IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-センサー用電極装置 図1
  • 特開-センサー用電極装置 図2
  • 特開-センサー用電極装置 図3
  • 特開-センサー用電極装置 図4
  • 特開-センサー用電極装置 図5
  • 特開-センサー用電極装置 図6
  • 特開-センサー用電極装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072806
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】センサー用電極装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/262 20210101AFI20220510BHJP
   A61B 5/273 20210101ALI20220510BHJP
【FI】
A61B5/04 300H
A61B5/04 300Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182451
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】植村 大蔵
(72)【発明者】
【氏名】上田 龍二
(72)【発明者】
【氏名】喜納 修
(72)【発明者】
【氏名】加藤 久弥
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127LL07
4C127LL18
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定値にノイズが含まれにくくすることを可能としたセンサー用電極装置を提供する。
【解決手段】検出部11に電気的に接続することが可能に構成された第1配線部材21Aと、導電性を有し、第1配線部材21Aに電気的に接続される第1針状部材22Aとを備える。第1針状部材22Aは、樹脂製の第1本体部と、第1本体部の外表面を覆う第1導電層とを備える。第1本体部は、複数の第1針状部と、板状を有し、複数の第1針状部を支持する第1支持部とを備える。第1導電層は、第1支持部の表面における少なくとも一部に接する第1部分と、第1支持部の側面における少なくとも一部に接する第2部分とを含む。第1配線部材21Aは、第1部分および第2部分に接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体において生じる電気信号を検出する検出部を備えた生体信号センサーにおいて、前記生体から前記電気信号を受けるセンサー用電極装置であって、
前記検出部に電気的に接続することが可能に構成された第1配線部材と、
導電性を有し、前記第1配線部材に電気的に接続される第1針状部材であって、前記生体に穿刺される前記第1針状部材と、を備え、
前記第1針状部材は、樹脂製の第1本体部と、前記第1本体部の外表面を覆う第1導電層とを備え、
前記第1本体部は、複数の第1針状部と、板状を有し、前記複数の第1針状部を支持する第1支持部と、を備え、
前記第1支持部は、前記複数の第1針状部を支持する第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面を前記第2面に接続する側面とを含み、
前記第1導電層は、前記第2面の少なくとも一部に接する第1部分と、前記側面の少なくとも一部に接する第2部分とを含み、
前記第1配線部材は、前記第1部分および前記第2部分に接続されている
センサー用電極装置。
【請求項2】
前記第1面は、前記第1面の中央を含む第1領域と、前記第1領域外に位置して前記第1領域を囲む第2領域とを含み、
前記第2領域における前記第1針状部の密度は、前記第1領域における前記第1針状部の密度よりも低い
請求項1のセンサー用電極装置。
【請求項3】
前記第1支持部は、前記第1面と対向する平面視において前記第1面の中央を含む第1部分と、前記平面視において前記第1部分外に位置し、前記側面を含む第2部分とを含み、
前記第2部分の厚さが、前記第1部分の厚さよりも厚い
請求項1または2に記載のセンサー用電極装置。
【請求項4】
前記第1部分の厚さは、300μm以下であり、
前記第2部分の厚さは、500μm以上1000μm以下である
請求項3に記載のセンサー用電極装置。
【請求項5】
前記第1面と対向する平面視において、互いに隣り合う前記第1針状部間の距離がピッチであり、
前記ピッチの長さは、前記第1針状部の長さにおける最大値の2倍以上である
請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサー用電極装置。
【請求項6】
前記検出部に電気的に接続することが可能に構成された第2配線部材と、
導電性を有し、前記第2配線部材に電気的に接続される第2針状部材と、をさらに備え、
前記第2針状部材は、樹脂製の第2本体部と、前記第2本体部の外表面を覆う第2導電層とを備え、
前記第2本体部は、複数の第2針状部と、板状を有し、前記複数の第2針状部を支持する第2支持部と、を備え、
前記第2支持部は、前記複数の第2針状部を支持する第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面を前記第2面に接続する側面とを含み、
前記第2導電層は、前記第2支持部の前記第2面の少なくとも一部に接する第1部分と、前記第2支持部の前記側面の少なくとも一部に接する第2部分とを含み、
前記第2配線部材は、前記第2導電層の前記第1部分および前記第2部分に接続されている
