる動作や物体を持下げる動作を実行すると、その動作中に、人工筋の内圧に大きな変動が発生する。この結果、人工筋の張力が大きく変動するので、動作中のアシスト感が大きく変わってしまうという不具合が生じる。特に、直立姿勢から物体を持下げる屈曲動作のように使用者が人工筋を伸長させる動作では、その動作の開始時に人工筋の内圧が大幅に増加するので、動作開始時の抵抗感が増加するという問題がある。また、特許文献2のように、外部指令により内圧を調整すれば、内圧上昇を抑えられるので動作開始時の抵抗感は低減可能だが、動作毎に外部指令が必要となり、アシストの操作性が悪化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、使用者の動作を支援するアシスト装置が提供される。このアシスト装置は、前記使用者の第1部位に装着される第1装具と、前記使用者の第2部位に装着される第2装具と、前記第1装具と前記第2装具とを連結し、内圧が上昇すると短縮し前記内圧が減少すると伸長する人工筋と、前記人工筋の内圧を調整する圧力調整装置と、を備える。前記圧力調整装置は、前記人工筋に気体を供給する気体供給源と、前記気体供給源と前記人工筋との間に接続されて、前記人工筋への前記気体の供給を行う給気状態と、前記人工筋からの排気を行う排気状態と、を含む複数の状態のいずれかに切り替え可能なバルブと、前記人工筋の内圧を検出する圧力センサーと、予め定められた基準圧力範囲を前記圧力センサーで検出された検出圧力の目標制御範囲として、前記検出圧力に応じて前記バルブの状態を切り替える制御部と、を備える。
このアシスト装置によれば、人工筋の内圧が基準圧力範囲内に可能な限り収まるようにバルブが制御されるので、人工筋の内圧が過度に変動することを防止でき、使用者のアシスト感が過度に変化してしまうことを防止できる。また、伸展動作や屈曲動作で人工筋の内圧が変化すると、これに応じてバルブの状態が切り替えられるので、持上げ動作と持下げ動作とを区別した外部指令が不要であり、アシストの操作性が向上する。
(2)上記アシスト装置において、前記バルブは、前記給気状態と、前記排気状態と、前記人工筋への給排気を停止する保持状態の3つの状態を有してもよい。前記制御部は、前記検出圧力が、(i)前記基準圧力範囲よりも低いときには前記バルブを前記給気状態に切り替え、(ii)前記基準圧力範囲よりも高いときは前記バルブを前記排気状態に切り替え、(iii)前記基準圧力範囲内であるときは前記バルブを前記保持状態に切り替えるものとしてもよい。
このアシスト装置によれば、人工筋の内圧があまり変動しない場合に保持状態に維持されるので、人工筋の内圧をより容易に基準圧力範囲内に収めることができる。また、保持状態では、人工筋の内部の気体が一部は排気されるが、すべて排気されないので、気体供給源から供給される気体の消費量を改善することが可能である。
(3)上記アシスト装置において、前記制御部は、前記圧力センサーで検出された前記検出圧力のみに応じて前記バルブの状態を切り替えるものとしてもよい。
このアシスト装置によれば、検出圧力のみに応じてバルブの状態が切り替えられるので、簡易な機器構成でアシストの操作性を向上できる。
(4)上記アシスト装置において、前記第1部位は肩部であり、前記第2部位は下肢部であるものとしてもよい。
このアシスト装置によれば、肩部と下肢部の間の体の動きをアシストできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】アシスト装置を装着した使用者が物体を持ち上げる伸展動作を開始する状態を示す説明図。
図2】アシスト装置を装着した使用者が物体を持ち下げる屈曲動作を開始する状態を示す説明図。
図3】アシスト装置の内圧調整系統を示す系統図。
図4】実施形態における人工筋の内圧の変化を示すタイミングチャート。
図5】比較例における人工筋の内圧の変化を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本開示の一実施形態におけるアシスト装置100を装着した使用者が、物体PBを持ち上げる伸展動作を開始する状態を示す説明図であり、図2は、物体PBを持ち下げる屈曲動作を開始する状態を示す説明図である。
