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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072835
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】車両用制御装置、車両、及びシート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/853 20180101AFI20220510BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B60N2/853
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182490
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松岡 正憲
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 憂
(72)【発明者】
【氏名】西澤 幸男
(72)【発明者】
【氏名】大西 慶秀
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DB01
3B084DB09
3B084DC01
3B087AA02
3B087DC06
3B087DC08
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】車両に加減速が発生する場合における乗員の乗り物酔いに関する対策をできるようにすること。
【解決手段】制御装置70は、シート20A,20Bを備える車両に適用される。制御装置70は、シート20A,20Bに着座する乗員200A,200Bの頭部201に作用する加速度の向き、及び、当該加速度の大きさを加速度情報として取得する加速度情報取得部71と、加速度情報取得部71が取得した加速度情報を基に、乗員200A,200Bが乗り物酔いする可能性があるか否かを判定する乗り物酔い判定部72とを備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを備える車両に適用され、
前記シートに着座する乗員の頭部に作用する加速度の向き、及び、当該加速度の大きさを加速度情報として取得する加速度情報取得部と、
前記加速度情報を基に、前記乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定する乗り物酔い判定部と、を備える
車両用制御装置。
【請求項2】
前記乗り物酔い判定部は、前記加速度情報を基に、前記乗員の頭部に対して規定方向に作用する加速度成分の大きさを規定方向加速度として取得し、前記規定方向加速度に基づいて前記乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定するようになっており、
前記規定方向として、前記シートに前記乗員が座った際における当該乗員の前方である乗員前方よりも「25°」だけ車両上方の向きと、当該乗員前方よりも「35°」だけ車両上方の向きとの間の向きが設定されている
請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定を前記乗り物酔い判定部がなした場合、前記乗員に通知する通知処理部を備える
請求項1又は請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
運転者用のシートである運転者用シートと、
前記運転者以外の乗員用のシートである同乗者用シートと、
請求項1~請求項3のうち何れか一項に記載の前記車両用制御装置と、を備えており、
前記各シートは、シートバックと、前記シートバックに支持されているヘッドレストと、を有しており、
前記シートに乗員が座った際における当該乗員の前方を乗員前方とし、前記乗員前方の反対方向を乗員後方としたとき、
前記運転者用シート及び前記同乗者用シートのうちの少なくとも一方のシートは、前記シートバックに対して前記乗員後方に前記ヘッドレストを傾斜させるヘッドレスト用傾斜装置を有する
車両。
【請求項5】
運転者用のシートである運転者用シートと、前記運転者以外の乗員用のシートである同乗者用シートと、を備える車両であって、
前記シートに乗員が座った際における当該乗員の前方を乗員前方とし、前記乗員前方の反対方向を乗員後方としたとき、
前記各シートは、シートバックと、前記シートバックに支持されているヘッドレストと、を有しており、
前記同乗者用シートは、前記シートバックに対して、前記乗員後方に前記ヘッドレストを傾斜させるヘッドレスト用傾斜装置を有している一方、前記運転者用シートは、前記ヘッドレスト用傾斜装置を有していない
車両。
【請求項6】
車両の走行モードとして、運転者の操作によって前記車両を走行させるモードである手動運転モードと、前記車両を自動走行させるモードである自動運転モードとが用意されているとともに、運転者用のシートである運転者用シートをシートとして備えている車両であって、
前記シートに乗員が座った際における当該乗員の前方を乗員前方とし、前記乗員前方の反対方向を乗員後方としたとき、
前記運転者用シートは、シートバックと、前記シートバックに支持されているヘッドレストと、前記ヘッドレストを前記シートバックに対して前記乗員後方に傾斜させるヘッドレスト用傾斜装置と、を有しており、
前記ヘッドレスト用傾斜装置は、前記走行モードとして前記手動運転モードが選択されている場合、前記ヘッドレストの前記乗員後方への傾斜を規制する
車両。
【請求項7】
前記ヘッドレスト用傾斜装置は、アクチュエータを有し、当該アクチュエータの駆動によって前記ヘッドレストを変位させるものであり、
前記車両が障害物に衝突する可能性があるか否かを判定する衝突判定部と、
前記ヘッドレスト用傾斜装置の作動によって前記ヘッドレストが基準位置よりも前記乗員後方に傾斜している状況下で、前記車両が前記障害物に衝突する可能性があるとの判定を前記衝突判定部がなしている場合、前記アクチュエータを駆動させることによって前記ヘッドレストを前記基準位置に向けて変位させるシート制御部と、を備える
請求項4~請求項6のうち何れか一項に記載の車両。
【請求項8】
前記ヘッドレスト用傾斜装置は、アクチュエータを有し、当該アクチュエータの駆動によって前記ヘッドレストを変位させるものであり、
前記車両が悪路を走行しているか否かを判定する悪路判定部と、
前記車両が悪路を走行しているとの判定を前記悪路判定部がなしている場合には、前記アクチュエータを駆動させることによって前記ヘッドレストの前記乗員後方への変位を規制するシート制御部と、を備える
請求項4~請求項6のうち何れか一項に記載の車両。
【請求項9】
請求項4~請求項8のうち何れか一項に記載の車両が備えているシートであって、
前記ヘッドレストのうち、前記車両の上下方向における前記ヘッドレストの中心よりも下方の部分をヘッドレスト下部としたとき、
前記ヘッドレスト下部には、前記ヘッドレストの下端に向かうにつれて当該ヘッドレストの前面が前記乗員後方に位置するように構成された部分を有する
シート。
【請求項10】
請求項4~請求項8のうち何れか一項に記載の車両が備えているシートであって、
前記シートバックのうち、前記車両の上下方向における前記シートバックの中心よりも上方の部分をシートバック上部としたとき、
前記シートバック上部は、前記シートバックの上端に向かうにつれて当該シートバックの前面が前記乗員後方に位置するように構成された部分を有する
シート。
【請求項11】
請求項4~請求項8のうち何れか一項に記載の車両が備えているシートであって、
前記ヘッドレストを上下にスライド移動させるスライド装置を備える
シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置、車両、及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートバックと、シートバックに支持されているヘッドレストとを備える車両用シートの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-95053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の加減速が繰り返されると、車両用シートに搭乗している乗員が乗り物酔いしやすくなる。特許文献1には、車両に加減速が発生する場合における乗員の乗り物酔い対策についての開示はなされていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車両用制御装置は、シートを備える車両に適用される。この車両用制御装置は、前記シートに着座する乗員の頭部に作用する加速度の向き、及び、当該加速度の大きさを加速度情報として取得する加速度情報取得部と、前記加速度情報を基に、前記乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定する乗り物酔い判定部と、を備えている。
