(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072869
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ミシン針
(51)【国際特許分類】
D05B 85/00 20060101AFI20220510BHJP
【FI】
D05B85/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182550
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000104021
【氏名又は名称】オルガン針株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157912
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 健
(74)【代理人】
【識別番号】100074918
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】箱山 和孝
(72)【発明者】
【氏名】室賀 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】松田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】三矢 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】遠田 友美
(72)【発明者】
【氏名】酒井 友貴
(72)【発明者】
【氏名】香川 真貴子
(72)【発明者】
【氏名】小松 勇太
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CE23
3B150DD07
(57)【要約】
【課題】ミシン針の種類を目視で確認しやすくする。
【解決手段】ミシンに取り付けられる円柱状の柄部11と、前記柄部11よりも先端側に設けられた針幹部20と、を備えたミシン針であって、前記柄部11の周面に、全周に渡って連続する溝部12を形成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンに取り付けられる円柱状の柄部と、前記柄部よりも先端側に設けられた針幹部と、を備えたミシン針であって、
前記柄部の周面に、全周に渡って連続する溝部を形成した、
ミシン針。
【請求項2】
前記溝部の形状・幅・本数の少なくともいずれかによって、針の種類を識別可能とした、
請求項1に記載のミシン針。
【請求項3】
複数の溝部を使用して2進数表記を行うことで、針の種類を識別可能とした、
請求項1または2に記載のミシン針。
【請求項4】
前記針幹部には、糸を糸穴に案内する表溝が前記溝部と交差する位置まで形成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載のミシン針。
【請求項5】
前記溝部に塗料を入れた、
請求項1~4のいずれか1項に記載のミシン針。
【請求項6】
前記ミシン針は、ネジ止めによってミシンに取り付けられるものであり、
前記溝部は、前記ネジ止めの位置に形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載のミシン針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミシンに取り付けて使用されるミシン針に関する。
【背景技術】
【0002】
ミシン針は、ミシンの針留め部に下方から挿入されてネジなどで取り付けられて使用される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうしたミシン針は細くて小さいため、針の種類を目視で確認しづらい場合があった。
そこで、本発明は、ミシン針の種類を目視で確認しやすくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、本発明は、ミシンに取り付けられる円柱状の柄部と、前記柄部よりも先端側に設けられた針幹部と、を備えたミシン針であって、前記柄部の周面に、全周に渡って連続する溝部を形成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明は上記の通りであり、柄部の周面に溝部を形成した。このような構成によれば、溝部とミシン針の種類(例えば針番手や製品名称等の情報)とを紐づけることで、ミシン針の種類を目視で確認しやすくすることができる。
しかも、溝部は全周に渡って連続して形成されているため、針の向きにかかわらずミシン針の種類を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ミシン針の(a)正面図、(b)側面図、(c)背面図、(d)断面図である。
【
図2】溝部付近の部分拡大図であって、(a)正面図、(b)断面図である。
【
図3】ミシン針をミシンの針留め部に取り付けた状態を説明する図である。
【
