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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072770
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】マイクロホンアレイ装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/40 20060101AFI20220510BHJP
   H04R 5/027 20060101ALI20220510BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H04R1/40 320A
H04R5/027 Z
H04R1/02 108
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182402
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(71)【出願人】
【識別番号】591164613
【氏名又は名称】株式会社NHKテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】沖田 潮人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 友亮
(72)【発明者】
【氏名】山口 朗史
(72)【発明者】
【氏名】井田 勝久
【テーマコード(参考)】
5D011
5D017
5D018
【Fターム(参考)】
5D011AB00
5D017BC11
5D018BB22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】可搬性が良く、音波の干渉が抑制されるマイクロホンアレイ装置を提供する。
【解決手段】マイクロホンアレイ装置1は、複数のマイクロホンとこれらを収容するハウジング10とを有してなる。ハウジングは、XY仮想平面P1上に配置され、ハウジングの+X軸方向の端面に開口し第1マイクロホンが取り付けられる第1取付孔と、ハウジングの-X軸方向の端面に開口し第2マイクロホン22が取り付けられる第2取付孔11h2と、ハウジングの+Y軸方向の端面に開口し第3マイクロホン23が取り付けられる第3取付孔11h3と、ハウジングの-Y軸方向の端面に開口し第4マイクロホン24が取り付けられる第4取付孔11h4と、を備える。第1取付孔の開口端と第2取付孔の開口端との間のX軸長さは、第3取付孔の開口端と第4取付孔の開口端との間のY軸長さLyおよび/またはハウジングのZ軸長さLzよりも短い。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に直交する3軸をそれぞれX軸、Y軸およびZ軸とし、前記X軸に沿う方向をX軸方向とし、前記Y軸に沿う方向をY軸方向とし、前記Z軸に沿う方向をZ軸方向としたとき、
複数のマイクロホンと、
複数の前記マイクロホンを収容するハウジングと、
を有してなり、
前記ハウジングは、
複数の前記マイクロホンそれぞれが取り付けられる複数の取付孔、
を備え、
複数の前記マイクロホンは、
前記X軸方向と前記Y軸方向それぞれに沿うXY仮想平面上に配置される第1マイクロホンと第2マイクロホンと第3マイクロホンと第4マイクロホンと、
を含み、
複数の前記取付孔は、
前記XY仮想平面上に配置され、
前記Z軸方向視において、
前記ハウジングの+X軸方向の端面に開口し、前記第1マイクロホンが取り付けられる第1取付孔と、
前記ハウジングの-X軸方向の端面に開口し、前記第2マイクロホンが取り付けられる第2取付孔と、
前記ハウジングの+Y軸方向の端面に開口し、前記第3マイクロホンが取り付けられる第3取付孔と、
前記ハウジングの-Y軸方向の端面に開口し、前記第4マイクロホンが取り付けられる第4取付孔と、
を含み、
前記X軸方向における前記第1取付孔の開口端と前記第2取付孔の開口端との間のX軸長さは、前記Y軸方向における前記第3取付孔の開口端と前記第4取付孔の開口端との間のY軸長さ、および/または、前記Z軸方向における前記ハウジングのZ軸長さ、よりも短い、
ことを特徴とするマイクロホンアレイ装置。
【請求項2】
前記第1取付孔と前記第2取付孔とを前記ハウジングの表面上で結ぶ結線の長さは、前記X軸長さを直径とする仮想球体の円周の長さの1/2以上である、
請求項1記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項3】
前記ハウジングの前記X軸方向と前記Z軸方向それぞれに平行なXZ断面の断面積は、前記第1取付孔と前記第2取付孔それぞれよりも、前記+Y軸方向に向けて小さくなる、
請求項1記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項4】
前記XZ断面の前記断面積は、前記第1取付孔と前記第2取付孔それぞれよりも、前記-Y軸方向に向けて小さくなる、
請求項3記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、
前記XY仮想平面において前記Y軸に沿う長軸を有する回転楕円体状の楕円体面、
を備える、
請求項4記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、
+Z軸方向に向けて先細の第1円錐面、および/または、-Z軸方向に向けて先細の第2円錐面、
を備える、
請求項1または5記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項7】
前記第1円錐面と前記第2円錐面それぞれは、
前記X軸方向と前記Y軸方向それぞれにおいて、前記ハウジングの中央に配置され、
前記Z軸方向において、
前記第1円錐面は、各取付孔の前記+Z軸方向に配置され、
前記第2円錐面は、各取付孔の前記-Z軸方向に配置される、
請求項6記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項8】
前記第1円錐面と前記第2円錐面それぞれは、前記ハウジングの一部に対して着脱可能である、
請求項6記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項9】
前記第1円錐面の形状は、前記第2円錐面の形状と同じである、
請求項6記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項10】
前記第1円錐面の形状は、前記第2円錐面の形状と異なる、
請求項6記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項11】
前記ハウジングのうち、複数の前記取付孔それぞれの間の領域の表面は、隣接する前記取付孔の貫通方向において、前記ハウジングの内側に曲率中心が位置する曲面である、
請求項1記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項12】
前記第1マイクロホンは、前記+X軸方向に向けられ、
前記第2マイクロホンは、前記-X軸方向に向けられ、
前記第3マイクロホンは、前記+Y軸方向に向けられ、
前記第4マイクロホンは、前記-Y軸方向に向けられる、
請求項1記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項13】
複数の前記マイクロホンは、
前記XY仮想平面上に配置される第5マイクロホンと第6マイクロホンと第7マイクロホンと第8マイクロホンと、
を含み、
複数の前記取付孔は、
前記Z軸方向視において、
前記ハウジングの前記第1取付孔と前記第3取付孔との間の端面に開口し、前記第5マイクロホンが取り付けられる第5取付孔と、
前記ハウジングの前記第2取付孔と前記第4取付孔との間の端面に開口し、前記第6マイクロホンが取り付けられる第6取付孔と、
前記ハウジングの前記第1取付孔と前記第4取付孔との間の端面に開口し、前記第7マイクロホンが取り付けられる第7取付孔と、
前記ハウジングの前記第2取付孔と前記第3取付孔との間の端面に開口し、前記第8マイクロホンが取り付けられる第8取付孔と、
を含む、
請求項12記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項14】
複数の前記マイクロホンは、前記ハウジングの円周と同心の円周上に配置される、
請求項13記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項15】
複数の前記マイクロホンは、前記円周上に等間隔に配置される、
請求項14記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項16】
複数の前記マイクロホンそれぞれに対応する音響端子は、前記円周と同心の円周上に位置する、
