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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022072870
(43)【公開日】2022-05-17
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/30 20060101AFI20220510BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20220510BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20220510BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20220510BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20220510BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20220510BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20220510BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20220510BHJP
   F02P 19/02 20060101ALI20220510BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20220510BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B60W10/30 900
B60K6/48 ZHV
B60W10/26 900
B60K6/547
B60W20/13
B60W20/15
B60W10/06 900
F01P7/16 504B
F02P19/02 321D
F02D43/00 301C
F02D43/00 301N
F02D45/00 395
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020182552
(22)【出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 英長
【テーマコード(参考)】
3D202
3G384
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB01
3D202BB22
3D202BB58
3D202CC58
3D202DD22
3D202DD44
3D202DD45
3D202DD46
3D202EE00
3D202FF06
3D202FF13
3G384AA28
3G384BA25
3G384BA27
3G384BA41
3G384BA51
3G384CA25
3G384DA44
3G384FA81Z
(57)【要約】
【課題】ユーザに違和感を与えることなく、高圧バッテリが過充電状態となることを抑制する。
【解決手段】車両は、モータジェネレータと過給機付きのエンジンとの少なくとも一方の動力を用いて走行する。この車両は、モータジェネレータに電気的に接続される高圧バッテリと、過給機で圧縮された空気と冷却水との間で熱交換を行なう水冷式のインタークーラと、高圧バッテリに蓄えられた電力で作動し、インタークーラ用の冷却水を循環させる電動ポンプと、電動ポンプを制御するECUとを備える。ECUは、高圧バッテリのSOCが制御範囲の上限値SHを超えている場合は、高圧バッテリのSOCが上限値SHを超えていない場合よりも、電動ポンプのオンデューティ比を大きくする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と過給機付きの内燃機関との少なくとも一方の動力を用いて走行するハイブリッド車両であって、
前記回転電機に電気的に接続される蓄電装置と、
前記過給機で圧縮された空気と冷却水との間で熱交換を行なう水冷式のインタークーラと、
前記蓄電装置に蓄えられた電力で作動し、前記インタークーラとラジエータとの間で前記冷却水を循環させる電動ポンプと、
前記電動ポンプを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記蓄電装置の蓄電量が上限値を超えている場合は、前記蓄電装置の蓄電量が前記上限値を超えていない場合よりも、前記電動ポンプのオンオフの1周期に占めるオン期間の割合であるオンデューティ比を大きくする、ハイブリッド車両。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記蓄電装置の蓄電量が前記上限値を超えていない場合、前記電動ポンプの前記オンデューティ比を1よりも小さい値にし、
前記蓄電装置の蓄電量が前記上限値を超えている場合、前記電動ポンプの前記オンデューティ比を1にする、請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記内燃機関には、気筒内を暖めるためのグロープラグが設けられ、
前記制御装置は、前記蓄電装置の蓄電量が前記上限値を超えている場合、前記電動ポンプを作動させるとともに、前記グロープラグを作動させる、請求項1または2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記グロープラグは、前記蓄電装置に蓄えられた電力で作動する、請求項3に記載のハイブリッド車両。
