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特開2022-72774短繊維用処理剤、合成繊維、及び不織布の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072774
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】短繊維用処理剤、合成繊維、及び不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D06M 13/224 20060101AFI20220510BHJP
D06M 13/292 20060101ALI20220510BHJP
D06M 13/188 20060101ALI20220510BHJP
D06M 13/165 20060101ALI20220510BHJP
D06M 15/53 20060101ALI20220510BHJP
D06M 101/20 20060101ALN20220510BHJP
【FI】
D06M13/224
D06M13/292
D06M13/188
D06M13/165
D06M15/53
D06M101:20
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182409
(22)【出願日】2020-10-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大石 拓弥
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA04
4L033AA05
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA14
4L033BA17
4L033BA21
4L033BA39
4L033CA48
(57)【要約】
【課題】合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させるとともに、短繊維用処理剤の溶液安定性を向上させる。
【解決手段】短繊維用処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有する。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
成分(C):炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有することを特徴とする短繊維用処理剤。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
成分(C):炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
【請求項2】
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を50~80質量部、前記成分(B)を10~40質量部、及び前記成分(C)を1~10質量部の割合で含有する請求項1に記載の短繊維用処理剤。
【請求項3】
更に、成分(D)として、ポリオキシアルキレン誘導体を含有する請求項1又は2に記載の短繊維用処理剤。
【請求項4】
前記成分(D)の含有割合が、5~30質量%である請求項3に記載の短繊維用処理剤。
【請求項5】
前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を60~80質量部、前記成分(B)を10~30質量部、前記成分(C)を1~10質量部、及び前記成分(D)を5~20質量部の割合で含有する請求項3又は4に記載の短繊維用処理剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【請求項7】
前記合成繊維が、ポリオレフィン系合成繊維である請求項6に記載の合成繊維。
【請求項8】
下記の工程1~3を経ることを特徴とする不織布の製造方法。
工程1:請求項1~5のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤を、合成繊維に対し付着させる工程。
工程2:工程1で短繊維用処理剤を付着させた合成繊維を、カード機に通過させてウェ
ブを得る工程。
工程3:工程2で得られたウェブに熱融着処理を施して不織布を得る工程。
【請求項9】
前記合成繊維が、ポリオレフィン系合成繊維である請求項8に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維用処理剤、合成繊維、及び不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不織布の原料繊維として合成繊維が用いられている。例えば、不織布は、合成繊維の短繊維であるステープルを作製した後、ステープルをカード機に通してウェブを作製する。ウェブに対して熱風処理を行い短繊維同士を結合させるサーマルボンド法によって不織布は製造される。
【0003】
また、合成繊維に短繊維用処理剤を塗布することによって、撥水性等の機能が付与される。撥水性等の機能が付与された合成繊維から作製された不織布は、衛材分野、医療分野、土木分野等、幅広い分野で活用されている。
【0004】
特許文献1には、所定の炭化水素基を有するアルキルホスフェート塩、所定の炭化水素基を有するアルコールと所定の炭化水素基を有する脂肪酸とのエステル化合物、及びシリコーン化合物を含有する短繊維用処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、短繊維用処理剤には、撥水性等の機能の付与に加えて、不織布の製造工程におけるカード工程性の向上、及びステープル製造工程において製造ラインで発生するスカムの抑制も求められている。カード工程性を向上させるためには、例えば、短繊維用処理剤を付着させた合成繊維の制電性を向上させる必要がある。また、スカムを抑制するためには、例えば、短繊維用処理剤の溶液安定性を向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための短繊維用処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有することを要旨とする。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
【0008】
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
【0009】
成分(C):炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
上記短繊維用処理剤について、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を50~80質量部、前記成分(B)を10~40質量部、及び前記成分(C)を1~10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0010】
上記短繊維用処理剤について、更に、成分(D)として、ポリオキシアルキレン誘導体を含有することが好ましい。
上記短繊維用処理剤について、前記成分(D)の含有割合が、5~30質量%であることが好ましい。
【0011】
上記短繊維用処理剤について、前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を60~80質量部、前記成分(B)を10~30質量部、前記成分(C)を1~10質量部、及び前記成分(D)を5~20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0012】
上記課題を解決するための合成繊維は、上記短繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
上記合成繊維について、前記合成繊維が、ポリオレフィン系合成繊維であることが好ましい。
【0013】
上記課題を解決するための不織布の製造方法は、下記の工程1~3を経ることを要旨とする。
工程1:請求項1~5のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤を、合成繊維に対し付着させる工程。
【0014】
工程2:工程1で短繊維用処理剤を付着させた合成繊維を、カード機に通過させてウェブを得る工程。
工程3:工程2で得られたウェブに熱融着処理を施して不織布を得る工程。
【0015】
上記不織布の製造方法について、前記合成繊維が、ポリオレフィン系合成繊維であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができるとともに、短繊維用処理剤の溶液安定性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明に係る短繊維用処理剤(以下、単に処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態の処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有する。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
【0019】
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
【0020】
成分(C):炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