請求項1から5のいずれか一項に記載のセンサー用電極装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体信号を検出する生体信号センサーが備えるセンサー用電極装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の皮膚における病状を診断するための医療装置が知られている。この医療装置は、皮膚におけるインピーダンスの値を測定し、測定値を用いて被検者の皮膚に存在する病巣を診断する。医療装置は、複数の電極を有した導電性のプローブを備えている。各電極は、ベース基板と、ベース基板と一体に形成された複数のマイクロニードルを備えている。ベース基板は、SOIウェハにおけるシリコンウェハであり、マイクロニードルはシリコンウェハから形成される。各マイクロニードルは、角質層の貫通に十分な長さを有している。皮膚におけるインピーダンスの値が測定される際には、各電極が被検者の皮膚に配置された後に、各電極が皮膚に押圧されることによって、マイクロニードルが角質層を貫通する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-519062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マイクロニードルの穿刺対象である生体の皮膚は弾性を有している。そのため、マイクロニードルの押圧によって、マイクロニードルを穿刺するための外力が皮膚に作用すると、皮膚は、皮膚に作用した外力に応じて変形する。この点、シリコンウェハによって形成されたベース基板は高い剛性を有するから、マイクロニードルの穿刺時において皮膚の変形に対して十分に追従することができない。これにより、皮膚に対するマイクロニードルの穿刺が十分ではない、あるいは、測定時にマイクロニードルが抜けやすくなり、結果として、測定値にノイズが含まれやすくなる。
【0005】
本発明は、測定値にノイズが含まれにくくすることを可能としたセンサー用電極装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのセンサー用電極装置は、生体において生じる電気信号を検出する検出部を備えた生体信号センサーにおいて、前記生体から前記電気信号を受ける。前記検出部に電気的に接続することが可能に構成された第1配線部材と、導電性を有し、前記第1配線部材に電気的に接続される第1針状部材であって、前記生体に穿刺される前記第1針状部材と、を備える。前記第1針状部材は、樹脂製の第1本体部と、前記第1本体部の外表面を覆う第1導電層とを備える。前記第1本体部は、複数の第1針状部と、板状を有し、前記複数の第1針状部を支持する第1支持部と、を備える。前記第1支持部は、前記複数の第1針状部を支持する第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面を前記第2面に接続する側面とを含む。前記第1導電層は、前記第2面の少なくとも一部に接する第1部分と、前記側面の少なくとも一部に接する第2部分とを含む。前記第1配線部材は、前記第1部分および前記第2部分に接続されている。
【0007】
上記センサー用電極装置によれば、生体に穿刺される第1針状部材の第1本体部が樹脂によって形成されるから、第1支持部が可撓性を有する。そのため、生体表面に対する第1支持部の追従性を高めることが可能である。また、検出部に電気的に接続される第1配線部材が、第1導電層の第1部分と第2部分との両方に接続されるから、第1配線部材と第1針状部材との接触面積を拡張することが可能である。これにより、第1配線部材と第1針状部材との接触面積がより小さい場合に比べて、センサー用電極装置によって生体信号がより取り出されやすくなる。そのため、上記センサー用電極装置によれば、測定値にノイズが含まれにくくなる。
【0008】
上記センサー用電強装置において、前記第1面は、前記第1面の中央を含む第1領域と、前記第1領域外に位置して前記第1領域を囲む第2領域とを含み、前記第2領域における前記第1針状部の密度は、前記第1領域における前記第1針状部の密度よりも低くてもよい。
【0009】
上記センサー用電極装置によれば、第2領域での第1針状部の密度が、第1領域での第1針状部の密度よりも低いため、第1面の全体において第1針状部の密度が均一である場合に比べて、生体に穿刺される第1針状部の数を第1領域において確保しつつ、第1針状部を支持する第1支持部の可撓性を高めることが可能である。
【0010】
上記センサー用電極装置において、前記第1支持部は、前記第1面と対向する平面視において前記第1面の中央を含む第1部分と、前記平面視において前記第1部分外に位置し、前記側面を含む第2部分とを含み、前記第2部分の厚さが、前記第1部分の厚さよりも厚くてもよい。
【0011】
上記センサー用電極装置によれば、第2部分の厚さが第1部分の厚さよりも厚いから、側面における第1配線部材との接続を確保しつつ、第1部分の厚さが第2部分の厚さよりも薄いことによって、第1針状部材の可撓性を確保することも可能である。
【0012】
上記センサー用電極装置において、前記第1部分の厚さは、300μm以下であり、前記第2部分の厚さは、500μm以上1000μm以下であってもよい。このセンサー用電極装置によれば、第1部分の厚さによって、第1針状部材の可撓性を確保することが可能であり、かつ、第2部分の厚さによって、第1針状部材が第1配線部材に接続する面積を確保することが可能である。
【0013】
上記センサー用電極装置において、前記第1面と対向する平面視において、互いに隣り合う前記第1針状部間の距離がピッチであり、前記ピッチの長さは、前記第1針状部の長さにおける最大値の2倍以上であってもよい。このセンサー用電極装置によれば、互いに隣り合う第1針状部のピッチがより短い場合に比べて、第1針状部材の可撓性を高めることが可能である。
【0014】
上記センサー用電極装置において、前記検出部に電気的に接続することが可能に構成された第2配線部材と、導電性を有し、前記第2配線部材に電気的に接続される第2針状部材と、をさらに備え、前記第2針状部材は、樹脂製の第2本体部と、前記第2本体部の外表面を覆う第2導電層とを備え、前記第2本体部は、複数の第2針状部と、板状を有し、前記複数の第2針状部を支持する第2支持部と、を備え、前記第2支持部は、前記複数の第2針状部を支持する第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面を前記第2面に接続する側面とを含み、前記第2導電層は、前記第2支持部の前記第2面の少なくとも一部に接する第1部分と、前記第2支持部の前記側面の少なくとも一部に接する第2部分とを含み、前記第2配線部材は、前記第2導電層の前記第1部分および前記第2部分に接続されていてもよい。
【0015】