【0006】
本件発明者は、車両の加減速の発生と、車両の乗員の乗り物酔いとの関係について鋭意研究を行った。その結果、乗員の頭部に作用する加速度の向き及び当該加速度の大きさによって、乗員の乗り物酔いしやすさが変わるという知見を得た。
【0007】
そこで、上記構成では、シートに着座している乗員の頭部に作用する加速度の向き、及び、当該加速度の大きさを基に、当該乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定するようにした。これにより、車両に加減速が発生する場合における乗員の乗り物酔いに関する対策として、乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定できるようになった。
【0008】
上記課題を解決するための車両の一態様は、運転者用のシートである運転者用シートと、前記運転者以外の乗員用のシートである同乗者用シートと、上記車両用制御装置と、を備えている。前記各シートは、シートバックと、前記シートバックに支持されているヘッドレストと、を有している。前記シートに乗員が座った際における当該乗員の前方を乗員前方とし、前記乗員前方の反対方向を乗員後方としたとき、前記運転者用シート及び前記同乗者用シートのうちの少なくとも一方のシートは、前記シートバックに対して前記乗員後方に前記ヘッドレストを傾斜させるヘッドレスト用傾斜装置を有している。
【0009】
上記車両によれば、上記車両用制御装置と同等の効果を得ることができる。
上記課題を解決するための車両の一態様は、運転者用のシートである運転者用シートと、前記運転者以外の乗員用のシートである同乗者用シートと、を備えている。この車両において、前記シートに乗員が座った際における当該乗員の前方を乗員前方とし、前記乗員前方の反対方向を乗員後方としたとき、前記各シートは、シートバックと、前記シートバックに支持されているヘッドレストと、を有している。前記同乗者用シートは、前記シートバックに対して、前記乗員後方に前記ヘッドレストを傾斜させるヘッドレスト用傾斜装置を有している一方、前記運転者用シートは、前記ヘッドレスト用傾斜装置を有していない。
【0010】
本願発明者は、乗員前方よりも少し上方である規定方向への加速度が乗員に対して作用する場合、当該規定方向の加速度が大きいと、乗員が乗り物酔いしやすいという知見を得た。
【0011】
この点、上記構成によれば、乗員が同乗者用シートに着座する場合には、ヘッドレスト用傾斜装置を作動させて同乗者用シートのヘッドレスを乗員後方に傾斜させることにより、当該乗員の頭部の向きを変更できる。その結果、乗員に作用する上記規定方向の加速度が大きくなることを抑制できる。そのため、車両に加減速が発生する場合における乗員の乗り物酔いに関する対策として、同乗者用シートに着座する乗員が乗り物酔いしにくくなる姿勢を案内できる。一方、運転者用シートにあっては、同乗者用シートとは異なり、ヘッドレストを乗員後方に傾斜させることができないようになっている。
【0012】
上記課題を解決するための車両の一態様は、車両の走行モードとして、運転者の操作によって前記車両を走行させるモードである手動運転モードと、前記車両を自動走行させるモードである自動運転モードとが用意されているとともに、運転者用のシートである運転者用シートをシートとして備えている。この車両において、前記シートに乗員が座った際における当該乗員の前方を乗員前方とし、前記乗員前方の反対方向を乗員後方としたとき、前記運転者用シートは、シートバックと、前記シートバックに支持されているヘッドレストと、前記ヘッドレストを前記シートバックに対して前記乗員後方に傾斜させるヘッドレスト用傾斜装置と、を有している。前記ヘッドレスト用傾斜装置は、前記走行モードとして前記手動運転モードが選択されている場合、前記ヘッドレストの前記乗員後方への傾斜を規制する。
【0013】
本願発明者は、乗員前方よりも少し上方である規定方向への加速度が乗員に対して作用する場合、当該規定方向の加速度が大きいと、乗員が乗り物酔いしやすいという知見を得た。
【0014】
上記構成によれば、自動運転モードで車両が走行している場合、運転者用シートに着座している乗員(運転者)は車両操作を行っていない。そのため、ヘッドレスト用傾斜装置を作動させて運転者用シートのヘッドレストを乗員後方に傾斜させることができる。このようにヘッドレストを乗員後方に傾斜させることにより、運転者用シートに着座している乗員の頭部の向きを変更できる。その結果、乗員に作用する上記規定方向の加速度が大きくなることを抑制できる。そのため、車両に加減速が発生する場合における乗員の乗り物酔いに関する対策として、運転者用シートに着座する乗員が乗り物酔いしにくくなる姿勢を案内できる。
【0015】
一方、手動運転モードで車両が走行している場合、運転者用シートのヘッドレストを乗員後方に傾斜させることがヘッドレスト用傾斜装置によって規制される。これにより、運転者用シートに着座する乗員の頭部の向きが、車両操作を行うのに適さない向きになることを抑制できる。
【0016】
上記課題を解決するためのシートの一態様は、上記の車両が備えているシートである。このシートにおいて、前記ヘッドレストのうち、前記車両の上下方向における前記ヘッドレストの中心よりも下方の部分をヘッドレスト下部としたとき、前記ヘッドレスト下部には、前記ヘッドレストの下端に向かうにつれて当該ヘッドレストの前面が前記乗員後方に位置するように構成された部分を有している。
【0017】
上記課題を解決するためのシートの一態様は、上記の車両が備えているシートである。このシートは、前記シートバックのうち、前記車両の上下方向における前記シートバックの中心よりも上方の部分をシートバック上部としたとき、前記シートバック上部は、前記シートバックの上端に向かうにつれて当該シートバックの前面が前記乗員後方に位置するように構成された部分を有している。
【0018】
上記課題を解決するためのシートの一態様は、上記の車両が備えているシートである。このシートは、前記ヘッドレストを上下にスライド移動させるスライド装置を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両用制御装置の第1実施形態である制御装置と、シートとを備える車両の模式図。
図2】同シートの概略構成、及び、同制御装置の機能構成を示す図。
図3】同シートのシートバックの一部分を背面から見た場合の模式図。
図4】同シートにおいて、ヘッドレストが乗員後方に傾斜した状態を示す模式図。
図5】同シートに着座する乗員の姿勢を示す模式図。
図6図5に示した各姿勢と、乗り物酔いしやすさとの関係を示す図。
図7】乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定がなされた際にその旨を乗員に通知するために制御装置が実行する一連の処理の流れを説明するフローチャート。
図8】自動運転モードが選択されている場合にヘッドレスト及びシートバックを変位させる際に制御装置が実行する一連の処理の流れを説明するフローチャート。
図9】車両が障害物と衝突する可能性がある場合にはヘッドレスト及びシートバックを基準位置に戻すために制御装置が実行する一連の処理の流れを説明するフローチャート。
図10】第2実施形態において、車両が悪路を走行している場合にはヘッドレスト及びシートバックを基準位置に戻すために制御装置が実行する一連の処理の流れを説明するフローチャート。
図11】第3実施形態において、運転者用シートと同乗者用シートとを示す模式図。
図12】変更例のシートの一部分を示す模式図。
図13】同変更例のシートにおいて、ヘッドレストを乗員後方に傾斜させた場合の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、車両用制御装置、車両及びシートの一実施形態を図1図9に従って説明する。
図1には、車両用制御装置の一例である制御装置70を備える車両10が図示されている。車両10は、複数の車輪11と、車体12とを備えている。車体12内には、車両10の乗員が着座するシートとして、運転者200A用のシートである運転者用シート20Aと、運転者200A以外の乗員である同乗者200B用のシートである同乗者用シート20Bが設けられている。
【0021】