処理剤が上記各成分を含有することにより、後述のように、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができる。また、処理剤の溶液安定性が向上する。
【0021】
上記成分(A)における炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールとしては、脂肪族アルコールであってもよいし、芳香族アルコールであってもよい。また、直鎖脂肪族アルコールであってもよいし、分岐鎖を有する脂肪族アルコールであってもよい。また、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。
【0022】
上記1価アルコールが直鎖脂肪族アルコールであると、制電性に悪影響を与えないため好ましい。
上記1価アルコールの炭素数は、16~20であることがより好ましい。
【0023】
上記1価アルコールの具体例としては、例えば、オクタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソオクタデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ドコシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられる。
【0024】
上記1価アルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記成分(A)における炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。
【0025】
上記1価脂肪酸の具体例としては、例えば、オクタデカン酸、ヘキサデカン酸、オレイン酸、イソオクタデカン酸、ドコサン酸、テトラデカン酸、ドデカン酸等が挙げられる。
上記1価脂肪酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
上記成分(B)における炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩における炭素数16~22のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖を有するアルキル基であってもよい。
【0027】
上記アルキル基の炭素数は、16~20であることが好ましい。
上記アルキル基の具体例としては、例えば、オクタデシル基、ヘキサデシル基、ドコシル基等が挙げられる。
【0028】
上記アルキル基は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記成分(B)における炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩における炭素数4~8のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖を有するアルキル基であってもよい。
【0029】
上記アルキル基の具体例としては、例えば、2-エチルへキシル基、オクチル基、ヘキシル基、ブチル基等が挙げられる。
上記アルキル基は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
また、上記アルキルリン酸エステル塩を構成する塩としては、例えば、アミン塩、金属塩が挙げられる。
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンとしては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0031】
金属塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えば、カルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0032】
上記金属塩がカリウムであると、制電性をより向上させることができるため好ましい。
上記成分(B)のアルキルリン酸エステル塩には、例えばモノエステル体の単独物、ジエステル体の単独物、モノエステル体とジエステル体との混合物が含まれる。また、ジエステル体には、同一のアルキル基を有するジエステル体(対称形のジエステル)と、異なるアルキル基を有するジエステル体(非対称形のジエステル)等が含まれる。
【0033】
上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。1価脂肪酸であってもよいし、多価脂肪酸であってもよい。
【0034】
また、上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸は、炭素数16~20の不飽和結合を有する脂肪酸であることが好ましい。
炭素数16~20の不飽和結合を有する脂肪酸であることにより、撥水性を低下させることなく溶液安定性をより向上させることができる。
【0035】
また、上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸の塩を構成する塩としては、例えば、上記アルキルリン酸エステル塩を構成する金属塩と同様のものが挙げられる。
【0036】
また、金属塩がカリウムであると、制電性をより向上させることができるため好ましい。
上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩の具体例としては、例えば、オレイン酸カリウム塩、オレイン酸、オクタデカン酸カリウム塩、オレイン酸ナトリウム塩、ドコサン酸カリウム塩、ドデカン酸カリウム塩、テトラデカン酸カリウム塩、ヘキサデカン酸カリウム塩等が挙げられる。
【0037】
上記炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有割合は特に制限されないが、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、成分(A)を50~80質量部、前記成分(B)を10~40質量部、及び前記成分(C)を1~10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0038】
上記処理剤は、更に、成分(D)として、ポリオキシアルキレン誘導体を含有することが好ましい。
処理剤が、ポリオキシアルキレン誘導体を含有することにより、処理剤の溶液安定性がより向上する。
【0039】
上記ポリオキシアルキレン誘導体としては、例えば、アルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させたエーテル・エステル化合物等が挙げられる。アルコール類又はカルボン酸類としては、直鎖状又は分岐鎖を有する脂肪族系のアルコール類又はカルボン酸類であってもよく、芳香族系のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。また、飽和のアルコール類又はカルボン酸類であっても、不飽和のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。また、1価又は2価以上のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。
【0040】
アルキレンオキサイドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキサイドであることが好ましい。炭素数2~4のアルキレンオキサイドの具体例としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を挙げることができる。これらの中でも、エチレンオキサイドであることが好ましい。重合配列としては、特に限定されず、ランダム付加物であっても、ブロック付加物であってもよい。
【0041】
上記アルコール類、カルボン酸類、又はカルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物1モルに対するアルキレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは5~100モルである。より好ましくは5~30モルである。
【0042】
上記ポリオキシアルキレン誘導体としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルケニルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミンと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩が挙げられる。
【0043】
上記ポリオキシアルキレン誘導体の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオクタデシルエステル、ポリオキシエチレン(7モル)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(7モル)オクタデシルエーテル等が挙げられる。
【0044】
上記ポリオキシアルキレン誘導体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記成分(D)の含有割合は、特に制限されないが、5~30質量%であることが好ましい。
【0045】
成分(D)の含有割合が上記数値範囲であることにより、撥水性を低下させることなく処理剤の溶液安定性をより向上させることができる。
