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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007283
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】建設車両の障害物検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/931 20200101AFI20220105BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20220105BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20220105BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20220105BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01S13/931
G08B21/02
G08B21/00 K
G01S13/87
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110159
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000182384
【氏名又は名称】酒井重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 涼平
【テーマコード(参考)】
5C086
5H181
5J070
【Fターム(参考)】
5C086AA53
5C086BA19
5C086BA22
5C086CA06
5C086CB27
5C086DA08
5C086FA02
5C086FA11
5C086GA01
5H181AA07
5H181AA20
5H181CC12
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL09
5J070AB01
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AE09
5J070AF03
5J070BD01
5J070BF02
(57)【要約】
【課題】ミリ波レーダによる障害物の位置検知精度を向上させることができる建設車両の障害物検知装置を提供する。
【解決手段】建設車両の前面及び後面の少なくとも一方に並設された複数のミリ波レーダ2と、各ミリ波レーダ2で測定された測定データに基づいて障害物Gの有無を判定する制御装置3と、を備え、制御装置3は、ミリ波レーダ2の照射範囲Vと予め設定された所定領域とが重複する検知範囲4において障害物Gの有無を判定することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設車両の前面及び後面の少なくとも一方に並設された複数のミリ波レーダと、
各前記ミリ波レーダで測定された測定データに基づいて障害物の有無を判定する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ミリ波レーダの照射範囲と予め設定された所定領域とが重複する検知範囲において前記障害物の有無を判定することを特徴とする建設車両の障害物検知装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記建設車両の進行方向において前記建設車両に最も近い障害物を基準障害物と特定し、当該基準障害物の位置データに基づいて制御信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の建設車両の障害物検知装置。
【請求項3】
前記所定領域の幅寸法は、前記建設車両の幅寸法と概ね等しくなっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建設車両の障害物検知装置。
【請求項4】
各前記ミリ波レーダのレーダ照射中心線は、互いに平行になっていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項記載の建設車両の障害物検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設車両の障害物検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工事現場の作業員の作業環境を向上させる技術開発が盛んに進められている。例えば、特許文献1には、TOF(Time of Flight)方式のセンサを用いて障害物を検知する光学系の検知システムを建設車両に導入した技術が開示されている。特許文献1の技術によれば、障害物があると判定したときに、例えばHST(Hydro Static Transmission)ブレーキなどで建設車両を自動的に停止させることができる(緊急ブレーキ)。障害物を検知するセンサは、TOF方式やライダ(Lidar)などの光学系のものや、ミリ波レーダが使用されている。
