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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072819
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】病原体検査用プルフード
(51)【国際特許分類】
   B01L 1/00 20060101AFI20220510BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61G 10/02 20060101ALI20220510BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B01L1/00 C
C12M1/00 K
A61G10/02 M
F24F7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182469
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】599055382
【氏名又は名称】学校法人東邦大学
(71)【出願人】
【識別番号】000162940
【氏名又は名称】興研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】舘田 一博
(72)【発明者】
【氏名】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 卓広
【テーマコード(参考)】
3L058
4B029
4C341
4G057
【Fターム(参考)】
3L058BF03
4B029AA19
4B029BB01
4C341KL04
4G057AA08
(57)【要約】
【課題】洗浄作業のような労力を要せずに次の検査を容易に精度よく行うことができる病原体検査用プルフードを提供する。
【解決手段】作業室11を内部に有する筐体本体12と、作業者が作業室11内に手を挿入して作業室11内の操作対象を外部から操作するための操作用開口部24aと、作業室11の気体を浄化して外部に排出可能な排気ファン13と、透明部材25cにて形成されたのぞき窓25aと、筐体本体12とは別体に設けられて作業室11の底に配設可能であると共に作業室11に対して出入れ可能に配置された底板14と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間から隔離され、作業者が作業を行うための作業空間としての作業室を内部に有する筐体本体と、
該筐体本体の一部に開口形成された、前記作業者が前記作業室内に手を挿入して前記作業室内の操作対象を外部から操作するための操作用開口部と、
前記作業室の気体を浄化して外部に排出可能な排気ファンと、
前記筐体本体の少なくとも一部に設けられた、透明部材にて形成されて外部から前記作業室内を視認可能とするのぞき窓と、
前記筐体本体とは別体に設けられて前記作業室の底に配設可能であると共に前記作業室に対して出入れ可能に配置された交換可能な底板と、
を備えたことを特徴とする病原体検査用プルフード。
【請求項2】
前記筐体本体の正面側には、前記筐体本体の外部から内部に対して前記底板を出し入れ可能に形成されたスリットを設けたことを特徴とする請求項1に記載の病原体検査用プルフード。
【請求項3】
前記底板の一部には、前記操作対象を内部に収容可能な収容部を少なくとも一つ備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の病原体検査用プルフード。
【請求項4】
前記収容部は、前記底板の一部を筒状に折り曲げて形成されていることを特徴とする請求項3に記載の病原体検査用プルフード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の検査や試験等において用いられる病原体検査用プルフードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より外部空間に飛散させたくない物質(以下、汚染物質と称す。)を含有する試料を検査する場合、外部空間から隔離して局所的に排気可能なボックス内で試料に各種の操作が施されている。
【0003】
例えば下記特許文献1では、試料保管や作業時に他の試料へ飛散させないように二重のバリヤを設けて換気する清浄キャビネットが提案されている。下記特許文献2では、開放型の安全キャビネットや局所排気装置の作業室に設置して用いられる暴露防止箱等が提案されている。これらのキャビネットでは、汚染物質が飛散する可能性のある試料を取扱う際、汚染物質が外部に放出されることを防止することが可能である。