【請求項5】
前記内燃機関には、排気の一部を吸気通路に還流させるための還流路と、前記還流路を通って前記吸気通路に還流される排気流量である還流量を調整可能な還流弁とが設けられ、
前記制御装置は、前記蓄電装置の蓄電量が前記上限値を超えている場合、前記電動ポンプを作動させるとともに、前記還流弁の開度を調整することによって前記還流量を減少させる、請求項1~4のいずれかに記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機(モータジェネレータ)と内燃機関(エンジン)との少なくとも一方の動力を用いて走行するハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-112932号公報(特許文献1)には、モータジェネレータとエンジンとの少なくとも一方の動力を用いて走行するハイブリッド車両のバッテリ保護装置が開示されている。この装置においては、モータジェネレータに接続される高圧バッテリのSOC(State Of Charge)が通常使用可能範囲の上限値より高い値に達した場合に、モータジェネレータにより正側の駆動力を生じさせてバッテリを放電させるとともに、エンジンにより負側の駆動力を生じさせてモータジェネレータによる正側の駆動力を吸収させる。これにより、車両全体の走行駆動力を維持しつつ、高圧バッテリの電力を早期に消費して、高圧バッテリが過充電状態となることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-112932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された装置においては、車両全体としての走行駆動力は維持されるが、エンジンの駆動力は変化するため、エンジンが発する騒音および振動が変化し、ユーザに違和感を与えてしまうことが懸念される。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ユーザに違和感を与えることなく、高圧バッテリが過充電状態となることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本開示によるハイブリッド車両は、回転電機と過給機付きの内燃機関との少なくとも一方の動力を用いて走行する。このハイブリッド車両は、回転電機に電気的に接続される蓄電装置と、過給機で圧縮された空気と冷却水との間で熱交換を行なう水冷式のインタークーラと、蓄電装置に蓄えられた電力で作動し、インタークーラとラジエータとの間で冷却水を循環させる電動ポンプと、電動ポンプを制御する制御装置とを備える。制御装置は、蓄電装置の蓄電量が上限値を超えている場合は、蓄電装置の蓄電量が上限値を超えていない場合よりも、電動ポンプのオンオフの1周期に占めるオン期間の割合であるオンデューティ比を大きくする。
【0007】
上記構成によれば、蓄電装置の蓄電量(SOC)が上限値を超えている場合、蓄電装置の蓄電量(SOC)が制御範囲の上限値未満である場合よりも、インタークーラの冷却水を循環させる電動ポンプのオンデューティ比を大きくすることによって、蓄電装置の放電量を増加させる。この際、インタークーラの冷却水の循環水量は大きくなるが、内燃機関の駆動力はほとんど変化しない。これにより、ユーザに違和感を与えることなく、蓄電装置が過充電状態となることを抑制することができる。
【0008】
(2) ある態様においては、制御装置は、蓄電装置の蓄電量が上限値を超えていない場合、電動ポンプのオンデューティ比を1よりも小さい値にし、蓄電装置の蓄電量が上限値を超えている場合、電動ポンプのオンデューティ比を1にする。
【0009】
(3) ある態様においては、内燃機関には、気筒内を暖めるためのグロープラグが設けられる。制御装置は、蓄電装置の蓄電量が上限値を超えている場合、電動ポンプを作動させるとともに、グロープラグを作動させる。
【0010】
(4) ある態様においては、グロープラグは、蓄電装置に蓄えられた電力で作動する。
【0011】
(5) ある態様においては、内燃機関には、排気の一部を吸気通路に還流させるための還流路と、還流路を通って吸気通路に還流される排気流量である還流量を調整可能な還流弁とが設けられる。制御装置は、蓄電装置の蓄電量が上限値を超えている場合、電動ポンプを作動させるとともに、還流弁の開度を調整することによって還流量を減少させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ユーザに違和感を与えることなく、高圧バッテリが過充電状態となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両の全体構成図である。
図2】エンジンの詳細構成の一例を模式的に示す図である。
図3】ECUによる電動ポンプのオンデューティ比の算出例を示す図である。
図4】高圧バッテリのSOCの制御範囲の一例を示す図である。
図5】ECUが電動ポンプを制御する際に実行する処理手順の一例を示すフローチャート(その1)である。
図6】ECUによって制御される、高圧バッテリのSOCおよび電動ポンプのオンデューティ比の変化態様の一例を示す図である。
図7】ECUが電動ポンプを制御する際に実行する処理手順の一例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