【0003】
TOF方式やライダなどの光学系の検知システムは、近赤外の波長(700-1000nm、周波数は300-430THz)を用いる。このため、光学系の検知システムは、障害物の位置検知精度は高いが、作業現場で発生する湯気や砂埃も検出してしまうというデメリットがある。
【0004】
一方、ミリ波レーダは、1-15mm程度(20-300GHz程度)の長い波長を用いており、乗用車の自動運転などに多く使用されている。ミリ波レーダは、波長が長いため粒径の小さい湯気や砂埃を検出しない。そのため、ミリ波レーダは、建設車両が稼働する過酷な作業現場に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-203774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ミリ波レーダを用いた検知システムは、TOF(Time of Flight)方式やライダなどの光学系の検知システムと比較して、障害物の位置検知精度が低いという問題がある。特に、ミリ波レーダは、複数の障害物が近接して存在している場合、各障害物を分離して認識することが困難となる。障害物の位置検知精度が低下すると、本来存在する作業員を建設車両が認識できず、作業中に作業員を巻き込んでしまうおそれがある。また、建設車両に前記した緊急ブレーキが設けられている場合、障害物の位置検知精度が低下すると、緊急性が無いにも関わらず頻繁に車両が停止してしまい、作業効率が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、ミリ波レーダによる障害物の位置検知精度を向上させることができる建設車両の障害物検知装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明の建設車両の障害物検知装置は、建設車両の前面及び後面の少なくとも一方に並設された複数のミリ波レーダと、各前記ミリ波レーダで測定された測定データに基づいて障害物の有無を判定する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記ミリ波レーダの照射範囲と予め設定された所定領域とが重複する検知範囲において前記障害物の有無を判定することを特徴とする。
【0009】
前記構成によれば、複数のミリ波レーダを並設させるため、複数の障害物があった場合にこれらの障害物が一体化して認識されるのを防ぐことができる。これにより、障害物の位置検知精度を向上させることができる。
【0010】
また、前記制御装置は、前記建設車両の進行方向において前記建設車両に最も近い障害物を基準障害物と特定し、当該基準障害物の位置データに基づいて制御信号を送信することが好ましい。
【0011】
前記構成によれば、建設車両に最も近い基準障害物のみの測定データに基づいて制御信号を送信するため、障害物が建設車両に巻き込まれるのをより確実に防ぐことができる。制御信号は、例えば、警報するための警報信号や、緊急ブレーキのためのブレーキ信号が挙げられる。
【0012】
また、前記所定領域の幅寸法は、前記建設車両の幅寸法と概ね等しくなっていることが好ましい。
【0013】
例えば、壁ぎわに寄せて施工する場合や、旋回する場合に、必要のないものまで障害物であると判定すると作業効率が低下するおそれがある。しかし、前記構成によれば、車幅範囲よりも外側の領域については障害物と判定しないため、作業効率の低下を防ぐことができる。
【0014】
また、各前記ミリ波レーダのレーダ照射中心線は、互いに平行になっていることが好ましい。
【0015】
前記構成によれば、障害物をミリ波レーダの正面で捉えやすくなるため障害物の位置検知精度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ミリ波レーダによる障害物の位置検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るタイヤローラの障害物検知装置を示し、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
図2】本実施形態に係るタイヤローラの障害物検知装置の検知範囲を示す平面図である。
図3】1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[1]の説明図である。
図4】1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[2]の説明図である。
図5】1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[3]の説明図である。