上記センサー用電極装置によれば、生体に穿刺される第2針状部材の第2本体部が樹脂によって形成されるから、第2支持部が可撓性を有する。そのため、生体表面に対する第2支持部の追従性を高めることが可能である。また、検出部に電気的に接続される第2配線部材が、第2導電層の第1部分と第2部分との両方に接続されるから、第2配線部材と第2針状部材との接触面積を拡張することが可能である。これにより、第2配線部材と第2針状部材との接触面積がより小さい場合に比べて、センサー用電極装置によって生体信号がより取り出されやすくなる。そのため、上記センサー用電極装置によれば、測定値にノイズが含まれにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、測定値にノイズが含まれにくくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】センサー用電極装置を備える生体信号センサーの構造を示す平面図。
図2】センサー用電極装置の構造をセンサー用電極装置が接続される検出部とともに模式的に示す断面図。
図3図2が示す領域Aを拡大して示す断面図。
図4】第1面と対向する視点から見た第1針状部材の構造を示す平面図。
図5】第1針状部材の構造を示す断面図。
図6】第1針状部材の構造を示す断面図。
図7】センサー用電極装置の作用を説明するための作用図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図7を参照して、センサー用電極装置の一実施形態を説明する。
[生体信号センサーの構造]
図1は、センサー用電極装置を備える生体信号センサーの平面構造を示している。
図1が示すように、生体信号センサー10は、検出部11と電極装置12とを備えている。生体信号センサー10は、生体において生じる電気信号を検出する検出部11を備えている。検出部11は、例えば電気信号の一例である脳波を検出する。電極装置12は、生体から電気信号を受ける。
【0019】
電極装置12は、第1配線部材21Aと第1針状部材22Aとを備えている。第1配線部材21Aは、検出部11に電気的に接続することが可能に構成されている。第1針状部材22Aは、導電性を有し、第1配線部材21Aに電気的に接続される。第1針状部材22Aは、生体に穿刺される。本実施形態において、第1針状部材22Aは、生体の皮膚に穿刺される。検出部11が脳波を検出する場合には、第1針状部材22Aは、例えば生体の額に穿刺される。
【0020】
電極装置12は、第2配線部材21Bと第2針状部材22Bとを備えている。第2配線部材21Bは、検出部11に電気的に接続することが可能に構成されている。第2針状部材22Bは、導電性を有し、第2針状部材22Bに電気的に接続される。第2針状部材22Bは、生体に穿刺される。第2針状部材22Bは、第1針状部材22Aと同様に、生体の皮膚に穿刺される。検出部11が脳波を検出する場合には、第2針状部材22Bは、例えば生体の皮膚に穿刺される。
【0021】
図2は、図1が示すII‐II線に沿う生体信号センサー10の断面構造を示している。図2では、説明の便宜上、検出部11に対する電極装置12の接続が解除された状態が示されている。
【0022】
図2が示すように、検出部11は、第1端子11A1と第2端子11A2とを備えている。第1端子11A1は、電極装置12の第1配線部材21Aに接続することが可能に構成されている。第1端子11A1は、第1配線部材21Aに対する取り付けと、第1配線部材21Aからの取り外しとが可能に構成されている。第2端子11A2は、電極装置12の第2配線部材21Bに接続することが可能に構成されている。第2端子11A2は、第2配線部材21Bに対する取り付けと、第2配線部材21Bからの取り外しとが可能に構成されている。
【0023】
電極装置12は、絶縁部材23および支持部材24をさらに備えている。絶縁部材23は、第1配線部材21Aおよび第2配線部材21Bの各々のうち、2つの端部以外の部分を覆っている。絶縁部材23は、例えば各種の合成樹脂によって形成されている。支持部材24は、支持部材24から各配線部材21A,21Bの両端部が露出するように絶縁部材23を覆っている。支持部材24は、絶縁部材23と同様に、例えば各種の合成樹脂によって形成されている。支持部材24は、電極装置12の外形を形成している。
【0024】
第1配線部材21Aは、第1端部21A1および第2端部21A2を備えている。各端部21A1,21A2は、上述したように、絶縁部材23および支持部材24から露出している。第1配線部材21Aは、第1端部21A1から第2端部21A2に向かう途中において屈曲している。第1端部21A1は、検出部11の第1端子11A1に接続することが可能に構成されている。第2端部21A2は、第1針状部材22Aに接続されている。
【0025】
第2配線部材21Bは、第1端部21B1および第2端部21B2を備えている。各端部21B1,21B2は、上述したように、絶縁部材23および支持部材24から露出している。第2配線部材21Bは、第1端部21B1から第2端部21B2に向かう途中において屈曲している。第1端部21B1は、検出部11の第2端子11A2に接続することが可能に構成されている。第2端部21B2は、第2針状部材22Bに接続されている。
【0026】
なお、電極装置12が製造される際には、絶縁部材23が有する2つの凹部のうち、一方の凹部に第1針状部材22Aが嵌め込まれ、他方の凹部に第2針状部材22Bが嵌め込まれる。一方の凹部には、第1配線部材21Aの第2端部21A2が露出し、他方の凹部には、第2配線部材21Bの第2端部21B2が露出している。
【0027】
また、生体信号センサー10において、第1針状部材22Aは第1配線部材21Aから取り外しが可能であってもよいし、取り外しが可能でなくてもよい。第2針状部材22Bは、第2配線部材21Bから取り外しが可能であってもよいし、取り外しが可能でなくてもよい。検出部11は、第1端子11A1および第2端子11A2を備えなくてもよい。この場合には、第1配線部材21Aおよび第2配線部材21Bの各々が、検出部11に対して常時接続される。
【0028】
図3は、図2が示す領域Aを拡大して示している。領域Aは、第1針状部材22A、および、第1針状部材22Aの周辺構造を含む。なお、以下では第1針状部材22Aの構造を詳細に説明する。第2針状部材22Bは、電極装置12内における位置が第1針状部材22Aとは異なる一方で、第2針状部材22Bの構造は第1針状部材22Aの構造と共通であるから、第2針状部材22Bの構造についての詳しい説明を省略する。また、図3では、第1導電層を説明する便宜上、第1導電層の厚さが誇張されている。
【0029】
図3が示すように、第1針状部材22Aは、樹脂製の第1本体部22A1と、第1本体部22A1を覆う第1導電層22A2とを備えている。第1本体部22A1は、複数の第1針状部A11と、第1支持部A12とを備えている。第1支持部A12は、板状を有し、複数の針状部A11を支持している。