図1は、本実施の形態による車両1の全体構成図である。車両1は、エンジン10と、クラッチ15と、モータジェネレータ20と、インバータ21と、高圧バッテリ22と、DC/DCコンバータ23と、自動変速機40と、駆動輪50と、ECU(Electronic Control Unit)70とを含む。
【0016】
エンジン10は、複数の気筒を有する、過給機付きのディーゼルエンジンである。なお、エンジン10は、過給機付きのガソリンエンジンであってもよい。エンジン10のクランク軸とモータジェネレータ20の回転軸とは、クラッチ15を介在させて連結される。
【0017】
高圧バッテリ22は、モータジェネレータ20に供給される電力を蓄える蓄電装置である。高圧バッテリ22の出力電圧は、低電圧系の補機装置(たとえば後述の電動ポンプ82、グロープラグ12など)に用いられる電圧(たとえば12ボルト程度)よりも高い電圧(たとえば数百ボルト程度)に設定される。
【0018】
モータジェネレータ20は、たとえば、三相交流回転電機である。モータジェネレータ20の回転軸は、エンジン10のクランク軸と自動変速機40の入力軸との間の動力伝達経路上に連結される。なお、モータジェネレータ20と自動変速機40との間にトルクコンバータが設けられてもよい。自動変速機40の出力軸は、駆動輪50に連結される。
【0019】
インバータ21は、モータジェネレータ20と高圧バッテリ22との間で電力変換を行なう。具体的には、インバータ21は、高圧バッテリ22からの直流電力を三相交流電力に変換してモータジェネレータ20に供給したり、モータジェネレータ20が発電した三相交流電力を直流電力に変換して高圧バッテリ22に供給したりする。モータジェネレータ20は、高圧バッテリ22からインバータ21を経由して供給される電力によって駆動される。また、高圧バッテリ22は、モータジェネレータ20からインバータ21を経由して供給される電力によって充電される。なお、モータジェネレータ20とインバータ21との間に電圧変換器(昇降圧コンバータ)を設けるようにしてもよい。
【0020】
DC/DCコンバータ23は、高圧バッテリ22と低電圧系の補機装置との間に設けられ、高圧バッテリ22からの高圧の直流電力を低圧の直流電力に変換して低電圧系の補機装置に供給する。
【0021】
エンジン10およびモータジェネレータ20の少なくとも一方の動力が、自動変速機40を経由して駆動輪50に伝達される。すなわち、車両1は、エンジン10およびモータジェネレータ20の少なくとも一方の動力を用いて走行可能なハイブリッド車両である。
【0022】
車両1においては、EV走行、アシスト走行、充電走行、回生走行のいずれかに走行態様を切り替えることができる。
【0023】
EV走行中、車両1は、クラッチ15を解放状態にしてエンジン10を停止しつつ、モータジェネレータ20の動力で走行する。アシスト走行中、車両1は、クラッチ15を係合状態にしてエンジン10およびモータジェネレータ20の双方の動力を用いて走行する。したがって、EV走行中およびアシスト走行中においては、高圧バッテリ22に蓄えられた電力がモータジェネレータ20に放電される。
【0024】
充電走行中、車両1は、クラッチ15を係合状態にしてエンジン10の動力の一部を用いて走行するとともに、エンジン10の余剰エネルギ(走行に用いられないエネルギ)を用いてモータジェネレータ20が発電した電力で高圧バッテリ22を充電する。回生走行中、車両1は、減速して走行するとともに、車両1の減速エネルギを用いてモータジェネレータ20が発電した電力で高圧バッテリ22を充電する。したがって、充電走行中および回生走行中においては、モータジェネレータ20が発電した電力で高圧バッテリ22が充電される。
【0025】
ECU70は、エンジンECU(ENG-ECU)71と、モータジェネレータECU(MG-ECU)72と、ハイブリッドECU(HV-ECU)73とを含む。各ECU71~73は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵する。
【0026】
エンジンECU71は、エンジン10を制御する。モータジェネレータECU72は、インバータ21を制御することによってモータジェネレータ20を制御する。ハイブリッドECU73は、エンジンECU71およびモータジェネレータECU72などを制御することによって車両1を駆動させるためのシステム全体を制御する。
【0027】
なお、図1においては各ECU71~73が別々に設けられているが、各ECU71~73のうち少なくとも2つが1つのユニットとして設けられるようにしてもよい。以下では、エンジンECU71とモータジェネレータECU72とハイブリッドECU73とを区別することなく、ECU70と記載する。
【0028】
図2は、エンジン10の詳細構成の一例を模式的に示す図である。エンジン10は、燃焼室を有するエンジン本体11と、吸気管102,108を含む吸気通路と、排気管131を含む排気通路と、コンプレッサ104およびタービン122を含む過給機とを備える。
【0029】
吸気管102を流れる空気は、過給機のコンプレッサ104に吸入されて圧縮される。コンプレッサ104で圧縮された空気は、吸気管108を通ってエンジン本体11の燃焼室内に導入される。燃焼室内で空気と燃料との混合気が燃焼することにより、エンジン10は駆動力を発生する。
【0030】
燃焼後の混合気、すなわち排気ガスは、過給機のタービン122を通り抜けた後、排気管131を通って車外に排出される。