図6】1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[4]の説明図である。
図7】1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[5]の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1(a)、(b)に示すように、本実施形態では、建設車両としてタイヤローラ10を用いる場合を例示する。説明の際、タイヤローラ10の「前後」、「左右」、「上下」はタイヤローラ10の運転者を基準とする。また、左右方向を「X」、前後方向「Y」と称する場合がある。
【0019】
<構成>
図1において、本発明の建設車両の障害物検知装置1(以下、単に「障害物検知装置1」という)は、低速走行しながら作業を行う転圧ローラ等の建設車両に搭載される。図1は、タイヤ11でアスファルト路面等の転圧を行うタイヤローラ10に障害物検知装置1を搭載した場合を示している。障害物検知装置1は、車幅方向に並べて配置された2つのミリ波レーダ2と、制御装置3とを備えている。障害物検知装置1は、本実施形態では、タイヤローラ10に搭載したが、他の建設車両に搭載してもよい。
【0020】
ミリ波レーダ2は、ミリ波帯の電波を周囲に送信し、その反射波を受信することで障害物Gの距離、角度、相対速度等を測定する装置である。ミリ波レーダ2の測定方式はさまざまな方式を採用することができ、例えば、FM-CW(Frequency Modulated - Continuous Wave)方式、2周波(多周波)CW方式、パルス(パルスドップラ)方式、スペクトル拡散方式があるが、これらに限定されない。
【0021】
ミリ波レーダ2(2A,2B)は、本実施形態では、車両の後面に互いに離間して2つ設けている。ミリ波レーダ2A,2B間の距離は適宜設定すればよいが、例えば、30~150cmである。ミリ波レーダ2A,2Bのレーダ照射中心線2a,2aは互いに平行となるように配置されている。一のミリ波レーダ2の照射範囲Vは、平面視して概ね扇形となっている。
【0022】
ここで、タイヤローラ10の車両の右側面に沿って後方に延長する仮想線を仮想線C1とし、左側面に沿って後方に延長する仮想線を仮想線C2とする。また、車両の後面と平行であり、車両から概ね3mくらいの位置にある仮想線を仮想線C3とする。仮想線C1,C2,C3で囲まれた範囲(予め設定された所定範囲)と、ミリ波レーダ2A,2Bの照射範囲V,Vとが重なる部分を検知範囲4として設定している。
【0023】
制御装置3は、ミリ波レーダ2で得られた測定データに基づいて人や構造物などの障害物Gの有無を判定する装置である。制御装置3は、ミリ波レーダ2と電気的に接続されており、例えば、運転性の操作パネルに設置されている。制御装置3は、各ミリ波レーダ2で得られた測定データを共通のXY座標に変換して、車両に対する障害物Gの位置データP(ミリ波レーダ2が認識している物体位置)を特定することができる。制御装置3は、得られた位置データPが、検知範囲4内にあると判定したとき、障害物Gがあると判定する。
【0024】
また、本実施形態では、制御装置3は、検知範囲4に障害物Gがあると判定したとき、所定の条件下で車両にブレーキをかけるブレーキ手段(図示省略)を備えている。ブレーキ手段は、例えば、HSTブレーキを用いることができる。制御装置3が、障害物Gがあると判定してからブレーキ信号を出力するまでの条件、つまりブレーキ手段のブレーキの開始タイミングは、障害物Gまでの距離や車両の走行速度等に応じて変化させてもよい。
【0025】
本実施形態では緊急ブレーキとして作用するブレーキ手段を設けたが、ブレーキ手段と併用して、又はブレーキ手段に換えて音や光などの警報装置を設けてもよい。
【0026】
また、制御装置3は、本実施形態では、例えば複数の障害物Gのうち、車両の進行方向において車両に最も近い障害物Gを「基準障害物」と特定し、当該基準障害物の位置データPに基づいて、制御信号(ブレーキ信号、警報信号等)をブレーキ手段や警報装置などに送信する。制御装置3は、障害物Gが複数ある場合は、各障害物GのY方向成分の最小値となる障害物を基準障害物と特定する。また、制御装置3は、障害物Gが1つである場合は、その障害物を基準障害物と特定する。
【0027】
次に、障害物検知装置1の動作の一例について図2を例示して説明する。図2では、車両の後方において、前後、左右に離れて物体g,gが存在している。
【0028】
制御装置3は、ミリ波レーダ2A,2Bから物体g,gの測定データを取得したら、これらの測定データを共通のXY座標に変換し、物体g,gの位置データP5,P6を算出する。
【0029】
次に、制御装置3は、その位置データP5,P6が検知範囲4に含まれるか否か算出する。検知範囲4に含まれる場合、これらの物体g,gを障害物(障害物G1,G2)と判定する。
【0030】