上記成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有割合は特に制限されないが、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、成分(A)を60~80質量部、成分(B)を10~30質量部、成分(C)を1~10質量部、及び成分(D)を5~20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0046】
上記処理剤は、その他成分(E)として、パーフルオロアルキル基含有化合物等のフッ素系化合物や、シリコーン化合物を含有してもよい。
上記フッ素系化合物は、一般にフッ素系界面活性剤として撥水性の付与を目的として用いられる。
【0047】
また、上記シリコーン化合物は、一般に撥水性の高い油剤として用いられる。
シリコーン化合物の具体例としては、例えば、ジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
【0048】
その他成分(E)の含有割合は、1質量%以下であることが好ましく、0質量%、すなわち処理剤に含まれていないことがより好ましい。フッ素系化合物、及びシリコーン化合物の少なくともいずれか一方の含有割合が上記数値範囲であることにより、処理剤の溶液安定性を向上させることができる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明に係る合成繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している。合成繊維の具体例としては、(1)ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維等のポリオレフィン系繊維、(2)ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート・イソフタラート、ポリエーテルポリエステル等のポリエステル系繊維、(3)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(4)複合繊維のうち、芯鞘構造の複合繊維であって芯、鞘部のいずれか又は両者がポリオレフィン系繊維である複合繊維、例えば鞘部がポリエチレン繊維であるポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維、若しくはサイドバイサイド構造を有するポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維等のポリオレフィン系繊維、芯鞘構造の複合繊維であって芯、鞘部のいずれか又は両者がポリオレフィン系繊維である複合繊維、例えば鞘部がポリエチレン繊維であるポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維、若しくはサイドバイサイド構造を有するポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維等のポリオレフィン系合成繊維であることが好ましい。
【0050】
ここで、ポリオレフィン系合成繊維とは、オレフィンやアルケンをモノマーとして合成された合成繊維を意味するものとする。
合成繊維の長さは特に限定されないが、繊維長が約30mm~約70mmの短繊維であるステープルであることが好ましい。
【0051】
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に対し0.1~2質量%となるように付着させることが好ましく、0.3~1.2質量%となるように付着させることがより好ましい。
【0052】
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば、第1実施形態の処理剤、及び水を含有する水性液又はさらに水で希釈した溶液を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0053】
なお、水性液の調製には、ホモミキサーやホモジナイザー等を用いた公知の機械的乳化方法が適用できる。
本実施形態の合成繊維を用いて、以下の方法によって不織布は製造される。
【0054】
工程1:合成繊維に第1実施形態の処理剤を付着させる付着工程。
工程2:前記工程1を経た合成繊維を、カード機に通過させてウェブを形成するウェブ形成工程。
【0055】
工程3:前記工程2で得られたウェブに熱融着処理を施して、繊維同士を融着させる熱融着工程。
以上の工程を経ることにより、不織布を製造することができる。不織布は、繊維同士を熱融着させていることから、サーマルボンド不織布と言い換えることができる。
【0056】
第1実施形態の処理剤、及び第2実施形態の合成繊維によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)処理剤が上記成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有することにより、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができるとともに、処理剤の溶液安定性が向上する。制電性を向上させることによって、不織布製造時のカード工程性を向上させることが可能になる。また、処理剤の溶液安定性が向上することによって、ステープル製造工程におけるスカムを抑制することが可能になる。
【0057】
(2)処理剤が上記成分(D)としてポリオキシアルキレン誘導体を含有することにより、処理剤の溶液安定性がより向上する。
(3)処理剤におけるその他成分(E)の含有割合が1質量%以下であっても、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができる。また、処理剤の溶液安定性を向上させることができる。
【0058】
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の通常処理剤に用いられる成分を含有してもよい。
【実施例0059】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、%は質量%を意味する。
【0060】
試験区分1(短繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示される成分(A-1)を160g、成分(B1-1)の40%溶液を25g、成分(B2-2)の70%溶液を14.3g、成分(C-1)の20%溶液を20g、成分(D-1)を10g、成分(D-2)を6g秤量してビーカーに加えた。これらを約80℃の温度で撹拌して均一に混合した。さらに、ビーカーに20℃の水を加えながら撹拌して均一に混合し、合計1000gとした。その後、ホモジナイザーを用いて乳化を行い、短繊維用処理剤の20%水性液を調製した。
【0061】
(実施例2~30及び比較例1~6)
実施例2~30及び比較例1~6の各短繊維用処理剤は、表1に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0062】
なお、各例の処理剤中における成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及びその他成分(E)の種類と含有量は、表1の「成分(A)」欄、「成分(B)」欄、「成分(C)」欄、「成分(D)」欄、及び「その他成分(E)」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0063】
【表1】
表1の種類欄に記載するA-1~A-9、rA-1、B1-1~B1-5、B2-1~B2-3、C-1~C-6、D-1~D-5、E-1の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0064】
(成分(A))
成分(A)における炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールの種類と炭素数、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸の種類と炭素数について、表2の「1価アルコール」欄、「1価脂肪酸」欄にそれぞれ示す。
【0065】
【表2】
(成分(B))
B1-1:オクタデシルリン酸エステルカリウム塩
B1-2:ヘキサデシルリン酸エステルカリウム塩
B1-3:オクタデシルリン酸エステルナトリウム塩
B1-4:オクタデシルリン酸エステルトリエタノールアミン塩
B1-5:ドコシルリン酸エステルカリウム塩
B2-1:ブチルリン酸エステルカリウム塩
B2-2:オクチルリン酸エステルカリウム塩
B2-3:2-エチルへキシルリン酸エステルカリウム塩
成分(B)における炭素数16~22のアルキル基と、炭素数4~8のアルキル基の種類と炭素数、及びアルキルリン酸エステル塩の種類について、表3の「アルキル基」欄、「塩」欄にそれぞれ示す。
【0066】
【表3】
(成分(C))
C-1:オレイン酸カリウム塩
C-2:オレイン酸
C-3:オクタデカン酸カリウム塩
C-4:オレイン酸ナトリウム塩
C-5:ドコサン酸カリウム塩
C-6:ドデカン酸カリウム塩
成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、又はその塩の種類と炭素数について、表4の「脂肪酸及び塩」欄、「炭素数」欄にそれぞれ示す。
【0067】
【表4】
(成分(D))
D-1:ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエーテル
D-2:ポリオキシエチレン(10モル)硬化ひまし油エーテル