請求項14記載のマイクロホンアレイ装置。
【請求項17】
複数の前記マイクロホンそれぞれは、
音波に応じて振動する振動板、
を備え、
複数の前記取付孔それぞれは、前記ハウジングの表面に対して垂直な方向に貫通し、
前記振動板それぞれは、対応する前記取付孔の貫通方向に対して垂直に配置される、
請求項12乃至16のいずれかに記載のマイクロホンアレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロホンアレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のサラウンド技術の発達に伴い、サラウンド音響システムにおける音声チャンネル数は、基本となる5.1chから6.1ch、7.1chと増加傾向にある。また、仮想現実(VR:Virtual Reality)や拡張現実(AR:Augmented Reality)などを用いたコンテンツの多様化や高度化により、求められるチャンネル数は、22.2chまで増加している。一般的に、サラウンド音響システムにおいて、サラウンド収音に用いるマイクロホンの数は、サラウンド音響システムの音声チャンネル数に応じて増加する。すなわち、サラウンド音響システムの音声チャンネル数が増加すると、収音に必要なマイクロホンの数も増加する。
【0003】
サラウンド音響システムは、各音声チャンネルに対応する音が異なる音圧レベルおよび/または位相を有するように、設定される。すなわち、サラウンド収音に用いられるマイクロホンアレイ装置が備えるマイクロホンそれぞれが異なる音圧レベルおよび/または位相の音波を収音できるように、サラウンド音響システムは、各マイクロホンの音場の分離(セパレーション)を必要とする。
【0004】
一般的に、サラウンド収音において、各マイクロホンのセパレーションを得るために、各マイクロホンは、離して配置される。マイクロホン間の距離は、セパレーションを得たい音波の周波数が低くなるほど(音波の波長が長くなるほど)、長くなる。また、音声チャンネル数が増加すると、収音に必要なマイクロホンの数は増加し、マイクロホンアレイ装置の大きさは増加する。すなわち、音声チャンネル数と、セパレーションおよびマイクロホンアレイ装置の大きさと、の間には、トレードオフの関係が成り立つ。
【0005】
サラウンド収音の主な目的は、ロケーション撮影などにおける環境音の収音である。そのため、サラウンド収音には、音源に近づけても近接効果の生じない無指向性のマイクロホンが適している。しかしながら、無指向性のマイクロホンは、全方位からの音波を同レベルで収音する。そのため、無指向性のセパレーションに必要な距離は、単一指向性のマイクロホンよりも長くなる。すなわち、サラウンド収音において無指向性のマイクロホンを使用する場合、マイクロホンアレイ装置の大きさは、単一指向性のマイクロホンを使用する場合よりも増加する。
【0006】
このように、マイクロホンアレイ装置は、マイクロホンのセパレーションが得られるほど大型化し易い。その結果、マイクロホンアレイ装置の可搬性は、悪化する。また、音声チャンネル数に応じて、各マイクロホンが(例えば、複数個所に)個別に配置されるため、同装置のセッティングにも時間を要する。そのため、ロケーション撮影など屋外でサラウンド収音を行う場合、可搬性が良く、セッティングに時間を要しない(例えば、ワンポイント(単体)で収音可能な)マイクロホンアレイ装置が求められる。
【0007】
ここで、サラウンド音響システムにおいて、マイクロホンアレイ装置により単体で収音された音声(ある領域に配列された複数のマイクロホンそれぞれにより個別に収音された音声を含む)が再生される場合、再生音は、各スピーカから略等距離に位置する所定の聴取位置(スイートスポット)において、聴者に再現性良く聴取される。しかしながら、聴者の頭部がスイートスポットから外れると、その瞬間に、複数の音波が干渉、つまり、特定の周波数の位相が干渉して、特定の周波数の音圧レベルが低下する(音波の谷が生じる)現象(いわゆるコムフィルタ効果と同様の聴感上の違和感)が生じ得る(例えば、特許文献1,2参照)。この音波の干渉は、特に、聴者の前側と後側とにスピーカが配置されるサラウンド音響システム(例えば、5.1ch、7.1ch、22.2ch)において、聴者の頭部がスイートスポットから左右方向に外れる場合に、生じ易い。その結果、再生音の再現性は、低下する。
【0008】
このような音波の干渉は、無指向性のマイクロホンを用いた所定の大きさ(例えば、直径約1m以内)のマイクロホンアレイ装置により単体で収音した場合や、所定の領域(例えば、直径約1m以内の領域)に配列された複数の無指向性のマイクロホンそれぞれにより個別に収音された場合、に特有の現象である。すなわち、音波の干渉(再現性の低下)は、十分な大きさ(例えば、直径約2m以上)の同マイクロホンアレイ装置で収音した場合には生じない。しかし、マイクロホンアレイ装置が大きくなると、同装置の体積・重量が増加し、可搬性が悪化する。すなわち、音波の干渉の抑制と、マイクロホンアレイ装置の大きさ(可搬性)との間には、トレードオフの関係が成り立つ。そこで、可搬性(小型・軽量)が良く、音波の干渉が抑制されるマイクロホンアレイ装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2013-57906号公報
【特許文献2】特開2016-119574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、可搬性が良く、音波の干渉が抑制されるマイクロホンアレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
相互に直交する3軸をそれぞれX軸、Y軸およびZ軸とし、X軸に沿う方向をX軸方向とし、Y軸に沿う方向をY軸方向とし、Z軸に沿う方向をZ軸方向としたとき、本発明にかかるマイクロホンアレイ装置は、複数のマイクロホンと、複数のマイクロホンを収容するハウジングと、を有してなり、ハウジングは、複数のマイクロホンそれぞれが取り付けられる複数の取付孔、を備え、複数のマイクロホンは、X軸方向とY軸方向それぞれに沿うXY仮想平面上に配置される第1マイクロホンと第2マイクロホンと第3マイクロホンと第4マイクロホンと、を含み、複数の取付孔は、XY仮想平面上に配置され、Z軸方向視において、ハウジングの+X軸方向の端面に開口し、第1マイクロホンが取り付けられる第1取付孔と、ハウジングの-X軸方向の端面に開口し、第2マイクロホンが取り付けられる第2取付孔と、ハウジングの+Y軸方向の端面に開口し、第3マイクロホンが取り付けられる第3取付孔と、ハウジングの-Y軸方向の端面に開口し、第4マイクロホンが取り付けられる第4取付孔と、を含み、X軸方向における第1取付孔の開口端と第2取付孔の開口端との間のX軸長さは、Y軸方向における第3取付孔の開口端と第4取付孔の開口端との間のY軸長さ、および/または、Z軸方向におけるハウジングのZ軸長さ、よりも短い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるマイクロホンアレイ装置によれば、可搬性が良く、音波の干渉が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかるマイクロホンアレイ装置の実施の形態を示す斜視図である。
図2図1のマイクロホンアレイ装置の側面図である。
図3図2のマイクロホンアレイ装置のAA線における模式断面図である。
図4図2のマイクロホンアレイ装置のBB線における模式断面図である。
図5図4のマイクロホンアレイ装置のCC線における模式断面図である。
図6図1のマイクロホンアレイ装置の平面図である。
図7図3のマイクロホンアレイ装置の拡大模式断面図である。
図8】表面の差異による音波の回折効果を説明する模式図である。
図9図1のマイクロホンアレイ装置が備えるハウジングから取り出されたマイクロホン単体の周波数特性を示すグラフである。
図10図1のマイクロホンアレイ装置が備えるハウジングに収容されている図9のマイクロホン単体の周波数特性を示すグラフである。
図11】本発明にかかるマイクロホンアレイ装置の別の実施の形態を示す斜視図である。
図12図11のマイクロホンアレイ装置の側面図である。
図13図12のマイクロホンアレイ装置のDD線における模式断面図である。
図14図12のマイクロホンアレイ装置のEE線における模式断面図である。
図15図11のマイクロホンアレイ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明にかかるマイクロホンアレイ装置(以下「本装置」という。)の実施の形態について説明する。各図において、同一の部材と要素とについては同一の符号が付され、重複する説明は省略する。
【0015】