次に、制御装置3は、障害物G1,G2のY方向成分の最小値を算出する。この例では、障害物G1のY方向成分が最小となるため、障害物G1を「基準障害物」と特定する。
【0031】
次に、制御装置3は、基準障害物となる障害物G1に対応する位置データP5、特に位置データP5のY方向成分に基づいて所定の条件下でブレーキ信号を送信する。これにより、障害物G1,G2が車両に巻き込まれるのを防ぐことができる。
【0032】
次に、本実施形態の障害物検知装置1の技術的意義について、比較例を用いながら以下に説明する。図3~7に示すように、比較例[1]~[5]では、タイヤローラ10の後部、かつ、車幅方向中央に1つのミリ波レーダ2を配置している。タイヤローラ10は、転圧作業により後進する(図中の白抜き矢印の方向に進む)場合を想定している。
【0033】
<比較例[1]>
図3は、1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[1]の説明図である。
図3に示すように、比較例[1]では、障害物Gが1つである。また、ミリ波レーダ2の正面(レーダ照射中心線2a上)に障害物Gが位置しているため、制御装置3は、実際の障害物Gの位置とほぼ同じ位置に位置データPを特定することができる。
【0034】
<比較例[2]>
図4は、1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[2]の説明図である。
図4に示すように、比較例[2]では、障害物Gが1つである。また、ミリ波レーダ2の正面から外れた位置(レーダ照射中心線2aから車幅方向に離間した位置)に障害物Gが位置しているが、制御装置3は、実際の障害物Gの位置とほぼ同じ位置に位置データPを特定することができる。
【0035】
<比較例[3]>
図5は、1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[3]の説明図である。
図5に示すように、比較例[3]では、障害物G1,G2と障害物が2つある。いずれもミリ波レーダ2の正面から外れた位置に障害物G1,G2が位置している。より詳しくは、障害物G1,G2は、レーダ照射中心線2aに対して車幅方向に互いに反対側に離間し、前後方向にも離間した位置に位置している。この場合、制御装置3は、実際の障害物G1,G2の位置とほぼ同じ位置にそれぞれ位置データP1,P2を特定することができる。換言すると、制御装置3は、障害物G1,G2が幅方向に十分に離間しているため、これらを一体物とみなさず、それそれ分離して認識することができる。
【0036】
<比較例[4]>
図6は、1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[4]の説明図である。
図6に示すように、比較例[4]では、障害物G1,G2と障害物が2つある。障害物G1は、レーダ照射中心線2a上に位置している。一方、障害物G2は、レーダ照射中心線2aから幅方向に離間し、かつ、障害物G1よりも後方に位置している。この場合、制御装置3は、障害物G1と障害物G2とが近い位置にあるため、両者を一体物と認識する傾向にある。しかし、障害物G1がレーダ照射中心線2a上であり障害物G2よりも前に位置しているため、当該一体物を位置データP3として特定する。比較例[4]では、制御装置3は、2つある障害物を一体物として認識するが、車両により近い障害物G1の位置を位置データP3として認識するため、障害物検知装置としては問題ない。つまり、車両に最も近い障害物G1の位置が特定できてさえいれば、障害物G1,G2が車両に巻き込まれるおそれは低い。
【0037】
<比較例[5]>
図7は、1つのミリ波レーダで障害物を検知する場合の比較例[5]の説明図である。
図7に示すように、比較例[5]では、障害物G1,G2と障害物が2つある。障害物G1は、レーダ照射中心線2aから車幅方向に離間している。一方、障害物G2は、レーダ照射中心線2a上であり、かつ、障害物G1よりも後方に位置している。この場合、制御装置3は、障害物G1と障害物G2を一体物と認識する傾向にあり、障害物G2がレーダ照射中心線2a上であるため、当該一体物を位置データP4として特定する。つまり、制御装置3は、レーダ照射中心線2a上の障害物G2を重視する傾向にあるため、障害物G1よりも後方に当該一体物の位置データP4が特定されてしまう。比較例[5]であると、制御装置3が認識している一体物の位置データP4よりも前方に障害物G1が存在しているため、障害物G1が車両に巻き込まれるおそれがある。
【0038】
上記のように、車両に搭載されたミリ波レーダ2が1つである場合、障害物Gが1つであるときは障害物の位置検知精度に問題はない(比較例[1],[2])。また、障害物Gが複数の場合でも、障害物の位置検知精度に問題がない場合もある(比較例[3],[4])。しかし、比較例[5]のようなケースでは、1つのミリ波レーダ2では位置検知精度が低下し、不具合が発生する問題がある。つまり、ミリ波レーダ2は、比較的近い距離において、ミリ波レーダ2の正面の障害物Gの位置検知精度は高い。一方、比較的近い距離において、障害物Gがミリ波レーダ2の正面から左右のいずれかに外れ、かつ、ミリ波レーダ2の正面後方に他の障害物Gがあるような場合に位置検知精度が悪くなるという問題がある。