D-3:ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオクタデシルエステル
D-4:ポリオキシエチレン(7モル)オレイルエステル
D-5:ポリオキシエチレン(7モル)オクタデシルエーテル
(その他成分(E))
E-1:ジメチルシリコーン
試験区分2(合成繊維、及び不織布の製造)
試験区分1で調製した短繊維用処理剤を用いて、合成繊維、及び不織布を製造した。
【0068】
合成繊維としては、鞘部がポリエチレンであり、芯部がポリエステルである複合繊維で構成されたポリオレフィン系合成繊維を用いた。この合成繊維は、繊度2.2dtex、長さ38mmの短繊維(ステープル)であった。
【0069】
この合成繊維100gに対して、試験区分1で調製した短繊維用処理剤の20%水性液をさらに希釈して0.4%水性液としたものをスプレー法で付着させた。この際、ステープルに対して固形分付着量が0.4質量%(溶媒を含まない)となるように付着させた。処理剤が付着した合成繊維を、80℃の熱風乾燥機で1時間乾燥した。
【0070】
乾燥後の合成繊維20gを、温度25℃、湿度40%の条件下で、公知のミニチュアローラーカード機に供してウェブを形成した。このウェブに対して、約140℃の熱風を10秒間吹き付けて熱風処理を行い、繊維同士を結合させて目付25g/m2の不織布を作製した。
【0071】
試験区分3(評価)
実施例1~30、及び比較例1~6に記載の各処理剤について、不織布の評価項目として、撥水性を評価した。また、工程性の評価項目として制電性、溶液安定性を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1の「撥水性」欄、「制電性」欄、「溶液安定性」欄にそれぞれに示す。
【0072】
(撥水性)
撥水性の評価は、JIS L 1092 7.1.1 A法(低水圧法)による静水圧法に準拠して行った。ハイドロテスターとして、スイス・テクステスト社製(FX3000-III)を使用した。試験環境としては、温度20±2℃、湿度65±2%RHで行った。
【0073】
試験区分2で作製した不織布(約150mm×約150mm)を5枚採取し、不織布の表側に水が当たるようにハイドロテスターに取り付けた。10cm/minの速さで水位を上昇させ、不織布の裏側に3滴目の水滴が現れた時の表示値(cmw.c.)を読み取った。この試験を5回行い、5回の平均値を算出した。耐水圧が高いほど撥水性が良いことを示す。
【0074】
なお、不織布の裏側において、水滴が現れてから大きくならない非常に小さな水滴、又は、同じ位置を通過してできる水滴は計算に入れなかった。
・撥水性の評価基準
◎(良好):耐水圧が3.0cmw.c.以上の場合
〇(可):耐水圧が1.0cmw.c.以上3.0cmw.c.未満の場合
×(不良):耐水圧が1.0cmw.c.未満の場合
(制電性)
試験区分2で作製した合成繊維20gを、25℃で相対湿度40%の条件下で、ミニチュアローラーカード機に供してウェブを形成した。カード機出口のウェブに発生した静電気の電圧を測定して、下記の評価基準で評価した。
【0075】
・制電性の評価基準
◎(良好):発生静電気の電圧が500V未満である場合
〇(可):発生静電気の電圧が500V以上1kV未満である場合
×(不良):発生静電気の電圧が1kV以上である場合
(溶液安定性)
試験区分1で作製した短繊維用処理剤の20%水性液を更に希釈して1%水性液を作製した。この1%水性液を密閉容器に入れ、5℃、20℃、50℃の各温度制御化の下で24時間静置した。24時間静置した後、溶液の状態を目視で観察して、以下の評価基準で評価した。
【0076】
・溶液安定性の評価基準
◎(良好):水性液に析出物や分離が見られない場合
〇(可):水性液に析出物や分離がごくわずかに見られた場合
×(不良):水性液に析出物や分離が見られた場合
表1の結果から、本発明によれば、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができる。また、短繊維用処理剤の溶液安定性を向上させることができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有し、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を50質量部以上含有することを特徴とする短繊維用処理剤。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
成分(C):炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
【請求項2】
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を50~80質量部、前記成分(B)を10~40質量部、及び前記成分(C)を1~10質量部の割合で含有する請求項1に記載の短繊維用処理剤。
【請求項3】
更に、成分(D)として、ポリオキシアルキレン誘導体を含有する請求項1又は2に記載の短繊維用処理剤。
【請求項4】
前記成分(D)の含有割合が、5~30質量%である請求項3に記載の短繊維用処理剤。
【請求項5】
前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を60~80質量部、前記成分(B)を10~30質量部、前記成分(C)を1~10質量部、及び前記成分(D)を5~20質量部の割合で含有する請求項3又は4に記載の短繊維用処理剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤が付着していることを特徴とする合成繊維。
【請求項7】
前記合成繊維が、ポリオレフィン系合成繊維である請求項6に記載の合成繊維。
【請求項8】
下記の工程1~3を経ることを特徴とする不織布の製造方法。
工程1:請求項1~5のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤を、合成繊維に対し付着させる工程。
工程2:工程1で短繊維用処理剤を付着させた合成繊維を、カード機に通過させ
てウェブを得る工程。
工程3:工程2で得られたウェブに熱融着処理を施して不織布を得る工程。
【請求項9】
前記合成繊維が、ポリオレフィン系合成繊維である請求項8に記載の不織布の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短繊維用処理剤、合成繊維、及び不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、不織布の原料繊維として合成繊維が用いられている。例えば、不織布は、合成繊維の短繊維であるステープルを作製した後、ステープルをカード機に通してウェブを作製する。ウェブに対して熱風処理を行い短繊維同士を結合させるサーマルボンド法によって不織布は製造される。
【0003】
また、合成繊維に短繊維用処理剤を塗布することによって、撥水性等の機能が付与される。撥水性等の機能が付与された合成繊維から作製された不織布は、衛材分野、医療分野、土木分野等、幅広い分野で活用されている。
【0004】
特許文献1には、所定の炭化水素基を有するアルキルホスフェート塩、所定の炭化水素基を有するアルコールと所定の炭化水素基を有する脂肪酸とのエステル化合物、及びシリコーン化合物を含有する短繊維用処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、短繊維用処理剤には、撥水性等の機能の付与に加えて、不織布の製造工程におけるカード工程性の向上、及びステープル製造工程において製造ラインで発生するスカムの抑制も求められている。カード工程性を向上させるためには、例えば、短繊維用処理剤を付着させた合成繊維の制電性を向上させる必要がある。また、スカムを抑制するためには、例えば、短繊維用処理剤の溶液安定性を向上させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための短繊維用処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有し、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を50質量部以上含有することを要旨とする。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
【0008】
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
【0009】
成分(C):炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
上記短繊維用処理剤について、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を50~80質量部、前記成分(B)を10~40質量部、及び前記成分(C)を1~10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0010】
上記短繊維用処理剤について、更に、成分(D)として、ポリオキシアルキレン誘導体を含有することが好ましい。
上記短繊維用処理剤について、前記成分(D)の含有割合が、5~30質量%であることが好ましい。
【0011】
上記短繊維用処理剤について、前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を60~80質量部、前記成分(B)を10~30質量部、前記成分(C)を1~10質量部、及び前記成分(D)を5~20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0012】