【0030】
第1支持部A12は、表面A12F、裏面A12R、および、側面A12Sを含んでいる。裏面A12Rは、複数の第1針状部A11を支持している。表面A12Fは、第1支持部A12において、裏面A12Rと対向している。側面A12Sは、裏面A12Rを表面A12Fに接続している。裏面A12Rは第1面の一例であり、表面A12Fは第2面の一例である。
【0031】
第1導電層22A2は、本体部22A1の外表面における全体を覆っている。第1導電層22A2は、第1支持部A12の表面A12Fにおける少なくとも一部に接する第1部分と、第1支持部A12の側面A12Sにおける少なくとも一部に接する第2部分とを含んでいる。本実施形態では、第1導電層22A2の第1部分は、表面A12Fの全体に接している。また、第1導電層22A2の第2部分は、側面A12Sの全体に接している。なお、第1支持部A12の表面A12Fにおける一部のみが第1導電層22A2によって覆われてもよいし、側面A12Sにおける一部のみが第1導電層22A2によって覆われてもよい。
【0032】
電極装置12によれば、生体に穿刺される第1針状部材22Aの第1本体部22A1が樹脂によって形成されるから、第1本体部22A1の第1支持部A12が可撓性を有する。そのため、生体表面に対する第1支持部A12の追従性を高めることが可能である。また、検出部11に電気的に接続される第1配線部材21Aが、第1導電層22A2の第1部分と第2部分との両方に接続されるから、第1配線部材21Aと第1針状部材22Aとの接触面積を拡張することが可能である。これにより、第1配線部材21Aと第1針状部材22Aとの接触面積がより小さい場合に比べて、電極装置12によって生体信号がより取り出されやすくなる。
【0033】
図3が示す例では、第1配線部材21Aは、第1導電層22A2のうち、第1支持部A12の側面A12Sを覆う部分の全体に接続されているが、第1支持部A12の側面A12Sを覆う部分の一部に接続されてもよい。なお、第1配線部材21Aと第1針状部材22Aとの接続面積を拡張する観点では、第1配線部材21Aは、第1導電層22A2のうち、第1支持部A12の側面A12Sを覆う部分の全体に接続されていることが好ましい。
【0034】
また、第1配線部材21Aは、第1導電層22A2のうち、第1支持部A12の表面A12Fを覆う部分の全体に接続されているが、第1支持部A12の表面A12Fを覆う部分の一部に接続されてもよい。なお、第1配線部材21Aと第1針状部材22Aとの接続面積を拡張する観点では、第1配線部材21Aは、第1導電層22A2のうち、第1支持部A12の表面A12Fを覆う部分の全体に接続されていることが好ましい。
【0035】
第1支持部A12の裏面A12Rと対向する平面視において、第1支持部A12の裏面A12Rは、第1針状部材22Aを取り囲む絶縁部材23と同一平面上に位置している。なお、第1本体部22A1の全体を覆う第1導電層22A2の厚さは、第1支持部A12の厚さに対して非常に薄いため、第1支持部A12の外表面には第1導電層22A2の一部が位置するものの、第1支持部A12の裏面A12Rが絶縁部材23と同一平面上に位置すると見なすことが可能である。第1導電層22A2の厚さは、例えば、数十nm以上数百nm以下の範囲に含まれる。
【0036】
なお、第2針状部材22Bは、第1針状部材22Aと同様に、樹脂製の第2本体部と、第2本体部を覆う第2導電層とを備えている。また、第2本体部は、第1本体部22A1と同様に、複数の第2針状部と、第2支持部とを備えている。第2支持部は、第1支持部A12と同様に、表面、裏面、および、側面を含んでいる。第2導電層は、第1導電層と同様に、第2支持部の第2面における少なくとも一部に接する第1部分と、第2支持部の側面における少なくとも一部接する第2部分とを含んでいる。第2配線部材21Bは、第1配線部材21Aと同様に、第2導電層の第1部分および第2部分の電気的に接続されている。
【0037】
図4から図6を参照して、第1針状部材22Aとして適用が可能な構造の一例を説明する。なお、上述したように、第2針状部材22Bの構造は第1針状部材22Aの構造と共通であるから、以下に説明する構造は第2針状部材にも適用が可能である。また、以下に説明する3つの構造のうち、2つ以上の構造を組み合わせることも可能である。
【0038】
図4は、第1支持部A12の裏面A12Rと対向する平面視における第1針状部材22Aの構造を示している。
図4が示すように、第1支持部A12の裏面A12Rは、第1領域A12R1と第2領域A12R2とを含んでいる。第1領域A12R1、および、裏面A12Rの中央を含む領域である。第2領域A12R2は、第1領域A12R1外に位置して第1領域A12R1を囲んでいる。第2領域A12R2における針状部A11の密度は、第1領域A12R1における針状部A11の密度よりも低い。そのため、裏面A12Rの全体において第1針状部A11の密度が均一である場合に比べて、生体に穿刺される第1針状部A11の数を確保しつつ、第1針状部A11を支持する第1支持部A12の可撓性を高めることが可能である。
【0039】
図5は、第1支持部A12の表面A12Fに直交する面に沿う断面における第1針状部材22Aの構造を示している。
図5が示すように、第1支持部A12は、第1部分A12Aおよび第2部分A12Bを含んでいる。第1部分A12Aは、裏面A12Rと対向する平面視において裏面A12Rの中央を含んでいる。第2部分A12Bは、裏面A12Rと対向する平面視において第1部分A12A外に位置し、側面A12Sを含んでいる。第2部分A12Bの厚さが、第1部分A12Aの厚さよりも厚い。そのため、側面A12Sにおける第1配線部材21Aとの接続を確保しつつ、第1部分A12Aの厚さが第2部分A12Bの厚さよりも薄いことによって、第1針状部材22Aの可撓性を確保することも可能である。
【0040】
各部分A12A,A12Bの厚さは、第1支持部A12の厚さ方向における表面A12Fと裏面A12Rとの間の距離である。図5が示す例では、裏面A12Rが表面A12Fに向けて窪む部分を有し、これによって、第1部分A12Aの厚さが、第2部分A12Bの厚さよりも薄い。なお、表面A12Fが裏面A12Rに向けて窪む部分を有し、これによって、第1部分A12Aの厚さが、第2部分A12Bの厚さよりも薄くてもよい。あるいは、裏面A12Rが表面A12Fに向けて窪む部分を有し、かつ、表面A12Fが裏面A12Rに向けて窪む部分を有し、これによって、第1部分A12Aの厚さが第2部分A12Bの厚さよりも薄くてもよい。