図2に示すようにシート20A,20Bに着座する乗員を横方向から見た場合において、乗員の耳から鼻に向けて延びる仮想直線の延びる方向を乗員前方Cfといい、乗員前方Cfの反対方向を乗員後方Crという。シート20A,20Bに着座する乗員が正面を向いている場合、乗員前方Cfは車両前方Xfに相当し、乗員後方Crは車両後方Xrに相当する。言い換えると、乗員が上方を向いたり下方を向いたりすると、乗員前方Cfは車両前方Xfと相違し、乗員後方Crは車両後方Xrと相違する。したがって、乗員前方Cf及び乗員後方Crは乗員毎に規定される。
【0022】
本実施形態では、シート20A,20Bに着座した乗員の正面が車両前方Xfとなるように、各シート20A,20Bが車体12内に設置されている。
<シート20A,20Bの構成>
図1図4を参照し、シート20A,20Bの構成について説明する。
【0023】
図1及び図2に示すように、各シート20A,20Bは、座部21と、シートバック22と、ヘッドレスト23とを備えている。
シートバック22のうち乗員前方Cfに位置する面をシートバック前面22aとしたとき、シート20A,20Bに着座する乗員の背中がシートバック前面22aに接触する。図3及び図4に示すように、シートバック22の上部には、ヘッドレスト23の一部分を収容する収容凹部221が設けられている。収容凹部221をシートバック22に設けたことによって形成されるシートバック22の開口222は、シートバック22の上面22bとシートバック22の背面22cとに跨がっている。
【0024】
図2に示すように、シートバック22は、座部21に対して回動可能である。すなわち、座部21内には、図2において紙面と直交する方向に延びる回転軸31が設けられている。回転軸31は、車両前方Xf及び車両上方Zaの双方と直交する方向に延びている。そして、シートバック22は、回転軸31を中心にシートバック22を回動できる。
【0025】
図2及び図3に示すように、ヘッドレスト23は、2本のステー24を介してシートバック22に支持されている。ヘッドレスト23は、図3の左右方向に延びる回転軸線L1を中心に回動可能な状態でシートバック22に支持されている。回転軸線L1は、車両前方Xf及び車両上方Zaの双方と直交する方向に延びている。
【0026】
図2に示すように、各シート20A,20Bは、シートバック用傾斜装置30を備えている。例えば、シートバック用傾斜装置30は、座部21内に配置されている。各シート20A,20Bは、スライド装置40を備えている。例えば、シートバック用傾斜装置30は、座部21内に配置されている。各シート20A,20Bは、ヘッドレスト用傾斜装置50を備えている。例えば、ヘッドレスト用傾斜装置50は、ヘッドレスト23内に配置されている。
【0027】
シートバック用傾斜装置30は、図2の矢印B1で示すように、座部21に対して乗員後方Crにシートバック22を傾斜させることができる。例えば、シートバック用傾斜装置30は、回転軸31に回転可能な状態で支持されている支持部32とを有している。そして、支持部32を回転軸31に対して回転させると、シートバック22が回転軸31を中心に回動する。
【0028】
また例えば、シートバック用傾斜装置30は、第1傾斜用アクチュエータ33を有している。第1傾斜用アクチュエータ33は、第1電動モータ34と、第1電動モータ34の回転角を検出する第1回転角センサ35とを有している。第1回転角センサ35は、第1電動モータ34の回転数に応じた信号を検出信号として出力する。そして、シートバック用傾斜装置30は、第1電動モータ34の出力を支持部52に伝達することにより、シートバック22を回動させる。すなわち、シートバック用傾斜装置30は、第1電動モータ34の回転角を制御することによってシートバック22の位置を調整できる。
【0029】
スライド装置40は、図2の矢印B2で示すように、ヘッドレスト23を上下にスライド移動させることができる。ここでいう「上」とは車両上方Zaであり、「下」とは車両下方Zbである。例えば、スライド装置40は、ステー24が挿通されているスリーブ41を有している。そして、スライド装置40は、スリーブ41の延伸方向にステー24を移動させることにより、ヘッドレスト23をシートバック22に対して上下にスライド移動させる。
【0030】
例えば、スライド装置40は、スライド用アクチュエータ42と、スライド用アクチュエータ42によって動作する変換機構43とを有している。スライド用アクチュエータ42は、第2電動モータ44と、第2電動モータ44の回転角を検出する第2回転角センサ45とを有している。第2回転角センサ45は、第2電動モータ44の回転数に応じた信号を検出信号として出力する。
【0031】
変換機構43は、第2電動モータ44の回転力を直動力に変換して出力することにより、ヘッドレスト23を、スリーブ41の延伸方向に沿ってスライド移動させる。すなわち、スライド装置40は、第2電動モータ44の回転角を制御することによってシートバック22に対するヘッドレスト23の上下の位置を調整できる。例えば、変換機構43は、複数のギアを有している。
【0032】
ヘッドレスト用傾斜装置50は、図2の矢印B3で示すように、シートバック22に対して乗員後方Crにヘッドレスト23を傾斜させることができる。本実施形態では、ヘッドレスト23の位置として、ヘッドレスト基準位置が設定されている。図2に示すヘッドレスト23の位置が、ヘッドレスト基準位置に対応する。ヘッドレスト基準位置とは、運転者200Aが車両操作を行う際に適切な位置に頭部201を配置できるヘッドレスト23の位置である。ヘッドレスト用傾斜装置50は、ヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crにヘッドレスト23を回動させることができる。
【0033】
例えば、ヘッドレスト用傾斜装置50は、回転軸線L1に沿って延びる回転軸51と、回転軸51に回転可能な状態で支持されている支持部52とを有している。この場合、回転軸51は、ヘッドレスト23内に位置しているとともに、各ステー24に固定されている。そのため、回転軸51に対して支持部52を回転させると、ヘッドレスト23が回転軸51を中心に回動する。
【0034】
また例えば、ヘッドレスト用傾斜装置50は、第2傾斜用アクチュエータ53を有している。第2傾斜用アクチュエータ53は、第3電動モータ54と、第3電動モータ54の回転角を検出する第3回転角センサ55とを有している。第3回転角センサ55は、第3電動モータ54の回転数に応じた信号を検出信号として出力する。
【0035】
ヘッドレスト用傾斜装置50は、例えば、第3電動モータ54の出力を支持部52に伝達することにより、ヘッドレスト23を回動させる。すなわち、ヘッドレスト用傾斜装置50は、第3電動モータ54の回転角を制御することによってヘッドレスト23の位置を調整できる。
【0036】
<制御装置70について>
図2を参照し、制御装置70について説明する。
制御装置70には、各種のセンサの検出信号が入力される。センサとしては、例えば、上記の第1回転角センサ35、第2回転角センサ45及び第3回転角センサ55に加え、前後加速度センサ91、横加速度センサ92及び上下加速度センサ93を挙げることができる。前後加速度センサ91は、車両10の前後加速度Gxを検出し、その検出結果を検出信号として出力する。横加速度センサ92は、車両10の横加速度Gyを検出し、その検出結果を検出信号として出力する。上下加速度センサ93は、車両10の上下加速度Gzを検出し、その検出結果を検出信号として出力する。
【0037】
例えば、制御装置70には、車外監視系110から情報が入力される。車外監視系110は、車両10の周辺を監視するものである。車外監視系110は、例えば、カメラなどの撮像手段、及び、レーダを有している。車外監視系110は、例えば、車両10の周辺に存在する他の車両の数及び位置、及び、車両10の進路上に障害物が存在しているか否かを監視する。ここでいう障害物とは、車両10との衝突の回避を必要とするような大きさのものである。障害物としては、例えば、他の車両、ガードレール、歩行者を挙げることができる。
【0038】
例えば、制御装置70には、車内監視系120から情報が入力される。車内監視系120は、車内の乗員数、乗員の位置及び乗員の頭部201の向きを監視するものである。例えば、車内監視系120は、乗員の頭部201の向きとして、乗員の乗員前方Cfがどの方向であるかを監視する。こうした車内監視系120は、例えば、車内を撮影するカメラなどの撮像手段、及び、シート20A,20Bに乗員が着座していることを検知する着座センサを有している。
【0039】
例えば、制御装置70には、ナビゲーション装置130から車両10の走行経路の情報が入力される。走行経路の情報としては、例えば、走行経路の曲率半径、及び、走行経路の路面勾配を挙げることができる。ナビゲーション装置130は、車載のナビゲーション装置であってもよいし、ナビゲーション機能を有するタブレット端末であってもよい。
【0040】