上記課題を解決するための合成繊維は、上記短繊維用処理剤が付着していることを要旨とする。
上記合成繊維について、前記合成繊維が、ポリオレフィン系合成繊維であることが好ましい。
【0013】
上記課題を解決するための不織布の製造方法は、下記の工程1~3を経ることを要旨とする。
工程1:請求項1~5のいずれか一項に記載の短繊維用処理剤を、合成繊維に対し付着させる工程。
【0014】
工程2:工程1で短繊維用処理剤を付着させた合成繊維を、カード機に通過させてウェブを得る工程。
工程3:工程2で得られたウェブに熱融着処理を施して不織布を得る工程。
【0015】
上記不織布の製造方法について、前記合成繊維が、ポリオレフィン系合成繊維であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができるとともに、短繊維用処理剤の溶液安定性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
本発明に係る短繊維用処理剤(以下、単に処理剤ともいう。)を具体化した第1実施形態について説明する。
【0018】
本実施形態の処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有し、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、成分(A)を50質量部以上含有する。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
【0019】
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
【0020】
成分(C):炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
処理剤が上記各成分を含有し、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、成分(A)を50質量部以上含有することにより、後述のように、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができる。また、処理剤の溶液安定性が向上する。
【0021】
上記成分(A)における炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールとしては、脂肪族アルコールであってもよいし、芳香族アルコールであってもよい。また、直鎖脂肪族アルコールであってもよいし、分岐鎖を有する脂肪族アルコールであってもよい。また、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。
【0022】
上記1価アルコールが直鎖脂肪族アルコールであると、制電性に悪影響を与えないため好ましい。
上記1価アルコールの炭素数は、16~20であることがより好ましい。
【0023】
上記1価アルコールの具体例としては、例えば、オクタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソオクタデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ドコシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられる。
【0024】
上記1価アルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記成分(A)における炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。
【0025】
上記1価脂肪酸の具体例としては、例えば、オクタデカン酸、ヘキサデカン酸、オレイン酸、イソオクタデカン酸、ドコサン酸、テトラデカン酸、ドデカン酸等が挙げられる。
上記1価脂肪酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
上記成分(B)における炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩における炭素数16~22のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖を有するアルキル基であってもよい。
【0027】
上記アルキル基の炭素数は、16~20であることが好ましい。
上記アルキル基の具体例としては、例えば、オクタデシル基、ヘキサデシル基、ドコシル基等が挙げられる。
【0028】
上記アルキル基は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、上記成分(B)における炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩における炭素数4~8のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖を有するアルキル基であってもよい。
【0029】
上記アルキル基の具体例としては、例えば、2-エチルへキシル基、オクチル基、ヘキシル基、ブチル基等が挙げられる。
上記アルキル基は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
また、上記アルキルリン酸エステル塩を構成する塩としては、例えば、アミン塩、金属塩が挙げられる。
アミン塩を構成するアミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンとしては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、(6)アンモニア等が挙げられる。
【0031】
金属塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えば、カルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0032】
上記金属塩がカリウムであると、制電性をより向上させることができるため好ましい。
上記成分(B)のアルキルリン酸エステル塩には、例えばモノエステル体の単独物、ジエステル体の単独物、モノエステル体とジエステル体との混合物が含まれる。また、ジエステル体には、同一のアルキル基を有するジエステル体(対称形のジエステル)と、異なるアルキル基を有するジエステル体(非対称形のジエステル)等が含まれる。
【0033】
上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。1価脂肪酸であってもよいし、多価脂肪酸であってもよい。
【0034】
また、上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸は、炭素数16~20の不飽和結合を有する脂肪酸であることが好ましい。
炭素数16~20の不飽和結合を有する脂肪酸であることにより、撥水性を低下させることなく溶液安定性をより向上させることができる。
【0035】
また、上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸の塩を構成する塩としては、例えば、上記アルキルリン酸エステル塩を構成する金属塩と同様のものが挙げられる。
【0036】
また、金属塩がカリウムであると、制電性をより向上させることができるため好ましい。
上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩の具体例としては、例えば、オレイン酸カリウム塩、オレイン酸、オクタデカン酸カリウム塩、オレイン酸ナトリウム塩、ドコサン酸カリウム塩、ドデカン酸カリウム塩、テトラデカン酸カリウム塩、ヘキサデカン酸カリウム塩等が挙げられる。
【0037】
上記炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有割合は、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、成分(A)を50~80質量部、前記成分(B)を10~40質量部、及び前記成分(C)を1~10質量部の割合で含有することが好ましい。
【0038】
上記処理剤は、更に、成分(D)として、ポリオキシアルキレン誘導体を含有することが好ましい。
処理剤が、ポリオキシアルキレン誘導体を含有することにより、処理剤の溶液安定性がより向上する。
【0039】
上記ポリオキシアルキレン誘導体としては、例えば、アルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させたエーテル・エステル化合物等が挙げられる。アルコール類又はカルボン酸類としては、直鎖状又は分岐鎖を有する脂肪族系のアルコール類又はカルボン酸類であってもよく、芳香族系のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。また、飽和のアルコール類又はカルボン酸類であっても、不飽和のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。また、1価又は2価以上のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。
【0040】
アルキレンオキサイドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキサイドであることが好ましい。炭素数2~4のアルキレンオキサイドの具体例としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を挙げることができる。これらの中でも、エチレンオキサイドであることが好ましい。重合配列としては、特に限定されず、ランダム付加物であっても、ブロック付加物であってもよい。
【0041】
上記アルコール類、カルボン酸類、又はカルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物1モルに対するアルキレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは5~100モルである。より好ましくは5~30モルである。
【0042】
上記ポリオキシアルキレン誘導体としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルケニルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミンと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩が挙げられる。
【0043】
上記ポリオキシアルキレン誘導体の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオクタデシルエステル、ポリオキシエチレン(7モル)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(7モル)オクタデシルエーテル等が挙げられる。
【0044】
上記ポリオキシアルキレン誘導体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記成分(D)の含有割合は、特に制限されないが、5~30質量%であることが好ましい。
【0045】
成分(D)の含有割合が上記数値範囲であることにより、撥水性を低下させることなく処理剤の溶液安定性をより向上させることができる。
上記成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有割合は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、成分(A)を60~80質量部、成分(B)を10~30質量部、成分(C)を1~10質量部、及び成分(D)を5~20質量部の割合で含有することが好ましい。
【0046】
上記処理剤は、その他成分(E)として、パーフルオロアルキル基含有化合物等のフッ素系化合物や、シリコーン化合物を含有してもよい。
上記フッ素系化合物は、一般にフッ素系界面活性剤として撥水性の付与を目的として用いられる。
【0047】
また、上記シリコーン化合物は、一般に撥水性の高い油剤として用いられる。
シリコーン化合物の具体例としては、例えば、ジメチルシリコーン、フェニル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルキルアラルキル変性シリコーン、アルキルポリエーテル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等が挙げられる。
【0048】
その他成分(E)の含有割合は、1質量%以下であることが好ましく、0質量%、すなわち処理剤に含まれていないことがより好ましい。フッ素系化合物、及びシリコーン化合物の少なくともいずれか一方の含有割合が上記数値範囲であることにより、処理剤の溶液安定性を向上させることができる。
【0049】
(第2実施形態)
本発明に係る合成繊維を具体化した第2実施形態について説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している。合成繊維の具体例としては、(1)ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維等のポリオレフィン系繊維、(2)ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート・イソフタラート、ポリエーテルポリエステル等のポリエステル系繊維、(3)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(4)複合繊維のうち、芯鞘構造の複合繊維であって芯、鞘部のいずれか又は両者がポリオレフィン系繊維である複合繊維、例えば鞘部がポリエチレン繊維であるポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維、若しくはサイドバイサイド構造を有するポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリブテン繊維等のポリオレフィン系繊維、芯鞘構造の複合繊維であって芯、鞘部のいずれか又は両者がポリオレフィン系繊維である複合繊維、例えば鞘部がポリエチレン繊維であるポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維、若しくはサイドバイサイド構造を有するポリエチレン/ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン/ポリエステル複合繊維等のポリオレフィン系合成繊維であることが好ましい。
【0050】
ここで、ポリオレフィン系合成繊維とは、オレフィンやアルケンをモノマーとして合成された合成繊維を意味するものとする。
合成繊維の長さは特に限定されないが、繊維長が約30mm~約70mmの短繊維であるステープルであることが好ましい。
【0051】
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に対し0.1~2質量%となるように付着させることが好ましく、0.3~1.2質量%となるように付着させることがより好ましい。
【0052】
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば、第1実施形態の処理剤、及び水を含有する水性液又はさらに水で希釈した溶液を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。
【0053】
なお、水性液の調製には、ホモミキサーやホモジナイザー等を用いた公知の機械的乳化方法が適用できる。
本実施形態の合成繊維を用いて、以下の方法によって不織布は製造される。
【0054】
工程1:合成繊維に第1実施形態の処理剤を付着させる付着工程。
工程2:前記工程1を経た合成繊維を、カード機に通過させてウェブを形成するウェブ形成工程。
【0055】
工程3:前記工程2で得られたウェブに熱融着処理を施して、繊維同士を融着させる熱融着工程。
以上の工程を経ることにより、不織布を製造することができる。不織布は、繊維同士を熱融着させていることから、サーマルボンド不織布と言い換えることができる。
【0056】
第1実施形態の処理剤、及び第2実施形態の合成繊維によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)処理剤が上記成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有し、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、成分(A)を50質量部以上含有することにより、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができるとともに、処理剤の溶液安定性が向上する。制電性を向上させることによって、不織布製造時のカード工程性を向上させることが可能になる。また、処理剤の溶液安定性が向上することによって、ステープル製造工程におけるスカムを抑制することが可能になる。
【0057】
(2)処理剤が上記成分(D)としてポリオキシアルキレン誘導体を含有することにより、処理剤の溶液安定性がより向上する。
(3)処理剤におけるその他成分(E)の含有割合が1質量%以下であっても、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができる。また、処理剤の溶液安定性を向上させることができる。
【0058】
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態、及び、以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の品質保持のための安定化剤や制電剤、帯電防止剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の通常処理剤に用いられる成分を含有してもよい。
【実施例0059】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、%は質量%を意味する。
【0060】
試験区分1(短繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示される成分(A-1)を160g、成分(B1-1)の40%溶液を25g、成分(B2-2)の70%溶液を14.3g、成分(C-1)の20%溶液を20g、成分(D-1)を10g、成分(D-2)を6g秤量してビーカーに加えた。これらを約80℃の温度で撹拌して均一に混合した。さらに、ビーカーに20℃の水を加えながら撹拌して均一に混合し、合計1000gとした。その後、ホモジナイザーを用いて乳化を行い、短繊維用処理剤の20%水性液を調製した。
【0061】