【0004】
下記特許文献3では、クリーンベンチ内にボックス型のインキュベータを収容する収納室を設け、スライドレールによりインキュベータを作業室内に移動可能にしたクリーンシステムが提案されている。
【0005】
下記特許文献4では、小型でクリーンな環境を保ったまま移動でき、置場に制限を受けないクリーンボックスが提案されている。これらの装置でも外部空間から隔離するためのボックスが有効に活用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1-288342号公報
【特許文献2】特開2018-187107号公報
【特許文献3】特開2013-204910号公報
【特許文献4】特開2000-126619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら外部空間から隔離して局所的に排気可能な従来のボックスでは、試料に各種操作を施す際、飛散した汚染物質が内面に付着して汚染されることがあった。特に、底面は、雰囲気中に飛散した汚染物質の微粒子が落下したり汚染物質を含有する液滴が落下したりすることで、汚染物質により汚染され易かった。
【0008】
そのため、汚染された場合、或いは汚染の可能性が高い場合には、次の試料の検査前に、ボックスの内面の洗浄作業、特に底面の洗浄作業が頻繁に必要であった。しかも汚染物質が作業者にとって有害な物質の場合、洗浄作業により作業者が汚染物質に接触する二次汚染の危険を高度に排除するために、洗浄作業には過大な労力を要していた。
【0009】
そこで本発明では、洗浄作業のような労力を要せずに次の検査を容易に精度よく行うことができる病原体検査用プルフードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の病原体検査用プルフードは、外部空間から隔離され、作業者が作業を行うための作業空間としての作業室を内部に有する筐体本体と、筐体本体の一部に開口形成された、作業者が作業室内に手を挿入して作業室内の操作対象を外部から操作するための操作用開口部と、作業室の気体を浄化して外部に排出可能な排気ファンと、筐体本体の少なくとも一部に設けられた、透明部材にて形成されて外部から作業室内を視認可能とするのぞき窓と、筐体本体とは別体に設けられて作業室の底に配設可能であると共に作業室に対して出入れ可能に配置された交換可能な底板と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
本発明の病原体検査用プルフードは、筐体本体の正面側には、前記筐体本体の外部から内部に対して前記底板を出し入れ可能に形成されたスリットを設けていてもよい。
【0012】
本発明の病原体検査用プルフードにおいては、底板の一部には、操作対象を内部に収容可能な収容部を少なくとも一つ備えていてもよい。
【0013】
また収容部は、底板の一部を筒状に折り曲げて形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の病原体検査用プルフードによれば、試料の検査を行う際、作業者が操作用開口部から手を挿入し、のぞき窓から適宜視認しつつ外部空間から隔離された筐体本体の作業室内で操作対象を操作して行うことができる。その際、排気ファンが作業室内の気体を浄化して外部に排出可能であるので、汚染物質を外部空間に放出することなく、作業室内を陰圧に保つことができる。そのため操作対象から汚染物質が飛散しても外部空間に放出されることはない。
【0015】
そして底板が筐体本体とは別体に、かつ交換可能に設けられて作業室の底に出入れ可能に配置されているので、操作対象の操作時に汚染物質が作業室の底に落下したり、作業室内に飛散した汚染物質の飛沫が作業室の底に落下することで汚染されても、底板を筐体本体から取出して新たな底板に交換して配置することで、作業室の底を容易に清浄に保つことができる。
【0016】
そのため作業室の底や内面の洗浄作業を実施するような労力を要せずに、清浄な作業室内で次の検査を行うことができ、作業室内に存在する汚染物質により次の検査の試料が二次汚染されることもなく、高精度の検査を容易に行うことができる。
【0017】
従って洗浄作業のような労力を要せずに次の検査を精度よく行うことができる病原体検査用プルフードを提供することが可能である。
【0018】