【0010】
アシスト装置100は、使用者の肩部に装着される肩部装具110と、使用者の下肢部に装着される下肢部装具120と、肩部装具110と下肢部装具120とを連結する人工筋130と、人工筋130に気体を供給して人工筋130の内圧を調整する圧力調整装置140と、を備える。
【0011】
本実施形態において、肩部装具110は、ベルト状の装具であり、使用者の肩部に固定される。下肢部装具120にも同様に、ベルト状の装具とすることができる。本実施形態では、下肢部装具120は、大腿部に装着されている。
【0012】
人工筋130は、一般的にマッキベン型といわれる空圧人工筋で、内圧が上昇すると短縮し、内圧が減少すると伸長する特性を有する人工筋である。すなわち、人工筋130の内部に気体を供給して内圧が増大すると内部空間が大きくなって人工筋の幅が増大し、長さは減少する。一方、人工筋130の内部を排気して内圧が減少すると内部空間が小さくなって人工筋の幅が減少し、長さは増大する。また、人工筋130の気体供給口を閉止した状態で外部の力で人工筋を伸長させると、人工筋130の内部空間が小さくなるので内圧が上昇して伸長量に比例した張力(収縮力)が発生する。伸長した状態から外部の力を弱めると前述の収縮力により短縮し、上昇した人工筋の内圧が減少する。
【0013】
本実施形態において、圧力調整装置140は、肩部装具110と連結された状態で使用者の背中に装着されており、人工筋130に接続されている。但し、圧力調整装置140を装着する部位は任意である。また、圧力調整装置140は、下肢部装具120を介して人工筋130に接続されていてもよい。
【0014】
使用者の肩部は本開示の「第1部位」に相当し、肩部装具110は「第1装具」に相当する。また、使用者の下肢部は本開示の「第2部位」に相当し、下肢部装具120は「第2装具」に相当する。なお、人工筋130の両端に配置される第1装具と第2装具は、肩部や下肢部以外の体の部位に装着されるものとしてもよい。例えば、第1部位を肩部とし、第2部位を手首として、腕をアシストするようにしてもよい。また、第1部位を腰部とし、第2部位を足首部として、脚部をアシストするようにしてもよい。一般に、使用者が直立した状態において、第2部位は、第1部位よりも重力方向の下方にある部位とすることが好ましい。
【0015】
図1の状態は、使用者が、物体PBを持ち上げる伸展動作を開始する状態を示している。この伸展動作の開始時には、人工筋130は伸長した状態にあるので、伸展動作の際には内圧を増加させることによって人工筋130を短縮させる。図2の状態は、使用者が、物体PBを持ち下げる屈曲動作を開始する状態を示している。この屈曲動作の開始時には、人工筋130は短縮した状態にあるので、屈曲動作の際には内圧を減少させることによって人工筋130を伸長させる。
【0016】
図3は、アシスト装置100の内圧調整系統を示す系統図である。圧力調整装置140は、制御部200と、給排気系300とを有する。給排気系300は、後述する複数の状態に切り替え可能なバルブ310と、気体源接続管320と、排気管330と、給気管340とを有する。
【0017】
気体源接続管320は、人工筋130に気体を供給する気体供給源322と接続されており、気体供給源322とバルブ310との間には、レギュレーター324が設置されている。本実施形態において、気体供給源322はエアタンクである。エアタンクには高圧の圧縮空気が収容されており、レギュレーター324によって所定の圧力まで減圧された空気がバルブ310に供給される。なお、気体供給源322は、エアコンプレッサーを含んでいてもよい。また、気体供給源322は、二酸化炭素などの空気以外の圧縮気体を供給するものとしてもよい。気体源接続管320は、バルブ310の第1ポートP1に接続されている。
【0018】
排気管330は、人工筋130の内部の空気を排気するための配管であり、スピードコントローラー332と、サイレンサー334とがこの順に接続されている。但し、スピードコントローラー332やサイレンサー334は省略可能である。排気管330は、バルブ310の第3ポートP3に接続されている。この第3ポートP3は、いわゆる排気ポート又はリターンポートである。