【0031】
さらに、エンジン10は、コンプレッサ104で圧縮された空気を冷却するための構成として、インタークーラ80と、ラジエータ81と、電動ポンプ82とを備える。
【0032】
インタークーラ80は、コンプレッサ104で圧縮された空気と、冷却水との間で熱交換を行なうことによって、コンプレッサ104で圧縮された空気を冷却する。ラジエータ81は、冷却水と外気との間で熱交換を行なうことによって、冷却水を冷却する。
【0033】
電動ポンプ82は、DC/DCコンバータ23を介して高圧バッテリ22から供給される電力で作動することによって、インタークーラ80とラジエータ81との間で冷却水を循環させる。冷却水の循環流量(以下「循環水量」ともいう)は、電動ポンプ82の回転速度により調整される。電動ポンプ82の回転速度は、ECU70からの制御信号によって制御される。
【0034】
さらに、エンジン10は、インタークーラ80によって冷却された後の吸気温度(以下「冷却後吸気温度THg」ともいう)を検出する温度センサ110を備える。温度センサ110によって検出された冷却後吸気温度THgは、ECU70に送られる。
【0035】
さらに、エンジン10は、排気通路内の排気の一部を吸気通路に還流させるための構成として、EGR配管140と、EGR配管140に設けられるEGRクーラ142と、EGRバルブ144とを備える。
【0036】
エンジン本体11から排出された排気の一部は、EGR配管140を経由して吸気通路に還流される。EGR配管140を流れるEGRガスは、EGRクーラ142で冷却される。EGRクーラ142で冷却されたEGRガスは、EGRバルブ144を経由して吸気側に再循環させられる。EGRガスの還流量は、EGRバルブ144の開度により調整される。EGRバルブ144の開度は、ECU70からの制御信号によって制御される。
【0037】
さらに、エンジン10は、低温始動用のグロープラグ12を備える。グロープラグ12は、エンジン本体11の燃焼室周辺に設けられ、DC/DCコンバータ23を介して高圧バッテリ22から供給される電力で作動するヒータを有する。グロープラグ12は、ヒータの作動によって発熱し、燃焼室の温度を上昇させる。
【0038】
[冷却後吸気温度THgの制御]
本実施の形態によるエンジン10においては、今後厳しくなる排気規制に対応するために、水冷式のインタークーラ80が採用されている。
【0039】
そして、本実施の形態によるECU70は、温度センサ110によって検出される冷却後吸気温度THgが目標温度THtagを超えている場合に、電動ポンプ82のオンデューティ比を0よりも大きく1よりも小さい値に算出し、算出されたオンデューティ比で電動ポンプ82を間欠駆動する。電動ポンプ82の間欠駆動によって、冷却後吸気温度THgが目標温度THtag近傍に安定的に維持される。なお、オンデューティ比は、電動ポンプ82のオンオフの1周期に占めるオン期間の割合である。
【0040】
図3は、ECU70による電動ポンプ82のオンデューティ比の算出例を示す図である。図3において、時刻t0よりも前には、冷却後吸気温度THgと目標温度THtagとの差が小さいことから、電動ポンプ82のオンデューティ比が小さい値に設定される例が示される。これにより、インタークーラ80の循環水量は少量となり、冷却後吸気温度THgが目標温度THtagよりも過剰に下回ることが抑制される。
【0041】
時刻t0以降には、冷却後吸気温度THgと目標温度THtagとの差が大きいことから、電動ポンプ82のオンデューティ比が大きい値に設定される例が示される。これにより、インタークーラ80の循環水量は多量となり、冷却後吸気温度THgが目標温度THtagよりも過剰に上回ることが抑制される。
【0042】
[高圧バッテリのSOC制御]
ECU70は、高圧バッテリ22のSOCを算出する機能を有する。ECU70は、高圧バッテリ22の電圧、電流、温度などを監視する監視ユニット(図示せず)から受ける情報に基づいて、高圧バッテリ22のSOCを算出する。
【0043】
SOCは、高圧バッテリ22の満充電容量に対する現在の蓄電量を百分率で示したものである。SOCの算出方法としては、たとえば、電流値積算(クーロンカウント)による手法、または、開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)の推定による手法等、種々の公知の手法を採用できる。
【0044】
図4は、高圧バッテリ22のSOCの制御範囲の一例を示す図である。一般的に、バッテリにおいては、SOCが30%程度未満の低い値である場合、蓄電量が不足している過放電状態とされる一方、SOCが80%程度を超える高い値である場合、蓄電量が過剰である過充電状態とされる。
【0045】
本実施の形態によるECU70は、上述の過放電状態および過充電状態を回避するために、30%よりも大きい値を下限値SL、80%よりも小さい値を上限値SHとして、高圧バッテリ22のSOCが下限値SLと上限値SHとの間の制御範囲内に収まるように、高圧バッテリ22の充電および放電を制御する。
【0046】
たとえば、高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の下限値SLを下回った場合には、過放電状態となるのを回避するために、充電走行あるいは回生走行を行なってモータジェネレータ20が発電した電力で高圧バッテリ22を充電する。これにより、SOCが下限値SLよりも大きくなるため、過放電状態となることが回避される。