【0041】
第1部分A12Aの厚さT1は、例えば300μm以下であってよい。第2部分A12Bの厚さは、例えば500μm以上1000μm以下であってよい。これにより、第1部分A12Aの厚さT1によって、第1針状部材22Aの可撓性を確保することが可能であり、かつ、第2部分A12Bの厚さT2によって、第1針状部材22Aが第1配線部材21Aに接続する面積を確保することが可能である。
【0042】
上述したように、電極装置12が製造される際には、第1針状部材22Aは、絶縁部材23が有する凹部に嵌め込まれる。第2部分A12Bの厚さT2が500μm以上であることによって、凹部に対する第1針状部材22Aの嵌め込みも容易になる。また、第2部分A12Bの厚さT2が1000μm以下であることによって、第1針状部材22Aが有する厚さに起因して電極装置12が過剰に厚くなることが抑えられる。第1部分A12Aの厚さT1は、30μm以上であってよい。これにより、第1部分A12Aの厚さT1に起因して第1針状部材22Aの剛性が過剰に低くなることが抑えられる。
【0043】
なお、第1支持部A12が均一な厚さを有する場合には、第1支持部A12の可撓性を高める観点では、第1支持部A12の厚さは、30μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0044】
上述したように、第1支持部A12が可撓性を有する場合には、第1支持部A12は、皮膚の表面における形状に対して追従するように変形することが可能である。これにより、各第1針状部A11の軸線と、皮膚において当該第1針状部A11が穿刺される部分に対する法線とが概ね平行であるように、皮膚に対して第1針状部A11を位置させることが可能である。また、第1支持部A12が皮膚の表面における形状に対して追従するから、各第1針状部A11が皮膚内に穿刺される量にばらつきが生じることが抑えられる。
【0045】
図6は、第1支持部A12の表面A12Fに直交する面に沿う断面における第1針状部材22Aの構造を示している。
図6が示すように、裏面A12Rと対向する平面視において、互いに隣り合う第1針状部A11間の距離がピッチPである。ピッチPの長さは、第1針状部A11の長さLにおける最大値の2倍以上である。これにより、互いに隣り合う第1針状部A11のピッチPがより短い場合に比べて、第1針状部材22Aの可撓性を高めることが可能である。
【0046】
図6が示す例では、各第1針状部A11の長さLが互いに等しい。なお、複数の第1針状部A11には、第1の長さを有した第1針状部A11と、第1の長さとは異なる第2の長さを有した第1針状部A11が含まれてよい。また、裏面A12Rは、ピッチPが第1のピッチである部分と、第1のピッチとは異なる第2のピッチである部分とを含んでもよい。
【0047】
複数の第1針状部A11が間隔を空けて第1支持部A12に位置することによって、第1針状部A11が皮膚に穿刺された場合に、互いに隣り合う第1針状部A11間の空間が皮膚で満たされる。これにより、各第1針状部A11と当該第1針状部A11を取り囲む皮膚とが接触する面積を拡大することが可能である。互いに隣り合う第1針状部A11の間隔であるピッチPは、第1針状部A11を穿刺されやすくする観点において、第1針状部材22Aの押圧によって変形した皮膚が有し得る曲率半径に応じた大きさであることが好ましい。
【0048】
[作用]
図7を参照して、電極装置12の作用を説明する。
図7は、電極装置12が備える第1針状部材22A、および、第2針状部材22Bの各々が、生体信号の測定対象である生体に穿刺された状態を示している。
【0049】
図7が示すように、生体信号センサー10を用いて生体の電気信号を測定する際には、第1針状部材22Aおよび第2針状部材22Bが生体表面を形成する皮膚Skに押し当てられる。皮膚Skは弾性を有するから、第1針状部材22Aおよび第2針状部材22Bが押し当てられた際に皮膚Skに加えられた外力に応じて変形する。上述したように、各針状部材22A,22Bの本体部22A1,22B1は樹脂によって形成されているから、本体部22A1,22B1が備える支持部A12,B12が皮膚Skの変形に追従して撓む。これにより、支持部A12,B12と皮膚Skとの間に隙間が形成されることが抑えられるから、針状部A11,B11が皮膚Skに穿刺されやすく、また、穿刺された針状部A11,B11が皮膚Skから抜けにくい。
【0050】
また、各配線部材21A,21Bは、導電層の第1部分および第2部分に接続されるから、導電層のうちで針状部A11,B11を覆う部分が受けた生体信号は、導電層の第1部分および第2部分の両方を通じて配線部材21A,21Bに流れる。そのため、取り出された電気信号にノイズが含まれにくくなる。
【0051】
[針状部材]
以下、各針状部材22A,22Bとして採用が可能な構造をより詳しく説明する。各針状部材22A,22Bが備える針状部A11,B11は、生体に皮膚に大きな外傷を生じさせることなく、生体の皮膚に対して穿刺されることが可能である。なお、本開示における外傷とは、皮膚の表面に対する針状部A11,B11の穿刺に伴う皮膚における出血、紫斑、腫脹などである。針状部A11,B11によればこうした外傷が抑えられるから、外傷に伴う苦痛も抑えられる。以下、針状部A11,B11の形状をより詳しく説明する。
【0052】
針状部A11,B11の長さは、例えば、50μm以上300μm以下の範囲に含まれる大きさを有することが好ましい。複数の針状部A11,B11の全てが、等しい長さを有してもよい。あるいは、上述したように、複数の針状部A11,B11には、第1の長さを有した針状部A11,B11と、第1の長さとは異なる第2の長さを有した針状部A11,B11が含まれてよい。
【0053】
針状部A11,B11の外径は、10μm以上250μm以下の範囲に含まれる大きさを有することが好ましい。複数の針状部A11,B11の全てが、等しい外径を有してもよい。あるいは、複数の針状部A11,B11には、第1の外径を有した針状部A11,B11と、第1の外径とは異なる第2の外径を有した針状部A11,B11が含まれてよい。
【0054】