図4】溝部の本数を変えたミシン針を示す図であって、(a)溝部が1本のミシン針の正面図、(b)溝部が2本のミシン針の正面図、(c)溝部が3本のミシン針の正面図、(d)溝部が4本のミシン針の正面図である。
【
図6】溝部と表溝とを交差させたミシン針の正面図である。
【
図7】溝部に塗料を入れたミシン針の正面図である。
【
図8】ネジ止めの位置に溝部を形成したミシン針を、ミシンの針留め部に取り付けた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
本実施形態に係るミシン針10は、
図3に示すようなミシンの針留め部31に取り付けられて使用される。この針留め部31は、ミシンが作動したときに上下に往復動するようになっており、針留め部31と一体的に往復動するミシン針10によって縫製を行うようになっている。
【0009】
図3に示す例では、針留め部31に複数のミシン針10を平行に取り付け可能となっている。この針留め部31には、下方からミシン針10を挿入可能な取付穴が複数形成されている。また、この針留め部31は、取付穴の内部に進退可能な針留めネジ32を備える。針留めネジ32を締結すると、針留めネジ32が取付穴の内部に進入することで、取付穴に挿入されたミシン針10を押さえつけて固定できるようになっている。このように、本実施形態に係るミシン針10は、ネジ止めによってミシンに取り付けられる。
【0010】
このミシン針10は、
図1に示すように、ミシンに取り付けられる柄部11と、柄部11よりも先端側に設けられた針幹部20と、柄部11と針幹部20とを繋ぐテーパ部13と、を備える。
柄部11は、
図3に示すように、ミシンの針留め部31に保持される部分である。この柄部11は、太さが一定となるように円柱状に形成されている。
【0011】
テーパ部13は、柄部11と針幹部20との間に設けられた円錐台状の部位である。このテーパ部13は、先端方向に行くに従って次第に縮径するように形成されている。
【0012】
針幹部20は、縫製対象の生地を貫通可能な部位である。この針幹部20の先端は尖った形状となっており、針先部28を形成している。この針幹部20の先端付近には、糸を通すための糸穴21が貫通形成されている。
この針幹部20の表側には、
図1(a)に示すように、糸穴21の位置から柄部11の
方向へ糸を案内する表溝22が形成されている。
【0013】
また、この針幹部20の裏側には、
図1(c)に示すように、糸穴21よりも柄部11側に抉り部23が形成されている。抉り部23は、
図1(b)に示すように、針幹部20の外表面をくぼませた形状として形成されている。
そして、この抉り部23よりも更に柄部11側には、裏側で糸を案内する裏溝24が形成されている。
【0014】
ところで、本実施形態に係る柄部11の周面には、
図1および
図2に示すように、全周に渡って連続する溝部12が形成されている。この溝部12は、柄部11の表面を彫ることで形成されている。本実施形態に係る溝部12は、それぞれ全周に渡って幅が変化しないように、同一幅で形成されている。
【0015】
本実施形態においては、この溝部12とミシン針10の種類(例えば針番手や製品名称等の情報)とが関連付けられており、この溝部12を参照することでミシン針10の種類を確認できるようになっている。例えば、この溝部12を設けることで、当該ミシン針10の製品名称を特定できるようになっている。
【0016】
なお、色を塗ったりすることでミシン針10の種類を判別することも可能であるが、単に色を塗ったりするだけでは、塗料がはげ落ちたり、視認性が悪かったりするおそれがある。しかしながら、本実施形態のように溝部12を形成すれば、塗料がはげ落ちるおそれはなく、また、針の輪郭が変化するので視認性も高くすることができる。
【0017】
しかも、溝部12は全周に渡って連続して形成されているため、ミシン針10の向きにかかわらず(ミシン針10の表側を見ているか裏側を見ているかにかかわらず)、ミシン針10の種類を確認することができる。
【0018】
また、この溝部12が設けられていることで、ミシン針10の放熱効果を高めることもできる。ミシンで高速の縫製作業を行った場合、摩擦熱によりミシン針10が非常に高温(200℃程度)になることがある。この場合でも、溝部12を形成して表面積を増やすことで放熱効果を上げることができる。放熱効果を上げることで、例えば針の交換時の火傷の可能性を低下させることができる。
【0019】
また、この溝部12が設けられていることで、ミシンから機械油が漏れた場合でも、機械油が針先側に流れることを抑制できる。例えば、ミシンから漏れた油が針留め部31を伝ってミシン針10に流れてきた場合でも、この油を一時的に溝部12で関止めることができるので、縫製対象物に油が付着しにくい構造となっている。
【0020】
なお、
図1および
図2に示すミシン針10は、3本の溝部12を備えており、これら3本の溝部12が同じ形状かつ同じ幅で形成されている。しかしながら、これに限らず、溝部12の形状・幅・本数は自由に設定可能である。
【0021】
例えば、