以下の説明において、特に断りがない限り、相互に直交する3軸をそれぞれX軸、Y軸およびZ軸としたとき、「X軸方向」は、X軸に沿う方向であり、本実施の形態では左右方向である。「Y軸方向」は、Y軸に沿う方向であり、本実施の形態では前後方向である。「Z軸方向」は、Z軸に沿う方向であり、本実施の形態では上下方向である。「+X軸方向」は、X軸方向の正の方向であり、本実施の形態では左方である。「-X軸方向」は、X軸方向の負の方向であり、本実施の形態では右方である。「+Y軸方向」は、Y軸方向の正の方向であり、本実施の形態では前方である。「-Y軸方向」は、Y軸方向の負の方向であり、本実施の形態では後方である。「+Z軸方向」は、Z軸方向の正の方向であり、本実施の形態では上方である。「-Z軸方向」は、Z軸方向の負の方向であり、本実施の形態では下方である。本実施の形態において、「前方」は、本装置を基準にして、本装置による収音が所望される目的音の音源が位置する方向である。
【0016】
以下の説明において、「XY平面(断面)」は、X軸方向とY軸方向それぞれに沿う平面(断面)である。「XZ平面(断面)」は、X軸方向とZ軸方向それぞれに沿う平面(断面)である。
【0017】
●マイクロホンアレイ装置(1)●
●マイクロホンアレイ装置の構成
図1は、本装置の実施の形態を示す斜視図である。
【0018】
本装置1は、複数(本実施の形態では「8」)の異なる方向からの音波を収音する。本装置1は、ハウジング10と、8つのマイクロホン21,22,23,24,25,26,27,28(マイクロホン22,24,26,28は図3参照)と、支持部材30と、を有してなる。
【0019】
図2は、本装置1を左方(+X軸方向)から見た本装置1の側面図である。
図3は、本装置1の図2のAA線における模式断面図である。
図3は、説明の便宜上、マイクロホン21-28の断面を模式的に示す。
【0020】
ハウジング10は、マイクロホン21-28を収容する。ハウジング10は、例えば、ABSなどの合成樹脂製である。ハウジング10は、本体部11と、第1突起部12と、第2突起部13と、を備える。
【0021】
本体部11は、XY仮想平面P1において、Y軸方向(前後方向)に沿う長軸(不図示)と、X軸方向(左右方向)に沿う短軸(不図示)と、を有する楕円状の断面を有する。本体部11は、楕円状の断面を、長軸を回転軸として一回転させたような中空の回転楕円体状(ラグビーボール状)である。本体部11は、楕円体面11aと、8つの取付孔11h1,11h2,11h3,11h4,11h5,11h6,11h7,11h8と、を備える。
【0022】
楕円体面11aは、本体部11の表面を構成する。楕円体面11aは、ハウジング10の表面のうち、Y軸方向(前後方向)に沿う長軸を有する回転楕円体状の表面である。
【0023】
取付孔11h1-11h8は、マイクロホン21-28が取り付けられる円形の貫通孔である。取付孔11h1-11h8それぞれは、XY仮想平面P1上に、本体部11の円周と同心の円周上に等間隔に配置される。取付孔11h1-11h8それぞれは、本体部11の楕円体面11a(表面)に対して垂直な方向に貫通する。
【0024】
「取付孔11h1-11h8それぞれをXY仮想平面P1上に配置」は、取付孔11h1-11h8それぞれの一部がXY仮想平面P1上に配置されることを意味する。本実施の形態では、取付孔11h1-11h8それぞれの中心がXY仮想平面P1上に配置される。
【0025】
取付孔11h1は本発明における第1取付孔の例であり、取付孔11h2は本発明における第2取付孔の例であり、取付孔11h3は本発明における第3取付孔の例であり、取付孔11h4は本発明における第4取付孔の例であり、取付孔11h5は本発明における第5取付孔の例であり、取付孔11h6は本発明における第6取付孔の例であり、取付孔11h7は本発明における第7取付孔の例であり、取付孔11h8は本発明における第8取付孔の例である。
【0026】
Z軸方向(上下方向)視において、取付孔11h1-11h8それぞれは、本体部11の端面に開口する(配置される)。具体的には、取付孔11h1は、本体部11の+X軸方向(左方)側の端面に開口する。取付孔11h2は、本体部11の-X軸方向(右方)側の端面に開口する。取付孔11h3は、本体部11の+Y軸方向(前方)側の端面に開口する。取付孔11h4は、本体部11の-Y軸方向(後方)側の端面に開口する。取付孔11h5は、本体部11の取付孔11h1と取付孔11h3との間の端面に開口する。取付孔11h6は、本体部11の取付孔11h2と取付孔11h4との間の端面に開口する。取付孔11h7は、本体部11の取付孔11h1と取付孔11h4との間の端面に開口する。取付孔11h8は、本体部11の取付孔11h2と取付孔11h3との間の端面に開口する。
【0027】
Z軸方向(上下方向)視において、取付孔11h1は、Y軸に対して取付孔11h2と線対称に配置される。取付孔11h3は、X軸に対して取付孔11h4と線対称に配置される。取付孔11h5は本体部11の長軸と短軸との交点Pxに対して取付孔11h6と点対称に配置され、取付孔11h7は交点Pxに対して取付孔11h8と点対称に配置される。
【0028】
楕円体面11aのうち、取付孔11h1-11h8それぞれの間の領域の表面は、ハウジング10(本体部11)の内側に曲率中心が位置する曲面である。
【0029】
「曲面」は、完全な曲面ではなく、多数の細かい多角形の平面(例えば、六角形や三角形で構成される平面)の集合で構成される疑似的な曲面を含む。この場合、各平面の大きさは、例えば、本装置1(マイクロホン21-28)の周波数特性の上限付近の周波数の波長の長さ(例えば、20kHzであれば、約1.7cm)を直径とする円以下の大きさである。
【0030】
図4は、本装置1の図2のBB線における模式断面図である。
図5は、本装置1の図4のCC線における模式断面図である。
図4図5とは、説明の便宜上、マイクロホン21-26,28の断面を模式的に示す。
【0031】
第1突起部12は、後述するセパレーションに寄与する。第1突起部12は、本体部11の楕円体面11aから上方に向けて円錐状に突出する。第1突起部12は、本体部11と一体である。第1突起部12の先端部(上端部)は、半球状である。第1突起部12は、円錐面12aと鞍状面12b,12cとを備える。
【0032】
第1突起部12は、X軸方向(左右方向)とY軸方向(前後方向)それぞれにおいて、ハウジング10(本体部11)の中央に配置される。Z軸方向(上下方向)において、第1突起部12は、取付孔11h1-11h8(取付孔11h5,11h7は、図3参照)の上方に配置される。
【0033】
円錐面12aは、本発明における第1円錐面である。円錐面12aは、第1突起部12の表面の一部を構成する。円錐面12aは、ハウジング10の表面のうち、上方に向けて先細の略円錐台状の面である。円錐面12aは、上方視において等高線を引いた場合、等高線がX軸方向(左右方向)に長い楕円状である(図6参照)。図4に示されるとおり、ハウジング10のY軸方向(前後方向)の中央におけるXZ断面視において、円錐面12aは、本体部11の楕円体面11aの接線と共通する。
【0034】
鞍状面12b,12cは、第1突起部12の表面の一部を構成する。鞍状面12b、12cは、ハウジング10の表面のうち、楕円体面11aと円錐面12aとの間を連続的に繋ぐ鞍状の表面である。
【0035】
第2突起部13は、後述するセパレーションに寄与する。第2突起部13は、本体部11の楕円体面11aから下方に向けて円錐状に突出する。第2突起部13は、本体部11と一体である。第2突起部13の先端部(下端部)は、半球状である。第2突起部13の形状は、第1突起部12の形状と同じである。第2突起部13は、円錐面13aと鞍状面13b,13cとを備える。
【0036】
第2突起部13は、X軸方向(左右方向)とY軸方向(前後方向)それぞれにおいて、ハウジング10(本体部11)の中央に配置される。Z軸方向(上下方向)において、第2突起部13は、取付孔11h1-11h8(取付孔11h5,11h7は、図3参照)の下方に配置される。
【0037】
円錐面13aは、本発明における第2円錐面である。円錐面13aは、第2突起部13の表面の一部を構成する。円錐面13aは、ハウジング10の表面のうち、下方に向けて先細の略円錐台状の面である。円錐面13aは、下方視において等高線を引いた場合、等高線がX軸方向(左右方向)に長い楕円状である。図4に示されるとおり、ハウジング10のY軸方向(前後方向)の中央におけるXZ断面視において、円錐面13aは、本体部11の楕円体面11aの接線と共通する。
【0038】
鞍状面13b,13cは、第2突起部13の表面の一部を構成する。鞍状面13b、13cは、ハウジング10の表面のうち、楕円体面11aと円錐面13aとの間を連続的に繋ぐ鞍状の表面である。
【0039】
図6は、本装置1を上方から見た平面図である。
同図は、後述する結線L11-L14の例を一点鎖線で示す。同図は、説明の便宜上、後述する終端部材32の図示を省略する。
【0040】