本発明の病原体検査用プルフードにおいて、底板の一部に操作対象を内部に収容可能な収容部を少なくとも一つ備えていれば、操作対象が収容される収容部を底板とともに交換可能に設けることができる。そのため作業室内で操作対象を操作する際、必要に応じて操作対象を収容部に収容する操作を行うことができ、この収容室も清浄に保つことができるため、操作対象を収容部に収容する操作を行っても、試料が二次汚染されることがない。
【0019】
また、本発明の病原体検査用プルフードにおいて、収容部が底板の一部を筒状に折り曲げて形成されていれば、平坦な形状の底板に必要な時点で屈曲させて立体形状の収容部を形成することができるため、保管時や流通時等にはコンパクト化できるとともに使用時には簡易な変形で収容部を形成できて容易に頻繁に交換することができ、しかも使用時には作業室の底と収容部とを一体に取扱うことができるため使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る病原体検査用プルフードの斜視図である。
図2】(a)、(b)は本発明の実施形態に係る病原体検査用プルフードの正面図及び側面図である。
図3】(a)~(c)は本発明の実施形態に係る筐体本体を形成するための紙材料を示し、筐体本体を組み立てる前の裏面側から見た展開及び分離状態を示している。
図4】本発明の実施形態に係る底板の斜視図である。
図5】(a)~(c)は本発明の実施形態に係る底板の平面図、正面図、側面図である。
図6】本発明の実施形態に係る底板を形成するための紙材料を示し、収容部を組み立てる前の展開状態を示している。
図7】本発明の実施形態に係る病原体検査用プルフードの前後方向の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る病原体検査用プルフードについて図を用いて詳細に説明する。
【0022】
本実施形態の病原体検査用プルフードとは、作業者が手作業で試料に対して各種の処理を施す際、外部空間から隔離して操作対象を操作するための作業空間が設けられたボックスである。
【0023】
操作対象は、特に制限されるものではなく、検査において作業者が手作業で試料に対する各種の処理を施すために操作される器具等である。試料に対する処理も特に制限されるものではなく、例えば試料の移送、収容、保持、採取、混合、溶解、分離、移送、培養、分析等など、検査時に作業者が行う各種の単位操作などである。
【0024】
このような病原体検査用プルフードは、外部空間に飛散することが望ましくない汚染物質を含有する試料や試薬などを用いた検査において、汚染物質が外部空間へ飛散することを防止するために使用されるのが好適である。本実施形態では、いわゆる新型コロナウイルス等の感染可能性を検査するためのPCR(Polymerase Chain Reaction)検査において作業者が操作対象を操作するために使用する検査用ボックスの例を用いて説明する。ただし、この検査用ボックスは、いわゆる新型コロナウイルス以外のウイルス感染可能性を検査するためのPCR検査や、PCR検査以外のいかなる検査や各種の試験や各種の試験等において、検査対象や試験対象から外部空間に汚染物質が飛散したり漏出したりすることを防止するために用いられるものであってもよい。
【0025】
本実施形態の病原体検査用プルフード10は、図1に示すように、作業者が手作業で検査作業を行うための作業空間としての作業室11が外部空間から隔離して内部に設けられた筐体本体12と、作業室11の気体を浄化して外部に排出可能な排気ファン13と、筐体本体12とは別体に設けられて作業室11の底に配設可能であると共に作業室11に対して出入れ可能に配置された底板14と、を備えている。
【0026】
筐体本体12は、検査や試験を行う期間に検査や試験を安全に行うための形態の維持を図れる剛性と、検査や試験において筐体本体12の内部で飛散した気体や漏出した液体が外部に出ることを抑止できる各種の材質で形成される。この実施の形態においては、病原体検査用プルフード10を1回ないし数回の検査や試験で使い捨てとするため、コストの低い板状の厚紙、例えば段ボール等によって筐体本体12を形成する。ただし、上述の目的を達成できるものであれば、合成樹脂、天然樹脂、木材等、どのような材質で筐体本体12が形成されていてもよい。
【0027】
筐体本体12は、図1乃至図3に示すように、四角形形状の下面部21と、下面部21の両側縁に互いに平行に設けられた一対の側面部22と、作業者と対向する正面側に設けられて一対の側面部22間に配置された正面部23と、下面部21の後縁に設けられて一対の側面部22間に配置された背面部26と、一対の側面部22、背面部26及び正面部23の上縁に設けられた上面部27と、を有している。
【0028】