例えば、制御装置70には、シート用操作部140から信号が入力される。シート用操作部140は、シートを制御すべく乗員によって操作される操作部である。シート用操作部140は、シートの制御モードとして、通常モードMD1と、酔い抑制モードMD2とを選択できる。酔い抑制モードMD2とは、ヘッドレスト23の位置及びシートバック22の位置のうち少なくとも一方を、乗員が乗り物酔いし難くい位置に設定することを許容するモードである。通常モードMD1は、ヘッドレスト23の位置及びシートバック22の位置を、乗員が乗り物酔いし難くい位置に設定することを禁止するモードである。すなわち、乗員によるシート用操作部140の操作によって通常モードMD1が選択されているときにおけるヘッドレスト23の位置が上記のヘッドレスト基準位置であるといえる。また、通常モードMD1が選択されているときにおけるシートバック22の位置を、「シートバック基準位置」ともいう。
【0041】
例えば、制御装置70には、モード選択部150から信号が入力される。モード選択部150は、車両10の走行モードを乗員に選択させるための操作部である。選択可能な走行モードとしては、手動運転モードMDD1及び自動運転モードMDD2が用意されている。手動運転モードMDD1とは、運転者200Aの車両操作(すなわち、アクセル操作、制動操作、ステアリング操作)によって車両10を走行させるモードである。自動運転モードMDD2とは、運転者200Aの車両操作に拘わらず、車両10を自動走行させるモードである。
【0042】
制御装置70は、各種のセンサ35,45,55,91~93から入力された検出信号と、入力された情報及び信号とを基に、各種の制御を行う。こうした制御装置70は、以下(a)~(c)の何れかの構成であればよい。
(a)制御装置70は、コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含んでいる。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含んでいる。
(b)制御装置70は、各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備えている。専用のハードウェア回路としては、例えば、特定用途向け集積回路、すなわちASIC又はFPGAを挙げることができる。なお、ASICは、「Application Specific Integrated Circuit」の略記であり、FPGAは、「Field Programmable Gate Array」の略記である。
(c)制御装置70は、各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうちの残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備えている。
【0043】
制御装置70は、乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判断するための機能部として、加速度情報取得部71と、乗り物酔い判定部72とを有している。
加速度情報取得部71は、シート20A,20Bに着座する乗員の頭部201に作用する加速度の向き、及び、当該加速度の大きさを加速度情報として取得する。すなわち、加速度情報取得部71は、乗員の頭部201に対して車両前方Xfに作用する加速度として、前後加速度Gxを取得する。加速度情報取得部71は、乗員の頭部201に対して横方向に作用する加速度として、横加速度Gyを取得する。加速度情報取得部71は、乗員の頭部201に対して車両上方Zaに作用する加速度として、上下加速度Gzを取得する。
【0044】
乗り物酔い判定部72は、加速度情報取得部71が取得した加速度情報を基に、乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定する。乗り物酔いする可能性があるか否かの判定処理については、後述する。
【0045】
例えば、制御装置70は、機能部として、通知処理部73を有している。通知処理部73は、乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定を乗り物酔い判定部72がなした場合、乗員に通知する。すなわち、通知処理部73は、乗員が乗り物酔いする可能性がある旨を車載の通知装置を介して乗員に通知する。また、通知処理部73は、乗員が所有する移動式情報端末にその旨を送信することで、乗員に通知してもよい。
【0046】
例えば、制御装置70は、機能部として、シート制御部74を有している。シート制御部74は、各傾斜装置30,50及びスライド装置40を作動させることにより、シートバック22及びヘッドレスト23のうちの少なくとも一方の位置を制御する。シートバック22及びヘッドレスト23のうちの少なくとも一方の位置を制御する処理については後述する。
【0047】
例えば、制御装置70は、機能部として、衝突判定部75を有している。衝突判定部75は、車両10が障害物に衝突する可能性があるか否かを判定する。車両10が障害物に衝突する可能性があるか否かの判定処理については後述する。
【0048】
例えば、制御装置70は、機能部として、悪路判定部76を有している。悪路判定部76は、車両10が悪路を走行しているか否かを判定する。車両10が悪路を走行しているか否かの判定処理については後述する。
【0049】
<乗員が乗り物酔いするメカニズム>
車両10の加減速が繰り返されると、乗員が乗り物酔いすることがある。そこで、車両10に加減速が発生することに起因して乗員が乗り物酔いするメカニズムについて説明する。
【0050】
乗員の頭部201に作用する加速度の向きと、乗員の乗り物酔いしやすさとの関係について、本願発明者は鋭意研究を行った。その結果、乗員の頭部201に作用する加速度の向きと、加速度の大きさとによって、乗り物酔いしやすさが変わるという知見を得た。
【0051】
次に、こうした知見を得るために行った実験について説明する。車速が「10km/h」から「40km/h」の範囲で可変するように車両10の加速及び減速を繰り返す。そして、車両10に搭乗した被験者200Cが、こうした車両10の走行時に感じた気持ち悪さの度合いに応じた評価点を付ける。詳しくは、被験者200Cは、気持ち悪さの度合いが大きいほど値が大きくなるように評価点を付ける。
【0052】
上記のような実験を行うに際し、被験者200Cには図4に示す複数の姿勢を取って貰う。
(第1姿勢Pos1)被験者200Cに前傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を「90°」とする。
(第2姿勢Pos2)被験者200Cに前傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を「50°」とする。
(第3姿勢Pos3)被験者200Cに前傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を「0°」とする。
(第4姿勢Pos4)被験者200Cに後傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を「30°」とする。
(第5姿勢Pos5)被験者200Cに後傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を「50°」とする。
(第6姿勢Pos6)被験者200Cに後傾姿勢を取らせつつ、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角を「90°」とする。
【0053】
第1姿勢Pos1で被験者200Cが乗車した状態で上記のように車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。第2姿勢Pos2で被験者200Cが乗車した状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。第3姿勢Pos3で被験者200Cが乗車した状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。第4姿勢Pos4で被験者200Cが乗車した状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。第5姿勢Pos5で被験者200Cが乗車した状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。第6姿勢Pos6で被験者200Cが乗車した状態で車両10を走行させた際に被験者200Cが感じた気持ち悪さの度合いに応じた点を評価点として被験者200Cが付ける。
【0054】