本装置1において、ハウジング10(本体部11)は、後述するX軸長さLxを直径とする仮想球体C1よりもY軸方向(前後方向)に長い。また、ハウジング10は、仮想球体C1および本体部11よりもZ軸方向(上下方向)に長い。その結果、Y軸に対して線対称な取付孔11h1,11h2をハウジング10の表面上で結ぶ結線L11の長さは、仮想球体C1の円周の1/2よりも長い。同様に、取付孔11h3,11h4をハウジング10の表面上で結ぶ結線L12の長さは、仮想球体C1の円周の1/2よりも長い。取付孔11h5,11h6をハウジング10の表面上で結ぶ結線L13の長さは、仮想球体C1の円周の1/2よりも長い。取付孔11h7,11h8をハウジング10の表面上で結ぶ結線L14の長さは、仮想球体C1の円周の1/2よりも長い。
【0041】
図4図6に戻る。
このように構成されるハウジング10において、本体部11は、Y軸方向(前後方向)に長い回転楕円体状である。また、第1突起部12は本体部11から上方に突出し、第2突起部13は本体部11から下方に突出する。すなわち、X軸方向(左右方向)における取付孔11h1の開口端と取付孔11h2の開口端との間の長さ(以下「X軸長さLx」という。)は、Y軸方向(前後方向)における取付孔11h3の開口端と取付孔11h4の開口端との間の長さ(以下「Y軸長さLy」という)よりも短い。また、X軸長さLxは、Z軸方向(上下方向)におけるハウジング10の長さ(以下「Z軸長さLz」という。)よりも短い。さらに、ハウジング10のXZ断面の断面積は、ハウジング10の中心からY軸方向の外側に向かって小さくなる。すなわち、同断面積は、取付孔11h1,11h2よりも前方に向けて小さくなり、かつ、取付孔11h1,11h2よりも後方に向けて小さくなる。
【0042】
図3に戻る。
マイクロホン21-28は、音波を収音して、音波に対応する音声信号を生成する。マイクロホン21-28は、例えば、コンデンサ型の無指向性マイクロホンである。マイクロホン21-28それぞれは、音波に応じて振動する振動板211-281を備える。マイクロホン21は本発明における第1マイクロホンの例であり、マイクロホン22は本発明における第2マイクロホンの例であり、マイクロホン23は本発明における第3マイクロホンの例であり、マイクロホン24は本発明における第4マイクロホンの例であり、マイクロホン25は本発明における第5マイクロホンの例であり、マイクロホン26は本発明における第6マイクロホンの例であり、マイクロホン27は本発明における第7マイクロホンの例であり、マイクロホン28は本発明における第8マイクロホンの例である。
【0043】
図7は、図3に示される本装置1の断面の一部を拡大した拡大模式断面図である。
【0044】
マイクロホン21は、収音面をハウジング10の外方に向けて、取付孔11h1に取り付けられる。その結果、マイクロホン21の振動板211は、楕円体面11aよりも内側に、取付孔11h1の貫通方向に対して垂直に配置される。
【0045】
図3図7とに戻る。
マイクロホン21と同様に、マイクロホン22は取付孔11h2に、マイクロホン23は取付孔11h3に、マイクロホン24は取付孔11h4に、マイクロホン25は取付孔11h5に、マイクロホン26は取付孔11h6に、マイクロホン27は取付孔11h7に、マイクロホン28は取付孔11h8に、それぞれ取り付けられる。その結果、マイクロホン22-28の振動板221-281それぞれも、対応する取付孔11h2-11h8の貫通方向に対して垂直に配置される。
【0046】
マイクロホン21,22はX軸方向(左右方向)に沿って配置され、マイクロホン21(振動板211)は左方に向けられ、マイクロホン22(振動板221)は右方に向けられる。マイクロホン23,24はY軸方向(前後方向)に沿って配置され、マイクロホン23(振動板231)は前方に向けられ、マイクロホン24(振動板241)は後方に向けられる。マイクロホン25,28はX軸方向(左右方向)に沿って配置され、マイクロホン25(振動板251)は左やや斜め前方に向けられ、マイクロホン28(振動板281)は右やや斜め前方に向けられる。マイクロホン26,27はX軸方向(左右方向)に沿って配置され、マイクロホン26(振動板261)は右やや斜め後方に向けられ、マイクロホン27(振動板271)は左やや斜め後方に向けられる。
【0047】
上下方向視において、マイクロホン21は、Y軸に対してマイクロホン22と線対称に配置される。マイクロホン23は、X軸に対してマイクロホン24と線対称に配置される。マイクロホン25は交点Pxに対してマイクロホン26と点対称に配置され、マイクロホン27は交点Pxに対してマイクロホン28と点対称に配置される。
【0048】
このように配置されるマイクロホン21-28は、XY仮想平面P1(図4図5とを参照)上に、本体部11の円周と同心の円周上に等間隔に配置される。その結果、上下方向視において、各振動板221-281の中心は、楕円体面11aより内側の仮想楕円E1上(すなわち、本体部11の円周と同心の円周上)に等間隔に配置される。したがって、上下方向視において、マイクロホン21-28それぞれに対応する音響端子の位置(後述:図3において「●」で例示)は、楕円体面11aより外側の仮想楕円E2上(すなわち、本体部11の円周と同心の円周上)に等間隔になる。「仮想楕円E1,E2」は、上下方向視において、楕円体面11aと相似形状の楕円である。
【0049】
ここで、「マイクロホン21-28をXY仮想平面P1上に配置」は、マイクロホン21-28それぞれの一部がXY仮想平面P1という同一平面上に配置されることを意味する。本実施の形態では、振動板211-281それぞれの中心(収音軸)がXY仮想平面P1上に配置される。
【0050】
「音響端子」は、振動板221-281それぞれに対して音圧を与える空気の位置、換言すれば、振動板221-281と同時に動く空気の中心位置である。
【0051】
図3図4とに戻る。
支持部材30は、本発明における連結部である。支持部材30は、ハウジング10を支持すると共に、本装置1を外部機器(例えば、他のマイクロホンアレイ装置や、本装置1を支持する部材)に連結可能である。支持部材30は、管部材31と、終端部材32と、連結部材33と、を備える。
【0052】
管部材31は、例えば、アルミニウム合金などの金属製の直管である。管部材31の上端部の内周面には雌ねじが形成される。管部材31は、ハウジング10の第1突起部12と第2突起部13それぞれの中央をZ軸方向(上下方向)に貫通して、ハウジング10に取り付けられる。その結果、管部材31は、X軸方向(左右方向)とY軸方向(前後方向)それぞれの中央に配置される。
【0053】
なお、第1突起部の上端部と、第2突起部の下端部とは、例えば、ゴムなどの弾性体で構成されてもよい。この場合、管部材は、同弾性体を貫通する。この構成によれば、例えば、本装置1を支持する部材からの振動は、弾性体で吸収される。
【0054】
終端部材32は、管部材31の上端部の蓋として機能する。終端部材32は、管部材31の雌ねじに対応する雄ねじを備える。終端部材32は、管部材31の上端部に取り付けられる。
【0055】
連結部材33は、例えば、円筒状の部材を備え、管部材31の下端部の外周面に取り付けられる。
【0056】
●マイクロホンアレイ装置の動作(1)
次に、図3図5を参照しながら、本装置1の動作について説明する。
【0057】
本装置1は、8つのマイクロホン21-28で音波を収音するマイクロホンアレイ装置である。マイクロホン21-28は、1つのハウジング10に収容され、8方向に向けられる。すなわち、本装置1は、単体で前方、左やや斜め前方、左方、左やや斜め後方、後方、右やや斜め後方、右方、右やや斜め前方、の8方向からの音波を収音可能である。
【0058】
前述のとおり、マイクロホン21-28の指向性は、無指向性である。そのため、マイクロホン21-28同士の距離を近づけると(例えば、直径約1m以内)、各マイクロホン21-28の音場が重なる。そのため、各マイクロホン21-28に収音される音波の波長・到達時間には、差異が生じ難い。その結果、マイクロホン21-28の音場の分離(セパレーション)は、困難になる。
【0059】
しかしながら、本装置1では、マイクロホン21-28は、曲面(楕円体面11a)で構成される表面を有する本体部11(ハウジング10)に収容される。すなわち、マイクロホン21-28それぞれは、正面以外の方向が本体部11に覆われる。そのため、マイクロホン21-28それぞれに到達する正面以外の音波の距離は、マイクロホン21-28が収容されていない状態と比べて長くなる。すなわち、各方向からの音波のマイクロホン21-28それぞれへの到達時間には、差異が生じる。また、本体部11は、曲面で構成される。したがって、楕円体面11aによる回折効果により、本体部11に収容された各マイクロホン21-28の周波数特性の乱れが抑制されると共に、マイクロホン21-28には指向性が生じる。その結果、各マイクロホン21-28のセパレーションが得られる。
【0060】
図8は、表面の差異による音波の回折効果を説明する模式図である。