正面部23は、下面部21側の正面下部24と、正面下部24の上端から上面部27まで平面形状に傾斜して設けられた正面上部25と、を有している。
【0029】
正面上部25には、作業者が外部から作業室11内を視認可能とするのぞき窓25aが設けられている。のぞき窓25aは正面上部25に形成された四角形状の窓開口部25bと、透明フィルム等により形成されて窓開口部25bの周囲に貼付けられて窓開口部25bを閉塞する透明部材25cと、を備えている。図3に示すように、透明部材25cの周縁部と、窓開口部25bの裏面側の周縁部とは貼付領域37を形成し、それぞれ糊等によって固着されている。
【0030】
なお、この実施の形態の透明部材25cは、透明フィルム以外の材質、例えば透明ガラス板や透明アクリル板等の部材等、内部と外部の空間を遮蔽して外部を内部から視認可能にするものならば、どのようなもので作られていてもよい。また、透明部材25cの周縁部と、窓開口部25bの表面側の周縁部とが貼付領域37を形成し、それぞれ糊等によって固着されていてもよい。さらに、透明部材25cは、筐体本体12に対して装脱自在に形成されて、筐体本体12から離脱させて洗浄して再度筐体本体12に装着されて繰り返し使用できるように構成してもよい。
【0031】
図1に示すように、正面下部24には、作業者が作業室11内に手を挿入して作業室11内の操作対象を外部から操作するための操作用開口部24aが左右一対開口形成されている。本実施形態では、操作用開口部24aは下面部21に隣接して設けられ、各操作用開口部24aの下縁が下面部21により形成されている。
【0032】
正面下部24と下面部21との間には、底板14を出し入れ可能な底板用スリット28が形成されている。
【0033】
底板用スリット28は、底板14の左右幅(図2に示す左右方向の大きさ)以上の左右長さを有している。本実施形態では正面下部24と下面部21とが離間して配置されることで底板用スリット28が正面下部24及び下面部21の全幅に形成されている。
【0034】
また底板用スリット28は、底板14の厚み以上の上下幅(図2に示す上下方向大きさ)を有している。本実施形態では底板14を抜き出す際、底板14の上面と底板用スリット28の上縁とが接触しない程度のクリアランスが設けられている。底板用スリット28をこのような左右長さと上下幅とすることで、筐体本体12の内部で飛散した気体や漏出した液体が筐体本体12の外部に飛散したり漏出したりすることを防ぎつつ、底板14の筐体本体12の内部に対するスムーズな出し入れを可能としている。
【0035】
上述のとおり、この実施の形態において、筐体本体12はダンボール等の板状の紙材料により形成されている。
【0036】
本実施形態では、図3(a)~(c)に示すような互いに形状の異なる複数の板状の紙材料を折り曲げて立体形状に組み立てることで筐体本体12が形成されている。
【0037】
詳細には、下面部21と一対の側面部22と背面部26とが平坦に連結した第1の板材31と、上面部27と正面上部25とが平坦に連結した第2の板材32と、正面下部24を有する第3の板材33と、を用いる。
【0038】
第1の板材31は、背面部26の両側縁に折り筋34aを介して側面部22が連結され、背面部26の下縁に折り筋34bを介して下面部21が連結されている。各側面部22の上縁の全長には組み立てた際に内側に配置される折り曲げ片35aが設けられ、各側面部22の傾斜縁の全長には組み立てた際に内側に配置される折り曲げ片35bが設けられている。
【0039】
また各側面部22の上縁の中間位置には上面部27と連結される組立スリット36aが設けられ、傾斜縁の中間位置には正面上部25と連結される組立スリット36bが設けられ、各側面部22の下端側には下面部21と連結される組立スリット36cが設けられている。
【0040】
下面部21の左右の側縁の全長には、組み立てた際に内側に配置される折り曲げ片35cが設けられ、この折り曲げ片35cを介して、各側面部22の組立スリット36cに内側から差し込まれる底面ツメ部21pが左右に設けられている。
【0041】
第2の板材32には上面部27と正面上部25とが折り筋34cを介して連結して設けられている。
【0042】
上面部27には排気ファン13を装着するための貫通孔27aが設けられている。また上面部27の後縁の全長には、組み立てた際に内側に配置される折り曲げ片35dが設けられている。さらに上面部27の左右の側縁には、左右の側面部22における上縁の組立スリット36aに外側から差し込まれる上面ツメ部27pが設けられている。
【0043】
正面上部25には、のぞき窓25aを形成するための四角形形状の窓開口部25bが設けられている。