【0047】
また、高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えた場合には、過充電状態となるのを回避するために、EV走行あるいはアシスト走行を行なって、高圧バッテリ22の電力をモータジェネレータ20で消費させる。これにより、SOCが上限値SHよりも小さくなるため、過充電状態となることが回避される。
【0048】
[高圧バッテリの強制放電]
高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えた場合には、上述したように、EV走行あるいはアシスト走行を行なって、高圧バッテリ22の電力をモータジェネレータ20で消費させる。しかしながら、たとえばユーザの要求駆動力が低い状況などにおいては、モータジェネレータ20の消費電力が低く、高圧バッテリ22のSOCが早期に低下しない場合が想定される。
【0049】
その対策として、たとえば、クラッチ15を係合した状態で、ユーザの要求駆動力よりも大きい正の駆動力をモータジェネレータ20で発生させて高圧バッテリ22を放電させるとともに、エンジン10に負の駆動力(エンジンブレーキ力)を発生させることが想定される。これにより、トータルとしての走行駆動力をユーザの要求駆動力としつつ、高圧バッテリ22の電力をより早期に消費可能である。
【0050】
しかしながら、上記の対策では、エンジン10そのものの駆動力が変化するため、エンジン10が発する騒音および振動が変化し、ユーザに違和感を与えてしまうことが懸念される。
【0051】
そこで、本実施の形態によるECU70は、高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えている場合、高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SH未満である場合よりも、インタークーラ80の冷却水を循環させるための電動ポンプ82のオンデューティ比を大きくすることによって、高圧バッテリ22の放電量を増加させる(強制放電)。この際、循環水量が大きくなり冷却後吸気温度THgは低下するものの、エンジン10の駆動力はほとんど変化しない。これにより、ユーザに違和感を与えることなく、高圧バッテリ22が過充電状態となることを抑制することができる。なお、以下では、電動ポンプ82のオンデューティ比を「Duty」とも記載する。
【0052】
図5は、本実施の形態によるECU70が電動ポンプ82を制御する際に実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0053】
ECU70は、高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えているか否かを判定する(ステップS10)。
【0054】
高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えていない場合(ステップS10においてNO)、ECU70は、通常どおり、冷却後吸気温度THgの制御を行なう(ステップS12~S20)。
【0055】
具体的には、ECU70は、まず、冷却後吸気温度THgが目標温度THtagを超えているか否かを判定する(ステップS12)。
【0056】
冷却後吸気温度THgが目標温度THtagを超えていない場合(ステップS12においてNO)、ECU70は、電動ポンプ82を停止する(ステップS14)。
【0057】
冷却後吸気温度THgが目標温度THtagを超えている場合(ステップS12においてYES)、ECU70は、たとえば冷却後吸気温度THgと目標温度THtagとの差分に応じた要求循環水量を算出し(ステップS16)、要求循環水量を満たすオンデューティ比(Duty)を0よりも大きく1よりも小さい範囲で算出し(ステップS18)、算出されたDutyで電動ポンプ82を作動することによって電動ポンプ82を間欠駆動する(ステップS20)。
【0058】
高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えている場合(ステップS10においてYES)、ECU70は、Dutyを「1」に設定し(ステップS30)、Duty=1で電動ポンプ82を作動することによって電動ポンプ82を連続駆動する(ステップS32)。
【0059】
図6は、本実施の形態によるECU70によって制御される、高圧バッテリ22のSOCおよび電動ポンプ82のオンデューティ比(Duty)の変化態様の一例を示す図である。
【0060】
時刻t1よりも前においては、高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えていないため、Dutyは「0」よりも大きく「1」よりも小さい値に設定され、電動ポンプ82が間欠的に駆動される。
【0061】
時刻t1にて高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えると、Dutyは「1」に設定され、電動ポンプ82が連続的に駆動される。これにより、DC/DCコンバータ23を介して高圧バッテリ22から電動ポンプ82に供給される電力が増加し、高圧バッテリ22の強制放電が行なわれる。
【0062】
その後の時刻t2にて高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SH未満に低下すると、Dutyは再び「0」よりも大きく「1」よりも小さい値に設定され、電動ポンプ82が間欠的に駆動される。