同図は平面状の表面に音波が反射する状態と、曲面状の表面に音波が反射する状態と、を示す。図8に示されるとおり、音波が平面状の表面に反射する場合、表面で反射された音波(反射波)は、進行方向と反対方向に反射される。そのため、反射波は、表面に進行する音波(進行波)と干渉し易い。すなわち、進行波の波形は、乱れ易くなる。一方、音波が曲面状の表面に反射する場合、音波は、四方八方に反射される。そのため、反射波は、進行波と干渉し難い。すなわち、進行波の波形は、乱れ難い。したがって、ハウジング10が曲面状の表面を備えることで、マイクロホン21-28(図3参照)それぞれの周波数特性は、大きな乱れの少ない滑らかな特性となる。
【0061】
図9は、ハウジング10から取り出された1のマイクロホン、ここではマイクロホン21単体の周波数特性を示すグラフである。
図10は、ハウジング10に収容されている図9のマイクロホン、ここではマイクロホン21単体の周波数特性を示すグラフである。
【0062】
図9のグラフと図10のグラフとを比較すると、マイクロホン21がハウジング10に収容されるか否かにより、マイクロホン21の周波数特性が変化している。すなわち、マイクロホン21がハウジング10に収容されると、マイクロホン21は、指向性を備えることになる。したがって、マイクロホン21-28がハウジング10に取り付けられることにより、マイクロホン21-28は、指向性を備えることになる。
【0063】
図3図5に戻る。
ここで、本装置1では、ハウジング10が第1突起部12と第2突起部13とを備えることにより、ハウジング10が上下方向に大きくなる。その結果、特に、交点Pxに対して点対称となるマイクロホン21-22,23-24,25-26,27-28間のハウジング10の表面の長さ(例えば、結線L11-L14(図6参照)の長さ)は、本体部11のみの状態(第1突起部12と第2突起部13とがない状態)の同長さよりも長くなる。また、X軸に対して線対称となるマイクロホン25-27,26-28間の長さと、Y軸に対して線対称となるマイクロホン25-28,26-27間の長さとは、楕円体面11aの形状に沿って長くなる。したがって、前述の各方向からの音波のマイクロホン21-28それぞれへの到達時間には、より差異が生じる。すなわち、本装置1は、回転楕円体状の本体部11と円錐状の第1,第2突起部12,13と、を備えることにより、本体部11のみの状態と比較して、より優れたマイクロホン21-28のセパレーションが得られる。その結果、本装置1においてマイクロホン21-28それぞれの指向性が得られる周波数帯は、低下する。
【0064】
ここで、ハウジング10によりセパレーションが向上した各マイクロホン21-28で単一の音源からの音波を収音すると、サラウンド音響システムの各スピーカからの音波は、聴取位置に僅かに異なる位相(収音タイミング)・音圧レベルで到達する。そのため、聴者の頭部が聴取位置から左右方向にずれたときに発生する、音波の干渉は抑制される。したがって、聴者の頭部が聴取位置から左右方向にずれたとき、音波の干渉による再現性の低下(いわゆるコムフィルタ効果と同様の聴感上の違和感)は、抑制される。
【0065】
また、ハウジング10の本体部11は、前後方向に長細い回転楕円体状である。そのため、前後方向に向けられるマイクロホン23,24間の距離は、左右方向に向けられるマイクロホン21,22間の距離よりも長くなる。したがって、マイクロホン23,24それぞれへの音波の到達時間差は、マイクロホン21,22それぞれへの音波の到達時間差よりも大きくなる。そのため、マイクロホン21,22間において、単一の音源からの音波の収音タイミングは、さらにずれる。すなわち、例えば、前方の音源からの音波を収音するとき、マイクロホン21はより早い時刻の音波を収音し、マイクロホン22はより遅い時刻の音波を収音する。そのため、サラウンド音響システムにおいて、本装置1により収音された単一音源からの音が再生されたとき、聴取位置において、前後のスピーカからの音波は、異なる時刻に収音された音波となる。すなわち、前後のスピーカからの音波の位相は、異なる。その結果、聴取位置から聴者の頭部が左右方向にずれたとき、前後のスピーカからの音波は干渉し難くなり、聴者が受ける違和感はさらに抑制される。
【0066】
さらに、本装置1は、例えば、管部材31から終端部材32が取り外されることで、本装置1の上部に外部機器(例えば、他のマイクロホンアレイ装置(他の本装置1))を連結可能である。また、本装置1は、例えば、管部材31の下端部にも外部機器(例えば、他のマイクロホンアレイ装置)を連結可能である。この場合、外部機器との距離を設けるため、棒状の接続部材が本装置1と外部機器との間に接続される。一方、本装置1は、例えば、連結部材33に外部機器(例えば、本装置1を支持する部材)を接続可能である。すなわち、例えば、接続部材を介して2つの本装置1を上下方向に連結して本装置群が構成されることで、本装置群は、単体での22.2chの上層と中層それぞれを収音できる。
【0067】
なお、本装置は、本装置を支持する部材を介して、他の本装置と連結されてもよい。また、例えば、将来的なシステム拡張に対応して、「3」以上の本装置が接続部材を介して上下に連結されてもよい。
【0068】
●まとめ(1)
以上説明した実施の形態によれば、本装置1は、8つのマイクロホン21-28を収容するハウジング10を備える。ハウジング10は、前後方向に長い回転楕円体状の本体部11を備える。すなわち、ハウジング10において、X軸長さLxは、Y軸長さLyよりも短い。この構成によれば、X軸方向(左右方向)に向けられるマイクロホン21,22により収音された音波と、Y軸方向(前後方向)に向けられるマイクロホン23,24により収音された音波と、の間には、収音される時間(タイミング)に差異が生じる。
【0069】
また、ハウジング10は、本体部11から上下方向に突出する第1突起部12と第2突起部13とを備える。すなわち、ハウジング10において、X軸長さLxは、Z軸長さLzよりも短い。この構成によれば、特に、交点Pxに対して点対称となるマイクロホン21-22,23-24,25-26,27-28間のハウジング10の表面上の長さは、本体部11のみの状態の同長さよりも長くなる。また、X軸に対して線対称となるマイクロホン25-27,26-28間の長さと、Y軸に対して線対称となるマイクロホン25-28,26-27間の長さとは、楕円体面11aの形状に沿って長くなる。その結果、前述のとおり、マイクロホン21-28の指向性が得られる周波数帯は、低下する。つまり、本装置1は、回転楕円体状の本体部11と円錐状の第1,第2突起部12,13と、を備えることにより、マイクロホン21-28の指向性が得られる周波数帯を低下させる。そのため、本装置1は、マイクロホン21-28のセパレーションを確保できる。その結果、本装置1は、マイクロホン21-28同士の距離が近づけられた状態で、マイクロホン21-28を単一のハウジング10に収容できる。すなわち、本装置1の小型化・軽量化が可能となる。したがって、本装置1は、可搬性に優れ、単体でサラウンド収音可能となる。
【0070】
このように、本装置1では、各マイクロホン21-28のセパレーションが得られると共に、各マイクロホン21-28が音波を収音する時間に差異が生じる。その結果、本装置1で収音された音波がサラウンド音響システムで再生されるとき、聴者の頭部が聴取位置からずれたときの音波の干渉は、抑制される。つまり、本装置1は、可搬性に優れ、前述の聴者の頭部が聴取位置から左右方向にずれたときの音波の干渉による違和感を低減できる。
【0071】
また、以上説明した実施の形態によれば、本装置1は、円錐面12a,13aを備える。上下方向において、円錐面12aは取付孔11h1-11h8の上方に配置され、円錐面13aは取付孔11h1-11h8の下方に配置される。この構成によれば、ハウジング10の表面のうち、取付孔11h1-11h8の上方・下方に位置する部分(円錐面12a,13a)は、取付孔11h1-11h8よりもハウジング10の内側に傾斜する。また、円錐面12a,13aは、取付孔11h1,11h2に隣接する部分(曲面)の接線として、同部分と滑らかに連続できる。その結果、ハウジング10の回折効果により生じる周波数特性の乱れの抑制効果は向上し、かつ、ハウジング10の幾何学的形状(球体表面が前後上下方向に突出したような形状)によりマイクロホン21-28に指向性が生じる。その結果、本装置1では、マイクロホン21-28のセパレーションは、向上する。
【0072】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、本体部11は、表面として全体的に曲面となる楕円体面11aを備える。すなわち、取付孔11h1-11h8に隣接する部分は、本体部11の内側に曲率中心が位置する曲面である。そのため、マイクロホン21-28の指向性が得られる周波数帯は、低下する。その結果、本装置1では、マイクロホン21-28のセパレーションは、さらに向上する。
【0073】