【0044】
正面上部25における左右の側縁の中間位置には、左右の側面部22における傾斜縁の組立スリット36bに外側から差し込まれる正面上ツメ部25pが設けられている。
【0045】
また正面上部25の下縁の全長には、組み立てたときに正面下部24の外側に重ねて配置される正面折り曲げ片35eが設けられている。正面折り曲げ片35eの操作用開口部24aと重なる位置には、対応した形状を有する切欠き35fが設けられている。
【0046】
さらに正面折り曲げ片35eの上下方向中間位置と下端(図中の上端)には、それぞれ正面下部24に外側から連結するための正面下ツメ部24pが互いに反対向に突出するように2個設けられている。一方の正面下ツメ部24pは正面折り曲げ片35eの中間位置に弧状の切込みを設けることで形成されている。他方の正面下ツメ部24pは正面折り曲げ片35eの下端に下方に突出して形成されている。
【0047】
第3の板材33は、正面下部24を有し、正面下部24の左右の側縁の全長には、組み立てた際に内側に配置される折り曲げ片35gが設けられている。また正面下部24の上縁の全長には、組み立てた際に内側に配置される折り曲げ片35hが設けられている。
【0048】
このような第1乃至第3の板材31,32,33を折り曲げて筐体本体12を組み立てるには、予め図3(b)に示す第2の板材32の正面上部25に透明フィルム等の透明部材25cを貼付けて窓開口部25bを透明部材25cで塞いでおく。例えば、図3(b)に示すように、正面上部25の窓開口部25bの裏面側の全周囲と透明部材25cの表面側の全周囲とに設けられた貼付領域37同士を貼り付ける。
【0049】
まず第1の板材31の下面部21、一対の側面部22、及び背面部26をそれぞれ折り筋34a,34bで屈曲させ、下面部21の側縁の折り曲げ片35cを屈曲させる。側縁の一対の折り曲げ片35cを一対の側面部22の内側に配置し、各底面ツメ部21pを側面部22の下端側の組立スリット36cにそれぞれ内側から差し込む。これにより第1の板材31を立体形状に成形する。
【0050】
さらに第3の板材33における正面下部24の左右の側縁と上縁とを屈曲させて折り曲げ片35g,35hを屈曲させる。
【0051】
正面下部24の両側縁における折り曲げ片35gの外側面と、第1の板材31における一対の側面部22の正面側端部付近の内側面とに設けられた貼付領域37同士を貼り付ける。このとき、正面下部24と下面部21との間の全長に底板用スリット28を形成する。
【0052】
第2の板材32の上面部27における後縁の折り曲げ片35dを屈曲させ、上面部27と正面上部25とを折り筋34cで屈曲させるとともに正面上部25と正面折り曲げ片35eとを屈曲させて第2の板材32を成形する。
【0053】
上面部27の後縁の折り曲げ片35dの内側面全体に設けられた貼付領域37と背面部26の背面部26の上縁側に設けられた貼付領域37とを貼り付ける。
【0054】
上面部27における左右の側縁の上面ツメ部27pを屈曲させて、各側面部22の上縁の組立スリット36aに外側から差し込む。
【0055】
この上面部27に排気ファン13を装着する。
【0056】
また正面上部25における左右の側縁の正面上ツメ部25pを屈曲させて、各側面部22の傾斜縁の組立スリット36bに外側から差し込む。
【0057】
さらに正面折り曲げ片35eを正面下部24の外側に配置し、互いに反対向に突出するように設けられた正面下ツメ部24pを、正面下部24に上下に設けられた組立スリット36dに外側から差し込む。
【0058】
これにより筐体本体12を組み立てることができる。
【0059】
排気ファン13は、上面部27の貫通孔27aに装着されている。詳細な図示は省略しているが、上面部27の上部に配置された吸引駆動部13aと、上面部27の下部に配置されて吸引駆動部13aに着脱可能に連結されたフィルタ部13bとを備えている。
【0060】
この排気ファン13は、吸引駆動部13aとフィルタ部13bとを連結する際、上面部27の貫通孔27aの周囲を吸引駆動部13aとフィルタ部13bとの間で挟持することで装着されている。
【0061】
吸引駆動部13aは、電動モータ(図示せず)と、電動モータ(図示せず)に取り付けられたファン(図示せず)と乾電池等の電源(図示せず)とを備える。吸引駆動部13aは、電源(図示せず)から供給された電力によって電動モータ(図示せず)を駆動させてファン(図示せず)を回転させ、一方側(ここでは筐体本体12の内部側)から他方側(筐体本体12の外部側)へと強制的に空気を流動させる。
【0062】