その評価の結果が、図5に示されている。図5からも明らかなように、被験者200Cが第2姿勢Pos2で搭乗した場合、被験者200Cが最も乗り物酔いしやすい。被験者200Cが第3姿勢Pos3で搭乗した場合、被験者200Cが2番目に乗り物酔いしやすい。すなわち、被験者200Cが前傾姿勢をとり、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角が「0°」から「50°」の間である場合に、被験者200Cが乗り物酔いしやすいということが分かった。
【0055】
さらに詳細に実験を進めると、乗員前方Cfと車両前方Xfとのなす角が「25°」から「35°」の間の角度である場合が、被験者200Cが最も乗り物酔いする可能性が高いということが分かった。
【0056】
こうした結果を踏まえ、乗員前方Cfよりも「25°」だけ上方の向きと、乗員前方Cfよりも「35°」だけ上方の向きの間の向きが、図2に示す規定方向Daとして設定される。そして、規定方向Daにおける加速度成分の大きさを基に、乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定できる。
【0057】
<制御装置70で実行される処理の流れ>
図7を参照し、乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定する際に制御装置70が実行する処理の流れについて説明する。
【0058】
はじめのステップS11において、制御装置70の乗り物酔い判定部72は、加速度情報取得部71が取得した加速度情報を基に、すなわち各加速度Gx,Gy,Gzを基に、規定方向Daにおける加速度成分の大きさである規定方向加速度GAを取得する。続いて、ステップS12において、乗り物酔い判定部72は、取得した規定方向加速度GAを基に、乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定する。例えば、乗り物酔い判定部72は、規定方向加速度GAが加速度判定値GAth以上である場合、乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定をなしてもよい。また例えば、乗り物酔い判定部72は、規定方向加速度GAが加速度判定値GAth以上である状態の継続時間が判定時間以上になった場合、又は当該状態が判定時間以上継続することが予測される場合、乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定をなしてもよい。
【0059】
乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定がなされていない場合(S12:NO)、制御装置70は、一連の処理を終了する。所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、一連の処理を再び実行する。
【0060】
一方、乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定がなされている場合(S12:YES)、制御装置70は、処理を次のステップS13に移行する。ステップS13において、制御装置70の通知処理部73は、乗員が乗り物酔いする可能性がある旨を乗員に通知する通知処理を実行する。そして、制御装置70は、一連の処理を終了する。所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、一連の処理を再び実行する。
【0061】
次に、図8を参照し、選択されている運転モードに応じた制御を制御装置70が実施する場合の処理の流れについて説明する。
はじめのステップS21において、制御装置70は、走行モードが手動運転モードMDD1から自動運転モードMDD2に切り替わったか否かを判定する。現在の運転モードが自動運転モードMDD2であり、当該一連の処理の前回の実行時の運転モードが手動運転モードMDD1であった場合は、走行モードが手動運転モードMDD1から自動運転モードMDD2に切り替わったとの判定をなす。現在の運転モードが当該一連の処理の前回の実行時の運転モードと同じである場合は、操作モードが手動運転モードMDD1から自動運転モードMDD2に切り替わったとの判定をなさない。また、現在の自動運転モードが手動運転モードMDD1である場合は、走行モードが手動運転モードMDD1から自動運転モードMDD2に切り替わったとの判定をなさない。
【0062】
ステップS21において、走行モードが手動運転モードMDD1から自動運転モードMDD2に切り替わったとの判定をなしていない場合(NO)、制御装置70は、処理をステップS22に移行する。ステップS22において、制御装置70は、走行モードとして手動運転モードMDD1が設定されているか否かを判定する。手動運転モードMDD1が設定されていない場合(S22:NO)、自動運転モードMDD2が設定されているため、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。一方、手動運転モードMDD1が設定されている場合(S22:YES)、制御装置70は、処理をステップS28に移行する。
【0063】
その一方で、ステップS21において、走行モードが手動運転モードMDD1から自動運転モードMDD2に切り替わったとの判定をなしている場合(YES)、制御装置70は、処理を次のステップS23に移行する。ステップS23において、制御装置70は、シートの制御モードとして酔い抑制モードMD2が選択されているか否かを判定する。酔い抑制モードMD2が選択されている場合(S23:YES)、制御装置70は、処理をステップS24に移行する。
【0064】
ステップS24において、制御装置70の通知処理部73は、通知装置などを通じて、ヘッドレスト23及びシートバック22を乗員後方Crに傾斜させる旨を乗員200A,200Bに通知させる。続いて、ステップS25において、制御装置70のシート制御部74は、ヘッドレスト23の現在位置をヘッドレスト基準位置として取得する。この場合、シート制御部74は、ヘッドレスト23の現在位置と相関するパラメータとして、第3電動モータ54の回転角を取得してもよい。
【0065】
次のステップS26において、シート制御部74は、シートバック22の現在位置をシートバック基準位置として取得する。この場合、シート制御部74は、シートバック22の現在位置と相関するパラメータとして、第2電動モータ44の回転角を取得してもよい。
【0066】
そして、ステップS27において、シート制御部74は、シートバック22及びヘッドレスト23のうちの少なくとも一方を乗員後方Crに回動させる後傾処理を実行する。シート制御部74は、後傾処理において、ヘッドレスト用傾斜装置50の第2傾斜用アクチュエータ53を駆動させることにより、ヘッドレスト23の位置がヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crとなるようにヘッドレスト23を回動させる。この場合、例えば図4における時計回り方向にヘッドレスト23が回動する。
【0067】
なお、後傾処理では、後傾させたヘッドレスト23の上下の位置を、シート20A,20Bに着座している乗員の体格の大きさによって可変させてもよい。例えば大柄な乗員がシート20A,20Bに着座している場合、シート制御部74は、後傾処理において、小柄な乗員がシート20A,20Bに着座している場合と比較して車両上方Zaにヘッドレスト23を配置してもよい。また、小柄な乗員がシート20A,20Bに着座している場合、シート制御部74は、後傾処理において、図4に示すようにシートバック22の一部分がシートバック22の収容凹部221内に位置する態様で、ヘッドレスト23をヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに変位させてもよい。このようにヘッドレスト23の上下の位置を調整する場合、シート制御部74は、ヘッドレスト用傾斜装置50の第2傾斜用アクチュエータ53だけではなく、スライド装置40のスライド用アクチュエータ42も駆動させる。
【0068】
ちなみに、シートバック22を自動で座部21に対して回動させることができる場合、シート制御部74は、後傾処理において、シートバック22の位置がシートバック基準位置よりも乗員後方Crとなるようにシートバック22を座部21に対して回動させてもよい。この際、シート制御部74は、シートバック用傾斜装置30の第1傾斜用アクチュエータ33を駆動させる。
【0069】
後傾処理が終了すると、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。
その一方で、ステップS23において、酔い抑制モードMD2が選択されていない場合、すなわち通常モードMD1が選択されている場合(NO)、制御装置70は、処理をステップS28に移行する。
【0070】