なお、本実施の形態における本体部の形状は、回転楕円体状に限定されない。すなわち、例えば、本体部において、左右端に配置される取付孔より前部(または後部)が回転楕円体の半体で構成され、後部(または前部)が球体の半体で構成されてもよい。つまり、本体部は、取付孔より前部と後部それぞれの形状が異なってもよい。
【0074】
また、本実施の形態における本体部の形状は、前後方向における中央部に円筒状の領域を有する形状、すなわち、XY仮想平面上で長円状(陸上のトラック状)の断面を有する形状でもよい。
【0075】
さらに、本実施の形態における本体部は、完全な曲面ではなく、多数の細かい多角形の平面の集合により構成される疑似的な曲面でもよい。この構成では、各平面の大きさは、例えば、本装置(マイクロホン)の周波数特性の上限付近の周波数の波長の長さを直径とする円以下の大きさでよい。
【0076】
さらにまた、本実施の形態における第1突起部と第2突起部それぞれは、本体部と別体に構成されてもよい。すなわち、例えば、第1突起部と第2突起部それぞれは、本体部に対して着脱可能でもよい。つまり、円錐面は、ハウジングの一部(楕円体面)に対して着脱可能でもよい。この構成では、本体部に着装した第1突起部と第2突起部それぞれの形状に応じたマイクロホンのセパレーションが、得られる。
【0077】
さらにまた、本実施の形態における第1突起部の形状は、第2突起部の形状と異なってもよい。すなわち、例えば、上下方向において、第1突起部の長さは、第2突起部の長さより長くてもよく、あるいは、短くてもよい。また、例えば、第1突起部は円錐台状でもよく、第2突起部は円錐状でもよい。この構成では、第1突起部の形状と第2突起部の形状とに応じたマイクロホンのセパレーションが、得られる。
【0078】
さらにまた、本実施の形態における第1突起部と第2突起部それぞれは、鞍状面を備えなくてもよい。
【0079】
さらにまた、本実施の形態におけるハウジングにおいて、X軸長さは、Y軸長さよりも長くてもよい。
【0080】
さらにまた、本実施の形態におけるハウジングは、第1突起部と第2突起部の両方、または、一方を備えなくてもよい。
【0081】
さらにまた、本実施の形態におけるマイクロホンは、第1突起部の頂部にも配置されてもよい。この場合、頂部に配置されるマイクロホンは上方に向いて配置される。この構成では、第1突起部の頂部に配置されたマイクロホンと、XY仮想平面上に配置されたマイクロホンと、の間の距離は、第1突起部により確保される。
【0082】
さらにまた、本実施の形態における8つの取付孔のうち、ハウジングの前後左右それぞれの端面に開口する取付孔を除く4つの取付孔(取付孔11h5-11h8)それぞれは、対称に配置されていれば、両隣の取付孔それぞれと等間隔に配置されなくてもよい。これに合わせて、本実施の形態における8つのマイクロホンのうち、ハウジングの前後左右それぞれの方向に向けて配置されるマイクロホンを除く4つのマイクロホン(マイクロホン25-28)それぞれは、両隣のマイクロホンそれぞれと等間隔に配置されなくてもよい。
【0083】
●マイクロホンアレイ装置(2)●
次に、本装置の別の実施の形態(以下「第2実施形態」という。)について、先に説明した実施の形態(以下「第1実施形態」という。)とは異なる部分を中心に説明する。第2実施形態における本装置は、第1実施形態における本装置と、ハウジングの形状が異なる。以下の説明において、第1実施形態と共通する部材については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0084】
●マイクロホンアレイ装置の構成(2)
図11は、本装置の第2実施形態を示す斜視図である。
【0085】
本装置1Aは、複数(本実施の形態では「8」)の異なる方向からの音波を収音して、各音波に対応する音声信号を生成する。本装置1Aは、ハウジング10Aと、8つのマイクロホン21A,22A,23A,24A,25A,26A,27A,28A(マイクロホン22A,24A,26A,27A,28Aは図13参照)と、支持部材30A(図12参照)と、を有してなる。
【0086】
図12は、本装置1Aを左方から見た本装置1Aの側面図である。
図13は、本装置1Aの図12のDD線における模式断面図である。
図14は、本装置1Aの図12のEE線における模式断面図である。
【0087】
ハウジング10Aは、マイクロホン21A-28Aを収容する。ハウジング10Aは、例えば、ABSなどの合成樹脂製である。ハウジング10Aは、本体部11Aと、第1突起部12Aと、第2突起部13Aと、を備える。
【0088】
本体部11Aは、XY仮想平面PA1において、円形の断面を有する、中空の球体状である。本体部11Aは、球体面11Aaと、8つの取付孔11Ah1,11Ah2,11Ah3,11Ah4,11Ah5,11Ah6,11Ah7,11Ah8と、を備える。球体面11Aaは、本体部11Aの表面を構成する。
【0089】
取付孔11Ah1-11Ah8は、マイクロホン21A-28Aが取り付けられる円形の貫通孔である。取付孔11Ah1-11Ah8は、XY仮想平面P1上に、本体部11Aの円周と同心の円周上に等間隔に配置される。取付孔11Ah1-11Ah8それぞれは、本体部11の球体面11Aa(表面)に対して垂直な方向に貫通する。
【0090】
「取付孔11Ah1-11Ah8それぞれをXY仮想平面P1上に配置」は、取付孔11Ah1-11Ah8それぞれの一部がXY仮想平面PA1という同一平面上に配置されることを意味する。本実施の形態では、取付孔11Ah1-11Ah8それぞれの中心がXY仮想平面PA1上に配置される。
【0091】
取付孔11Ah1は本発明における第1取付孔の例であり、取付孔11Ah2は本発明における第2取付孔の例であり、取付孔11Ah3は本発明における第3取付孔の例であり、取付孔11Ah4は本発明における第4取付孔の例であり、取付孔11Ah5は本発明における第5取付孔の例であり、取付孔11Ah6は本発明における第6取付孔の例であり、取付孔11Ah7は本発明における第7取付孔の例であり、取付孔11Ah8は本発明における第8取付孔の例である。
【0092】
Z軸方向(上下方向)視において、取付孔11Ah1-11Ah8それぞれは、本体部11Aの端面に開口する(配置される)。具体的には、取付孔11Ah1は、本体部11Aの左方側の端面に開口する。取付孔11Ah2は、本体部11Aの右方側の端面に開口する。取付孔11Ah3は、本体部11の前方側の端面に開口する。取付孔11Ah4は、本体部11Aの後方側の端面に開口する。取付孔11Ah5は、本体部11Aの取付孔11Ah1と取付孔11Ah3との間の端面に開口する。取付孔11Ah6は、本体部11Aの取付孔11Ah2と取付孔11Ah4との間の端面に開口する。取付孔11Ah7は、本体部11Aの取付孔11Ah1と取付孔11Ah4との間の端面に開口する。取付孔11Ah8は、本体部11Aの取付孔11Ah2と取付孔11Ah3との間の端面に開口する。すなわち、取付孔11Ah1-11Ah8それぞれは、本体部11Aと同心円の円周上に配置される。
【0093】
Z軸方向(上下方向)視において、取付孔11Ah1-11Ah8それぞれは、隣り合わない取付孔11Ah1-11Ah8に対して、本体部11Aの中心点PxAを通る直線に対して線対称、または、中心点PxAに対して点対称、に配置される。すなわち、例えば、取付孔11Ah1は、本体部11AのY軸に対して取付孔11Ah2と線対称に配置される。取付孔11Ah3は、X軸に対して取付孔11Ah4と線対称に配置される。取付孔11Ah5は中心点PxAに対して取付孔11Ah6と点対称に配置され、取付孔11Ah7は中心点PxAに対して取付孔11Ah8と点対称に配置される。
【0094】
球体面11Aaのうち、取付孔11Ah1-11Ah8それぞれの間の領域の表面は、ハウジング10A(本体部11A)の内側に曲率中心が位置する曲面である。また、球体面11Aaのうち、取付孔11Ah1-11Ah8それぞれに隣接する部分は、対応する取付孔11Ah1-11Ah8を頂部とし、ハウジング10A(本体部11A)の内側に曲率中心が位置する曲面である。球体面11Aaの取付孔11Ah1-11Ah8よりも上部と下部それぞれには、環状の段部11Ab,11Acが配置される。
【0095】
第1突起部12Aは、後述するセパレーションに寄与する。第1突起部12Aは、中空の円錐状である。第1突起部12Aは、本体部11Aと別体である。すなわち、第1突起部12Aは、本体部11Aに対して着脱可能である。第1突起部12Aは、本体部11Aの上部に被さるように、本体部11Aに取り付けられる。第1突起部12Aの下端は、球体面11Aaの段部11Abに当接する。第1突起部12Aは、上方視において、ハウジング10A(本体部11A)の中央に配置される。Z軸方向(上下方向)において、第1突起部12Aは、取付孔11Ah1-11Ah8の上方に配置される。その結果、第1突起部12Aは、本体部11Aの球体面11Aaから上方に向けて円錐状に突出する。第1突起部12Aは、第1突起部12Aの表面を構成する円錐面12Aaを備える。円錐面12Aaは、本発明における第1円錐面である。