フィルタ部13bには、作業室11内の気体中に含有される可能性のある汚染物質を捕捉可能なフィルタ(図示せず)が装着されており、フィルタ部13bを透過させて作業室11内の気体を外部に排出することで、気体を浄化して外部に排出することが可能となっている。
【0063】
底板14は、筐体本体12と同様に、検査や試験を行う期間に検査や試験を安全に行うための形態の維持を図れる剛性と、検査や試験において筐体本体12の内部で飛散した気体や漏出した液体が外部に出ることを抑止できる各種の材質で形成される。この実施の形態においては、1回ないし数回の検査や試験で使い捨てとするため、筐体本体12と同じ材質であるコストの低い板状の厚紙、例えば段ボール等によって底板14を形成する。ただし、上述の目的を達成できるものであれば、合成樹脂、天然樹脂、木材等、どのような材質で底板14が形成されていてもよい。
【0064】
底板14は、図4に示すように、筐体本体12の下面部21に沿って配置される平坦部41と、筐体本体12の作業室11の背面部26側の一部に、平坦部41と一体に設けられ、操作対象を内部に収容可能な収容部42と、を備えている。
【0065】
底板14は、作業室11内で作業者が操作対象を操作するための作業領域の以上の大きさを有し、本実施形態では筐体本体12の下面部21の左右方向の幅寸法と略同等の左右幅を有し、下面部21の奥行き寸法より長い前後長を有している。
【0066】
平坦部41は、収容部42及びその左右の隣接位置を除く全体に設けられていて、筐体本体12の下面部21上に載置されている。
【0067】
収容部42は、左右に隣接して2個設けられており、それぞれ前後方向に延びる断面四角形の角筒形状を有する。各収容部42は、平坦部41と一体に連続した底壁43と、底壁43と対向する上壁44と、底壁43と上壁44との間に立設された側壁45とを有する。隣接する収容部42間は共通の側壁45により仕切られている。また前後方向(図5に示す上側方向が前方向、下側方向が後方向にあたる。)の端部は開口している。ただし、底板14が筐体本体12に完全に収容された状態で、収容部42の前方側の開口部は筐体本体12の背面部26に当接し、開口部が背面部26によって閉塞された状態となる(図1参照)。
【0068】
この底板14を筐体本体12に装着した状態では、図1及び図2(a)(b)に示すように、平坦部41が筐体本体12から正面側に突出した状態で配置される。突出部分は後述するように底板14を筐体本体12から抜出す際に作業者(図示せず)が把持し易くしている。なお、底板14を把持容易とするための構成として、上記構成に替えて、底板14の筐体本体12に装着した際に正面側にくる部分の一部のみを正面側に伸延させた突起状に形成したり、筐体本体12の一部分に作業者(図示せず)が底板14を把持しやすくするための孔部や凹部を設けるような構成としたり、様々な変形例を用いてもよい。
【0069】
また、2つの収容部42の左右方向位置は、筐体本体12における操作用開口部24aの左右方向位置に対応するように設けられ、2つの収容部42の左右幅は、操作用開口部24aの下端における左右方向の幅以下に設けられている。
【0070】
そのため底板14を筐体本体12に装着した状態では、図2(a)に示すように、正面視で2つの収容部42は筐体本体12の操作用開口部24aに配置される。これにより筐体本体12の底板用スリット28の上下幅より大きい収容部42を備えた底板14を筐体本体12の作業室11に出し入れし易くしている。
【0071】
底板14は、厚紙等の紙材料により形成されている。
【0072】
本実施形態では、図6に展開して示すような1枚の厚紙から底板14が形成されており、一部を折り曲げて組み立てることで立体形状の2つの収容部42が形成されている。
【0073】
詳細には図6に示すように、四角形の厚紙の一方の隅側に切込み47や切除領域48を設けることで、2つの収容部42を形成するための収容部42の形成領域が設けられている。
【0074】
収容部42の形成領域は、平坦部41から仕切りなく連続して2つの収容部42に用いる底壁43と、底壁43の左右両側に折り筋49を介して設けられた側壁45と、各側壁45と折り筋49を介して設けられた2つの上壁44と、各上壁44の一部と折り筋49を介して設けられた部分側壁45aと、各上壁44の残部と仕切りなく連続して設けられて互いに隣接する収容部42の上壁44と連結される略三角形形状の連結片51と、を備えている。
【0075】
2つの上壁44の一部と折り筋49を介して設けられた2つの部分側壁45aは、互いに反対向きに形成されており、2つの収容部42を成形した状態では、2つの部分側壁45a同士が前後方向に隣接して配置されることで、2つの収容部42間を仕切る共通の側壁45を構成するように設けられている。