なお、針状部A11,B11の延びる方向に直交する平面での断面形状が円形状である場合には、針状部A11,B11の外径は、当該断面形状における直径である。針状部A11,B11が円形状以外の断面形状を有する場合には、例えば、針状部A11,B11の断面形状に対して外接する円の直径を針状部A11,B11の外径と見なすことが可能である。針状部A11,B11の断面形状は、例えば、各種の多角形状、または、楕円状であってもよい。多角形状には、例えば、星形状、正方形状、および、三角形状が含まれる。針状部A11,B11の断面形状は、対称軸を設定可能な形状でもよいし、対称軸を設定することができない形状でもよい。
【0055】
各針状部A11,B11において、支持部A12,B12に接続された端部が基端であり、基端とは反対側の端部が先端である。各針状部A11,B11の先端は、尖っていてもよいし、尖っていなくてもよい。針状部A11,B11の先端は、平面であってもよい。各針状部A11,B11の形状は、例えば、真円柱状、斜円柱状、楕円柱状、多角柱状、真円錐状、斜円錐状、楕円錘状、多角錘状、円錐台状、角錐台状などであってよい。すなわち、各針状部A11,B11の形状には、任意の形状を採用することが可能である。
【0056】
各支持部A12,B12の裏面と対向する平面視において、裏面には、2列以上の針状部A11,B11が位置することが好ましく、各列は、2つ以上の針状部A11,B11を含むことが好ましい。各針状部A11,B11は、支持部A12,B12の裏面と、各針状部A11,B11の軸線とが垂直であるように、支持部A12,B12に配置されることが好ましい。なお、各針状部A11,B11は、支持部A12,B12の裏面と、針状部A11,B11の軸線とが直角よりも小さい角度になるように、支持部A12,B12に配置されてもよい。支持部A12,B12の裏面における針状部A11,B11の密度を高める観点では、各針状部A11,B11の軸線は、支持部A12,B12の裏面に対して垂直であることが好ましい。
【0057】
針状部A11,B11のピッチPは、100μm以上1400μm以下であってよい。針状部A11,B11のピッチPは、100μm以上400μm以下であることが好ましい。針状部A11,B11のピッチPは、針状部A11,B11が皮膚の角質層を穿刺可能であるように、針状部A11,B11が有する長さ、および、針状部A11,B11が有する外径とともに考慮されることが好ましい。支持部A12,B12の裏面において、針状部A11,B11の密度は、例えば、10本/cm以上であってよい。針状部A11,B11の密度は、例えば、200本/cm以上2000本/cm以下であることが好ましい。
【0058】
各支持部A12,B12の表面積が大きいほど、針状部材22A,22Bが皮膚に接する面積が大きくなるから、皮膚から電気信号を取り出す際の電気抵抗を小さくすることが可能である。そのため、電気抵抗を小さくする観点では、各支持部A12,B12の表面積が大きいことが好ましい。なお、針状部A11,B11によって抵抗を小さくすることが可能であれば、各支持部A12,B12の表面積を小さくしてもよい。
【0059】
各針状部材22A,22Bにおいて、複数の針状部A11,B11と支持部A12,B12とは一体に形成されてもよい。あるいは、複数の針状部A11,B11と支持部A12,B12とは個別に形成されてもよい。すなわち、複数の針状部A11,B11は、支持部A12,B12に対する取り付けと、支持部A12,B12からの取り外しとが可能に構成されてもよい。
【0060】
複数の針状部A11,B11と支持部A12,B12とが一体に形成され、かつ、配線部材21A,21Bに対する針状部材22A,22Bの取り付けと取り外しとが可能である場合には、一度使用した針状部材22A,22Bを新しい針状部材22A,22Bに交換することが可能であってもよい。また、複数の針状部A11,B11と支持部A12,B12とが個別に形成される場合には、一度使用した針状部A11,B11を新しい針状部A11,B11に交換することが可能であってもよい。針状部材22A,22Bまたは針状部A11,B11の交換が可能である場合には、針状部材22A,22Bまたは針状部A11,B11の交換が不可能である場合に比べて衛生的である。
【0061】
また、針状部材22A,22Bの交換が可能である場合には、電極装置12が備える針状部材22A,22Bを第1の特性を有した針状部材22A,22Bから第1の特性とは異なる第2の特性を有した針状部材22A,22Bに交換することが可能である。針状部材22A,22Bの特性には、例えば、針状部A11,B11の長さ、針状部A11,B11の外径、針状部A11,B11の形状、針状部A11,B11の本数、針状部A11,B11のピッチP、支持部A12,B12の厚さにおける少なくとも1つが含まれる。こうした特性が異なる針状部材22A,22Bを用いることによって、例えば、導電性および皮膚への密着性などが互いに異なる針状部材22A,22Bを測定対象に適用することが可能である。
【0062】
針状部材22A,22Bを製造する際には、まず、針状部材22A,22Bが備える本体部の原版が形成される。次いで、原版の転写によって複製版が形成される。そして、複製版の転写によって本体部が形成される。この際に、本体部の形成には、各種の樹脂が用いられる。本体部を形成するための樹脂は、生体に対する安全性の観点から、例えば、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリグリコール酸、ポリ乳酸などであることが好ましい。
【0063】
そして、本体部の外表面に導電層が形成される。導電層を形成するための材料は、例えば、金属、半導体、有機物、および、導電性高分子などであってよい。このうち、金属は、例えば、医用ステンレス鋼、金、チタン、ニッケル、鉄、金、白金、錫、クロム、銅から構成される群から選択される少なくとも1つであってよい。金属は、例えば、ニッケルチタン合金でもよい。半導体は、例えばケイ素であってよい。有機物は、例えば容量性炭素、および、黒鉛などであってよい。導電層を形成する方法は、例えば、蒸着法、スパッタ法、CVD法、エピタキシー法、電気めっき法、スクリーン印刷法などであってよい。
【0064】
なお、原版を形成するための材料は、例えば、金属、セラミック、半導体、有機物、および、樹脂から構成される群から選択される少なくとも1つであってよい。原版を形成するための方法には、各種の方法を用いることが可能である。原版を形成する際には、例えば、フォトリソグラフィ法、エッチング法、電気めっき法、無電解めっき法、スクリーン印刷法、光造形法、レーザーアブレーション法などを用いることが可能である。