【0096】
第2突起部13Aは、後述するセパレーションに寄与する。第2突起部13Aは、逆円錐台筒状である。すなわち、第2突起部13Aの形状は、第1突起部12Aの形状と異なる。第2突起部13Aは、本体部11Aと別体である。すなわち、第2突起部13Aは、本体部11Aに対して着脱可能である。第2突起部13Aは、本体部11Aの下部に被さるように、本体部11Aに取り付けられる。第2突起部13Aの上端は、球体面11Aaの段部11Acに当接する。第2突起部13Aは、下方視において、ハウジング10A(本体部11A)の中央に配置される。上下方向において、第2突起部13Aは、取付孔11Ah1-11Ah8の下方に配置される。その結果、第2突起部13Aは、本体部11Aの球体面11Aaから下方に向けて円錐台状に突出する。第2突起部13Aは、第2突起部13Aの表面を構成する円錐面13Aaを備える。円錐面13Aaは、本発明における第2円錐面である。第2突起部13Aの下端を延伸して第2突起部13Aを円錐状にしたとき、第1突起部12Aと第2突起部13Aそれぞれの頂点同士を結ぶ直線は、本体部11Aの中心点PxAを通過する。
【0097】
図15は、本装置1Aを上方から見た平面図である。
同図は、後述する結線LA11-LA14の例を一点鎖線で示す。
【0098】
本装置1Aにおいて、ハウジング10Aの上部(第1突起部12A)と下部(第2突起部13A(図13参照))それぞれは、本体部11よりも上下方向に突出する。その結果、中心点PxAに対して点対称な取付孔11Ah1,11Ah2をハウジング10Aの表面上で結ぶ結線LA11の長さは、本体部11Aの円周の1/2よりも長い。同様に、取付孔11Ah3,11Ah4をハウジング10Aの表面上で結ぶ結線LA12の長さは、本体部11Aの円周の1/2よりも長い。取付孔11Ah5,11Ah6をハウジング10Aの表面上で結ぶ結線LA13の長さは、本体部11Aの円周の1/2よりも長い。取付孔11Ah7,11Ah8をハウジング10Aの表面上で結ぶ結線LA14の長さは、本体部11Aの円周の1/2よりも長い。ここで、本体部11Aの円周は、後述するX軸長さLxA(図14参照)を直径とする仮想球体CA1の円周と略同じである。
【0099】
図12図14に戻る。
このように構成されるハウジング10Aにおいて、本体部11Aは、球体状である。また、第1突起部12Aは本体部11Aから上方に突出し、第2突起部13Aは本体部11Aから下方に突出する。すなわち、左右方向における取付孔11Ah1の開口端と取付孔11Ah2の開口端との間の長さ(以下「X軸長さLxA」という。)は、前後方向における取付孔11Ah3の開口端と取付孔11Ah4の開口端との間の長さ(以下「Y軸長さLyA」という)と同じである。また、X軸長さLxAは、Z軸方向におけるハウジング10Aの長さ(以下「Z軸長さLzA」という。)よりも短い。さらに、ハウジング10AのXZ断面の断面積は、取付孔11Ah1,11Ah2よりも前方に向けて小さくなり、かつ、取付孔11Ah1,11Ah2よりも後方に向けて小さくなる。
【0100】
マイクロホン21A-28Aの構成は、マイクロホン21A-28Aの配置を除き、第1実施形態のマイクロホン21-28の構成と共通する。すなわち、マイクロホン21A-28Aそれぞれは、振動板211A-281Aを備える。マイクロホン21Aは本発明における第1マイクロホンであり、マイクロホン22Aは本発明における第2マイクロホンであり、マイクロホン23Aは本発明における第3マイクロホンであり、マイクロホン24Aは本発明における第4マイクロホンであり、マイクロホン25Aは本発明における第5マイクロホンの例であり、マイクロホン26Aは本発明における第6マイクロホンの例であり、マイクロホン27Aは本発明における第7マイクロホンの例であり、マイクロホン28Aは本発明における第8マイクロホンの例である。
【0101】
マイクロホン21Aは取付孔11Ah2に、マイクロホン22Aは取付孔11Ah2に、マイクロホン23Aは取付孔11Ah3に、マイクロホン24Aは取付孔11Ah4に、マイクロホン25Aは取付孔11Ah5に、マイクロホン26Aは取付孔11Ah6に、マイクロホン27Aは取付孔11Ah7に、マイクロホン28Aは取付孔11Ah8に、それぞれ取り付けられる。すなわち、マイクロホン21A-28Aそれぞれは、XY仮想平面P1上に、収音面を本体部11Aの径方向外方に向けて、本体部11Aの円周と同心の円周上に等間隔に配置される。その結果、マイクロホン21A-28Aそれぞれの振動板211A-281Aは、球体面11Aaよりも内側に、対応する取付孔11Ah1-11Ah8の貫通方向に対して垂直に配置される。
【0102】
Z軸方向(上下方向)視において、マイクロホン21A-28Aそれぞれは、隣り合わないマイクロホン21A-28Aに対して、中心点PxAを通る直線に対して線対称、または、中心点PxAに対して点対称、に配置される。すなわち、例えば、マイクロホン21Aは、Y軸に対してマイクロホン22Aと線対称に配置される。マイクロホン23Aは、X軸に対してマイクロホン24Aと線対称に配置される。マイクロホン25Aは中心点PxAに対してマイクロホン26Aと点対称に配置され、マイクロホン27Aは中心点PxAに対してマイクロホン28Aと点対称に配置される。
【0103】
マイクロホン21A,22Aは左右方向に沿って配置され、マイクロホン21Aは左方に向けられ、マイクロホン22Aは右方に向けられる。マイクロホン23A,24Aは前後方向に沿って配置され、マイクロホン23Aは前方に向けられ、マイクロホン24Aは後方に向けられる。マイクロホン25A,28Aは左右方向に沿って配置され、マイクロホン25Aは左斜め前方に向けられ、マイクロホン28Aは右斜め前方に向けられる。マイクロホン26A,27Aは左右方向に沿って配置され、マイクロホン26Aは右斜め後方に向けられ、マイクロホン27Aは左斜め後方に向けられる。
【0104】
このように配置されるマイクロホン21A-28Aは、XY仮想平面P1上に、本体部11Aの円周と同心の円周上に等間隔に配置される。その結果、上下方向視において、各振動板221A-281Aの中心は、球体面11Aaより内側の仮想円EA1上(すなわち、本体部11Aの円周と同心の円周上)に等間隔に配置される。したがって、上下方向視において、マイクロホン21A-28Aそれぞれに対応する音響端子の位置(図13において「●」で例示)は、球体面11Aaより外側の仮想円EA2上(すなわち、本体部11Aの円周と同心の円周上)に等間隔になる。
【0105】
ここで、「マイクロホン21A-28AをXY仮想平面P1上に配置」は、マイクロホン21A-28Aそれぞれの一部がXY仮想平面P1上に配置されることを意味する。本実施の形態では、振動板211A-281Aそれぞれの中心がXY仮想平面P1上に配置される。
【0106】
支持部材30Aは、本発明における連結部である。支持部材30Aは、ハウジング10Aを支持すると共に、本装置1Aを外部機器に連結可能である。支持部材30Aは、管部材31と連結部材33とを備える。管部材31は、本体部11Aの下端面を上下方向に貫通して、本体部11Aに取り付けられる。管部材31は、下方視において、本体部11Aの中央に配置される。
【0107】
●マイクロホンアレイ装置の動作(2)
次に、図13図15を参照しながら、本装置1Aの動作について説明する。
【0108】
本装置1Aは、上下方向視において、ハウジング10Aの8方向の端面に開口する取付孔11Ah1-11Ah8に取り付けられた8つのマイクロホン21A-28Aで音波を収音するマイクロホンアレイ装置である。マイクロホン21A-28Aは、1つのハウジング10Aに収容され、8方向に向けられる。すなわち、本装置1は、ワンポイントで前方、左斜め前方、左方、左斜め後方、後方、右斜め後方、右方、右斜め前方、の8方向からの音波を収音可能である。
【0109】
本装置1Aでは、マイクロホン21A-28Aは、曲面(球体面11Aa)で構成される表面を有する本体部11A(ハウジング10A)に収容される。すなわち、マイクロホン21A-28Aそれぞれは、正面以外の方向が本体部11Aに覆われる。そのため、マイクロホン21A-28Aそれぞれに到達する正面以外の音波の距離は、マイクロホン21A-28Aが収容されていない状態と比べて長くなる。すなわち、各方向からの音波のマイクロホン21A-28Aそれぞれへの到達時間には、差異が生じる。また、本体部11Aは、曲面で構成される。したがって、第1実施形態の本装置1と同様に、球体面11Aaによる回折効果により、各マイクロホン21A-28Aの周波数特性の乱れが抑制されると共に、マイクロホン21A-28Aには指向性が生じる。その結果、マイクロホン21A-28Aのセパレーションが得られる。
【0110】