【0019】
給気管340は、人工筋130のマニホールド132に接続されている。マニホールド132は、人工筋130を構成する複数の筋部材134の内部空間と連通している。給気管340には、人工筋130の内圧を検出する圧力センサー342が設置されている。給気管340は、バルブ310の第2ポートP2に接続されている。この第2ポートP2は、いわゆるBポートである。
【0020】
本実施形態において、バルブ310は、ダブルソレノイドタイプで3位置クローズドセンタータイプの5ポートソレノイドバルブである。但し、第4ポートP4と第5ポートP5は使用されていないので、封止されている。第4ポートP4はいわゆるAポートであり、第5ポートP5はいわゆる第2の排気ポート又はリターンポートである。
【0021】
バルブ310は、下記の3つの状態のいずれかに切り替えることが可能である。
(1)給気状態:
給気状態は、人工筋130への気体の供給を行う状態である。この給気状態は、気体源接続管320と給気管340とを連通させ、排気管330を閉止する状態である。給気状態は、バルブ310の右側のソレノイドを通電したバルブ位置に相当する。この給気状態を「給気位置」と呼ぶことも可能である。
(2)排気状態:
排気状態は、人工筋130からの排気を行う状態である。この排気状態は、排気管330と給気管340とを連通させ、気体源接続管320を閉止する状態である。実際には、気体源接続管320に接続されている第1ポートP1は、第4ポートP4と連通する状態になるが、第4ポートP4が封止されているので、気体源接続管320も閉止された状態となる。排気状態は、バルブ310の左側のソレノイドを通電したバルブ位置に相当する。この排気状態を「排気位置」と呼ぶことも可能である。
(3)保持状態:
保持状態は、人工筋への給排気を停止するである。この保持状態は、気体源接続管320と排気管330と給気管340とをすべて閉止する状態である。実際には、バルブ310の5つのP1~P5がすべて閉止された状態となる。保持状態は、バルブ310の両側のソレノイドの通電を遮断した中間位置に相当する。この保持状態を「保持位置」と呼ぶことも可能である。
【0022】
制御部200は、圧力センサー342で検出された人工筋130の内圧に応じてバルブ310の状態を切り替える制御を実行する。具体的には、制御部200は、以下の制御C1~C3を実行する。
<制御C1>Pm<Pr-αのときは、バルブ310を給気状態に切り替える。
<制御C2>Pm>Pr+βのときは、バルブ310を排気状態に切り替える。
<制御C3>Pr-α≦Pm≦Pr+βのときは、バルブ310を保持状態に切り替える。
ここで、Pmは、圧力センサー342で検出された検出圧力、Prは予め設定された基準圧力、α,βは許容圧力差である。なお、αとβは、互いに異なる値に設定してもよく、同じ値に設定してもよい。以下の説明では、Pr-αからPr+βまでの範囲を「基準圧力範囲」と呼び、Pr-αを「下限値」、Pr+βを「上限値」と呼ぶ。また、検出圧力Pmを「人工筋130の内圧Pm」とも呼ぶ。
【0023】
上述した制御C1~C3は、予め定められた基準圧力範囲Pr-α~Pr+βを目標制御範囲として、検出圧力Pmに応じてバルブ310の状態を切り替える制御である。この制御を実行すると、人工筋130の内圧Pmが基準圧力範囲内に可能な限り収まるように調整できる。
【0024】
なお、上記制御C1~C3のうち、制御C3を実行せずに、制御C1,C2のみを実行するようにしてもよい。この場合にも、制御C1,C2を実行することによって、基準圧力範囲Pr-α~Pr+βを目標制御範囲として、検出圧力Pmに応じてバルブ310の状態を切り替えることができる。但し、制御C3を実行すれば、人工筋130の内圧Pmをより容易に基準圧力範囲内に収めることができる。また、保持状態では、人工筋130の内部の気体が一部は排気されるが、すべて排気されないので、気体供給源322から供給される気体の消費量を改善することが可能である。制御C3を実行しない場合には、バルブ310として3ポートバルブや4ポートバルブを使用してもよい。