【0076】
2つの部分側壁45aにおいては、それぞれの折り筋49の和が各収容部42の前後長と略等しく設けられるとともに、2つの収容部42を成形した状態で前後に隣接する側の端部が下端側程前後方向に突出した形状に形成されている。
【0077】
そのため2つの収容部42を成形した状態で、一方の部分側壁45aの端部を他方の部分側壁45aの端部とを係止することができ、部分側壁45a同士が前後方向に連結した一連の側壁45を構成することが可能である。
【0078】
また各上壁44における部分側壁45aが設けられていない残部に仕切りなく設けられた略三角形形状の連結片51には、それぞれ先端にフック部52が設けられている。各連結片51のフック部52は、2つの収容部42を成形した状態で、互いに隣接する収容部42の上壁44に形成された連結スリット53に係止可能であり、互いに隣接する収容部42の上壁44同士を連結することができる。
【0079】
このような病原体検査用プルフード10を使用するには、図7に示すように、予め排気ファン13を装着した状態で筐体本体12を組み立てるとともに、収容部42を組み立てた状態で底板14を準備しておく。底板14は筐体本体12の底板用スリット28及び操作用開口部24aから挿入して、筐体本体12の下面部21上に配置しておく。
【0080】
また排気ファン13を駆動させた状態にすることで、作業室11内の空気を常時排気して、作業室11内を陰圧に保つ。
【0081】
例えば予め採取具等で検体を採取して適宜溶液中に保存した試料を、クロマトグラフのような分析器具を用いて分析することで、所定の汚染物質の有無を検査する場合、まず試料は密封容器61に密封した状態で操作用開口部24aから作業室11内に搬入する。また採取具62及び分析器具63も操作用開口部24aから作業室11内に搬入する。
【0082】
ここでは密封容器61、採取具62、分析器具63は何れも作業者が操作する操作対象である。
【0083】
また分析器具63の分析部63aの少なくとも一部には、常時開放された状態で配置される開放部64が設けられている。クロマトグラフのような分析器具63の場合、試料を供給する部位などが開放部64となっている。
【0084】
作業者が、2つの操作用開口部24aから保護手袋等で防護した状態で手を作業室11内に挿入し、のぞき窓25aから視認しつつ、密封容器61を開口させて、採取具62を用いて試料を採取する。この試料を分析器具63の開放部64に供給することで、分析部63aおける分析が開始される。
【0085】
分析期間中には分析器具63を作業室11内に静置することが必要であり、このとき分析器具63を筒状の収容部42内に収容する。分析器具63全てを収容部42内に収容してもよいが、本実施形態では、収容部42よりも分析器具63が長いため、仮想線のように分析器具63の開放部64を筒状の収容部42内に収容する。
【0086】
排気ファン13が分析期間中にも駆動されていて、作業室11内の空気を浄化しつつ排気して作業室11内が陰圧に保たれている。そのため作業室11内には操作用開口部24aから外部空間の空気が流入し、作業室11内を経由して排気ファン13から排出されることで、作業室11内には気流が生じている。
【0087】
分析器具63の開放部64は、常時、作業室11内の雰囲気中に露出しているため、作業室11内に分析期間中に静置すると、作業室11内の気流が開放部64に直接接触して、試料の含有成分や移動相の成分が過剰に気化したり、汚染物質が過剰に飛散したりするなど、分析条件や検査環境が変動して分析精度が低下する。
【0088】
そのため分析器具63の少なくとも開放部64を収容部42に収容することで、作業室11内の気流が分析器具63の開放部64に直接接触することを防止して、安定して精度よく検査を実施することができる。なお、この実施の形態においては、底板14を筐体本体12の内部に一杯まで収容したときに収容部42の前側の開口部が筐体本体12の背面部26に当接して閉塞されるので、収容部42の空気の流動が抑止されて、気体状や微細粒子状の汚染物質が筐体本体12に飛散することを抑止できる。
【0089】
以上のような本実施形態の病原体検査用プルフード10によれば、作業者が操作用開口部24aから手を挿入してのぞき窓25aから適宜視認しつつ、外部空間から隔離された筐体本体12の作業室11内で、操作対象を操作して試料の検査を行う際、排気ファン13が作業室11内の気体を浄化して外部に排出可能であるので、汚染物質を外部空間に放出することなく、作業室11内を陰圧に保つことができる。そのため操作対象から汚染物質が作業室11内に飛散しても外部空間に放出されることはない。