【0063】
以上のように、本実施の形態による車両1は、モータジェネレータ20と過給機付きのエンジン10との少なくとも一方の動力を用いて走行するハイブリッド車両である。この車両1は、モータジェネレータ20に電気的に接続される高圧バッテリ22と、過給機で圧縮された空気と冷却水との間で熱交換を行なう水冷式のインタークーラ80と、高圧バッテリ22に蓄えられた電力で作動し、インタークーラ80とラジエータ81との間で冷却水を循環させる電動ポンプ82と、電動ポンプ82を制御するECU70とを備える。ECU70は、高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えている場合は、高圧バッテリ22のSOCが上限値SHを超えていない場合よりも、電動ポンプ82のオンデューティ比を大きくする。
【0064】
上記構成によれば、高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えている場合、高圧バッテリ22のSOCが上限値SH未満である場合よりも、電動ポンプ82のオンデューティ比を大きくすることによって、高圧バッテリ22の放電量を増加させる。この際、インタークーラ80の冷却水の循環流量は大きくなるが、エンジン10そのものの駆動力はほとんど変化しない。これにより、ユーザに違和感を与えることなく、高圧バッテリ22が過充電状態となることを抑制することができる。
【0065】
さらに、本実施の形態によるECU70は、高圧バッテリ22のSOCが上限値SHを超えていない場合、電動ポンプ82のオンデューティ比を1よりも小さい値にし、高圧バッテリ22のSOCが上限値SHを超えている場合、電動ポンプ82のオンデューティ比を1にする。
【0066】
上記構成によれば、高圧バッテリ22のSOCが上限値SHを超えている場合、電動ポンプ82のオンデューティ比を1にすることによって、電動ポンプ82が連続運転される。そのため、オンデューティ比を1よりも小さい値にして電動ポンプ82を間欠運転する場合に比べて、電動ポンプ82の消費電力を大きくして、高圧バッテリ22のSOCをより早期に低下させることができる。
【0067】
<変形例1>
図7は、本変形例1によるECU70が電動ポンプ82を制御する際に実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、上述の図5のフローチャートに対して、ステップS34を追加したものである。図7のその他のステップ(上述の図5に示したステップと同じ番号を付しているステップ)については、既に説明したため詳細な説明はここでは繰り返さない。
【0068】
高圧バッテリ22のSOCが制御範囲の上限値SHを超えている場合(ステップS10においてYES)、ECU70は、オンデューティ比「1」で電動ポンプ82を作動することによって電動ポンプ82を連続駆動する(ステップS30,S32)。
【0069】
さらに、ECU70は、グロープラグ12を作動させる(ステップS34)。これにより、電動ポンプ82を連続駆動することで冷却後吸気温度THgが目標温度THtagよりも低下したとしても、グロープラグ12の作動によって燃焼室の温度を上昇させることで、吸気温度の変化を安定化させることができる。
【0070】
さらに、グロープラグ12は、DC/DCコンバータ23を介して高圧バッテリ22から供給される電力によって作動する。そのため、グロープラグ12の作動によって高圧バッテリ22のSOCをより早期に低下させることができる。
【0071】
なお、本変形例1においては電動ポンプ82に加えてグロープラグ12を作動させる例について説明したが、電動ポンプ82に加えて作動させる部品を、グロープラグ12に代えてあるいは加えて、走行駆動力への影響の少ない他の電動部品(たとえば触媒を暖機するための電気ヒータ)としてもよい。
【0072】
<変形例2>
高圧バッテリ22の強制放電中には、電動ポンプ82のオンデューティ比を「1」として電動ポンプ82を連続駆動することによって、エンジン10の吸気温度が通常時よりも低下して排気中のNOxが減少することが懸念される。
【0073】
そこで、本変形例2によるECU70は、高圧バッテリ22のSOCが上限値SHを超えている場合、電動ポンプ82のオンデューティ比を「1」として電動ポンプ82を連続駆動するとともに、EGRバルブ144の開度を調整してEGRガスの還流量を減少させる。これにより、高圧バッテリ22の強制放電中においても、NOx排出量を通常時と同等にすることができる。
【0074】
また、上述の実施の形態およびその変形例については適宜組合せることも可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 車両、10 エンジン、11 エンジン本体、12 グロープラグ、15 クラッチ、20 モータジェネレータ、21 インバータ、22 高圧バッテリ、23 コンバータ、40 自動変速機、50 駆動輪、70 ECU、71 エンジンECU、72 モータジェネレータECU、73 ハイブリッドECU、80 インタークーラ、81 ラジエータ、82 電動ポンプ、102,108 吸気管、104 コンプレッサ、110 温度センサ、122 タービン、131 排気管、140 EGR配管、142 EGRクーラ、144 EGRバルブ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7