【0065】
[検出部]
以下、検出部として採用が可能な構成をより詳しく説明する。
検出部11は、生体において生じた電気信号の検出が可能である。検出部11は、上述したように脳波の検出が可能であってよい。なお、脳波は、脳において生じる微小な電気信号である。検出部11は、例えば、筋肉において生じた微弱な電場を検出することが可能でもよい。あるいは、検出部11は、心臓で生じた微小な電気信号を検出することが可能であってもよい。
【0066】
検出部11は、電源を備える。電源は、電池とDC/DCコンバーターとを含んでいる。DC/DCコンバーターは、電池からの入力電圧を所定の出力電圧に変換して、検出部11を構成する機能部に供給する。検出部11が電池によって駆動される場合には、被検者の電気信号を測定する際に、生体信号センサー10を外部の給電ケーブルに接続する必要がないから、被検者の行動を制限することなく生体信号を測定することが可能である。
【0067】
なお、電池は、二次電池であることが好ましい。二次電池は、例えば、リチウム二次電池、および、電気二重層キャパシタなどであってよい。二次電池を用いた場合には、検出部11内に位置する二次電池に対して外部から電力を供給し、これによって二次電池の充電を行うことが可能である。そのため、二次電池によれば一次電池を用いた場合のような電池の交換が不要であるから、生体信号センサー10の利便性を高めることが可能である。
【0068】
二次電池に対する電力の供給方式は、接触給電方式でもよいし、非接触給電方式でもよい。接触給電方式を用いる場合には、例えば、USB(universal serial bus)ケーブルを用いて二次電池に電力を供給することができる。非接触給電方式は、電磁誘導方式、電解結合方式、および、磁界共鳴方式のいずれかであってよい。なお、生体信号センサー10の防水性を高める観点では、生体信号センサー10が外部端子を外表面に有しないことが好ましいから、電力の供給方式には、非接触給電方式を採用することが好ましい。
【0069】
検出部11は、制御部を備えている。制御部は、例えばCPU(central processing unit)を含んでいる。制御部は、生体信号センサー10の駆動を制御する。制御部は、検出部11に入力された信号に対して各種の処理を行う。
【0070】
検出部11は、表示部を備えてもよい。検出部11が表示部を備える場合には、表示部は、検出部のうち、電極装置12に対向する面とは反対側の面に位置することが好ましい。表示部は、例えば、検出部11によって検出された生体信号に関する情報を表示する。表示部は、例えば液晶表示パネルなどであってよい。
【0071】
検出部11は、通信部を備えてもよい。通信部は、検出部11によって検出された生体信号に関するデータを外部機器に送信する。通信部は、有線で送信する機構でもよいし、無線で送信する機構でもよい。通信部が無線で送信する機構である場合には、生体信号センサーを外部機器に有線で接続する必要がないため、被検者の行動が制約されない。そのため、例えば、被検者から得られた生体信号をリアルタイムで外部機器に送信することが可能である。外部機器は、例えば、パーソナルコンピューターおよび携帯電話機などであってよい。
【0072】
なお、生体信号センサー10の防水性を高める観点では、生体信号センサー10が外部端子を外表面に有しないことが好ましいから、通信部は無線で送信する機構であることが好ましい。通信部は、例えば、Bluetooth(登録商標)に対応した無線通信モジュールICであってよい。
【0073】
[電極装置]
電極装置12は、皮膚の電気抵抗の値を測定する測定部を備えることが好ましい。測定部によって測定された電気抵抗の値は、針状部A11,B11が穿刺された穿刺量の指標である。測定部は、皮膚のなかで、皮膚に穿刺された2本の針状部A11,B11間に位置する部分における電気抵抗の値を測定する。測定部によって測定される電気抵抗の値では、例えば、2本の針状部A11,B11が皮膚に接しているときの測定値に対して、2本の針状部A11,B11が針に穿刺されているときの測定値が、1桁以上小さい。従って、電気抵抗値が一桁以上小さいため、脳波などの超微弱な数mV以下の電気信号を取りだすことに有利に働く。
【0074】
電極装置12を被検者の皮膚に穿刺する際には、導電性ヒドロゲルを用いてもよい。この場合には、被検者の皮膚のうち、針状部A11,B11が穿刺される部分に導電性ヒドロゲルを塗布する。次いで、皮膚のなかで、導電性ヒドロゲルが塗布された部分に対して電極装置12を押圧する。導電性ヒドロゲルは皮膚を腫脹させることによって、皮膚と電極装置との間における電気信号の伝送を生じやすくする。
【0075】
[実施例]
[実施例1]
上述した生体信号センサーのうち、第1針状部材および第2針状部材を除く部分を準備した。
【0076】
次いで、以下に記載の方法によって、第1針状部材および第2針状部材の原版を作成した。なお、第1針状部材および第2針状部材として、同一の形状を有する針状部材を準備するため、針状部材用の原版を1つのみ作成した。
【0077】
原版を作成するための材料として、2mmの厚さを有したカーボン板を準備した。カーボン板を加工するために、0.01mmのボール案件を有した二枚刃のボールエンドミルを準備し、XYZ軸を有するNC制御フライス盤にボールエンドミルを取り付けた。そして、ボールエンドミルを用いてカーボン板を切削することによって、円錐状の針状部を形成した。この際に、針状部の基端における直径を280μmに設定し、針状部のピッチを900μmに設定し、針状部の長さを450μmに設定した。また、カーボン板のうち、針状体が位置しない部分を450μmの厚さで削ることによって、加工後のカーボン板において、針状部の先端が最も高くなるように原版を作成した。
【0078】
作成した原版を走査型電子顕微鏡で観察したところ、原版は、1mmの厚さを有する支持部と、支持部状に位置する6本の針状部を有することが認められた。また、各針状部の先端における直径が280μmであり、各針状部の長さが445μmであり、各針状部の先端角が35°であることが認められた。
【0079】