ステップS28において、制御装置70は、ヘッドレスト23の現在位置がヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに位置しているか否かを判定する。ヘッドレスト23の現在位置がヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに位置しているとの判定をなしていない場合(S28:NO)、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。
【0071】
一方、ステップS28において、ヘッドレスト23の現在位置がヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに位置しているとの判定をなしている場合(YES)、制御装置70は、処理をステップS29に移行する。そして、ステップS29において、制御装置70のシート制御部74は、ヘッドレスト23をヘッド基準位置に戻す基準復帰処理を実行する。シート制御部74は、基準復帰処理において、ヘッドレスト用傾斜装置50の第2傾斜用アクチュエータ53を作動させることにより、ヘッドレスト23をヘッドレスト基準位置に向けて回動させる。この際、シート制御部74は、第2傾斜用アクチュエータ53だけではなく、スライド装置40のスライド用アクチュエータ42も作動させることにより、ヘッドレスト23の上下の位置も調整できる。
【0072】
ちなみに、後傾処理においてシートバック22をシートバック基準位置よりも乗員後方Crに回動させた場合、シート制御部74は、基準復帰処理において、シートバック22もシートバック基準位置に向けて回動させる。この際、シート制御部74は、シートバック用傾斜装置30の第1傾斜用アクチュエータ33を作動させる。
【0073】
基準復帰処理が終了した場合、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。
次に、図9を参照し、走行モードとして自動運転モードMDD2が設定されている場合に制御装置70が実行する一連の処理について説明する。
【0074】
はじめのステップS31において、制御装置70は、シートの制御モードとして酔い抑制モードMD2が選択されているか否かを判定する。酔い抑制モードMD2が選択されている場合は、走行モードとして自動運転モードMDD2が選択された際に後傾処理が実行されている。そのため、酔い抑制モードMD2が選択されている場合は、ヘッドレスト23がヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに位置していると見なせる。一方、酔い抑制モードMD2が選択されていない場合は、走行モードとして自動運転モードMDD2が選択された際に後傾処理が実行されていない。すなわち、酔い抑制モードMD2が選択されていない場合は、ヘッドレスト23がヘッドレスト基準位置に位置していると見なせる。
【0075】
そのため、酔い抑制モードMD2が選択されていない場合(S31:NO)、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、自動運転モードMDD2が設定されている状態が継続している場合、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。一方、酔い抑制モードMD2が選択されている場合(S31:YES)、制御装置70は、処理をステップS32に移行する。
【0076】
ステップS32において、制御装置70の衝突判定部75は、車両10が障害物に衝突するまでに要する時間である衝突予測時間TTCを取得する。例えば、衝突判定部75は、車両10から障害物までの距離を、車両10の障害物への接近速度で割ることにより、衝突予測時間TTCを取得できる。なお、車両10から障害物までの距離、及び、車両10の障害物への接近速度は、車外監視系110によって取得できる。
【0077】
続いて、ステップS33において、衝突判定部75は、衝突予測時間TTCが予測時間判定値TTCTh未満であるか否かを判定する。予測時間判定値TTCThは、車両10が障害物に衝突する可能性があるか否かを判断するための判断基準として設定されている。衝突予測時間TTCが予測時間判定値TTCTh未満である場合は、車両10が障害物に衝突する可能性ありと見なす。一方、衝突予測時間TTCが予測時間判定値TTCTh以上である場合は、車両10が障害物に衝突する可能性ありと見なさない。
【0078】
衝突予測時間TTCが予測時間判定値TTCTh以上である場合(S33:NO)、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、自動運転モードMDD2が設定されている状態が継続している場合、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。一方、衝突予測時間TTCが予測時間判定値TTCTh未満である場合(S33:YES)、衝突判定部75は、処理をステップS34に移行する。
【0079】
ステップS34において、制御装置70のシート制御部74は、上記の基準復帰処理を実行する。すなわち、シート制御部74は、ヘッドレスト用傾斜装置50の作動によってヘッドレスト23がヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに傾斜している状況下で、車両10が障害物に衝突する可能性があるとの判定を衝突判定部75がなしている場合、第2傾斜用アクチュエータ53の作動によってヘッドレスト23をヘッドレスト基準位置に向けて変位させる。また、シート制御部74は、シートバック用傾斜装置30の作動によってシートバック22がシートバック基準位置よりも乗員後方Crに傾斜している状況下で、車両10が障害物に衝突する可能性があるとの判定を衝突判定部75がなしている場合、第1傾斜用アクチュエータ33の作動によってシートバック22をシートバック基準位置に向けて変位させる。
【0080】
基準復帰処理が完了した場合、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、自動運転モードMDD2が設定されている状態が継続している場合、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。
【0081】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)本実施形態では、シート20A,20Bに着座している乗員の規定方向加速度GAを基に、乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定している。すなわち、乗員の頭部201に作用する加速度の向きと、当該加速度の大きさとを用いることにより、乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かを判定できる。
【0082】
(1-2)車両10に複数の乗員が搭乗している場合、乗員の頭部201の向きが乗員毎に異なっていることがある。本実施形態では、乗員毎に、規定方向Daを設定することができる。そして、複数の乗員のうち、第1乗員に対して設定された規定方向Daの加速度成分の大きさが、第1乗員の頭部201に作用する規定方向加速度GAとして導出される。また、複数の乗員のうち、第2乗員に対して設定された規定方向Daの加速度成分の大きさが、第2乗員の頭部201に作用する規定方向加速度GAとして導出される。そのため、乗員が乗り物酔いする可能性があるか否かの判定を乗員毎に行うことができる。
【0083】
(1-3)乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定がなされた場合、その旨が乗員に対して通知される。そのため、乗員の姿勢を乗り物酔いしにくい姿勢に変える機会を当該乗員に与えることができる。
【0084】
自動運転モードMDD2で車両10が自動走行している場合、乗員は、読書をしたり、移動式端末の画面を見たりして車室内で過ごすことが考えられる。この場合、乗員は、車両前方Xfよりもやや下方を向くことが多い。すると、乗員の規定方向Daと車両前方Xfとの乖離が小さくなる。そのため、車両10が加速したり減速したりすると、規定方向加速度GAが大きくなり、乗員が乗り物酔いしやすくなる。
【0085】
この点、本実施形態では、乗り物酔いする可能性があるとの判定がなされた場合には、その旨が乗員に対して通知される。したがって、車両10の自動走行中において、乗員の姿勢を改めさせることができる。
【0086】