(実施例2~28、参考例1、2及び比較例1~6)
実施例2~28、参考例1、2及び比較例1~6の各短繊維用処理剤は、表1に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0062】
なお、各例の処理剤中における成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及びその他成分(E)の種類と含有量は、表1の「成分(A)」欄、「成分(B)」欄、「成分(C)」欄、「成分(D)」欄、及び「その他成分(E)」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0063】
【表1】
表1の種類欄に記載するA-1~A-9、rA-1、B1-1~B1-5、B2-1~B2-3、C-1~C-6、D-1~D-5、E-1の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0064】
(成分(A))
成分(A)における炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールの種類と炭素数、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸の種類と炭素数について、表2の「1価アルコール」欄、「1価脂肪酸」欄にそれぞれ示す。
【0065】
【表2】
(成分(B))
B1-1:オクタデシルリン酸エステルカリウム塩
B1-2:ヘキサデシルリン酸エステルカリウム塩
B1-3:オクタデシルリン酸エステルナトリウム塩
B1-4:オクタデシルリン酸エステルトリエタノールアミン塩
B1-5:ドコシルリン酸エステルカリウム塩
B2-1:ブチルリン酸エステルカリウム塩
B2-2:オクチルリン酸エステルカリウム塩
B2-3:2-エチルへキシルリン酸エステルカリウム塩
成分(B)における炭素数16~22のアルキル基と、炭素数4~8のアルキル基の種類と炭素数、及びアルキルリン酸エステル塩の種類について、表3の「アルキル基」欄、「塩」欄にそれぞれ示す。
【0066】
【表3】
(成分(C))
C-1:オレイン酸カリウム塩
C-2:オレイン酸
C-3:オクタデカン酸カリウム塩
C-4:オレイン酸ナトリウム塩
C-5:ドコサン酸カリウム塩
C-6:ドデカン酸カリウム塩
成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、又はその塩の種類と炭素数について、表4の「脂肪酸及び塩」欄、「炭素数」欄にそれぞれ示す。
【0067】
【表4】
(成分(D))
D-1:ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエーテル
D-2:ポリオキシエチレン(10モル)硬化ひまし油エーテル
D-3:ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオクタデシルエステル
D-4:ポリオキシエチレン(7モル)オレイルエステル
D-5:ポリオキシエチレン(7モル)オクタデシルエーテル
(その他成分(E))
E-1:ジメチルシリコーン
試験区分2(合成繊維、及び不織布の製造)
試験区分1で調製した短繊維用処理剤を用いて、合成繊維、及び不織布を製造した。
【0068】
合成繊維としては、鞘部がポリエチレンであり、芯部がポリエステルである複合繊維で構成されたポリオレフィン系合成繊維を用いた。この合成繊維は、繊度2.2dtex、長さ38mmの短繊維(ステープル)であった。
【0069】
この合成繊維100gに対して、試験区分1で調製した短繊維用処理剤の20%水性液をさらに希釈して0.4%水性液としたものをスプレー法で付着させた。この際、ステープルに対して固形分付着量が0.4質量%(溶媒を含まない)となるように付着させた。処理剤が付着した合成繊維を、80℃の熱風乾燥機で1時間乾燥した。
【0070】
乾燥後の合成繊維20gを、温度25℃、湿度40%の条件下で、公知のミニチュアローラーカード機に供してウェブを形成した。このウェブに対して、約140℃の熱風を10秒間吹き付けて熱風処理を行い、繊維同士を結合させて目付25g/m2の不織布を作製した。
【0071】
試験区分3(評価)
実施例1~28、参考例1、2及び比較例1~6に記載の各処理剤について、不織布の評価項目として、撥水性を評価した。また、工程性の評価項目として制電性、溶液安定性を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1の「撥水性」欄、「制電性」欄、「溶液安定性」欄にそれぞれに示す。
【0072】
(撥水性)
撥水性の評価は、JIS L 1092 7.1.1 A法(低水圧法)による静水圧法に準拠して行った。ハイドロテスターとして、スイス・テクステスト社製(FX3000-III)を使用した。試験環境としては、温度20±2℃、湿度65±2%RHで行った。
【0073】
試験区分2で作製した不織布(約150mm×約150mm)を5枚採取し、不織布の表側に水が当たるようにハイドロテスターに取り付けた。10cm/minの速さで水位を上昇させ、不織布の裏側に3滴目の水滴が現れた時の表示値(cmw.c.)を読み取った。この試験を5回行い、5回の平均値を算出した。耐水圧が高いほど撥水性が良いことを示す。
【0074】
なお、不織布の裏側において、水滴が現れてから大きくならない非常に小さな水滴、又は、同じ位置を通過してできる水滴は計算に入れなかった。
・撥水性の評価基準
◎(良好):耐水圧が3.0cmw.c.以上の場合
〇(可):耐水圧が1.0cmw.c.以上3.0cmw.c.未満の場合
×(不良):耐水圧が1.0cmw.c.未満の場合
(制電性)
試験区分2で作製した合成繊維20gを、25℃で相対湿度40%の条件下で、ミニチュアローラーカード機に供してウェブを形成した。カード機出口のウェブに発生した静電気の電圧を測定して、下記の評価基準で評価した。
【0075】
・制電性の評価基準
◎(良好):発生静電気の電圧が500V未満である場合
〇(可):発生静電気の電圧が500V以上1kV未満である場合
×(不良):発生静電気の電圧が1kV以上である場合
(溶液安定性)
試験区分1で作製した短繊維用処理剤の20%水性液を更に希釈して1%水性液を作製した。この1%水性液を密閉容器に入れ、5℃、20℃、50℃の各温度制御化の下で24時間静置した。24時間静置した後、溶液の状態を目視で観察して、以下の評価基準で評価した。
【0076】
・溶液安定性の評価基準
◎(良好):水性液に析出物や分離が見られない場合
〇(可):水性液に析出物や分離がごくわずかに見られた場合
×(不良):水性液に析出物や分離が見られた場合
表1の結果から、本発明によれば、合成繊維の撥水性、及び制電性を向上させることができる。また、短繊維用処理剤の溶液安定性を向上させることができる。
下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有し、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を50質量部以上含有する短繊維用処理剤であって、前記短繊維用処理剤中に占める前記成分(A)の含有量の割合が40質量%を超えることを特徴とする短繊維用処理剤。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
成分(C):炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸、及びその塩から選ばれる少なくとも一つ。
(ただし、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルとジカルボン酸(またはジカルボン酸誘導体)との縮合物および/またはその縮合物の少なくとも1つ以上の水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルを前記短繊維用処理剤中に10質量%以上45質量%以下含有する態様を除く。)
前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を50~80質量部、前記成分(B)を10~40質量部、及び前記成分(C)を1~10質量部の割合で含有する請求項1に記載の短繊維用処理剤。
前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を60~80質量部、前記成分(B)を10~30質量部、前記成分(C)を1~10質量部、及び前記成分(D)を5~20質量部の割合で含有する請求項3又は4に記載の短繊維用処理剤。
一般に、不織布の原料繊維として合成繊維が用いられている。例えば、不織布は、合成繊維の短繊維であるステープルを作製した後、ステープルをカード機に通してウェブを作製する。ウェブに対して熱風処理を行い短繊維同士を結合させるサーマルボンド法によって不織布は製造される。
また、合成繊維に短繊維用処理剤を塗布することによって、撥水性等の機能が付与される。撥水性等の機能が付与された合成繊維から作製された不織布は、衛材分野、医療分野、土木分野等、幅広い分野で活用されている。
特許文献1には、所定の炭化水素基を有するアルキルホスフェート塩、所定の炭化水素基を有するアルコールと所定の炭化水素基を有する脂肪酸とのエステル化合物、及びシリコーン化合物を含有する短繊維用処理剤が開示されている。
ところで、短繊維用処理剤には、撥水性等の機能の付与に加えて、不織布の製造工程におけるカード工程性の向上、及びステープル製造工程において製造ラインで発生するスカムの抑制も求められている。カード工程性を向上させるためには、例えば、短繊維用処理剤を付着させた合成繊維の制電性を向上させる必要がある。また、スカムを抑制するためには、例えば、短繊維用処理剤の溶液安定性を向上させる必要がある。