図4に示すように、溝部12の本数が異なる複数のミシン針10を使用してもよい。そして、溝部12の本数をミシン針10の種類と対応させることで、溝部12の本数によってミシン針10の種類を識別可能としてもよい。すなわち、溝部12の本数でミシン針10の種類を表すようにしてもよい。一例として、ミシン針10の番手が上がるごとに、溝部12の本数を増やすようにしてもよい。
【0022】
また、複数の溝部12を使用して2進数表記を行い、これにより針の種類を表示してもよい。すなわち、複数の溝部12をそれぞれ2進数の各位に対応付け、溝部12の有無によって各位が「0」であるか「1」であるかを表示するようにしてもよい。具体的には、並列に配置された複数の溝部12のうち、n番目(nは自然数)の溝部が「2の(n-1)乗」の位を表すようにし、n番目の溝部が刻印されていれば「2の(n-1)乗」の位は「1」であり、n番目の溝部が刻印されていれば「2の(n-1)乗」の位は「0」であるとしてもよい。このように溝部12を使用して2進数表記を行うようにすれば、溝部12の本数よりも多くの情報を表示することができる。
【0023】
例えば、
図4(d)に示すように、最大で4本の溝部12を使用できる場合、2の4乗で16種類の表示(溝部12なしを除けば15種類の表示)を行うことができる。
図5は、溝部12で針番手を表示した場合の、溝部12と針番手との対応表の一例である。この例では、最大で4本の溝部12を使用でき、また、4本の溝部12を、先端側から順に、第1溝部12a、第2溝部12b、第3溝部12c、第4溝部12dとしている(
図4(d)参照)。このとき、第1溝部12aは2進数の1の位を表し、第2溝部12bは2進数の2の位を表し、第3溝部12cは2進数の4の位を表し、第4溝部12dは2進数の8の位を表している。これにより、例えば第1溝部12aのみが刻印されている場合、2進数「0001」=10進数「1」を表していることになる。また、すべての溝部12が刻印されている場合、2進数「1111」=10進数「15」を表していることになる。これにより、溝部12なしを除けば、1~15の数字を表示することができる。
図5の例では、溝部12が表示する数字が大きくなるに従い、針番手も大きくなるようにしている。
【0024】
また、図示しないが、溝部12の形状が異なる複数のミシン針10を使用してもよい。例えば、溝部12の形状を直線状だけではなく波状やジグザグ状にしたり、ミシン針10の長手方向に対する溝部12の角度を変えたリして、溝部12の形状にバリエーションを設けてもよい。そして、溝部12の形状をミシン針10の種類と対応させることで、溝部12の形状によってミシン針10の種類を識別可能としてもよい。すなわち、溝部12の形状でミシン針10の種類を表すようにしてもよい。
【0025】
また、図示しないが、溝部12の幅が異なる複数のミシン針10を使用してもよい。そして、溝部12の幅をミシン針10の種類と対応させることで、溝部12の幅によってミシン針10の種類を識別可能としてもよい。すなわち、溝部12の幅でミシン針10の種類を表すようにしてもよい。
【0026】
なお、上記したように溝部12の形状・幅・本数によってミシン針10の種類を識別可能とする場合、形状・幅・本数のいずれかによってミシン針10の種類を識別可能としてもよいし、形状・幅・本数の2つ以上の組み合わせによってミシン針10の種類を識別可能としてもよい。
【0027】
また、
図6は、本実施形態の変形例を示す図である。この
図6が示すように、表溝22を延長して、溝部12と交差する位置まで形成してもよい。このとき、裏溝24は、
図1(c)と同様に、溝部12と交差していないことが望ましい。すなわち、表溝22が溝部12と交差し、裏溝24が溝部12と交差しないようにしてもよい。このように構成すれば、溝が交差している側が表側であるため、ミシン針10を針留め部31に取り付けるときに容易に表裏を識別することができる。すなわち、従来のミシン針10では、ミシン針10の表裏がわかりづらく、特に細い番手のミシン針10では取り付けのミスが発生することがあった。この点、表溝22と溝部12とを交差させるようにすれば、作業者は容易にミシン針10の表裏を識別することができ、取り付けのミスを防止することができる。
【0028】
また、
図7は、本実施形態の別の変形例を示す図である。この
図7が示すように、溝部12に塗料を入れてもよい。このように溝部12に塗料を入れることで、溝部12を目立ちやすくすることができる。また、塗料を溝部12に入り込ませることで、塗料が剥げ落ちにくくなっている。
【0029】
また、
図8は、本実施形態の別の変形例を示す図である。この
図8が示すように、溝部12を針留め部31によるネジ止めの位置に形成してもよい。すなわち、ミシン針10をミシンに取り付けたときに、針留めネジ32の先端が溝部12の内部に入り込むような位置に、溝部12を形成してもよい。このようにすれば、溝部12を使用してミシン針10の脱落を防止することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 ミシン針
11 柄部
12 溝部
12a 第1溝部
12b 第2溝部
12c 第3溝部
12d 第4溝部
13 テーパ部
20 針幹部
21 糸穴
22 表溝
23 抉り部
24 裏溝
28 針先部
31 針留め部
32 針留めネジ