次いで、複製版を形成するための材料として、ポリジメチルシロキサン樹脂(PDMS)(信越化学工業(株)、KE1300)を準備した。原版を用いた熱転写成形により、複製版を作成した。医療用のポリカーボネート(PC)樹脂ペレット(三菱ケミカル(株)、ユーピロン)(ユーピロンは登録商標)を準備した。そして、複製版にPC樹脂ペレットを配置し、熱転写成形を行うことによって、針状部と支持部とが一体成形された樹脂製の本体部を得た。
【0080】
スパッタ装置を用いて、本体部の外表面における全体に100nmの厚さを有する白金薄膜を形成した。これにより、導電性を有した針状部材を得た。得られた針状部材を第1配線部材と第2配線部材とに1つずつ接続することによって、生体信号センサーを得た。この際に、各配線部材を導電層である白金薄膜の第1部分および第2部分に接続した。
【0081】
生体信号センサーを被検者の額に装着し、各針状部材を額に押圧することによって、各針状部材の針状部を額に穿刺した。そして、額に針状部を穿刺した状態で、被検者の脳波を測定した。被検者の安静時、すなわち被検者が座っているときと、12km/hの速度でジョギングをしたときとの各々において、5分間にわたって被検者の脳波を測定した。生体信号センサーによって測定した脳波には、ノイズが含まれないことが認められた。
【0082】
[比較例1]
実施例1において、針状部を有しない原版を作成した以外は、実施例1と同様の方法によって、比較例1の生体信号センサーを得た。すなわち、比較例1では、実施例1が備える針状部材の支持部と同様の構造を有した電極部材を作成した。
【0083】
そして、比較例1の生体信号センサーを用いて、かつ、実施例1と同様の条件で被検者の脳波を測定した。被検者の安静時に測定した脳波にはノイズが含まれないことが認められた。一方で、被検者のジョギング時には測定した脳波に頻繁にノイズが含まれることが認められた。
【0084】
このように、実施例1の生体信号センサーによれば、比較例1の生体信号センサーに比べて、測定した脳波にノイズが含まれにくいことが認められた。
【0085】
[比較例2]
ダイシング加工装置によって、WC‐Co系超硬合金(日本タングステン(株)、FG1)を研削加工して、実施例1が備える針状部と支持部とが一体成形された金属製の本体部を得た。次いで、実施例1と同様の方法によって、比較例2の生体信号センサーを得た。すなわち、比較例2では、実施例1の生体信号センサーと形状は同じであるが、本体部が超硬合金製であるため、樹脂製である実施例1の本体部と比べて硬い。
【0086】
そして、比較例2の生体信号センサーを用いて、かつ、実施例1と同様の条件で被検者の脳波を測定した。被検者の安静時に測定した脳波にはノイズが含まれないことが認められた。一方で、被検者のジョギング時には測定した脳波に頻繁にノイズが含まれることが認められた。
【0087】
以上説明したように、センサー用電極装置の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
【0088】
(1)生体に穿刺される第1針状部材22Aの第1本体部22A1が樹脂によって形成されるから、第1支持部A12が可撓性を有する。そのため、生体表面に対する第1支持部A12の追従性を高めることが可能である。
【0089】
(2)検出部11に電気的に接続される第1配線部材21Aが、第1導電層22A2の第1部分と第2部分との両方に接続されるから、第1配線部材21Aと第1針状部材22Aとの接触面積を拡張することが可能である。これにより、第1配線部材21Aと第1針状部材22Aとの接触面積がより小さい場合に比べて、電極装置12によって生体信号がより取り出されやすくなる。
【0090】
(3)裏面A12Rの全体において第1針状部A11の密度が均一である場合に比べて、生体に穿刺される第1針状部A11の数を確保しつつ、第1針状部A11を支持する第1支持部A12の可撓性を高めることが可能である。
【0091】
(4)側面A12Sにおける第1配線部材21Aとの接続を確保しつつ、第1部分A12Aの厚さが第2部分A12Bの厚さよりも薄いことによって、第1針状部材22Aの可撓性を確保することも可能である。
【0092】
(5)第1部分A12Aの厚さT1によって、第1針状部材22Aの可撓性を確保することが可能であり、かつ、第2部分A12Bの厚さT2によって、第1針状部材22Aが第1配線部材21Aに接続する面積を確保することが可能である。
【0093】
(6)互いに隣り合う第1針状部A11のピッチPがより短い場合に比べて、第1針状部材22Aの可撓性を高めることが可能である。
【0094】
(7)生体に穿刺される第2針状部材22Bの第2本体部が樹脂によって形成されるから、第2支持部が可撓性を有する。そのため、生体表面に対する第2支持部の追従性を高めることが可能である。
【0095】
(8)検出部11に電気的に接続される第2配線部材21Bが、第2導電層の第1部分と第2部分との両方に接続されるから、第2配線部材21Bと第2針状部材22Bとの接触面積を拡張することが可能である。これにより、第2配線部材21Bと第2針状部材22Bとの接触面積がより小さい場合に比べて、電極装置12によって生体信号がより取り出されやすくなる。
【0096】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[針状部材]
・電極装置12が備える2つの針状部材22A,22Bのうち、一方の針状部材のみが、樹脂製の本体部と本体部を覆う導電層とを備える構成でもよい。そして、2つの配線部材21A,21Bのうち、当該針状部材に接続される配線部材のみが、導電層の第1部分と第2部分とに接続されてもよい。この場合であっても、一方の針状部材においては、上述した(1)および(2)の効果を得ることはできる。
【0097】
[用途]
・本開示のセンサー用電極装置は、医療用装置の利便性を高めるために用いられることが可能である。センサー用電極装置が適用される対象は、例えば、ヘルスケアサポート機器、ゲーム機器、音楽機器、ペットコミュニケーションツール、車両の運転手の居眠り防止機器などであることが可能である。
【符号の説明】
【0098】
10…生体信号センサー
11…検出部
12…電極装置
21A…第1配線部材
21B…第2配線部材
22A…第1針状部材
22B…第2針状部材
21A1…第1本体部
21A2…第1導電層
A11…第1針状部
A12…第1支持部
A12F…表面
A12R…裏面
A12S…側面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7