上記課題を解決するための短繊維用処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有し、前記成分(A)、前記成分(B)、及び前記成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を50質量部以上含有する短繊維用処理剤であって、前記短繊維用処理剤中に占める前記成分(A)の含有量の割合が40質量%を超えることを要旨とする。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
上記短繊維用処理剤について、前記成分(A)、前記成分(B)、前記成分(C)及び前記成分(D)の含有割合の合計を100質量部とすると、前記成分(A)を60~80質量部、前記成分(B)を10~30質量部、前記成分(C)を1~10質量部、及び前記成分(D)を5~20質量部の割合で含有することが好ましい。
本実施形態の処理剤は、下記の成分(A)、下記の成分(B)、及び下記の成分(C)を含有し、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の含有割合の合計を100質量部とすると、成分(A)を50質量部以上含有する。
成分(A):炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールと、炭素数12~22の炭化水素基を有する1価脂肪酸とのエステル化合物。
成分(B):炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩、及び炭素数4~8のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩から選ばれる少なくとも一つ。
上記成分(A)における炭素数12~22の炭化水素基を有する1価アルコールとしては、脂肪族アルコールであってもよいし、芳香族アルコールであってもよい。また、直鎖脂肪族アルコールであってもよいし、分岐鎖を有する脂肪族アルコールであってもよい。また、飽和脂肪族アルコールであってもよいし、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。
上記1価アルコールの具体例としては、例えば、オクタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソオクタデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ドコシルアルコール、ドデシルアルコール、テトラデシルアルコール等が挙げられる。
上記1価脂肪酸の具体例としては、例えば、オクタデカン酸、ヘキサデカン酸、オレイン酸、イソオクタデカン酸、ドコサン酸、テトラデカン酸、ドデカン酸等が挙げられる。
上記1価脂肪酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記成分(B)における炭素数16~22のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル塩における炭素数16~22のアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよいし、分岐鎖を有するアルキル基であってもよい。
金属塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えば、カルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖脂肪酸であってもよいし、分岐鎖を有する脂肪酸であってもよい。1価脂肪酸であってもよいし、多価脂肪酸であってもよい。
また、上記成分(C)における炭素数12~22の炭化水素基を有する脂肪酸の塩を構成する塩としては、例えば、上記アルキルリン酸エステル塩を構成する金属塩と同様のものが挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン誘導体としては、例えば、アルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させたエーテル・エステル化合物等が挙げられる。アルコール類又はカルボン酸類としては、直鎖状又は分岐鎖を有する脂肪族系のアルコール類又はカルボン酸類であってもよく、芳香族系のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。また、飽和のアルコール類又はカルボン酸類であっても、不飽和のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。また、1価又は2価以上のアルコール類又はカルボン酸類であってもよい。
アルキレンオキサイドとしては、炭素数2~4のアルキレンオキサイドであることが好ましい。炭素数2~4のアルキレンオキサイドの具体例としては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等を挙げることができる。これらの中でも、エチレンオキサイドであることが好ましい。重合配列としては、特に限定されず、ランダム付加物であっても、ブロック付加物であってもよい。
上記アルコール類、カルボン酸類、又はカルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物1モルに対するアルキレンオキサイドの付加モル数は、好ましくは5~100モルである。より好ましくは5~30モルである。
上記ポリオキシアルキレン誘導体としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルケニルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルケニルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミンと無機酸との塩、及びポリオキシアルキレンアルケニルアミノエーテルと無機酸との塩が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン誘導体の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン(5モル)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(10モル)硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオクタデシルエステル、ポリオキシエチレン(7モル)オレイルエステル、ポリオキシエチレン(7モル)オクタデシルエーテル等が挙げられる。
その他成分(E)の含有割合は、1質量%以下であることが好ましく、0質量%、すなわち処理剤に含まれていないことがより好ましい。フッ素系化合物、及びシリコーン化合物の少なくともいずれか一方の含有割合が上記数値範囲であることにより、処理剤の溶液安定性を向上させることができる。
第1実施形態の処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤(溶媒を含まない)を合成繊維に対し0.1~2質量%となるように付着させることが好ましく、0.3~1.2質量%となるように付着させることがより好ましい。
処理剤を合成繊維に付着させる方法としては、例えば、第1実施形態の処理剤、及び水を含有する水性液又はさらに水で希釈した溶液を用いて、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、ローラー法、計量ポンプを用いたガイド給油法等によって付着させる方法を適用できる。
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、%は質量%を意味する。
なお、各例の処理剤中における成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及びその他成分(E)の種類と含有量は、表1の「成分(A)」欄、「成分(B)」欄、「成分(C)」欄、「成分(D)」欄、及び「その他成分(E)」欄にそれぞれ示すとおりである。
合成繊維としては、鞘部がポリエチレンであり、芯部がポリエステルである複合繊維で構成されたポリオレフィン系合成繊維を用いた。この合成繊維は、繊度2.2dtex、長さ38mmの短繊維(ステープル)であった。
この合成繊維100gに対して、試験区分1で調製した短繊維用処理剤の20%水性液をさらに希釈して0.4%水性液としたものをスプレー法で付着させた。この際、ステープルに対して固形分付着量が0.4質量%(溶媒を含まない)となるように付着させた。処理剤が付着した合成繊維を、80℃の熱風乾燥機で1時間乾燥した。
乾燥後の合成繊維20gを、温度25℃、湿度40%の条件下で、公知のミニチュアローラーカード機に供してウェブを形成した。このウェブに対して、約140℃の熱風を10秒間吹き付けて熱風処理を行い、繊維同士を結合させて目付25g/m2の不織布を作製した。
試験区分2で作製した不織布(約150mm×約150mm)を5枚採取し、不織布の表側に水が当たるようにハイドロテスターに取り付けた。10cm/minの速さで水位を上昇させ、不織布の裏側に3滴目の水滴が現れた時の表示値(cmw.c.)を読み取った。この試験を5回行い、5回の平均値を算出した。耐水圧が高いほど撥水性が良いことを示す。