【0025】
図4は、実施形態における人工筋130の内圧Pmの変化を示すタイミングチャートである。図4の上部は人工筋130の内圧Pmの時間変化を示し、下部はバルブ310の位置の時間変化を示している。時刻t1~t2の期間は物体PBを持ち上げる動作を実行しており、時刻t2~t3の期間は動作が停止しており、時刻t3~t4の期間は物体PBを持ち下げる動作を実行している。その後も同様であり、物体PBを持ち上げる動作を実行している期間には「up」の文字を付し、物体PBを持ち下げる動作を実行している期間には「down」の文字を付している。
【0026】
最初のup期間が始まる時刻t1では、人工筋130の内圧Pmが下限値Pr-αよりも低いので、バルブ310が給気状態に切り替えられ、これに応じて人工筋130の内圧Pmが上昇する。但し、人工筋130の内圧Pmが基準圧力範囲Pr-α~Pr+β内に達すると、その後は時刻t1~t2のup期間中において保持状態と給気状態のいずれかに切り替えられる。この結果、人工筋130の内圧Pmが基準圧力範囲内に可能な限り収まるように制御される。このup期間t1~t2では、人工筋130が短縮するので、使用者は物体PBを容易に持ち上げることが可能となる。
【0027】
時刻t2~t3の期間は動作が停止しており、人工筋130の内圧Pmが基準圧力範囲Pr-α~Pr+β内に収まっているので、バルブ310は保持状態に維持される。
【0028】
時刻t3~t4のdown期間では、使用者が物体PBを持ち下げる動作を行うと、人工筋130の内圧Pmが高まり上限値Pr+βを超えるので、バルブ310は排気状態に切り替えられる。このdown期間では、物体PBを持ち下げる動作に応じて人工筋130が伸長するので、使用者は物体PBを容易に持ち下げることが可能となる。
【0029】
このように、本実施形態では、制御部200が、基準圧力範囲Pr-α~Pr+βを検出圧力Pmの目標制御範囲として、検出圧力Pmに応じてバルブ310の状態を切り替える制御を実行するので、人工筋130の内圧が過度に変化することを防止でき、使用者のアシスト感が過度に変化してしまうことを防止できる。また、伸展動作や屈曲動作で人工筋130の内圧が変化すると、これに応じてバルブ310の状態が切り替えられるので、持上げ動作と持下げ動作とを区別した外部指令が不要であり、アシストの操作性が向上するという利点もある。
【0030】
図5は、比較例における人工筋の内圧の変化を示すタイミングチャートである。この比較例では、バルブ310の状態が保持位置に維持されているものと仮定する。このとき、図5の上部に示すように、人工筋130の内圧Pmは、使用者が物体PBを持ち下げる動作を行うdown期間において、人工筋130の内圧Pmが過度に高くなる傾向にある。この結果、持下げ動作の開始時に、使用者が体を屈曲させる際の抵抗が大きくなり、屈曲動作が困難になる。この結果、使用者のアシスト感が過度に変化してしまうという問題がある。
【0031】
一方、図4で説明したように、本実施形態では、制御部200が、基準圧力範囲Pr-α~Pr+βを検出圧力Pmの目標制御範囲として、検出圧力Pmに応じてバルブ310の状態を切り替える制御を実行するので、人工筋130の内圧が過度に変化することを防止でき、使用者のアシスト感が過度に変化してしまうことを防止できる。
【0032】
本開示は、上述の実施形態や実施形態、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、開示の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
100…アシスト装置、110…肩部装具、120…下肢部装具、130…人工筋、132…マニホールド、134…筋部材、140…圧力調整装置、200…制御部、300…給排気系、310…バルブ、320…気体源接続管、322…気体供給源、324…レギュレーター、330…排気管、332…スピードコントローラー、334…サイレンサー、340…給気管、342…圧力センサー
図1
図2
図3
図4
図5