本装置1Aでは、ハウジング10Aが第1突起部12Aと第2突起部13Aとを備えることにより、ハウジング10Aが上下方向に大きくなる。その結果、特に、点対称となるマイクロホン21A-22A,23A-24A,25A-26A,27A-28A間のハウジング10Aの表面の長さ(例えば、結線LA11-LA14の長さ)は、本体部11Aのみの状態(第1突起部12Aと第2突起部13Aとがない状態)の同長さよりも長くなる。その結果、本装置1Aにおいてマイクロホン21A-28Aの指向性が得られる周波数帯は、低下する。つまり、本装置1Aにおいて、マイクロホン21A-28Aのセパレーションが、得られる。
【0111】
ハウジング10によりセパレーションが得られた各マイクロホン21A-28Aで収音された単一の音源からの音波を再生する場合、サラウンド音響システムの各スピーカからの音波は、聴取位置に僅かに異なる時間(位相)・音圧レベルで到達する。そのため、聴者の頭部が聴取位置からずれたときに発生する、音波の干渉は抑制される。したがって、聴取位置から聴者の頭部がずれたとき、音波の干渉による再現性の低下(いわゆるコムフィルタ効果と同様の聴感上の違和感)は、抑制される。
【0112】
また、本装置1Aは、第1実施形態の本装置1と同様に、支持部材30Aを介して、外部機器(例えば、他のマイクロホンアレイ装置(他の本装置1A)や本装置1Aを支持する部材)と上下に連結可能である。
【0113】
●まとめ(2)
以上説明した実施の形態によれば、本装置1Aは、8つのマイクロホン21A-28Aを収容するハウジング10Aを備える。ハウジング10Aは、球体状の本体部11Aと、本体部11Aから上下方向に突出する第1突起部12Aと第2突起部13Aとを備える。すなわち、ハウジング10Aにおいて、X軸長さLxAは、Z軸長さLzAよりも短い。この構成によれば、特に、中心点PxAに対して点対称となるマイクロホン21A-22A,23A-24A,25A-26A,27A-28A間のハウジング10Aの表面上の長さは、本体部11Aのみの状態の同長さよりも長くなる。また、X軸に対して線対称となるマイクロホン25A-27A,26A-28A間の長さと、Y軸に対して線対称となるマイクロホン25A-28A,26A-27A間の長さとは、球体面11Aa(および円錐面12Aa,13Aaの一部)の形状に沿って長くなる。その結果、前述のとおり、マイクロホン21A-28Aの指向性が得られる周波数帯は、低下する。つまり、本装置1Aは、球体状の本体部11Aと円錐状の第1突起部12Aと円錐台状の第2突起部13Aとを備えることにより、マイクロホン21A-28Aの指向性が得られる周波数帯を低下させる。そのため、本装置1Aは、マイクロホン21A-28Aのセパレーションを確保できる。その結果、本装置1Aで収音された音波がサラウンド音響システムで再生されるとき、聴者の頭部が聴取位置からずれたときの音波の干渉は、抑制される。
【0114】
また、本装置1Aは、上下に突出するハウジング10Aにより、マイクロホン21A-28Aに指向性を生じさせ、マイクロホン21A-28Aのセパレーションを向上させる。そのため、本装置1Aは、マイクロホン21A-28A同士の距離が近づけられた状態で、単一のハウジング10Aに収容できる。すなわち、本装置1Aの小型化・軽量化が可能となる。そのため、本装置1Aは、可搬性に優れ、単体でサラウンド収音可能となる。つまり、本装置1Aは、可搬性に優れ、前述の音波の干渉を抑制可能である。
【0115】
また、以上説明した実施の形態によれば、本装置1Aは、円錐面12Aa,13Aaを備える。上下方向において、円錐面12Aaは取付孔11Ah1-11Ah8の上方に配置され、円錐面13Aaは取付孔11Ah1-11Ah8の下方に配置される。この構成によれば、ハウジング10Aの表面のうち、取付孔11Ah1-11Ah8の上方・下方に位置する部分(円錐面12Aa,13Aa)は、取付孔11Ah1-11Ah8よりもハウジング10Aの内側に傾斜する。また、円錐面12Aa,13Aaは取付孔11Ah1-11Ah8に隣接する部分(曲面)の接線として、同部分と滑らかに連続する。その結果、円錐面12Aa,13Aaが取付孔11Ah1-11Ah8に近づけられても、ハウジング10Aの回折効果により生じる周波数特性の乱れの抑制効果は向上し、かつ、ハウジング10Aの幾何学的形状(球体表面が上下方向に突出したような形状)によりマイクロホン21A-28Aに指向性が生じる。その結果、本装置1Aにおいて、マイクロホン21A-28Aのセパレーションは、向上する。
【0116】
さらに、以上説明した実施の形態によれば、本体部11Aは、表面として全体的に曲面となる球体面11Aaを備える。すなわち、取付孔11Ah1-11Ah8に隣接する部分は、本体部11Aの内側に曲率中心が位置する曲面である。そのため、マイクロホン21A-28Aの指向性が得られる周波数帯は、低下する。その結果、本装置1Aにおいて、マイクロホン21A-28Aのセパレーションは、さらに向上する。
【0117】
さらにまた、以上説明した実施の形態によれば、第1突起部12A(円錐面12Aa)と第2突起部13A(円錐面13Aa)とは、本体部11Aに対して着脱可能である。この構成によれば、本体部11Aに着装した第1突起部12Aと第2突起部13Aそれぞれの形状に応じたマイクロホン21A-28Aのセパレーションが、調整可能となる。
【0118】
なお、本実施の形態における本体部の形状は、球体状に限定されない。すなわち、例えば、本体部は、上下方向に扁平な球体状(上下方向視において円形、側方視において楕円形または長円形)でもよい。
【0119】
また、本実施の形態における本体部は、完全な曲面ではなく、多数の細かい多角形の平面の集合により構成される疑似的な曲面でもよい。
【0120】
さらに、本実施の形態における第1突起部と第2突起部それぞれは、本体部と一体に構成されてもよい。
【0121】
さらにまた、本実施の形態における第1突起部の形状は、第2突起部の形状と同じでもよい。すなわち、例えば、第1突起部と第2突起部それぞれは、円錐台状でもよく、あるいは、円錐状でもよい。
【0122】
さらにまた、本実施の形態におけるハウジングは、第1突起部と第2突起部の両方、または、一方を備えなくてもよい。
【0123】
さらにまた、本実施の形態における管部材は、本体部の上面と第1突起部とを貫通して、ハウジングの上方に突出してもよい。
【0124】
さらにまた、以上説明した各実施の形態において、本装置1(本装置1A)は、8つのマイクロホン21-28(マイクロホン21A-28A)を備えていた。これに代えて、本装置は、前後左右の各方向に向けて配置される4つのマイクロホン(マイクロホン21-24,マイクロホン21A-24A)のみを備えてもよい。この場合、本装置は、例えば、4つのマイクロホンそれぞれが収音した音波の位相差に基づいて各マイクロホンの出力信号(音声信号)を加工し、他の4つのマイクロホン(左斜め前方、右斜め前方、左斜め後方、右斜め後方、に向けられるマイクロホン)の出力信号を仮想的に生成してもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 マイクロホンアレイ装置
10 ハウジング
11a 楕円体面
12a 円錐面(第1円錐面)
13a 円錐面(第2円錐面)
11h1 取付孔(第1取付孔)
11h2 取付孔(第2取付孔)
11h3 取付孔(第3取付孔)
11h4 取付孔(第4取付孔)
11h5 取付孔(第5取付孔)
11h6 取付孔(第6取付孔)
11h7 取付孔(第7取付孔)
11h8 取付孔(第8取付孔)
21 マイクロホン(第1マイクロホン)
22 マイクロホン(第2マイクロホン)
23 マイクロホン(第3マイクロホン)
24 マイクロホン(第4マイクロホン)
25 マイクロホン(第5マイクロホン)
26 マイクロホン(第6マイクロホン)
27 マイクロホン(第7マイクロホン)
28 マイクロホン(第8マイクロホン)
211-281 振動板
L11-L14 結線
Lx X軸長さ
Ly Y軸長さ
Lz Z軸長さ
P1 XY仮想平面
1A マイクロホンアレイ装置
10A ハウジング
12Aa 円錐面(第1円錐面)
13Aa 円錐面(第2円錐面)
11Ah1 取付孔(第1取付孔)
11Ah2 取付孔(第2取付孔)
11Ah3 取付孔(第3取付孔)
11Ah4 取付孔(第4取付孔)
11Ah5 取付孔(第5取付孔)
11Ah6 取付孔(第6取付孔)
11Ah7 取付孔(第7取付孔)
11Ah8 取付孔(第8取付孔)
21A マイクロホン(第1マイクロホン)
22A マイクロホン(第2マイクロホン)
23A マイクロホン(第3マイクロホン)
24A マイクロホン(第4マイクロホン)
25A マイクロホン(第5マイクロホン)
26A マイクロホン(第6マイクロホン)
27A マイクロホン(第7マイクロホン)
28A マイクロホン(第8マイクロホン)
211A-281A 振動板
LA11-LA14 結線
LxA X軸長さ
LyA Y軸長さ
LzA Z軸長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15