(1-4)本実施形態では、自動運転モードMDD2で車両10が自動走行している場合には、後傾処理が実行される。後傾処理が実行されると、ヘッドレスト23がヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに変位されたり、シートバック22がシートバック基準位置よりも乗員後方Crに変位されたりする。このようにヘッドレスト23及びシートバック22が変位した場合であっても、乗員がシートバック前面22a及びヘッドレスト前面23aに接触している状態を維持していると、車両前方Xfと規定方向Daとの乖離を大きくできる。その結果、車両10の前後加速度Gxの大きさが大きくなった場合に、規定方向加速度GAが大きくなることを抑制できる。したがって、車両10の前後加速度Gxの大きさが大きくなった場合に乗員が乗り物酔いしにくくなる姿勢を、乗員に対して案内できる。
【0087】
(1-5)自動運転モードMDD2から手動運転モードMDD1に変更された場合、基準復帰処理の実行によって、ヘッドレスト23がヘッドレスト基準位置に戻る。また、シートバック22がシートバック基準位置に戻る。これにより、運転者200Aの車両操作に従って車両10を走行させる場合には、運転者200Aの姿勢を、運転に適した姿勢にしやすくなる。
【0088】
(1-6)後傾処理の実行によってヘッドレスト23及びシートバック22がそれらの基準位置よりも乗員後方Crに位置している場合であっても、車両10が障害物と衝突する可能性ありとの判定がなされているときには、基準復帰処理が実行される。これにより、ヘッドレスト23がヘッドレスト基準位置に戻り、シートバック22がシートバック基準位置に戻る。こうしたヘッドレスト23及びシートバック22の変位によって、車両10が障害物と衝突する可能性があることを乗員に知らせることができる。
【0089】
(第2実施形態)
車両用制御装置、車両及びシートの第2実施形態を図10に従って説明する。以下の説明においては、第1実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、第1実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0090】
図10を参照し、車両10が悪路を走行する場合に制御装置70が実行する一連の処理について説明する。
はじめのステップS41において、制御装置70は、運転モードとして自動運転モードMDD2が選択されているか否かを判定する。自動運転モードMDD2が選択されていない場合(S41:NO)、手動運転モードMDD1が選択されているため、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。一方、自動運転モードMDD2が選択されている場合(S41:YES)、制御装置70は、処理をステップS42に移行する。
【0091】
ステップS42において、制御装置70は、シートの制御モードとして酔い抑制モードMD2が選択されているか否かを判定する。酔い抑制モードMD2が選択されていない場合(S42:NO)、通常モードMD1が選択されているため、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。一方、酔い抑制モードMD2が選択されている場合(S42:YES)、制御装置70は、処理をステップS43に移行する。
【0092】
ステップS43において、制御装置70は、車両10の走行する路面の凹凸度合いを数値化した悪路指数INDを取得する。
ここで、悪路指数INDの一例について説明する。例えば、制御装置70は、上下加速度Gzの時系列データを解析することにより、当該時系列データに含まれる振動成分のうち、所定の周波数の振動成分を抽出する。上下加速度Gzの時系列データは、時系列で連続する複数の上下加速度Gzを含むデータである。所定の周波数とは、乗員の乗り物酔いを誘発しやすい振動の周波数であり、実験及びシミュレーションなどによって得ることができる。例えば、当該時系列データに対してフィルタ処理を施すことにより、制御装置70は、所定の周波数の振動成分を抽出できる。この場合、制御装置70は、所定の周波数の振動成分の振幅を悪路指数INDとして導出すればよい。
【0093】
ステップS43において悪路指数INDを取得すると、制御装置70は、処理をステップS44に移行する。ステップS44において、制御装置70の悪路判定部76は、悪路指数INDが悪路指数判定値INDTh以上であるか否かを判定する。悪路指数判定値INDThは、車両10の走行する路面が悪路であるか否かを判断するための判断基準である。悪路指数INDが悪路指数判定値INDTh以上である場合は、車両10が悪路を走行していると見なせる。悪路指数INDが悪路指数判定値INDTh未満である場合は、車両10が悪路を走行していると見なせない。
【0094】
悪路指数INDが悪路指数判定値INDTh以上である場合(S44:YES)、車両10が悪路を走行しているとの判定を悪路判定部76がなすため、制御装置70は、処理をステップS45に移行する。ステップS45において、制御装置70のシート制御部74は、上記の基準復帰処理を実行する。そして、基準復帰処理の終了後、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。そして、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。
【0095】
一方、ステップS44において、悪路指数INDが悪路指数判定値INDTh未満である場合(NO)、車両10が悪路を走行しているとの判定を悪路判定部76がなさないため、制御装置70は、一連の処理を一旦終了する。すなわち、車両10が悪路を走行しているとの判定をなさない場合には、ヘッドレスト23がヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに位置する状態、及び、シートバック22がシートバック基準位置よりも乗員後方Crに位置する状態を許容する。そして、所定の制御サイクルの経過後、制御装置70は、当該一連の処理を開始する。
【0096】
本実施形態によれば、上記第1実施形態の効果(1-1)~(1-6)に加え、以下の効果をさらに得ることができる。
(2-1)車両10が悪路を走行している場合、車両10の上下加速度Gzが比較的大きく振動する。このような状態で乗員の頭部201の向きを車両上方Zaに向かせた場合、規定方向加速度GAが大きくなり、乗員が乗り物酔いしやすくなるおそれがある。そこで、本実施形態では、車両10が悪路を走行している場合、ヘッドレスト23がヘッドレスト基準位置に配置され、且つシートバック22がシートバック基準位置に配置される。これにより、乗員の頭部201が車両上方Zaを向くことを抑制できる。その結果、規定方向加速度GAが大きくなることを抑制でき、ひいては乗員が乗り物酔いすることを抑制できる。
【0097】
(第3実施形態)
車両用制御装置、車両及びシートの第2実施形態を図11に従って説明する。以下の説明においては、上記各実施形態と相違している部分について主に説明するものとし、上記各実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0098】
図11に示すように、車両10に搭載される複数のシートのうち、同乗者用シート20Bは、上記各実施形態の場合と同様に、ヘッドレスト23をヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに傾斜させることができる。すなわち、同乗者用シート20Bは、ヘッドレスト用傾斜装置50を有している。また、同乗者用シート20Bは、スライド装置40を有していてもよい。
【0099】
また、同乗者用シート20Bは、上記各実施形態の場合と同様に、シートバック22をシートバック基準位置よりも乗員後方Crに傾斜させることができる。すなわち、同乗者用シート20Bは、シートバック用傾斜装置30を有している。
【0100】
一方、運転者用シート20Aは、上記各実施形態の場合とは異なり、ヘッドレスト23をヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに傾斜させることができない。すなわち、運転者用シート20Aは、ヘッドレスト用傾斜装置50を有していない。また、運転者用シート20Aは、スライド装置40を有していなくてもよい。
【0101】
本実施形態によれば、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(3-1)同乗者200Bが同乗者用シート20Bに着座する場合には、同乗者用シート20Bのヘッドレスト23を乗員後方Crに傾斜させることにより、同乗者200Bの頭部201の向きを変更できる。これにより、同乗者200Bに対する規定方向加速度GAが大きくなることを抑制できる。その結果、同乗者200Bが乗り物酔いしにくくなる。一方、運転者用シート20Aにあっては、同乗者用シート20Bとは異なり、ヘッドレスト23を乗員後方Crに傾斜させることができない。そのため、運転者用シート20Aに着座する運転者200Aの頭部201の向きが、車両操作を行うのに適さない向きになることを抑制できる。