【0090】
そして底板14が筐体本体12とは別体に設けられて作業室11の底に出入れ可能に配置されているので、操作対象の操作時に汚染物質が作業室11の底に落下したり、作業室11内に飛散した汚染物質の飛沫が作業室11の底に落下することで汚染されても、底板14を筐体本体12から取出して廃棄し、新たな底板14に交換して、交換した底板14を筐体本体12の内部に配置することで、作業室11の底を容易に清浄に保つことができる。
【0091】
さらに筐体本体12が紙製のため、作業室11内に飛散した汚染物質の飛沫が内面に付着して汚染されたとしても、筐体本体12を廃棄して新たな筐体本体12に交換することが容易で、作業室11の内面を容易に清浄に保つことができる。
【0092】
そのため作業室11の底や内面の洗浄作業を実施する労力を要せずに、清浄な作業室11内で次の検査を行うことができ、作業室11内に存在する汚染物質により次の検査の試料が二次汚染されることもなく、高精度の検査を容易に行うことができる。
【0093】
本実施形態の病原体検査用プルフード10では、底板14の一部に操作対象を内部に収容可能な収容部42を少なくとも一つ備えている。これにより操作対象が収容される収容部42を底板14とともに交換可能に設けることができる。そのため作業室11内で操作対象を操作する際、必要に応じて操作対象を収容部42に収容する操作を行うことができ、この収容室も清浄に保つことができるため、操作対象を収容部42に収容する操作を行っても、試料が二次汚染されることがない。
【0094】
本実施形態の病原体検査用プルフード10は、底板14が紙製であることにより、底板14に検査に必要な剛性を持たせると共に汚染物質の飛散等の抑止できる機能を持たせつつ、低コストに形成して底板14の使い捨てを容易とすることができる。そして、底板14を使い捨てることでの清浄な環境下での試験を容易に行えるようにすることができる。
【0095】
本実施形態の病原体検査用プルフード10では、収容部42が紙製の底板14の一部を筒状に折り曲げて形成されている。そのため平坦な形状の底板14に必要な時点で屈曲させて立体形状の収容部42を形成することができるため、保管時や流通時等にはコンパクト化できるとともに使用時には簡易な変形で収容部42を形成できて頻繁に交換使用することが容易であり、しかも使用時には作業室11の底と収容部42とを一体に取扱うことができるため使い勝手がよい。
【0096】
また底板14の一部の変形で収容部42を形成するため、底板14と収容部42とが同じ材料で形成でき、製造や廃棄の際の取扱も容易である。
【0097】
なお上記実施形態は本発明の範囲内において適宜変更可能である。例えば上記では筐体本体12は四角形形状の下面部21から一対の側面部22、正面部23及び背面部26が立設して正面部23に傾斜面が設けられた立体形状を有しているが、筐体本体12の形状は何ら限定されない。
【0098】
また上記実施形態では操作用開口部24aを底板14に2つ並設した例について説明したが、特に限定されるものではなく、操作用開口部24aを底板14の左端と右端にそれぞれ1つずつ離間さえて設けてもよいし、操作用開口部24aを底板14の端部以外のどの場所に設けてもよい。さらに、操作用開口部24aが1つであってもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0099】
10 病原体検査用プルフード
11 作業室
12 筐体本体
13 排気ファン
13a 吸引駆動部
13b フィルタ部
14 底板
21 下面部
21p 底面ツメ部
22 側面部
23 正面部
24 正面下部
24a 操作用開口部
24p 正面下ツメ部
25 正面上部
25a のぞき窓
25b 窓開口部
25c 透明部材
25p 正面上ツメ部
26 背面部
27 上面部
27a 貫通孔
27p 上面ツメ部
28 底板用スリット
31 第1の板材
32 第2の板材
33 第3の板材
34a~34c 折り筋
35a~35d、35g、35h 折り曲げ片
35e 正面折り曲げ片
35f 切欠き
36a~36d 組立スリット
37 貼付領域
41 平坦部
42 収容部
43 底壁
44 上壁
45 側壁
45a 部分側壁
47 切込み
48 切除領域
49 折り筋
51 連結片
52 フック部
53 連結スリット
61 密封容器
62 採取具
63 分析器具
63a 分析部
64 開放部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7