【0039】
これに対し、本実施形態に係る障害物検知装置1によれば、図2に示すように、複数のミリ波レーダ2(2A,2B)を並設させるため、複数の障害物G1,G2があった場合に、ミリ波レーダ2A,2Bのいずれかが障害物G1,G2の各々を正面で捉え易くなるため、これらの障害物G1,G2が一体化して認識されるのを防ぐことができる。これにより、障害物の位置検知精度を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態に係る制御装置3は、車両の進行方向において車両に最も近い障害物Gを「基準障害物」と特定し、当該基準障害物の位置データに基づいて、例えば、ブレーキ信号などの制御信号を送信するようにした。この構成によれば、制御装置3は、車両に最も近い障害物の位置を正確に認識することができる。これにより、障害物Gが建設車両に巻き込まれるのをより確実に防ぐことができる。換言すると、本実施形態によれば、比較例5のように、車両に最も近い障害物(障害物G1)よりも後方に、その障害物の位置データ(位置データP4)が認識されるのを防ぐことができる。
【0041】
また、図1(a)に示すように、ミリ波レーダ2の照射範囲Vをそのまま検知範囲とすると、壁ぎわに寄せて施工する場合や旋回する場合に、衝突のおそれが低いにもかかわらず障害物Gがあると判定されて、車両が無駄に停止して作業効率が低下するおそれがある。この点、本実施形態では、所定領域(予め設置された所定領域)の車幅寸法を、タイヤローラ10の車幅寸法Wと等しくなるように設定している。これにより、作業効率を高めることができる。また、検知範囲4の後方においても、仮想線C3を設定して車両の無駄な停止を防ぎ作業効率を高めることができる。
【0042】
なお、検知範囲4の車幅方向(所定領域の車幅寸法)は、仮想線C1,C2よりも所定の距離で内側となるように設定してもよいし、外側となるように設定してもよい。
【0043】
また、本実施形態のミリ波レーダ2A,2Bは、車両の後面に並設されており、ミリ波レーダ2A,2Bのレーダ照射中心線2a,2aは、互いに平行になっている。これにより、レーダ照射中心線2a,2aが非平行である場合と比較して、ミリ波レーダ2A,2Bのいずれかが検知範囲4内の障害物を正面で捉えやすくなるため、狭い検知範囲4内の障害物の位置検知精度をより高めることができる。
【0044】
また、建設車両、特に本実施形態のような締固め機械の作業現場では、狭い範囲に作業員、警備員、構造物などが存在するため、これらへの接触、衝突、巻き込み等を起こしてはならない。一方、本実施形態のように緊急ブレーキを備える車両においては、作業効率の観点からギリギリのところで車両を停止させることが望まれている。この点、本実施形態によれば、車両に近い距離での位置検知精度を高めることができるため、作業環境と作業効率の向上を図ることができる。
【0045】
ここで、例えば、図4のケースのように、ミリ波レーダ2が1つであり、正面から外れた位置に障害物Gがある場合において、タイヤローラ10の後方に、さらに他の建設車両が稼働している場合がある。つまり、複数の建設車両が近い距離で稼働している場合がある。
【0046】
このような場合、ミリ波レーダ2は、金属製の障害物に強く反応する傾向がある。そのため、制御装置3は他の建設車両は認識するものの、図4のタイヤローラ10に対して近い位置にある障害物Gを認識できなくなるという問題もある。しかし、本実施形態によれば、ミリ波レーダ2が車幅方向に2つ並設されているため、例えば、ミリ波レーダ2Aで障害物Gを検知し、ミリ波レーダ2Bで他の建設車両を検知することができる。またこの際、相対的にタイヤローラ10に近い障害物Gを「基準障害物」と特定するため、障害物Gがタイヤローラ10に巻き込まれるのを防ぐことができる。
【0047】
以上本発明の実施形態について説明したが、適宜設計変更が可能である。本実施形態では、2つのミリ波レーダ2を用いた場合について説明したが、3以上のミリ波レーダ2を用いてもよい。また、複数のミリ波レーダは、タイヤローラ10の車幅方向に限らず、高さ方向に並べて配置してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、ミリ波レーダ2を車両の後面に取り付けたが、ミリ波レーダ2は車両の前面及び後面の少なくとも一方に設ければよい。
【符号の説明】
【0049】
1 障害物検知装置
2,2A,2B ミリ波レーダ
3 制御装置
4 検知範囲
10 タイヤローラ
G,G1,G2 障害物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7