【0102】
(変更例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0103】
・上記各実施形態において、ヘッドレスト23として、図12に示すような形状のものを採用してもよい。すなわち、ヘッドレスト23のうち、車両10の上下方向におけるヘッドレスト23の中心よりも下方の部分をヘッドレスト下部23Aとする。ヘッドレスト下部23Aには、ヘッドレスト23の下端に向かうにつれてヘッドレスト前面23aが乗員後方Crに位置するように構成された部分23A1を有している。これにより、図13に示したようにヘッドレスト23をヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに傾斜させた場合に、乗員の首202にかかる負担を小さくしたり、首202での血流の圧迫を抑制したりすることができる。なお、図13は、シートバック22及びヘッドレスト23の双方を乗員後方Crに傾斜させた状態の一例である。
【0104】
・上記各実施形態において、シートバック22として、図12に示すような形状のものを採用してもよい。すなわち、シートバック22のうち、車両10の上下方向におけるシートバック22の中心よりも上方の部分をシートバック上部22Aとする。シートバック上部22Aには、シートバック22の上端に向かうにつれてシートバック前面22aが乗員後方Crに位置するように構成された部分22A1を有している。これにより、図13に示したようにヘッドレスト23をヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに傾斜させた場合に、乗員の首202にかかる負担を小さくしたり、首202での血流の圧迫を抑制したりすることができる。
【0105】
・上記各実施形態において、後傾処理によってヘッドレスト23をヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに傾斜させる場合、その傾斜度合いを可変設定できるようにしてもよい。例えば酔い抑制モードMD2として、複数のモードが設定されている場合、選択されている酔い抑制モードに応じてヘッドレスト23の乗員後方Crへの傾斜度合いを調整してもよい。
【0106】
・上記各実施形態において、後傾処理によってシートバック22をシートバック基準位置よりも乗員後方Crに傾斜させる場合、その傾斜度合いを可変設定できるようにしてもよい。例えば酔い抑制モードMD2として、複数のモードが設定されている場合、選択されている酔い抑制モードに応じてシートバック22の乗員後方Crへの傾斜度合いを調整してもよい。
【0107】
・上記各実施形態において、酔い抑制モードMD2として複数のモードを設定してもよい。そして、複数の酔い抑制モードのうち、第1酔い抑制モードが選択されている場合、後傾処理によってヘッドレスト23及びシートバック22の双方を乗員後方Crに傾斜させてもよい。また、複数の酔い抑制モードのうち、第2酔い抑制モードが選択されている場合、ヘッドレスト23及びシートバック22のうちヘッドレスト23のみを乗員後方Crに傾斜させてもよい。また、複数の酔い抑制モードのうち、第3酔い抑制モードが選択されている場合、ヘッドレスト23及びシートバック22のうちシートバック22のみを乗員後方Crに傾斜させてもよい。
【0108】
・上記各実施形態では、手動運転モードMDD1が選択されている場合、同乗者用シート20Bについてもヘッドレスト23及びシートバック22を乗員後方Crに傾斜させることを規制している。しかし、同乗者用シート20Bについては、ヘッドレスト23及びシートバック22を乗員後方Crに傾斜させることを許容してもよい。この場合、自動運転モードMDD2が選択されている場合と比較し、ヘッドレスト23の乗員後方Crへの傾斜度合いを小さくしてもよい。同様に、自動運転モードMDD2が選択されている場合と比較し、シートバック22の乗員後方Crへの傾斜度合いを小さくしてもよい。
【0109】
・上記各実施形態では、ヘッドレスト23及びシートバック22の乗員後方Crへの傾斜が許可されている状況下で酔い抑制モードMD2が選択されている場合、ヘッドレスト23及びシートバック22の位置が自動でそれぞれ変位されるが、これに限らない。例えば、ヘッドレスト23及びシートバック22の乗員後方Crへの傾斜が許可されている状況下で酔い抑制モードMD2が選択されている場合、乗員がシートの操作部を操作することによってヘッドレスト23及びシートバック22を乗員後方Crに傾斜させることを許可してもよい。ただし、酔い抑制モードMD2が選択されていない場合、乗員がシートの操作部を操作してもヘッドレスト23及びシートバック22を乗員後方Crに傾斜させることができないようにすることが好ましい。
【0110】
・自動運転モードMDD2が設定されているために車両10が自動走行している状況下で、シートの制御モードが通常モードMD1から酔い抑制モードMD2に変更されることがある。この場合、酔い抑制モードMD2が選択されたことを契機に後傾処理を実行してもよい。
【0111】
・後傾処理では、ヘッドレスト23をヘッドレスト基準位置よりも乗員後方Crに傾斜させるのであれば、シートバック22を乗員後方Crに傾斜させなくてもよい。反対に、後傾処理では、シートバック22をシートバック基準位置よりも乗員後方Crに傾斜させるのであれば、ヘッドレスト23を乗員後方Crに傾斜させなくてもよい。
【0112】
・頭部201がヘッドレスト23にまで達しないような小柄な乗員がシートに着座している場合、後傾処理では、ヘッドレスト23は変位させなくてもよい。この場合、シートバック22をシートバック基準位置よりも乗員後方Crに変位させればよい。
【0113】
・上記各実施形態では、後傾処理において、運転者用シート20Aについてもヘッドレスト23及びシートバック22を乗員後方Crに傾斜させるようにしている。しかし、後傾処理において、運転者用シート20Aについてはヘッドレスト23及びシートバック22の乗員後方Crへの傾斜を規制してもよい。これにより、運転者用シート20Aに着座する運転者200Aの頭部201の向きが、車両操作に適さない向きになることを抑制できる。
【0114】
・乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定がなされた場合、通知処理を実行するのであれば、後傾処理を実行しなくてもよい。
・乗員が乗り物酔いする可能性があるとの判定がなされた場合に後傾処理を実行するようにしてもよい。この場合、通知処理を実行することは必須ではない。
【0115】
・制御装置70は、衝突判定部75を有していなくてもよい。
・制御装置70は、悪路判定部76を有していなくてもよい。
・悪路指数INDは、上記第2実施形態で説明したものとは異なるものであってもよい。例えば、「特開2012-183994号公報」に開示されている手法で導出した値を悪路指数INDとして採用してもよい。
【0116】
・加速度情報取得部71は、現時点の加速度情報ではなく、近未来の加速度情報を取得するようにしてもよい。例えばナビゲーション装置130から得た情報を基に、制御装置70は、車両10が加速したり減速したりする可能性があるか否かを予測する。例えば山道を走行する場合には、車両10の加減速度が大きくなりやすい。そして、その際に発生しうる加速度の大きさ及びその向きを、加速度情報として加速度情報取得部71が取得してもよい。
【0117】
・スライド装置は、ヘッドレスト23を上下にスライド移動させることができるのであれば、スライド装置40とは異なる構成であってもよい。
・運転者用シート20Aがヘッドレスト用傾斜装置50を備えているのであれば、同乗者用シート20Bはヘッドレスト用傾斜装置50を備えていなくてもよい。
【0118】
・車両に搭載される複数のシートのうち、少なくとも1つのシートは、乗員を車両前方Xfとは異なる方向に向かせるように設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10…車両
20A…運転者用シート
20B…同乗者用シート
22…シートバック
22A…シートバック上部
22a…シートバック前面
23…ヘッドレスト
23A…ヘッドレスト下部
23a…ヘッドレスト前面
30…シートバック用傾斜装置
40…スライド装置
50…ヘッドレスト用傾斜装置
53…第2傾斜用アクチュエータ
70…車両用制御装置の一例である制御装置
71…加速度情報取得部
72…乗り物酔い判定部
73…通知処理部
74…シート制御部
75…衝突判定部
76…悪路判定部
200A…運転者
200B…乗員
201…頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13